JP2006205851A - 懸架シリンダ装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】 アクチュエータの駆動力によって減衰力を発生させる懸架シリンダ装置であって、アクチュエータの失陥に対処可能なシリンダ装置を提供することを課題とする。
【解決手段】 車体の一部と車輪との相対移動に対応して伸縮可能とされるとともに、その伸縮に対する抵抗をモータ32によって付与する懸架シリンダ装置10に、モータ32の失陥時に伸縮に対する摩擦抵抗を発生させる摩擦抵抗発生機構60を備えさせる。摩擦抵抗発生機構60は、例えば、縮径させた状態でシリンダ22に配設した摺接リング70を、モータ32の失陥時にロッド24に装着させ、シリンダ22とロッド24とが軸方向に相対移動する場合に、シリンダ22の内周面74に摺接した状態とすることで、その摺接に対する摩擦抵抗を発生させる。つまり、懸架シリンダ装置10の伸縮はその摩擦抵抗に抗った伸縮となり、モータ32の失陥時に減衰力を発生させることが可能となる。
【選択図】 図1
【解決手段】 車体の一部と車輪との相対移動に対応して伸縮可能とされるとともに、その伸縮に対する抵抗をモータ32によって付与する懸架シリンダ装置10に、モータ32の失陥時に伸縮に対する摩擦抵抗を発生させる摩擦抵抗発生機構60を備えさせる。摩擦抵抗発生機構60は、例えば、縮径させた状態でシリンダ22に配設した摺接リング70を、モータ32の失陥時にロッド24に装着させ、シリンダ22とロッド24とが軸方向に相対移動する場合に、シリンダ22の内周面74に摺接した状態とすることで、その摺接に対する摩擦抵抗を発生させる。つまり、懸架シリンダ装置10の伸縮はその摩擦抵抗に抗った伸縮となり、モータ32の失陥時に減衰力を発生させることが可能となる。
【選択図】 図1
Description
本発明は、車両用サスペンション装置を構成するショックアブソーバ等の懸架シリンダ装置に関する。
ショックアブソーバ等の車両用サスペンション装置を構成する懸架シリンダ装置は、下記特許文献1に記載されているような構造のもの、つまり、オリフィスを備えた油圧式のシリンダ装置が一般的である。一方、アクティブサスペンション装置に好適な懸架シリンダ装置として、下記特許文献2に記載されているようなシリンダ装置の開発もなされている。そのシリンダ装置は、互いに螺合して伸縮に伴って相対回転する雄ねじおよび雌ねじを有し、それら雄ねじおよび雌ねじにアクチュエータによって相対回転トルクを付与することによって、伸縮に対する抵抗を付与するタイプのシリンダ装置である。このタイプのシリンダ装置では、アクチュエータの駆動力を制御することで抵抗の大きさをアクティブに変更し、それによって、当該シリンダ装置が装備されたサスペンション装置の減衰力がアクティブに調整される。
特許第2876695号公報
特開平8−197931号公報
上記特許文献2に記載された懸架シリンダ装置では、アクチュエータとして電動モータを採用しているが、この電動モータが断線等によって失陥した場合、減衰力を発生させることができない状態となる。そのような状態となった場合には、車両の走行性能が低下するため、アクチュエータの失陥時において、そのアクチュエータの駆動力によらずに減衰力を発揮させるための何らかの手段を設けることが望まれる。本発明は、そのような実情に鑑みてなされたものであり、アクチュエータの駆動力によって減衰力を発生させる懸架シリンダ装置であって、アクチュエータの失陥に対処可能なシリンダ装置を提供することを課題とする。
上記課題を解決するため、本発明の懸架シリンダ装置は、車輪側部材と車体側部材とに連結されて車体の一部と車輪との相対移動に対応して伸縮可能とされるとともに、その伸縮に対する抵抗をアクチュエータによって付与する構造のシリンダ装置であって、アクチュエータの失陥時において伸縮に対する摩擦抵抗を発生させる機構を備えたことを特徴とする。
本発明の懸架シリンダ装置によれば、アクチュエータが失陥してそのアクチュエータの駆動力によって発生させられる伸縮抵抗が得られなくなった場合においても、別途設けられた摩擦抵抗を発生させる機構により、伸縮抵抗が得られることになる。したがって、本発明の懸架シリンダ装置を採用するサスペンション装置では、アクチュエータが失陥した場合であっても、減衰力を発生させることが可能となる。
以下に、本願において特許請求が可能と認識されている発明(以下、「請求可能発明」という場合がある。)の態様をいくつか例示し、それらについて説明する。各態様は請求項と同様に、項に区分し、各項に番号を付し、必要に応じて他の項の番号を引用する形式で記載する。これは、あくまでも請求可能発明の理解を容易にするためであり、それらの発明を構成する構成要素の組み合わせを、以下の各項に記載されたものに限定する趣旨ではない。つまり、請求可能発明は、各項に付随する記載,実施例の記載等を参酌して解釈されるべきであり、その解釈に従う限りにおいて、各項の態様にさらに他の構成要素を付加した態様も、また、各項の態様から構成要素を削除した態様も、請求可能発明の一態様となり得るのである。なお、以下の各項において、(1)項ないし(9)項の各々が、請求項1ないし請求項9の各々に相当する。
(1)(A)一端部である連結端部において車体の一部を構成する車体側部材と車輪を保持する車輪側部材との一方に連結された筒状のハウジングと、(B)そのハウジング内にそのハウジングと軸方向に相対移動可能に配設され、一端部がそのハウジングの前記連結端部とは反対側の端部より突出して前記車体側部材と前記車輪側部材との他方に連結されたロッドと、(C)一方が前記ハウジングに軸方向に移動不能に設けられ他方が前記ロッドに軸方向に移動不能に設けられて互いに螺合し、前記ハウジングと前記ロッドとの軸方向の相対移動に伴って相対回転する雄ねじ部および雌ねじ部とを含んで構成され、車体の一部と車輪との相対移動に伴って伸縮するシリンダ組立体と、
前記雄ねじ部と前記雌ねじ部とに相対回転トルクを加えて前記シリンダ組立体の伸縮に対する抵抗を付与するアクチュエータと、
そのアクチュエータの失陥時において、前記シリンダ組立体の伸縮に対する摩擦抵抗を発生させる摩擦抵抗発生機構と
を備えた懸架シリンダ装置。
前記雄ねじ部と前記雌ねじ部とに相対回転トルクを加えて前記シリンダ組立体の伸縮に対する抵抗を付与するアクチュエータと、
そのアクチュエータの失陥時において、前記シリンダ組立体の伸縮に対する摩擦抵抗を発生させる摩擦抵抗発生機構と
を備えた懸架シリンダ装置。
本項の態様の懸架シリンダ装置は、平たく言えば、車体側部材と車輪側部材とに連結されて車体の一部と車輪との相対移動に対応して伸縮可能とされ、その伸縮に対する抵抗をアクチュエータの駆動力によって付与する構造のシリンダ装置である。本態様のシリンダ装置において、摩擦抵抗発生機構は、アクチュエータが失陥してそのアクチュエータの駆動力による伸縮抵抗が得られなくなった場合において、そのアクチュエータをバックアップする機構であり、アクチュエータの駆動力に代えて、摩擦力による伸縮抵抗を発生させる機構とされている。したがって、本態様の懸架シリンダ装置によれば、アクチュエータが失陥した場合でも、伸縮抵抗を確保することが可能であり、本態様の懸架シリンダ装置を採用するサスペンション装置では、アクチュエータが失陥した場合でも、上記摩擦抵抗に依拠する減衰力を発生させることが可能となるのである。
本項の懸架シリンダ装置は、「シリンダ組立体」を主体として構成されるものであり、そのシリンダ組立体は、具体的な構成が特に限定されるものではなく、既に公知の構成のものを広く採用可能である。シリンダ組立体を構成する「ハウジング」,「ロッド」に関しても、その具体的な構成が特に限定されるものではない。つまり、ハウジングおよびロッドは、伸縮可能とされたシリンダ組立体において、軸方向に相対移動可能に挿設された外側部材および内側部材として機能するものであればよいのである。したがって、ハウジング,ロッドは、その形状も特に限定されず、例えば、ロッドに関して言えば、単に棒状のものに限られず、中空状,筒状等の形状のものであってもよい。
シリンダ組立体は、ハウジングの端部とロッドの端部とが車体側部材と車輪側部材とに連結されるが、ハウジングの端部が車輪側部材に連結され、ロッドの端部が車体側部材に連結されるものであってもよく、逆に、ロッドの端部が車輪側部材に連結され、ハウジングの端部が車体側部材に連結されるものであってもよい。ハウジングおよびロッドの各々と車体側部材および車輪側部材の各々との連結は、直接連結されるものであってもよく、また、上記アクチュエータを始めとする種々の装置,機構等を介して間接的に連結されるものであってもよい。また、それらの連結は、必ずしも固定されることを要しない。つまり、車体の一部と車輪との距離の変化に応じてシリンダ組立体が伸縮可能であればよく、ハウジングおよびロッドの各々と車体の一部および車輪の各々との軸方向(以下、特に断わりのない限り懸架シリンダ装置、つまり、シリンダ組立体の軸線の延びる方向を意味するものとする)の相対変位が規制されていればよく、例えば、それらの連結は回転可能な状態での連結であってもよい。
「雄ねじ部」および「雌ねじ部」は、いずれがハウジングに設けられてもよい。言い換えれば、いずれがロッドに設けられてもよい。例えば、棒状のロッドに雄ねじ部が設けられる場合は、そのロッドに直接雄ねじを螺設することも可能であり、同様に、ハウジングに雌ねじを設ける場合は、雌ねじを直接螺設することも可能である。また、雄ねじ部あるいは雌ねじ部を設ける場合、ハウジングあるいはロッドの本体部材に雄ねじ部材あるいは雌ねじ部材を付設することも可能である。雄ねじ部および雌ねじ部は、ハウジングあるいはロッドに必ずしも固定されることを要しない。シリンダ組立体の構成に応じて、例えば、ハウジングあるいはロッドに軸線回りに回転可能に設けられてもよい。雄ねじ部および雌ねじ部を構成する雄ねじおよび雌ねじの形状、構造等も、特に限定されるものではない。ハウジングとロッドとの軸方向の相対移動に伴って相対回転させられることに鑑みれば、摩擦抵抗の少ない雄ねじと雌ねじとの組合せを選択することが望ましく、具体的には、ボールねじ機構を構成する雄ねじと雌ねじとの組合せを採用することが可能である。
「アクチュエータ」は、シリンダ組立体の伸縮に対する抵抗を発生させるための駆動源として機能するものであり、種々の駆動源装置を採用することができる。具体的には、後に説明する電動モータを始め、油圧モータ,空気圧モータ等の各種のモータを採用することが可能である。アクチュエータは「雄ねじ部と雌ねじ部とに相対回転トルクを加える」ものであるが、その態様は、アクチュエータが雄ねじ部に回転トルクを加えるような態様であってもよく、雌ねじ部に回転トルクを加えるような態様であってもよい。また、アクチュエータが直接的に雄ねじ部と雌ねじ部とに相対回転トルクを加える態様であってもよく、減速機構等の何らかの機構,装置等を介して、間接的に相対回転トルクを加える態様であってもよい。
また、「雄ねじ部と雌ねじ部とに相対回転トルクを加える」とは、アクチュエータが雄ねじ部と雌ねじ部との少なくとも一方を回転させることによって、相対回転トルクを積極的に加えることだけを意味するのではなく、ハウジングとロッドとの軸方向の相対移動に伴って雄ねじ部と雌ねじ部とが相対回転させられる場合に、アクチュエータがその相対回転に対抗する力を発揮することによって、雄ねじ部と雌ねじ部との少なくとも一方に相対回転トルクが加えられる場合をも含む意味である。具体的に言えば、例えば、アクチュエータが電動モータである場合に、それの各相を構成するコイルを相互に導通させることによって逆起電力による制動効果を生じさせるような場合も含まれるのである。
「摩擦抵抗発生機構」は、アクチュエータの失陥時に、シリンダ組立体の伸縮に対する摩擦抵抗を発生させる機構であり、言い換えれば、ハウジングとロッドとの軸方向の相対移動に対する摩擦抵抗を発生させる機構である。本項においては摩擦抵抗発生機構の具体的な構成については特に限定されるものではない。その摩擦抵抗発生機構の構成を具体的に限定した態様については、後に説明する。なお、「アクチュエータの失陥」とは、故障等によりアクチュエータが適正な駆動力を発生させ得ない状態を広く意味し、アクチュエータが制御装置によって制御作動させられる場合においては制御装置の故障等によってアクチュエータが適切に作動しない状態をも含む意味である。
(2)前記アクチュエータが電動モータである(1)項に記載の懸架シリンダ装置。
本項の態様の懸架シリンダ装置は、電磁式懸架シリンダ装置の一態様となる。本項に記載の態様によれば、断線、短絡等の電動モータの失陥に対応可能な電磁式懸架シリンダ装置が実現する。
(3)前記摩擦抵抗発生機構が、発生する摩擦抵抗の大きさが前記シリンダ組立体の伸縮位置によって変化する構造とされた(1)項または(2)項に記載の懸架シリンダ装置。
本項にいう「伸縮位置」とは、シリンダ組立体の伸縮ストロークに関する位置、つまり、ストローク位置を意味し、ハウジングとロッドとの軸方向における相対位置と考えることもできる。摩擦抵抗発生機構を、ストローク位置によって摩擦抵抗の大きさが変化するように構成すれば、アクチュエータ失陥時における懸架シリンダ装置の作動特性、つまり、本項の態様の懸架シリンダ装置を採用するサスペンション装置の作動特性を、特徴付けることが可能である。一例を挙げれば、設定された伸縮ストロークの両端域において摩擦抵抗を大きくすることによって、そのストロークを超えようとする当該懸架シリンダの動作を効果的に抑制することが可能である。なお、本項の摩擦抵抗発生機構は、摩擦抵抗が連続的に変化するような構造のものであってもよく、また、段階的に変化するような構造のものであってもよい。また、摩擦抵抗が伸縮ストロークの全域において変化する構造のものであってもよく、伸縮ストロークのうちの1以上の部分領域においてのみ他の領域と異なるような構造のものであってもよい。さらにまた、摩擦抵抗は、ハウジングとロッドとの各々の摺接部においてそれら摺接部が互いに押し付け合う力の大きさと、それら摺接部の摩擦係数とによって決定されることから、本項の摩擦抵抗発生機構は、その押し付け合う力の大きさと摩擦係数との少なくとも一方が伸縮位置によって変化するような構造のものとすることが可能である。
(4)前記摩擦抵抗発生機構が、
前記アクチュエータの失陥時において、前記ハウジングと前記ロッドとの一方に設けられた被装着部において軸方向に移動不能に装着された状態かつ前記ハウジングと前記ロッドとの他方に設けられた摺接面部に摺接する状態とされて、前記摺接面部との間で摩擦抵抗を発生させる装着摺接体を含んで構成された(1)項ないし(3)項のいずれかに記載の懸架シリンダ装置。
前記アクチュエータの失陥時において、前記ハウジングと前記ロッドとの一方に設けられた被装着部において軸方向に移動不能に装着された状態かつ前記ハウジングと前記ロッドとの他方に設けられた摺接面部に摺接する状態とされて、前記摺接面部との間で摩擦抵抗を発生させる装着摺接体を含んで構成された(1)項ないし(3)項のいずれかに記載の懸架シリンダ装置。
本項に記載の態様は、摩擦抵抗発生機構の構造を限定した態様である。本項の態様の「装着摺接体」は、摺接面部との関係において実質的な摩擦係数を有するような材料を含んで構成されるものであることが望ましい。また、装着摺接体は、アクチュエータの失陥時において、被装着部に装着された状態(以下、「装着状態」という場合がある)と、摺接面部に摺接する状態(以下、「摺接状態」という場合がある)との両状態がともに実現される状態(以下、「装着・摺接状態」という場合がある)とされればよい。詳しく言えば、例えば、通常時(本明細書において、アクチュエータが失陥していない状態の時を意味する)において装着状態と摺接状態との一方のみが実現されており、失陥時において、通常時には実現されていない他方の状態が実現されるようなものであってもよく、また、通常時おいて装着状態と摺接状態との両者がともに実現されておらず、失陥時において、それら両者が実現されるようなものであってもよい。
(5)前記装着摺接体が、前記シリンダ組立体の通常時の伸縮範囲においては前記被装着部が到達しない位置である通常時非到達位置に配設され、前記アクチュエータの失陥時において、前記ハウジングと前記ロッドとが相対移動させられて前記被装着部が前記通常時非到達位置に到達した際に前記被装着部に装着されるようにされた(4)項に記載の懸架シリンダ装置。
本項に記載の態様は、装着摺接体が、通常時において装着状態とされておらず、失陥時に装着状態とされる態様である。言い換えれば、本項に記載の態様は、アクチュエータの失陥時に、通常時における伸縮範囲を超えるシリンダ組立体の伸縮が許容され、その伸縮範囲を超えたときに装着摺接体が被装着部に装着される態様である。例えば、装着摺接体の被装着部への装着機構を、シリンダ組立体の伸縮に要するエネルギ以外のエネルギを必要とせずに装着摺接体を被装着部に装着可能な機構とすれば、簡便な構造の摩擦抵抗発生機構が実現されることになる。
(6)前記装着摺接体が、前記摺接面部と離間して配設され、前記アクチュエータの失陥時において、少なくとも一部分が変位して前記摺接面部と摺接するようにされた(4)項または(5)項に記載の懸架シリンダ装置。
本項に記載の態様は、装着摺接体が、通常時において摺接状態とされておらず、失陥時に摺接状態とされる態様である。本項にいう「少なくとも一部分が変位して」とは、例えば、装着摺接体あるいはそれの一部分が膨張、伸展、湾曲、屈曲等の変形を生じること、装着摺接体が移動すること等を意味する。通常時における装着摺接体と摺接面部との離間量は摺接しない程度に小さくすることができるため、失陥時における上記変位は小さい量とすることが可能である。したがって、本項に記載の態様によれば、コンパクトな摩擦抵抗発生機構が実現する。なお、本項の態様では、例えば、上記少なくとも一部分の変位の変位量を調整することで、装着摺接体と摺接面部とが互いに押し付け合う力の大きさを変更することが可能であり、容易に、摩擦抵抗の大きさを変更することが可能となる。
(7)前記装着摺接体が、前記摺接面部と摺接する状態において、軸線回りに回転可能な状態で前記被装着部に装着されるものである(4)項ないし(6)項のいずれかに記載の懸架シリンダ装置。
シリンダ組立体は、伸縮に伴って被装着部と摺接面部とが軸線回りに相対回転しつつ軸方向に相対移動させられるのものも存在する。本項に記載の態様は、特に、そのような構成のシリンダ組立体を有する懸架シリンダ装置に好適な態様である。本項に記載の態様によれば、被装着部と摺接面部とが相対回転させられる場合であっても、その相対回転に依拠する装着摺接体と摺接面部との摺接移動が生じないことから、発生する摩擦抵抗が安定したものとなる。また、相対回転に依拠する装着摺接体と摺接面部との摺接移動が生じない分だけ、装着摺接体と摺接面部との摺接移動量が少なくなり、装着摺接体の摩耗を抑制することが可能となる。
(8)前記摺接面部が、発生する摩擦抵抗の大きさが前記装着摺接体の摺接位置によって変化する構造とされた(4)項ないし(7)項のいずれかに記載の懸架シリンダ装置。
本項にいう「摺接位置」とは、摺接面部と装着摺接体との軸方向の相対移動範囲において装着摺接体が摺接する摺接面部の位置であり、前述したシリンダ組立体の伸縮位置に対応する位置を意味する。本項に記載の態様は、先に説明したところの、発生する摩擦抵抗の大きさがシリンダ組立体の伸縮位置によって変化する態様の一態様と考えることができる。摩擦抵抗の変化に関する諸説明は、先の説明と重複するため、ここでは省略する。
(9)前記摺接面部が、前記被装着部との離間距離がその被装着部が位置させられる軸方向における位置によって変化する形状の面を有することで、発生する摩擦抵抗の大きさが前記装着摺接体の摺接位置によって変化する構造とされた(8)項に記載の懸架シリンダ装置。
本項にいう「摺接面部と被装着部との離間距離」は、装着・摺接状態とされた装着摺接体と摺接面部とのクリアランス(厳密には、負の値のクリアランス)を表すものである。つまり、本項の態様は、摺接面部が、摺接位置によって上記クリアランスが変化するような形状の面を有するような構成とされた態様である。具体的に言えば、例えば、摺接面部が、軸線方向において軸線との距離が変化する傾斜面を有するような態様である。本項に記載の態様によれば、上記クリアランスが変化するように構成することで、装着摺接体と摺接面部とが押し付け合う力の大きさを変化させるものであり、簡便な構造によって、摩擦抵抗の大きさを変化させることが可能となる。なお、先に一例を挙げて説明したように、摺接面部に対する装着摺接体の移動範囲において、その範囲の両端域に近づくにつれて上記離間距離を小さくするように構成すれば、その範囲を超えようとする伸縮動作、すなわち、当該懸架シリンダの動作を効果的に抑制することが可能である。
以下、本発明のいくつかの実施例を、図を参照しつつ詳しく説明する。なお、本発明は、下記実施例の他、前記〔発明の態様〕の項に記載された態様を始めとして、当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を施した種々の態様で実施することができる。
<第1実施例>
図1に、本発明の一実施例である懸架シリンダ装置10を装備する車両用サスペンション装置12を示す。この車両用サスペンション装置12は、懸架シリンダ装置10とサスペンションスプリングとしてのコイルスプリング14とを含んで構成されるものであり、前後左右の各車輪ごとに設けられる。懸架シリンダ装置10は、車体の一部を構成して車体側部材として機能するマウント部16と、車輪を保持する車輪側部材としてのサスペンションロアアーム(図示省略)とに連結され、スプリング14の伸縮によって生じた車体の振動を減衰させるものである。
図1に、本発明の一実施例である懸架シリンダ装置10を装備する車両用サスペンション装置12を示す。この車両用サスペンション装置12は、懸架シリンダ装置10とサスペンションスプリングとしてのコイルスプリング14とを含んで構成されるものであり、前後左右の各車輪ごとに設けられる。懸架シリンダ装置10は、車体の一部を構成して車体側部材として機能するマウント部16と、車輪を保持する車輪側部材としてのサスペンションロアアーム(図示省略)とに連結され、スプリング14の伸縮によって生じた車体の振動を減衰させるものである。
懸架シリンダ装置10は、シリンダ組立体20を主体として構成されるものであり、そのシリンダ組立体20は、連結端部である下端部がサスペンションロアアームに連結された筒状のハウジングとしてのシリンダ22と、そのシリンダ22内に配設されてそのシリンダ22の上端部から上方に突出するロッド24とを含んで構成されている。ロッド24は、雄ねじが螺設されたものであり、シリンダ22の内壁面上端部に固定されてベアリングボールを保持するナット26に螺合している。それら雄ねじおよびナット26は、それぞれ、ボールねじ機構を構成する雄ねじ部および雌ねじ部として機能するものとなっている。また、ロッド24の突出した部分の端部である上端部は、マウント部16に固定して設けられたロッド支持部材28によって、ベアリング30を介する状態で、マウント部16に回転可能かつ軸方向に移動不能に連結されている。
また、懸架シリンダ装置10は、アクチュエータとしてのモータ32(電動モータである)を備えている。このモータ32は、マウント部16に固定して設けられたモータ支持部材34により、そのマウント部16に固定されている。このモータ32の回転軸であるモータ軸36は、それの端部が上記ロッド24の上端部と一体的に接続されている。ちなみに、ロッド支持部材28とシリンダ22との間には、ロッド24を覆う蛇腹状のブーツ38が、両端部の各々がロッド支持部材28とシリンダ22の各々に接続される状態で設けられており、そのブーツ38によって、外部からの土砂,水等のロッド24への付着,シリンダ22内への侵入を阻止するようにされている。一方、コイルスプリング14は、シリンダ22の外周部に固定して設けられた下部リテーナ40と、マウント部16の下面に固定して設けられた上部リテーナ42とによって、それらに挟まれる状態で支持されている。
上記のような構造により、車体の一部と車輪とが相対移動する場合には、ロッド22のシリンダ24に対する回転を伴いつつ(モータ軸36も回転する)、シリンダ22とロッド24とは、軸方向への相対移動が可能とされている。つまり、シリンダ組立体20は、車体の一部と車輪との接近・離間に伴って伸縮可能とされているのである。モータ32によりロッド24に回転トルクを付与することによって、ロッド24に形成された雄ねじとナット26とに相対回転トルクを付与することが可能である。この相対回転トルクにより、ロッド24とシリンダ22との相対移動力が発生させられることになる。その相対回転トルクの向きおよび大きさを適切化することによって、シリンダ組立体20の伸縮に対して、その伸縮を阻止する方向の相対移動力を発生させることが可能であり、その方向の相対移動力は、ロッド24とシリンダ22との相対移動に対する抵抗、つまり、シリンダ組立体20の伸縮に対する抵抗となる。この抵抗が、車体の一部と車輪との相対移動に対する減衰力となるのである。モータ32により付与される相対回転トルクを調整することにより、減衰力の大きさの調整が可能とされている。このような懸架シリンダ装置10の減衰力発生機能は受動的な機能と考えることができるが、本懸架シリンダ装置10は、能動的に機能させることも可能である。つまり、モータ32を回転させることによって、積極的にシリンダ組立体20を伸縮させて、車体の姿勢を安定化させるような機能や車高を調節するような機能を発揮させることも可能なのである。それらについての詳しい説明は省略する。ちなみに、本懸架シリンダ装置10を電磁式懸架シリンダ装置と呼ぶことができ、本懸架シリンダ装置10が配備されたサスペンション装置を、電磁式サスペンション装置と呼ぶことができる。
本実施例の懸架シリンダ装置10では、モータ32が、断線や短絡等によって失陥した場合に、適切な減衰力を発生させることができなくなる。特に、断線のような場合には、殆ど減衰力を発生し得ない状態となる。そこで、懸架シリンダ装置10では、モータ32の失陥時においても減衰力を発揮させるために、摩擦抵抗発生機構60を備えている。図2には、図1における摩擦抵抗発生機構60の要部が拡大して示されている。
シリンダ22内部には、肉厚円筒形状の摺接リング70が、筒状のスペーサ72によってシリンダ22の底面から離間した位置に配設されている。摺接リング70は、硬質ゴム製のものであり、その外周径がシリンダの内周面74の内径より僅かに大きくされており、外周が縮径された状態ではめ込まれている。摺接リング70の内周部には、ベアリング76が設けられている。一方、ロッド24の下端部は、他の部分より外径が小さくかつベアリング76のインナレースの内径より僅かに小さな外径を有する小径部78とされている。小径部78のさらに先端部には、1対の係止爪80が設けられている。1対の係止爪80は、1対のばね82によってロッド24の軸心から離れる方向に付勢されているとともに、図示する状態から抜け落ちないようにされている(詳しい機構の図示は省略している)。また、1対の係止爪80の各々は、ロッド24の軸心に向かう方向へのばね82の付勢力に抗った移動が許容されている。
モータ32が正常に作動可能な通常時においては、シリンダ組立体20の伸縮範囲は制限されている。詳しく言えば、図におけるA〜A’の範囲にロッド24の小径部78が位置する範囲においての伸縮となるようにモータ32が制御される。ちなみに、この伸縮範囲(以下、「制御伸縮範囲」という場合がある)は、図示を省略するストッパ(バウンドストッパ,リバウンドストッパ)によって規制される伸縮範囲である最大伸縮範囲より狭く設定されており、モータ32の失陥時には、その最大伸縮範囲にまで伸縮範囲が拡がることになる。
モータ32が失陥した場合において、上記制御伸縮範囲を超えて車体の一部と車輪とが接近したときには(いわゆるフルバウンドの状態である)、ロッド24がシリンダ22に対して下降し、ロッド24の小径部78が、軸方向において摺接リング70が配設されている位置にまで到達する。このとき、ロッド24は、摺接リング70の有するベアリング76に挿入される。ロッド24の小径部78に設けられた1対の係止爪80は、摺接リング70の有するベアリング76に当接し、それの有する傾斜面の作用によって、軸心に向かって引っ込められた状態となる。さらなるロッド24の下降によって、引っ込められた状態の1対の係止爪80は、摺接リング70の下方にまで到達したときに突出させられる。この状態において、摺接リング70は、ロッド24の小径部78に装着され、1対の係止爪80によって係止され、軸方向の移動が禁止された状態となる。
摺接リング70がロッド24の小径部78に装着された状態では、ロッド24とシリンダ22とが軸方向に相対移動する場合、つまり、シリンダ組立体20が伸縮させられる場合において、摺接リング70の外周面がシリンダ22の内周面74に摺接する状態となる。先に説明したように、摺接リング70は縮径させられた状態にあるため、シリンダ22の内周面74との摺接に対する摩擦抵抗が発生する。したがって、シリンダ組立体20の伸縮はその摩擦抵抗に抗った伸縮となり、その結果、車体の一部と車輪との相対移動に対して、その摩擦抵抗に依拠する減衰力が発生させられることになる。本実施例の懸架シリンダ装置10では、このような摩擦抵抗発生機構60の機能により、モータ32の失陥時においても適切な減衰力が得られるようになっているのである。
シリンダ22の内周面74は、図において誇張して示しているように、ロッド24の小径部78の位置する軸方向の位置によって、その小径部78との離間距離が変化するような形状の面とされている。簡単に言えば、軸方向において内周径が漸変するテーパ面とされている。したがって、摺接リング70の摺接位置の変化に応じて、摺接リング70の外周面とシリンダ22の内周面74とが互いに押し付け合う力の大きさが変化し、発生する摩擦抵抗の大きさが変化することになる。そのため、その摩擦抵抗に依拠する減衰力も、シリンダ組立体20の伸縮位置によって変化するようにされているのである。ちなみに、本懸架シリンダ装置10では、シリンダ22の内周面74は、図から解るように、上述した制御伸縮範囲の中央部において摺接リング70の縮径量が最も小さく、その中央部から軸方向の上方および下方に向かうにつれて、縮径量が漸増するようなテーパ面とされている。そのため、発生させられる減衰力は、制御伸縮範囲の端に近づくにつれて大きくなる。このようなテーパ面の作用により、モータ32が失陥した場合においても、伸縮範囲が制御伸縮範囲となるように、シリンダ組立体20の伸縮が効果的に規制されているのである。
先に説明したように、本懸架シリンダ装置10では、シリンダ組立体20が伸縮する際、ロッド24とシリンダ22とが、ボールねじ機構によって、ロッド24の軸線回りに相対回転しつつ軸方向に相対移動する。ところが、摺接リング70は、ベアリング76によってロッド24に対して軸線回りに回転可能とされているため、ロッド24がシリンダ22に対して回転する場合でも、ロッド24に装着された摺接リング70は、シリンダ22と相対回転しない。したがって、本懸架シリンダ装置10では、その相対回転に依拠する摺接リング70とシリンダ22の内周面74との摺接移動が生じず、発生する摩擦抵抗が安定させられているとともに、相対回転に依拠する摺接移動を生じない分だけ摺接移動量が少なく、摺接リング70の摩耗が効果的に抑制されているのである。
以上のような構造から、摺接リング70は、アクチュエータであるモータ32の失陥時に、被装着部であるロッド24の小径部78に装着された状態とされ、かつ、摺接面部として機能するシリンダ22の内周面74と摺接する状態とされ、その状態においてシリンダ22の内周面74との間で摩擦抵抗を発生させる装着摺接体として機能するものとなっている。なお、本懸架シリンダ装置10は、摺接リング70が、通常時にロッド24の小径部78が到達しない位置である通常時非到達位置において摺接状態にあり、モータ32の失陥時に、小径部78がその位置まで到達してその小径部78に装着されて装着摺接状態となるように構成されている。
<第2実施例>
図3に、第2実施例の懸架シリンダ装置100を装備する車両用サスペンション装置102を示す。この車両用サスペンション装置102は、第1実施例と同様に、懸架シリンダ装置100とコイルスプリング14とを含んで構成されるものであり、前後左右の各車輪ごとに設けられる。懸架シリンダ装置100は、第1実施例と同様の構成であるシリンダ組立体104と、アクチュエータとしてのモータ32とを含んで構成されており、アクチュエータ失陥時にシリンダ組立体の伸縮に対する摩擦抵抗を発生させる摩擦抵抗発生機構を除き、第1実施例と略同様の構成であり、モータ32が失陥していない通常時においては、第1実施例と同様に作動するものである。そのため、本実施例においては、懸架シリンダ装置100が備える摩擦抵抗発生機構106を中心に説明を行い、第1実施例の装置と同じ機能の構成要素については、同じ符号を用いて対応するものであることを示し、それらの説明は省略するあるいは簡略に行うものとする。
図3に、第2実施例の懸架シリンダ装置100を装備する車両用サスペンション装置102を示す。この車両用サスペンション装置102は、第1実施例と同様に、懸架シリンダ装置100とコイルスプリング14とを含んで構成されるものであり、前後左右の各車輪ごとに設けられる。懸架シリンダ装置100は、第1実施例と同様の構成であるシリンダ組立体104と、アクチュエータとしてのモータ32とを含んで構成されており、アクチュエータ失陥時にシリンダ組立体の伸縮に対する摩擦抵抗を発生させる摩擦抵抗発生機構を除き、第1実施例と略同様の構成であり、モータ32が失陥していない通常時においては、第1実施例と同様に作動するものである。そのため、本実施例においては、懸架シリンダ装置100が備える摩擦抵抗発生機構106を中心に説明を行い、第1実施例の装置と同じ機能の構成要素については、同じ符号を用いて対応するものであることを示し、それらの説明は省略するあるいは簡略に行うものとする。
本実施例の懸架シリンダ装置100は、第1実施例と同様に構成されたシリンダ組立体104を主体として構成されるものであるが、シリンダ組立体104を構成するロッド110の先端部には、摺接フランジ112が装着されている。摺接フランジ112は、ゴム製のものであり、中空状に形成されてロッド110の先端部に固着されている。後に詳しく説明するが、摺接フランジ112は、液圧によって拡径されるような構造をなしており、通常時においては、シリンダ22の内周面74とは摺接しない程度の大きさとされている。また、ロッド110にはそれの軸線に沿った液通路114が設けられており、この液通路114は、下端部において、摺接フランジ112の内部空間に連通し、上端部において、ロッド支持部材28の内壁面に固定されてロッド110を回転可能とするスイベルジョイント116の液室に連通している。スイベルジョイント116には作動液を供給する管路118が接続され、その管路118の端部を構成するポートは、液通路120を介して、作動液を高圧下で貯留するアキュムレータ122に接続されている。なお、液通路120の途中には常閉の電磁開閉弁124が設けられている。
モータ32が失陥した場合には、図示を省略する制御装置によって、電磁開閉弁124が閉状態から開状態に切り換えられる。開閉弁124が開状態に切り換えられれば、アキュムレータ122に蓄えられていた作動液が、液通路114を経て、摺接フランジ112の内部空間に流入する。摺接フランジ112は、作動液の流入により拡径させられて、外周面がシリンダ22の内周面74に圧接し、シリンダ組立体104が伸縮させられる場合において摺接する状態となるのである。シリンダ組立体104の伸縮は、摺接フランジ112とシリンダ22の内周面74との摺接に対する摩擦抵抗に抗った伸縮となり、その結果、車体の一部と車輪との相対移動に対して、その摩擦抵抗に依拠する減衰力が発生させられることになる。本実施例の懸架シリンダ装置100では、このような摩擦抵抗発生機構106の機能により、モータ32の失陥時においても適切な減衰力が得られるようになっているのである。また、シリンダ22の内周面74は、第1実施例と同様に、シリンダ組立体104の制御伸縮範囲の中央部においてその内径が最も大きく、その中央部から軸方向の上方および下方に向かうにつれて内径が漸減するようなテーパ面とされている。そのため、摺接フランジ112の摺接位置が伸縮範囲の端に近づくにつれて、摩擦抵抗に依拠する減衰力が大きくなり、設定された伸縮範囲を超えようとするシリンダ組立体104の動作が効果的に抑制されているのである。
以上のような構造から、摺接フランジ112は、アクチュエータであるモータ32の失陥時に、被装着部であるロッド110の先端部に装着された状態とされ、かつ、摺接面部として機能するシリンダ22の内周面74と摺接する状態とされ、その状態においてシリンダ22の内周面74との間で摩擦抵抗を発生させる装着摺接体として機能するものとなっている。なお、本懸架シリンダ装置100は、摺接フランジ112が、通常時に内周面74と離間してロッド110に装着状態にあり、モータ32の失陥時に、摺接フランジ112が変位して内周面74と摺接されて装着摺接状態となるように構成されている。ちなみに、本実施例では、摺接フランジ112は、ロッド110に固着されているため、シリンダ組立体104の伸縮に伴い、シリンダ22と相対回転するような構造となっている。
<第3実施例>
図4に、第3実施例の懸架シリンダ装置140を装備する車両用サスペンション装置142を示す。本車両用サスペンション装置142は、第1実施例と同様に、懸架シリンダ装置140とコイルスプリング14とを含んで構成されるものであり、その懸架シリンダ装置140が備える、シリンダ組立体,アクチュエータ失陥時にシリンダ組立体の伸縮に対する摩擦抵抗を発生させる摩擦抵抗発生機構を除き、第1実施例の装置と類似する構成とされているため、本実施例の説明においては、第1実施例の装置と同じ機能の構成要素については、同じ符号を用いて対応するものであることを示し、それらの説明は省略するあるいは簡略に行うものとする。
図4に、第3実施例の懸架シリンダ装置140を装備する車両用サスペンション装置142を示す。本車両用サスペンション装置142は、第1実施例と同様に、懸架シリンダ装置140とコイルスプリング14とを含んで構成されるものであり、その懸架シリンダ装置140が備える、シリンダ組立体,アクチュエータ失陥時にシリンダ組立体の伸縮に対する摩擦抵抗を発生させる摩擦抵抗発生機構を除き、第1実施例の装置と類似する構成とされているため、本実施例の説明においては、第1実施例の装置と同じ機能の構成要素については、同じ符号を用いて対応するものであることを示し、それらの説明は省略するあるいは簡略に行うものとする。
懸架シリンダ装置140は、シリンダ組立体150を主体として構成されるものであり、そのシリンダ組立体150は、連結端部である下端部がサスペンションロアアームに連結された筒状のハウジングとしてのシリンダ152と、そのシリンダ152内に配設されてそのシリンダ152の上端部から上方に突出する中空ロッド154とを含んで構成されている。中空ロッド154は、シリンダ152の内壁面上部に固定された2つのブシュ型軸受156,158を介する状態で、シリンダ152に、回転可能かつ軸方向に相対移動可能に嵌入されている。また、中空ロッド154には、ベアリングボールを保持するナット160が、その内壁面下端部に固定して設けられている。一方、シリンダ152の内部には、雄ねじが形成された雄ねじ部材162が、それの端部がシリンダ152の底部内壁面に固定して設けられており、その雄ねじ部材162と上記ナット160とが螺合させられている。それらナット160と雄ねじ部材162とは、それぞれボールねじ機構を構成する雌ねじ部と雄ねじ部として機能するものとなっている。さらに、中空ロッド154は、シリンダ152から突出した部分の端部である上端部に軸部164が設けられており、この軸部164がマウント部16に固定して設けられたロッド支持部材28にベアリング30を介して回転可能とされることで、マウント部16に回転可能かつ軸方向に移動不能に連結されている。ちなみに、シリンダ152の内壁面上端部には、シール166が設けられ、外部からの異物の侵入を阻止するようにされている。また、懸架シリンダ装置140は、アクチュエータとしてのモータ32を備えており、そのモータ32のモータ軸36が、上記ロッド軸164と一体的に接続されている。
上記のような構造により、車体の一部と車輪とが相対移動する場合には、中空ロッド154のシリンダ152に対する回転を伴いつつ(モータ軸36も回転する)、シリンダ152と中空ロッド154とは、軸方向への相対移動が可能とされている。つまり、シリンダ組立体150は、車体の一部と車輪との接近・離間に伴って伸縮可能とされているのである。本実施例の懸架シリンダ装置140は、モータ32を回転させて中空ロッド154に回転トルクを付与することにより、ナット160と雄ねじ部材162とに相対回転トルクを付与するようにされており、その相対回転トルクによって、シリンダ組立体150の伸縮に対する抵抗、すなわち、減衰力を発生させる構造とされている。本懸架シリンダ装置140は、このような構成により、第1実施例と同様に、モータ32の回転トルクを調整することにより、減衰力の大きさの調整が可能とされているのである。
本実施例の懸架シリンダ装置140においても、モータ32が、断線や短絡等によって失陥した場合に、適切な減衰力を発生させることができなくなる。特に、断線のような場合には、殆ど減衰力を発生し得ない状態となる。そこで、懸架シリンダ装置140では、モータ32の失陥時においても減衰力を発揮させるために、摩擦抵抗発生機構170を備えている。
シリンダ組立体150のシリンダ152には、短い円筒形状の圧電アクチュエータ172が、2つの軸受156,158の間においてシリンダ152の内壁面に固定される状態で配設されている。その圧電アクチュエータ172は、その内径が中空ロッド154の外周面174の外径より僅かに大きくされており、通常時には、内周面が中空ロッド154の外周面174と摺接しない状態とされている。この圧電アクチュエータ172は、簡単に説明すれば、電圧を加えると微少に伸縮する圧電素子を薄い層にして電極を挟んで積層したものであり、電極に電圧を加えることによって、それら積層体が伸縮するような構造のものである。モータ32が失陥した場合には、図示を省略する制御装置によって、圧電アクチュエータ172に電圧が加えられる。それによって、圧電アクチュエータ172は、径方向に伸長して中空ロッド154を締め付け、シリンダ組立体150が伸縮させられる場合において、圧電アクチュエータ172の内周面が中空ロッド154の外周面174に摺接する状態となるのである。シリンダ組立体150の伸縮は、圧電アクチュエータ172と中空ロッド154の外周面174との摺接に対する摩擦抵抗に抗った伸縮となり、その結果、車体の一部と車輪との相対移動に対して、その摩擦抵抗に依拠する減衰力が発生させられることになる。本実施例の懸架シリンダ装置150では、このような摩擦抵抗発生機構170の機能により、モータ32の失陥時においても適切な減衰力が得られるようになっているのである。
以上のような構造から、圧電アクチュエータ172は、アクチュエータであるモータ32の失陥時に、被装着部であるシリンダ152の内壁面に装着され、かつ、摺接面部として機能するロッド154の外周面174と摺接する状態とされ、その状態において中空ロッド154の外周面174との間で摩擦抵抗を発生させる装着摺接体として機能するものとなっている。なお、本懸架シリンダ装置140は、圧電アクチュエータ172が、通常時に外周面174と離間してシリンダ152に装着状態にあり、モータ32の失陥時に、圧電アクチュエータ172が変位して外周面174と摺接されて装着摺接状態となるように構成されている。
10:懸架シリンダ装置 16:マウント部(車体側部材) 20:シリンダ組立体 22:シリンダ(ハウジング) 24:ロッド(雄ねじ部) 26:ナット(雌ねじ部) 32:モータ(アクチュエータ) 60:摩擦抵抗発生機構 70:摺接リング(装着摺接体) 74:シリンダ内周面(摺接面部) 78:小径部(被装着部) 100:懸架シリンダ装置 104:シリンダ組立体 106:摩擦抵抗発生機構 110:ロッド(雄ねじ部) 112:摺接フランジ(装着摺接体) 140:懸架シリンダ装置 150:シリンダ組立体 152:シリンダ(ハウジング) 154:中空ロッド 160:ナット(雌ねじ部) 162:雄ねじ部材 170:摩擦抵抗発生装置 172:圧電アクチュエータ(装着摺接体) 174:ロッド外周面(摺接面部)
Claims (9)
- (A)一端部である連結端部において車体の一部を構成する車体側部材と車輪を保持する車輪側部材との一方に連結された筒状のハウジングと、(B)そのハウジング内にそのハウジングと軸方向に相対移動可能に配設され、一端部がそのハウジングの前記連結端部とは反対側の端部より突出して前記車体側部材と前記車輪側部材との他方に連結されたロッドと、(C)一方が前記ハウジングに軸方向に移動不能に設けられ他方が前記ロッドに軸方向に移動不能に設けられて互いに螺合し、前記ハウジングと前記ロッドとの軸方向の相対移動に伴って相対回転する雄ねじ部および雌ねじ部とを含んで構成され、車体の一部と車輪との相対移動に伴って伸縮するシリンダ組立体と、
前記雄ねじ部と前記雌ねじ部とに相対回転トルクを加えて前記シリンダ組立体の伸縮に対する抵抗を付与するアクチュエータと、
そのアクチュエータの失陥時において、前記シリンダ組立体の伸縮に対する摩擦抵抗を発生させる摩擦抵抗発生機構と
を備えた懸架シリンダ装置。 - 前記アクチュエータが電動モータである請求項1に記載の懸架シリンダ装置。
- 前記摩擦抵抗発生機構が、発生する摩擦抵抗の大きさが前記シリンダ組立体の伸縮位置によって変化する構造とされた請求項1または請求項2に記載の懸架シリンダ装置。
- 前記摩擦抵抗発生機構が、
前記アクチュエータの失陥時において、前記ハウジングと前記ロッドとの一方に設けられた被装着部において軸方向に移動不能に装着された状態かつ前記ハウジングと前記ロッドとの他方に設けられた摺接面部に摺接する状態とされて、前記摺接面部との間で摩擦抵抗を発生させる装着摺接体を含んで構成された請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の懸架シリンダ装置。 - 前記装着摺接体が、前記シリンダ組立体の通常時の伸縮範囲においては前記被装着部が到達しない位置である通常時非到達位置に配設され、前記アクチュエータの失陥時において、前記ハウジングと前記ロッドとが相対移動させられて前記被装着部が前記通常時非到達位置に到達した際に前記被装着部に装着されるようにされた請求項4に記載の懸架シリンダ装置。
- 前記装着摺接体が、前記摺接面部と離間して配設され、前記アクチュエータの失陥時において、少なくとも一部分が変位して前記摺接面部と摺接するようにされた請求項4または請求項5に記載の懸架シリンダ装置。
- 前記装着摺接体が、前記摺接面部と摺接する状態において、軸線回りに回転可能な状態で前記被装着部に装着されるものである請求項4ないし請求項6のいずれかに記載の懸架シリンダ装置。
- 前記摺接面部が、発生する摩擦抵抗の大きさが前記装着摺接体の摺接位置によって変化する構造とされた請求項4ないし請求項7のいずれかに記載の懸架シリンダ装置。
- 前記摺接面部が、前記被装着部との離間距離がその被装着部が位置させられる軸方向における位置によって変化する形状の面を有することで、発生する摩擦抵抗の大きさが前記装着摺接体の摺接位置によって変化する構造とされた請求項8に記載の懸架シリンダ装置。
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- 2005-01-27 JP JP2005019183A patent/JP2006205851A/ja not_active Withdrawn
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