JP2006200590A - 液体封入式防振マウント装置 - Google Patents

液体封入式防振マウント装置 Download PDF

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Abstract

【課題】 自動車のエンジンマウントAなどに好適な液体封入式の防振マウント装置において、変速時の振動やシェーク、アイドル振動などの比較的低周波の振動を従来までと同様に吸収、減衰できるようにしながら、同時に、こもり音などの原因になる高周波の振動を従来よりも高い周波数域まで効果的に吸収できるようにする。
【解決手段】 エンジンマウントAの液室Fを受圧室f1と平衡室f2とに仕切る仕切部材4に、これを貫通するように第2オリフィス通路P2を形成する。この通路P2の平衡室f2側の開口部に対向するようにダイヤフラム5に筒状部51を一体成形して、その先端に外装したゴム製キャップ9の天井部(蓋部91)により、第2オリフィス通路P2の開口部を開閉できるようにする。このキャップ9により先端開口を閉じることで、筒状部51内に副液室f3を区画形成し、この副液室f3をその外部の平衡室f2と連通する連通路を、第3のオリフィス通路P3として機能させる。
【選択図】 図1

Description

本発明は、内部に形成した複数の液室間の連通路(オリフィス通路)を流れる液体の流動抵抗によって、振動を減衰させるようにした液体封入式の防振マウント装置に関し、特に、複数のオリフィス通路を切替えることによって、広い周波数帯域に亘り効果的な防振作用を得るようにした切替式のものの構造の技術分野に属する。
従来より、この種の防振マウント装置としては自動車用のエンジンマウントが知られている。その基本的な構造は、エンジン側の取付部材と車体側の支持部材との間にゴム弾性体を介設し、このゴム弾性体の変形に伴い容積が変化するように両部材間に液室を形成するとともに、この液室を受圧室及び平衡室に仕切り、さらに、それら受圧室及び平衡室を連通するオリフィス通路を設けたものである。そして、そのオリフィス通路を介して受圧室及び平衡室の間を液体が流動することにより、エンジンからの振動が吸収、減衰されるようになっている。
ところで、一般に自動車用のエンジンは非常に広い運転状態で使用されることから、エンジンマウントは、周波数や振幅の異なる複数種類の振動入力に対してそれぞれ防振効果が求められるものであるが、前記の如くオリフィス通路における液体の流動によって吸収、減衰される振動の周波数は、そのオリフィス通路の断面積や長さによって概ね決まってしまうので、1つのオリフィス通路だけでは前記複数種類の振動入力に対して十分な防振効果は得られない。
この点につき、例えば特許文献1〜3には、互いに断面積や長さの異なる複数の通路をそれぞれ受圧室及び平衡室を連通するように設けて、これらの通路をエンジンの運転状態に応じて切替えるようにしたものが開示されている。すなわち、特許文献1に開示される液体封入式マウントは、第1液室(受圧室)と第2液室(平衡室)とを仕切る仕切板に対し、エンジン始動時の振動や変速時のガクガク振動、或いはシェークなどの低周波(5〜15Hzくらい)で大振幅の振動にチューニングした流動抵抗の大きなオリフィス通路を螺旋状に設けるとともに、これよりも流動抵抗の小さな通孔を形成して、この通孔を平衡室のダイヤフラムに一体成形した弁部によって、開閉するようにしている。
より具体的に、例えばエンジンのアイドル運転時には弁部を開いて通孔を開放し、この通孔を介して液体を受圧室及び平衡室の間で流通させることにより、マウントの動ばねを低下させて、アイドル振動のように比較的周波数が低く(20〜40Hzくらい)且つ振幅の小さな振動を効果的に吸収するようにしている。一方、アイドル運転時以外は弁部により通孔を閉じるようにしており、この状態で前記低周波大振幅の振動が入力すると、前記通孔が閉じているので、液体はオリフィス通路を介して受圧室及び平衡室の間を流動するようになり、その流動抵抗によって効果的な振動減衰が図られる。
さらに、前記特許文献1のものでは、前記弁部の内周側がサブダイヤフラムとして機能するようになっており、この弁部によって前記のように通孔が閉じられた状態で、エンジンから微小振幅の高周波振動が入力すると、これによる受圧室の液圧変化がサブダイヤフラムの反復的な弾性変形により吸収され、このことで、自動車の車室内におけるこもり音を低減することができる。
同様に、前記特許文献2、3にそれぞれ開示される液封防振装置は、主液室(受圧室)と副液室(平衡室)とを仕切る仕切り部材に、エンジンのアイドル振動にチューニングしたアイドルオリフィス通路(第2オリフィス通路)と、それよりも低周波で振幅の大きな振動にチューニングしたダンピングオリフィス通路(第2オリフィス通路)とを設け、そのアイドルオリフィス通路の副液室側における開口を、当該副液室を区画するダイヤフラムの中央部に形成した厚肉の着座部によって開閉するようにしている。
特に、前記特許文献2に記載のものでは、前記着座部を厚肉に形成するとともに、その上下両面を凹ませて中央に薄肉部を形成し、この薄肉部の変形によって主液室の内圧変動を吸収するようにしており、一方、前記特許文献2に記載のものでは、仕切り部材の外周部を弾性部材を介してフローティング支持し、この仕切り部材全体の移動によって主液室の内圧変動を吸収するようにしている。そのように主液室の内圧変動を吸収することで、エンジン始動時などの主液室の内圧変動に起因する異音の発生を防止することができる。
特開平8−277879号公報 特開2003−4086号公報 特開2003−4091号公報
ところが、前記のような従来までの防振マウント装置は、エンジンのシェークやアイドル振動などの比較的低周波の振動についてはかなり効果が高いものの、こもり音の原因となる比較的高周波の振動については、あまり有効なものではなかった。すなわち、前記前者の従来例(特許文献1)のエンジンマウントは、平衡室を区画するダイヤフラムの一部分によって通孔を閉ざし、その部分を高周波振動による液圧変動を吸収するための弾性膜として利用するようにしているが、この弾性膜は通孔と反対の面が大気と接しているため、低周波大振幅の振動入力による受圧室の大きな液圧変動が作用したときには過大な変形を生じやすく、その耐久性が大幅に低下するとともに、早期破損に至る虞れもある。
そこで、大きな液圧変動を受けても簡単には破損せず、また、耐久性を維持できるようにするために、前記弾性膜を比較的厚肉で柔らかく、大きな弾性変形が可能なものとすると、このような弾性膜の固有振動数があまり高くはならないので、自動車の室内騒音でいえば、せいぜい100Hz程度までの所謂低中速こもり音に相当する振動を低減することはできても、より高い周波数域の振動を効果的に低減することはできないものとなる。
また、前記のように低周波大振幅の振動が入力したときに弾性膜が大きく変形すると、そのことによって受圧室の液圧変動が吸収されてしまうので、その分、オリフィス通路における液体の流通量が減少し、その流動抵抗による振動の吸収、減衰作用に悪い影響を及ぼすことにもなる。
一方、前記後者の従来例(特許文献2、3)には、エンジンからの高周波の振動を吸収乃至減衰するための具体的な構造は何ら開示されていない。尚、一般に、高周波の振動を吸収するために、受圧室に所謂高周波デバイスを配置することは知られているが、この高周波デバイスは、受圧室に配置した傘部材とこれを囲むゴム弾性体の壁の内面との間の隙間をオリフィス通路に見立てたものであり、この隙間の大きさがゴム弾性体の寸法や傘部材の組み付けの誤差などによって本来、大きな誤差を含むことから、狙い通りの周波数域にチューニングすることは非常に難しいという欠点を包含している。
本発明は、斯かる諸点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、自動車のエンジンマウントなどに好適な液体封入式の防振マウント装置において、変速時の振動やシェーク、アイドル振動などの比較的低周波の振動を従来までと同様に吸収、減衰しながら、同時に、こもり音などの原因になる高周波の振動を従来よりも高い周波数域まで効果的に吸収、減衰できるようにすることにある。
前記の目的を達成するために、本発明では、弾性膜からなる蓋部材を防振マウント装置の平衡室に配設して、これによりオリフィス通路の平衡室側の開口部を開閉するようにし、そうして開口部を閉じたときにも当該蓋部材の両面が液体に接している状態になるようにした。
具体的に、請求項1の発明は、被支持体に取り付けられる取付部材と、これをゴム弾性体を介して支持する支持部材と、そのゴム弾性体の変形に伴い容積が変化するように前記両部材間に形成された液室と、この液室を受圧室及び平衡室に仕切る仕切部材と、それら受圧室及び平衡室を連通する第1オリフィス通路と、を備えた液体封入式の防振マウント装置を対象として、前記仕切部材を貫通して前記受圧室及び平衡室を連通する第2オリフィス通路を設けるとともに、この第2オリフィス通路の平衡室側の開口部を開閉可能な弾性膜からなる蓋部材を、その両面が液体に接する状態で前記平衡室内に配置した。
前記の構成により、まず、第2オリフィス通路の平衡室側の開口部が蓋部材によって閉じられている場合、防振マウント装置に低周波で大振幅の振動が入力して取付部材と支持部材とが比較的大きく相対変位するときには、ゴム弾性体の変形に伴い受圧室の容積が変化して、これによる液圧の変動によって平衡室との間の第1オリフィス通路を液体が流動し、この液体の流動抵抗によって振動が吸収、減衰されるようになる。
その際、前記受圧室の液圧変動は第2オリフィス通路を介して蓋部材にも作用することになるが、この蓋部材が平衡室内に配置されていて、その両面が液体に接していることから、前記のように低周波大振幅の振動による大きな液圧変動が作用しても、平衡室側の液体が緩衝液となって蓋部材に過大な変形を生じることはない。よって、弾性膜からなる蓋部材の過大な変形による耐久性の低下や早期破損を防止できるとともに、その変形が前記第1オリフィス通路による振動の吸収、減衰作用に大きな悪影響を及ぼすこともない。
また、前記のように第2オリフィス通路の平衡室側の開口が蓋部材によって閉じられている状態で、高周波振動の入力によって受圧室の容積が短い周期で微小変化するときには、この微小な容積変化、即ち高周波の振動は、弾性膜からなる蓋部材の微小な弾性変形によって効果的に吸収される。
すなわち、上述したように蓋部材を液中に配置することで、その変形を抑制できることから、この蓋部材のばね特性は比較的自由に設定することができ、例えば従来例と比較して薄肉のものとしても、その耐久性の低下や早期破損を招くことがない。そこで、当該蓋部材のばね特性を従来よりも高い周波数域にチューニングして、こもり音の原因となる比較的高周波の振動をより高い周波数域まで効果的に吸収することが可能になる。
一方、前記第2オリフィス通路が開放されている場合には、この第2オリフィス通路を通って液体が受圧室と平衡室との間を流れるようになるので、この第2オリフィス通路の寸法を、前記の如く第1オリフィス通路によって効果的に吸収、減衰される低周波大振幅の振動と、蓋部材の弾性変形によって吸収される高周波振動との中間の周波数域にチューニングしておけば、この中間の周波数域の振動も効果的に吸収、減衰することができる。
つまり、前記構成の防振マウント装置によれば、比較的低周波の振動を第1及び第2オリフィス通路における液体の流動によって吸収、減衰できるとともに、弾性膜からなる蓋部材の弾性変形によって比較的高周波の振動も従来より高い周波数域まで効果的に吸収できるようになる。
前記構成の防振マウント装置において、平衡室には、蓋部材と一体となって該平衡室内に副液室を区画形成する液室形成部材を配設するとともに、この液室形成部材には副液室の内部を外部の平衡室と連通する連通路を形成することが好ましい(請求項2の発明)。
この構成では、第2オリフィス通路の平衡室側の開口が蓋部材によって閉じられている状態で、高周波振動の入力により受圧室の容積が短い周期で微小変化するときに、これによる液圧変動を受けて蓋部材が弾性変形することにより、副液室の容積が微小変化して、平衡室との間の連通路を液体が微少量、流動するようになり、その液体の流動抵抗によって振動が吸収、減衰されることになる。
そこで、前記副液室及び平衡室の間の連通路を第3のオリフィス通路と考えて、例えば自動車の室内騒音で言えば約300〜500Hz程度の所謂高速こもり音に相当する周波数域にチューニングしておけば、このような高周波の振動をより効果的に吸収、減衰することができる。
そのような防振マウント装置のより具体的な構成として、好ましいのは、平衡室を区画するダイヤフラムに仕切部材に向かって平衡室内を延びる有底の筒状部を一体成形して、この筒状部の先端開口を蓋部材によって閉じることにより副液室を区画形成するとともに、その筒状部の周壁部を貫通するように連通路を形成し、さらに、その筒状部の底部乃至周壁部の少なくとも一部分に補強部材を埋設することである(請求項3の発明)。
この構成では、蓋部材とともに平衡室内に副液室を区画する筒状部(液室形成部材)をダイヤフラムに一体成形することで、コストの低減が図られるとともに、その結果として弾性体により形成される筒状部の周壁部や底部を補強部材により補強して、液圧による変形を抑えることにより、当該副液室の容積が微小変化するときに平衡室との間の連通路における液体の流動を安定的に確保して、その流動抵抗による振動の吸収、減衰作用をより確実に得ることができる。
また、前記構成の防振マウント装置を自動車のエンジンマウントとして用いる場合、即ち、被支持体が自動車用エンジンである場合に、好ましいのは、当該防振マウント装置のダイヤフラムにおける筒状部と反対の側に、弾性体からなり当該ダイヤフラムに向かって膨出する椀状の部材を予圧縮状態で配設して、その復元力により前記筒状部を仕切部材に向かい押圧付勢するとともに、その椀状部材の内周側には前記エンジンの吸気負圧が導かれる負圧室を区画することである(請求項4の発明)。
こうすれば、エンジンのアイドル運転時など吸気負圧の大きなときに、この大きな負圧が負圧室に導かれることによって椀状部材が収縮し、ダイヤフラムの筒状部が仕切部材から離れる側に移動して、第2オリフィス通路が開かれる。これにより、上述したように、低周波で比較的振幅の小さなアイドル振動が効果的に吸収、減衰されるようになる。
一方、アイドル運転時以外はエンジンの吸気負圧はあまり大きくはないので、前記予圧縮状態の腕状部材の復元力によって、ダイヤフラムの筒状部が仕切部材に向かい押圧付勢されるようになり、その筒状部先端の蓋部材によって第2オリフィス通路が閉じられる。これにより、上述したように変速時の振動やシェークなどの低周波大振幅の振動が効果的に吸収、減衰されるとともに、高周波振動も効果的に吸収されて、車室内のこもり音が中低速域から高速域に亘り効果的に低減されるようになる。
加えて、前記構成の防振マウント装置においては、ダイヤフラム及び椀状の弾性体に、それぞれ、互いに係合するように係合部を形成することが好ましく(請求項5の発明)、こうすれば、両者間の位置ずれが防止されることで、前記した発明の作用がより確実に得られることになる。
以上、説明したように、本発明に係る液体封入式の防振マウント装置によると、受圧室と平衡室との間の仕切部材を貫通するオリフィス通路の平衡室側の開口部を、該平衡室に配設した弾性膜からなる蓋部材によって開閉するようにし、そうして開口部を閉じたときに蓋部材の両面が液体に接するようにしたので、例えばエンジンマウントに適用した場合に、エンジン始動時の振動やシェーク或いはアイドル振動などの比較的低周波で大振幅の振動が入力したときでも、前記蓋部材に過大な変形を生じることがなく、このような低周波大振幅の振動を効果的に吸収、減衰できるとともに、エンジンからの高周波の振動は、前記蓋部材の弾性変形によって従来よりも高い周波数域まで効果的に吸収できるようになり、これにより、車室内の高速こもり音も十分に軽減するとができる。
特に請求項2の発明では、平衡室に配設した液室形成部材と蓋部材とによって、該平衡室内に副液室を区画形成し、この副液室内を外部の平衡室と連通する連通路を第3のオリフィス通路として利用することで、所謂高速こもり音の原因となる高周波の振動をさらに効果的に吸収、減衰することができる。
また、請求項3の発明によれば、液室形成部材を筒状部としてダイヤフラムに一体成形することで、コストの低減を図りつつ、その筒状部を適切に補強することで、前記請求項2の発明の効果がより確実に得られるようになる。
さらに、請求項4の発明によれば、エンジンの吸気負圧を利用して、アイドル運転時とそれ以外とで防振マウント装置の特性を適切に切替えることができる。
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
図1は、本発明の液体封入式防振マウント装置を自動車用エンジンマウントAに適用した実施形態を示し、このエンジンマウントAは、図示しない自動車のパワープラントと車体との間に介在されて、そのパワープラントの荷重を支えるとともに、当該パワープラントからの振動を吸収し或いは減衰させて、車体への振動伝達を抑制するものである。
この実施形態のエンジンマウントAは、図示しないブラケットなどを介してパワープラントに取り付けられる概略円柱状の金属製取付部材1と、これをゴム弾性体2を介して下方外周側から支持する円筒状の金属製ケーシング3(支持部材)とを備え、このケーシング3の下側外周に溶接された脚部33,33,…によって車体フレームに固定されるようになっている。
前記取付部材1は、上下方向の中間部に外側に張り出したつば部11を有し、それよりも下側が下方に向かってすぼんだテーパ状とされている。一方、取付部材1の上部にはパワープラント側のブラケットが取り付けられるようになっており、そのための締結ボルトが螺入されるボルト穴12が上端面に開口している。また、前記つば部11には、後述のストッパ金具8等と協働してパワープラントの過大な変位を規制するためのストッパゴム13,14が被覆形成されている。
前記ゴム弾性体2は、その上部が前記取付部材1の下側のテーパ状部を覆って加硫接着され、そこから放射状に拡がりながら斜め下に向かって延びる厚肉の傘状部21と、この傘状部21の下端に連続して下方に延びる円筒部22とからなり、この円筒部22がケーシング3の内周に固定されている。すなわち、ケーシング3は、内周側の内筒部材31と外周側の外筒部材32とからなる二重構造のものであり、その内筒部材31がゴム弾性体2の円筒部22に埋め込まれて一体化され、さらにこの円筒部22が外筒部材32の内周側に嵌合されている。
また、前記ゴム弾性体2の円筒部22は、その下側の内径が上側よりも大きくなっていて、それらの境界に環状の段部23が形成されている。そして、その段部23を受け部として、ゴム弾性体2の円筒部22内周に下方から樹脂製の仕切部材4が押し込まれて収容され、さらにその仕切部材4を下方から覆うようにして、ゴム製のダイヤフラム5が配設されている。このダイヤフラム5の外周部には環状の金属製補強板が埋設されていて、この補強された部位が、ケーシング3の内筒部材31の下端縁部に内向きに形成されたフランジによって下方からかしめられて、固定されている。
そうして前記ダイヤフラム5によってゴム弾性体2の下端開口部が液密に閉塞されて、内部に空洞部が形成されており、この空洞部にはエチレングリコール等の液体が封入されて、ゴム弾性体2に入力するパワープラントの振動を吸収、緩和するための液室Fとなっている。この液室Fの内部は前記仕切部材4によって上下に仕切られていて、その上側が、振動入力によるゴム弾性体2の変形に伴い容積が変化して、液圧が変動する受圧室f1になり、また液室Fの下側は、ダイヤフラム5の変形によって容積が拡大又は縮小されて、前記受圧室f1の容積変動を吸収する平衡室f2になる。
前記のようにダイヤフラム5がケーシング3の内筒部材31の下端部に固定されている一方で、該ケーシング3の外筒部材32はさらに下方まで延びており、その下端の開口を閉じるようにして、扁平な中空円錐台状のゴム製椀状部材6と樹脂製の円板部材7とが順に取り付けられている。すなわち、前記椀状部材6はダイヤフラム5の下側にお椀を伏せたような状態で配設されていて、その下側の開口が円板部材7によって閉じられている。
より詳しくは、前記椀状部材6は、円板状の天井部61が上方のダイヤフラム5に接する一方、その天井部61の外周端から下方に向かって外周側に傾斜して延びる周壁部62の下端、即ち椀状部材6の外周端において、前記円板部材7の外周端部とともにケーシング3下端の金属製ブラケット34に固定されている。このブラケット34は、例えば鋼製パイプを絞り成型してなる円筒状のものであり、その上側の部位がケーシング外筒部材32に圧入されている。
また、前記ブラケット34は、その下側の部位が上側よりも大径とされて、両者の境界に環状の段部が形成されており、その段部を受け部として、前記椀状部材6及び円板部材7が順番に下方から収容され、その椀状部材6の外周端部が下方に折り曲げられて円板部材7の外周端部を挟み込んだ状態で、ブラケット34の下端縁部に内向きに形成されたフランジによって下方からかしめられている。
一方、前記ケーシング3の上端部には、その外筒部材32よりもやや小径の円筒形状を有するストッパ金具8が取り付けられている。このストッパ金具8の下端の開口周縁部には外側に張り出したフランジが形成され、このフランジがゴム弾性体2の円筒部22の上端に載置されて、前記外筒部材32の上端縁部に内向きに形成されたフランジによって上方からかしめられている。
前記ストッパ金具8の上端の開口周縁部には、取付部材1を取り囲むように略水平に内側に向かって延びる環状の壁部81が形成されており、この環状壁部81の下面が取付部材1のつば部11上面のストッパゴム13に当接することによって、該取付部材1の上方への移動を規制するようになっている。また、環状壁部81の上面には、図示しないパワープラント側のマウントブラケットに当接するように環状のストッパゴム15が加硫接着されている。
尚、図1においては、エンジンマウントAにパワープラントの静荷重が作用していない状態を示しており、取付部材1のつば部11上面のストッパゴム13がストッパ金具8の環状壁部81の下面に接触しているが、エンジンマウントAが自動車の車体に取り付けられてパワープラントを支持し、その静荷重が加わる1G状態では、図示しないが、ゴム弾性体2が撓んで取付部材1が下方に変位するので、前記ストッパゴム13とストッパ金具8との間には所定の隙間が形成されることになる。
(液室Fの詳細構造)
次に、前記エンジンマウントAにおいて、パワープラントからの振動を液体の流動により吸収し、また減衰させるための液室Fの構造について詳細に説明する。この実施形態では、上述の如く液室Fを受圧室f1及び平衡室f2に仕切る仕切部材4が、図2にも示すように全体としては厚みの大きな円盤状に形成されており、前記両室f1,f2を仕切るための円板形状の仕切板部41と、その下側の外周側の部位に以下のようにオリフィス通路を形成するための環状の通路形成部42とからなる。
すなわち、前記通路形成部42の外周には周方向に延びる開口溝43が設けられており、図1に示すようにゴム弾性体2の円筒部22内に収容された状態で、該円筒部22の内周面と前記開口溝43とによって環状の通路P1(以下、第1オリフィスという)が形成されるようになっている。この第1オリフィス通路P1の一端は、前記仕切板部41の上面に開口する開口部41aを介して受圧室f1に連通しており、一方、他端は、図示しないが、通路形成部42の内周面に開口して、平衡室f2を臨んでいる。
そして、前記第1オリフィス通路P1の寸法(断面積及び長さ)は、例えばエンジン始動時の振動や変速時に発生するガクガク振動、或いは走行中のシェークなど、アイドル振動よりも低周波(例えば5〜15Hz)で振幅の大きな振動に合わせてチューニングされており、このような低周波大振幅の振動によって液柱共振を生じるようになっている。
また、前記仕切部材4の仕切板部41の上面の略中央部から上方の受圧室f1に向かって延びるように円筒状の突出部44が形成されており、この突出部44内の通路が仕切板部41を貫通して、その下端開口部が平衡室f2を臨んでいる。その通路によって、仕切板部41を貫通して受圧室f1及び平衡室f2を連通する第2のオリフィス通路P2が形成されており、この第2オリフィス通路P2は、エンジンのアイドル振動にチューニングされて、比較的低周波(例えば20〜40Hz)であまり振幅の大きくない振動の入力によって液柱共振を生じるようになっている。
そして、そのようにして仕切板部41の下面に開口する第2オリフィス通路P2の下端開口部に対向して、その下方のダイヤフラム5の中央部には、上方に向かい突出する有底の筒状部51が形成され、この筒状部51の先端側から略全体を覆うようにして、ゴム弾性体からなるキャップ9が外装されている。このキャップ9とダイヤフラム5の筒状部51とは一体に上下に移動して、当該キャップ9の天井部91により前記第2オリフィス通路P2の下端開口部(平衡室f2側の開口部)を開閉するようになっている。
すなわち、前記キャップ9は、その内径がダイヤフラム5の筒状部51の外径よりもやや小さな有底の筒状に形成され、その底部が天井部91となるように反転してダイヤフラム5の筒状部51に外装されている。その筒状部51の外周の先端側には拡径部が設けられ、一方、前記キャップ9の内周の奥側にも対応する大きさの拡径部が設けられており、それらが嵌合することによって、キャップ9と筒状部51とが一体的に組み付けられるようになっている。
そして、通常は、図1に示すように前記キャップ9の天井部91によって第2オリフィス通路P2の下端開口部が閉じられており、後述の如くキャップ9が筒状部51とともに下方に移動することにより(図3参照)、前記開口部が開放されることになる。言い換えると、キャップ9の天井部91は、第2オリフィス通路P2の平衡室f2側の開口部を開閉可能に該平衡室f2内に配置された弾性膜からなる蓋部材である(以下、キャップ9の天井部を蓋部91と言い換えるものとする)。尚、図の例では、前記第2オリフィス通路P2の開口部の周縁を囲むように環状のリブを設けているが、このリブは設けなくてもよい。
前記のようにキャップ9がダイヤフラム5の筒状部51に外装された状態では、その筒状部51の先端開口をキャップ9の蓋部91が閉じていて、それらの内部に空洞部が形成されるとともに、それらキャップ9及び筒状部51の互いに重ね合わされる各周壁部にはそれぞれ矩形状の切り欠き92,52が形成されていて、これにより前記空洞部が外部の平衡室f2に連通されるようになっている。こうして前記キャップ9とダイヤフラム5の筒状部51とが一体となって平衡室f1内に副液室f3を区画形成しており、そのキャップ9の蓋部91の下面は、副液室f3内を臨んで液体に接する状態になっている。
また、前記のように副液室f3をその外部の平衡室f2と連通する矩形断面の通路が、エンジンからの高周波振動を吸収し、減衰させるための第3のオリフィス通路P3として機能するようになる。すなわち、前記第3オリフィス通路P3の寸法(断面積及び長さ)は、自動車の車室において所謂高速こもり音を発生させるような高周波域(例えば300〜500Hz)の微小振動に合わせてチューニングされており、このような高周波の微小振動を液体の流動抵抗により効果的に吸収し、減衰させることができる。
さらに、そのように副液室f3と外部の平衡室f2との間の通路を第3オリフィス通路P3として効果的に機能させるために、その第3オリフィス通路P3の形成部位を除いた筒状部51の周壁部から底部に亘って、副液室f3を囲むようにして金属製補強板53(図1にのみ示す)が埋設されている。こうして副液室f3を囲む筒状部51の周壁部及び底部の剛性を高めることで、前記の如き高周波振動の入力に伴いキャップ9の蓋部91が弾性変形して、副液室f3の容積が変化するときに、第3オリフィス通路P3における液体の流動を安定的に確保することができる。
一方、前記筒状部51とは反対側のダイヤフラム5の中央部下面には、上述したように椀状部材6の天井部61が接しており、この天井部61の上面には、その略中央部から上方に向かって突出する凸部63が形成されていて、これがダイヤフラム5の下面中央部に形成された凹部54と係合している。その凸部63の先端部には拡径部が設けられる一方、前記凹部54の奥側にも対応する大きさの拡径部が設けられており、それらが嵌合することによって両者が強く係合するようになっている。
また、前記椀状部材6の天井部61には金属製補強板が埋設されて、その弾性変形を規制するようになっており、椀状部材6は、その周壁部62が径方向に拡がったり、すぼまったりすることで、天井部61が上下方向に比較的容易に変位するようになる。そして、図1に示すようにダイヤフラム5の下側に隣接して配設された状態で、前記椀状部材6は、上方のダイヤフラム5及び下方の円板部材7に挟まれて上下方向に予圧縮された状態になっており、それ自体の復元力(ゴムの弾性)によって該ダイヤフラム5を仕切部材4に向かい押圧付勢している。
前記椀状部材6の下側開口を閉じる円板部材7は、例えば射出成形により製作したものであり、その上面には上方に対向する椀状部材6の天井部外周に対応する部位に円環状のリブ71が突設されるとともに、そのリブ71の内周側において円形のボス部72が突設されている。このボス部72は、以下に説明するように椀状部材6の天井部が下方に変位したときに、これを受け止めるストッパとして機能するものである。
また、前記円板部材7の中心部には、そのボス部72の裏側で下方に向かって延びるように筒部73が形成され、この筒部73内の通路が円板部材7の略中心部を貫通して、ボス部72の上面に開口している。そして、その筒部72の下端側に接続されているバキュームホース(仮想線で端部を示す)内の通路により、前記椀状部材6及び円板部材7により囲まれた空間がエンジンの吸気通路に連通されている。換言すれば、前記椀状部材6の内周側にはエンジンの吸気負圧が導かれる負圧室Vが、円板部材7によって区画形成されている。
このことで、エンジンのアイドル運転時のように吸気負圧が大きいときには、これがバキュームホースを介して前記負圧室Vに作用することにより、椀状部材6がそれ自体の弾性力に抗して収縮する。すなわち、椀状部材6は、その周壁部62全体が径方向に拡がるように弾性変形するとともに、その天井部61が下方に変位して、これに係合されているダイヤフラム5の筒状部51を下方に変位させる。これにより、図3に示すように、ダイヤフラム5の筒状部51とその先端に外装されたキャップ9とが下方に移動して、そのキャップ9の蓋部91が第2オリフィス通路P2の開口部を開放するようになる。
(作用効果)
次に、上述のように構成されたエンジンマウントAにおいて、エンジンからの振動を吸収し、減衰させる液室Fの作用について、アイドル運転時とそれ以外の状態とで分けて、説明する。
まず、エンジンがアイドル以外の運転状態にあって、吸気負圧があまり大きくないときには、図1に示すように、ダイヤフラム5の筒状部51が椀状部材6から押圧力を受けて仕切部材4に向かい付勢され、その筒状部51の先端に位置するキャップ9の蓋部91が、仕切部材4に形成された第2オリフィス通路P2の平衡室f2側の開口部を覆って、これを閉じるようになる。そして、例えば変速時のガクガク振動や走行中のシェークなどの低周波で振幅の大きな振動がエンジンマウントAに入力して、取付部材1とケーシング3とが比較的大きく相対変位するときには、ゴム弾性体2の変形に伴い受圧室f1の容積が比較的大きく変化し、これによる液圧の変動によって当該受圧室f1と平衡室f2との間の第1オリフィス通路P1を液体が流動するようになる。
ここで、前記第1オリフィス通路P1は、上述したように、前記変速時の振動やシェークなどに合わせてチューニングされていて、それらの振動入力に対応して液柱共振を生じるようになっているので、図4に一例を示すように、例えば±0.5mmくらいの比較的大きな振幅の振動入力に対して、エンジンマウントAは、図の例では約10Hz付近をピークとして動ばね定数Kdが低く、且つ損失係数tanδの大きな防振特性を示し、これにより、変速時の振動やシェークなどの比較的振幅の大きな振動が良好に吸収、減衰されて、乗り心地の向上が図られる。
その際、前記受圧室f1の液圧変動は、前記第2オリフィス通路P2を介して、これを閉じているキャップ9の蓋部91にも作用することになるが、この蓋部91は平衡室f2内に配置されていて、その両面が液体に接していることから、前記のように低周波大振幅の振動入力による大きな液圧変動が作用しても、平衡室f2側の液体が緩衝液となって蓋部91に過大な変形を生じることはない。よって、弾性膜からなる蓋部91の過大な変形によるキャップ9の耐久性の低下や早期破損を招くことがなく、しかも、その蓋部91の変形が前記第1オリフィス通路P1による振動の吸収、減衰作用に大きな悪影響を及ぼすこともない。
また、前記のように第2オリフィス通路P2の平衡室f2側の開口部がキャップ9の蓋部91によって閉じられている状態で、例えばエンジンの高回転運転などによる高周波の微小振動が入力し、受圧室f1の容積が極めて短い周期で微小変化するときには、この微小な容積変化、即ち高周波の振動は、弾性膜からなる前記蓋部91の微小な弾性変形によって効果的に吸収される。
ここで、この実施形態では、上述したようにキャップ9の蓋部91がその両面を液体に接するように配置することで、その変形を抑えて耐久性の低下や早期破損を防止できるので、その蓋部91のばね特性は比較的自由に設定することができる。そのため、該蓋部材91のばね特性を従来よりも高い周波数域にチューニングすることで、車室内のこもり音の原因となる比較的高周波の振動をより高い周波数域まで吸収することができる。
その上さらに、この実施形態では、前記キャップ9をダイヤフラム5の筒状部51に被せて、その内部に副液室f3を形成し、この副液室f3内を外部の平衡室f2と連通する第3のオリフィス通路P3を設けて、これにより高周波の振動をより効果的に吸収、減衰できるようにしている。すなわち、前記のようにキャップ9の蓋部91によって第2オリフィス通路P2を閉じている状態で、高周波振動の入力により受圧室f1の容積が短い周期で微小変化するときには、これによる液圧変動を受けて蓋部91が弾性変形して副液室f3の容積が変化し、平衡室f2との間の第3オリフィス通路P3を液体が微少量、流動して、その流動抵抗により振動が吸収、減衰されるようになる。
図5は、例えば±0.05mmくらいの微小振幅の振動入力に対して、エンジンマウントAの動ばね定数Kdが従来(例えば特許文献1と同様の構成のもの:仮想線で示す)までと比べて低くなっている様子を示すイメージ図である。この実施形態では、前記の如く蓋部91のばね特性を従来よりも高い周波数域に合わせてチューニングすることで、動ばねが約80Hz以上の高周波域で低くなっており、しかも、前記第3オリフィス通路P3において液体の共振を生じる特定の周波数域(図の例では400〜600Hzくらい)では動ばねが顕著に低下している。この動ばねのボトムをエンジンの振動特性に応じて実験的に最適な範囲に設定すれば、高周波振動を狙い通りに極めて効果的に吸収することができ、これにより、車室内のこもり音をさらに効果的に軽減できる。
一方、エンジンのアイドル運転時には、吸気負圧が大きくなり、これがバキュームホースを介して椀状部材6内の負圧室Vに作用すると、この椀状部材6が図3に示すように収縮して、その天井部61が下方に変位し、これによりダイヤフラム5の筒状部51がキャップ9と一体に下方へ移動する。これにより、その筒状部51の先端に位置するキャップ9の蓋部91が第2オリフィス通路P2の平衡室f2側の開口部を開放する。
そのように第2オリフィス通路P2によって受圧室f1と平衡室f2とが連通された状態でエンジンのアイドル振動が入力し、これにより受圧室f1の容積及び液圧が所定周期で変動するときには、その液圧の変動により第2オリフィス通路P1を介して平衡室f2との間を液体が流動するようになり、これによりアイドル振動が効果的に減衰される。
すなわち、前記第2オリフィス通路P2は、エンジンのアイドル振動に対応して液柱共振を生じるようにチューニングされており、このことで、図6に一例を示すように、例えば振幅が±0.1mmくらいのアイドル振動入力に対して、エンジンマウントAは、約30Hz付近をピークとして動ばね定数Kdが低く、且つ損失係数tanδの大きな防振特性を有するものとなる。このことから、アイドル振動が良好に吸収、減衰されることが分かる。
したがって、この実施形態に係るエンジンマウントA(液体封入式防振マウント装置)によると、例えばエンジン始動時の振動や変速時のガクガク振動、走行中のシェークなどの低周波で大振幅の振動と、これよりもやや周波数が高く振幅の小さなアイドル振動とをいずれも従来までと同様に効果的に吸収し、減衰させて、自動車の乗り心地を向上することができるとともに、エンジンの発生する高周波の振動を従来よりも高い周波数域まで効果的に吸収できるようになり、これにより、車室内のこもり音を、所謂中低速こもり音だけでなく、高速こもり音まで十分に軽減するとができる。
(他の実施形態)
本発明の構成は、前記の実施形態に限定されるものではなく、その他の種々の態様を包含するものである。すなわち、例えば前記の実施形態では、椀状部材6及び円板部材7をブラケット34にかしめて固定した上で、ケーシング3の外筒部材31の下端部に圧入する構造としているが、これに限らず、例えば図7に示すように、外筒部材31の下端部にブラケット34を圧入するとともに、その外筒部材31の下端部とブラケット34下端のフランジとの間に椀状部材6及び円板部材7を挟み込んで、固定する構造としてもよい。
また、前記実施形態では、第3オリフィス通路P3を効果的に機能させるために、ダイヤフラム5の筒状部51の周壁部から底部に亘って金属製補強板53を埋設しているが、このような補強部位は例えば前記図7に示すように周壁部だけとすることもできるし、図示しないが、底部だけを補強するようにしてもよい。
さらに、前記実施形態では、ダイヤフラム5の筒状部51に対し、その周壁部の略全体を覆うようにキャップ9を外装し、これにより第3オリフィス通路P3の長さを確保しやすくしているが、これに限らず、例えば図8に示すように、第3オリフィス通路P3となる部位を除いた突出部51の先端側のみを覆うように、長さの短いキャップ9を使用することもできる。
また、前記実施形態では、平衡室f2内に副液室F3を区画形成するための液室形成部材として、ダイヤフラム5に突出部51を一体成形しており、これによりコストの低減が図られるものであるが、これに限らず、液室形成部材をダイヤフラム5とは別体に例えば樹脂等により形成して、これを平衡室f2内に配置することもできる。
さらにまた、前記実施形態において副液室f3や第3オリフィス通路P3を設けずに、単に第2オリフィス通路P2の平衡室f2側の開口部を開閉するための弾性膜からなる蓋部材を、その両面が液体に接する状態で前記平衡室f2内に配置するようにしてもよい。
加えて、前記の実施形態は、本発明の防振マウント装置を、上方からの圧縮荷重を受ける縦置きのエンジンマウントAに適用しているが、これに限るものではなく、例えば下方への引張り荷重を受ける横置きのエンジンマウントにも適用できることは勿論であり、さらに、本発明をエンジンマウント以外の種々の防振マウント装置にも適用可能であることは言うまでもない。
実施形態に係るエンジンマウントの構造を示す縦断面図である。 液室の仕切部材に対するダイヤフラム、椀状部材、円板部材などの組付け状態を分解して示す斜視図である。 第2オリフィス通路が開いているときの液室の状態を示す断面図である。 低周波大振幅の振動入力に対するマウントの防振特性を示すグラフである。 高周波微小振幅の振動入力に対応する図4相当図である。 アイドル振動の入力に対応する図4相当図である。 外筒部材の下端部とブラケットとの間に椀状部材及び円板部材を挟み込んで固定するようにした他の実施形態に係る図1相当図である。 長さの短いキャップを用いた他の実施形態に係る図2相当図である。
符号の説明
A エンジンマウント(液体封入式防振マウント装置)
F 液室
f1 受圧室
f2 平衡室
f3 副液室
P1 第1オリフィス通路
P2 第2オリフィス通路
P3 第3オリフィス通路(連通路)
V 負圧室
1 取付部材
2 ゴム弾性体
3 ケーシング(支持部材)
4 仕切部材
5 ダイヤフラム
51 筒状部(液室形成部材)
52 凹部
53 金属製補強板(補強部材)
6 椀状部材
7 円板部材
9 キャップ
91 蓋部(蓋部材)

Claims (5)

  1. 被支持体に取り付けられる取付部材と、これをゴム弾性体を介して支持する支持部材と、そのゴム弾性体の変形に伴い容積が変化するように前記両部材間に形成された液室と、この液室を受圧室及び平衡室に仕切る仕切部材と、それら受圧室及び平衡室を連通する第1オリフィス通路と、を備えた液体封入式の防振マウント装置であって、
    前記仕切部材を貫通して、前記受圧室及び平衡室を連通する第2オリフィス通路が設けられ、
    前記第2オリフィス通路の平衡室側の開口部を開閉可能な弾性膜からなる蓋部材が、その両面を液体に接する状態で前記平衡室内に配置されていることを特徴とする液体封入式防振マウント装置。
  2. 請求項1の防振マウント装置において、
    平衡室には、蓋部材と一体となって該平衡室内に副液室を区画形成する液室形成部材が配置され、この液室形成部材には副液室の内部を外部の平衡室と連通する連通路が形成されていることを特徴とする液体封入式防振マウント装置。
  3. 請求項2の防振マウント装置において、
    液室形成部材は、平衡室を区画するダイヤフラムに一体成形されて、そのダイヤフラムから仕切部材に向かって平衡室内を延びる有底の筒状部からなり、
    前記筒状部の先端開口が蓋部材によって閉じられているとともに、その筒状部の周壁部を貫通して連通路が形成され、
    さらに、前記筒状部の底部乃至周壁部の少なくとも一部分に補強部材が埋設されていることを特徴とする液体封入式防振マウント装置。
  4. 請求項3の防振マウント装置において、
    被支持体が自動車用エンジンであり、
    ダイヤフラムにおける筒状部と反対の側には、弾性体からなり当該ダイヤフラムに向かって膨出する椀状の部材が、その復元力によって前記筒状部を仕切部材に向かい押圧付勢するように予圧縮状態で配設され、
    前記椀状部材の内周側には、前記エンジンの吸気負圧が導かれる負圧室が区画されていることを特徴とする液体封入式防振マウント装置。
  5. 請求項4の防振マウント装置において、
    ダイヤフラム及び椀状部材には、互いに係合するように係合部が形成されていることを特徴とする液体封入式防振マウント装置。
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