JP2006199829A - 熱可塑性樹脂組成物及び成形品 - Google Patents

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Abstract

【課題】 帯電防止性及び耐薬品性に優れ、成形品とした場合の表面外観性にも優れた熱可塑性樹脂組成物、並びに、この熱可塑性樹脂組成物からなる成形品を提供する。
【解決手段】 本発明の熱可塑性樹脂組成物は、[A]ゴム質重合体の存在下に、芳香族ビニル化合物を含むビニル系単量体を重合して得られたゴム強化スチレン系樹脂、及び/又は、該ビニル系単量体の(共)重合体4.95〜93.95質量%と、[B]ポリオレフィン系樹脂(但し、下記[C]を除く。)5〜94質量%と、[C]オレフィン重合体ブロックと、親水基を有する重合体ブロックとを含むブロック共重合体1〜50質量%と、[D]ホウ素化合物0.05〜10質量%とを含有(但し、[A]+[B]+[C]+[D]=100質量%である。)する。
【選択図】 図1

Description

本発明は、帯電防止性及び耐薬品性に優れ、成形品とした場合の表面外観性にも優れた熱可塑性樹脂組成物、並びに、この熱可塑性樹脂組成物からなる成形品に関する。
ABS樹脂等のゴム強化スチレン系樹脂は、耐衝撃性、成形性、剛性等の機械的強度等、更には成形品表面外観に優れることから、電気・電子分野、OA・家電分野、車両分野、サニタリー分野等に幅広く使用されている。しかしながら、使用用途によっては、薬品の接触により上記性質が低下する場合、あるいは、帯電のしやすさから静電気障害を引き起こす場合があり、各種添加剤の配合された樹脂組成物として用いられている。例えば、特許文献1、特許文献2及び特許文献3には、ゴム強化スチレン系樹脂と、ポリアミドエラストマーとを含む組成物が開示されている。
一方、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂は、耐薬品性、耐熱性、流動性等に優れることから、上記ゴム強化スチレン系樹脂と同様な分野に広く使用されている。しかしながら、耐衝撃性に劣る、成形品にソリ、ヒケが発生しやすい等の問題に加えて、上記ゴム強化スチレン系樹脂と同様に、帯電しやすいといった問題がある。帯電性を改良する目的とした組成物として、特許文献4、特許文献5には、ポリオレフィン樹脂と、ポリオレフィンのブロック及びポリエーテル等の親水性ポリマーブロックを有するブロック共重合体とを含む組成物が開示されている。
特開昭60−23435号公報 特開平4−309547号公報 特開平2−292353号公報 特開2001−278985号公報 特開2002−284880号公報
近年、表面固有抵抗のより低い樹脂材料が望まれており、本発明は、更に優れた帯電防止性及び耐薬品性を有し、成形品とした場合の表面外観性に優れた熱可塑性樹脂組成物、並びに、この熱可塑性樹脂組成物からなる成形品及び多層成形品を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意検討した結果、ゴム強化スチレン系樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリオレフィンのブロックと、ポリエーテルのブロックとを有するブロック重合体、及び、ホウ素化合物含有帯電防止剤を配合してなる組成物により、帯電防止性、耐薬品性及び表面外観性に優れた成形品が得られることを見出し、本発明の完成に至った。
即ち、本発明の要旨は、以下の通りである。
1.[A]ゴム質重合体の存在下に、芳香族ビニル化合物を含むビニル系単量体を重合して得られたゴム強化スチレン系樹脂、及び/又は、該ビニル系単量体の(共)重合体4.95〜93.95質量%と、[B]ポリオレフィン系樹脂(但し、下記[C]を除く。)5〜94質量%と、[C]オレフィン重合体ブロック及び親水基を有する重合体ブロックを含むブロック共重合体1〜50質量%と、[D]ホウ素化合物0.05〜10質量%とを含有(但し、[A]+[B]+[C]+[D]=100質量%である。)することを特徴とする熱可塑性樹脂組成物。
2.上記ホウ素化合物[D]は、下記式(I)で表される単位を含む上記1に記載の熱可塑性樹脂組成物。
Figure 2006199829
3.更に、相溶化剤を含有し、該相溶化剤の含有量が、上記成分[A]、[B]、[C]及び[D]の合計を100質量部とした場合に、1〜200質量部である上記1又は2に記載の熱可塑性樹脂組成物。
4.上記1乃至3のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物からなることを特徴とする成形品。
5.上記成形品が、シート又はフィルムである上記4に記載の成形品。
6.温度23℃、湿度50%RHの条件における表面固有抵抗が10Ω以下である上記4又は5に記載の成形品。
7.上記1に記載の成分[A]、又は、上記1に記載の成分[B]を含む基層と、該基層の少なくとも1面に配され、且つ、上記1乃至3のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物からなる帯電防止層とを備えることを特徴とする多層成形品。
8.上記多層成形品が、シート又はフィルムである上記7に記載の多層成形品。
9.上記帯電防止層の表面の、温度23℃、湿度50%RHの条件における表面固有抵抗が10Ω以下である上記7又は8に記載の多層成形品。
本発明の熱可塑性樹脂組成物によれば、成分[A]、[B]、[C]及び[D]を、各々、所定量含有することから、更に優れた帯電防止性及び耐薬品性を有し、シート、フィルム等の成形品とした場合の表面外観性にも優れる。
特定の成分[D]を成分[C]と併用する場合には、帯電防止性が更に向上し、所定条件下における表面固有抵抗を10Ω以下とすることができる。
また、相溶化剤を更に含む場合には、表面外観性に更に優れる。
本発明の成形品によれば、シート、フィルム等とした場合においても、長期にわたって、帯電防止性及び表面外観性を維持することができる。
以下、本発明を詳しく説明する。
尚、本発明において、「(共)重合」とは、単独重合及び共重合を意味し、「(メタ)アクリル」とは、アクリル及びメタクリルを意味する。
1.熱可塑性樹脂組成物
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、[A]ゴム質重合体の存在下に、芳香族ビニル化合物を含むビニル系単量体を重合して得られたゴム強化スチレン系樹脂(以下、「ゴム強化スチレン系樹脂(A1)」ともいう。)、及び/又は、該ビニル系単量体の(共)重合体(以下、「スチレン系樹脂(A2)」ともいう。)4.95〜93.95質量%と、[B]ポリオレフィン系樹脂(但し、下記[C]を除く。)5〜94質量%と、[C]オレフィン重合体ブロックと、親水基を有する重合体ブロックとを含むブロック共重合体1〜50質量%と、[D]ホウ素化合物0.05〜10質量%とを含有(但し、[A]+[B]+[C]+[D]=100質量%である。)することを特徴とする。
1−1.成分[A]
本発明に係る成分[A]は、ゴム質重合体の存在下に、芳香族ビニル化合物を含むビニル系単量体を重合して得られたゴム強化スチレン系樹脂(A1)、及び/又は、このビニル系単量体を(共)重合して得られたスチレン系樹脂(A2)からなるものである。これらの樹脂は、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
ゴム強化スチレン系樹脂(A1)及びスチレン系樹脂(A2)の形成に用いられるビニル系単量体としては、芳香族ビニル化合物以外に、シアン化ビニル化合物、(メタ)アクリル酸エステル化合物、マレイミド系化合物、酸無水物、更に、ヒドロキシル基、アミノ基、エポキシ基、カルボキシル基、オキサゾリン基等の官能基を有するビニル系化合物が挙げられ、必要に応じて用いることができる。
上記各ビニル系単量体の使用量は、下記のとおりである。但し、ビニル系単量体の全量を100質量%とする。
芳香族ビニル化合物の使用量は、好ましくは10〜100質量%、より好ましくは10〜90質量%、更に好ましくは10〜80質量%である。この範囲にあると、成形加工性及び機械的強度の物性バランスに優れる。
シアン化ビニル化合物を使用する場合には、好ましくは50質量%以下、更に好ましくは20〜40質量%である。この範囲にあると、耐薬品性、色調及び成形加工性の物性バランスに優れる。
(メタ)アクリル酸エステル化合物を使用する場合には、好ましくは85質量%以下、更に好ましくは10〜80質量%である。この範囲にあると、着色性及び成形加工性の物性バランスに優れる。
マレイミド系化合物を使用する場合には、好ましくは50質量%以下、更に好ましくは10〜50質量%である。この範囲にあると、耐熱性及び成形加工性の物性バランスに優れる。
官能基を有するビニル系化合物を使用する場合には、好ましくは20質量%以下、更に好ましくは1〜15質量%である。この範囲にあると、相溶性付与効果及び成形加工性の物性バランスに優れる。
ゴム強化スチレン系樹脂(A1)は、ゴム質重合体の存在下に、芳香族ビニル化合物を含むビニル系単量体を重合して得られたものである。
ゴム質重合体としては、ポリブタジエン、ブタジエン・スチレン共重合体、ブタジエン・アクリロニトリル共重合体、スチレン・ブタジエン系ブロック共重合体及びその水素添加物、スチレン・イソプレン系ブロック共重合体及びその水素添加物等のジエン系ゴム;エチレン・プロピレン共重合体、エチレン・プロピレン・非共役ジエン共重合体、エチレン・ブテン−1共重合体、エチレン・ブテン−1・非共役ジエン共重合体等のエチレン・α−オレフィン系ゴム;アクリル系ゴム;シリコーン系ゴム;シリコーン・アクリル系IPNゴム等が挙げられる。これらの重合体は、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
また、これらのうち、ポリブタジエン、ブタジエン・スチレン共重合体、エチレン・プロピレン共重合体、エチレン・プロピレン・非共役ジエン共重合体、アクリル系ゴム、シリコーン系ゴムが好ましい。
上記のジエン系ゴム、アクリル系ゴム等のゴム質重合体のゲル含率は、好ましくは98質量%以下であり、更に好ましくは40〜98質量%である。この範囲とすることにより、耐衝撃性により優れた成形品を与える熱可塑性樹脂組成物を得ることができる。
ゲル含率は、以下に示す方法により求めることができる。
まず、ゴム質重合体1gをトルエン100mlに投入し、室温で48時間静置する。その後、100メッシュの金網(質量をW1グラムとする)で濾過したトルエン不溶分と金網を、温度80℃で6時間真空乾燥して秤量(質量W2グラムとする)する。W1及びW2を、下記式(1)に代入して、ゲル含率を得る。
ゲル含率=[{W2(g)−W1(g)}/1(g)]×100 (1)
尚、ゲル含率は、ゴム質重合体の製造時に用いた架橋性単量体の種類及びその使用量、分子量調節剤の種類及び使用量、重合時間、重合温度、重合転化率等を、適宜、設定することにより調整される。
ゴム質重合体の存在下に重合されるビニル系単量体は、芳香族ビニル化合物を単独で用いるか、あるいは、芳香族ビニル化合物と、上記に例示した他の化合物とを組み合わせて用いるものである。
芳香族ビニル化合物としては、スチレン、α−メチルスチレン等が挙げられる。これらの化合物は、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。また、これらのうち、スチレン及びα−メチルスチレンが好ましい。
シアン化ビニル化合物としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等が挙げられる。これらの化合物は、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。また、これらのうち、アクリロニトリルが好ましい。
(メタ)アクリル酸エステル化合物としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル等が挙げられる。これらの化合物は、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。また、これらのうち、メタクリル酸メチルが好ましい。
マレイミド化合物としては、マレイミド、N−フェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド等が挙げられる。これらの化合物は、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。尚、マレイミド系化合物単位を分子へ導入する方法としては、無水マレイン酸を共重合してからイミド化する等してもよい。
酸無水物としては、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸等が挙げられる。これらの化合物は、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
ヒドロキシル基を有する化合物としては、3−ヒドロキシ−1−プロペン、4−ヒドロキシ−1−ブテン、シス−4−ヒドロキシ−2−ブテン、トランス−4−ヒドロキシ−2−ブテン、3−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロペン、ヒドロキシスチレン、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、N−(4−ヒドロキシフェニル)マレイミド等が挙げられる。これらの化合物は、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
アミノ基を有する化合物としては、(メタ)アクリル酸アミノエチル、(メタ)アクリル酸プロピルアミノエチル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸フェニルアミノエチル、N−ビニルジエチルアミン、N−アセチルビニルアミン、(メタ)アクリルアミン、N−メチルアクリルアミン、(メタ)アクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、p−アミノスチレン等が挙げられる。これらの化合物は、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
エポキシ基を有する化合物としては、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸3,4−オキシシクロヘキシル、ビニルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、メタクリルグリシジルエーテル等が挙げられる。これらの化合物は、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
カルボキシル基を有する化合物としては、(メタ)アクリル酸、エタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、クロトン酸、桂皮酸等が挙げられる。これらの化合物は、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
オキサゾリン基を有する化合物としては、ビニルオキサゾリン等が挙げられる。これらの化合物は、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
上記ビニル系単量体を2種以上用いる際の好ましい組み合わせの例を以下に示す。尚、カッコ内の数字は、両者の合計を100質量%とした場合の好ましい使用割合(単位;質量%)である。
(1)芳香族ビニル化合物/シアン化ビニル化合物(65〜90/35〜10)
(2)芳香族ビニル化合物/メタクリル酸メチル(20〜80/80〜20)
(3)芳香族ビニル化合物/シアン化ビニル化合物/メタクリル酸メチル(10〜80/後二者の合計が90〜20)
(4)芳香族ビニル化合物/シアン化ビニル化合物/メタクリル酸グリシジル
(5)芳香族ビニル化合物/シアン化ビニル化合物/メタクリル酸2−ヒドロキシエチル
(6)芳香族ビニル化合物/マレイミド化合物
(7)芳香族ビニル化合物/メタクリル酸メチル/マレイミド化合物
ゴム強化スチレン系樹脂(A1)は、公知の重合法、例えば、乳化重合、塊状重合、溶液重合、懸濁重合及びこれらを組み合わせた重合法により製造することができる。これらのうち、乳化重合及び溶液重合が好ましい。
ゴム強化スチレン系樹脂(A1)を乳化重合により製造する場合、通常、重合開始剤、連鎖移動剤、乳化剤等が用いられる。これらはすべて公知のものを用いることができる。
重合開始剤としては、クメンハイドロパーオキサイド、p−メンタンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、tert−ブチルハイドロパーオキサイド、過硫酸カリウム、アゾビスイソブチロニトリル等が挙げられる。
また、重合開始助剤として、各種還元剤、含糖ピロリン酸鉄処方、スルホキシレート処方等のレドックス系を用いることが好ましい。
連鎖移動剤としては、オクチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、tert−ドデシルメルカプタン、n−ヘキシルメルカプタン等のメルカプタン類;ターピノーレン類等が挙げられる。
乳化剤としては、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等のアルキルベンゼンスルホン酸塩、ラウリル硫酸ナトリウム等の脂肪族スルホン酸塩、ラウリル酸カリウム、ステアリン酸カリウム、オレイン酸カリウム、パルミチン酸カリウム等の高級脂肪酸塩、ロジン酸カリウム等のロジン酸塩等が挙げられる。
ゴム強化スチレン系樹脂(A1)を乳化重合により製造する場合、ゴム質重合体及びビニル系単量体の使用方法としては、ゴム質重合体全量の存在下に、ビニル系単量体を全量一括添加して重合してもよく、分割添加もしくは連続添加して重合してもよい。また、ゴム質重合体の一部を重合途中で添加してもよい。
ゴム強化スチレン系樹脂(A1)を100質量部製造する際には、ゴム質重合体の使用量は、好ましくは3〜80質量部、より好ましくは5〜70質量部、更に好ましくは10〜60質量部である。
乳化重合により得られたラテックスは、通常、凝固剤により樹脂成分を凝固させ、更に、水洗、乾燥することにより、精製されたゴム強化スチレン系樹脂(A1)が得られる。凝固剤としては、塩化カルシウム、硫酸マグネシウム、塩化マグネシウム等の無機塩;硫酸、塩酸等の無機酸;酢酸、クエン酸、リンゴ酸等の有機酸等を用いることができる。尚、2種以上のラテックスを製造した場合には、凝固を、別々に行ってもよいし、ラテックスを混合してから行ってもよい。
ゴム強化スチレン系樹脂(A1)を溶液重合により製造する場合、通常、公知のラジカル重合用不活性重合溶媒中で重合される。その溶媒としては、エチルベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素;メチルエチルケトン、アセトン等のケトン類;アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン等が挙げられる。
重合温度は、好ましくは80〜140℃、更に好ましくは85〜120℃の範囲である。
溶液重合の際には、重合開始剤を用いてもよいし、重合開始剤を使用せずに、熱重合で重合してもよい。重合開始剤としては、アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物;ケトンパーオキサイド、ジアルキルパーオキサイド、ジアシルパーオキサイド、パーオキシエステル、ハイドロパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド等の有機過酸化物等が好ましく用いられる。
連鎖移動剤を用いる場合、メルカプタン類;ターピノーレン類;α−メチルスチレンダイマー等を用いることができる。
また、ゴム強化スチレン系樹脂(A1)を塊状重合又は懸濁重合で製造する場合、公知の方法を適用でき、溶液重合において例示した重合開始剤、連鎖移動剤等を用いることができる。
上記各方法により得られたゴム強化スチレン系樹脂(A1)中に残存するビニル系単量体の含有量は、好ましくは10,000ppm以下、更に好ましくは5,000ppm以下である。
上記のようにして製造されたゴム強化スチレン系樹脂(A1)は、通常、ビニル系単量体がゴム質重合体にグラフト(共)重合してなる共重合樹脂(グラフト化ゴム質重合体)と、ゴム質重合体にグラフトしていない未グラフト成分(ビニル系単量体の(共)重合体)とを含む。グラフト化ゴム質重合体の数平均粒子径は、好ましくは500〜30,000Å、より好ましくは1,000〜20,000Å、更に好ましくは、1,500〜8,000Åの範囲にある。尚、数平均粒子径は、電子顕微鏡を用いる等、公知の方法で測定することができる。
ゴム強化スチレン系樹脂(A1)のグラフト率は、好ましくは20〜200質量%、より好ましくは30〜150質量%、更に好ましくは40〜120質量%である。このグラフト率が上記範囲にあると、耐衝撃性に優れる。
尚、グラフト率は、以下に示す方法により求めることができる。
ゴム強化スチレン系樹脂(A1)1グラム中のゴム質重合体の質量をSグラム、ゴム強化スチレン系樹脂(A1)1グラムをアセトン(但し、ゴム質重合体にアクリルゴムを用いた場合はアセトニトリルを用いる。)20mlに溶解(振とう機により2時間振とう)させ、遠心分離機(回転数;23,000rpm)で60分間遠心分離した際の不溶分の質量をTグラムとしたとき、グラフト率を下記式(2)により求めることができる。
グラフト率={(T−S)/S}×100 (2)
ゴム強化スチレン系樹脂(A1)のアセトン可溶分の極限粘度[η](溶媒としてメチルエチルケトンを使用し、30℃で測定)は、好ましくは0.2〜1.2dl/g、より好ましくは0.2〜1.0dl/g、更に好ましくは0.3〜0.8dl/gである。この極限粘度[η]が上記範囲にあると、成形加工性に優れ、更には、得られる成形品の機械的強度にも優れる。
尚、グラフト率及び極限粘度[η]は、ゴム強化スチレン系樹脂(A1)を製造する際の、重合開始剤、連鎖移動剤、乳化剤、溶媒等の種類や使用量、更には、重合時間、重合温度等を変化させることにより、容易に制御することができる。
次に、スチレン系樹脂(A2)は、上記ビニル系単量体を(共)重合させて得られたものである。
このスチレン系樹脂(A2)は、上記のゴム強化スチレン系樹脂(A1)の形成に用いたビニル系単量体と全く同じ種類の化合物を用いて得られた(共)重合体であってよいし、異なる種類の化合物を用いて得られた(共)重合体であってもよい。
スチレン系樹脂(A2)としては、ポリスチレン、アクリロニトリル・スチレン共重合体、スチレン・メタクリル酸メチル共重合体、スチレン・アクリロニトリル・メタクリル酸メチル共重合体、スチレン・フェニルマレイミド共重合体、スチレン・α−メチルスチレン共重合体、スチレン・α−メチルスチレン・アクリロニトリル共重合体等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
尚、スチレン系樹脂(A2)は、公知の重合法、例えば、塊状重合、溶液重合、懸濁重合及び乳化重合により製造することができる。
スチレン系樹脂(A2)のアセトン可溶分の極限粘度[η](溶媒としてメチルエチルケトンを使用し、30℃で測定)は、好ましくは0.2〜1.2dl/g、より好ましくは0.2〜1.0dl/g、更に好ましくは0.3〜0.8dl/gである。この極限粘度[η]が上記範囲にあると、成形加工性に優れ、更には、得られる成形品の機械的強度にも優れる。
尚、この極限粘度[η]は、上記ゴム強化スチレン系樹脂(A1)の場合と同様、各種の製造条件を変化させることにより制御することができる。
上記成分[A]としては、耐衝撃性及び帯電防止性が安定して発揮されることから、ゴム強化スチレン系樹脂(A1)及びスチレン系樹脂(A2)を併用することが好ましい。
上記成分[A]は、後述する成分[B]と併用することにより、成分[C]及び[D]との親和性が高くなるため、より均一な組成物とすることができ、高い帯電防止性能が得られる。
本発明の熱可塑性樹脂組成物において、成分[A]の含有量は、成分[A]、[B]、[C]及び[D]の合計を100質量%とした場合、4.95〜93.95質量%であり、好ましくは4.95〜84.95質量%、更に好ましくは9.9〜74.9質量%、特に好ましくは14.7〜67.7質量%である。この含有量が4.95質量%未満では、帯電防止性及び表面外観性が劣る傾向にあり、一方、93.95質量%を超えると、耐薬品性及び帯電防止性が劣る傾向にある。
1−2.成分[B]
本発明に係る成分[B]は、炭素数2〜10のα−オレフィンの少なくとも1種からなるポリオレフィン系樹脂であり、後述する成分[C]を除く(共)重合体である。このポリオレフィン系樹脂[B]は、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
ポリオレフィン系樹脂[B]の形成に用いられるα−オレフィンとしては、エチレン、プロピレン、ブテン−1、ペンテン−1、ヘキセン−1、3−メチルブテン−1、4−メチルペンテン−1、3−メチルヘキセン−1等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。また、これらのうち、エチレン、プロピレン、ブテン−1、3−メチルブテン−1及び4−メチルペンテン−1が好ましい。
ポリオレフィン系樹脂[B]の形成に用いられる単量体としては、α−オレフィン以外に、4−メチル−1,4−ヘキサジエン、5−メチル−1,4−ヘキサジエン、7−メチル−1,6−オクタジエン、1,9−デカジエン等の非共役ジエンを用いることもできる。
ポリオレフィン系樹脂[B]としては、ポリプロピレン、プロピレン・エチレン共重合体等のプロピレン単位を主として含む重合体、及び、ポリエチレンが好ましく、これらを単独で用いてもよいし、組み合わせて用いてもよい。尚、上記プロピレン・エチレン共重合体としては、ランダム共重合体、ブロック共重合体等が好ましい。
ポリオレフィン系樹脂[B]の結晶性の有無は問わないが、室温下、X線回折による結晶化度が20%以上であることが好ましい。
また、JIS K7121に準拠して測定された融点は、40℃以上であることが好ましい。
更に、ポリオレフィン系樹脂[B]は、常温において成形用樹脂として十分な分子量が必要である。例えば、プロピレン単位を主として含む場合、JIS K−6758に準拠して測定したメルトフローレートは、好ましくは0.01〜500g/10分、より好ましくは0.05〜100g/10分に相当する分子量のものである。
本発明の熱可塑性樹脂組成物において、成分[B]の含有量は、成分[A]、[B]、[C]及び[D]の合計を100質量%とした場合、5〜94質量%であり、好ましくは10〜90質量%、更に好ましくは15〜80質量%、特に好ましくは20〜70質量%である。この含有量が5質量%未満では、耐薬品性及び帯電防止性が劣る傾向にあり、一方、94質量%を超えると、帯電防止性及び表面外観性が劣る傾向にある。
1−3.成分[C]
本発明に係る成分[C]は、オレフィン重合体ブロック(以下、「重合体ブロック(c1)」ともいう。)と、親水基を有する重合体ブロック(以下、「重合体ブロック(c2)」ともいう。)とを含むブロック共重合体である。このブロック共重合体[C]を含有することにより、本発明の熱可塑性樹脂組成物に帯電防止性を付与することができる。また、このブロック共重合体[C]は、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
ブロック共重合体[C]は、重合体ブロック(c1)及び(c2)の配列に限定されない構造を有するものとすることができ、下記に例示される。但し、m1は、1以上の整数であり、m2及びm2’は、いずれも2以上の整数であり、同一でもよいし、異なってもよい。また、各構造において、重合体ブロック(c1)及び(c2)が複数ある場合は、各ブロックは、互いに同一であってよいし、異なってもよい。
(1) (c1−c2)m1
(2) c1−(c2−c1)m1
(3) c2−(c1−c2)m1
(4) (c1)m2−(c2)m2’
(5) c1−c1−(c2−c2−c1−c1)m1
これらのうち、(1)、(2)及び(3)の態様、即ち、重合体ブロック(c1)及び(c2)が繰り返し交互に配列していることが好ましい。
上記態様(1)〜(3)において、重合体ブロック(c1)及び(c2)の結合形態は、エステル結合、アミド結合、エーテル結合、ウレタン結合又はイミド結合であることが好ましい。
重合体ブロック(c1)は、オレフィン単位のみを含む重合体(以下、「重合体c1’」ともいう。)からなるブロックであり、この重合体(c1’)を形成する化合物としては、炭素数が2以上のα−オレフィン、環状オレフィン等が挙げられる。前者の例としては、エチレン、プロピレン、ブテン−1、ペンテン−1、ヘキセン−1、3−メチルブテン−1、4−メチルペンテン−1等が挙げられる。また、後者の例としては、ノルボルネン等が挙げられる。これらの化合物は、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
尚、重合体(c1’)は、上記化合物と、4−メチル−1,4−ヘキサジエン、5−メチル−1,4−ヘキサジエン、7−メチル−1,6−オクタジエン、1,9−デカジエン等の非共役ジエンとを併用してなる重合体であってもよい。
重合体ブロック(c1)及び(c2)の結合形態を、エステル結合、アミド結合、エーテル結合、ウレタン結合又はイミド結合とするために、上記重合体(c1’)の分子の両末端は、カルボキシル基、ヒドロキシル基、アミノ基、酸無水物基、オキサゾリン基、エポキシ基等であることが好ましい。これらの官能基を付与する方法としては、熱減成法により得られた、分子末端に二重結合を有する重合体に、上記の官能基を有する不飽和化合物を付加反応させる方法等が挙げられる。
上記重合体(c1’)のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算の数平均分子量は、好ましくは800〜20,000、より好ましくは1,000〜10,000、更に好ましくは1,200〜6,000である。
重合体ブロック(c1)は、ブロック共重合体[C]中に、1種単独であるいは2種以上の組み合わせで含まれてもよい。
重合体ブロック(c2)は、ヒドロキシル基、アミノ基等の親水基を有する重合体からなるブロックであり、好ましくは、主鎖にエーテル結合を有する重合体(以下、「重合体c2’」ともいう。)からなるものである。この重合体(c2’)としては、ポリエーテルジオール、ポリエーテルジアミン、ポリエーテルアミド、ポリエーテルアミドイミド、ポリエーテルエステル、ポリエーテルエステルアミド、ポリエーテルウレタン等が挙げられる。これらのうち、ポリエーテルジオール及びポリエーテルアミンが好ましく、ポリエーテルジオールが特に好ましい。また、重合体ブロック(c2)は、上記重合体(c2’)の1種のみからなるものであってよいし、2種以上のブロックを含むものであってもよい。
尚、重合体ブロック(c2)(重合体(c2’))は、直鎖状であってよいし、分岐構造を有してもよい。
上記ポリエーテルジオールは、少なくとも2つのヒドロキシル基と、エーテル結合とを有する重合体である。好ましい重合体は、2価のヒドロキシル基含有化合物(以下、「ジオール化合物」ともいう。)にアルキレンオキサイドを付加反応させることにより、あるいは、このジオール化合物にグリシジルエーテル化合物等と反応させることにより得られた、下記一般式(II)及び(III)で表される重合体である。
H−(OYn1−O−Z−O−(YO)n1’−H (II)
〔式中、Yは、炭素数2〜4のアルキレン基であり、Zは、ジオール化合物からヒドロキシル基を除いた残基であり、n1及びn1’は、ジオール化合物のヒドロキシル基1個あたりのアルキレンオキサイド付加数であり、いずれも1〜300の整数である。尚、n1個の(OY)と、n1’個の(YO)は、互いに同一であってよいし、異なってもよい。〕
H−(OYn2−O−Z−O−(YO)n2’−H (III)
〔式中、Yは、少なくとも1つが、−CHR−CHR−(但し、R及びRのいずれか一方は、−CHO(YO)n3で表される基であり、他方は、水素原子である。尚、Yは、炭素数2〜4のアルキレン基であり、Rは、水素原子、又は、炭素数1〜10の、アルキル基、アリール基、アルキルアリール基、アリールアルキル基又はアシル基であり、n3は、1〜10の整数である。)で表される置換アルキレン基であり、残りは、炭素数2〜4のアルキレン基であってもよい。Zは、ジオール化合物からヒドロキシル基を除いた残基であり、n2及びn2’は、1〜300の整数である。尚、n2個の(OY)と、n2’個の(YO)は、互いに同一であってよいし、異なってもよい。〕
上記一般式(II)で表されるポリエーテルジオールは、ジオール化合物にアルキレンオキサイドを付加反応させることにより、得ることができる。
上記ジオール化合物としては、2価のアルコール類、2価のフェノール類、第3級アミノ基含有ジオール化合物等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
2価のアルコール類としては、脂肪族、脂環式及び芳香族のいずれでもよく、炭素数2〜12の化合物が好ましい。
脂肪族2価アルコールとしては、エチレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,9−ノナンジオール、ネオペンチルグリコール、1,12−ドデカンジオール等が挙げられる。
脂環式2価アルコールとしては、1,2−及び1,3−シクロペンタンジオール、1,2−、1,3−及び1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等が挙げられる。
また、芳香族2価アルコールとしては、キシレンジオール等が挙げられる。
2価のフェノール類としては、単環2価フェノール、ビスフェノール、縮合多環二価フェノール等が挙げられるが、炭素数6〜18の化合物が好ましい。
単環2価フェノールとしては、ハイドロキノン、カテコール、レゾルシン、ウルシオール等が挙げられる。
ビスフェノールとしては、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、4,4’−ジヒドロキシジフェニル−2,2−ブタン、ジヒドロキシビフェニル、ジヒドロキシジフェニルエーテル等が挙げられる。
また、縮合多環二価フェノールとしては、ジヒドロキシナフタレン、ビナフトール等が挙げられる。
更に、第3級アミノ基含有ジオール化合物としては、炭素数1〜8のN−アルキルジアルカノールアミン等が挙げられる。
上記アルキレンオキサイドとしては、炭素数2〜4の化合物が好ましく、例えば、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、1,2−ブチレンオキサイド、1,4−ブチレンオキサイド、2,3−ブチレンオキサイド、1,3−ブチレンオキサイド等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。また、これらのうち、エチレンオキサイドが好ましく、2種以上を組み合わせて用いる場合には、エチレンオキサイドを含むことが好ましい。
ジオール化合物にアルキレンオキサイドを付加反応させて得られたポリエーテルジオールが2種以上のアルキレンオキサイドを併用して得られた場合、その結合形式は、ランダム及びブロックのいずれでもよい。
アルキレンオキサイドの付加数は、ジオール化合物のヒドロキシル基1個あたり、好ましくは1〜300、更に好ましくは2〜250、特に好ましくは10〜100の整数である。従って、上記一般式(II)におけるn1及びn1’は、いずれも、好ましくは1〜300、更に好ましくは2〜250、特に好ましくは10〜100の整数である。
また、上記一般式(III)で表されるポリエーテルジオールは、下記(1)、(2)等の方法により、得ることができる。
(1)ジオール化合物を出発物質として、下記一般式(IV)で表されるグリシジルエーテル化合物のみを、又は、このグリシジルエーテル化合物及び炭素数2〜4のアルキレンオキサイド(上記に例示)の両方を反応する方法。
Figure 2006199829
〔式中、Yは、炭素数2〜4のアルキレン基であり、Rは、水素原子、又は、炭素数1〜10の、アルキル基、アリール基、アルキルアリール基、アリールアルキル基又はアシル基であり、pは、1〜10の整数である。〕
(2)ジオール化合物を出発物質として、エピクロルヒドリン、又は、エピクロルヒドリン及びアルキレンオキサイドを付加共重合し、側鎖にクロロメチル基を有するポリエーテルを得た後、該ポリエーテルと、炭素数2〜4のアルキレングリコール(上記に例示)と、RX(但し、Rは、水素原子、又は、炭素数1〜10の、アルキル基、アリール基、アルキルアリール基、アリールアルキル基又はアシル基であり、Xは、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子である。)とをアルカリ存在下で反応させるか、あるいは、該ポリエーテルと、炭素数2〜4のアルキレングリコールモノカルビルエーテルをアルカリ存在下で反応させる方法。
上記一般式(III)で表されるポリエーテルジオールにおいて、n2及びn2’は、いずれも、好ましくは1〜300、更に好ましくは2〜250、特に好ましくは10〜100の整数である。
上記ポリエーテルジアミンは、上記一般式(II)で表された重合体において、ヒドロキシル基を公知の方法によりアミノ基に置換したものを用いることができる。
上記ポリエーテルアミドは、ポリアミドと、ポリエーテルジアミンとから構成されたものである。
上記ポリエーテルアミドイミドは、少なくとも1個のイミド環を有するポリアミドイミドと、ポリエーテルジオールとから構成されたものである。
上記ポリエーテルエステルは、ポリエステルと、ポリエーテルジオールとから構成されたものである。
上記ポリエーテルエステルアミドは、末端にカルボキシル基を有するポリアミドと、ポリエーテルジオールとから構成されたものである。
また、上記ポリエーテルウレタンは、有機ジイソシアネートと、ポリエーテルジオールとから構成されたもの、又は、有機ジイソシアネートと、ポリエーテルジアミンと、鎖延長剤とから構成されたものである。
尚、上記重合体(c2’)は、変性されたものであってよい。その変性物としては、スルホニル基等のアニオン性官能基を含む重合体ブロック等が挙げられ、例えば、ポリエーテルジオール及び/又はポリエーテルジアミンからなるブロックと、スルホニル基を有するジカルボン酸からなる単位とを含み、且つ、分子内に好ましくは2〜80個、より好ましくは3〜60個のスルホニル基を有する重合体が挙げられる。
本発明に係るブロック共重合体[C]は、上記の重合体ブロック(c1)及び(c2)が上記態様(1)〜(5)等、好ましくは態様(1)〜(3)に示される配列によって構成されている。
重合体ブロック(c1)及び(c2)の構成割合(c1)/(c2)は、これらの合計を100質量%とした場合、好ましくは、10〜90質量%/10〜90質量%、より好ましくは、20〜80質量%/20〜80質量%、更に好ましくは、30〜70質量%/30〜70質量%である。
ブロック共重合体[C]が態様(2)又は(3)の配列を備える場合、重合体ブロック(c1)及び(c2)の平均繰り返し数は、好ましくは2〜50である。
尚、ブロック共重合体[C]は、他の重合体ブロックを含んでもよい。
ブロック共重合体[C]は、上記の重合体(c1’)及び(c2’)を公知の方法で重合(重縮合)することにより得ることができる。重合は、通常、減圧下、温度200〜250℃で行われる。尚、重合触媒を用いる場合には、モノブチルスズオキサイド等のスズ系触媒;三酸化アンチモン、二酸化アンチモン等のアンチモン系触媒;テトラブチルチタネート等のチタン系触媒;ジルコニウム水酸化物、酸化ジルコニウム、酢酸ジルコニウム等のジルコニウム系触媒;IIB族有機酸塩触媒等が好ましい。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
尚、ブロック共重合体[C]としては、市販品を用いることができ、例えば、三洋化成社製「ペレスタットシリーズ」の300、303、230等が好適である。
本発明の熱可塑性樹脂組成物において、成分[C]の含有量は、成分[A]、[B]、[C]及び[D]の合計を100質量%とした場合、1〜50質量%であり、好ましくは5〜40質量%、更に好ましくは10〜35質量%、特に好ましくは15〜35質量%である。この含有量が1質量%未満では、帯電防止性が劣る傾向にあり、一方、50質量%を超えると、表面外観性が劣る傾向にある。
1−4.成分[D]
本発明に係る成分[D]は、ホウ素元素を含む化合物である。このホウ素化合物[D]を含有することにより、本発明の熱可塑性樹脂組成物の帯電防止性が更に優れる。また、このホウ素化合物[D]は、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
ホウ素化合物[D]は、好ましくは有機ホウ素高分子化合物である。この有機ホウ素高分子化合物としては、下記一般式(V)で表される単位を含む化合物が好ましい。
Figure 2006199829
上記一般式(V)で表される単位を含む化合物としては、下記一般式(VI)で表されるような、半極性有機ホウ素高分子化合物と、ヒドロキシル基を有する合計炭素数5〜82の第3級アミンの1種又は2種以上との、ホウ素原子1個対塩基性窒素原子1個の割合の反応生成物である高分子電荷移動型結合体であることが好ましい。
Figure 2006199829
〔式中、qは、0又は1であり、q=1のとき、Tは、−(T−(T−(T−(但し、T及びTは、互いに同一又は異なって、1つの末端エーテル残基を有し且つ炭素数の合計が100以下の含酸素炭化水素基であり、Tは、
Figure 2006199829
(但し、Rは、炭素数1から82の炭化水素基である。)
又は、
Figure 2006199829
(但し、R10は、炭素数2〜13の炭化水素基である。)であり、s、t及びuは、それぞれ、0又は1である。)であり、R、R及びRは、互いに同一又は異なる有機基であり、rは、10〜1000である。〕
上記一般式(VI)におけるR、R及びRとしては、炭化水素基、アルコキシ基、フェノキシ基、ベンジロキシ基、アルキレングリコール基等が挙げられる。これらの基は、ヒドロキシル基等の官能基を有してもよいし、置換基を有してもよい。
上記電荷移動型結合体としては、下記化学式(VII)〜(XIV)で表される結合体が挙げられる。尚、下記の各化学式において、末端の炭素原子及び酸素原子には、通常、それぞれ、水素原子又はヒドロキシル基が結合している。
Figure 2006199829
Figure 2006199829
〔式中、R’は、平均重合度20のポリブテンの残基である。〕
Figure 2006199829
Figure 2006199829
Figure 2006199829
Figure 2006199829
Figure 2006199829
Figure 2006199829
上記高分子電荷移動型結合体は、特許第2573986号公報に記載された方法等により製造することができる。
尚、ホウ素化合物[D]としては、市販品を用いることができ、例えば、ボロンインターナショナル社製「ハイボロン400N」等が好適である。
本発明に係るホウ素化合物[D]は、熱可塑性樹脂組成物の製造の際に、単独で配合してよいし、上記の成分[A]、[B]、[C]等の重合体とからなる混合物(組成物)として配合することもできる。後者の例としては、ボロンインターナショナル社製「ハイボロンMB400N−8LDPE」(ポリエチレンをマトリックスとしたマスターバッチ)等が挙げられる。
本発明の熱可塑性樹脂組成物において、成分[D]の含有量は、成分[A]、[B]、[C]及び[D]の合計を100質量%とした場合、0.05〜10質量%であり、好ましくは0.05〜8質量%、更に好ましくは0.1〜5質量%、特に好ましくは0.3〜5質量%である。この含有量が0.05質量%未満では、帯電防止性が劣る傾向にあり、一方、10質量%を超えると、表面外観性が劣る傾向にある。
尚、成分[C]及び[D]の好ましい含有割合は、これらの合計を100質量%とした場合、38〜99.8質量%/0.2〜62質量%であり、より好ましくは67〜99.7質量%/0.3〜33質量%、更に好ましくは75〜99.2質量%/0.8〜25質量%である。上記範囲とすることにより、更に優れた帯電防止性を有する。
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、目的、用途に応じて、更に、相溶化剤、帯電防止助剤、充填剤、紫外線吸収剤、耐候(光)剤、酸化防止剤、熱安定剤、可塑剤、滑剤、摺動剤、着色剤(顔料、染料)、発泡剤、加工助剤、抗菌剤、難燃剤、結晶核剤等の添加剤を配合したものとすることができる。
本発明においては、成分[A]及び[B]の相溶性を向上させる目的から、相溶化剤(以下、成分[E]ともいう。)を含有したものとすることができる。この成分[E]は、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
相溶化剤[E]としては、共役ジエン系重合体が好ましく、以下の重合体が挙げられる。
(1)芳香族ビニル化合物からなる単位を主として含む重合体ブロックと、共役ジエン化合物からなる単位を主として含む重合体ブロックとを有するブロック共重合体。
(2)上記(1)の部分水素添加物。
(3)上記(1)の完全水素添加物。
(4)芳香族ビニル化合物からなる単位を主として含む重合体ブロックと、共役ジエン化合物からなる単位を主として含む重合体ブロックと、ポリウレタンブロックとを有するブロック共重合体の水素添加物。
(5)芳香族ビニル化合物からなる単位を主として含む重合体ブロックと、共役ジエン化合物からなる単位を主として含む重合体ブロックと、ポリカーボネートブロックとを有するブロック共重合体の水素添加物。
これらのうち、(1)及び(2)の相溶化剤が好ましい。
上記相溶化剤[E]の配合量は、成分[A]、[B]、[C]及び[D]の合計を100質量部とした場合、好ましくは1〜200質量部、より好ましくは5〜150質量部、更に好ましくは10〜100質量部である。
また、本発明の熱可塑性樹脂組成物は、上記の成分[A]、[B]及び[E]以外の他の重合体を含有してもよい。
他の重合体としては、ポリアミド樹脂、ポリアミドエラストマー等の熱可塑性ポリアミド;ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリアリレート、液晶ポリエステル、ポリエステルエラストマー等の熱可塑性ポリエステル;ポリメタクリル酸メチル(PMMA);メタクリル酸メチル・マレイミド化合物共重合体;超高分子量アクリル系重合体;超高分子量スチレン系重合体;ポリフェニレンエーテル;ポリフェニレンスルフィド;芳香族ポリカーボネート;熱可塑性ポリウレタン;フェノキシ樹脂;エポキシ樹脂;フェノール樹脂;尿素樹脂等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。尚、超高分子量アクリル系重合体、超高分子量スチレン系重合体等は、加工助剤としての作用をも有する。
尚、上記の成分[E]を含有し、且つ、上記の成分[E]及び他の重合体が熱可塑性である場合、各成分の含有量を下記の組み合わせとした態様とすることができる。即ち、上記の成分[A]、[B]及び[E]を含む熱可塑性の重合体成分と、帯電防止付与物質である成分[C]との合計を100質量%とした場合、成分[C]の割合は、好ましくは12〜40質量%、より好ましくは15〜35質量%、更に好ましくは17〜25質量%である。上記範囲とすることにより、相分離することなく、成形加工性、表面外観性及び帯電防止性を高度に両立した成形品を得ることができる。
本発明において、(特に成分[A]に由来する)アクリロニトリル単位量は、全重合体成分を構成する単量体単位の全量を100質量%とした場合、好ましくは5〜50質量%であり、より好ましくは20〜40質量%である。上記範囲とすることにより、帯電防止性及び耐薬品性を高度に両立した成形品を得ることができる。
本発明においては、成分[C]及び[D]による帯電防止性を更に向上させるために、帯電防止助剤を含有したものとすることができる。この帯電防止助剤は、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
帯電防止助剤としては、リチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属の塩;マグネシウム、カルシウム等のアルカリ土類金属の塩等が挙げられる。
塩の種類としては、ハロゲン化水素酸塩(ハロゲン化物)、硫酸塩、過塩素酸塩等の無機酸塩;カルボン酸塩、ジカルボン酸塩、アルカンスルホン酸塩、芳香族スルホン酸塩(アルキルベンゼンスルホン酸塩を含む)、フッ化スルホン酸塩等の有機酸塩等が挙げられる。
ハロゲン化物としては、塩化リチウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、臭化リチウム、臭化ナトリウム、臭化カリウム等が挙げられる。
過塩素酸塩としては、過塩素酸リチウム、過塩素酸ナトリウム、過塩素酸カリウム等が挙げられる。
カルボン酸塩としては、酢酸カリウム、ステアリン酸リチウム等が挙げられる。
アルカンスルホン酸塩としては、オクチルスルホン酸、ドデシルスルホン酸、テトラデシルスルホン酸、ステアリルスルホン酸、テトラコシルスルホン酸、2−エチルヘキシルスルホン酸等の炭素数8〜24のアルカンスルホン酸の塩が好ましい。
芳香族スルホン酸塩としては、フェニルスルホン酸、ナフチルスルホン酸、オクチルフェニルスルホン酸、ドデシルフェニルスルホン酸、ジブチルフェニルスルホン酸、ジノニルフェニルスルホン酸、ジメチルナフチルスルホン酸、ジイソプロピルナフチルスルホン酸、ジブチルナフチルスルホン酸等の炭素数6〜18の芳香族スルホン酸の塩が好ましい。
フッ化スルホン酸塩としては、トリフルオロメタンスルホン酸の塩等が挙げられる。
帯電防止助剤は、本発明の熱可塑性樹脂組成物の製造時に配合することができるが、例えば、成分[C]の重合前、成分[C]の重合途中、成分[C]の重合後に配合することもできる。
上記帯電防止助剤の配合量は、成分[C]を100質量部とした場合、好ましくは0.001〜10質量部、更に好ましくは0.01〜5質量部である。
充填剤としては、金属、合金、無機化合物、有機化合物、高分子化合物、無機・有機複合物等からなるものを、粉末状、塊状、中空状、板状、繊維状(ウィスカーを含む)等として、目的、用途等に応じて用いることができる。導電性を有するものであってもよい。この充填剤は、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
充填剤としては、ガラス繊維、ガラスフレーク、ガラス繊維のミルドファイバー、ガラスビーズ、中空ガラスビーズ、タルク、炭酸カルシウム、ワラストナイト、マイカ、カオリン、モンモリロナイト、ヘクトライト、酸化亜鉛、チタン酸カリウム、ホウ酸アルミニウム、アルミナ、シリカ、有機処理されたスメクタイト、アラミド繊維、フェノール樹脂繊維、ポリエステル繊維、カーボンブラック、炭素繊維、錫コート酸化チタン、錫コートシリカ、銀、銅、黄銅、鉄等が挙げられる。
尚、上記充填剤は、分散性を向上させる等の目的から、公知のカップリング剤、表面処理剤、集束剤等で処理したものを用いることができる。このカップリング剤としては、シラン系カップリング剤、チタネート系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤等が挙げられる。
上記充填剤の配合量は、上記の成分[A]、[B]、[C]等を含む重合体成分の全量を100質量部とした場合、好ましくは1〜200質量部、より好ましくは5〜100質量部である。
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、上記の成分[A]、[B]、[C]、[D]、添加剤等を各種押出機、バンバリーミキサー、ニーダー、連続ニーダー、ロール等に投入し、加熱下で溶融混練することにより得ることができる。各成分は、一括投入してから混練してよいし、分割して投入してもよい。混練後、そのまま成形品とする場合には、射出成形、プレス成形、カレンダー成形、Tダイ押出成形、インフレーション成形、共押出成形、真空成形、異形押出成形、発泡成形等公知の成形方法を適用することができる。
2.成形品
本発明の成形品は、上記の熱可塑性樹脂組成物からなることを特徴とする。
成形品の形状は、目的、用途等に応じたものとすることができ、シート、フィルム、トレイ、ケース、丸棒、角棒等とすることができる。製造方法としては、射出成形、プレス成形、カレンダー成形、Tダイ押出成形、インフレーション成形、共押出成形、真空成形、異形押出成形、発泡成形等が挙げられる。また、これらを組み合わせることもできる。
本発明のシートは、厚さが、好ましくは0.2〜10mm、より好ましくは0.5〜5mmである。
また、本発明のフィルムは、厚さが、好ましくは5〜200μm、より好ましくは10〜150μmである。
尚、シート及びフィルムの、片面又は両面には、目的、用途等に応じて、凹凸部、溝部、穴部等を有してもよい。また、貫通孔を有してもよい。
本発明の成形品は、温度23℃、湿度50%RHの条件における表面固有抵抗を、好ましくは10Ω以下、より好ましくは10Ω以下、更に好ましくは10Ω以下とすることができる。
本発明のシート及びフィルムは、それぞれ、一方の面に、他の部材が配された複合物を形成してもよい。他の部材の配設の際には、粘着層又は接着層を介してよいし、粘着層及び接着層がなくてもよい。他の部材を構成する材料としては、金属、合金、無機化合物、有機化合物、高分子化合物、無機・有機複合物等が挙げられる。尚、他の部材の形状は、膜、板、筒等用途に応じたものとすることができる。膜の例としては、ガスバリア膜等が挙げられる。
また、他の部材が粘着層、接着層等であり、例えば、粘着シート、接着シート、粘着フィルム、接着フィルム等とすることもできる。これらの場合には、粘着層又は接着層を保護するための保護膜を更に備えることもできる。
粘着層又は接着層の形成の際には、本発明のシート及びフィルムの表面を、公知の表面処理法、例えば、コロナ放電処理、火炎処理、酸化処理、プラズマ処理、UV処理、イオンボンバード処理、溶剤処理等によって、接着性を向上させることができる。また、ポリエチレンイミン、ポリウレタン、アクリル樹脂等の樹脂により、例えば、0.1〜10μm程度の厚さのプライマー層を形成してもよい。このプライマー層は、通常、溶剤溶液として塗布し、乾燥することにより形成することができる。
粘着剤としては、スクリーン法、グラビア法、メッシュ法、バー塗工法等で塗工するエマルジョンタイプ;有機溶剤タイプ;押出ラミネート法、ドライラミネート法、共押出法等で形成する熱溶融タイプ等があり、いずれも使用できる。
粘着層又は接着層の厚さは、通常、1〜100μmである。
3.多層成形品
本発明の多層成形品は、上記の成分[A]、又は、上記の成分[B]を含む基層と、この基層の少なくとも1面に配され、且つ、上記の熱可塑性樹脂組成物からなる帯電防止層とを備えることを特徴とする。帯電防止層は、基層の片面のみに配されてもよいし(図1参照)、両面に配されてもよい(図2参照)。
図1の多層成形品は、帯電防止層12が基層11の片面のみに配された2層型成形品1の概略断面図である。また、図2の多層成形品は、帯電防止層12a及び12bが基層11の両面に配された3層型成形品2の概略断面図である。尚、帯電防止層12a及び12bの厚さは、互いに同一でもよいし、異なってもよい。また、帯電防止層12a及び12bの組成は、互いに同一でもよいし、異なってもよい。
基層は上記の成分[A]、又は、上記の成分[B]を含むが、必要に応じて、上記の熱可塑性樹脂組成物に配合可能な添加剤を含んでもよい。
上記基層の厚さは、好ましくは10μm〜5mm、より好ましくは50μm〜3mmである。
また、上記帯電防止層の厚さは、好ましくは10〜500μm、より好ましくは30〜200μmである。
従って、多層成形品の厚さは、好ましくは20μm〜5mm、より好ましくは60μm〜3mmである。
本発明の多層成形品の製造方法としては、基層、帯電防止層の順に積層形成してもよいし、共押出法により各層を所定の厚さをもって一度に形成させることもできる。一定の厚さの多層シート等を連続的に製造する場合には、共押出法が好適である。
本発明の多層成形品は、温度23℃、湿度50%RHの条件における表面固有抵抗を、好ましくは10Ω以下、より好ましくは10Ω以下、更に好ましくは10Ω以下とすることができる。
尚、上記基層は、上記の成分[A]、及び、上記の成分[B]以外の成分からなるものとすることもできる。その場合、基層を構成する材料としては、例えば、メタクリル酸メチル系樹脂、ポリアミド系樹脂、熱可塑性ポリエステル系樹脂等が挙げられる。
本発明の成形品及び多層成形品は、リレーケース、ウエハーケース、レクチルケース、マスクケース類、液晶トレイ、チップトレイ、メモリートレイ、CCDトレイ、ICトレイ等のトレイ類、偏光フィルムの保護シート、液晶を用いた表示装置・プラズマディスプレイ等の表面保護フィルム、半導体関連の保護フィルム、クリーンルーム内の保護フィルム等のフィルム類等の半導体関連分野、自動販売機内装部材等の分野等に好適に使用できる。
以下に実施例を挙げ、本発明を更に詳細に説明するが、本発明の主旨を超えない限り、本発明はかかる実施例に限定されるものではない。尚、実施例中において部及び%は、特に断らない限り質量基準である。また、実施例、比較例中の各種測定は、下記の方法に拠った。
1.評価方法
下記項目の測定方法、評価方法を、以下に示す。尚、成分[A]の形成に用いたゴム質重合体のゲル含率、成分[A]のうち、ゴム強化スチレン系樹脂のグラフト率、及び、成分[A]のアセトン可溶分の極限粘度[η]は、本文中に記載の方法で測定した。
(1)ゴム質重合体の数平均粒子径(Å)
成分[A]の形成に用いたラテックス中のゴム質重合体の数平均粒子径を、レーザー粒径解析装置(型式「LPA−3100」、大塚電子社製)により、光散乱法で測定し、70回積算でキュムラント法により算出した。尚、成分[A]を形成後のグラフト化ゴム質重合体の数平均粒子径は、上記粒子径とほぼ同じであることを電子顕微鏡で確認した。
(2)表面固有抵抗(Ω)
試験片を、温度23℃、湿度50%RHの条件下、24時間(1日)放置したものについて、各表面固有抵抗を、抵抗率計(商品名「ハイレスタUP MCP−HT450」、三菱化学社製)により、印加電圧500Vで測定した。
(3)耐衝撃性
ノッチ付きシャルピー衝撃強さをもって評価し、ISO179に準じて測定した。
(4)耐薬品性
試験片(長さ127mm×幅12.7mm×厚さ1mm)に1%歪みをかけ、その表面にエタノール(EtOH)又はメチルエチルケトン(MEK)を塗布し、23℃で72時間放置した。その後、試験片の表面状態を、下記基準に基づいて目視評価した。
○;変化なし
×;クラック発生又は溶解
(5)表面外観性
多層シート及びトレイについて、下記基準に基づいて目視評価した。
○;表面が滑らかで、形状が安定している。
×;表面に凹凸があるか、形状が不安定である。
2.熱可塑性樹脂組成物の原料成分
2−1.成分[A]
(1)A1(ゴム強化スチレン系樹脂)
以下の方法で得られた樹脂を用いた。
撹拌機を備えた内容積7リットルのガラス製フラスコに、窒素気流中、イオン交換水75部、ロジン酸カリウム0.5部、tert−ドデシルメルカプタン0.1部、ポリブタジエンラテックス(数平均粒子径;3,500Å、ゲル含率;85%)40部(固形分)、スチレン15部及びアクリロニトリル5部を投入し、撹拌しながら昇温した。内温が45℃に達した時点で、ピロリン酸ナトリウム0.2部、硫酸第一鉄7水和物0.01部及びブドウ糖0.2部をイオン交換水20部に溶解した溶液を加え、更に攪拌した。その後、クメンハイドロパーオキサイド0.07部を加えて重合を開始した。
1時間重合させた後、更にイオン交換水50部、ロジン酸カリウム0.7部、スチレン30部、アクリロニトリル10部、tert−ドデシルメルカプタン0.05部及びクメンハイドロパーオキサイド0.01部を3時間かけて連続的に添加した。
1時間重合を継続した後、2、2’−メチレンービス(4−エチル−6−tert−ブチルフェノール)0.2部を添加し重合を完結させた。反応生成物であるラテックスから、樹脂成分を硫酸水溶液により凝固、水洗した後、乾燥してゴム強化スチレン系樹脂A1を得た。このA1のグラフト率は68%、アセトン可溶分の極限粘度[η]は、0.45dl/gであった。
(2)A2(アクリロニトリル・スチレン共重合体)
以下の方法で得られた共重合体を用いた。
内容積30リットルのリボン翼を備えたジャケット付き重合反応容器を2基連結し、窒素置換した後、1基目の反応容器にスチレン75部、アクリロニトリル25部及びトルエン20部を連続的に添加した。その後、分子量調節剤としてtert−ドデシルメルカプタン0.12部及びトルエン5部の溶液、並びに、重合開始剤として、1、1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カーボニトリル)0.1部及びトルエン5部の溶液を連続的に供給し、1基目の反応容器における重合温度を110℃にコントロールし、平均滞留時間2.0時間として重合を行った。重合転化率は57%であった。
次いで、得られた重合体溶液は、1基目の反応容器の外部に設けたポンプにより、スチレン、アクリロニトリル、トルエン、分子量調節剤、及び重合開始剤の供給量と同量を連続的に取り出し2基目の反応容器に供給した。2基目の反応容器の重合温度は、130℃で行い、重合転化率は75%であった。2基目の反応容器で得られた共重合体溶液は、2軸3段ベント付き押出機を用いて、直接未反応単量体と溶剤を脱揮し、極限粘度[η]が0.48dl/gのスチレン系樹脂A2を得た。
2−2.成分[B]
(1)B1(ブロックタイプポリプロピレン)
日本ポリケム社製「ノバテックBC6C」(商品名)を用いた。
(2)B2(ホモタイプポリプロピレン)
日本ポリケム社製「ノバテックFY6C」(商品名)を用いた。
2−3.成分[C]
(1)C1(ポリオレフィン・ポリエーテルマルチブロック共重合体)
三洋化成工業社製「ペレスタット230」(商品名)を用いた。
(2)C2(ポリオレフィン・ポリエーテルマルチブロック共重合体)
三洋化成工業社製「ペレスタット303」(商品名)を用いた。
2−4.成分[D]を含む帯電防止剤
ボロンインターナショナル社製「ハイボロンMB400N−8LDPE」(商品名)を用いた。本商品は、同社製「ハイボロン400N」(高分子電荷移動型結合体)のポリエチレンマスターバッチであり、成分[D]としての有効成分は7%である。
2−5.成分[E]
(1)E1(スチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体)
JSR社製「TR2500」(商品名)を用いた。
(2)E2(スチレン・ブタジエンブロック共重合体の水素添加物)
JSR社製「DYNARON4600P」(商品名)を用いた。
3.熱可塑性樹脂組成物の製造及び評価
実施例1
表1に記載の成分の所定量を、ヘンシェルミキサーにより混合した。その後、二軸押出機を用いて溶融混練(シリンダー設定温度220℃)し、ペレット化された熱可塑性樹脂組成物を得た。尚、上記のように、成分[D]は、成分[B]に相当するポリエチレンを含むため、そのポリエチレン量については、B3として表1に記載した。
次に、基層を形成するための上記成分B2と、基層の表裏両面に帯電防止層を形成するための上記熱可塑性樹脂組成物とを、温度210℃で共押出し、基層の厚さが800μm、帯電防止層の厚さが各100μmである、厚さ1mmの多層シートを得た。この多層シートについて、表面固有抵抗(帯電防止性)、耐薬品性及び表面外観性を評価した。
また、上記多層シートを真空成形し、トレイを製造した。このトレイについて、表面外観性を評価した。
実施例2〜13及び比較例1〜11
表1及び表2に記載の成分の所定量を用いた以外は、実施例1と同様にして、熱可塑性樹脂組成物、シート及びトレイを製造し、表面固有抵抗及び表面外観性を評価した。
Figure 2006199829
Figure 2006199829
4.実施例の効果
表1及び表2より、以下のことが明らかである。
本発明の実施例1〜12は、表面固有抵抗が低く、帯電防止性に優れ、更に、耐薬品性及び表面外観性にも優れている。
成分[C]及び[D]を併用する帯電防止性の効果は、実施例1及び比較例5の対比で明らかである。即ち、実施例1における成分[C]及び[D]の使用量は、それぞれ、26%及び1.19%であり、その合計は27.19%である。一方、比較例5における成分[C]及び[D]の使用量は、それぞれ、27.19%及び0%であり、その合計は27.19%である。従って、実施例1及び比較例5において、帯電防止性を与える成分[C]及び[D]の合計量が同じであっても、成分[C]及び[D]を併用した実施例1は、表面固有抵抗が10倍以上低く、帯電防止性に優れることが分かる。
比較例1及び5は、成分[D]の含有量が、本発明の範囲外で少ない例であり、帯電防止性が劣る。比較例2は、本発明の成分[C]の含有量が本発明の範囲外で少ない例であり、帯電防止性が劣る。比較例3は、成分[C]の含有量が本発明の範囲外で多い例であり、成形品表面外観が劣る。比較例4は、成分[B]の含有量が本発明の範囲外で少ない例であり、耐薬品性が劣る。
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、従来にない優れた帯電防止性、耐薬品性、及び成形品表面外観を有するものであり、高度な性能が要求される、車両分野、電気・電子分野、OA・家電分野、サニタリー分野等の各種部品として適用できる。
本発明の多層成形品において、2層構造を有する成形品を示す概略断面図である。 本発明の多層成形品において、3層構造を有する成形品を示す概略断面図である。
符号の説明
1;2層型成形品、11;基層、12,12a及び12b;帯電防止層、2;3層型成形品。

Claims (9)

  1. [A]ゴム質重合体の存在下に、芳香族ビニル化合物を含むビニル系単量体を重合して得られたゴム強化スチレン系樹脂、及び/又は、該ビニル系単量体の(共)重合体4.95〜93.95質量%と、[B]ポリオレフィン系樹脂(但し、下記[C]を除く。)5〜94質量%と、[C]オレフィン重合体ブロック及び親水基を有する重合体ブロックを含むブロック共重合体1〜50質量%と、[D]ホウ素化合物0.05〜10質量%とを含有(但し、[A]+[B]+[C]+[D]=100質量%である。)することを特徴とする熱可塑性樹脂組成物。
  2. 上記ホウ素化合物[D]は、下記式(I)で表される単位を含む請求項1に記載の熱可塑性樹脂組成物。
    Figure 2006199829
  3. 更に、相溶化剤を含有し、該相溶化剤の含有量が、上記成分[A]、[B]、[C]及び[D]の合計を100質量部とした場合に、1〜200質量部である請求項1又は2に記載の熱可塑性樹脂組成物。
  4. 請求項1乃至3のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物からなることを特徴とする成形品。
  5. 上記成形品が、シート又はフィルムである請求項4に記載の成形品。
  6. 温度23℃、湿度50%RHの条件における表面固有抵抗が10Ω以下である請求項4又は5に記載の成形品。
  7. 請求項1に記載の成分[A]、又は、請求項1に記載の成分[B]を含む基層と、該基層の少なくとも1面に配され、且つ、請求項1乃至3のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物からなる帯電防止層とを備えることを特徴とする多層成形品。
  8. 上記多層成形品が、シート又はフィルムである請求項7に記載の多層成形品。
  9. 上記帯電防止層の表面の、温度23℃、湿度50%RHの条件における表面固有抵抗が10Ω以下である請求項7又は8に記載の多層成形品。
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