JP2006194428A - スプリング、サスペンション装置及び車両 - Google Patents

スプリング、サスペンション装置及び車両 Download PDF

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Abstract

【課題】 簡単な構成でありながら、圧縮時のバックリングを減少させることができるスプリング、サスペンション装置及び車両を提供する。
【解決手段】 本発明のスプリングは、総巻数を調整することにより、一端側と他端側で圧縮時の曲げ方向を異ならせた構成としてある。好ましくは、一端側と他端側の各一巻目部分11,21における、終端部11a,21aから二巻目方向に約225°の位置を基準にして約±45°の範囲が互いに重複しない総巻数とし、一端側と他端側で圧縮時の曲げ方向を異ならせた構成とする。また、一端側と他端側の各一巻目部分11,21における、圧縮時の曲げ最大点P1,P2を基準にして約±45°の範囲が互いに重複しない総巻数とし、一端側と他端側で圧縮時の曲げ方向を異ならせた構成とする。
【選択図】 図8

Description

本発明は、圧縮時のバックリング(スプリングの中心線に対する胴曲がり)を減少させることができるスプリング、該スプリングを備えたサスペンション装置、及び該サスペンション装置を備えた自動二輪車等の車両に関する。
近年、レースなどの特殊用途に用いられる自動二輪車では、従来のFe製スプリングと比較して、より軽量なTi製スプリングをサスペンション装置等に採用することが行われている。例えば、サスペンション装置にTi製スプリングを採用した場合は、従来のFe製スプリングと比較して200〜500gの軽量化(ばね定数による)を図ることができる。
米国特許出願公開第2002/0105127号明細書
しかし、材料強度の高い素材からなるスプリングから、材料強度の低い素材からなるスプリングに交換する場合、例えば、既存のサスペンション装置に備わったFe製スプリングを、該Fe製スプリングと同じばね常数のTi製スプリングに交換するといった場合は、該Ti製スプリングの強度を確保するために線径を太くしなければならない。
このため、サスペンション装置のショックアブゾーバーを構成するシリンダと交換したTi製スプリングとのクリアランスが小さくなり、該Ti製スプリングが、圧縮時にバックリングを生じてシリンダと接触してしまうおそれがあった。
そこで、米国特許出願公開第2002/0105127号(特許文献1)では、スプリングの中心軸を湾曲するように形成するとともに、スプリング両端の各一巻目部分が、それぞればね受け部材に対して所定角度だけ傾斜するようにしたスプリングが提案されている。しかし、スプリングの中心軸を湾曲させた構成では、該スプリングの非圧縮時においてバックリングしているに等しい状態となり、上記サスペンション装置に用いた場合は、ショックアブゾーバーを構成するシリンダにスプリングが接触してしまうおそれがある。
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、簡単な構成でありながら、圧縮時のバックリングを減少させることができるスプリング、サスペンション装置及び車両の提供を目的とする。
上記目的を達成するために、本発明の第1のスプリングは、総巻数を調整することにより、一端側と他端側で圧縮時の曲げ方向を異ならせた構成としてある。また、本発明の第2のスプリングは、一端側と他端側の各一巻目部分における、終端部から二巻目方向に約225°の位置を基準にして約±45°の範囲が互いに重複しない総巻数とし、前記一端側と他端側で圧縮時の曲げ方向を異ならせた構成としてある。
上記目的を達成するために、本発明の第3のスプリングは、一端側と他端側の各一巻目部分における、圧縮時の曲げ最大点を基準にして約±45°の範囲が互いに重複しない総巻数とし、前記一端側と他端側で圧縮時の曲げ方向を異ならせた構成としてある。
上記目的を達成するために、本発明の第4のスプリングは、総巻数を、下記式(1)又は式(2)の通りにした構成としてある。
N=n+0.75…(1)
N=n−0.25…(2)
但し、N:スプリングの総巻数、n:整数
上記目的を達成するために、本発明の第5のスプリングは、総巻数を、下記式(3)又は式(4)の通りにした構成としてある。
N=(n+0.75)±0.125…(3)
N=(n−0.25)±0.125…(4)
但し、N:スプリングの総巻数、n:整数
好ましくは、上記構成からなるいずれかのスプリングにおいて、前記一巻目部分の終端部が二巻目部分に接触することを防止する接触防止部を備えたスプリング用スペーサを装着した構成とする。
上記目的を達成するために、本発明のサスペンション装置は、上記構成からなるいずれかのスプリング備えた構成としてある。好ましくは、前記スプリングをTi製とするとともに、該スプリングの一端又は両端に接触するばね受け部材をFe製とした構成とする。また、好ましくは、前記スプリングをTi製とするとともに、該スプリングの一端又は両端に接触するばね受け部材をAl製とし、これらスプリングとばね受け部材の間に樹脂製のスペーサを介在させた構成とする。
上記目的を達成するために、本発明の車両は、上記構成からなるいずれかのスプリング備えたサスペンション装置を具備した構成とする。
本発明のスプリングによれば、総巻数を調整して一端側と他端側で圧縮時の曲げ方向を異ならせるといった簡単な構成により、スプリングの中心線に対する一方向の胴曲がり、すなわち、バックリングを効果的に減少させることができる。
したがって、上記スプリングを、車両のサスペンション装置に用いれば、これらサスペンション装置及び車両におけるスプリングのバックリングを効果的に減少させることができる。
以下、本発明の実施形態に係るスプリング、サスペンション装置及び車両について、図面を参照しつつ説明する。まず、本スプリングを備えたサスペンション装置及び車両の実施形態について、図1〜図3を参照しつつ説明する。
図1は本発明の実施形態に係る車両(オフロードタイプの自動二輪車)を示す要部側面図である。また、図2及び図3は本発明の実施形態に係るサスペンション装置を示す部分断面図である。
図1において、100はオフロードタイプの自動二輪車のリヤアーム支持部を示しており、車体フレーム104の車両斜め下方に上下方向に拡開して延びるリヤアームブラケット104b、図示しないシート、左,右のシートレール及び左,右のシートステーで囲まれた空間にはエアクリーナ107が配設してある。該エアクリーナ107は、エアクリーナケース107a内に空気を濾過するエレメントを配設した構成となっている。
リヤアームブラケット104bの後側下端部には、リヤアーム110がピボット軸111により上下揺動自在に枢支してあり、該リヤアーム110の後端部には、後輪112が軸支してある。該リヤアーム110は、左,右のアーム部110a,110aの前端部間に角筒状のクロスパイプ110bを結合した構成となっている。該クロスパイプ110bは、後輪112の前縁との隙間が最小限となるようできるだけ近接した位置に配置してあり、これによりホイールベースを短くするとともにリヤアーム110全体の必要強度,剛性を確保している。なお、左,右のアーム部110a,110aとクロスパイプ110bは、鋳造による一体構造としてもよい。
また、左のアーム部110a上には、駆動チェンの上部を覆うチェンケース105が配設してある。このチェンケース105の前縁部105aは、クロスパイプ110bの上面に位置している。なお、このようなチェンケース105を構成から省略してもよい。
車体フレーム104とリヤアーム110との間で、かつ車両中心線上には、1つの倒立型のサスペンション装置114が配設してある。該サスペンション装置114は、図2に示すように、主として、シリンダ115、ピストンロッド116、リザーバタンク117、Ti製スプリング(スプリング)1、及びリンク機構118(図1参照)を備えた構成としてある。
シリンダ115は、図1に示すように、リヤアームブラケット104bの後上端部のブラケット104aに連結してある。また、図2に示すように、シリンダ115の上端側外周面には、雄ねじ115aが設けてあり、該雄ねじ115aには、ロックナット115bと後述するばね受け部材2がそれぞれ螺合してある。
ピストンロッド116は、シリンダ115内に摺動自在に挿入した図示しないピストンに接続してあり、該シリンダ115の下方に突出している。該ピストンロッド116の下端側には、前記ばね受け部材2と対になる金属製のばね受け部材2と、該ばね受け部材2を支持する荷重受け部材116a,116bと、リンク部116cとを取り付けてある。
リザーバタンク117は、図示しない圧油の流路を介してシリンダ115内に連通しており、ピストンロッド116の伸縮時において、該シリンダ115内の圧油体積の増減を吸収している。
Ti製スプリング1は、シリンダ115及びピストンロッド116に外装してあり、上下一対の前記ばね受け部材2,2で保持してある。図示しない工具によりロックナット115bとばね受け部材2の締結位置を変更することで、Ti製スプリング1の付勢力を調整可能となっている。該Ti製スプリング1には、後述する本実施形態のスプリング用スペーサ5(図9〜11参照)が取り付けてある。
リンク機構118は、図1に示すように、リヤアームブラケット104bの下端に軸支した第1リンク120と、クロスパイプ110bの下面に軸支した第2リンク121とを備えた構成としてある。該リンク機構118の第1リンク120に、ピストンロッド116のリンク部116cを連結することにより、該ピストンロッド116をリヤアーム110に連結している。
ここで、上述したばね受け部材2は、筒状の胴部2aに、Ti製スプリング1の荷重を受ける鍔部2bを一体化した金属製の部材である(胴部2a及び鍔部2bについては図11参照)。一方のばね受け部材2には、胴部2aの内側にシリンダ115の雄ねじ115aに螺合する図示しない雌ねじが設けてある。
該ばね受け部材2は、図2に示すように、Ti製スプリング1の両端を保持してその荷重(例えば、オフロード走行時の荷重で7500N)を受けている。なお、鍔部2bのTi製スプリング1との当接面は、該Ti製スプリング1の荷重を受ける「ばね受け面」に相当する。
本実施形態では、Ti製スプリング1の両端に接触する各ばね受け部材2をFe製とすることにより、異種金属どうしの接触による電食を防止している。すなわち、Feは、他の金属と比較してTiとの電位差が小さく、各ばね受け部材2をFe製とした場合は、Ti製スプリング1の荷重に対する耐久性を確保しつつ、これらばね受け部材2の電食を防止することができる。
また、図3に示すように、各ばね受け部材3をAl製とし、Ti製スプリング1の両端と各ばね受け部材3の間に樹脂製のスペーサ4を介在させた構成としてもよい。このような構成とすることにより、Ti製スプリング1とAl製のばね受け部材3の電飾を防止することができるとともに、各ばね受け部材3をAl製としてサスペンション装置の軽量化を図ることができる。
次に、本実施形態に上記Ti製スプリング1について、図4〜図8を参照しつつ説明する。なお、説明の便宜上、本実施形態に係る上記Ti製スプリング1を、以下、単に「スプリング1」という。また、図4〜図8には、本発明の構成要件を具備するスプリングのみならず、本発明の構成要件を具備しないスプリング(比較例)も含まれているが、説明上はいずれも「スプリング1」と称する。
図4はスプリングのバックリングを説明するための斜視図である。図5はシミュレーションデータにより計算したスプリングの総巻数とバックリング値の関係を示す棒グラフである。図6は試作実機のスプリングの総巻数とバックリング値の関係を示す棒グラフである。図7は総巻数が異なる数種のスプリングの各ポイントにおけるバックリング量を示す曲線グラフである。図8はスプリングの総巻数とバックリングの関係を説明するためのスプリング両端部の平面図である。
図4において、一般にスプリング1のバックリングとは、一般に、スプリング1を圧縮したときに生じる該スプリング1の中心線に対する胴曲がりをいう(図中の点線参照)。本発明者が、スプリング1の総巻数、線径、全長、両端部の固定又は非固定(上下点スリップ)等に着目して、バックリングの生じる原因をシミュレーションしたところ、スプリング1の総巻数による影響が大きく、その他の要因による影響が小さいことが分かった。
詳述すると、総巻数7.25〜8.25の範囲で9種のスプリング1のバックリング量をシミュレーションするとともに(図5参照)、このシミュレーション結果から、総巻数を7.75〜8.3の範囲に厳選した6種の試作実機のスプリングで実験を行った(図6参照)。なお、上記シミュレーションでは、圧縮(ストローク)時の長さを150.0mmに設定した。一方、上記実機実験では、フルストローク付近で線径どうしの接触が生じてバックリングが収束するため、圧縮時の長さを112.5mmとした。
上記シミュレーション及び実機実験の双方の結果、スプリング1の総巻数によりバックリング量が影響を受けていることが分かる。また、サスペンション用であるスプリング1では、総巻数7.75とした場合にバックリングが少ないことも明らかとなった。
そこで、上記シミュレーションと同じ総巻数の異なる9種のスプリング1について、巻き線の各ポイントにおけるバックリング量を更にシミュレーションした(図7参照)。図7中、横軸がスプリングの一端から他端までの巻線の各ポイントを示し、縦軸がバックリング量を示している。したがって、同図中の各曲線グラフの曲線形状は、そのままバックリングを生じたときのスプリングの湾曲形状を示していると考えてよい。
このシミュレーションの結果、総巻数が7.625、7.75及び7.875の場合は、スプリング1の一端側と他端側で圧縮時の曲げ方向が互いに異なり、全体として大きなバックリングが生じないことが明らかとなった。逆に、総巻数が上記7.625、7.75及び7.875以外の場合は、スプリング1の一端側と他端側で圧縮時の曲げ方向が互いに重複し合い、全体として一方向に湾曲する大きなバックリングが生じてしまうことが分かった。
そこで、本発明者が鋭意検討した結果、図4及び図8に示すように、スプリング1の一端側と他端側の各一巻目部分11,21における、終端部11a,21aから二巻目方向(二巻目部分12,22参照)に約225°の位置付近に、該スプリング1を圧縮したときの曲げ最大点P1,P2があると考えられる。
ここで、曲げ最大点P1,P2とは、圧縮荷重を受けたときに、スプリング1の各一巻目部分11,21において最も変位が大きい点をいう。この曲げ最大点P1,P2が、スプリング1がバックリングするときの起点になると考えられる。なお、曲げ最大点P1,P2は、終端部11a,21aから二巻目方向に約225°の位置と一致するものではなく、約225°の位置付近にあると考えられる。
そこで、本発明者は、スプリング1の一端側と他端側の各一巻目部分11,21における、終端部11a,21aから二巻目方向に約225°の位置、又は圧縮時の曲げ最大点P1,P2を基準にして約±45°の範囲(図8の斜線部参照)が互いに重複しない総巻数とすることを見出した。このような構成により、スプリング1の一端側と他端側で圧縮時の曲げ方向を異ならせ、全体として大きなバックリングが生じないようにすることができた。
上記構成を具備するためには、スプリング1の総巻数を、下記式(1)又は式(2)の通りとする。
N=n+0.75…(1)
N=n−0.25…(2)
但し、N:スプリングの総巻数、n:整数
上記式(1)又は式(2)を満たす総巻数Nのスプリング1は、図8の(0.75)の平面図に示すように、各一巻目部分11,21における、終端部11a,21aから二巻目方向に約225°の位置、又は圧縮時の曲げ最大点P1,P2を基準にして約±45°の範囲が互いに反対側に位置して重複しない。この場合は、スプリング1の一端側と他端側で圧縮時の曲げ方向が互いに逆方向となり、最もバックリングを減少させることができる。
また、スプリング1の総巻数を、下記式(3)又は式(4)の通りとしてもよい。
N=(n+0.75)±0.125…(3)
N=(n−0.25)±0.125…(4)
但し、N:スプリングの総巻数、n:整数
上記式(3)又は式(4)を満たす総巻数Nのスプリング1でも、図8の(0.625)又は(0.875)の平面図に示すように、各一巻目部分11,21における、終端部11a,21aから二巻目方向に約225°の位置、又は圧縮時の曲げ最大点P1,P2を基準にして約±45°の範囲が互いに重複しない。この場合でも、スプリング1の一端側と他端側で圧縮時の曲げ方向が互いに逆方向となり、バックリングを減少させることができる。
逆に、スプリング1の総巻数を、下記式(5)〜式(9)の通りとした場合は、図8の(0.5)、(0.375)、(0.25)、(0.125)又は(0)の平面図に示すようなる。すなわち、スプリング1の各一巻目部分11,21における、終端部11a,21aから二巻目方向に約225°の位置、又は圧縮時の曲げ最大点P1,P2を基準にして約±45°の範囲が一部重複又は全部重複してしまう。この結果、スプリング1の一端側と他端側で圧縮時の曲げ方向が互いに重複し合い、全体として一方向に湾曲する大きなバックリングが生じてしまう。
N=n+0.5 …(5)
N=n+0.375…(6)
N=n+0.25 …(7)
N=n+0.125…(8)
N=n …(9)
但し、N:スプリングの総巻数、n:整数
以上のような本実施形態に係るスプリング1によれば、総巻数を調整して一端側と他端側で圧縮時の曲げ方向を異ならせるといった簡単な構成により、スプリング1の中心線に対する一方向の胴曲がり、すなわち、バックリングを効果的に減少させることができる。
したがって、上記スプリング1を、自動二輪車等の車両のサスペンション装置114に用いれば、これらサスペンション装置114及び車両におけるスプリング1のバックリングを効果的に減少させることができる。
この結果、例えば、既存のサスペンション装置114に備わった線径の細いFe製スプリングを、該Fe製スプリングよりも線径の太いTi製スプリングに交換する場合でも、該Ti製スプリングのバックリングを効果的に減少させて、サスペンション装置114のシリンダ115との接触を防止することができる。
より好ましくは、上述した本実施形態に係るスプリング(上記Ti製スプリング)1に、図9〜図11に示すようなスプリング用スペーサを装着した構成とするとしてもよい。図9は本実施形態に係るスプリングに装着されるスプリング用スペーサの斜視図である。図10は本実施形態に係るスプリングに上記スプリング用スペーサを装着した状態を示す斜視図である。図11は本実施形態に係るスプリングに上記スプリング用スペーサ及びばね受け部材を装着した状態を示す斜視図である。
図9において、本スプリング用スペーサ5は、主として、板状の接触防止部51の一側面に、下方へと伸びて外側に湾曲する弾性係合片(保持部)52を連成するとともに、該接触防止部51の先端側に、回り止め部53,54を所定の間隔で突設した構成としてある。
接触防止部51の肉厚L1は、図10に示す本実施形態に係るスプリング1の一巻目部分11(21)と二巻目部分12(22)の隙間L2と比較して組み付け上、不具合の生じない厚さにしてあり、該隙間L2に接触防止部51を挿入して配置させることが可能となっている。また、該接触防止部51は、前記スプリング1の一巻目部分11及び二巻目部分12とほぼ同一の曲率半径の円弧状としてある。さらに、接触防止部51の、一巻目部分11の終端部11a(21a)に対応する部分に段差状の凹部51aを設け、該凹部51aの肉厚を、その他部分の肉厚よりも薄くしてある。
弾性係合片52の内周面52aは、スプリング1の二巻目部分12の内側周面に対応する断面円弧状としてあり、該二巻目部分12の内側周面を弾性的に把持することが可能となっている。また、弾性係合片52の内周面52aは、スプリング1の二巻目部分12の内側周面よりも若干曲率半径を小さくしてあり、該二巻目部分12の直径に寸法誤差が生じた場合でも、十分な把持力が得られるようにしてある。
一対の回り止め部53,54は、高さと肉厚がそれぞれ異なる片状部材であり、回り止め部材53は、回り止め部材54との比較で、その高さを高く、肉厚を薄くしてあり、上方からの荷重に対して変形可能な構成としてある。また、該回り止め部材53の断面を略三角形状として、基部側の肉厚を厚くすることにより、側方からの荷重に対して変形しにくい構成としてある。このような回り止め部材53は、スプリング1の一巻目部分11の端部11aに当接して、スプリング用スペーサ5が二巻目部分12の方向に移動することを阻止している。
また、回り止め部54は、回り止め部53との比較で、その高さを低く、肉厚を厚くしてあり、回り止め部53程ではないが、上方からの荷重に対して変形可能な構成としてある。スプリング1の一巻目部分11の終端部11aに、図11に示すばね受け部材2を装着した場合、該一巻目部分11の方向のスペースが、その高さ方向に狭小となるので、回り止め部54により、前記スプリング用スペーサ5の一巻目部分11の方向の移動が阻止される。
上記構成からなるプリング用スペーサ5のスプリング1への装着方法について説明する。図10に示すように、スプリング1の一巻目部分11と二巻目部分12の隙間L2に、スプリング用スペーサ5の接触防止部51を挿入しつつ、スプリング用スペーサ5の弾性係合片52を、スプリング1の二巻目部分12の内側周面に弾性的に係合させて、該スプリング用スペーサ5を仮止めする。
その後、図11に示すように、スプリング1の一巻目部分11にばね受け部材2を取り付けることにより、スプリング用スペーサ5の装着が完了する。すなわち、スプリング1の一巻目部分11内周に、ばね受け部材2の胴部2aを押し込んで、その円環状の鍔部2bをスプリング1の一巻目部分11の終端部11bに当接させる。これにより、スプリング用スペーサ5が、スプリング1内側からばね受け部材2の胴部2aによって押さえられ、該スプリング1内側への脱落が防止される。また、スプリング用スペーサ5のスプリング1外側への脱落は、弾性係合片52が二巻目部分12内周側面に当接することにより防止される。
このようなスプリング用スペーサ5をスプリング1に装着した場合は、Ti製等の表面硬度の低いスプリング1の、一巻目部分11の終端部11aと二巻目部分12の接触を簡単な構成により確実に防止して耐久性の向上を図ることができる。したがって、本実施形態に係るスプリング1におけるバックリング低減の効果と相まって、より信頼性の高いスプリング1、サスペンション装置114及び車両を提供することができる。
また、接触防止部51の肉厚L1を、該接触防止部51が装着されるスプリング1の一巻目部分11と二巻目部分12の隙間L2と比較して組み付け上、不具合の生じない厚さにしてある。これにより、スプリング用スペーサ5を、スプリング1の一巻目部分11と二巻目部分12の隙間L2に容易に配置させることができる。
これに加え、本実施形態のスプリング用スペーサ5では、弾性係合片52をスプリング1の二巻目部分12の内側周面に弾性的に係合させ、スプリング用スペーサ5を、スプリング1の一巻目部分11と二巻目部分12の隙間L2に安定的に保持することができる。これにより、本スプリング用スペーサ5のスプリング1への装着が極めて容易となる。
なお、本発明は、上述した実施形態のスプリング、サスペンション装置及び車両に限定されるものではない。例えば、本発明に係るスプリングは、上述したTi製スプリングに限定されるものではなく、Ti製以外の各種スプリングにおいてバックリングを低減させることができる。また、本発明のスプリングは、サスペンション用以外の装置にも広く適用することができる。
さらに、本発明のスプリングに装着されるスプリング用スペーサは、上記実施形態のものに限定されず、本特許出願の優先権主張の基礎となる特願2004−364417号において開示した各種のスプリング用スペーサを適用することができる。
これに加え、上記実施形態では、車両を自動二輪車として説明したが、これに限定されるものではない。本スプリングの適用可能な「車両」は、自動二輪車や自動車が含まれる。詳述すると、「自動二輪車」はモータサイクルの意味であり、原動機付自転車(モーターバイク)、スクータを含み、具体的には、車体を傾動させて旋回可能な車両のことをいう。したがって、前輪及び後輪の少なくとも一方を二輪以上にして、タイヤ数のカウントで三輪車、四輪車(又はそれ以上)としても、それは「自動二輪車」に含まれる。さらに、本スプリング用スペーサは「自動二輪車」以外に、いわゆる鞍乗型車両、例えば、スノーモービル、四輪バギー(ATV:All Terrain Vehicle=全地形型車両)等にも適用することができる。
本発明の実施形態に係る車両(オフロードタイプの自動二輪車)を示す要部側面図である。 本発明の実施形態に係るサスペンション装置の部分断面図である。 本発明の実施形態に係る他のサスペンション装置の部分断面図である。 スプリングのバックリングを説明するための斜視図である。 シミュレーションデータにより計算したスプリングの総巻数とバックリング値の関係を示す棒グラフである。 試作実機のスプリングの総巻数とバックリング値の関係を示す棒グラフである。 総巻数が異なる数種のスプリングの各ポイントにおけるバックリング量を示す曲線グラフである。 スプリングの総巻数とバックリングの関係を説明するためのスプリング両端部の平面図である。 本実施形態に係るスプリングに装着されるスプリング用スペーサの斜視図である。 本実施形態に係るスプリングに上記スプリング用スペーサを装着した状態を示す斜視図である。 本実施形態に係るスプリングに上記スプリング用スペーサ及びばね受け部材を装着した状態を示す斜視図である。
符号の説明
1 スプリング
11,21 一巻目部分
12,22 二巻目部分
11a,21a 終端部
P1,P2 曲げ最大点
2 ばね受け部材
5 スプリング用スペーサ
51 接触防止部
51a 凹部
52 弾性係合片(保持部)
52a 内周面
53,54 回り止め部

Claims (10)

  1. 総巻数を調整することにより、一端側と他端側で圧縮時の曲げ方向を異ならせたことを特徴とするスプリング。
  2. 一端側と他端側の各一巻目部分における、終端部から二巻目方向に約225°の位置を基準にして約±45°の範囲が互いに重複しない総巻数とし、前記一端側と他端側で圧縮時の曲げ方向を異ならせたことを特徴とするスプリング。
  3. 一端側と他端側の各一巻目部分における、圧縮時の曲げ最大点を基準にして約±45°の範囲が互いに重複しない総巻数とし、前記一端側と他端側で圧縮時の曲げ方向を異ならせたことを特徴とするスプリング。
  4. 総巻数を、下記式(1)又は式(2)の通りにしたことを特徴とするスプリング。
    N=n+0.75…(1)
    N=n−0.25…(2)
    但し、N:スプリングの総巻数、n:整数
  5. 総巻数を、下記式(3)又は式(4)の通りにしたことを特徴とするスプリング。
    N=(n+0.75)±0.125…(3)
    N=(n−0.25)±0.125…(4)
    但し、N:スプリングの総巻数、n:整数
  6. 前記一巻目部分の終端部が二巻目部分に接触することを防止する接触防止部を備えたスプリング用スペーサを装着したことを特徴とする請求項1〜5いずれか記載のスプリング。
  7. 請求項1〜5いずれか記載のスプリングを備えたことを特徴とするサスペンション装置。
  8. 前記スプリングをTi製とするとともに、該スプリングの一端又は両端に接触するばね受け部材をFe製としたことを特徴とする請求項7記載のサスペンション装置。
  9. 前記スプリングをTi製とするとともに、該スプリングの一端又は両端に接触するばね受け部材をAl製とし、これらスプリングとばね受け部材の間に樹脂製のスペーサを介在させたことを特徴とする請求項7記載のサスペンション装置。
  10. 請求項1〜5いずれか記載のスプリングを備えたサスペンション装置を具備することを特徴とする車両。
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