プリンタ装置には、用紙を搬送する機構としてグリッドローラとプレスローラを備えたものがある。この種のプリンタ装置では、図14に示すように、グリッドローラ104とこのグリッドローラ104に向かって用紙を押し付けるプレスローラ108とが配設されている。特に、グリッドローラ104の表面には、送られてくる用紙110との摩擦を大きくして用紙110を確実に搬送するために、たとえばセラミック粒子が塗布形成されている。
用紙110に印刷を行なう際には、グリッドローラ104に向かって送られてくる用紙110に対して、まず、グリッドローラ104は用紙の送り方向とは反対向きに送る方向に回転している。これによって、用紙110の先端がグリッドローラ104とプレスローラ108との隙間に達すると、直ちにその隙間から送り出されずに、用紙110が斜めに送られてきた場合に用紙110の先端側の辺がグリッドローラ104の回転軸と平行になるように用紙110の位置ずれが補正される。すなわち、斜行補正が行なわれることになる。
用紙110の斜行補正が行なわれた後、グリッドローラ104は反対の向きに回転を始めることによって、グリッドローラ104とプレスローラ108との隙間から用紙110が送り出されて、用紙110に印刷が行なわれることになる。この種のプリンタ装置では、以上のようにして用紙に印刷が行なわれる。なお、特許文献1には斜行補正機能を有する給紙装置が提案されている。
特開2002−154702号公報
ところで、印刷が行なわれる用紙の中には、たとえば図14に示すように、先端部分が折れたものや曲がったものがある。特に、封書の場合には糊付けされるため角が曲がりやすくなっている。上述したプリンタ装置では、そのような先端部分が折れたり曲がったりした用紙に印刷を行う場合に以下のような問題点があった。
まず、図15および図16に示すように、矢印121に示すようにグリッドローラ104に向かって送られてくる用紙110の先端部が折れている場合、図17に示すように、そのような用紙110の先端がグリッドローラ104とプレスローラ108との隙間に接近すると、用紙110の先端の折れ部110aが、折れていない側よりも先にグリッドローラ104の表面に接触することになる。このとき、グリッドローラ104は用紙の送り方向(矢印121)とは反対向きに送る方向(矢印122)に回転していることにより、先端の角部が折れている側が折れていない側に比べて用紙110の送りが阻害されることになる。
そのため、図18に示すように、本来、点線125に示すように斜行補正されるべきところ、用紙(実線)110が斜行してしまう。この状態で、図19および図20に示すように、矢印123に示す向きにグリッドローラ104が回転を始めると、用紙110は本来の状態(点線126)に対して斜行したまま送り出されることになる。そのため、用紙110に対して斜めに印刷されてしまうという問題点があった。
本発明は上記問題点を解決するためになされたものであり、その目的は、先端の角部が折れた用紙でも確実に斜行補正されるプリンタ装置を提供することである。
本発明に係るプリンタ装置は、所定の用紙に印刷を行なうプリンタ本体とグリッドローラとプレスローラとを有している。グリッドローラは用紙を送り出すためにプリンタ本体に配設されている。プレスローラはグリッドローラと対向するように配設され、用紙をグリッドローラの側に押し付ける。そのグリッドローラは、金属製のパイプと樹脂層とセラミック粒子とを有して形成されている。樹脂層はパイプの表面に形成されている。セラミック粒子は樹脂層の上に塗布されている。そして、グリッドローラは、用紙を送り出すための大径部とその大径部よりも径が小さい小径部とを備えている。小径部は用紙の角部の位置に対応する部分に形成されている。
この構成によれば、グリッドローラに、用紙を送り出す大径部と、用紙の角部に対応する部分にその大径部よりも径の小さい小径部とが形成されていることで、たとえ先端の角部が折れた用紙が送られてきたとしても、その折れ部がグリッドローラに接触することが阻止される。これにより、折れ部の位置する側の用紙の送りが、折れ部の位置しない側の用紙の送りに対して阻害されることがなくなって、用紙に対して所定の斜行補正が行なわれる。その結果、用紙を斜行した状態で送り出すことがなくなって、用紙に印刷を適切に行なうことができる。
本発明に係る他のプリンタ装置は、所定の用紙に印刷を行なうプリンタ本体とグリッドローラとプレスローラとを有している。グリッドローラは用紙を送り出すためにプリンタ本体に配設されている。プレスローラはグリッドローラと対向するように配設され、用紙をグリッドローラの側に押し付ける。グリッドローラは、用紙に対して所定の摩擦力をもって用紙を送り出す第1領域と、用紙との摩擦力が前記第1領域における摩擦力よりも小さい第2領域とを備えている。その第2領域は用紙の角部の位置に対応する部分に形成されている。
この構成によれば、たとえ先端の角部が折れた用紙が送られてきたとして、その折れ部がグリッドローラの第2領域に接触しても摩擦力が弱く、折れ部の位置する側の用紙の送りが、折れ部の位置しない側の用紙の送りに対して阻害されることがなくなる。これにより、用紙に対して所定の斜行補正が行なわれて、用紙を斜行した状態で送り出すことがなくなり、用紙に印刷を適切に行なうことができる。
折れ部がグリッドローラに接触するのを阻止するには、第1領域は所定の径を有する大径部であり、第2領域は大径部よりも径の小さい小径部であることが好ましい。
そのグリッドローラが、筒状部材と、その筒状部材の表面に形成された樹脂層と、その樹脂層の上に塗布されたセラミック粒子とを含んで形成されている場合には、小径部における筒状部材の径は、大径部における筒状部材の径よりも小さくされた構造であるか、あるいは、小径部における樹脂層の厚みが、大径部における樹脂層の厚みよりも薄くされた構造であることが好ましい。
また、折れ部がグリッドローラに接触しても摩擦力を軽減するには、第2領域にはセラミック粒子が塗布されず、第1領域にセラミック粒子が塗布されていることが好ましい。
そして、この場合、そのグリッドローラが、筒状部材と、その筒状部材の表面に形成された樹脂層とを含んで形成されている場合には、第1領域に位置する樹脂層の上にセラミック粒子が塗布されていることが好ましい。
実施の形態
本発明の実施の形態に係るプリンタ装置について説明する。図1に示すように、プリンタ装置1には、用紙に印刷を行なうプリンタ本体2を備え、そのプリンタ本体2にその用紙を供給するためのペーパーサポート3が取付けられている。ペーパーサポート3には、所定のサイズの用紙10がサポートされている。プリンタ本体2には、ペーパーサポート10から給紙される用紙10を搬送するためのグリッドローラ4とプレスローラ8とが配設されている。
そのグリッドローラ4には、図2に示すように、大径部4aと、その大径部4aよりも径の小さい小径部4bとが形成されている。プレスローラ8によってグリッドローラ4の側に押し付けられた用紙10は、大径部10によって送り出されることになる。一方、小径部4bは用紙10の角の位置に対応する部分に形成されている。図3に示すように、そのグリッドローラ4は、金属製のパイプ5と、そのパイプ5の表面にコーティングされた樹脂層6と、その樹脂層6上に塗布されたセラミック粒子7とによって形成されている。
次に、上述したプリンタ装置の動作として、図2に示すように、特に、先端の角部が折れて折れ部10aが形成された用紙10に印刷を行なう場合について説明する。まず、図4および図5に示すように、矢印21に示すようにグリッドローラ4に向かって送られてくる用紙10に対して、グリッドローラ4は用紙の送り方向(矢印21)とは反対向きに送る方向(矢印22)に回転している。次に、図6に示すように、用紙10の先端がグリッドローラ4とプレスローラ8との隙間に接近すると、用紙10の折れ部10aが、折れていない側の先端よりも先にグリッドローラ4の表面に接触しようとする。
このとき、図7に示すように、グリッドローラ4における用紙10の角部に対応する部分には、大径部4aよりも径の小さい小径部4bが形成されていることで、図8に示すように、折れ部10aがグリッドローラ4に接触することが阻止される。また、たとえ折れ部10aが接触しても、用紙10とグリッドローラ4との摩擦が大幅に低減される。これにより、グリッドローラ4が矢印22に示す方向に回転していることに伴って、折れ部10aの位置する側の用紙10の送りが、折れ部の位置しない側の用紙10の送りに対して阻害されることがなく、図7に示すように、用紙10に対する所定の斜行補正が行なわれる。
所定の斜行補正が行なわれた後、図9および図10に示すように、グリッドローラ4が矢印23に示す向きに回転を始め、用紙10が斜行することなく送られて、用紙10に印刷が行なわれることになる。
上述したプリンタ装置によれば、グリッドローラ4に、用紙を送り出す大径部と、用紙10の角部に対応する部分に、その大径部4aよりも径の小さい小径部4bが形成されていることで、先端の角部が折れた用紙の折れ部10aがグリッドローラ4に接触することが阻止される。これにより、折れ部10aの位置する側の用紙10の送りが、折れ部の位置しない側の用紙10の送りに対して阻害されることがなくなって、用紙10に対して所定の斜行補正が行なわれる。その結果、用紙10を斜行した状態で送り出すことがなくなって、用紙10に印刷を適切に行なうことができる。
なお、上述したプリンタ装置1では、大径部4aと小径部4bとからなるグリッドローラ4を例に挙げて説明したが、この大径部4aと小径部4bは、たとえば図11に示すように、小径部に位置する樹脂層の部分6bの厚さを大径部に位置する樹脂層の部分6aの厚さよりも薄くすることによって形成することができる。あるいは、たとえば図12に示すように、小径部に位置するパイプの部分5bの肉厚を大径部に位置するパイプの部分5aの肉厚よりも薄くすることによっても形成することができる。
また、このような大径部4aと小径部4bとからなるグリッドローラ4のほかに、たとえば、図13に示すように、グリッドローラ4の表面において用紙10の角部に対応する領域4dにはセラミック粒子を塗布せず、この領域4d以外の領域4cにセラミック粒子を塗布するようにしてもよい。
セラミック粒子が塗布されない領域4dでは、セラミック粒子が塗布された領域4cと比べて、用紙10との摩擦力が軽減される。そのため、先端の角部が折れた用紙の折れ部10aがグリッドローラ4の領域4dに接触しても摩擦力が弱く、折れ部10aの位置する側の用紙10の送りが、折れ部の位置しない側の用紙10の送りに対して阻害されることがなくなる。これにより、用紙10に対して所定の斜行補正が行なわれて、用紙10を斜行した状態で送り出すことがなくなり、用紙10に印刷を適切に行なうことができる。
なお、上述したプリンタ装置では、封筒などの先端の角部が折れやすい用紙を例に挙げてその動作を説明したが、先端が折れていない用紙の場合にも、斜行補正が適切に行なわれて用紙に印刷することができるのはいうまでもない。
今回開示された実施の形態は例示であって、これに制限されるものではない。本発明は上記で説明した範囲ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲でのすべての変更が含まれることが意図される。
1 プリンタ装置、2 プリンタ本体、3 ペーパーサポート、4 グリッドローラ、4a 大径部、4b 小径部、4c,4d 領域、5 パイプ、6 樹脂層、7 セラミック粒子、8 プレスローラ、10 用紙。