JP2006192893A - 液体移送装置及びその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】圧電アクチュエータに特別な加工を施すことなく、圧力室の駆動パターンによる液体の移送速度の変動を確実に抑えること。
【解決手段】振動板30の厚さをTv(mm)、その弾性率をEv(kg/mm2)、圧電層31の厚さをTp(mm)、その弾性率をEp(kg/mm2)、圧力室14の幅をWc(mm)、隔壁部10aの圧力室14の幅方向長さをWa(mm)、隔壁部10aと振動板30との間に介在する接着層38の厚さをTa(mm)、その弾性率をEa(kg/mm2)とし、さらに、A=((Tv+Tp)3×(Ev+Ep)/2)/Wc1/2、B=Ea×Wa/Taとしたときに、これらA及びBの値が、−0.03A−1200(1/B)+0.08>0の関係を満たしている。
【選択図】図6

Description

本発明は、液体を移送する液体移送装置及びその製造方法に関する。
ノズルからインクを吐出するインクジェットヘッドは、インクに噴射エネルギーを付与するアクチュエータを備えている。このようなアクチュエータとしては種々の構成のものを採用できるが、その中でも、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)等の強誘電性の圧電材料からなる圧電層を有し、電界が作用したときの圧電層の変形を利用して対象を駆動する圧電アクチュエータが広く用いられている(例えば、特許文献1参照)。この特許文献1に記載の圧電アクチュエータは、流路ユニットの一表面に、複数の圧力室が形成された領域を全面的に覆うように接着された複数枚の圧電シートと、最上層の圧電シートの表面に複数の圧力室に夫々対応して形成された複数の個別電極と、圧電シートの間に形成された共通電極とを備えている。そして、個別電極に駆動電圧が印加されたときには、個別電極と共通電極とに挟まれた圧電シートに対してその分極方向である厚み方向に電界が作用し、圧電シートは厚み方向に伸びて面と平行な方向に縮む。このとき、圧電シートの変形に伴って振動板が変形するため、圧力室の容積が変化し、圧力室内のインクに圧力が付与される。
特開2004−284109号公報
前記特許文献1に記載の圧電アクチュエータでは、複数枚の圧電シートは、流路ユニットの複数の圧力室が形成された領域(複数の圧力室を隔てる隔壁部を含む)を、全面的に覆うように配置されているため、ある圧力室に重なる圧電シートの部分が変形したときに、この変形が伝播して、隣接する別の圧力室に重なる圧電シートの部分まで変形してしまう現象、いわゆる、クロストークが発生する。この場合には、同時に駆動される(内部のインクに圧力が付与される)圧力室の数によって、各圧力室に重なる圧電シートの変形量が異なって、インクの液滴速度が変動してしまうため、印字品質が低下する。ここで、クロストークを抑制するために、圧電シートに溝等を形成して変形が伝播しにくくすることも考えられるが、その場合には、圧電シートに欠けやクラックが生じやすくなるという問題がある。そこで、圧電シートの厚さや、圧電シートと流路ユニットとを接着する接着層の厚さなど、圧電アクチュエータに関する各パラメータの値を適切に決定することにより、クロストークに起因して生じるインクの液滴速度の変動を極力小さく抑えることが好ましい。
本発明の目的は、圧電アクチュエータに特別な加工を施すことなく、圧力室の駆動パターンによる液体の移送速度の変動を抑制することが可能な液体移送装置及び、液体移送装置の製造方法を提供することである。
課題を解決するための手段及び発明の効果
本発明の第1の態様に従えば、平面に沿って配置された複数の圧力室を含み且つ圧力室が隔壁部により隔てられている流路ユニットと、この流路ユニットの一表面に配置され、前記複数の圧力室の容積を選択的に変化させる圧電アクチュエータとを備えた液体移送装置であって、前記圧電アクチュエータは、前記隔壁部に接着されて複数の圧力室を覆う振動板と、この振動板の前記圧力室と反対側に、前記平面と直交する方向から見て、前記複数の圧力室の全てを覆うように配置された圧電層と、この圧電層の一方の面に前記複数の圧力室に夫々対応して配置された複数の個別電極、及び、前記圧電層の他方の面に配置された共通電極とを有し、前記振動板の厚さをTv(mm)、その弾性率をEv(kg/mm2)、前記圧電層の厚さをTp(mm)、その弾性率をEp(kg/mm2)、前記圧力室の所定方向の長さをWc(mm)としたときに、A=((Tv+Tp)3×(Ev+Ep)/2)/Wc1/2で表されるパラメータに基づいて、圧電層の厚さまたは振動板の隔壁部への接着層の厚さが決定されていることを特徴とする液体移送装置が提供される。
この液体移送装置において、ある個別電極に対して駆動電圧が印加されると、この個別電極と共通電極との間に位置する圧電層の部分に、分極方向である厚み方向に平行な電界が生じる。このとき、この圧電層の部分が厚み方向に伸びて面と平行な方向に縮み、この圧電層の変形に伴って振動板が変形する。すると、圧力室の容積が変化してその内部の液体に圧力が付与される。ここで、圧電層は、振動板の圧力室と反対側に、複数の圧力室に重なるように全面的に形成されているため、ある圧力室に重なる圧電層の部分の変形が、隣接する別の圧力室に重なる圧電層の部分まで伝播する、いわゆる、クロストークが生じてしまう。この場合には、同時に駆動される圧力室の数によって各圧力室における振動板の変形量が異なることになるため、駆動パターンにより液体の移送速度が変動してしまう。しかし、発明者の研究によると、上記Aで表されるパラメータを用いることによって、圧力室間の間隔(または隔壁部の間隔)が異なる種々のアクチュエータにおいてもクロストークを低減できる圧電層の厚みまたは振動板の厚みを普遍的に決定することが出来ることを見出した。Aで表されるパラメータは、アクチュエータ部分の剛性の大きさの尺度となるが、理論的には1/Wc1/3に比例すると考えられる。しかしながら、発明者の実験により1/Wc1/3ではなく1/Wc1/2を用いることにより、種々の圧力室間の間隔(または隔壁部の間隔)のアクチュエータに対して適用することができるクロストーク及び液体移送速度の変動を低減する圧電層または振動板の厚みを求めることに成功した。こうして求められた厚みの圧電層または振動板を用いることにより、圧力室の駆動パターンによる液体の移送速度の変動が十分抑制された液体移送装置が実現された。
さらに、発明者は、圧電層の厚さTpや接着層の厚さTa等の圧電アクチュエータに関するパラメータで定義された新たなパラメータA及び別のパラメータBの値が所定の関係、すなわち、前記隔壁部の前記所定方向の長さをWa(mm)、前記隔壁部と前記振動板との間に介在してこれらを接着する接着層の厚さをTa(mm)、その弾性率をEa(kg/mm2)とし、B=Ea×Wa/Taとしたときに、A及びBの値が、−0.03A−1200(1/B)+0.08>0の関係を満たす場合には、圧力室の駆動パターンによる各圧力室における振動板の変形量の変動を抑制して、液体の移送速度の変動を小さくできることがわかった。また、この場合には、振動板や圧電層に溝加工等の特別な加工を施すことなく移送特性の変動を確実に抑制できる。
本発明において、「圧電層が複数の圧力室の全てを覆うように形成されている」とは、圧電層が、少なくとも複数の圧力室が形成された領域(圧力室を隔てる隔壁部を含む)に全面的に重なるように配置されているということを意味しており、振動板や流路ユニットの全域を覆っていてもよい。また、本発明は、振動板と流路ユニットとが接着剤で接着されている形態に限られるものではなく、例えば、金属拡散接合等により接合されている形態も含む。尚、このように、接着剤を用いることなく振動板と流路ユニットとが接合されている場合には、接着層Taの厚さは0となる。例えば、振動板が前記隔壁部に金属拡散接合で接合される場合、圧電層の厚みTpが、0.08>0.03×((Tv+Tp)3×(Ev+Ep)/2)/Wc1/2を満足し得る。
また、本発明において、さらに、A及びBの値が、−0.03A−700(1/B)+0.05>0の関係を満たし得る。この場合には、クロストークに起因する移送速度の変動をより効果的に抑制することができる。
前記振動板が前記共通電極として機能し得る。こうすることで振動板と共通電極が1つのパーツで足りるために、部品点数を低減することができる。
本発明の第2の態様に従えば、平面に沿って配置された複数の圧力室を含み、圧力室が隔壁部により隔てられている流路ユニットと、この流路ユニットの一表面に配置され、前記複数の圧力室を覆う振動板、この振動板の前記圧力室と反対側に、前記平面と直交する方向から見て、前記複数の圧力室の全てを覆うように配置された圧電層、この圧電層の一方の面に前記複数の圧力室に夫々対応して配置された複数の個別電極、及び、前記圧電層の他方の面に配置された共通電極とを有し、前記複数の圧力室の容積を選択的に変化させる圧電アクチュエータとを備えた液体移送装置の製造方法であって、前記流路ユニットを提供する工程と、前記振動板を流路ユニットの隔壁部に接着する工程と、前記振動板の一方の面に前記圧電層を提供する工程と、前記振動板の厚さをTv(mm)、その弾性率をEv(kg/mm2)、前記圧電層の厚さをTp(mm)、その弾性率をEp(kg/mm2)、前記圧力室の所定の一方向の長さをWc(mm)としたときに、A=((Tv+Tp)3×(Ev+Ep)/2)/Wc1/2で表されるパラメータに基づいて、振動板の隔壁部への接着層の厚さまたは圧電層の厚さを決定する工程とを含むことを特徴とする液体移送装置の製造方法が提供される。
本発明の製造方法では、発明者が見出した新規なパラメータAを用いることで、クロストークが低減され且つ液体移送効率が高くなる圧電層または振動板の厚みを予め決定することができ、それにより圧力室の駆動パターンによる液体の移送速度の変動が十分抑制された液体移送装置を製造することができる。
本発明の製造方法において、前記隔壁部の前記所定方向の長さをWa(mm)、前記隔壁部と前記振動板との間に介在してこれらを接着する接着層の厚さをTa(mm)、その弾性率をEa(kg/mm2)とし、B=Ea×Wa/Taとしたときに、A及びBの値が、−0.03A−1200(1/B)+0.08>0の関係を満たすように、振動板の隔壁部への接着層の厚さまたは圧電層の厚さを決定し得る。
A及びBの値が、−0.03A−1200(1/B)+0.08>0の関係を満たすように、前記接着層の厚さを決定する場合、さらに、圧電層の厚さを測定する工程と、前記振動板の厚さを測定する工程とを含み得る。この場合、振動板の厚さTv及び圧電層の厚さTpを測定してから、接合工程において、TvやTp、あるいは、接着層の厚さTa等の圧電アクチュエータに関するパラメータで定義されたA及びBの値が前述の関係を満たすように、接着層の厚さTaを調整しながら振動板を流路ユニットに接合することにより、クロストークに起因して生じる、駆動パターンによる移送速度の変動を効果的に抑制することができる。
また、本発明の製造方法において、A及びBの値が、−0.03A−700(1/B)+0.05>0の関係を満たすように、前記接着層の厚さを調整し得る。この場合には、クロストークに起因する移送速度の変動をさらに効果的に抑制することができる。
A及びBの値が、−0.03A−1200(1/B)+0.08>0の関係を満たすように圧電層の厚みを決定する場合、さらに、振動板の厚みを測定する工程と、前記接着層の厚さを測定する工程を含み得る。このように、振動板の厚さTvと接着層の厚さTaを測定してから、圧電層形成工程において、TvやTa、あるいは、圧電層の厚さTp等の圧電アクチュエータに関するパラメータで定義されたA及びBの値が前述の関係を満たすように、その厚さTpを調整しながら圧電層を形成することにより、クロストークに起因して生じる、駆動パターンによる移送速度の変動を効果的に抑制することができる。
また、本発明の製造方法において、前記圧電層形成工程では、さらに、A及びBの値が、−0.03A−700(1/B)+0.05>0の関係を満たすように、圧電層の厚さTpを調整し得る。この場合には、クロストークに起因する移送速度の変動をさらに効果的に抑制することができる。
前記振動板が前記隔壁部に金属拡散接合で接合され、圧電層の厚みTpが、0.08>0.03×((Tv+Tp)3×(Ev+Ep)/2)/Wc1/2を満足するように決定され得る。また、前記振動板が前記共通電極として機能し得る。この場合、アクチュエータの部品点数を低減することができる。
本発明の実施の形態について説明する。本実施形態は、液体移送装置として、ノズルから記録用紙にインクを吐出するインクジェットヘッドに本発明を適用した一例である。
まず、インクジェットヘッド1を備えたインクジェットプリンタ100について簡単に説明する。図1に示すように、インクジェットプリンタ100は、図1の左右方向に移動可能なキャリッジ101と、このキャリッジ101に設けられて記録用紙Pに対してインクを噴射するシリアル式のインクジェットヘッド1と、記録用紙Pを図1の前方へ搬送する搬送ローラ102等を備えている。インクジェットヘッド1は、キャリッジ101と一体的に左右方向(走査方向)へ移動して、その下面のインク吐出面に形成されたノズル20(図2〜図5参照)の出射口から記録用紙Pに対してインクを噴射する。そして、インクジェットヘッド1により記録された記録用紙Pは、搬送ローラ102により前方(紙送り方向)へ排出される。
次に、インクジェットヘッド1について図2〜図5を参照して詳細に説明する。
図2〜図5に示すように、インクジェットヘッド1は、圧力室14を含む個別インク流路21(図4参照)がその内部に形成された流路ユニット2と、この流路ユニット2の上面に配置された圧電アクチュエータ3とを備えている。
まず、流路ユニット2について説明する。図4、図5に示すように、流路ユニット2はキャビティプレート10、ベースプレート11、マニホールドプレート12、及びノズルプレート13を備えており、これら4枚のプレート10〜13が積層状態で接着されている。このうち、キャビティプレート10、ベースプレート11及びマニホールドプレート12はステンレス鋼製の板であり、これら3枚のプレート10〜12に、後述するマニホールド17や圧力室14等のインク流路をエッチングにより容易に形成することができるようになっている。また、ノズルプレート13は、例えば、ポリイミド等の高分子合成樹脂材料により形成され、マニホールドプレート12の下面に接着される。あるいは、このノズルプレート13も、3枚のプレート10〜12と同様にステンレス鋼等の金属材料で形成されていてもよい。
図2〜図5に示すように、キャビティプレート10には、平面に沿って配列された複数の圧力室14が形成されている。これら複数の圧力室14は隔壁部10aにより互いに隔てられている。また、複数の圧力室14は、後述の振動板30側(図4の上方)へ開口している。さらに、複数の圧力室14は、紙送り方向(図2の上下方向)に2列に配列されている。各圧力室14は、平面視で走査方向(図2の左右方向)に長い、略楕円形状に形成されている。また、キャビティプレート10には、図示外のインクタンクに連なるインク供給口18が形成されている。
図3、図4に示すように、ベースプレート11の平面視で圧力室14の長手方向両端部に重なる位置には、夫々連通孔15,16が形成されている。また、マニホールドプレート12には、紙送り方向(図2の上下方向)に延び、平面視で圧力室14の図2における左右何れか一方の端部と重なるマニホールド17が形成されている。このマニホールド17には、インクタンク(図示省略)からインク供給口18を介してインクが供給される。また、平面視で圧力室14のマニホールド17と反対側の端部と重なる位置には、連通孔19も形成されている。さらに、ノズルプレート13には、平面視で複数の連通孔19に夫々重なる位置に、複数のノズル20が夫々形成されている。ノズル20は、例えば、ポリイミド等の高分子合成樹脂の基板にエキシマレーザー加工を施すことにより形成される。
そして、図4に示すように、マニホールド17は連通孔15を介して圧力室14に連通し、さらに、圧力室14は、連通孔16,19を介してノズル20に連通している。このように、流路ユニット2内には、マニホールド17から圧力室14を経てノズル20に至る個別インク流路21が形成されている。
次に、圧電アクチュエータ3について説明する。図2〜図5に示すように、圧電アクチュエータ3は、流路ユニット2の上面に配置された導電性を有する振動板30と、この振動板30の上面(圧力室14と反対側の面)に形成された圧電層31と、この圧電層31の上面に複数の圧力室14に夫々対応して形成された複数の個別電極32とを備えている。
振動板30は、平面視で略矩形状の金属材料からなる板であり、例えば、ステンレス鋼等の鉄系合金、銅系合金、ニッケル系合金、あるいは、チタン系合金などからなる。この振動板30は、キャビティプレート10の上面に複数の圧力室14を覆うように配設され、接着層38によりキャビティプレート10の隔壁部10aに接着されている。ここで、隔壁部10aと振動板30との間に介在する接着層38を構成する接着剤としては、例えば、エポキシ系の接着剤やろう材等が用いられる。また、振動板30は、複数の個別電極32に対向して個別電極32と振動板30との間の圧電層31に電界を作用させる共通電極を兼ねている。
振動板30の上面には、チタン酸鉛とジルコン酸鉛との固溶体であり強誘電体であるチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)を主成分とする圧電層31が配置されている。図2、図5に示すように、圧電層31は、振動板30の上面の、複数の圧力室14及びこれら複数の圧力室14を隔てる隔壁部10aと重なる領域に、全面的に形成されている(複数の圧力室14及びこれら複数の圧力室14を隔てる隔壁部10aを全て覆うように形成されている)。ここで、圧電層31は、例えば、非常に小さな圧電材料の粒子を基板に吹き付けて高速で衝突させ、基板に堆積させるエアロゾルデポジション法(AD法)を用いて形成することができる。あるいは、スパッタ法、化学蒸着法(CVD法)、ゾルゲル法、あるいは、水熱合成法などにより形成することもできる。
圧電層31の上面には、圧力室14よりも一回り小さい楕円形の平面形状を有する複数の個別電極32が形成されている。これら複数の個別電極32は、平面視で、対応する圧力室14の中央部に重なる位置に夫々形成されている。また、個別電極32は金、銅、銀、パラジウム、白金、あるいは、チタンなどの導電性材料からなる。さらに、圧電層31の上面には、複数の個別電極32のマニホールド17側の端部から夫々走査方向(図2の左右方向)に延びる複数の端子部35も形成されている。複数の個別電極32及び複数の端子部35は、例えば、スクリーン印刷、スパッタ法、あるいは、蒸着法等により形成することができる。図4に示すように、複数の端子部35は、フレキシブルプリント配線板等の可撓性を有する配線部材(図示省略)を介してドライバIC37と電気的に接続されており、ドライバIC37から端子部35を介して複数の個別電極32に対して選択的に駆動電圧が供給される。
次に、圧電アクチュエータ3の作用について図6を参照して説明する。尚、図6において、“+”は個別電極32に駆動電圧が印加されている状態を示し、“GND”は個別電極32に駆動電圧が印加されていない状態(グランド電位にある状態)を示す。
複数の個別電極32に対してドライバIC37から選択的に駆動電圧が印加されると、駆動電圧が供給された圧電層31上側の個別電極32とグランド電位に保持されている圧電層31下側の共通電極としての振動板30の電位が異なる状態となり、個別電極32と振動板30の間に挟まれた圧電層31の部分に上下方向の電界が生じる。すると、駆動電圧が印加された個別電極32の直下の圧電層31の部分がその分極方向である上下方向と直交する水平方向に収縮する。このとき、この圧電層31の収縮に伴って振動板30が圧力室14側に凸となるように変形するため(図6参照)、圧力室14内の容積が減少して圧力室14内のインクに圧力が付与され、圧力室14に連通するノズル20からインクの液滴が吐出される。
ところで、本実施形態のインクジェットヘッド1では、図5に示すように、圧電層31が、振動板30の上面の、複数の圧力室14及びこれら複数の圧力室を隔てる隔壁部10aと重なる領域に全面的に形成されている。そのため、ある圧力室14に対応する個別電極32に駆動電圧が印加されて、その圧力室14に重なる圧電層31の部分が変形したときに、この変形が、隔壁部10a上の圧電層31の部分に伝わり、さらに、隣接する別の圧力室14に重なる圧電層31の部分にまで伝播する現象、いわゆる、クロストークが発生してしまう。このクロストークが生じると、印字パターン(圧力室14の駆動パターン)によって振動板30の変形量が異なってしまう。例えば、1つの個別電極32にのみ駆動電圧が印加されたときの振動板30の最大変位量δ1(圧力室14の中心と重なる部分の変形量:図6参照)と、複数の個別電極32に対して同時に駆動電圧が印加されたときの振動板30の最大変位量δa(図7参照)とが異なってしまう。そのため、ノズル20から吐出されるインクの液滴速度が印字パターンにより変動してしまい、印字品質が低下することになる。
そこで、本実施形態のインクジェットヘッド1は、印字パターンによる振動板30の変形量の変動が極力小さくなるように設計されている。具体的には、図6に示すように、振動板30の厚さをTv(mm)、その弾性率をEv(kg/mm2)、圧電層31の厚さをTp(mm)、その弾性率をEp(kg/mm2)、圧力室14の幅(紙送り方向の長さ)をWc(mm)、複数の圧力室14を隔てている隔壁部10aの圧力室14の幅方向長さをWa(mm)、流路ユニット2の隔壁部10aと振動板30との間に介在する接着層38(接着剤)の厚さをTa(mm)、その弾性率をEa(kg/mm2)としたときに、これらの圧電アクチュエータ3に関するパラメータ(Tv、Ev、Tp、Ep、Wc、Wa、Ta、及び、Ea)の各値が所定の関係を満たすように決定されている。
そして、これら圧電アクチュエータ3に関するパラメータが満たすべき関係は、以下のようにして決定されている。まず、2つのパラメータA,Bを、A=((Tv+Tp)3×(Ev+Ep)/2)/Wc1/2、B=Ea×Wa/Taとそれぞれ定義する。ここで、Aは、振動板30と圧電層31の曲げ剛性(厚みの3乗、弾性率の1乗に比例する)を代表する係数である。一方、Bは、隔壁部10aと振動板30との間に介在する接着層38の引張・圧縮係数である。発明者の研究によると、上記Aで表されるパラメータを用いることによって、圧力室間の間隔(または隔壁部の間隔)が異なる種々のアクチュエータにおいてもクロストークを低減できる圧電層の厚みまたは振動板の厚みを普遍的に決定することが出来ることを見出した。アクチュエータ部分の剛性は、理論的には((Tv+Tp)3×(Ev+Ep)/2)/Wc1/3に比例すると考えられる。しかしながら、発明者の実験により1/Wc1/3ではなく1/Wc1/2を用いることにより、以下に示すように種々の圧力室のWcのアクチュエータに対して適用することができるクロストーク及び液体移送速度の変動を低減するための圧電層または振動板の厚みを求めることに成功した。
そして、圧力室14の幅Wcが互いに異なる3つのケース(ケース1〜3)について、ある1つの個別電極32にのみ駆動電圧を印加した場合と、全ての個別電極32に対して同時に駆動電圧を印加した場合とで、それぞれ有限要素法(Finite Element Method:FEM)による構造解析を行った。この解析条件を表1に示す。尚、ケース1〜3は、複数のノズル20が75dpi、50dpi、及び、37.5dpiの間隔で紙送り方向に配列されたインクジェットヘッドに夫々対応している。
Figure 2006192893
また、3つのケース1〜3の夫々についての解析結果を図8〜図10に示す。ここで、図8〜図10において、グラフ中の数字は、(A,1/B)の点における1つの個別電極32にのみ駆動電圧が印加されたときの振動板30の最大変位量δ1と、全ての個別電極32に対して同時に駆動電圧が印加されたときの振動板30の最大変位量δaとの比である、δa/δ1の値である。A及び1/Bの変化により、δa/δ1がどのように変化するかが変化後の(A,1/B)から分かる。そして、図8〜図10に示すように、振動板30と圧電層31の曲げ剛性を示すAの値が小さく(振動板30及び圧電層31が撓みやすく)、また、接着層38の引張・圧縮係数Bの逆数1/Bが小さい(接着層38の剛性が高い)ほど、δa/δ1の値が1に近づいて、印字パターンによる振動板30の最大変位量の変動が小さくなることがわかる。また、図8〜図10に示すように、A及びBとδa/δ1との関係は、3つのケース(ケース1〜ケース3)に関してほぼ一致している。この結果からすれば、発明者が導入した新規なパラメータAが異なる圧力室の幅Wcに対しても好ましいδa/δ1の範囲について普遍的な結果をもたらしていることが分かる。すなわち、パラメータAを用いることによって、異なる圧力室の幅Wcを有するアクチュエータの設計においても、クロストークを低減するための一般化した条件を求めることが可能となる。
ところで、印字パターンにより振動板30の最大変位量が変動する場合には、ノズル20から吐出されるインクの液滴速度が変動することになる。ここで、振動板30の変位量とノズル20から吐出されるインクの液滴速度との間には、発明者が見出した経験則が存在する。この経験則は、図11に示すように、振動板30の変位量が7.5%減少すると、液滴速度が1m/s減少するというものである。尚、異なる種類の圧電アクチュエータ3では、図11における曲線L1及び曲線L2のように、振動板30の変位量と液滴速度の関係を示す曲線は異なるものの、この経験則自体は、どのような圧電アクチュエータにおいても成立する。そこで、インクの液滴速度の変動を考慮して、許容される最大変位量の比δa/δ1の範囲は、例えば、次のようにして決定される。
良好な印字品質を保つためには、液滴速度の変動を1m/s以内に抑えることが好ましい。そのためには、図11の関係から、振動板30の最大変位量の変動を7.5%以内、即ち、δa/δ1の値を0.925(=1−0.075)以上にすることが必要になる。そこで、図8〜図11の解析結果において、δa/δ1=0.925となる線を引くと、曲線a1,a2,a3のようになり、液滴速度の変動を1m/s以内に抑えるには、曲線a1〜a3よりも左側の領域内でA及びBの値を決定する必要がある。ここで、曲線a1〜a3はほぼ一致しており、また、変曲点もないことから、これら3本の曲線a1〜a3を1本の直線で近似することが可能になり、図12に示すように、この近似直線aは、−0.03A−1200(1/B)+0.08=0となる。従って、液滴速度変動を1m/s以下とするには、A及びBの値が直線aよりも左側の領域X(−0.03A−1200(1/B)+0.08>0)に収まるように、振動板30、圧電層31、あるいは、接着層38の厚さや材質等の、圧電アクチュエータ3に関するパラメータ(Tv、Ev、Tp、Ep、Wc、Wa、Ta、及び、Ea)を決定すればよい。上記のように、曲線a1〜a3がほぼ一致していることから、発明者の導入した新規なパラメータAは、クロストーク低減のための圧電層の厚みまたは接着層の厚みを一般化して選定するための適正なパラメータであることが分かる。
また、さらに良好な印字品質を保つためには、液滴速度の変動を0.5m/s以内に抑えることが好ましい。この場合には、図11の液滴速度と最大変位量との関係から、振動板30の最大変位量の変動を3.75%以内、即ち、δa/δ1の値を0.9625以上にすることが必要になる。そこで、図8〜図11の解析結果において、δa/δ1=0.9625となる線を引くと、曲線b1,b2,b3のようになる。これら曲線b1〜b3はほぼ一致しており、また、変曲点もないことから、これら3本の曲線b1〜b3を1本の直線で近似でき、図12に示すように、この近似直線bは、−0.03A−700(1/B)+0.05=0となる。従って、液滴速度変動を0.5m/s以下とするには、A及びBの値が直線bよりも左側の領域Y(−0.03A−700(1/B)+0.05>0)に収まるように、圧電アクチュエータ3に関するパラメータ(Tv、Ev、Tp、Ep、Wc、Wa、Ta、及び、Ea)を決定すればよい。
次に、インクジェットヘッド1の製造方法について図13のフローチャートを参照して説明する。尚、図13において、Si(i=10,11,12・・・)は各工程を示す。
まず、流路ユニット2を構成するプレート10〜13に、個別インク流路21(図4参照)を構成する孔を形成する。そして、キャビティプレート10に形成された圧力室14の幅Wc、及び、隔壁部10aの圧力室14の幅方向長さWaを測定する(S10)。ここで、圧力室14の幅Wc及び隔壁部10aの長さWaは、例えば、キャビティプレート10をカメラにより平面的に撮影し、そのデータを画像処理することにより求めることができる。また、これらWc及びWaは、全ての圧力室14に関して測定する必要は必ずしもなく、例えば、いくつかの圧力室14について測定を行い、それらの平均値で代表させるようにすればよい。次に、流路ユニット2を構成するプレート10〜13のうち、ノズルプレート13を除く、金属製のキャビティプレート10、ベースプレート11、及び、マニホールドプレート12を、所定温度(例えば、1000℃程度)以上に加熱した状態で加圧する金属拡散接合等により接合する(S11)。
その一方で、振動板30の厚さTvをレーザー変位計などを用いて測定する(振動板厚さ測定工程:S12)。次に、この振動板30の一表面に、AD法、スパッタ法、CVD法、ゾルゲル法、あるいは、水熱合成法などを用いて圧電材料の粒子を堆積させてから、層の緻密化のための熱処理を施して、圧電層31を形成する(圧電層形成工程:S13)。そして、この圧電層31の厚さTpをレーザー変位計などを用いて測定する(圧電層厚さ測定工程:S14)。さらに、この圧電層31の圧力室14と反対側の面に、スクリーン印刷、スパッタ法、あるいは、蒸着法等により個別電極32を形成する(S15)。
そして、振動板30の厚さTv、振動板30の弾性率Ev、圧電層31の厚さTp、圧電層31の弾性率Ep、及び、圧力室14の幅Wcから、A(=((Tv+Tp)3×(Ev+Ep)/2)/Wc1/2)を計算し(S16)。このAの値に対応するBの値を、図12の領域Xの範囲内(好ましくは、領域Yの範囲内)で決定する(S17)。さらに、決定されたB(=Ea×Wa/Ta)の値と、隔壁部10aの幅方向長さWa、及び、振動板30とキャビティプレート10とを接着するために使用する接着剤の弾性率Eaから、接着層38の厚さTaの範囲を決定する(S18)。
そして、接着層38の厚さTaがS18で決定された範囲内となるような、接着剤の転写量、加圧力、及び、加圧温度を決定し(S19)、決定された条件で振動板30とキャビティプレート10とを接着する(接合工程:S20)。最後に、マニホールドプレート12にノズルプレート13を接着して(S21)、インクジェットヘッド1の製造工程を完了する。
尚、ノズルプレート13が、キャビティプレート10、ベースプレート11及びマニホールドプレート12と同じく金属製である場合には、これら4枚の金属プレート10〜13を金属拡散接合等により一度に接合するようにしてもよい。
以上説明したインクジェットヘッド1及びその製造方法によれば、次のような効果が得られる。
振動板30の厚さTv、圧電層31の厚さTp、接着層38の厚さTa等の、圧電アクチュエータ3に関するパラメータで定義されたA及びBの値が、印字パターンによる液滴速度の変動が小さくなるような所定の関係を満たすように決定されるため、クロストークに起因する印字品質の低下を防止できる。また、振動板30や圧電層31に溝加工等の特別な加工を施すことなしに液滴速度の変動を確実に抑制することができる。
また、振動板30の厚さTv及び圧電層31の厚さTpを測定してから、TvやTp、あるいは、接着層38の厚さTa等の圧電アクチュエータ3に関するパラメータで定義されたA及びBの値が前述した所定の関係を満たすように、接着層38の厚さTaを調整しながら振動板30を流路ユニット2に接合することにより、印字パターンによる液滴速度の変動を効果的に抑制することができる。
次に、前記実施形態に種々の変更を加えた変更形態について説明する。但し、前記実施形態と同様の構成を有するものについては、同じ符号を付して適宜その説明を省略する。
<第1変更形態>
前記実施形態のインクジェットヘッド1の製造方法(図13参照)では、S17においてBの値を決定してから、S18において、Bの値と接着層38の弾性率Eaの値から接着層38の厚さTaを決定しているが、逆に、接着層38の厚さTaを予め決定しておき、Bの値とTaの値とから接着層38の弾性率Eaの範囲を決定して、使用可能な接着剤を選択するようにしてもよい。
<第2変更形態>
前記実施形態のインクジェットヘッド1の製造方法(図13参照)では、振動板30の一表面に圧電層31を形成してから(S13)、振動板30をキャビティプレート10に接着している(S20)が、振動板30をキャビティプレート10に接着してから、振動板30に圧電層31を形成するようにしてもよい。この場合には、例えば、図14に示すように、圧力室14の幅Wc、及び、隔壁部10aの圧力室14の幅方向長さWaを測定し(S30)、ノズルプレート13を除く金属プレート10〜12を接合してから(S31)、振動板30の厚さTvを測定した後(振動板厚さ測定工程:S32)、振動板30を接着剤によりキャビティプレート10に接着する(接着工程:S33)。尚、この第2変更形態では、振動板30をキャビティプレート10に接着した後で圧電層31を形成することから、振動板30をキャビティプレート10に接着する接着剤としては、圧電層31の熱処理温度よりも耐熱温度が高い、ろう材などの接着剤を使用する必要がある。
次に、接着層38の厚さTaを以下のような方法で測定する(接着層厚さ測定工程:S34)。例えば、ある基材に接着剤の層を均一な厚さで形成してから、キャビティプレート10と振動板30の何れか一方のプレートを基材に押しつける。すると、一方のプレートに接着剤が転写されて基材に接着剤の段差が生じることから、この段差をレーザー変位計で測定することにより、一方のプレートに転写された接着剤の厚さを得ることができる。そして、この接着剤が転写された一方のプレートに、他方のプレートを重ねた状態で2枚のプレート10,30を加熱しながら加圧し、2枚のプレート10,30の間に介在する接着剤を硬化させる。ここで、一方のプレートに転写された接着剤の厚さと、硬化した状態の接着剤の厚さとの間には、ある所定の相関関係があるため、転写後の接着剤の厚さとこの相関関係に基づいて、2枚のプレート10,30の間の接着剤の厚さ(即ち、接着層38の厚さTa)を求めることができる。
あるいは、予め、振動板30及びキャビティプレート10のそれぞれの厚さをレーザー変位計等により測定しておき、さらに、振動板30とキャビティプレート10とを接着した後に、接着後の2枚のプレート10,30の全体の厚さを測定して、2枚のプレート10,30の全体の厚さと、それらの個々の厚さとから、その間に介在する接着層38の厚さTaを求めてもよい。
そして、接着層38の厚さTa、接着層38の弾性率Ea、及び、隔壁部10aの幅方向長さWaからB(=Ea×Wa/Ta)を計算し(S35)、図12の領域Xの範囲内(好ましくは、領域Yの範囲内)で、計算されたBの値に対応するAの値(A=((Tv+Tp)3×(Ev+Ep)/2)/Wc1/2)を決定する(S36)。さらに、決定されたAの値と、振動板30の厚さTv、振動板30の弾性率Ev、圧電層31の弾性率Ep、及び、圧力室14の幅Wcとから、圧電層31の厚さTpの範囲を決定する(S37)。
そして、S37で決定された厚さTpとなるように圧電層31を形成する(圧電層31形成工程:S38)。ここで、例えば、圧電層31をAD法で形成する場合には、振動板30が取り付けられたステージの移動回数及び移動速度を調整しながら、圧電材料の粒子とキャリアガスとを混合して得られたエアロゾルを振動板30に対して噴射することにより、振動板30に所定厚さTpの圧電層31を形成する。そして、圧電層31のキャビティプレート10と反対側の面にスクリーン印刷等により個別電極32を形成してから(S39)、ノズルプレート13をマニホールドプレート12に接着して(S40)、インクジェットヘッド1の製造工程を完了する。
このように、振動板30の厚さTvと接着層38の厚さTaを測定してから、TvやTa、あるいは、圧電層31の厚さTp等の圧電アクチュエータ3に関するパラメータで定義されたA及びBの値が前述した所定の関係を満たすように、その厚さTpを調整しながら圧電層31を形成することにより、前記実施形態と同様に、クロストークに起因して生じる、印字パターンによるインクの液滴速度の変動を効果的に抑制することができる。
<第3変更形態>
3]前述の第2変更形態(図14参照)においては、振動板30とキャビティプレート10とを接着剤で接着しているが(S33)、流路ユニット2を構成する金属プレート10〜12と、振動板30とを同時に金属拡散接合により接合してから、振動板30の厚さTvを測定してもよい。このように、振動板30とキャビティプレート10とを金属拡散接合で接合する場合には、接着層38の厚さTaが0であることから、Taを測定する工程(図14のS34)は不要である。
<第4変更形態>
前記実施形態の圧電アクチュエータ3では、圧電層31の振動板30と反対側に個別電極32が形成されているが(図4〜図7参照)、圧電層31の振動板30側に個別電極32が配置され、圧電層31の振動板30と反対側に共通電極34が配置されていてもよい。但し、振動板30が金属材料からなる場合には、図15に示すように、圧電アクチュエータ3Aにおいて、複数の個別電極32の間を絶縁するために、金属製の振動板30の上面(圧力室14と反対側の面)には絶縁材料層50が形成されるなどして、個別電極32が配置される振動板30の面が絶縁性を有する必要がある。この絶縁材料層50は、例えば、アルミナ、ジルコニア等のセラミックス材料で、AD法、スパッタ法、CVD法、あるいは、ゾルゲル法等により形成することができる。
<第5変更形態>
第4変更形態において、振動板30が、表面に酸化膜が形成されたシリコン材料、あるいは、セラミックス材料や合成樹脂材料等の絶縁材料からなる場合には、図16に示すように、圧電アクチュエータ3Bにおいて、振動板30の上面に直接個別電極32が配置されていればよく、絶縁性を有する振動板30により複数の個別電極32の間が絶縁される。
前記実施形態では、その内部に個別インク流路21を有する流路ユニット2が、主に、積層された金属プレート(キャビティプレート10、ベースプレート11及びマニホールドプレート12)により構成されているが、流路ユニット2が金属材料以外の材料(例えば、シリコン材料等)で形成されていてもよい。
前記実施形態では、本発明を圧電層の収縮に伴って振動板が圧力室側に凸となるように変形するタイプ(押し打ちタイプ)のアクチュエータに適用した場合を例示したが、圧電層の収縮に伴って振動板が圧力室側に凹となるように変形するタイプ(引き打ちタイプ)のアクチュエータに適用することができる。
前述した実施形態及びその変更形態は、インクを移送するインクジェットヘッドに本発明を適用した一例であるが、インク以外の液体を移送する液体移送装置にも本発明を適用することは可能である。
本発明の実施形態に係るインクジェットプリンタの概略構成図である。 インクジェットヘッドの平面図である。 図2の一部拡大図である。 図3のIV-IV線断面図である。 図3のV-V線断面図である。 1つの個別電極にのみ駆動電圧が印加されたときの圧電アクチュエータの動作を示す図である。 全ての個別電極にのみ駆動電圧が印加されたときの圧電アクチュエータの動作を示す図である。 ケース1の解析結果を示すグラフである。 ケース2の解析結果を示すグラフである。 ケース3の解析結果を示すグラフである。 振動板の最大変位量とインクの液滴速度との関係を示すグラフである。 液滴速度変動が1m/s以下、又は、0.5m/s以下となるときの、最大変位量の比δa/δ1と、A及びBとの関係を直線で近似したグラフである。 インクジェットヘッドの製造工程のフローチャートである。 第2変更形態のインクジェットヘッドの製造工程のフローチャートである。 第4変更形態のインクジェットヘッドの図5相当の断面図である。 第5変更形態のインクジェットヘッドの図5相当の断面図である。
符号の説明
1 インクジェットヘッド
2 流路ユニット
3,3A,3B 圧電アクチュエータ
10a 隔壁部
14 圧力室
30 振動板
31 圧電層
32 個別電極
34 共通電極
38 接着層


Claims (15)

  1. 平面に沿って配置された複数の圧力室を含み且つ圧力室が隔壁部により隔てられている流路ユニットと、この流路ユニットの一表面に配置され、前記複数の圧力室の容積を選択的に変化させる圧電アクチュエータとを備えた液体移送装置であって、
    前記圧電アクチュエータは、
    前記隔壁部に接着されて複数の圧力室を覆う振動板と、
    この振動板の前記圧力室と反対側に、前記平面と直交する方向から見て、前記複数の圧力室の全てを覆うように配置された圧電層と、
    この圧電層の一方の面に前記複数の圧力室に夫々対応して配置された複数の個別電極、及び、前記圧電層の他方の面に配置された共通電極とを有し、
    前記振動板の厚さをTv(mm)、その弾性率をEv(kg/mm2)、前記圧電層の厚さをTp(mm)、その弾性率をEp(kg/mm2)、前記圧力室の所定の一方向の長さをWc(mm)としたときに、A=((Tv+Tp)3×(Ev+Ep)/2)/Wc1/2で表されるパラメータに基づいて、圧電層の厚さまたは振動板の隔壁部への接着層の厚さが決定されていることを特徴とする液体移送装置。
  2. 前記隔壁部の前記所定方向の長さをWa(mm)、前記隔壁部と前記振動板との間に介在してこれらを接着する接着層の厚さをTa(mm)、その弾性率をEa(kg/mm2)とし、B=Ea×Wa/Taとしたときに、A及びBの値が、−0.03A−1200(1/B)+0.08>0の関係を満たしていることを特徴とする請求項1に記載の液体移送装置。
  3. 前記振動板が前記隔壁部に金属拡散接合で接合されており、圧電層の厚みTpが、0.08>0.03×((Tv+Tp)3×(Ev+Ep)/2)/Wc1/2を満足することを特徴とする請求項1に記載の液体移送装置。
  4. 前記A及び前記Bの値が、−0.03A−700(1/B)+0.05>0の関係を満たしていることを特徴とする請求項2に記載の液体移送装置。
  5. 前記振動板が前記共通電極として機能することを特徴とする請求項1に記載の液体移送装置。
  6. 平面に沿って配置された複数の圧力室を含み、圧力室が隔壁部により隔てられている流路ユニットと、
    この流路ユニットの一表面に配置され、前記複数の圧力室を覆う振動板、この振動板の前記圧力室と反対側に、前記平面と直交する方向から見て、前記複数の圧力室の全てを覆うように配置された圧電層、この圧電層の一方の面に前記複数の圧力室に夫々対応して配置された複数の個別電極、及び、前記圧電層の他方の面に配置された共通電極とを有し、前記複数の圧力室の容積を選択的に変化させる圧電アクチュエータとを備えた、液体移送装置の製造方法であって、
    前記流路ユニットを提供する工程と、
    前記振動板を流路ユニットの隔壁部に接着する工程と、
    前記振動板の一方の面に前記圧電層を提供する工程と、
    前記振動板の厚さをTv(mm)、その弾性率をEv(kg/mm2)、前記圧電層の厚さをTp(mm)、その弾性率をEp(kg/mm2)、前記圧力室の所定の一方向の長さをWc(mm)としたときに、A=((Tv+Tp)3×(Ev+Ep)/2)/Wc1/2で表されるパラメータに基づいて、振動板の隔壁部への接着層の厚さまたは圧電層の厚さを決定する工程とを含むことを特徴とする液体移送装置の製造方法。
  7. 前記隔壁部の前記所定方向の長さをWa(mm)、前記隔壁部と前記振動板との間に介在してこれらを接着する接着層の厚さをTa(mm)、その弾性率をEa(kg/mm2)とし、B=Ea×Wa/Taとしたときに、A及びBの値が、−0.03A−1200(1/B)+0.08>0の関係を満たすように、振動板の隔壁部への接着層の厚さまたは圧電層の厚さを決定することを特徴とする請求項6に記載の液体移送装置の製造方法。
  8. A及びBの値が、−0.03A−1200(1/B)+0.08>0の関係を満たすように、前記接着層の厚さを決定することを特徴とする請求項7に記載の液体移送装置の製造方法。
  9. さらに、前記圧電層の厚さを測定する工程と、前記振動板の厚さを測定する工程を含むことを特徴とする請求項8に記載の液体移送装置。
  10. 前記A及び前記Bの値が、−0.03A−700(1/B)+0.05>0の関係を満たすことを特徴とする請求項9に記載の液体移送装置の製造方法。
  11. A及びBの値が、−0.03A−1200(1/B)+0.08>0の関係を満たすように、前記圧電層の厚さを決定することを特徴とする請求項7に記載の液体移送装置の製造方法。
  12. さらに、前記振動板の厚さを測定する工程と、前記接着層の厚さを測定する工程を含むことを特徴とする請求項11に記載の液体移送装置。
  13. 前記A及び前記Bの値が、−0.03A−700(1/B)+0.05>0の関係を満たすことを特徴とする請求項12に記載の液体移送装置の製造方法。
  14. 前記振動板が前記隔壁部に金属拡散接合で接合され、圧電層の厚みTpが、0.08>0.03×((Tv+Tp)3×(Ev+Ep)/2)/Wc1/2を満足するように決定されることを特徴とする請求項11に記載の液体移送装置の製造方法。
  15. 前記振動板が前記共通電極として機能することを特徴とする請求項7に記載の液体移送装置の製造方法。

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