JP2006191906A - 植物の形質転換用ベクター - Google Patents

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Abstract

【課題】 マーカー遺伝子による影響から完全に解放された遺伝子導入組織・植物を効率良く作製するための植物形質転換用ベクター等を提供すること。

【解決手段】 本発明の課題は、目的遺伝子、マーカー遺伝子としての抗生物質耐性遺伝子及び脱離能を有するDNA因子を含み、かつ、前記抗生物質耐性遺伝子は前記脱離能を有するDNA因子によって除去し得る位置に存在し、また前記目的遺伝子はこの脱離能を有するDNA因子によって除去し得ない位置に存在するように構成した植物の形質転換用ベクター、このベクターを用いて作製した形質転換植物細胞および形質転換植物体等によって解決される。

【選択図】 図1

Description

本発明は、形質転換後に、マーカー遺伝子を除去することのできる植物の形質転換用ベクター、このベクターを用いて作製した形質転換植物細胞および形質転換植物体等に関する。
バイオテクノロジーを利用すると、目的とする遺伝子を直接、植物に導入することができるので、交配を重ねて行う従来法に比較して多くの利点を有している。実際に、目的遺伝子を対象植物に導入するためには、通常、(1)目的遺伝子を植物細胞へ導入し、(2)目的遺伝子が導入された細胞のみからなる植物組織を選別し、(3)選別された植物組織から植物体を再生する。このうち、目的遺伝子導入組織の選別にあたっては、通常、マーカー遺伝子を用いる。すなわち、マーカー遺伝子を目的遺伝子と共に植物細胞へ導入し、その導入細胞、又はこの細胞から生ずる組織がマーカー遺伝子の発現によって示す特徴的な性質を、目的遺伝子導入の指標として用いる。しかし、マーカー遺伝子を有する遺伝子産物については、安全性、消費者の不安感などの問題が残っている。
また、マーカー遺伝子の発現は、植物の形質転換の研究段階においても問題となる場合がある。すなわち、あるマーカー遺伝子を用いて作成された遺伝子導入植物に対して、さらに別の遺伝子を新たに導入しようとする場合には、同一のマーカー遺伝子は、新たな導入遺伝子のマーカーとしては使用できない。新たな遺伝子を導入する場合は、異なったマーカー遺伝子を使用しなければならないが、現在実用し得るマーカー遺伝子の種類は多くない。
マーカー遺伝子の脱離を任意に制御できると、目的遺伝子のみが導入されている細胞の発生、そしてかかる細胞からなる植物組織の発生を同期させたり、適宜調整することも可能となるので、遺伝子導入植物を作出する上で非常に便利である。このように遺伝子導入植物から目的遺伝子以外の遺伝子(例えば、マーカー遺伝子など)を取り除く手法の一つとして、形態異常誘導遺伝子の−つ、ipt(isopentenyl transferase)遺伝子(A. C. Smigockii、L. D. Owens、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、85:5131、1988)を用いる技術が知られている。形態異常誘導遺伝子とは、植物の組織に、矮化、頂芽優勢の崩壊、色素の変化、根頭癌腫、毛状根、葉の波打ち等の、通常と異なる形態分化を引起こす遺伝子を意味する。このipt遺伝子を発現誘導性プロモーターによって発現を調節し、マーカー遺伝子を取り除くことは公知である(H. Ebinuma et al.、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、94:2117、1997(非特許文献1); K. Sugita et al.、Plant Journal、22:461、2000(非特許文献2); T. Kunkel et al.、Nature Biotechnology、17:916、1999(非特許文献3); T. Aoyama N. H. Chua、Plant Journal 11:605、1997(非特許文献4))。
一方、特開平10-327850号公報(特許文献1)には、形態異常誘導遺伝子を用いてなる植物への遺伝子導入用ベクターが開示されている。そして、この公報の実施例には、形態異常誘導遺伝子としてipt遺伝子が使用された例が示されている。しかしながら、形態異常誘導遺伝子を用いる手法は、形質転換の効率が低いか、あるいは、特定の植物種でしか効果がないという欠点がある。
特開平10-327850号公報 Proc. Natl. Acad. Sci. USA、94:2117、1997 Plant Journal、22:461、2000 Nature Biotechnology、17:916、1999 Plant Journal 11:605、1997
上記のような状況において、目的遺伝子と共に植物細胞へ導入されたこの遺伝子を、その発現後に必要に応じて染色体等のDNAから効率良く除去してその機能を消失させることができる、改善された植物への遺伝子導入用ベクターの開発が望まれていた。
本発明者らは、マーカー遺伝子による影響から完全に解放された形質転換細胞・組織又は形質転換植物を効率良く作成するために鋭意研究を重ねた結果、本発明を完成したものである。すなわち、本発明は、以下のような植物の形質転換用ベクター、このベクターによって形質転換された植物細胞、このベクターによって形質転換された植物体などを提供する。
(1)目的遺伝子、マーカー遺伝子としての抗生物質耐性遺伝子及び脱離能を有するDNA因子を含み、かつ、前記抗生物質耐性遺伝子は前記脱離能を有するDNA因子によって除去し得る位置に存在し、また前記目的遺伝子はこの脱離能を有するDNA因子によって除去し得ない位置に存在するように構成した植物の形質転換用ベクター。
(2)前記脱離能を有するDNA因子が、発現誘導型の調節因子によって制御される前記(1)記載のベクター。
(3)前記抗生物質耐性遺伝子が、ハイグロマイシン耐性遺伝子、カナマイシン耐性遺伝子、ゲンタマイシン耐性遺伝子、クロラムフェニコール耐性遺伝子及びネオマイシン耐性遺伝子から選択される前記(1)又は(2)記載のベクター。
(4)前記抗生物質耐性遺伝子が、ハイグロマイシン遺伝子である前記(3)記載のベクター。
(5)前記脱離能を有するDNA因子が、部位特異的組換え系である前記(1)記載のベクター。
(6)前記部位特異的組換え系が、DNA組換え酵素遺伝子とその組み換え標的配列を含む前記(5)記載のベクター。
(7)前記部位特異的組換え系が、Cre/lox系、pSRl系、FLP系、cer系及びfim系から選択される前記(6)記載のベクター。
(8)前記部位特異的組換え系が、Cre/lox系である前記(7)記載のベクター。
(9)前記発現誘導型の調節因子が、グルタチオン−S−トランスフエラーゼI系遺伝子のプロモーター、グルタチオン−S−トランスフェラーゼII系(GST−II)遺伝子のプロモーター、Tetリプレッサー融合型カリフラワーモザイクウイルス35Sプロモーター、Lacオペレーター/リプレッサー系プロモータ、alcR/alcA系プロモータ、グルココルチコイド系プロモーター、hsp80プロモーター、リブロース2リン酸カルボキシラーゼ小サブユニット遺伝子(rbcS)のプロモーター、フルクトース−1,6−ビスホスファターゼ遺伝子のプロモーター、集光性クロロフィルa/b結合タンパク質遺伝子のプロモーター及びエストロゲンレセプター遺伝子のプロモーターから選択されるプロモーターである、(2)〜(8)のいずれかに記載のベクター。
(10)ベクターが、pBI121、pBI221、pBI101、pMSH1、pMSH2、pUC18、pUC19、pBR322、pBR325及びpBluescriptから選択される(1)〜(9)のいずれかに記載の組換えベクター。
(11)植物細胞に、(1)〜(10)のいずれかに記載の組換えベクターを導入した形質転換植物細胞。
(12) 前記(11)記載の形質転換植物細胞から得られた植物体。
本発明のベクターを用いて植物細胞の形質転換を行うと、目的遺伝子と共に導入したマーカー遺伝子は、導入後、この細胞に化学物質等の特定の刺激を与えることにより、一定の確率で、これが存在し機能していたDNA上から脱離してその機能を失い、目的遺伝子のみが、同じDNA上に発現可能に導入されている細胞が得られる。このため、このべクターは、導入しようとする目的遺伝子を変更するのみで、マーカー遺伝子を始めとする他の構成に何らの変更をも加えることなく、ある一つの植物体へ遺伝子の多重導入を行うために、何度でも無制限に繰り返して用いることができるという利点がある。
また、本発明のベクターによれば、遺伝子の多重導入を効率良く行うことができ、また、かかる細胞だけからなる遺伝子導入個体、すなわちマーカー遺伝子の影響が排除され、その遺伝子産物がもたらす危惧から完全に解放された個体も、交配過程を経ることなく得ることができる。
さらに、本発明のベクターにおいては、マーカー遺伝子の脱離を人為的に調節することができる。従って、通常の実験に用いる場合には抗生物質による選抜を行って確実に組換え体のみを栽培することが可能であるが、最終的に植物体からマーカー遺伝子が必要なくなった際、例えば、シングルコピー挿入体であり、ホモラインが選抜できた際などに、マーカー遺伝子を除くことによって多重遺伝子導入、あるいは商品作物へと育種することができるという利点がある。
以下、本発明をその実施態様に基づいて詳細に説明する。
本発明は、目的遺伝子、マーカー遺伝子と共に植物細胞へ導入するためのベクターであって、発現後必要に応じて、マーカー遺伝子をそれが存在するDNAから除去することを可能とするベクターに関する。より具体的には、本発明のベクターは、目的遺伝子、マーカー遺伝子としての抗生物質耐性遺伝子及び脱離能を有するDNA因子を含み、かつ、前記抗生物質耐性遺伝子は前記脱離能を有するDNA因子によって除去し得る位置に存在し、また前記目的遺伝子はこの脱離能を有するDNA因子によって除去し得ない位置に存在するように構成したことを特徴とする。
(目的遺伝子及び抗生物質耐性遺伝子)
本明細書中、「目的遺伝子」とは、対象とする植物の形質を転換するための遺伝子のことであり、特にこれに限定されないが、例えば、除草剤耐性、ストレス耐性等の農業的に優れた形質を付与できる遺伝子、農業的に優れた形質を付与するとは限らないが、遺伝子発現機構の研究に必要とされる遺伝子等が挙げられる。本発明においては、遺伝子組換え食品の安全性の観点からは、農業的に優れた形質を付与する遺伝子が目的遺伝子となる。
本明細書中、「抗生物質耐性遺伝子」は、抗生物質に対して耐性を有する遺伝子のことをいい、特にこれに限定されないが、例えば、ハイグロマイシン耐性遺伝子、カナマイシン耐性遺伝子、ゲンタマイシン耐性遺伝子、クロラムフェニコール耐性遺伝子、ネオマイシン耐性遺伝子などが挙げられる。このような抗生物質耐性遺伝子は、マーカーとして本発明のベクター中に組み込まれるが、後述するように、必要に応じて必要な場面で、外部刺激によって除去されるように組み込まれる。
(脱離能を有するDNA因子)
本明細書中、「脱離能を有するDNA因子」とは、これらが存在し、機能する染色体DNA等から、それ自身が脱離し得る能力を有するDNA配列をいう。植物ではこのような因子として、染色体上に存在するトランスポゾンが知られている。トランスポゾンが機能するためには、原則として、その内部にある遺伝子から発現し、それ自信の脱離及び転移を触媒する酵素(転移酵素)と、その内部の末端領域に存在し、この転移酵素が結合し作用するDNA配列が必要である。これらの働きにより、トランスポゾンはその存在する染色体上から脱離し、その後、普通はDNA上の新たな位置に転移するが、一定の確率で転移できぬままその機能を失い、消失等する場合も生ずる。
本発明で用いられる他の「脱離能を有するDNA因子」としては、部位特異的組換え系(site−specific recombination system)が挙げられる。この部位特異的組換え系は、特徴的なDNA配列を有する組換え部位、及びこのDNA配列(組換え配列)に特異的に結合して、その配列が2以上存在したとき、その配列間の組換えを触媒する酵素、という2つの要素を有する。この組換え配列が同一DNA分子上に、同一方向を向いてある一定の間隔で2か所存在している場合、これに挟まれた領域がこのDNA分子(プラスミド、染色体等)から脱離する(特開平10-327850号公報;N.L.Craig Annu.Rev.Genet.、22:77、1988等参照)。したがって、本発明のベクターにおいて、脱離能を有するDNA因子として部位特異的組換え系を用いる場合は、後に除去するマーカー遺伝子を、部位特異的組換え系の2個の組換え配列の間に位置させることになる。
本発明で用いることができる部位特異的組換え系としては、ファージ、細菌(例えば大腸菌)、酵母等の微生物から分離されたCre/lox系、pSRl系、FLP系、cer系、fim系等が知られている(N.L.Craig、Annu.Rev.Genet.、22:17、1988)。なお、本発明においては、P1ファージ由来のCre/lox系が好ましく用いられる。
(発現誘導型調節因子)
本発明のベクターにおいては、上記脱離能を有するDNA因子は、発現誘導型の調節因子の制御下に連結される。本明細書中、「発現誘導型の調節因子」とは、例えば、個体の分化や発育のステージに応じ、あるいは、熱、光、金属等の様々な環境要因に応じて、遺伝子発現のオン・オフを行う遺伝子の発現調節因子のことをいう。本発明ではこのような働きを有する発現誘導型の調範因子を利用し、この下流域に脱離能を有するDNA因子を配置して、その発現、つまりは脱離能を制御する。
本発明において用いることのできる「発現誘導型の調節因子」としては、例えば、化学物質に反応するものとしてグルタチオン−S−トランスフエラーゼI系遺伝子のプロモーター(特開平5−268965号公報)、グルタチオン−S−トランスフェラーゼII系(GST−II)遺伝子のプロモーター(国際公開WO93/01294号公報)、Tetリプレッサー融合型カリフラワーモザイクウイルス35Sプロモーター(C.Gatz et al.、Mol.Gen,Genet.、227:229、1991)、Lacオペレーター/リプレッサー系プロモーター(R.Wilde et al.、The EMBO Journal、11:1251、1992)、alcR/alcA系プロモーター(国際公開WO94/03619号公報)、グルココルチコイド系プロモーター(青山卓史、蛋白質 核酸 酵素、41:2559、1996)等が、熱に反応するものとしてhsp80プロモーター(特開平5−276951号公報)等が、そして光に反応するものとしてリブロース2リン酸カルボキシラーゼ小サブユニット遺伝子(rbcS)のプロモーター(R.Fluhr et al.、Proc.Natl.Acad.Sci. USA、83:2358、1986)、フルクトース−1,6−ビスホスファターゼ遺伝子のプロモーター(特表平7−501921号公報)、集光性クロロフィルa/b結合タンパク質遺伝子のプロモーター(特開平5−89号公報)、エストロゲンレセプター遺伝子のプロモーター等が例示される。
(ベクターの作製)
本発明においては、上記のような特定の配列要素を組み込む以外は、通常の植物転換用ベクターの作製方法を用いて、目的遺伝子、マーカー遺伝子、脱離能を有するDNA因子が機能するようにベクターを作製する。ベクターとしては、例えば、プラスミドベクターが使用できる。より好ましくはバイナリーベクター であって、例えば、pBI121、pBI221、pBI101、pMSH1、pMSH2、pUC18、pUC19、pBR322、pBR325、pBluescript等が使用できる。本発明において使用する遺伝子は、cDNAまたはゲノムDNAのクローニングにより得ることができるが、その配列が明らかであれば、化学合成によって調製することもできる。目的遺伝子のcDNAは、例えば、このcDNAの3'末端および5'末端の少なくとも一方に、宿主である植物細胞内で目的遺伝子の発現を制御するプロモーターを付加する。プロモーターは、宿主細胞中で外来遺伝子の発現を制御し得るものならば、限定されず、例えば、SRαプロモーター、SV40プロモーター、LTRプロモーター、CMVプロモーター、HSV-TKプロモーター、アクチンプロモーター等が挙げられる。さらに、本発明のベクターは、複製開始点を含み、必要に応じてエンハンサー、転写終結配列(ターミネーター)、リボソーム結合部位、ポリアデニル化シグナル等を含んでいてもよい。
本発明においては、マーカー遺伝子としての抗生物質耐性遺伝子は、発現誘導型の調節因子の制御下におかれた脱離能を有するDNA因子によって脱離又は除去され得る位置に組込まれる。抗生物質耐性遺伝子を挿入する場所は、脱離能を有するDNA因子の機能によって、これが脱離し、又は除去し得る位置でありさえすればよい。抗生物質耐性遺伝子の挿入場所は、脱離能を有するDNA因子の所定の組換え配列に挟まれた領域内で、組換え酵素の発現を阻害しない位置であればよい。例えば、後述する本発明の実施例においては、(1) LoxP認識配列(LoxP)、(2) アクチンプロモーター配列(pAct)、(3) エストロゲンレセプターの制御領域、VP16の転写活性部位、細菌のリプレッサーLexAを融合した合成転写活性タンパク質コード領域(XVE)、(4) ハイグロマイシン耐性遺伝子(Hpt)、(5) LexAオペレーター配列(OLexA)、(6) P1ファージ由来のCre組換え酵素(cre-int)、(7) LoxP、(8) マルチクローニングサイト(MCS)、という順序で部位特異的組換え系、マーカー遺伝子であるハイグロマイシン耐性遺伝子等をベクターに組み込んでいる。なお、目的遺伝子はマルチクローニングサイトに挿入することができる。
(形質転換細胞及び形質転換植物の作製)
本発明においては、得られた組換えベクターを植物細胞に導入することによって、形質転換された植物細胞を得ることができる。植物細胞の形質転換方法としては、例えば、従来公知の方法が採用でき、例えば、外来遺伝子を植物に感染するウイルスや細菌を介して生物学的に導入する方法(I.Potrylkus、Annu.Rev.Plant Physiol.Plant Mol.Biol.、42:205、1991)、外来遺伝子を直接導入する方法等があげられる。これらの方法は、例えば、形質転換する宿主植物の種類等に応じて適宜決定できる。
本発明のベクターを、植物に感染するウイルスや細菌を介して、植物細胞に間接的に導入する場合は、例えば、ウイルスとしては、カリフラワーモザイクウイルス、ジェミニウイルス、タバコモザイクウイルス、ブロムモザイクウイルス等が使用できる。また、細菌としては、アグロバクテリウム・ツメファシエンス、アグロバクテリウム・リゾジェネス等が使用できる。本発明においては、アグロバクテリウム・ツメファシエンスが好ましく用いられる。ウイルスや細菌からアグロバクテリウムヘのベクターの移行は、下記のエレクトロポレーション法とトリパレント法(トリペアレントメイティング法)とを用いて好適に行うことができる。
(i) エレクトロポレーション法
まず、大腸菌等からベクターを、通常のアルカリによるミニプレップ法で回収する。ここで、自動プラスミド抽出機がある場合には、非常に容易に多数のベクターを効率よく抽出することができる。べクターを移行させるアグロバクテリウムとしては、EHA101などを挙げることができる。特に、大型断片をこれらの細胞中に挿入する場合には、高形質転換能を有する株から誘導された組換え能を欠損しているrecA−株を、好適に使用することができる。このようなアグロバクテリウムから、公知の方法で、エレクトロ−コンピテントセルを調製する。ミニプレップ法で回収したべクターを、エレクトロポレーションにより上記アグロバクテリウムのコンビテントセルに導入する。このべクターを導入したコンピテントセルを、挿入した抗生物質耐性遺伝子に対応する抗生物質(例えば、ハイグロマイシン、カナマイシン等)を含む培地上で培養し、形質転換株の選択を行う。
(ii)トリパレント法
本発明のベクターを導入した大腸菌、ヘルパープラスミドを有する大腸菌、およびアグロバクテリウムを混合培養することにより、所望のベクターを大腸菌からアグロバクテリウムに移行させることができる。これらのヘルパープラスミドを有する大腸菌と、ベクターを導入した大腸菌とを、アグロバクテリウムと適当な培地中で、28℃で12〜24時間程度混合培養する。適当な培地としては、YEP培地などを挙げることができる。ここで、ヘルパープラスミドとは、あるベクターを目的の菌に移行させようとする場合に、その菌へのベクターの移行を助けるプラスミドをいい、具体的には、pRK2013などを挙げることができる。ヘルパープラスミドを有する大腸菌を混合培養のときに用いると、ベクターを導入した菌からアグロバクテリウムへ混合培養中に効率よく移行する。以上のようにして混合培養したアグロバクテリウムから、本発明の大容量シャトルベクターを含む菌を所定の抗生物質(例えば、カナマイシン、テトラサイクリン、ハイグロマイシン等)によって選択し、植物の形質転換に使用する。
植物細胞に外来遺伝子を直接導入する方法としては、例えば、マイクロインジェクション法、エレクトロポレーション法、パーティクルガン法、ポリエチレングリコール法、融合法、高速バリスティックペネトレーション法等の従来公知の方法があげられる(I.Potrykus、Annu.Rev.Plant Physiol.Plant Mol.Biol.、42:205、1991参照)。エレクトロポレーション法は、例えば、プロトプラストの培養が安定かつ容易であり、再生が容易な植物細胞に適用することが好ましい。また、パーティクルガン法は、宿主の限定を受けないため、例えば、アグロバクテリウムに感染し難い植物細胞や、プロトプラストの調製が困難な植物細胞に適用することが好ましい。なお、このようにエレクトロポレーション法を行う場合、前記組換えベクターを構成するベクターとしては、例えば、pUC18、pUC19、pBR322、pBR325、pBluescript 等が好ましい。単子葉植物の多くやアグロバクテリウムの感染しにくい双子葉植物に対しては、遺伝子導入法として汎用されているアグロバクテリウムを用いた間接導入法が使用できないため、これらの直接導入法が有効である。
次に、本発明のベククーを導入したアグロバクテリウム等から植物へT−DNAを導入して、植物の形質転換を行う。例えば、上述のようにしてベクターを導入したアグロバクテリウム株(約3×108〜3×109個/mL)を植物細胞のカルスまたは組織片と数分間程度共存させた後、2N6−ASまたはN6COなどの培地中で、25〜28℃で3日間程度共存培養する。ここで共存培養する植物としては、共存培養の難易度に差があるものの種子植物が用いられる。特に、これまで形質転換の困難であった単子葉作物、すなわち、イネ、コムギ、オオムギ、トウモロコシなども対象となり得る。本発明においては、個体再生の容易さからイネが好適に使用される。
上記のアグロバクテリウムとの共存培養の後、カルスまたは組織片は、適当な抗生物質を含む培地で選択培養を行う。例えば、ベクターに選択マーカーとしてハイグロマイシン耐性遺伝子を導入した場合には、ハイグロマイシン(10〜100μg/mL)とアグロバクテリクム除去のためのセフォタキシム(25μg/mL)またはカルベニシリン(500μg/mL)とを含む2N6−CHまたはN6Se培地を用いて、1〜3週間選択培養を行うことにより、形質転換したカルス体を選択的に得ることができる。選択的に得たカルス体を、N6S3−CH、MSreなどの適当な再分化培地を用いて再分化を誘導し、再分化個体を得る。以上のようにして、本発明のベクターを用いてDNA断片を植物に導入し形質転換することができる。
目的遺伝子と導入されたマーカー遺伝子は、組み換えられた植物のDNA上では同一又は隣接した場所に存在する。組換え個体の選抜は、マーカー遺伝子で抗生物質耐性遺伝子(例えば、ハイグロマイシン遺伝子)の発現を調べることによって行うことができる。また、得られた形質転換植物細胞および形質転換植物体の染色体DNAをそれぞれ調製し、例えば、目的遺伝子配列に特異的なプライマーやプローブを用いたPCRやサザンブロッティング法等により、前記目的遺伝子の発現が確認されれば、所望の形質転換植物細胞および形質転換植物体が得られたこととなる。
(マーカー遺伝子の除去)
本発明のベクターを用いて植物に遺伝子を導入すれば、導入後、その植物細胞に熱、光、化学物質等、使用した発現誘導型調節因子に応じた適当な刺激を人為的に加えることで、脱離能を有するDNA因子を発現させることができ、その結果、マーカー遺伝子である抗生物質耐性遺伝子はこのDNA因子と共に、それらが導入され機能していたDNA上から、一定の確率で脱離してその機能を失う。一方、脱離能を有するDNA因子によっては脱離又は除去し得ない位置に挿入された目的遺伝子は同じDNA上に残留して機能を保持し続け、目的遺伝子のみが発現可能に導入されている細胞が得られることになる。しかもこのマーカー遺伝子、つまり抗生物質耐性遺伝子の機能の消失は、遺伝子導入の際と同様に、抗生物質に対する感受性試験によって肉眼で検出できる。このことから、マーカー遺伝子の機能の消失した細胞だけからなる組織、換言すれば、目的遺伝子のみが発現可能に導入されている細胞だけからなる組織は、確実・容易に選抜できることとなる。
例えば、上記したエストロゲンレセプターの制御領域を含む合成転写活性タンパク質コード領域(XVE)、マーカー遺伝子、Cre組換え酵素などを、2個のLoxP認識配列の間に組み入れたベクターを用いて植物の形質転換をした場合は、植物体にエストロゲンを吸収させることにより、組み込まれたエストロゲンレセプター、DNA結合領域、転写促進タンパク質が活性化され、Cre組換え酵素遺伝子の転写を引き起こし、標的配列でのDNAの組換えが起こり、マーカー遺伝子を含むDNA領域が植物のDNA上から取り除かれる。これによって、その後の植物体は目的遺伝子のみが入っており、マーカー遺伝子を含む配列は完全に除去されたものとなる。
なお、本発明の植物の形質転換用ベクターは、特にこれらに限定されないが、例えば、イネ、オオムギ、コムギ、ライムギ、トウモロコシ、ソバ、トマト、トウガラシ、ピーマン、ナタネ、アルファルファ、ダイズ、ソラマメ、インゲンマメ、ホワイトクローバー、ワタ、ジャガイモ、サツマイモ、ナガイモ、キュウリ、ナス、ダイコン、カブ、テンサイ、カラシナ、ホウレンソウ、ニンジン、セリ、タバコ、ツルムラサキ、ヒマワリ、クワ、サクラ、アマモ、ハネモ、オオハネモ、ミルなどに適用することができる。
以下、本発明を実施例に基づいてより具体的に説明する。なお、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
以下の実施例において、更に詳細な実験操作は、特に述べる場合を除き、モレキュラー・クローニング第2版(Sambrook et al.eds.、Cold Spring Harbar Laboratory Press、NewYork、1989)に記載の方法又は購入した実験材料に添付された取扱い説明書に記載の方法にしたがって行った。
実施例1:植物の形質転換用ベクターの構築
本発明のマーカーフリーべクターであるpBIMFNを以下の工程を経て作製した。また、形質転換効率を上げるとされているアデニンリボースリン酸転移酵素遺伝子(特開2004−073011)を同時にもつpBIMFAも作製した。第1図に、pBIMFN及びpBIMFAの構成を示す。
以下、図2〜図7を参照して、pBIMFN及びpBIMFAを作製した手順を説明する。
1.工程(A):図2参照
pBluescript II SK+(以下SKと略)のSal I、Kpn Iサイトの間にSal I、Kpn I、M13 Reverse配列、Xho I、Sse 8387Iを持つようなアダプター(Right ad−2)を完全合成し、挿入した。ただし、挿
入後はSKにあったKpn Iサイトは無くなるようにした(pAl)。このpAlのSal IとEcoRIの間に、Eco RI、LoxP、M13 Forward配列、Apa I配列を持つアダプター(Right ad−1)を挿入した。ただし、挿入後はSal Iサイトは無くなるようにした(pA2)。このXho I、Sse 8387Iサイトの間に、pBIGRZl(特開平10−155485)の17400−18040塩基のLB部位をPCRによって増幅し、この際に両末端にSalI、Sse8387Iサイトを設けたものを挿入した(pA3)。このSac I、Eco RIサイトに、次の(B)で作成したpB4
をSac I、Eco RIで処理し挿入した(pA4)。
2.工程(B):図3参照
SKのSac I、Xba Iサイトの間にSac I、Sse 8387I、Bam HI、LoxP、Xba I配列を持つアダプター(Left ad−1)を合成し、挿入した(pBl)。このXba I、Xho Iサイトの間に、Not I、Xho I、Bsi WI、Eco RIをもつアダプター(Left ad−2)を挿入した。この際に、挿入に使用したXba I、Xho Iサイトは無くなるようにした(pB2)。Sse 8387I、Bam HIサイトの間に、pBIGRZlの7570−7850塩基のRB
部位をPCRによって増幅し、この際に両末端にSse 8387I、Bam HIサイトを設けたものを挿入した(pB3)。Xho I、Bsi WIサイトの間に、pBIGRZ1の9242−9494塩基のノパリン合成酵素遺伝子の転写終了配列部位(tNOS)をPCRによって増幅し、この際に両末端にXho I、Bsi WIサイトを設けたものを挿入した(pB4)。
3.工程(C):図4参照
SKのBam HI、Kpn Iサイトの間にPsp OMI、Sma I、Afl II、Eco RI、Xho I配列を持つアダプター(ActCread)を合成し、挿入した。この際に、挿入に使用したBam HI、Kpn Iサイトは無くなるようにした(pC1)。このAfl II、Eco Rサイトに、PX6−GFP(J.Zuoet al.、Nature Biotechnology、19:157、2001)をAfl II、Eco RIで処理し、生じたLexAオペレーター配列を含む1829塩基を挿入した(pC2)。このSma I、Afl IIサイトに、pER12−Act(ロックフエラー大学N.H.Chua教授より譲受)のXVE、ハイグロマイシン耐性遺伝子を含むEco RV、Afl II断片約4kbを挿入した(pC3)。これをPsp OMI、Xho Iで処理した断片を次の工程(E)及び(F)で使用した。
4.工程(D):図5参照
pBIGRZ(特開平10−155485)をPme I、ApaL Iで切断し、その末端をKlenow
酵素により平滑化し、T4リガーゼによって再結合した(pDl)。pBIGRZ1の6250塩基から7580塩基を増幅するプライマー対を作成した。ただし、7580塩基側のプライマーの5’側には制限酵素Sse 8387I、Eco T22Iサイトを付加した。生じた断片をPci I、Eco T22Iで処理し、これをpDlをPci I、Eco T22Iで処理したものに挿入した(pD2)。
5.工程(E):図6参照
pA4をBsi WI、Eco RIにより切断し、ここにpBIGRZ-APRT(特開2004−073011)からのIDS3遺伝子のプロモーターとオオムギアデニンリボースリン酸転移酵素
(HvAPT1)の接続された断片を挿入した(pEl)。このNot I、Xho IサイトにpC3をPsp OMI、Xho Iで処理した断片約6.7kbを挿入した(pE2)。このApa I、Kpn Iサイトに、Apa I、Pml I、Bln I、Swa I、Asc I、Bsi WI、Spe I、Pac I、Not I、Bst Z17I、Kpn Iなどの配列をもつマルチクローニングサイト(MCS)を合成し、挿入した(pE3)。これをSse 8387Iで切り出し、pD2のSse 8387Iに挿入したものをpBIMFAとした。
6.工程(F):図7参照
pA4をBsi WI、Eco RIにより切断し、その末端をKlenow酵素により平滑化し、T4リガーゼによって再結合した(pFl)。このNot I、Xho IサイトにpC3をPsp OMI、Xho Iで処理した断片約6.7kbを挿入した(pF2)。このApa I、Kpn Iサイトに、Apa I、Pml I、Bln I、Swa I、Asc I、Bsi WI、Spe I、Pac I、Not I、Bst Z17I、Kpn Iなどの配列をもつマルチクローニングサイト(MCS)を合成し、挿入した(pF3)。これをSse 8387Iで切り出し、pD2のSse 8387Iに挿入したものをpBIMFNとした。
図6及び図7から明らかなように、このプラスミドはT−DNA領域、即ち植物染色体に組込まれることになる領域内に、マーカー遺伝子としてハイグロマイシン耐性遺伝子Hpt遺伝子を有している。そして、このプラスミドにおいて脱離能を有するDNA因子として機能するのは、部位特異的組換え系であるCre/lox系の組換え配列、loxP間の領域であり、それ故、Hpt遺伝子は、同一方向を向いたこの二つの組換え配列loxPに挟まれた形で挿入されている。しかし同時に、loxP間の脱離を触媒する酵素の遺伝子であるCre遺伝子は発現誘導型の調節因子、即ちXVEとともに連結されており、そのためこのプロモーターの制御を受けて、適当な条件下でなければこれが発現しないように、つまりloxP間の脱離が起こらないようになっている。
実施例2:アグロバクテリウムへのpBIMFN、pBIMFAの導入
エレクトロポレーションにより、上記のようにして作製したpBIMFN及びpBIMFAを、アグロバクテリウム(Agrobacterium tumefaciens C58)へ導入した。アグロバクテリウムヘのベクターの移行は、Dower et al((Nucl. Acids Res. 16:6127-6145(1988))に従った。アグロバクテリウムのコンピテントセルを用意し、これと上記のプラスミド溶液を混ぜ、これをキュベットに入れて、短時間での高電圧(約1.35kv/cm)をかけることにより行った。このアグロバクテリウムを37℃1時間LB培地を加えて振盪培養し、その後リファンピシン(100 mg/mL)とカナマイシン(25 mg/mL)を含むLBプレート上で26℃2日間培養した。
アグロバクテリウムのイネへの感染と植物体の再生
植物細胞への遺伝子の導入から植物体を再生させるまでの方法は「モデル植物の実験プロトコール イネ・シロイヌナズナ編」(秀潤社)、Hiei et al (Plant J. 6: 271-282(1994))の方法に従った。
(a) 胚盤カルスの誘導
イネ完熟種子 (Oryza sativa L. var. Tsukinohikari)を小型籾すり機にかけ、籾を取り除いた種子100〜150個を40 mLの種子滅菌用溶液(2.5% 次亜塩素酸ナトリウム、0.01 % Tween 20)を入れて、 20分振盪した。種子滅菌用溶液を捨て、滅菌水を適当量加え、3回振り洗いをした。ピンセットで種子をカルス誘導培地(N6D)に16 種子/シャーレで置床し、シャーレの周りをサージカルテープでシールした。28℃、暗所で3,4週間培養し、胚盤カルスを誘導した。
(b) 胚盤カルスの前培養
分裂増殖カルス(1〜2 mm)をピンセットで、新しいN6D培地に置床した。サージカルテープでシールして、28℃,暗所で3日間培養した。
(c) アグロバクテリウム‐イネ胚盤カルス共存培養
アグロバクテリウム培養液のOD600を測定し、AAM懸濁培地で希釈し、OD600 = 0.1となるようにした。
前培養した胚盤カルスを滅菌した茶こしにいれた。茶こしをアグロバクテリウムの懸濁液に浸漬し、カルス表面全体に懸濁液が行き渡るように、30秒間素早く振盪した。茶こしを滅菌したペーパータオル上にのせ、水分を十分に吸い取らせた。滅菌濾紙をのせた2N6-AS培地に、個々のカルスが濾紙面に接地するようにカルスを置床した。サージカルテープでシールして、アルミホイルに包んで遮光し、25℃で3日間培養した。
(d) アグロバクテリウムの除菌
滅菌水に250 mg/Lの濃度になるようにクラフォランを加えた。共存培養したカルスを茶こしに移し、クラフォラン水溶液中に浸漬、素早く動かしてカルス表面に付着した菌を洗った。この洗浄を計3回繰り返した。
(e) 一次選抜
洗浄が終わり、十分に余分な水分を吸い取ったカルスを一次選抜培地(2N6-CH30)に置床した。サージカルテープでシールして、28℃,2週間、暗所で培養した。
(f) 二次選抜
カルスを二次選抜培地(2N6-CH50)に移した。サージカルテープでシールして、28℃,2週間、暗所で培養した。
(g) 再分化誘導
カルスを再分化誘導培地(NT-R-CH50)に置床した。1シャーレあたり15〜20個置いた。サージカルテープでシールして、28℃,3週間、明所で培養した。
(h) 再分化植物体形成
乳白色・乾燥表面カルスを再分化植物体形成培地(MS free)に置床した。1シャーレあたり15〜20個置いた。再分化植物体は、旺盛に根を発達させるので、再分化個体は確認出来次第、順次新しい再分化植物体形成培地に移した。
(i) 馴化
ほぼシャーレ一杯に葉身が成長した後、ふたを外し、シャーレ一杯に滅菌水を張り、高湿度に保って3,4日間培養した。培養後、土耕栽培を行った。
(j) 土耕栽培から収穫まで
ボンソル(住友化学)とバーミキュライト(ニッタイ)を1:1の割合で混合し、41.5Lのコンテナーに入れた。水を張り、 2〜3日間、土を水になじませた。ここに、(i)で得られた再生体を移植した。昼間30℃、夜間25℃の天然光P2型温室で培養した。出穂前40日に、追肥としていずみ化成 15号(住友化学工業)を約30 g与えた。
穂が熟し黄褐色に変色したら、給水をやめ乾燥させた。形質転換のラインの穂ごとに、一本ずつ収穫して、封筒に詰めて4℃に保存した。
このようにしてpBIMFNの場合には用いたカルス250個から54個体が、pBIMFAの場合には用いたカルス253個から94個体が得られた。pBIMFAで縛られた組換え個体の数が多く、アデニンリボースリン酸転移酵素遺伝子発現の効果が認められた。
なお、上記工程で使用した培地の組成、各種ストック溶液の組成等を、それぞれ、表1〜5に示す。
Figure 2006191906
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実施例3:マーカー遺伝子の除去
実施例1で得られたイネの種子100粒を用いた。ハイグロマイシンを含むMS培地
上で播種し、発芽したイネの幼苗93本をβ−エストラジオールを含み、ハイグロマイシンを含むMS培地とハイグロマイシンを含まない培地に46本ずつ移植した。β−エストラジオールで処理しなかったものは43本が正常に生育した。β−エストラジオールで処理したものすべてが、ハイグロマイシン耐性でなくなり枯死したことから、脱離能を有するDNA因子の制御に用いた、化学物質反応性のプロモーターは適正に機能し、PBIMFNもしくはpBIMFAにより植物組織に遺伝子を導入してこれを適当な化学物質の存在下で培養すると、脱離能を有するDNA因子の発現を誘導し、その脱離、ひいてはマーカー遺伝子である抗生物質耐性遺伝子の脱離を促すことがわかる。また、上記とは別にβ−エストラジオールのみを含み、ハイグロマイシンを含まないMS培地で育てた植物体のうち、いくつかについてはPCRを用い、DNA分析を行ってMCS部分は植物に存在すること、マーカー遺伝子であるHpt遺伝子及び脱離能を有するDNA因子の脱離を、DNAレベルにおいても確認した。
(Hpt遺伝子の脱離のPCRによる検出)
上記のようにして組換え体を栽培したもののうち、β−エストラジオールを含む培地で処理したものと、未処理のものの葉からDNAを抽出してハイグロマイシン耐性遺伝子の脱離の有無をPCRによって確認した。プライマーとしてFw; 5'-ATGAAAAAGCCTGAACTCACCGCGACGTC(配列番号1)、Rv; 5'-CTATTTCTTTGCCCTCGACGAGTGCT(配列番号2)を用いた。また、ゲノムDNAの抽出を確認するために、α−アミラーゼの遺伝子の部分配列をプライマーFw; 5'-GTAGCCCTGCATGACCTTGT(配列番号3)、Rv; 5'-TCAACTGGGAGTCGTGGAAG(配列番号4)で増幅した。図8に、このようにして得られたPCRの結果を示す。図8(a)はハイグロマイシン遺伝子を増幅したもの、図8(b)はアルファアミラーゼ遺伝子を増幅したものを示し、矢印の位置にそれぞれの増幅されたバンドが出る。なお、レーンV, N, A, B, C, D, M, E, F, G, H及びMの説明は次の通りである。
レーンA-D:βエストラジオールで処理した植物体から抽出したDNAを鋳型としたもの。
レーンE-H:βエストラジオールで処理していない植物体から抽出したDNAを鋳型として用いたもの。
レーンV:組換えに用いたpBIMFNを鋳型としたもの。
レーンN:鋳型を加えていないもの。
レーンM:電気泳動のマーカー(500、1000、3000bpの位置にバンドが見える)。
図8(a)に示される結果から明らかなように、レーンA-D(β−エストラジオールで処理した植物体から抽出したDNAを鋳型としたもの)においては、ハイグロマイシン耐性遺伝子が検出されておらず、この遺伝子がβ−エストラジオール処理によって脱離していることが確認された。
以上述べたように、本発明によれば、目的遺伝子と共に植物細胞へ導入されたこの遺伝子を、その発現後に必要に応じて染色体等のDNAから効率良く除去してその機能を消失させることができる、改善された植物への遺伝子導入用ベクターを提供することができる。このようなベクターは、より安全な遺伝子組換え食品の生産、新たな遺伝子組換え植物の研究に有用である。
実施例1で作成したマーカーフリーベクターpBIMFN及びpBIMFAの構成を示す図である。 実施例1における、pA1〜pA4の作成手順を示す図である。 実施例1における、pB1〜pB4の作成手順を示す図である。 実施例1における、pC1〜pC3の作成手順を示す図である。 実施例1における、pD1及びpD2の作成手順を示す図である。 実施例1における、pE1〜pE3及びpBIMFAの作成手順を示す図である。 実施例1における、pF1〜pF3及びpBIMFNの作成手順を示す図である。 実施例3における、ハイグロマイシン耐性遺伝子の脱離を示す電気泳動図である。
[配列番号:1]実施例3で用いたプライマー
[配列番号:2]実施例3で用いたプライマー
[配列番号:3]実施例3で用いたプライマー
[配列番号:4]実施例3で用いたプライマー

Claims (12)

  1. 目的遺伝子、マーカー遺伝子としての抗生物質耐性遺伝子及び脱離能を有するDNA因子を含み、かつ、前記抗生物質耐性遺伝子は前記脱離能を有するDNA因子によって除去し得る位置に存在し、また前記目的遺伝子はこの脱離能を有するDNA因子によって除去し得ない位置に存在するように構成した植物の形質転換用ベクター。
  2. 前記脱離能を有するDNA因子が、発現誘導型の調節因子によって制御される前記請求項1記載のベクター。
  3. 前記抗生物質耐性遺伝子が、ハイグロマイシン耐性遺伝子、カナマイシン耐性遺伝子、ゲンタマイシン耐性遺伝子、クロラムフェニコール耐性遺伝子及びネオマイシン耐性遺伝子から選択される前記請求項1又は2記載のベクター。
  4. 前記抗生物質耐性遺伝子が、ハイグロマイシン遺伝子である前記請求項3記載のベクター。
  5. 前記脱離能を有するDNA因子が、部位特異的組換え系である前記請求項1記載のベクター。
  6. 前記部位特異的組換え系が、DNA組換え酵素遺伝子とその組み換え標的配列を含む前記請求項5記載のベクター。
  7. 前記部位特異的組換え系が、Cre/lox系、pSRl系、FLP系、cer系及びfim系から選択される前記請求項6記載のベクター。
  8. 前記部位特異的組換え系が、Cre/lox系である前記請求項7記載のベクター。
  9. 前記発現誘導型の調節因子が、グルタチオン−S−トランスフエラーゼI系遺伝子のプロモーター、グ
    ルタチオン−S−トランスフェラーゼII系(GST−II)遺伝子のプロモーター、Tetリプレッサー融合
    型カリフラワーモザイクウイルス35Sプロモーター、Lacオペレーター/リプレッサー系プロモータ、alcR/alcA系プロモータ、グルココルチコイド系プロモーター、hsp80プロモーター、リブロース2リン酸カルボキシラーゼ小サブユニット遺伝子(rbcS)のプロモーター、フルクトース−1,6−ビスホスファターゼ遺伝子のプロモーター、集光性クロロフィルa/b結合タンパク質遺伝子のプロモーター及びエストロゲンレセプター遺伝子のプロモーターから選択されるプロモーターである、請求項2〜8のいずれかに記載のベクター。
  10. ベクターが、pBI121、pBI221、pBI101、pMSH1、pMSH2、pUC18、pUC19、pBR322、pBR325及びpBluescriptから選択される請求項1〜9のいずれかに記載の組換えベクター。
  11. 植物細胞に、請求項1〜10のいずれかに記載の組換えベクターを導入した形質転換植物細胞。
  12. 請求項11記載の形質転換植物細胞から得られた植物体。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN102181463A (zh) * 2011-02-25 2011-09-14 北京农业生物技术研究中心 基于AlcR/alcA和Cre/loxP系统的标记基因诱导删除体系
CN107099550A (zh) * 2017-05-13 2017-08-29 宁夏大学 用于植物基因表达载体构建的质粒载体及其应用

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