JP2006183815A - 内燃機関の軸受構造 - Google Patents

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Abstract

【課題】軸受メタルのクラッシュハイトによる嵌合圧を阻害することなく、軸受穴での軸受メタルの内転を防ぐことができる内燃機関の軸受構造を提供することを目的とする。
【解決手段】半円弧状の軸受穴を有する2つの部材を接合した軸受ハウジングと、前記半円弧状の軸受穴にそれぞれ嵌合される2つの半円弧状軸受メタルからなる内燃機関の軸受構造において、少なくとも1つの半円弧状軸受メタルのうち、その幅方向の端部のうち少なくとも一方に、前記軸受穴の径方向外側へ広がる半環状のツバ部を形成する。そして当該ツバ部の周方向の端部であって径方向外面に、前記半円弧状軸受メタルのクラッシュハイト方向に平行な平面を形成するとともに、前記軸受ハウジングには当該平面と当接する面を設けたことを特徴とする。この構成によれば、クラッシュハイトを利用した嵌合圧により軸受メタルの真円度を確保しつつ、軸受メタルの内転を防止することができる。
【選択図】図1

Description

本発明は、内燃機関の軸受構造及び該軸受構造を備えた内燃機関に関する。
従来の内燃機関の軸受構造において、軸受穴に軸受メタルを嵌合したのみでは軸受穴において軸受メタルが内転してしまうおそれがあった。軸受メタルが内転すると、当該軸受構造は本来の役割を果たすことができず、機関の性能の低下につながることになる。
そこで、軸受メタルの内転を防止することができる技術として特許文献1が開示されている。この従来技術によれば、スラストメタルに設けられた突起部により、軸受メタルの内転を防ぐことができるとされている。
特開2002−39154号公報
しかしながら上記従来技術では、スラストメタルに設けられた突起部により周方向への回転を止めているために次のような問題がある。通常、軸受構造では2つの半円弧状の軸受メタル周端に設けられたクラッシュハイトと呼ばれる部分で互いに押圧することにより、軸受穴と軸受メタルとの真円度を一致させる構成をとる。しかしながら、上記従来技術では周方向が固定されているため当該クラッシュハイトの押圧による嵌合圧が軸受メタルに十分に作用しない。そのため、軸受メタルの真円度が低下し、軸受構造の機能の低下につながるおそれがあった。
そこで本発明では、軸受メタルのクラッシュハイトによる嵌合圧を阻害することなく、軸受穴での軸受メタルの内転を防ぐことができる内燃機関の軸受構造を提供することを目的とする。
半円弧状の軸受穴を有する2つの部材を合わせ面で接合した軸受ハウジングと、前記半円弧状の軸受穴にそれぞれ嵌合される2つの半円弧状軸受メタルからなる内燃機関の軸受構造において、軸受穴に嵌合される少なくとも1つの半円弧状軸受メタルであって、その幅方向の少なくとも一端部に、前記軸受穴の径方向外側に広げられたツバ部を形成した。そして該ツバ部の周方向の端部であって径方向外面に、前記半円弧状軸受メタルに設けられたクラッシュハイトに平行な平面を形成するとともに、前記軸受ハウジングには該平面と当接する平面を設けた。
本発明によれば、半円弧状軸受メタルと軸受ハウジングが平面によって当接するため、クラッシュハイトを利用した嵌合圧により軸受メタルの真円度を確保しつつ、軸受メタルが軸受穴で内転することを防ぐことができる。
本発明の第1の実施形態を図1ないし4に基づいて説明する。
図1に本発明における内燃機関の軸受構造の概略図を示す。
図1に示すように、軸受構造は合わせ面1において、上部の軸受ハウジング2と下部の軸受ハウジング3との2つの部材を接合することによって構成されている。ここで、2つの軸受ハウジング2、3は一対の締結ボルト22によって締結される。そして軸受ハウジング2、3はそれぞれ半円弧状の軸受穴2a、3aを有しており、半円弧状軸受メタル4、5がそれぞれ嵌合されている。
ここで上記半円弧状軸受メタル4、5は、その幅方向の両端部に軸受穴2a、3aの径方向外側へ広がるツバ部6を有している。該ツバ部6は、軸受穴2a、3aの軸方向の両端面に接触するように組みつけられている。半円弧状軸受メタル4、5に設けられた当該ツバ部6は半環状の形状をしており、そのツバ部6の周方向の端部であって径方向外面には、当接面9が形成されている。ここで図中の7はアッパーピン穴、8はコントロールピン穴であり、軸受構造への荷重等を伝える。なお本実施形態では上記軸受穴2a、3aの周方向の端部2aa、3aaの接線方向が合わせ面1に垂直であり、上記半円弧状軸受メタル4、5の周方向の端部4a、5aの接線方向も合わせ面1に垂直である。すなわち半円弧状軸受メタル4、5の周方向の端部4a、5aに設けられたクラッシュハイトも合わせ面1に垂直である。そこで、該当接面9は合わせ面1に垂直な平面に形成する。あわせて、軸受ハウジング2、3には当接面9に当接する係止面10を設ける。すなわち、係止面10も合わせ面1に垂直な平面である。平面9、10が当接することにより、半円弧状軸受メタル4、5には回転方向の自由度がなく内転は生じない。すなわち半円弧状軸受メタル4、5は、その回転方向の動きを強固に拘束される。そのため、半円弧状軸受メタル4、5が該軸受穴2a、3aの内周に沿って内転することを防ぐことができるようになっている。
次に本発明を適用した内燃機関を説明する。
当該内燃機関は複リンク機構を有する内燃機関である。図2において、シリンダボア25を往復運動するピストン17は、ピストンピン11を介してアッパーリンク13と回転可能に連結支持されている。さらにアッパーリンク13は、第1連結ピン(アッパーピン)20を介してロアリンク14と回転可能に連結されている。図3に示すように、連結部においてアッパーリンク13は、ロアリンク14を挟むように、その先端が13a及び13bの二つに分かれた形状をしている。またロアリンク14は、クランクピン12を介してクランク軸19に、さらに第2連結ピン(コントロールピン)21を介してコントロールリンク15に、それぞれ回転可能に連結されている。そしてコントロールリンク15は、もう一方の端を第3連結ピン(コントロールシャフト)16を介して、内燃機関本体18に遥動可能に支持されている。
本実施形態では、上記内燃機関のロアリンク14において、クランクピン12と摺動する軸受構造に本発明を適用する。
ここで上記複リンク機構は、偏心したコントロールシャフト16を回転させることによって、運転中に圧縮比を変えることができることを特徴としている。すなわち、コントロールシャフト16の偏心回転により、コントロールピン21がコントロールリンク15を介して移動することで、クランクピン12を中心としてロアリンク14に回転変位が与えられる。当該回転変位により、アッパーリンク13はアッパーピン20を介して移動し、その移動によりピストン17はピストンピン11を介して、その上下方向の位置を移動させる。その結果、ピストン17の行程が変化し、当該複リンク機構は圧縮比を変えることができるのである。
なお図3に示すように、上記ロアリンク14は合わせ面1に垂直で、かつ、軸受穴の軸中心線23を含む平面を基準仮想平面24とした際に、基準仮想平面24の左右で非対称な形状となる。それゆえ、ロアリンク14は基準仮想平面24の左右で剛性も非対称である。さらに、上記ロアリンク14にはアッパーリンク13とコントロールリンク15とから荷重が入力されるが、その際の入力荷重も基準仮想平面24左右のロアリンク14で非対称である。
以下に第1の実施形態による効果について説明する。
当接面9及び係止面10がクラッシュハイトに垂直であることの効果を、図4に示した半円弧状軸受メタル5により説明する。通常の軸受構造同様、本実施形態においても半円弧状軸受メタル5にクラッシュハイトCHを設け、当該クラッシュハイトCHによる嵌合圧Fを利用して半円弧状軸受メタル5を嵌合する、いわゆるクラッシュ効果を利用して半円弧状軸受メタル5と軸受ハウジング3を嵌合する。この際、本実施形態の構成によれば、嵌合圧Fの方向が当接面9及び係止面10と平行となる。そのため半円弧状軸受メタル5と軸受ハウジング3との間に作用する嵌合圧Fを受け、半円弧状軸受メタル5を軸受ハウジング3に設けられた軸受穴3aの内周面に沿って密着させ真円度を確保する際に、当接面9及び係止面10が当該クラッシュ効果を阻害することがない。その結果、半円弧状軸受メタル5の適切な真円度を確保しつつも、当該半円弧状軸受メタル5の内転を防止することができる。
加えてツバ部6を軸受穴2a、3aを軸方向23であって、軸受ハウジング2、3の両端面に接触する形状に形成したことで、ツバ部6はクランクシャフト19のスラスト受けとしても機能する。
さらに本実施形態では、上下の半円弧状軸受メタル4、5について、幅方向の両端にツバ部6を設けた。そのため、半円弧状軸受メタル4、5の内転をより強固に防止するだけでなく、スラスト受けとしての性能もより高く発揮できる。
また本実施形態においては、基準仮想平面24の左右で軸受ハウジング2、3の剛性が非対称であり、軸受ハウジング2、3の弾性変形量も基準仮想平面24の左右で非対称である。そして、軸受ハウジング2、3と半円弧状軸受メタル4、5は剛性が異なるため、軸受ハウジング2、3に非対称な変形が生じた際に、当該軸受ハウジング2、3の変形とは異なった変形を生じる。このことにより、本実施形態の軸受構造は、剛性が対称である軸受構造に比べて内転しやすい。しかし本発明を適用すれば、ツバ部6の当接面9が軸受ハウジング2、3の対応する係止面10と当接しているため、半円弧状軸受メタル4、5と軸受ハウジング2、3の相対的な移動を強固に拘束する。その結果、軸受穴2a、3aで半円弧状軸受メタル4、5が内転することを防ぐことができるのである。
本実施形態の内燃機関のロアリンク14には、ピストン17にかかる筒内圧力がピストンピン11、アッパーリンク13及びアッパーピン20を介して伝わり、大きな加重がかかる。さらに当該複リンク機構では、ロアリンク14はコントロールピン21、コントロールリンク15及びコントロールシャフト16を介して内燃機関に支持されており、アッパーピン20及びコントロールピン21の双方に支持されることになる。そのため半円弧状軸受メタル4、5には二方向からの加重の入力がなされ、基準仮想平面24の左右で非対称に変形を生じることとなり、通常の軸受構造に比して内転を起こしやすい。しかし本発明によれば、当接面9及び係止面10によって強固に拘束するため、半円弧状軸受メタル4、5の内転を防止することができる。
特に、運転中であって機関の圧縮比を変更している最中は、アッパーリンク13を介してアッパーピン20から、またコントロールリンク15を介してコントロールピン21から、それぞれ異なる荷重が入力されることになる。そのため、基準仮想平面24の左右で非対称な変形をより生じやすくなり、半円弧状メタル4、5の内転のおそれがあるが、この際にも半円弧状軸受メタル4、5は強固に拘束されているために内転を起こすことがない。
第2の実施形態について説明する。
図5に本実施形態における軸受構造の概略図を示す。
図5に示すように本実施形態では、上側の半円弧状軸受メタル4の幅方向の両端部にツバ部6を形成した。そして当接面9に接する係止面10も、ツバ部6が形成されている側の軸受ハウジングのみに設けた。すなわち図5においては、下側の軸受ハウジング3のみに係止面10を設けた。
他の構成は第1の実施形態と同様である。
第2の実施形態による効果について説明する。
半円弧状軸受メタル4、5のうち、いずれか一方の半円弧状軸受メタル、図5の場合は下側の半円弧状軸受メタル5の幅方向の両端部にツバ部6を設けたために、軸受構造の軽量化が図れる。そのため軸受構造へ入力する慣性力を低減する結果、軸受構造の耐久性を向上させることができる。
また、ツバ部6を設けない半円弧状軸受メタル、図5の場合は上側の半円弧状軸受メタル4は従来のものを使用できるので、製造コストを抑えることができる。
ここで、ツバ部6を設けた半円弧状軸受メタルが、図6に示すように上側の軸受ハウジング2に嵌合される場合、すなわち上側の半円弧状軸受メタル4にツバ部6を設けた場合においても同様の効果を奏する。しかしながら、軸受構造の慣性力はアッパーリンク13の挙動に、つまりはピストン17の挙動に影響を及ぼすことがあるため、アッパーリンク13との連結点であるアッパーピン20からより遠くに位置する下側の軸受ハウジング3に嵌合される半円弧状軸受メタル5にツバ部6を設けることが好ましい。
第3の実施形態について説明する。
図7に本実施形態における軸受構造の概略図を示す。
それぞれの半円弧状軸受メタル4、5には、幅方向の一方の端部のみにツバ部6a、6bを形成した。そして、軸受穴2a、3aの軸方向23に垂直方向で見て、ツバ部6a、6bが軸受ハウジング2、3の左右異なる面に配置されるように、2つの半円弧状軸受メタル4、5を軸受穴2a、3aに嵌合した。すなわち、ツバ部6a、6bが互い違いに配置されるように嵌合した。また、ツバ部6a、6bにそれぞれ当接面9a、9bを設け、軸受ハウジング2、3には該当接面9a、9bに接する係止面10a、10bを、それぞれのツバ部6a、6bに対応した箇所に形成した。
第3の実施形態による効果について説明する。
本実施形態によれば、第1及び第2の実施形態による効果に加えて、上下の半円弧状軸受メタル4、5とも、同一のものを用いれば足りるため、製造上有利である。またこの際、ツバ部6a、6bをそれぞれ互い違いに配置していることにより、軸受穴2a、3aの軸方向に垂直方向で見て、軸受構造の左右 で質量が対称となり、軸受構造の運動に悪影響を与えることもない。
本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、その技術的思想の範囲内でなし得る様々な変更、改良が含まれることは言うまでもない。
第1の実施形態における軸受構造の分解断面図である。 第1の実施形態の軸受構造を適用した複リンク機構を有する内燃機関の模式図である。 第1の実施形態においてロアリンクにかかる力の関係図である。 クラッシュハイトと当該クラッシュハイトによる嵌合圧の関係図である。 第2の実施形態において下側の半円弧状軸受メタルのみにツバ部を有する軸受構造の分解断面図である。 上側の半円弧状軸受メタルのみにツバ部を有する軸受構造の分解断面図である。 第3の実施形態における軸受構造の分解断面図である。
符号の説明
1 合わせ面
2 上側の軸受ハウジング
3 下側の軸受ハウジング
4 上側の半円弧状軸受メタル
5 下側の半円弧状軸受メタル
6 ツバ部
7 アッパーピン穴
8 コントロールピン穴
9 当接面
10 係止面
11 ピストンピン
12 クランクピン
13 アッパーリンク
14 ロアリンク
15 コントロールリンク
16 第3連結ピン(コントロールシャフト)
17 ピストン
18 内燃機関本体
19 クランクシャフト
20 第1連結ピン(アッパーピン)
21 第2連結ピン(コントロールピン)
22 締結ボルト
23 軸受穴の軸中心線
24 基準仮想平面
25 シリンダボア

Claims (8)

  1. 半円弧状の軸受穴を有する2つの部材を合わせ面で接合した軸受ハウジングと、前記半円弧状の軸受穴にそれぞれ嵌合される2つの半円弧状軸受メタルと、からなる内燃機関の軸受構造において、
    少なくとも1つの半円弧状軸受メタルのうち、その幅方向の端部のうち少なくとも一方に、前記軸受穴の径方向外側へ広がる半環状のツバ部を形成し、該ツバ部の周方向の端部であって径方向外面に、前記半円弧状軸受メタルに設けられたクラッシュハイト方向に平行な平面を形成するとともに、前記軸受ハウジングには該平面と当接する平面を設けたことを特徴とする内燃機関の軸受構造。
  2. 前記ツバ部を前記軸受穴の軸方向であって、前記軸受ハウジングの端面に接触するように形成し、前記軸受ハウジングにかかるスラスト方向の力を受けられるようにしたことを特徴とする請求項1に記載の内燃機関の軸受構造。
  3. 前記ツバ部を2つの前記半円弧状軸受メタルの幅方向の両端部に形成したことを特徴とする請求項1または2に記載の内燃機関の軸受構造。
  4. 前記ツバ部を2つの前記半円弧状軸受メタルのうち、いずれか1つの前記半円弧状軸受メタルの両端部に形成したことを特徴とする請求項1または2に記載の内燃機関の軸受構造。
  5. 前記ツバ部を2つの前記半円弧状軸受メタルのそれぞれの幅方向の片側端部のみに形成し、前記軸受穴の軸方向に垂直方向で見て、前記ツバ部が前記軸受ハウジングの左右異なる面に配置されるように、2つの前記半円弧状軸受メタルを前記軸受穴に嵌合したことを特徴とする請求項1または2に記載の内燃機関の軸受構造。
  6. 前記軸受ハウジングは、前記合わせ面に垂直で、かつ、前記軸受穴の軸中心線を含む平面を基準仮想平面としたとき、前記軸受穴の軸方向で見て、前記基準仮想平面の左右で剛性が非対称であることを特徴とする請求項1から5のいずれか一つに記載の内燃機関の軸受構造。
  7. ピストンにピストンピンを介して一端が連結されるアッパーリンクと、該アッパーリンクの他端で第1連結ピンを介して連結され、かつ、クランクシャフトのクランクピンに回転可能に取り付けられるロアリンクと、該ロアリンクに第2連結ピンを介して一端が連結されるとともに、その他端が第3連結ピンを介して内燃機関本体に対して遥動可能に支持されるコントロールリンクと、からなる複リンク機構を有する内燃機関において、
    前記ロアリンクの、前記クランクピンと摺動する軸受部に請求項1から6のいずれか一つに記載の軸受構造を備えたことを特徴とする内燃機関。
  8. 前記複リンク機構は、前記コントロールリンクと内燃機関本体とを連結するコントロールシャフトを回転させることによって運転中に圧縮比を変えることができることを特徴とする請求項7に記載の内燃機関。
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