JP2006183089A - 振動体の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 マグネシウム又はマグネシウム合金からなる振動体の製造方法において、熱処理後の成形性、特に冷間でのプレス成形性を向上するとともに振動特性の良好な振動体を提供する。
【解決手段】 マグネシウムまたはマグネシウム合金からなる板厚30μm〜150μmの範囲が適当である圧延薄板の成形前の平均結晶粒径が0.1μm〜80μmの範囲に規制されており、その圧延薄板を用いて振動体の形状に温間塑性加工し、それによって得られた塑性加工物を焼鈍処理して平均結晶粒径を100μm以上にしたことを特徴とする。
【選択図】 図1

Description

本発明は、マグネシウムまたはマグネシウム基合金(以下、これらを総称してマグネシウム材と略記する)からなる振動体の製造方法に関するものである。
マグネシウム材は実用的な金属の中で最も軽量であり、その薄肉品は比強度、電磁シールド性、熱放散性、振動減衰性などに優れており、しかもリサイクルのための再生産エネルギーが少なくて済むなどの利点を有している。そのため近年、通信機器、コンピュータ機器、光学機器、自動車部品、スポーツ用品など各種分野において多用化されている。
従来、展伸用マグネシウム薄板の製造方法として、特開2003−328065号公報(下記特許文献1)に記載された提案がある。
この発明は、アルミニウムを1〜9重量%、マンガンを0.1〜2重量%含有し、残部が実質的にマグネシウムからなる押し出しマグネシウム合金板を圧延し、圧延後の板厚が0.2〜2mmで、圧延方向に対して平行方向の降伏強度をY1、抗張力をT1、圧延方向に対して直角方向の降伏強度をY2、抗張力をT2としたとき、T1およびT2が200〜350MPaであり、(Y1/T1)値あるいは(Y2/T2)値の少なくとも1つの値が0.7以下であり、平均結晶粒径が3〜100μmであり、この薄板を圧延後に150〜400℃の温度範囲で熱処理することを特徴とするものである。
特開2003−328065号公報
ところでこの提案された展伸用マグネシウム薄板は前述の熱処理により必然的に結晶粒の成長が起こり、そのために平均結晶粒径が100μm近くまで大きくなったり、あるいは100μmを超える場合もある。
このように平均結晶粒径が大きくなると、その後の成形性、特に冷間でのプレス成形性が悪くなり、成形加工中に亀裂や欠けなどを生じ、生産歩留まりが低いという欠点を有している。特に圧延後の板厚が薄いものでは、前述のような問題が顕著である。
本発明の目的は、このような従来技術の欠点を解消し、加工性を向上するとともに振動特性の良好な振動体の製造方法を提供することにある。
前記目的を達成するため本発明は、平均結晶粒径が0.1μm〜80μmの範囲に規制されたマグネシウムまたはマグネシウム基合金からなる圧延薄板を用いて例えば音響スピーカなどの振動体の形状に温間塑性加工し、それによって得られた塑性加工物を焼鈍処理して平均結晶粒径を100μm以上にしたことを特徴とするものである。
本発明は前述のような構成になっており、マグネシウムまたはマグネシウム基合金からなる圧延薄板の成形前の平均結晶粒径を0.1μm〜80μmの範囲に規制することにより、温間塑性加工時のプレス、絞り、張り出しなどの加工性を良好にすることができる。また、塑性加工後に焼鈍処理して平均結晶粒径を100μm以上にすることにより、例えば音響特性などの振動体の特性を向上することができる。このように本発明では、加工性と振動特性の両方を確立することができる。
次の本発明の実施形態を図とともに説明する。図1は実施形態に係る温間塑性加工方法を説明するためのフローチャート、図2は実施形態に係る連続プレス方式の温間塑性加工装置の概略構成図である。
まず、図1を用いて本発明に係る温間塑性加工方法を説明する。同図に示すようにステップ(以下、Sと略記する)1で、マグネシウム材の圧延薄板からなる加工すべきワークを準備する。
マグネシウム合金としては、例えばMg−Al−Zn系合金、Mg−Zn−Zr系合金、Mg−Al系合金、Mg−希土類元素系合金などがある。
前記Mg−Al−Zn系合金としては、具体的にAZ31A、AZ31B、AZ31C、AZ61A、AZ80A、AZ91などがある。前記Mg−Zn−Zr系合金としては、具体的にZK51A、ZK61A、ZK60、M6、M5、M4などがある。前記Mg−Al系合金としては、具体的にAM100Aなどがある。前記Mg−希土類元素系合金としては具体的にEZ33A、ZE41A、QE22Aなどがあり、希土類元素(RE:ミッシュメタルあるいはジジムとして主にCeあるいは/ならびにNdを添加することにより、結晶粒界にMg12REがネットワーク状に晶出して、特に耐クリープ性が向上する。また、AgあるいはYの添加により、耐力が著しく向上する。
ワークとしては、それの平均結晶粒径が0.1μm〜80μmの範囲内、好ましくは0.5μm〜50μmの範囲内、さらに好ましくは1μm〜30μmの範囲内にコントロールされたものが使用される。平均結晶粒径が0.1μm未満のものは割れ易くなり、その点で加工性が低下し、一方、平均結晶粒径が80μmを超えると加工性(成形性)、特に伸度が下がり、そのために精密な加工(成形)ができない。従って良好な音響特性を維持し、かつ良好な加工性(成形性)をもたせためには平均結晶粒径を0.1μm〜80μmの範囲内にコントロールする必要がある。
なおマグネシウム材の平均結晶粒径は、例えば素材の圧延条件(圧延ロールの周速や加熱温度)、焼鈍条件(焼鈍温度、焼鈍時間ならびに焼鈍雰囲気)などを調整することにより、所望の値にコントロールできる。ワークの板厚は、30μm〜150μmの範囲が適当である。
このワークを成形加工する際のワークと金型との間の摩擦抵抗を下げるためにワークに潤滑剤が塗布されるが、その前にS2でワークの洗浄が行われる。ワーク表面には圧延工程などによって炭化物、油脂分、その他の汚れなどが付着しており、それらを除去するためにシンナーなどの有機溶剤を用いたり、界面活性剤を用いたりしてワークの洗浄が行われる。
次にS3で、ワークの全表面に水酸化マグネシウム層を形成する。この水酸化マグネシウム層の形成は、亜硝酸ナトリウム水溶液中に水酸化ナトリウムを適量添加して攪拌することにより、その処理溶液の温度を120℃〜140℃の範囲に維持する。前記亜硝酸ナトリウム水溶液の濃度は50g/L〜100g/L、水酸化ナトリウムの添加量は395g/L〜405g/Lの範囲が適当である。
この加熱された処理溶液中に、ワークを0.5分〜5分の間浸漬する。なお、ワークの汚れ度合いに応じて浸漬時間を決めるため、浸漬時間は前述のように幅を持たせてある。
浸漬後、ワークを処理溶液から取り出して水洗し、ワークの表面が乳白色になって、光沢が無くなるまで前述の前処理を行い、ワークの全表面に緻密な水酸化マグネシウム層を形成する。前述の亜硝酸ナトリウム水溶液への浸漬により、前記S2での有機溶剤では除去しきれなかった圧延時に炭化した潤滑剤などの付着物が確実に除去でき、ワークの表面が綺麗に洗浄され、その表面に水酸化マグネシウム層が形成される。
次にS4で、前記前処理が済んだワークを潤滑剤溶液中に所定時間浸漬して、表面にマグネシウム石けん層を形成する。この潤滑剤としては、例えば置換基を有していない叉は置換基を有している炭素数が6〜24の脂肪族カルボン酸塩、及び置換基を有していない叉は置換基を有している炭素数が7〜20の芳香族カルボン酸塩のグループから選択された少なくとも1種の有機化合物が使用される。
前記脂肪族カルボン酸塩において、脂肪族鎖は直鎖であっても分鎖であってもよい。また、飽和であっても不飽和であってもよい。分子中の炭素数は好ましくは10〜24であり、より好ましくは8〜22である。
脂肪族カルボン酸塩の脂肪族カルボン酸としては、例えばヘキサン酸、4−メチル吉草酸、2−エチル酪酸、2,2−ジメチル酪酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、ウンデカン酸、ラウリル酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ヘプタデカン酸、ステアリン酸、イコサン酸、ベヘニン酸、イソステアリン酸などがある。
また脂肪族カルボン酸塩の塩としては、例えばアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アミン塩、アンモニウム塩などがあり、特にアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩が好適である。
さらに脂肪族カルボン酸塩の置換基としては、例えば水酸基、カルボキシ基、アミノ基、アルコキシ基、アセチル基、ハロゲン原子などがある。置換度は5以下、好ましくは3以下、より好ましくは0または1である。
脂肪族カルボン酸塩の好ましい有機化合物としては、例えばオレイン酸ナトリウム、ラウリン酸ナトリウム、ミリスチン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、ベヘニン酸ナトリウム、1,2−ヒドロキシオクタデカン酸ナトリウム、イソステアリン酸ナトリウム、2−ドデカン酸ナトリウムなどがある。
前記芳香族カルボン酸塩中の炭素数は好ましくは7〜20であり、より好ましくは7〜14である。
芳香族カルボン酸塩の芳香族カルボン酸としては、例えば安息香酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ジフタル酸、ベンゼントリカルボン酸、ベンゼンテトラカルボン酸、ナフトエ酸などがある。
芳香族カルボン酸塩の塩としては、例えばアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アミン塩、アンモニウム塩などがあり、特にアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩が好適である。
芳香族カルボン酸塩の置換基としては、例えば水酸基、カルボキシ基、アミノ基、アルコキシ基、アセチル基、ハロゲン原子、炭素数が1〜6のアルキル基などがある。置換度は5以下、好ましくは3以下、より好ましくは0または1である。
芳香族カルボン酸塩の好ましい有機化合物としては、例えば安息香酸ナトリウム、安息香酸カリウム、イソフタル酸ナトリウム、テレフタル酸ナトリウム、ジフタル酸ナトリウムなどがある。
潤滑剤には必要に応じて、例えば防錆剤、粘度調節剤、酸化防止剤、消泡剤、pH調整剤などを添加することができる。
本実施形態では、水にステアリン酸ナトリウムと水酸化ナトリウムを添加して溶解し、この潤滑剤溶液が80℃〜100℃の温度範囲になるように加熱維持する。前記ステアリン酸ナトリウムの添加量は8g/L〜12g/Lである。
この潤滑剤溶液中に前述のワークを浸漬することにより、ワーク表面の水酸化マグネシウム層が化学反応を起し、カルボン酸マグネシウムからなるマグネシウム石けん層を形成する。ワークの浸漬時間は、1分〜5分が適当である。
このようにして表面にマグネシウム石けん層を形成したワークを後述の温間塑性加工装置にセットして所定の温間塑性加工を行い(S5)、この成形加工後に成形品の焼鈍処理を行う(S6)。焼鈍温度は150℃〜400℃の範囲、好ましくは200℃〜300℃の範囲で行われ、焼鈍時間は素材に応じて20分〜10時間の範囲から選ばれる場合が多いが、これら焼鈍条件はワークの条件(例えば材質、厚さ、広さ、形状など)あるいは(ならびに)求める特性などにより、適宜に最適化される。一般に塑性加工前の平均結晶粒径が比較的小さい場合は、焼鈍温度は高めで、焼鈍時間は長いめに設定され、塑性加工前の平均結晶粒径が比較的大きい場合は、焼鈍温度は低いめで、焼鈍時間は短めに設定される。
この焼鈍処理により結晶粒を成長させて、平均結晶粒径を100μm以上、好ましくは100μm〜200μmの範囲とする。平均結晶粒径を大きくして、結晶粒界を可及的に少なくすることにより、音の解像度、高音の音圧レベルなど音響特性(振動特性)を向上することができる。
焼鈍処理の後に、陽極酸化処理を行う(S7)。この陽極酸化処理は、前処理と酸化処理と後処理の3工程からなる。前処理は、成形加工品の表面に付着している潤滑剤などを除去する処理で、具体的にはアルカリ洗浄または酸洗浄である。マグネシウムは耐アルカリ性なので、アルカリ度の高い洗浄剤を使用して高温で効果的な洗浄が可能である。酸洗浄の場合は、加工品の素地を傷めないような酸度の低い洗浄剤を短時間使用するとよい。
前処理を行った加工品を、例えば水酸化ナトリウム、エチレングリコール、シュウ酸ナトリウムの混合水溶液からなり、75℃〜80℃に維持された電解浴に浸漬し、所定の通電を行う。次に酸化処理した後、加工品の水洗、湯洗、乾燥の後処理を行う。
この陽極酸化処理により、加工品の表面に緻密な酸化皮膜が形成される。この酸化皮膜は内部金属の防食皮膜として機能すると共に、塗装の下地膜にもなる。従ってこの陽極酸化処理後、S8の電着塗装仕上げを行うことができる。
図2は、実施形態に係る連続プレス方式の温間塑性加工装置の概略構成図である。この温間塑性加工装置は同図に示すように、間欠送り機構4と成形加工機構5と切断機構6とが加工工程の流れ方向Xに沿って設けられている。
間欠送り機構4には、ロール状に巻き取られた帯状のワーク2がセットされる。このワーク2の表面には、図1のS4でマグネシウム石けん層3が形成されている。帯状のワーク2は、間欠的に往復移動するチャッキング機構7a,7bによって挟まれた状態で成形加工機構5側に所定の送りピッチP1で間欠的に送り出される。
本実施形態の場合、成形加工機構5は第1成形部8a、第2成形部8b、第3成形部8c、第4成形部8dを有し、これら成形部8a〜8dは加工工程の流れ方向Xに沿って設けられている。
第1成形部8aは第1固定側プレス金型8a−1と第1可動側プレス金型8a−2とから構成され、第2成形部8bは第2固定側プレス金型8b−1と第2可動側プレス金型8b−2とから構成され、第3成形部8cは第3固定側プレス金型8c−1と第3可動側プレス金型8c−2とから構成され、第4成形部8dは第4固定側プレス金型8d−1と第4可動側プレス金型8d−2とから構成されている。
各固定側プレス金型8a−1〜8d−1は固定盤9に取り付けられ、各可動側プレス金型8a−2〜8d−2は可動盤10に取り付けられている。各固定側プレス金型8a−1〜8d−1と各可動側プレス金型8a−2〜8d−2には、電気ヒータ11と温度センサ(図示せず)が内蔵されており、例えば200℃〜250℃の範囲で個別に温度制御されている。
各固定側プレス金型8a−1〜8d−1の周囲には押え部材12がスライド可能に配置され、各押え部材12はスプリング13により常に上方向の各可動側プレス金型8a−2〜8d−2側に弾性付勢されている。
第1成形部8aと第2成形部8bとの間隔P2、第2成形部8bと第3成形部8cとの間隔P3、第3成形部8cと第4成形部8dとの間隔P4はともにワーク2の送りピッチP1と等しくなるように、各成形部8の位置決めがなされている。
各可動側プレス金型8a−2〜8d−2を取り付けた可動盤10は複数本のロッドによって上下動可能に支持され、複数本のロッドの頭部に取り付けられた天板に油圧シリンダが固定されている(いずれも図示せず)。
この油圧シリンダによって前記可動盤10が所定のストロークで上下動し、降下時に各可動側プレス金型8a−2〜8d−2がワーク2と接触または近接する加熱モード位置と、ワーク2を各固定側プレス金型8a−1〜8d−1側に押圧するプレス成形モード位置との2段階で位置決めされるようになっている。図2に示す可動盤10(可動側プレス金型8a−2〜8d−2)は、待機位置の状態を示している。
図3は、第1成形部8aでのワーク2の加熱状態を示す加熱モード位置での断面図である。第1固定側プレス金型8a−1の頭部にドーム状の突出部14aが設けられ、一方、第1可動側プレス金型8a−2の下面には前記突出部14aと対応するドーム状の凹部15aが形成されている。
図2に示すように可動盤10(可動側プレス金型8a−2)が待機位置にあるとき、ワーク2がチャッキング機構7a,7bで挟まれて、固定側プレス金型8a−1上に送られる。ワーク2を所定長さ送り出した後、チャッキング機構7a,7bは開いた状態で点線の位置から実線の待機位置まで後退する。
次に可動側プレス金型8a−2が加熱モード位置まで降下し、フラットなワーク2の下面は固定側プレス金型8a−1の頭部と押え部材12に接触して、ワーク2の上面は可動側プレス金型8a−2の下面と接触し、ワーク2の成形されようとしている部分の周囲は可動側プレス金型8a−2の下面と押え部材12によって弾性的に挟まれている。
前述のように固定側プレス金型8a−1と可動側プレス金型8a−2には電気ヒータ11が内蔵されて所定の温度に加熱されており、しかも押え部材12は固定側プレス金型8a−1と接触して熱伝導により高温状態になっているから、ワーク2は固定側プレス金型8a−1、可動側プレス金型8a−2、押え部材12の接触または近接によって、成形されようとしている部分ならびにその周辺が加熱される。
図3の加熱モードの状態を所定時間(例えば5秒〜10秒程度)維持することにより、薄板状のワーク2は温間塑性加工に適した温度、例えば固定側プレス金型8a−1ならびに可動側プレス金型8a−2とほぼ同温の200℃〜250℃程度に加熱される。加熱モードの時間は、ワーク2の板厚、材質、熱的特性、成形する形や寸法などによって適宜調整することができる。
なお、この加熱モードは前述のように短時間であり、しかも加熱温度も比較的低いから、結晶粒子の成長が起きて、そのために加工性が低下する心配はない。
しかる後、可動側プレス金型8a−2を固定側プレス金型8a−1側に押圧することにより、押え部材12がスプリング13の弾性に抗して下側に下がり、突出部14aと対凹部15aとによりワーク2の一部がそれらと同じ形状にプレス成形される。このプレス成形時、加工が施される部分の周辺が可動側プレス金型8a−2と押え部材12によって強固に挟圧されているから、周辺部分でのシワ発生が防止できる。
この第1段階の加工が終わると、油圧シリンダによって可動盤10が図2の位置まで持ち上げられ、第1成形部8aで成形されたワーク2の部分がチャッキング機構7a,7bの送り動作によって次の第2成形部8bに送られる。
第2成形部8b〜第4成形部8dにおいても間欠的に順送りすることにより、ワーク2の加熱と塑性加工が繰り返して行われ、最終的には図4に示すようにワーク2にドーム部16を連続的に多数個形成することができる。
再び図2に戻って、前述のようにして成形加工機構5を経由したワーク2は切断機構6に送られる。切断機構6は、固定盤9に取り付けられた受け部17と、可動盤10に取り付けられた刃部18と、制御部(図示せず)に接続されたカウンタ19とを備えている。
間欠送り機構4によるワーク2の送り回数あるいは成形加工機構5によるプレス回数を前記カウンタ19で計測することにより、ワーク2上の形成された成形部(本実施形態ではドーム部16)の個数を検出することができる。ワーク2上に成形部が所定数形成されて刃部18の下を通過すると、刃部18を出してワーク2を切断し、図5に示すような短冊状の成形シート20を得る。
この成形シート20は、次の焼鈍処理工程、陽極酸化処理工程ならびに電着塗装仕上げ工程に移され、最終工程で成形部(本実施形態ではドーム部16)がワーク2から切り離される。
図5に示すように成形シート20の成形部(本実施形態ではドーム部16)の周囲には貫通した複数の孔21が形成されている。焼鈍処理工程では、この孔21を利用して成形シート20を多数枚吊り下げて焼鈍処理を行うこともできる。また陽極酸化処理工程で一方の電極をこの孔21に挿入して電極とワーク2を多数箇所で接触することにより、全体的に均一な陽極酸化が行われる。この孔21は、例えば成形加工機構5の最終段階である第4成形部8dで形成することができる。
図6は、平均結晶粒径が40μmのAZ91からなるスピーカAと、平均結晶粒径が120μmのAZ91からなるスピーカBとの音響特性を比較して示す図である。この図から明らかなように、平均結晶粒径を120μmにしたスピーカBは、特に高音での音圧レベルが改善されている。
前記実施形態では音響スピーカの場合を説明したが、その他例えばマイクロホーンやインクジェットプリンターのヘッドにおける振動体にも適用可能である。
前記実施形態では成形すべき金属シートの表面に予めマグネシウム石けん層を形成したが、このマグネシウム石けん層の形成の代わりに、例えば油脂系潤滑剤やシリコーン系無機系潤滑剤などの通常の潤滑剤を塗布することもできる。
本発明の実施形態に係る温間塑性加工方法を説明するためのフローチャートである。 本発明の実施形態に係る温間塑性加工装置の概略構成図である。 その温間塑性加工装置の第1成形部でのワーク加熱モード位置での断面図である。 その温間塑性加工装置によって加工されたワークの断面図である。 その温間塑性加工装置によって得られた成形シートの斜視図である。 各スピーカにおける音響特性図である。
符号の説明
1:水酸化マグネシウム層、2:ワーク、3:マグネシウム石けん層、4:間欠送り機構、5:成形加工機構、6:切断機構、7a,7b:チャッキング機構、8a:第1成形部、8a−1:第1固定側プレス金型、8a−2:第1可動側プレス金型、8b:第2成形部、8b−1:第2固定側プレス金型、8b−2:第2可動側プレス金型、8c:第3成形部、8c−1:第3固定側プレス金型、8c−2:第3可動側プレス金型、8d:第4成形部、8d−1:第4固定側プレス金型、8d−2:第4可動側プレス金型、9:固定盤、10:可動盤、11:電気ヒータ、12:押え部材、13:スプリング、14a〜14d:突出部、15a〜15d:凹部、16:ドーム部、17:受け部、18:刃部、19:カウンタ、20:成形シート、21:孔。

Claims (1)

  1. 平均結晶粒径が0.1μm〜80μmの範囲に規制されたマグネシウムまたはマグネシウム基合金からなる圧延薄板を用いて振動体の形状に温間塑性加工し、それによって得られた塑性加工物を焼鈍処理して平均結晶粒径を100μm以上にしたことを特徴とする振動体の製造方法。
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