JP2006183086A - 金属粉末の成形方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 炭化反応による悪影響を最小限に抑えながら優れた成形性を実現する。
【解決手段】 金属粉末と有機溶媒に溶解した昇華性有機化合物とを常温で混合し、有機溶媒を蒸発させた後、成形に供する。昇華性有機化合物は、例えば樟脳である。有機溶媒としては、沸点が70℃以下の有機溶媒を用い、昇華性有機化合物を溶解し得る有機溶媒と、これを希釈する希釈用有機溶媒(例えばフッ素系溶媒)とを用いる。また、特性に影響を及ぼさない範囲で、ステアリン酸亜鉛等を成形助剤として併用してもよい。
【選択図】 図4

Description

本発明は、例えば粉末冶金法による超磁歪材料の作製等に適用される金属粉末の成形方法に関するものであり、特に、炭素の影響を抑えながら成形効率を改善するための成形技術に関する。
例えば、Tb−Dy−Fe系金属間化合物等からなる超磁歪材料は、従来のフェライト系磁歪材料等に比べて高い磁歪特性を有することから、近年、その需要は益々拡大する傾向にある。具体的な用途としては、リニアアクチュエータ、振動子、圧力トルクセンサ、振動センサ、ジャイロセンサ等である。リニアアクチュエータや振動子等に用いた場合、磁歪素子は、付与する磁界の変化に伴い寸法が変化し、駆動力を発生する。圧力トルクセンサ、振動センサ、ジャイロセンサ等に用いた場合、磁歪素子は、外部から加わる力の変化に伴い透磁率が変化し、これをセンシングすることで圧力、トルク、振動等が検出される。
このような超磁歪材料の製造法としては、単結晶育成法が有効であることが従来から知られているが、単結晶育成法は極めて生産性が低く、形状の自由度も大幅に制限されるという欠点がある。そこで、単結晶育成法の欠点を改善し、低コストな製造が可能なことから、現在では粉末冶金法が採用されている。粉末冶金法による焼結体は、基本的には、原料合金粉末を秤量及び混合し、所定の形状に加圧成形し、得られた成形体について焼結を行い、必要に応じて後加工処理を施すことにより製造される。
ところで、前述の超磁歪材料を粉末冶金法により作製する場合、成形時に用いられる潤滑剤等の成形助剤に留意する必要がある。通常、粉末冶金法においては、原料となる金属粉末の流動性を改善するために、ステアリン酸亜鉛等の脂肪酸金属塩やパラフィン等のワックスを潤滑剤として添加し、その流動性を向上させることが行われる。これにより成形性が大きく改善されるが、前記超磁歪材料の製造において、原料となる金属粉末に前記のような脂肪酸金属塩やワックス等を使用すると、焼結時の加熱下で炭化反応を起こし、磁歪特性の大幅な低下をもたらす。
このため、超磁歪材料では、炭素の含有量を抑える必要があり、例えば特許文献1においては、潤滑剤の添加量を減らすことで、炭素含有量を抑えることが試みられている。あるいは、金属粉末へ潤滑剤を添加せずに、フッ素系溶媒によって金属粉末に流動性を付与して成形を行う方法も知られている。
特開2003−239045号公報
しかしながら、特許文献1記載の発明のように、潤滑剤の使用量を減らすと、成形性が大きく低下するという問題がある。潤滑剤の使用量を減らした場合、十分な流動性が得られなくなり、金型付着に至る回数が大幅に短縮され、成形効率を著しく損なう結果となる。金属粉末が金型に付着すると、それ以降は成形ができなくなり、付着した金属粉末を取り除く必要がある。
一方、後者の方法(金属粉末へ潤滑剤を添加せずに、フッ素系溶媒によって金属粉末に流動性を付与して成形を行う方法)では、フッ素系溶媒は金属粉末の粒子間の分散には寄与するものの、金型との潤滑性は得られない。したがって、圧縮成形時に金型に金属粉末が付着してしまうので、いわゆる外潤滑により成形を行わざるを得ない。
外潤滑の場合、潤滑剤を内添する場合に比べて炭化反応による影響は抑えることができるが、ステアリン酸亜鉛等の潤滑剤を金型の臼、上下パンチ等に塗布する必要があり、潤滑剤を塗布する操作に時間を要し、やはり成形性を大きく損なうことになる。また、前記外潤滑においては、成形体の形状等により潤滑剤の塗布条件を変えなければならず、この点でも成形効率に問題があり、コスト削減に大きな支障がある。
本発明は、このような従来の実情に鑑みて提案されたものであり、炭化反応による悪影響を最小限に抑えながら優れた成形性を実現することができ、焼結後における特性低下の少ない成形体を効率的な成形することが可能な金属粉末の成形方法を提供することを目的とする。
上述の目的を達成するために、本発明の金属粉末の成形方法は、金属粉末と有機溶媒に溶解した昇華性有機化合物とを常温で混合し、前記有機溶媒を蒸発させた後、成形に供することを特徴とする。
本発明では、金属粉末の成形助剤として樟脳等の昇華性有機化合物を用いる。昇華性有機化合物は、昇華性を有するため、金属粉末の成形後、例えば真空下に晒すことで速やかに逃散し、成形体中にほとんど残存しない。したがって、焼結の際に炭化反応を起こすことがなく、例えば超磁歪材料の特性が低下することはない。
ただし、樟脳等の昇華性有機化合物は凝集し易く、これを単独で添加して分散するには厳しい条件で長時間の混練が必要になる。厳しい条件での長時間の混練操作は発熱を伴い、その結果、昇華性有機化合物が炭素源となって混練の段階で合金粉末が炭化反応を起こし、特性が低下するという問題がある。
そこで、本発明では、前記昇華性有機化合物を有機溶媒に溶解し、溶液状態で金属粉末と混合することとする。溶液状態とすれば、固定状態のものを分散する場合に比べて遙かに分散し易く、厳しい条件での長時間の混練は不要である。本発明では、金属粉末と有機溶媒に溶解した昇華性有機化合物とを常温で混合することで、温度上昇による炭化反応を抑制する。なお、前記において、常温で混合とは、積極的に加熱せず、また発熱しない程度の条件、時間での混合を言う。
前記のように昇華性有機化合物を有機溶媒に溶解した場合、有機溶媒も炭化反応の炭素源となり、これが成形後にも残存するとやはり炭化反応による特性低下の原因となる。これを避けるために、本発明では、前記混合の後、有機溶媒を蒸発させて除去する。
したがって、使用する有機溶媒は、金属粉末に対する反応性が小さく、また速やかに蒸発可能であることが必要である。これを規定したのが請求項2,3記載の発明である。すなわち、前記有機溶媒の沸点が70℃以下であることを特徴とする。また、前記有機溶媒は、昇華性有機化合物を溶解し得る有機溶媒と、これを希釈するフッ素系溶媒とからなることを特徴とする。
なお、成形性を考慮した場合、ステアリン酸亜鉛等の潤滑剤を併用すると、飛躍的に成形性が改善される。そこで、炭化反応による特性低下が問題とならないレベルの潤滑剤の併用が好ましい。これを規定したのが請求項5記載の発明であり、潤滑剤を併用することを特徴とする。
本発明の成形方法によれば、昇華性有機化合物により成形性を確保することができるので、効率的な成形が可能である。また、昇華性有機化合物は、焼結時にはほとんど成形体中に残存しておらず、加熱下での炭化反応が抑制され、特性の低下を抑えることが可能である。さらに、昇華性有機化合物を分散する際の混練条件を緩和することができ、分散の際の炭化反応も抑えることができ、前記炭化反応の抑制と併せて、得られる焼結体(例えば超磁歪材料等)の特性低下を最小限に抑えることが可能である。
以下、本発明を適用した成形方法の実施形態について説明する。なお、本実施形態においては、超磁歪材料の粉末冶金法による製造に適用した場合を例にして説明するが、本発明がこれに限定されるものではない。例えば、希土類焼結磁石の粉末冶金法による製造等において、希土類合金粉末の成形に適用することが可能である。
先ず、粉末冶金法により製造される超磁歪材料について説明する。粉末冶金法では、超磁歪材料は、例えば一般式RT(ここで、Rは1種類以上の希土類元素、Tは1種類以上の遷移金属であり、yは1<y<4である。)で示される組成の合金粉末を焼結することによって得られる。
前記一般式において、Rは、Yを含むランタノイド系列、アクチノイド系列の希土類元素から選択される1種以上を表している。これらの中で、Rとしては、特にNd、Pr、Sm、Tb、Dy、Ho等の希土類元素が好ましく、Tb、Dyがより一層好ましく、これらを混合して用いることができる。一方、Tは、1種以上の遷移金属を表している。これらの中で、Tとしては、特に、Fe、Co、Ni、Mn、Cr、Mo等の遷移金属が好ましく、これらを混合して用いることができる。
RTで表される合金のうち、y=2であるRTラーベス型金属間化合物は、キュリー温度が高く、磁歪値が大きいため、磁歪素子に適する。ここで、yが1以下では、焼結後の熱処理でRT相が析出して磁歪値が低下する。また、yが4以上では、RT相又はRT相が多くなり、磁歪値が低下する。このため、RTがリッチな相を多くするために、yは1<y<4の範囲が好ましい。
Rは、2種以上の希土類元素を混合してもよく、特に、TbとDyを混合して用いることが好ましい。具体的には、TbDy(1−a)で表される合金で、aは0.27<a≦0.50の範囲にあることが一層好ましい。これにより、(TbDy(1−a))Tなる合金で、飽和磁歪定数が大きく、大きな磁歪値が得られる。ここで、aが0.27以下では室温以下では十分な磁歪値を示さず、逆に0.50を越えると室温付近では十分な磁歪値を示さない。
Tは、特にFeが好ましく、FeはTb、Dyと(Tb、Dy)Fe金属間化合物を形成して、大きな磁歪値を有し磁歪特性の高い焼結体が得られる。このときに、Feの一部をCo、Niで置換してもよいが、Coは磁気異方性を大きくするものの、透磁率を低くし、また、Niはキュリー温度を下げ、結果として常温・高磁場での磁歪値を低下させる。したがって、Feは70質量%以上であることが好ましく、80質量%以上であることがより好ましい。
超磁歪材料の粉末冶金法による製造においては、例えば、3種類の原料A,B,Cをそれぞれ前処理した後、秤量、混合及び粉砕処理、成形、焼結等の工程を経て最終的な製品とされる。
ここで、原料の一部である原料Aは、所定組成で構成されたTb−Dy−Fe系合金を所定条件で熱処理(アニール)を行った後、粉砕処理をする。原料BとしてDyFeなる組成を有する合金を水素吸蔵処理後、粉砕処理をする。原料Cとして、Feを水素ガス雰囲気中で酸素を除去する還元処理を行う。
これら合金粉末の一部は、水素吸蔵処理されることが好ましい。合金粉末に水素を吸蔵させることにより、歪みが生じ、その内部応力によって割れが生ずる。このために、混合された合金粉末は、成形体を形成する時に圧力を受け、内部で粉砕されて細かくなり、焼結したときに緻密な高密度焼結体を得ることができる。さらに、Tb、Dy等の希土類元素は酸化されやすいために、わずかな酸素があっても表面に融点の高い酸化膜を形成して焼結の進行を抑制するが、水素を吸蔵することで、酸化され難くなるという利点もある。
次に、前述の原料A、原料B及び原料Cを所定量秤量して粉砕・混合処理し、これを磁場中で成形して成形体を作製する。このとき、昇華性有機化合物を成形助剤として用い、効率的な成形を可能とする。使用する昇華性有機化合物としては、原料である合金粉末に対する反応性が低く、成形性改善の効果が高く、成形後に速やかに昇華、逃散する化合物が好ましく、具体的には樟脳(カンファー)等を挙げることができる。樟脳には、天然品と合成品の2種類があるが、いずれも使用可能である。
前記樟脳等の昇華性有機化合物を合金粉末(原料A,B,C)に添加し、混練、分散する。このとき、昇華性有機化合物の添加量としては、合金粉末に対して0.1質量%〜1.0質量%とすることが好ましい。昇華性有機化合物の添加量が少なすぎると、成形性を十分に確保することが難しくなる。逆に、昇華性有機化合物の添加量が多すぎると、成形後にも残存し、炭化反応による特性劣化の原因となる可能性がある。
前記樟脳は、その粘着性を利用して焼結金属用バインダーとして用いられるものであるが、超磁歪材料の原料となる金属粉末(合金粉末)の成形に用いる場合には、混練条件に注意する必要がある。例えば、昇華性有機化合物である樟脳をそのまま合金粉末に添加して分散しようとすると、樟脳が凝集し易いために、均一に分散させるためには長時間の混練が必要である。このため、混練操作に伴う発熱により合金粉末が炭化反応を起こし、磁歪特性を低下する原因となる。
そこで、本発明においては、樟脳等の昇華性有機化合物を有機溶媒に溶解し、溶液の状態で合金粉末に加え、分散を容易なものとする。ここで、有機溶媒としては、先ず、前述の樟脳等の昇華性有機化合物を溶解し得る有機溶媒を用いる必要がある。かかる有機溶媒としては、アセトンやトルエン等の炭化水素系の有機溶媒を挙げることができる。ただし、これらアセトンやトルエン等の有機溶媒は、超磁歪材料の原料となる合金粉末に対する反応性を有するので、あまり多量に使用すると、分散時に炭化反応の原因となる可能性がある。
したがって、前記アセトンやトルエン等の有機溶媒の使用量は、昇華性有機化合物を溶解するに足る最小限の量とすることが好ましい。具体的には、樟脳等の昇華性有機化合物と有機溶媒の比率(昇華性有機化合物:有機溶媒)を、質量比で、1:1〜1:10とすることが好ましい。アセトン等の有機溶媒の使用量が前記範囲を下回ると、昇華性有機化合物を十分に溶解することができず、良好な分散状態とすることが難しくなるおそれがある。逆に、有機溶媒の使用量が、前記範囲を越えて多すぎると、分散時の炭化反応による特性低下が問題になるおそれがある。
前述のように、アセトン等の有機溶媒の使用量には制約があることから、流動性を高めるにも限度があり、十分な分散状態が得られない可能性がある。そこで、これを解消するために、別の有機溶媒(希釈用有機溶媒)により希釈することが好ましい。この場合、使用する希釈用有機溶媒としては、沸点が低いこと、合金粉末との反応性が低いことが要求される。使用する希釈用有機溶媒の沸点が高いと、成形前に蒸発させて除去することが難しい。常温での速やか蒸発を考えると、希釈用有機溶媒の沸点は、70℃以下であることが好ましい。なお、前記希釈溶媒は、必ずしもアセトン等の溶解用有機溶媒と相溶する必要はなく、希釈混合した時に縣濁状態となるものであってもよい。
このような要求を満たす有機溶媒としては、フッ素系有機溶媒等を挙げることができ、特に、完全フッ素系溶液と称されるガルデン(商品名)やフロリナート(商品名)等が好適である。前記完全フッ素系溶液は、アセトン等の溶解用有機溶媒と相溶せず、希釈により縣濁液となるが、粘性が低く、化学的に安定(不活性)で合金粉末、金属粉末とも反応せず、炭化反応による悪影響を抑えることができる。
前記希釈用有機溶媒は、流動性を増し合金粉末に対する分散性を良好なものとするために、ある程度の量を使用することが好ましい。例えば、アセトン等の溶解用有機溶媒と希釈用有機溶媒の比率(溶解用有機溶媒:希釈用有機溶媒)は、質量比で、1:10以上とすることが好ましい。希釈用有機溶媒を10倍量以上使用すれば、十分な流動性を得ることができ、分散性を格段に向上することができる。希釈用有機溶媒の使用量について、特に上限は規定されないが、溶解用有機溶媒の25倍量以下にするのが実用的である。これを越えて希釈用有機溶媒を多量に使用しても無駄になり、またスラリー状になって却って取り扱いが煩雑になる可能性もある。また、不活性ではあるが、あまり多量に使用すると、炭化反応の問題が生ずるおそれもある。
以上のように、樟脳等の昇華性有機化合物を溶解用有機溶媒に溶解し、さらに希釈用有機溶媒で希釈して合金粉末に加え、混練による分散を行う。この混練操作は、常温で行う必要がある。混練操作において熱が加わると、前記溶解用有機溶媒等が炭素源となって炭化反応が起こってしまう。なお、ここで言う常温とは、積極的に加熱せず、また発熱しない程度の条件、時間での混合を言う。
常温での混練、分散の後、溶解用有機溶媒及び希釈用有機溶媒を蒸発させ、合金粉末から除去する。各有機溶媒の蒸発による除去は、例えば不活性ガスを流すことにより促進することができる。この場合にも、流す不活性ガスは常温とする。
以上により、成形前の合金粉末(金属粉末)に対して昇華性有機化合物を均一に分散することができるが、成形性を考えた場合、潤滑剤を併用することも好ましい形態である。潤滑剤の併用によって、成形性(例えば合金粉末や金属粉末が金型に付着するまでの成形回数等)を大幅に向上することができる。
この場合、使用する潤滑剤としては、この種の成形に用いられるものがいずれも使用可能であり、例えばステアリン酸亜鉛等の脂肪酸金属塩やステアリン酸アミド等の脂肪酸アミド等が使用可能である。ただし、潤滑剤の使用量が多くなり過ぎると、成形後の焼結時等において炭化反応が問題になるため、磁歪特性が低下しない程度の微量に止めることが必要である。具体的には、樟脳等の昇華性有機化合物と潤滑剤の比率(昇華性有機化合物:潤滑剤)を、質量比で、10:0.1〜10:1とすることが好ましい。潤滑剤の量が前記範囲を越えて多すぎると、炭化反応による特性の低下が問題になるおそれがある。潤滑剤の量が前記範囲を下回ると、成形性向上の効果が十分に得られなくなるおそれがある。
合金粉末に対して前記方法で樟脳等の昇華性有機化合物を混練、分散した後、合金粉末を所定の形状に成形し、焼結を行う。ここで、合金粉末の成形は、フィーダーボックス等を用いて金型内に合金粉末を充填し、加圧することにより行うが、前記合金粉末の流動性が低いので、フィーダーボックスへの搬送や、金型内への充填が円滑に行われないことがある。
これを解消するためには、前記合金粉末に有機溶媒を供給し、その表面に有機溶媒の被膜を形成することが有効である。合金粉末間に有機溶媒が介在することで、流動性を大幅に改善することができる。
図1は、合金粉末に有機溶媒を供給し、搬送や金型への充填を円滑に行えるようにした成形装置の一例を示すものである。この成形装置1では、外部から搬入される合金粉末Mをホッパー部2に投入して貯蔵し、ホッパー部2から搬送経路である搬送パイプ3を通してフィーダカップ部6に搬送し、フィーダカップ部6に一時的に貯蔵した後、フィーダカップ部6から成形金型8に充填し、成形金型8内の合金粉末Mを成形部で成形する。
ホッパー部2においては、開口部から合金粉末Mが投入され、計量された合金粉末Mが、下部開口から搬送パイプ3に送り出される。搬送パイプ3は、合金粉末Mを自重により又は搬送用に空気、不活性ガスGを強制的に送風し、投下口7を介してフィーダカップ部6に搬送する。搬送経路は、ベルト式、コンベア式でもよいが、大気中に開放された方式よりは、空気との接触を少なくできるパイプ式を用いる方式が好ましい。本例においては、搬送パイプ3に振動機5を配置している。この振動機5で、搬送パイプ3に振動を加え、合金粉末Mの搬送を促進することができる。さらに、合金粉末Mが搬送パイプ3に付着したり、また、角部などのデッドスペースに滞留するのを防止することができる。
フィーダカップ部6は、一定量の合金粉末Mが供給された後に、成形金型8の配置された場所に移動し、下部に設けられた開口部から自然に落下させて成形金型8内に合金粉末Mを充填する。フィーダカップ部6には、センサーが配置されており、これによりフィーダカップ部6内の合金粉末Mの量を把握することができる。
成形部は、成形金型8の形状に合わせたパンチ9a、9bを有し、このパンチ9a、9bを昇降動させて、圧力を印加して成形する。成形金型8は、成形部に搬送され、所定の部位に置かれる。そこに、パンチ9a、9bで成形される。このときに、パンチ9a、9bは、一方だけで成形することができるが、成形金型8と合金粉末Mとの摩擦、合金粉末M同士の摩擦により内部まで均一に圧力を伝達させるために上下パンチ9a、9bで同時に圧力を印加することが好ましい。
前述の成形装置において、合金粉末Mの搬送、充填に際して、ガス供給装置4により不活性ガスGを、ホッパー部2、搬送パイプ3、フィーダカップ部6等のいずれかに供給する。不活性ガスGは、有機溶媒を含有させたAr、窒素等を用いる。ここで用いる有機溶媒は、常温で飽和蒸気圧が高く、かつ、揮発性が高く、さらに、合金粉末Mと炭化反応を起こすことがなく、合金粉末M表面に吸着して潤滑作用を発揮するものが好ましい。かかる有機溶媒としては、具体的には、先の希釈溶媒として用いたものを使用することができ、フッ素系有機溶媒、特に、完全フッ素系溶液と称されるガルデン(商品名)やフロリナート(商品名)等が好適である。
なお、ここで、前記有機溶媒を供給する代わりに、先に昇華性有機化合物の分散に用いた希釈用有機溶媒を残存させることも考えられるが、この場合には、溶解用有機溶媒も残存することになり、炭化反応による特性低下が懸念される。したがって、前記昇華性有機化合物の分散時に用いた希釈用有機溶媒は一度蒸発させて除去し、前記搬送あるいは充填の際に新たに流動性改善のための有機溶媒を供給することが好ましい。
金属を含めた物質の粉末は、磁気力、静電気力、物理的付着力(ヴァン・デル・ワールス力)のいずれかの力により凝集体を形成する。この他に、湿度の高い雰囲気中にある場合は水分が合金粉末Mの表面に吸着して、水分の表面張力による液架橋力によりさらに、強固な凝集体を形成する。前述の有機溶媒は、凝集体を形成している合金粉末Mの表面に吸着して、その間に浸透して凝集体をほぐし、合金粉末Mを分離する。また、この有機溶媒の被膜の分だけ、合金粉末M同士が距離をおくために合金粉末M間に働く磁気力等の力が小さくなり、凝集体を形成し難くなる。さらに、その表面に吸着して表面張力の小さい膜を形成して、合金粉末Mの流動性を向上させる。この膜の表面張力が小さいことから、液架橋力も小さく、水分が付着した場合に比較して、合金粉末Mの凝集体を形成し難くなる。
したがって、前記により搬送パイプ3に供給された有機溶媒は、ホッパー部2から搬送された合金粉末Mに吸着し、これにより流動性がよくなった合金粉末Mは、搬送パイプ3で滞留することなくスムーズに搬送され、フィーダカップ部6に到達する。さらに、ホッパー部2からフィーダカップ部6までは、合金粉末Mはお互いに衝突しながら、あるいは搬送パイプ3に摺擦されながら搬送される。この衝突又は摺擦により熱を発生し、通常は表面に酸化物を形成する。しかしながら、有機溶媒が供給されたことにより、合金粉末Mの表面に液質膜が形成されて、表面張力が低くなることで摩擦係数が小さくなり、発生する熱が少なく形成する酸化物の量が少なくなる。また、表面の液質膜により空気に直接触れることが少なくなるために酸化物を形成しにくくなる。このため、希土類金属を含む磁歪材料等の磁性材料では、製品となる磁性材料中の酸化物による異相の形成が少なくなる。したがって、有機溶媒を含有する不活性ガスGを合金粉末Mに供給して搬送することで、搬送パイプ3に滞留することのない合金粉末Mの搬送方法が得られる。同様に、有機化合物を含有する不活性ガスGを合金粉末Mに供給して流動性を良くすることで、合金粉末M同士の相互作用を少なくして成形金型8に密度が高く充填できる合金粉末Mの充填方法が得られる。
前記により成形された成形体を焼結炉内に入れ、所定の条件で熱処理し、焼結を行うことにより、焼結体を作製する。焼結は、成形体を焼結炉に入れた後に所定温度まで昇温する昇温過程、所定の温度(安定温度)をほぼ一定に保持する過程、及び降温過程を経ることにより行われる。
次に、本発明の具体的な実施例について、実験結果を基に説明する。
<磁歪材料の成形及び焼結>
本実施例では、Tb−Dy−Fe系原料合金粉末を成形し、所定の温度プロファイルで焼結して、磁歪材料を作製した。磁歪材料の材料組成は、Tb0.34Dy0.66Fe1.875である。また、酸素含有量は2500ppmである。図2に、焼結の際の温度プロファイル及び雰囲気を示す。
<樟脳の添加及びステアリン酸亜鉛の添加による効果の確認>
成形に際して、樟脳の添加の有無、及びステアリン酸亜鉛の添加の有無による成形性の相違を調べた。成形性は、合金粉末が金型に付着する金型付着に至るまでの成形回数により評価した。結果を表1に示す。
Figure 2006183086
この表1から明らかなように、樟脳の合金粉末への添加により、金型付着に至るまでの成形回数が7回から35回に改善され、成形性が大幅に改善されたことがわかる。また、この成形性の改善は、ステアリン酸亜鉛を併用添加した場合に飛躍的に向上しており、この場合には、金型付着に至るまでの成形回数で、一桁から二桁の改善が見られた。
次に、樟脳の添加、及びステアリン酸亜鉛の添加による磁歪材料の磁気特性への影響を調べた。測定したのは、焼結密度(g/ml)、0.4kOeでの磁歪量λ0.4(ppm)、1.0kOeでの磁歪量λ1.0(ppm)である。結果を表2に示す。
Figure 2006183086
表2から明らかなように、樟脳(カンファー)の添加の有無による特性の変化はほとんど見られず、樟脳を添加しても磁歪材料の特性が低下することがないことが確認された。一方、ステアリン酸亜鉛の添加においては、その添加量の増加に伴って磁歪特性の低下が見られ、併用に際してはその添加量を制限する必要があることがわかった。
<アセトンの残存による影響>
次に、溶解用有機溶媒であるアセトンの残存による影響を調べた。すなわち、溶解用有機溶媒としてアセトンを用い、樟脳の分散の後に溶媒の蒸発除去条件を変えて、アセトンの残存量を変化させた。そして、アセトンの残存量と得られる磁歪材料の特性(ここでは焼結密度と1.0kOeでの磁歪量λ1.0(ppm)の関係を調べた。結果を図3及び図4に示す。
これら図面を見ると、アセトンが残存しても磁歪材料の焼結密度はほとんど変わらないが、磁歪特性はアセトンの残存量の増加とともに低下している。したがって、溶解用有機溶媒であるアセトンは、焼結前に除去する必要があることがわかる。
成形装置の一例を示す模式図である。 実施例において磁歪材料を焼結する際の温度プロファイルを示す図である。 アセトンの残存量と得られる磁歪材料の焼結密度の関係を示す特性図である。 アセトンの残存量と得られる磁歪材料の磁歪量λ1.0の関係を示す特性図である。
符号の説明
1 成形装置、2 ホッパー部、3 搬送パイプ、4 ガス供給装置、5 振動機、6 フィーダカップ部、7 投下口、8 成形金型、9a,9b パンチ

Claims (10)

  1. 金属粉末と有機溶媒に溶解した昇華性有機化合物とを常温で混合し、前記有機溶媒を蒸発させた後、成形に供することを特徴とする金属粉末の成形方法。
  2. 前記有機溶媒は、昇華性有機化合物を溶解し得る溶解用有機溶媒と、これを希釈する希釈用有機溶媒とからなることを特徴とする請求項1記載の金属粉末の成形方法。
  3. 前記希釈用有機溶媒の沸点が70℃以下であることを特徴とする請求項2記載の金属粉末の成形方法。
  4. 前記希釈用有機溶媒が、フッ素系有機溶媒であることを特徴とする請求項2または3記載の金属粉末の成形方法。
  5. 前記昇華性有機化合物は、樟脳であることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項記載の金属粉末の成形方法。
  6. 潤滑剤を併用することを特徴とする請求項1から5のいずれか1項記載の金属粉末の成形方法。
  7. 前記昇華性有機化合物と前記潤滑剤の比率(昇華性化合物:潤滑剤)が、質量比率で10:0.1〜10:1であることを特徴とする請求項6記載の金属粉末の成形方法。
  8. 前記潤滑剤が、ステアリン酸亜鉛であることを特徴とする請求項6または7記載の金属粉末の成形方法。
  9. 前記金属粉末が希土類元素を含む合金の粉末であることを特徴とする請求項1から8のいずれか1項記載の金属粉末の成形方法。
  10. 前記希土類元素を含む合金粉末が、超磁歪材料用の合金粉末であることを特徴とする請求項9記載の金属粉末の成形方法。
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JP2010192172A (ja) * 2009-02-16 2010-09-02 Noritake Co Ltd 燃料電池用合金触媒電極の製造方法

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