JP2006182899A - 低線膨張率のポリカーボネート組成物 - Google Patents

低線膨張率のポリカーボネート組成物 Download PDF

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Abstract

【課題】ポリカーボネートの透明性を確保しながら、十分に低い線膨張率を有するとともに高い耐衝撃性を有し、工業的に有利な、力学特性、耐熱性、成形性を持つポリカーボネート組成物を提供する。
【解決手段】ポリカーボネート系樹脂と、シリコーンと、無機化合物とを含み、前記シリコーンは前記ポリカーボネート系樹脂中で3次元ネットワークを構成する。
【選択図】なし

Description

本発明は、一般的なポリカーボネートに比較して線膨張率が低く寸法安定性に優れ、特に約−20℃以下の温度でも高い衝撃強さを発揮するとともに、透明性、難燃性、力学特性、耐熱性、成形性などの物性に優れ、工業的に有利なポリカーボネート組成物及びその製造方法に関する。
ポリカーボネート(PC)樹脂は、透明性、力学特性、耐熱性、成形性などに優れたエンジニアリングプラスチックとして知られており、自動車、機械、電気、電子、光記録媒体、建材、雑貨など多くの分野において幅広く用いられている。
一方で、ポリカーボネート系樹脂は、そのままの状態で用いる場合、他のプラスチックと同様に比較的高い線膨張率を有している。例えば、三菱化学製「ノバレックス7020AD2」の場合、30℃〜60℃における線膨張係数(CLTE)は7.0×10−5/Kとなっており、建材や自動車部品として金属材料との複合化を想定した場合、ポリカーボネート系樹脂は金属材料に対してCLTEが2倍以上もの大きさを有するため、接合部に大きなひずみを生じ、部品の信頼性を大きく損なう原因となる。
このような観点から、上述したポリカーボネート系樹脂の寸法安定性を向上させる手法として、無機化合物の配合により低線膨張率を得る手法が考えられている。既に他のポリマーに関しては、無機化合物の配合手法として、従来のガラス繊維やタルクなどによる強化だけでなく、ナノオーダーレベルの無機微粒子を用いた複合材料、いわゆるポリマーナノコンポジットが開発されてきており、こういった複合材料の例として、「複合材料及びその製造方法(特許第2519045号/豊田中研)」や「ポリアミド複合材料及びその製造方法(特公平7−47644/宇部興産他)」、「ポリオレフイン系複合材料およびその製造方法(特開平10−30039/昭和電工)」などが挙げられる。
しかしながらポリカーボネートに関しては、ポリマーの性質上、アクリル樹脂やポリアミド、ナイロンに比べて無機微粒子の均一分散は難しく、従ってポリカーボネートの特徴の一つである透明性を維持することが困難である。
実際、ポリカーボネート−フルオロマイカ系ナノコンポジットの検討「Intercalated polycarbonate/Clay Nanocomposites:Nanostructure Control and Foam Processing」(Macromol.Mater.Eng.2003,288,No.7,P.543−548/帝人化成)では、透明性が十分なレベルに至っていない。また「樹脂ウィンドウおよびその製法(特開平11−343349)」においても、無機微粒子の一部が凝集することを避けられず、高い透明性を得るには至っていない。
分散性に優れたポリカーボネート−シリカ系の組成物を合成する方法として、ポリマー末端へのアルコキシシリル基の導入技術「有機無機ハイブリッド高分子材料及びその製造方法(特開平11−209596,特開平11−255883/オリエント化学工業)」がある。この技術はテトラアルコキシシランの導入量を調節することでシリカをポリカーボネート中にナノオーダーで分散できる点で画期的であるが、原料の合成が高コストである上、出来上がった材料は熱硬化性組成物であり、自由な成形が行えないという点で用途が著しく限定される。
更にポリカーボネート組成物に関する他の分散方法の例として、米国Akron大学のHuangらによる研究がある(“Synthesis of Polycarbonate-Layered Silicate Nanocomposites via Cyclic Oligomers”,Huang,X.;Lewis,S.;Brittain,WJ.;Vaia,R.A.Macromolecules2000,33,p.2000-2004)。この技術はポリカーボネートと層状化合物のコンポジットを得る際の分散性の不足を、ポリカーボネートの環状オリゴマーを用いることによって克服したもので、ポリカーボネート環状オリゴマーを層状酸化物と混練後にオリゴマーを開環重合させて高い分散性と物性を実現可能とした。しかしながら、主要原料となるポリカーボネートの環状オリゴマーを安価に製造できないことから、工業的には著しく不利である。
また、ポリカーボネート・ナノコンポジットの最近の技術としては、界面活性剤存在下でゾルゲル法を行うことにより得た微小シリカを表面処理してポリカーボネート中に配合した「ポリカーボネート樹脂組成物、それからなる成形体およびその製造方法(特開2004−107470/帝人)」があるが、10ミクロン程度の薄膜でのみ透明性を維持しており、1mm以上の厚みにおいては透明性が満足なレベルに達していない。
一方、ポリカーボネートに対してシリコーンを共重合させてハイブリッド複合材料とする手法が数多く報告されている。これらはその開発目的によって様々な特性を得ており、例えば「ポリカーボネート共重合体及びその製造方法(特開平6−336521/出光興産)」や「低減された曇り価をもつシリコーンーポリカーボネートブロック共重合体及びポリカーボネート配合物及びそれらの製造方法(特開平8−169947/ゼネラル・エレクトリック・カンパニー)」ではシリコーンPCのブロックコポリマーにより低弾性率を得るかあるいは透明性を確保しているが、線膨張に関しては特に優位性がない。
「ヒドロキシフェニル基含有シクロシロキサンおよびシリコーン変性有機樹脂(特開平11−29639/東レ・ダウコーニング)」ではフェノール性水酸基含有環状シリコーンとPCモノマーのコポリマー化により共重合体を得ているが、環状シロキサンの合成が煩雑であり、線膨張に関しては同じく優位性がない。その他のシリコーンとPCコポリマー合成例(USP3419634,USP4920183)、3次元コポリマーの例「エポキシ末端分岐状シリコーン及びそれらの共重合体(持開平6−299079/ゼネラル・エレクトリック・カンパニー)」でも同様で、線膨張率は特に改善されない。
ポリカーボネートとシリコーンを組合せ、さらにシリカを添加した例としては、「難燃性で耐衝撃性のシリコーンーポリカーボネート共重合体ブレンド(特開平5-214234/ゼネラル・エレクトリック・カンパニー)」が挙げられる。このブレンドは、PCに前述したようなシリコーンPCコポリマー、ヒュームドシリカ、ポリテトラフルオロエチレンを配合したものであるが、難燃性と耐衝撃性を追求した結果、ポリカーボネートの透明性を犠牲にしている。
他の例としては、「熱可塑性樹脂組成物(特開2001−329155/鐘淵化学工業)」が挙げられる。この組成物は、PCに無機化合物、熱可塑性シリコーンレジンを配合して加熱時の劣化を抑制したものであるが、無機化合物を特別な処理なしにシリコーンレジン中に添加して偏在させることを特徴としており、偏在した無機粒子部分が可視光波長よりも大幅に大きくなる為に透明性を失うことになる。
以上のように、低線膨張率のポリカーボネート系ナノコンボジットの製造方法については多くの検討が成されているが、未だ決定的な方法は確立されておらず、特にポリカーボネート樹脂における透明性、力学特性、耐熱性、成形性などの本来的な優れた特徴を失うことなしに、低線膨張率を実現する為に更なる検討が必要であった。
特許第2519045号公報 特公平7−47644号公報 特開平10−30039号公報 特開平11−343349号公報 特開平11−209596号公報 特開平11−255883号公報 特開2004−107470号公報 特開平6−336521号公報 特開平8−169947号公報 特開平11−29639号公報 USP3419634号公報 USP4920183号公報 特開平6−299079号公報 特開平5−214234号公報 特開2001−329155号公報 Intercalated polycarbonate/Clay Nanocomposites:Nanostructure Control and Foam Processing(Macromol.Mater.Eng.2003,288,No.7,P.543−548) Synthesis of Polycarbonate-Layered Silicate Nanocomposites via Cyclic Oligomers (Huang,X.;Lewis,S.;Brittain,WJ.;Vaia,R.A.Macromolecules2000,33,p.2000-2004)
本発明は、ポリカーボネートの透明性を確保しながら、十分に低い線膨張率を有するとともに高い耐衝撃性を有し、工業的に有利な、力学特性、耐熱性、成形性を持つポリカーボネート組成物を提供することを目的としている。
上記目的を達成すべく、本発明は、
ポリカーボネート系樹脂と、シリコーンと、無機化合物とを含み、前記シリコーンは前記ポリカーボネート系樹脂中で3次元ネットワークを構成することを特徴とする、ポリカーボネート組成物に関する。
本発明は、ポリカーボネート系樹脂中に、シリコーンによる3次元ネットワークが存在し、このシリコーンの3次元ネットネットワークを介して無機化合物が均一に分散してなる。一方、ポリカーボネート系樹脂は組成物のマトリクスとして存在している。シリコーンの3次元ネットワークは、ポリカーボネート系樹脂のポリマー鎖を拘束し、曲げ強度及び耐衝撃性を与えている。また、無機化合物は、それ自体で組成物の線膨張率を下げる働きを奏するが、前記3次元ネットワークのシリコーンと表面相互作用を引き起こし、これによって線膨張率をさらに下げることができるようになる。
さらに、前記無機化合物は組成物中に均一に分散しているため、前記組成物の透明性を損なうことがなく、ポリカーボネート系樹脂の特性とも相伴って十分高い成形性及び耐熱性を実現することができる。
なお、前記シリコーンは分岐シロキサン構造を呈することができる。これによって、前記ポリカーボネート系樹脂中において、上述した3次元ネットワークを簡易に実現することができる。
前記分岐シロキサン構造は、所定の原材料を用い、加水分解重縮合型の架橋反応を経て簡易に得ることができる。また、加水分解重縮合型の架橋反応を経て形成された分岐シロキサン構造のシリコーンは、ポリカーボネート系樹脂と極めて均一に配合しやすくなり、より均一な組成の、目的とするポリカーボネート組成物を得ることができるようになる。
なお、本発明のポリカーボネート系組成物において、前記シリコーンはその少なくとも一部が前記ポリカーボネート系樹脂と化学結合していないことが好ましい。前記シリコーンが前記ポリカーボネート系樹脂と化学結合していると、従来技術で述べたように、線膨張率を十分に低減できない場合がある。
以上説明したように、本発明によれば、ポリカーボネートの透明性を確保しながら、十分に低い線膨張率を有するとともに高い耐衝撃性を有し、工業的に有利な、力学特性、耐熱性、成形性を持つポリカーボネート組成物を提供することができる。
また、母材としてのポリカーボネート樹脂、シリコーン、無機化合物ナノフィラーとも市販のものから選択可能であり、煩雑なステップを必要とせず簡便に低線膨張率で耐衝撃性に優れた透明なナノコンポジットが合成できるため、工業的に非常に有利なナノコンポジット合成法を提供することができる。
以下、本発明のその他の特徴及び利点、並びに目的とするポリカーボネート組成物の製造方法について、発明を実施するための最良の形態に基づいて説明する。
(ポリカーボネート系樹脂)
本発明のポリカーボネート組成物において、ポリカーボネート系樹脂はその母材を構成する。前記ポリカーボネート系樹脂は公知の方法によって製造することができる。代表的には、二価フェノール系化合物などの芳香族ジオール、例えば2,2−ビス(4−ヒドロキシフエニル)プロパン(以下、「ビスフェノールA」という)とホスゲンとを反応させる界面重合法(ホスゲン法)、および前記ビスフェノールAなどの芳香族ジオールとジフェニルカーボネートなどの炭酸ジエステル化合物とを反応させる溶融重合法(エステル交換法)がある。
前記二価フェノール系化合物は、各種ビスフェノール類、例えば2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、ビス(4−ヒドロキシフエニル)ジフエニルメタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−フェニル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ-3−t−ブチルフェニル)プロパンなどから任意に選ばれるが、組成物の物性、入手の容易さから、特にビスフエノールA即ち2,2−ビス(4−ヒドロキシフエニル)プロパンであることが望ましい。
また、二価フェノール類以外に、ヒドロキノン、レゾルシノール、メチルヒドロキノンなどのジヒドロキシベンゼン類、1,5−ジヒドロキシナフタレン;2,6−ジヒドロキシナフタレンなどのジヒドロキシナフタレン類などが挙げられる。これらの二価フェノール等は、それぞれ単独で用いてもよく、二種以上を組合わせて用いてもよい。
また、炭酸ジエステル化合物としては、ジフェニルカーボネートなどのジアリールカーボネートや、ジメチルカーボネート,ジエチルカーボネートなどのジアルキルカーボネートが挙げられる。
また、前記ポリカーボネート系樹脂は、その末端がフェノールであっても十分な耐衝撃性を呈するが、好ましくは前記末端をフェノールよりも嵩高い末端封鎖基で封鎖する。これによって、前記ポリカーボネート系樹脂、従って目的とするポリカーボネート組成物の低温衝撃性を向上させることができる。なお、ここでいう「嵩高い」とは、(長鎖脂肪族基や分岐アルキル基)であることを意味する。
前記末端封鎖基としては、p-tブチルフェノール、p-t-オクチルフフェノール、イソノニルフェノール、イソオクチルフェノール、m-またはp-クミルフェノール、p-クレゾール、クロマンのようなクロマニル化合物などを例示することができる。
また、前記ポリカーボネート系樹脂は、上述したホスゲン法又はエステル交換法によって作製したポリカーボネート樹脂から単独で構成することもできるが、ポリカーボネートと、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、デカンジカルボン酸などの直鎖状脂肪族二価カルボン酸を共重合モノマーとする重合体との共重合体から構成することもできる。
前記ポリカーボネート系樹脂の粘度平均分子量は、好ましくは10000〜60000であり、さらに好ましくは15000〜45000である。粘度平均分子量が10000未満では得られる樹脂組成物の強度や耐熱性などが不充分である場合が多い。粘度平均分子量が60000を越えると、成形加工性が不充分となる場合がある。
このようなポリカーボネート系樹脂は、単独で、あるいは、2種以上を組み合わせて使用される。2種以上組み合わせて使用する場合には、その組み合わせは限定されない。例えば、モノマー単位が異なるもの、共重合モル比が異なるもの、および/または、分子量が異なるものが任意に組み合わせられる。
(シリコーン)
本発明のポリカーボネート組成物において、シリコーンは母材であるポリカーボネート系樹脂中に3次元ネットワークを構成して存在する。前記シリコーンは分岐シロキサン構造を呈することができる。これによって、前記ポリカーボネート系樹脂中において、上述した3次元ネットワークを簡易に実現することができる。
前記分岐シロキサン構造は、所定の架橋反応を通じて形成することができる。例えば、アルコキシシリル基間の加水分解重縮合、SiH基とビニル基やアリル基とのヒドロシリル化、ビニル基で促進される過酸化物加硫、アクリル基と光開始剤による光化学反応などの各種反応形態があるが、シリコーンのポリカーボネート系樹脂との配合のしやすさ、架橋の進めやすさの観点から、加水分解重縮合型の架橋反応によって、前記分岐シロキサン構造を形成することが好ましい。
また、前記シリコーンはその少なくとも一部が前記ポリカーボネート系樹脂と化学結合していないことが好ましい。前記シリコーンの総てが前記ポリカーボネート系樹脂と化学結合していると、従来技術で述べたように、線膨張率を十分に低減できない場合がある。
しかしながら、シリコーンのSi原子に直接結合した水酸基はポリカーボネートの封鎖されていない末端と水素結合又は化学結合することが発明者らの分析で解明されている。具体的には、フェノール性水酸基とシラノール基との水素結合、一方にSiが結合したカーボネート結合の存在により、ポリカーボネートの一部とシリコーンの一部とが強固な結合を形成することが、IR分析、GC−MS分析などから判明している。従って、本発明のポリカーボネート組成物には、一種のポリカーボネートシリコーン共重合体を一部に形成している場合も含まれる。
前記シリコーンは、一般に下記(1)式で表されるT単位及び/又は下記(2)式で表されるQ単位を有することが好ましい。
RSi03/2 (1)
Si04/2 (2)
(式中、RはR’Oで表される加水分解可能なアルコキシ基、炭素数1〜10の一価の脂肪族・芳香族非反応性炭化水素基、あるいはエポキシ基、水酸基、ビニル基、アクリル基、メタクリル基、アミノ基、メルカプト基、ウレイド基、イソシアネート基から選ばれる反応性基で変性した炭素数1〜16の変性アルキル基を表す。Rが複数含まれる場合はそれぞれ同一でも異なっていても良い。R’は炭素数が1〜10の一価の非反応性炭化水素基から任意に選ばれる。)
前記シリコーンが、上述したようなT単位及びQ単位の少なくとも一方の構造単位を有することにより、ポリカーボネート系樹脂のポリマー鎖の拘束度合いが増大し、無機化合物との表面相互作用の度合いが増大するので、曲げ強度及び耐衝撃性、並びに線膨張率をさらに下げることができるようになる。
なお、前記シリコーンが(1)式及び(2)式で表される少なくとも一方の構造単位を有することにより、分岐シロキサン構造、すなわち3次元ネットワークがポリカーボネート系樹脂中に必然的に形成される場合が多くなる。また、前記シリコーンのSi原子に直接結合したアルコキシ基及び水酸基が加水分解重縮合反応することにより架橋反応が促進される。したがって、前記シリコーンが上述した構造単位を有することにより、ポリカーボネート系樹脂中に、前記シリコーンの高次な3次元ネットワーク構造が構築される。
前記シリコーンは、(1)式及び(2)式の少なくとも一方で表される構造単位を40モル%以上含むことが好ましく、さらには50モル%以上含むことが好ましい。この場合、目的とするポリカーボネート組成物の成形加工性、機械特性及び難燃性などの諸特性をバランスさせることができる。
なお、上述したポリカーボネート樹脂のポリマー鎖の拘束度合いの増大などの作用効果をさらに増大させるためには、(1)式におけるR’がメチル基及びエチル基の少なくとも一方であることが好ましい。
また、(1)式及び(2)式で表すことのできるT単位及びQ単位に代えて、分子量調節、特性など必要に応じてD単位(RSiO2/2)又はM単位(RSiO1/2)を用いることもできる。
さらに、前記シリコーンは、1分子中のSi原子数が数個から10個程度、すなわち10個以下であることが好ましい。これによって、上述したポリカーボネート樹脂のポリマー鎖の拘束度合いの増大などの作用効果をより助長させることができる。
一般にシリコーンは、アルキル基、芳香族基など炭化水素系の有機基を有しているが、本発明においては、経済的な面からシリコーンの全有機基のうち80モル%以上がフエニル基及び/又はメチル基であることが望ましい。
さらに、本発明で用いる前記シリコーンは、熱安定性、物性バランス(成形加工性・機械特性、難燃性など)の点から、Si原子に直接結合したアルコキシ基及び水酸基の合計が全有機基に対してモル比で3/20以下の割合であることが好ましく、1/10以下であることが更に好ましい。
分岐シロキサン構造を有するシリコーン、すなわちポリカーボネート系樹脂中で3次元ネットワークを構成するようなシリコーンは、公知の種々の方法によって製造すればよく、各種オルガノアルコキシシラン、各種オルガノクロロシランの加水分解重縮合により得られる。
例えば、メチルトリアルコキシシラン、ジメチルジアルコキシシラン、トリメチルアルコキシシラン、フェニルトリアルコキシシラン、ジフェニルジアルコキシシラン、トリフエニルアルコキシシラン、メチルフェニルジアルコキシシラン、ジメチルフェニルアルコキシシラン、メチルジフェニルアルコキシシラン、テトラアルコキシシランなどのアルコキシシラン、又は下記(3)式で表される各種官能基置換アルコキシシランの加水分解に続く脱水縮合反応によって製造することができる。
aRbSi(−OR’)4−n (3)
(式中、Rはエポキシ基、水酸基、ビニル基、アクリル基、メタクリル基、アミノ基、メルカプト基、ウレイド基、イソシアネート基から選ばれる反応性基で変性した炭素数1〜16の変性アルキル基を示し、Rが複数あるときは同一でも異なっていても良く、Rは炭素数が1〜10の一価の炭化水素基を表し、Rが複数あるときは同一でも異なっていても良い。R’は炭素数が1〜10の一価の非反応性炭化水素基から任意に選ばれるが、反応性の観点から、望ましくはメチル基、エチル基である。式中、nは1、2、3の整数を、aは1、2、3の整数を、bは0、1、2の整数を示し、且つn=a+bである。)
また、前記各種アルコキシシランとメチルトリクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、トリメチルクロロシラン、フェニルトリクロロシラン、ジフェニルジクロロシラン、トリフェニルクロロシラン、メチルフェニルジクロロシラン、ジメチルフエニルクロロシラン、メチルジフェニルクロロシラン、テトラクロロシランなどのクロロシランとを併用しての加水分解に続く脱水縮合反応によって製造することもできる。
本発明においては、上述したシリコーンの1種あるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。2種以上組み合わせて使用する場合には、組み合わせは限定されない。例えば、本発明の目的を阻害しない限り、重合成分やモル比が異なるもの一分子量の異なるものが、任意に組み合わせられる。
また、前記シリコーンの性状は、本発明の目的を阻害しない限り特に制限はなく、例えばオイル状、ガム状、ワニス状、粉体状、ペレット状等の任意のものが利用可能である。
本発明においては、前記シリコーンは、本発明のポリカーボネート組成物の母材であるポリカーボネート系樹脂の100重量部に対して、0.1−20重量部、さらには1−10重量部の割合で含有されていることが好ましい。シリコーンの含有量が0.1重量部未満であると、目的とするポリカーボネート組成物の耐衝撃性がやや低下する傾向がある。一方、前記シリコーンの含有量が20重量部を超えると、成形外観、成形加工性が低下する傾向が出てくる。
(無機化合物)
本発明のポリカーボネート組成物は、上述したシリコーンに加えて無機化合物を含む。無機化合物はそれ自体で前記組成物の線膨張率を低減させる作用があるとともに、前記シリコーンとの表面相互作用を経て、線膨張率の低減により貢献するようになる。
前記無機化合物はナノフィラーであることが好ましく、具体的には、前記無機化合物ナノフィラーの大きさは、物性の向上代、分散のし易さ、入手の容易さ、コスト面などから、その粒径が5−200nmであることが望ましい。前記無機化合物ナノフィラーの粒径を可視光波長下限である380nmより充分小さくすることで、前記無機化合物ナノフィラーによる可視光の散乱はほとんどなくなり、透明性を犠牲にすることなく優れた物性を有する樹脂組成物を得ることができる。
一方、前記無機化合物ナノフィラーの粒径が5nmよりも小さくなると、母材であるポリカーボネート系樹脂中に均一に分散させることが困難になり、またコストも高くなる。なお、前記無機化合物ナノフィラーの上限は、より好ましくは100nmである。
また、ここでいう「粒径」とは、無機微粒子の形状が略球状ならその直径、直方体や板状なら最も短い一辺を意味する。
さらに、前記無機化合物ナノフィラーは、天然物であっても合成されたものであっても良いが、天然物の場合、組成物の物性を低下させるアルカリ成分、不純物を含むことがあるので、望ましくは合成無機化合物である。
前記無機化合物ナノフィラーを合成する場合の製法は特に限定されず、気相法、ゾルゲル法、コロイド沈殿法、溶融金属噴霧酸化法などの、いずれの方法で得られたものでも構わない。
具体的に、前記無機化合物ナノフィラーは、シリカ、アルミナ、水酸化アルミニウム、炭酸カルシウム、チタニア、酸化鉄、酸化セリウム、酸化亜鉛、カーボンなどから選ばれるナノ粒子である。本発明においては、いずれを用いてもよいが、入手のし易さ、コスト、透明性の発揮し易さなどを考慮すると、シリカ、アルミナが好ましい。
前記無機化合物ナノフィラーは、粉体状、またはゾル状のものから選ばれるが、市販のゾルタイプのものが取り扱い上望ましく、なかでもポリカーボネート系樹脂との相溶性を考慮すると、有機溶媒に分散してあるオルガノゾルが望ましい。オルガノゾルを作製するための有機溶媒としては、エタノール、イソプロピルアルコール、エチレングリコール、テトラヒドロフラン、メチルエチルケトン、N,N-ジメチルホルムアミド、N-メチルピロリドンなどが好ましい。
また、前記無機化合物ナノフィラーの形状は特に限定されず、略球状だけでなく、直方体や板状、繊維のような直線形状、枝分かれした分岐形状などのナノフィラーも用いることができる。
また、前記無機化合物ナノフィラーはその表面に疎水基による処理を施してあっても良い。疎水化処理を施し、表面に疎水基を導入すれば、ポリカーボネート系樹脂との相溶性が増大する。前記疎水基としては、アルキル基、アリール基を例示することができる。これらは前記無機化合物ナノフィラーの表面において、単独で存在していても良いし、複数以上が組み合わされて存在してもよい。
前記無機化合物ナノフィラーの表面に上述した疎水基を形成するためには、所定の表面処理剤を用いて表面処理を行う。前記表面処理剤としては、例えば多くの無機化合物ナノフィラー表面に存在する水酸基との反応性に優れる、クロロ基、メトキシ基及びエトキシ基、シラザン結合の少なくとも一つを有する有機ケイ素化合物を用いることができる。
これらの表面処理剤としては、アルキルトリクロロシラン、アルキルトリアルコキシシラン、アルキルジアルコキシクロロシラン、ジアルキルアルコキシクロロシラン、トリアルキルクロロシラン、トリアルキルアルコキシシラン、アリールトリクロロシラン、アリールトリアルコキシシラン、ジアリールジクロロシラン、ジアリールジアルコキシシラン、トリアリールクロロシラン、トリアリールアルコキシシラン、ヘキサアルキルジシラザンなどを例示することができる。このなかで、入手のしやすさと反応性から、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシランージメチルジメトキシシラン、メチルフェニルジメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ヘキサメチルジシラザンが望ましい。
前記無機化合物ナノフィラーは、本発明のポリカーボネート組成物の母材であるポリカーボネート系樹脂の100重量部に対して、0.5−50重量部、さらには3−30重量部の割合で含有されていることが好ましい。前記無機化合物ナノフィラーの含有量が0.5重量部未満であると、得られたポリカーボネート組成物の線膨張率が満足なレベルまで低下しない場合がある。また、前記無機化合物ナノフィラーの含有量が50重量部を超えると、成形品の耐衝撃性、表面性が低下する傾向が強まり、溶融混練時の樹脂との混練が困難となる恐れがある。
この他、任意成分として、コンボジットの使用にあたっての熱安定性を向上させるため、イルガノックス1010、1076(チバガイギー社製)等のヒンダードフェノール類、スミライザーGS、GM(住友化学社製)に代表される部分アクリル化多価フェノール類、イルガフオス168(チバガイギー社製)等のホスファイト類に代表される燐化合物などの熱安定剤を適量加えてもよい。また、必要に応じて長鎖脂肪族アルコール、長鎖脂肪族エステル等の離型乱その他滑剤、可塑剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤等の添加剤を添加することができる。
(線膨張係数)
本発明で言うところの“低線膨張率”とは、具体的には30℃から60℃における線膨張係数の平均値が6.5×10-5/K以下であることを示している。6.5×10-5/Kを超えるものは、通常のポリカーボネート単独の線膨張係数に対する優位性がなくなる。より好ましくは6.5×10-5/K以下、更に好ましくは5.5×10-5/K以下である。本発明のポリカーボネート系組成物は、このような低線膨張率を簡易に実現することができる。
線膨張率を低下させるメカニズムは詳細には解明されていないが、無機化合物ナノフィラーの添加による低下に加えて、シリコーンと無機化合物ナノフィラー表面との相互作用、シリコーンの3次元構造によるポリカーボネート系樹脂ポリマー鎖の熱運動の拘束が加わって、相乗効果をもたらして発揮されるものと考えられる。ポリカーボネート系樹脂に対するシリコーンと無機化合物ナノフィラーの添加量が多くなるほど線膨張係数は低くなる。
(ポリカーボネート組成物の製造方法)
本発明のポリカーボネート組成物は、溶媒分散法により製造することができる(第1の製造方法)。この場合、最初に、前記ポリカーボネート系樹脂、前記シリコーン及び前記無機化合物を所定の有機溶媒中に混合分散させ、有機溶媒溶液を作製する。前記有機溶媒としては、ポリカーボネートを溶解できる溶楳が望ましく、テトラヒドロフラン、クロロホルム、メチレンクロライド、1,4-ジオキサン、1,1,1-トリクロロエタンなどが挙げられるが、溶解性からメチレンクロライドが望ましい。
また、無機化合物ナノフィラーはオルガノゾルの状態で添加することが多いが、このオルガノゾルの溶楳は上記の分散溶媒と異なっていて構わない。
さらに、上記有機溶媒溶液中には、前記シリコーンの加水分解縮合反応を促進し、分岐シロキサン構造を簡易に形成するための各種触媒を添加することができる。このような触媒としては、スズ、亜鉛、鉄などの脂肪酸塩やアルミニウム、チタンなどのキレート化合物、四級アンモニウム塩、あるいはアミノシラン類を例示することができる。
次に、前記有機溶媒溶液を必要に応じて攪拌混合した後、あるいは攪拌混合しながら所定温度にまで加熱して溶媒を除去し、目的とするポリカーボネート組成物を得る。加熱温度は40℃以上が好ましく、さらには60℃以上が好ましい。これによって、前記シリコーンの加水分解重縮合型の架橋反応が促進され、前記組成物中に、分岐シロキサン構造、すなわち3次元ネットワークのシリコーンを簡易に形成できるようになる。
なお、前記無機化合物ナノフィラーに対して表面疎水基を形成する場合は、前記有機溶媒溶液を作製する以前に、前記無機化合物ナノフィラーに対して上述した表面処理剤を用いて表面処理を行う。
また、本発明のポリカーボネート組成物は、溶液重合法(エステル交換法)によって製造することもできる(第2の製造方法)。この場合、最初に、ポリカーボネート系樹脂のモノマーである芳香族ジオール及び炭酸ジエステル化合物、並びに前記シリコーン及び前記無機化合物を混合して反応溶液を作製する。次いで、前記反応溶液を減圧下攪拌しつつ、例えば室温から徐々に300℃まで加熱し、前記両モノマーをエステル交換法にて重合しつつ、生成するアリールアルコールを除去することでポリカーボネートの溶融重合を行い、目的とするポリカーボネート組成物を得る。
この場合においても、上記反応溶液中に、前記シリコーンの加水分解縮合反応を促進し、分岐シロキサン構造を簡易に形成するための、上述した各種触媒を添加することができる。また、前記無機化合物ナノフィラーに対して表面疎水基を形成する場合は、前記反応溶液を作製する以前に、前記無機化合物ナノフィラーに対して上述した表面処理剤を用いて表面処理を行う。
(成形体及び部品)
本発明のポリカーボネート組成物は樹脂単体並みの熱時成形性を維持しており、その成形に際しては、目的とする成形品の大きさ、曲面性などの形状などに応じて、溶融押出成形、射出成形及びブロー成形などの公知の成形方法を用いることにより、前記成形品を高精度に形成することが可能である。
本発明で得られた樹脂組成物は、熱膨張率が低く、透明性や衝撃強度を犠牲にすることなく剛性の向上を実現し、また高温時にソリなどを抑制し得るという特性を兼ね備えているため、これらの機能が要求される部材に好適であり、例えば、自動車内装材として計器盤の透明カバーなどに、自動車外装材では窓ガラス(ウィンドウ)やヘッドランプ、サンルーフ及びコンビネーションランプカバー類などに、更には家電や住宅に用いられる透明部材・備品・家具にも適した材料と言える。
以下に実施例を挙げるが、本発明はこれに制限されるものではない。なお、使用するシリコーンは、ポリカーボネート組成物製造時に合成しても構わないが、以下の実施例では便宜的に市販の製品を配合した。また、各実施例及び各比較例で得た試験片の特性評価は、以下に示す特性及び評価法に従って得た。
(評価特性及び評価方法)
線膨張係数:熱機械測定装置〈セイコー電子工業(株)製TMA120C〉を用い、30℃〜
60℃の温度範囲で計測した。
耐衝撃性:ASTM D256に従い、1/8インチのノッチ付アイゾット試験片を作
製し、23℃で衝撃試験を実施した。
透明性:ヘイズメーター<村上色彩研究所製HM−65>を用い、ASTM D−1003
(Haze and Luminous Transmittance of Transparent Plastics)に従って曇価
(Haze)を測定した。なお、測定面積は約6mmφとし、測定厚さは約2
mmとした。光源には50WのA光ハロゲンランプを用いた。
難燃性:UL−94(試験片:1/16インチ)による評価を実施し、難燃性の高い順
にV−0〜V−2で評価した。
実施例1(溶媒分散法).
三菱エンジニアリングプラスチック(株)ポリカーボネート「ノバレックス7030A」(粘度平均分子量30000)100gをメチレンクロライド400g中に溶解した後、信越化学工業(株)「X-40-9805」(メチルフェニル系固体シリコーンレジン)3g、日産化学工業(株)製シリカ「IPA-ST」(イソプロピルアルコール分散シリカゾル、粒径15nm、固形分30%)33g、アルミニウムアセチルアセトネート錯体0.01gを加え、攪拌翼とスリーワンモーター(HEIDON社製BL300R)とにより攪拌しながら室温で1時間混合した。その後、得られた有機溶媒溶液を45℃に加熱しながら減圧ラインにて徐々に減圧度を上げながらメチレンクロライドを留去し、更に80℃に加熱しながらイソプロパノールを留去し、最終的に100℃で10mTorr以下の減圧下10時間乾燥することによりポリカーボネート組成物を得た。
この組成物を射出成形して試験片としたものは、線膨張係数(CLTE)の平均値が5.4×10−5/Kであった。また、無色でほぼ透明の外観を有し、A光の曇価(Haze値)は4%であった。さらに、難燃性はV−0を有し、衝撃強度は105J/mであった。結果を表1に示す。
実施例2.
実施例1のシリコーンレジン「X−40−9805」の代わりに、信越化学工業(株)製「X-40−9244」(メチルフェニル系液状シリコーンオリゴマー)5gを加えたほかは、実施例1と同様の操作を行ってポリカーボネート組成物を得、特性評価に供した。各特性値を表1に示す。
実施例3.
実施例1の日産化学工業(株)製シリカゾル「IPA-ST」の代わりに同「MEK-ST」(メチルエチルケトン分散シリカゾル、トリメチルシリル基にて数area%表面処理品、粒径15nm、固形分30%)を33gを用いたほかは、実施例1と同様の操作を行ってポリカーボネート組成物を得、特性評価に供した。各特性値を表1に示す。
実施例4.
実施例1の「IPA-ST」の代わりにシーアイ化成(株)製「ナノテックアルミナ・アルコール分散品」(粒径31nm、固形分15%)を20g用いたほかは、実施例1と同様の操作を行ってポリカーボネート組成物を得、特性評価に供した。各特性値を表1に示す。
実施例5.
実施例1の「IPA-ST」の代わりに扶桑化学工業(株)製高純度シリカ「PL-2L-IPA」(粒径20nm、固形分20%)を50g用いたほかは、実施例1と同様の操作を行ってポリカーボネート組成物を得、特性評価に供した。各特性値を表1に示す。
実施例6(溶融重合法).
ビスフェノールA(関東化学製)を50.4g(221mmol)、ジフェニルカーボネート(関東化学製)を49.6g(232mmol)、信越化学工業(株)製「X-40-9244」(メチルフエニル系液状シリコーンオリゴマー)を5g、扶桑化学工業(株)製高純度シリカ「PL-2L-IPA」(粒径20nm、固形分20%)を50g秤量し、窒素ガス雰囲気下、攪拌翼とスリーワンモーター(HEIDON社製BL300R)とにより攪拌しながら150℃まで加熱し、シリカゾルの溶媒であるIPAの殆どを流出させた。両モノマー成分の溶融を確認した後230℃に昇温し、この温度で30分かけて内圧30kPaまで減圧し、230℃、30kPaで1時間攪拌を続けた。次いで、30分かけて250℃、3kPaまで昇温・減圧し、この温度と減圧度とで30分間攪拌した。更に280℃、10Paまで昇温・減圧し、この温度と減圧度で30分間攪拌した後、窒素ガスにより常圧に戻し、放冷した。
この組成物を射出成形して試験片としたものは、線膨張係数(CLTE)の平均値が4.9×10−5/Kであった。また、無色でほぼ透明の外観を有し、A光の曇価(Haze値)は5%であった。さらに、難燃性はV−0を有し、衝撃強度は137J/mであった。結果を表2に示す。
実施例7.
実施例6のシリコーンオリゴマー「X−40−9244」の代わりに信越化学工業(株)製「X−40−9805」(メチルフェニル系固体シリコーンレジン)を3g加えたほかは、実施例6と同様の操作を行ってポリカーボネート組成物を得、特性評価に供した。各特性値を表2に示す。
実施例8.
実施例6のシリカゾル「PL−2L-IPA」の代わりに、フロンティアカーボン(株)製ナノカーボン「ナノムブラック」2gを用いたはかは、実施例6と同様の操作を行ってポリカーボネート組成物を得、特性評価に供した。各特性値を表1に示す。
実施例9.
実施例6のシリコーンオリゴマー「X−40−9244」の添加量を10gに増やし、実施例6と同様の操作を行ってポリカーボネート組成物を得、特性評価に供した。各特性値を表2に示す。
実施例10.
実施例6のシリカゾル「PL-2L-IPA」の添加量を150gに増やし、実施例6と同様の操作を行ってポリカーボネート組成物を得、特性評価に供した。各特性値を表2に示す。
比較例1(溶液混合).
実施例1においてシリコーンとアルミニウムキレート触媒を添加せずに、ポリカーボネートとシリカをメチレンクロライドに溶解・分散し、攪拌・溶媒除去操作を行ってポリカーボネート組成物を得た。実施例1と同様にして試験片を作製し、各特性評価に供したところ、前記組成物はアイゾット耐衝撃性に劣る割れやすい組成物であり、難燃性も劣っていることが判明した。結果を表3に示す。
比較例2.
実施例1において、シリカゾルを添加せずポリカーボネートとシリコーンとメチレンクロライドに溶解・分散し、攪拌・溶媒除去操作を行ってポリカーボネート組成物を得た。
得られた組成物は、市販ポリカーボネートと同等の線膨張係数しか有していなかった。結果を表3に示す。
比較例3.
実施例1で、シリコーンオリゴマー「X-40-9805」を用いずに、信越化学工業(株)製「KF−50」(メチルフェニル型直鎖シリコーンオイル)3gを添加し、攪拌・溶媒除去操作を行ってポリカーボネート組成物を得た。得られた組成物は、アイゾット耐衝撃性に劣り割れやすい組成物であった。結果を表3に示す。
比較例4(エステル交換・溶融重合).
実施例6において、シリコーンオリゴマー「X−40−9244」を添加せずに、エステル交換・溶融重合の操作を行ってポリカーボネート組成物を得た。実施例1と同様にして試験片を作製し、各特性評価に供したところ、前記組成物はアイゾット耐衝撃性に劣る割れやすい組成物であり、難燃性も劣っていることが判明した。結果を表3に示す。
比較例5.
実施例6のシリカゾル「PL−2L−IPA」の代わりに、(株)龍森製の石英粉「クリスタライトVXS2」(平均粒径5μm)を10g用い、エステル交換・溶融重合の操作を行ってポカーボネート組成物を得た。実施例1と同様にして試験片を作製し、各特性評価に供したところ、前記組成物はアイゾット耐衝撃性に劣る割れやすい組成物であり、不透明な白色組成物であった。
比較例6.
実施例6において、シリコーンオリゴマー「X-40-9244」を用いずに、信越化学工業(株)「X-22-163F」(両末端エポキシ官能型直鎖シリコーンオイル、分子量12000)5gを添加し、エステル交換・溶融重合の操作を行ってポリカーボネート組成物を得た。実施例1と同様にして試験片を作製し、各特性評価に供したところ、前記組成物はアイゾット耐衝撃性に劣る割れやすい組成物であり、難燃性もやや劣っていることが判明した。結果を表3に示す。
表1〜3から明らかなように、実施例1〜10に示す本発明のポリカーボネート組成物は、いずれも低い線膨張係数(CLTE)を有し、純ポリカーボネート並みの耐衝撃性と曇価、優れた難燃性を示すことが分かる。
以上、具体例を挙げながら本発明を詳細に説明してきたが、本発明は上記内容に限定されるものではなく、本発明の範疇を逸脱しない限りにおいてあらゆる変形や変更が可能である。

Claims (23)

  1. ポリカーボネート系樹脂と、シリコーンと、無機化合物とを含み、前記シリコーンは前記ポリカーボネート系樹脂中で3次元ネットワークを構成することを特徴とする、ポリカーボネート組成物。
  2. 前記シリコーンは分岐シロキサン構造を呈し、前記3次元ネットワークを構成することを特徴とする、請求項1に記載のポリカーボネート組成物。
  3. 前記分岐シロキサン構造は、加水分解重縮合型の架橋反応を経て形成されることを特徴とする、請求項2に記載のポリカーボネート組成物。
  4. 前記シリコーンの少なくとも一部は、前記ポリカーボネート系樹脂と化学結合することなく存在することを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一に記載のポリカーボネート組成物。
  5. 前記シリコーンは、
    RSiO3/2 (1)
    又は
    SiO4/2 (2)
    (式中、RはR’Oで表される加水分解可能なアルコキシ基、炭素数1〜10の一価の脂肪族・芳香族非反応性炭化水素基、あるいはエポキシ基、水酸基、ビニル基、アクリル基、メタクリル基、アミノ基、メルカプト基、ウレイド基、イソシアネート基から選ばれる反応性基で変性した炭素数1〜16の変性アルキル基を表す。Rが複数含まれる場合はそれぞれ同一でも異なっていても良い。R’は炭素数が1〜10の一価の非反応性炭化水素基から任意に選ばれる。)
    なる一般式で表される構造単位を有することを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一に記載のポリカーボネート組成物。
  6. 前記シリコーンは、前記(1)式及び前記(2)式の少なくとも一方で表される構造単位を40モル%以上含むことを特徴とする、請求項5に記載のポリカーボネート組成物。
  7. 前記R’で表される非反応性炭化水素基は、メチル基及びエチル基の少なくとも一方であることを特徴とする、請求項5又は6に記載のポリカーボネート組成物。
  8. 前記シリコーンは、1分子中のSi原子数が10個以下であることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか一に記載のポリカーボネート組成物。
  9. 前記シリコーンは、フェニル基及びメチル基をそれらの合計量が前記シリコーンの全有機基に対して80モル%以上となるような割合で有することを特徴とする、請求項1〜8のいずれか一に記載のポリカーボネート組成物。
  10. 前記シリコーンは、Si原子に直接結合したアルコキシ基及び水酸基をそれらの合計量が前記シリコーンの全有機基に対して、モル比で3/20以下となるような割合で有することを特徴とする、請求項1〜9のいずれか一に記載のポリカーボネート組成物。
  11. 前記シリコーンは、前記ポリカーボネート系樹脂の100重量部に対して、0.1−20重量部の割合で含まれることを特徴とする、請求項1〜10のいずれか一に記載のポリカーボネート組成物。
  12. 前記ポリカーボネート系樹脂の粘度平均分子量が、10000−60000であることを特徴とする、請求項1〜11のいずれか一に記載のポリカーボネート組成物。
  13. 前記ポリカーボネート系樹脂の末端がフェノールよりも嵩高い末端封鎖基で封鎖されていることを特徴とする、請求項1〜12のいずれか一に記載のポリカーボネート組成物。
  14. 前記無機化合物の粒径が5−200nmであることを特徴とする、請求項1〜13のいずれか一に記載のポリカーボネート組成物。
  15. 前記無機化合物は、前記ポリカーボネート系樹脂の100重量部に対して、0.5−50重量部の割合で含まれることを特徴とする、請求項1〜14のいずれか一に記載のポリカーボネート組成物。
  16. 30−60℃における線膨張係数が6.5×10-5/K以下であることを特徴とする、請求項1〜15のいずれか一に記載のポリカーボネート組成物。
  17. 請求項1〜16のいずれか一に記載のポリカーボネート組成物の製造方法であって、
    前記ポリカーボネート系樹脂、前記シリコーン及び前記無機化合物を所定の有機溶媒中に混合分散させ、有機溶媒溶液を作製する工程と、
    前記有機溶媒溶液を加熱して溶媒を除去し、前記ポリカーボネート組成物を得る工程と、
    を具えることを特徴とする、ポリカーボネート組成物の製造方法。
  18. 前記有機溶媒溶液を40℃以上に加熱して、前記溶媒の除去を行うことを特徴とする、請求項17に記載のポリカーボネート組成物の製造方法。
  19. 前記有機溶媒溶液中に、前記シリコーンの加水分解重縮合型の架橋反応を促進するための触媒を添加する工程を具えることを特徴とする、請求項17又は18に記載のポリカーボネート組成物の製造方法。
  20. 前記無機化合物に対して表面処理を施し、前記無機化合物の表面に疎水基を形成する工程を具えることを特徴とする、請求項17〜19のいずれか一に記載のポリカーボネート組成物の製造方法。
  21. 請求項1〜16のいずれか一に記載のポリカーボネート組成物の製造方法であって、
    前記ポリカーボネート系樹脂のモノマーである芳香族ジオール及び炭酸ジエステル化合物、並びに前記シリコーン及び前記無機化合物を混合して反応溶液を作製する工程と、
    前記反応溶液を所定温度に加熱して重合反応を生ぜしめ、前記ポリカーボネート組成物を得る工程と、
    を具えることを特徴とする、ポリカーボネート組成物の製造方法。
  22. 前記反応溶液中に、前記シリコーンの加水分解重縮合型の架橋反応を促進するための触媒を添加する工程を具えることを特徴とする、請求項21に記載のポリカーボネート組成物の製造方法。
  23. 前記無機化合物に対して表面処理を施し、前記無機化合物の表面に疎水基を形成する工程を具えることを特徴とする、請求項21又は22に記載のポリカーボネート組成物の製造方法。
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