従来の技術として説明したように、伝送線路のうち制御線Lcは共用部装置(ロビーインターホン)1が相手先の住戸機2を選択するための制御信号を伝送するから、ロビーインターホン1および住戸機2において制御線Lcに接続される回路は常時動作させておくことが必要である。つまり、ロビーインターホン1が住戸機2を選択するためのアドレスを含む制御信号は、すべての住戸機2に伝送されるから、すべての住戸機2において制御信号送受信回路26およびCPU20は常時作動する。これに対して、音声信号および映像信号に対する処理は住戸機2の選択後に行えばよいから、音声信号と映像信号とは一括して扱うことができ、しかも、音声信号と映像信号とは周波数帯域が異なるから(音声信号に対して映像信号は周波数が十分に高い)、周波数多重化の技術によって多重化することができる。
そこで、以下に説明する実施形態では、ロビーインターホン1と幹線制御装置3との間は図10に示した従来構成と同様に3対のペア線からなる伝送線路を介して接続するが、幹線制御装置3において音声信号と映像信号とを多重化することにより、幹線制御装置3から先においては伝送線路に用いる線数を従来構成よりも低減した例について説明する。なお、制御信号はロビーインターホン1から住戸機2の呼出に用いるだけではなく、一斉放送の開始を指示する目的にも用いられる。この種の制御信号にはベースバンド信号を用いることもあり、ベースバンド信号は周波数帯域が広く、音声信号や映像信号との分離が困難であるから、このことからも音声信号および映像信号と制御信号とを各別に伝送することが伝送品質の点から必要になる。また、以下の説明では経路切替器10で幹線L1を分けることを「分配」と呼び、幹線L1から住戸別線L2を分けることを「分岐」と呼ぶ。
(実施形態1)
本実施形態は、図1に示すように、ロビーインターホン1に対して3対のペア線からなる伝送線路を介して幹線制御装置3を接続し、さらに幹線制御装置3と複数台の住戸機2とを2対のペア線からなる伝送線路を介して接続したものである。2対のペア線からなる伝送線路は、図10に示した従来構成と同様にロビーインターホン1に接続される幹線L1と、住戸機2に接続される住戸別線L2とからなり、幹線L1と住戸別線L2との間には分岐器7が挿入され、幹線分配器4の代わりに、複数台の住戸機2がそれぞれ分岐接続された複数系統の幹線L1とロビーインターホン1が接続された幹線L1との間に経路切替器10が挿入される。図1を見ればわかるように、本実施形態の基本的な構成は図10又は図11に示した従来構成と同様であって、図1において図10及び図11に示した従来構成と同機能の構成には同符号を付してある。
本実施形態と従来構成との主な相違点は、図10に示した従来構成における伝送線路では通話線Laと映像線Lbと制御線Lcとの3対のペア線を用いていたのに対して、本実施形態では、ロビーインターホン1と幹線制御装置3の間の伝送線路は同じく3対のペア線を用いるが、幹線制御装置3から住戸機2までの伝送線路には信号線Ldと制御線Lcとの2対のペア線を用いている点である。但し、ロビーインターホン1と幹線制御装置3との間では、図10に示した従来構成と同様に通話制御装置5を介して通話線La及び制御線Lcが接続されている。
信号線Ldは音声信号と映像信号とをともに伝送するものであって、音声信号と映像信号との両方で信号線Ldを用いるために、幹線制御装置3及び住戸機2にはそれぞれ多重分離回路201を設けている。住戸機2に用いている多重分離回路201は、音声回路24cと信号線Ldとの間に挿入される低周波通過部201aと、結合トランス25cと信号線Ldとの間に挿入される高周波通過部201bとからなる(但し、幹線制御装置3については図示並びに説明を省略する。)。低周波通過部201aは音声信号伝送帯域に対して低インピーダンスであって映像信号帯域に対して高インピーダンスのものを用い、高周波通過部201bは音声信号伝送帯域に対して高インピーダンスであって映像信号伝送帯域に対して低インピーダンスのものを用いる。図示例では、低周波通過部201aとしてインダクタを用い、高周波通過部201bとしてコンデンサを用いている。尚、低周波通過部201aよりも音声回路24c側で信号線Ldの線間に幹線電源重畳回路200により直流電圧が印加されるようになっており、この直流電圧が音声信号に与える影響を取り除くために低周波通過部201aと音声回路24cとの間には直流電圧を阻止するコンデンサ202並びに音声信号を通過させる結合トランス203が挿入されている。
本実施形態に用いる経路切替器10は、1系統の幹線L1(信号線Ld及び制御線Lc)が2系統の幹線L1に分配され、分配された2系統の各幹線L1における信号線Ldに常開型の幹線リレー接点101A,101Bがそれぞれ挿入されている。また、経路切替器10は、幹線リレー接点101A,101Bよりも住戸機2側において信号線Ldの線間電圧から直流成分を分離するとともに分離した直流成分を電源として幹線リレー(図示せず)を駆動することにより幹線リレー接点101A,101Bを開閉する幹線リレー駆動部102A,102Bを備えている。この幹線リレー駆動部102A,102Bは、音声信号並びに映像信号の通過を阻止する一対のインダクタ102aと、交流入力端がそれぞれインダクタ102aを介して信号線Ldに接続されたダイオードブリッジ102bと、ダイオードブリッジ102bの脈流出力端から取り出した直流電圧を定電圧化して幹線リレーの励磁コイルに励磁電流を流す駆動回路102cとで構成されている。さらに、各系統の幹線L1における信号線Ldにおいて幹線リレー接点101A,101Bと幹線リレー駆動部102A,102Bとの間には、音声信号並びに映像信号を通過させるとともに直流電圧を阻止する直流電圧阻止用のコンデンサ103A,103Bがそれぞれ挿入されている。但し、経路切替器10が商用電源から電源を得る電源回路を備え、電源回路によって幹線リレーの駆動電源を得るとともに、住戸機2によって信号線Ldの線間に印加される直流電圧を検出する検出回路を設け、検出回路で直流電圧を検出したときに幹線リレーを駆動させる構成としてもよい。
次に本実施形態の要部の動作を説明する。但し、以下では説明を簡単にするために、幹線制御装置3と経路切替器10の間を接続する幹線L1を幹線L10、経路切替器10を介して分配された2系統の幹線L1をそれぞれ幹線L11及び幹線L12と表記し、一方の幹線L11に分岐器7を介して分岐接続された複数台の住戸機2を住戸機211,212,…、他方の幹線L12に分岐器7を介して分岐接続された複数台の住戸機2を住戸機221,222,…と表記する。
まず、ロビーインターホン1と、ロビーインターホン1で選択された1台の住戸機2(例えば、住戸機211)との間で個別通話する場合について説明する。ロビーインターホン1で選択された住戸機211に対して通話制御装置5から制御線Lcを介して制御信号(呼出コマンド)が伝送され、この制御信号に含まれるアドレスが一致した住戸機211では、CPU20が呼出コマンドに応じて住戸機リレーのリレー接点29を閉成するとともに幹線電源重畳回路200によって幹線L11における信号線Ldの線間に直流電圧を印加し、さらに音声回路24cを通じてスピーカ21bから呼出音を送出させる。経路切替器10の幹線リレー駆動部102Aでは、幹線L11における信号線Ldの線間に直流電圧が印加されると、一方の幹線リレー駆動部102Aにおける駆動回路102cが動作して幹線リレーの励磁コイルに励磁電流を流すことにより幹線リレーを駆動し、直流電圧が印加されている幹線L11における信号線Ldに挿入された幹線リレー接点101Aを閉成する。さらにロビーインターホン1に選択された住戸機1では、CPU20がFM復調部25aやモニタ22を起動し、経路切替器10の幹線リレー接点101Aが閉成されることで信号線Ldを介して伝送されるFM映像信号をFM復調部25aで周波数復調してロビーインターホン1のカメラにおいて撮像された来訪者の映像を住戸機2のモニタ22に表示させる。そして、ロビーインターホン1からの呼出に応答して居住者が住戸機211の応答釦(図示せず)を押操作すると、住戸機211のCPU20が音声回路24cを起動する。一方、ロビーインターホン1に選択されなかった住戸機212,…、221,…では、CPU20が住戸機リレーのリレー接点29を閉成せず、また幹線電源重畳回路200によって信号線Ldの線間に直流電圧を印加しないから、ロビーインターホン1に選択されなかった住戸機221,…のみが分岐接続されている幹線L12においては、幹線リレー接点101Bが開成された状態のままとなる。
上述した動作により、経路切替器10においては2系統の幹線L11,L12のうちでロビーインターホン1に選択された住戸機211が分岐接続された幹線L11のみが幹線制御装置3側の幹線L10と接続され、他方の幹線L12が幹線制御装置3側の幹線L10と切り離されるから、ロビーインターホン1と選択された住戸機211との間でのみ通話が可能になるとともに、選択された住戸機211でのみロビーインターホン1のカメラで撮像された来訪者をモニタ22に表示することが可能になる。
次に、集合住宅の管理室に設置された一斉放送機器(例えば、いわゆる警報監視盤などのように音声入力が可能であって幹線を介して各住戸機に音声信号を送信し得る構成を備えた機器)から全ての住戸の住戸機2に対して避難誘導等のための音声を一斉に放送する場合について説明する。一斉放送を開始するに当たって全ての住戸機2に対して通話制御装置5から制御線Lcを介して制御信号(一斉放送開始コマンド)が伝送され、この一斉放送開始コマンドに応じて全ての住戸機2のCPU20が住戸機リレーのリレー接点29を閉成するとともに、各系統の幹線L11,L12に分岐接続された複数台の住戸機2のうちの何れか1台ずつ(例えば、住戸機211及び住戸機221)においてのみCPU20が幹線電源重畳回路200によって幹線L11,L12における信号線Ldの線間に直流電圧を印加する。経路切替器10の幹線リレー駆動部102A,102Bでは、幹線L11,L12における信号線Ldの線間に直流電圧が印加されることにより、2つの幹線リレー駆動部102A,102Bにおける駆動回路102cが双方とも動作して幹線リレーの励磁コイルに励磁電流を流すことにより幹線リレーを駆動し、各幹線L11,L12における信号線Ldに挿入された幹線リレー接点101A,101Bを双方とも閉成する。
そして、一斉放送を終了するに当たっては、全ての住戸機2に対して通話制御装置5から制御線Lcを介して制御信号(一斉放送終了コマンド)が伝送され、この一斉放送終了コマンドに応じて全ての住戸機2のCPU20が住戸機リレーのリレー接点29を開成するとともに住戸機211及び住戸機221のCPU20が幹線電源重畳回路200による信号線Ldの線間への直流電圧印加を停止する。経路切替器10の幹線リレー駆動部102A,102Bでは、幹線L11,L12における信号線Ldの線間への直流電圧印加が停止されることにより、2つの幹線リレー駆動部102A,102Bにおける駆動回路102cが双方とも停止し、各幹線L11,L12における信号線Ldに挿入された幹線リレー接点101A,101Bを開成する。
上述した動作により、経路切替器10においては2系統の幹線L11,L12が双方とも幹線制御装置3側の幹線L10と接続されるから、一斉放送機器から通話制御装置5を介して通話線Laに送出される一斉放送用の音声信号が各幹線L11,L12にそれぞれ分岐接続されている全ての住戸機2に伝送されてスピーカ21bから出力される。このとき、経路切替器10では各幹線L11,L12における信号線Ldに直流電圧阻止用のコンデンサ103A,103Bがそれぞれ挿入されているため、2つの系統の幹線L11,L12において各々住戸機211,221の幹線電源重畳回路200により信号線Ldの線間に印加された直流電圧が直流電圧阻止用のコンデンサ103A,103Bで阻止されて衝突することがない。
このように本実施形態によれば、一斉放送開始を指示する制御信号(一斉放送開始コマンド)が制御線Lcを介して伝送され、各系統の幹線L11,L12において当該幹線L11,L12に分岐接続された複数台の住戸機2のうちの何れか1台の住戸機2(例えば、住戸機211と住戸機221)のCPU20が一斉放送開始コマンドを受信したときに幹線電源重畳回路200から信号線Ldの線間に直流電圧を印加させることにより、経路切替器10においては全ての系統の幹線L11,L12がロビーインターホン1側の幹線L10と接続されることとなるから個別通話時と同じ伝送線路(信号線Ld)を使って複数台の住戸機2に向けた一斉放送が可能となる。しかも、各系統の幹線L11,L12の信号線Ldにおいて幹線リレー接点101A,101Bと幹線リレー駆動部102A,102Bとの間にはそれぞれ直流電圧阻止用コンデンサ103A,103Bが挿入されているため、複数台の住戸機2(例えば、住戸機211と住戸機221の2台)から信号線Ldの線間に印加される直流電圧の衝突を無くして不具合の発生を防止することができる。
尚、本実施形態では一斉放送の対象をシステムに含まれる全ての住戸機2として説明したが、必ずしも全ての住戸機2を一斉放送の対象とする必要はなく、例えば、一斉放送の内容に応じて対象とする住戸機2を限定してもよく、複数系統の幹線L11,L12にそれぞれ分岐接続されている複数台の住戸機2を一斉放送の対象とする場合に直流電圧阻止用コンデンサ103A,103Bによる直流電圧の衝突防止が図れるものである。
(実施形態2)
本実施形態は、図2に示すように住戸機2の幹線電源重畳回路200が個別通話時と一斉放送時とで互いに電圧値が異なる2種類の直流電圧を信号線Ldの線間に印加可能であり、経路切替器10では信号線Ldの線間に印加される直流電圧の電圧値に基づいて個別通話と一斉放送を判別し、その判別結果に応じて幹線リレー接点101A,101Bを開閉するようにした点に特徴がある。但し、本実施形態の基本構成は実施形態1と共通であるから、共通の構成要素には同一の符号を付して説明を省略する。
住戸機2の幹線電源重畳回路200は、第1の電圧値(例えば、30V)と第2の電圧値(例えば、10V)の2種類の直流電圧を信号線Ldの線間に印加できるものであって、第1の電圧値と第2の電圧値の切替については、外部から供給される2種類の電源(30V用の電源と10V用の電源)の入力をCPU20で制御される切替スイッチSWにより切り替えることで行われる。すなわち、住戸機2のCPU20では、個別通話の呼出コマンドの制御信号を受け取ったときに切替スイッチSWを30V用の電源に切り替えて幹線電源重畳回路200から第1の電圧値(30V)の直流電圧を信号線Ldの線間に印加させ、一斉放送開始コマンドの制御信号を受け取ったときに切替スイッチSWを10V用の電源に切り替えて幹線電源重畳回路200から第2の電圧値(10V)の直流電圧を信号線Ldの線間に印加させるのである。
一方、経路切替器10の幹線リレー駆動部102A,102Bは、インダクタ102a、ダイオードブリッジ102b、駆動回路102cに加えて信号線Ldの線間に印加された第1の電圧値の直流電圧と第2の電圧値の直流電圧を各別に検出する電圧検出回路102dを有している。この電圧検出回路102dでは、信号線Ldの線間に印加された直流電圧の電圧値を第1の電圧値と第2の電圧値との間に設定されたしきい値(例えば、20V)と比較することで第1及び第2の電圧値の直流電圧を各別に検出し、個別通話に対応する第1の電圧値の直流電圧を検出したときには当該信号線Ldに挿入されている幹線リレー接点101A(又は101B)のみを駆動回路102cによって閉成させ、一斉放送に対応する第2の電圧値の直流電圧を検出したときには各幹線L11,L12の信号線Ldに挿入されている幹線リレー接点101A及び101Bを駆動回路102cによって全て閉成させるのである。
次に本実施形態の要部の動作を説明する。まず、ロビーインターホン1と、ロビーインターホン1で選択された1台の住戸機2(例えば、住戸機211)との間で個別通話する場合について説明する。ロビーインターホン1で選択された住戸機211に対して通話制御装置5から制御線Lcを介して制御信号(呼出コマンド)が伝送され、この制御信号に含まれるアドレスが一致した住戸機211では、CPU20が呼出コマンドに応じて住戸機リレーのリレー接点29を閉成するとともに切替スイッチSWを30V用の電源側に切り替えて幹線電源重畳回路200により幹線L11における信号線Ldの線間に第1の電圧値(30V)の直流電圧を印加し、さらに音声回路24cを通じてスピーカ21bから呼出音を送出させる。経路切替器10の幹線リレー駆動部102Aでは、幹線L11における信号線Ldの線間に第1の電圧値の直流電圧が印加されると電圧検出回路102dが第1の電圧値の直流電圧を検出し、駆動回路102cが動作して幹線リレーの励磁コイルに励磁電流を流すことにより幹線リレーを駆動し、直流電圧が印加されている幹線L11における信号線Ldに挿入された幹線リレー接点101Aのみを閉成する。さらにロビーインターホン1に選択された住戸機1では、CPU20がFM復調部25aやモニタ22を起動し、経路切替器10の幹線リレー接点101Aが閉成されることで信号線Ldを介して伝送されるFM映像信号をFM復調部25aで周波数復調してロビーインターホン1のカメラにおいて撮像された来訪者の映像を住戸機2のモニタ22に表示させる。そして、ロビーインターホン1からの呼出に応答して居住者が住戸機211の応答釦(図示せず)を押操作すると、住戸機211のCPU20が音声回路24cを起動する。一方、ロビーインターホン1に選択されなかった住戸機212,…、221,…では、CPU20が住戸機リレーのリレー接点29を閉成せず、また幹線電源重畳回路200によって信号線Ldの線間に直流電圧を印加しないから、ロビーインターホン1に選択されなかった住戸機221,…のみが分岐接続されている幹線L12においては、幹線リレー接点101Bが開成された状態のままとなる。
上述した動作により、経路切替器10においては2系統の幹線L11,L12のうちでロビーインターホン1に選択された住戸機211が分岐接続された幹線L11のみが幹線制御装置3側の幹線L10と接続され、他方の幹線L12が幹線制御装置3側の幹線L10と切り離されるから、ロビーインターホン1と選択された住戸機211との間でのみ通話が可能になるとともに、選択された住戸機211でのみロビーインターホン1のカメラで撮像された来訪者をモニタ22に表示することが可能になる。
次に、集合住宅の管理室に設置された一斉放送機器から全ての住戸の住戸機2に対して避難誘導等のための音声を一斉に放送する場合について説明する。一斉放送を開始するに当たって全ての住戸機2に対して通話制御装置5から制御線Lcを介して制御信号(一斉放送開始コマンド)が伝送され、この一斉放送開始コマンドに応じて全ての住戸機2のCPU20が住戸機リレーのリレー接点29を閉成するとともに、各系統の幹線L11,L12に分岐接続された複数台の住戸機2のうちの何れか1台(例えば、住戸機211)においてのみCPU20が切替スイッチSWを10V用の電源側に切り替えて幹線電源重畳回路200により幹線L11における信号線Ldの線間に第2の電圧値(10V)の直流電圧を印加する。経路切替器10の幹線リレー駆動部102Aでは、幹線L11における信号線Ldの線間に第2の電圧値の直流電圧が印加されると電圧検出回路102dが第2の電圧値の直流電圧を検出し、駆動回路102cが動作して幹線リレーの励磁コイルに励磁電流を流すことにより幹線リレーを駆動し、全ての幹線L11,L12における信号線Ldに挿入された幹線リレー接点101A,101Bを双方とも閉成する。
そして、一斉放送を終了するに当たっては、全ての住戸機2に対して通話制御装置5から制御線Lcを介して制御信号(一斉放送終了コマンド)が伝送され、この一斉放送終了コマンドに応じて全ての住戸機2のCPU20が住戸機リレーのリレー接点29を開成するとともに住戸機211のCPU20が幹線電源重畳回路200による信号線Ldの線間への直流電圧印加を停止する。経路切替器10の幹線リレー駆動部102Aでは、幹線L11における信号線Ldの線間への直流電圧印加が停止されることにより、駆動回路102cが停止し、各幹線L11,L12における信号線Ldに挿入された幹線リレー接点101A,101Bを開成する。
上述した動作により、経路切替器10においては2系統の幹線L11,L12が双方とも幹線制御装置3側の幹線L10と接続されるから、一斉放送機器から通話制御装置5を介して通話線Laに送出される一斉放送用の音声信号が各幹線L11,L12にそれぞれ分岐接続されている全ての住戸機2に伝送されてスピーカ21bから出力される。
而して本実施形態によれば、個別通話のときと一斉放送のときとで住戸機2の幹線電源重畳回路200が信号線Ldの線間に印加する直流電圧を異ならせ、経路切替器10では、これら2種類の直流電圧を電圧検出回路102dにより各別に検出し、その検出結果に基づいて幹線リレー駆動部102A又は102Bで個別通話か一斉放送かを判断するとともに一斉放送と判断したときには全ての幹線リレー接点101A,101Bを閉成するため、個別通話時と同じ信号線Ldを使って複数台の住戸機2に向けた一斉放送が可能であり、しかも、一斉放送時にも何れか1台の住戸機2のみが信号線Ldの線間に直流電圧を印加すればよく、複数台の住戸機2から信号線Ldの線間に印加される直流電圧の衝突を無くして不具合の発生を防止することができる。
尚、本実施形態においても全ての住戸機2を一斉放送の対象とする必要はなく、例えば、一斉放送の内容に応じて対象とする住戸機2を限定してもよい。
(実施形態3)
実施形態1では、個別通話時だけでなく一斉放送時にも住戸機2の幹線電源重畳回路200から信号線Ldの線間に直流電圧を印加して経路切替器10における幹線リレー駆動部102A,102Bを動作させるように構成しているのに対し、本実施形態は、図3に示すように一斉放送時における経路切替器10の幹線リレー駆動部102A,102Bの動作用直流電圧を通話制御装置5から供給するようにした点に特徴がある。尚、その他の基本構成は実施形態1と共通であるから、共通の構成要素には同一の符号を付して説明を省略する。
本実施形態の通話制御装置5は一斉放送機器を兼ねており、図3に示すように音声を入出力するマイクロホン51a及びスピーカ51bを備え、マイクロホン51aとスピーカ51bとはそれぞれ増幅器54a,54bを介して音声回路54cに接続されている。音声回路54cは、2線の通話線Laと2個の増幅器54a,54bの入力線及び出力線とを2線4線変換する回路を含み、マイクロホン51aから入力される音声信号を通話線Laに送出し、通話線Laからの音声信号をスピーカ51b側に出力する機能を備えている。したがって、通話制御装置5とロビーインターホン1及び住戸機2との間で通話線Laを通して音声信号を授受することができ、管理人が通話制御装置5を用いるとともに来訪者がロビーインターホン1を用いることによって管理人と来訪者との間で音声通話が可能になり、また、管理人が通話制御装置5を用いるとともに居住者が住戸機2を用いることによって管理人と居住者との間でも音声通話が可能となる。
通話制御装置5には内部回路を制御するCPU50が設けられ、CPU50には制御線Lcとのインタフェースとなる制御信号送受信回路52が接続される。制御信号送受信回路52は、CPU50から出力された制御信号を制御線Lcに送出し、制御線Lcから受信した制御信号をCPU50に引き渡す機能を有する。また通話制御装置5には、一斉放送時において通話線Laの線間に直流電圧を印加する一斉放送用幹線電源重畳回路53が設けられるとともに、この直流電圧が音声信号に与える影響を取り除くために一斉放送用幹線電源重畳回路53と音声回路54cとの間には直流電圧を阻止するコンデンサ55並びに音声信号を通過させる結合トランス56が挿入されている。尚、通話制御装置5の内部電源は、電源回路54によって商用電源(交流100V)から生成される。
一方、経路切替器10は、ロビーインターホン1側の幹線L10における信号線Ldの線間電圧から直流成分を分離するとともに分離した直流成分を電源として幹線リレー104A,104Bを駆動することにより幹線リレー接点101A,101Bを閉成する一斉放送用幹線リレー駆動部105を備えている。この一斉放送用幹線リレー駆動部105は、音声信号並びに映像信号の通過を阻止する一対のインダクタ105aと、交流入力端がそれぞれインダクタ105aを介して信号線Ldに接続されたダイオードブリッジ105bと、ダイオードブリッジ105bの脈流出力端から取り出した直流電圧を定電圧化して幹線リレー104A,104Bの励磁コイルに励磁電流を流す駆動回路105cとで構成されている。
次に本実施形態の要部の動作を説明する。但し、ロビーインターホン1又は通話制御装置5と選択された何れか1台の住戸機2との間で個別通話する場合の動作については実施形態1と共通であるから説明を省略し、通話制御装置5から全ての住戸機2に対して一斉放送する場合の動作についてのみ説明する。
一斉放送を開始する際、通話制御装置5ではCPU50が制御信号送受信回路52から制御線Lcに対して制御信号(一斉放送開始コマンド)を送出するとともに、一斉放送用幹線電源重畳回路53により通話線Laの線間に直流電圧を印加する。制御線Lcに送出された制御信号(一斉放送開始コマンド)が幹線L11,L12に分岐接続されている全ての住戸機2に伝送され、この一斉放送開始コマンドに応じて全ての住戸機2のCPU20が住戸機リレーのリレー接点29を閉成する。一方、通話線Laの線間に印加された直流電圧は幹線制御装置3を介して信号線Ldの線間に印加される。経路切替器10の一斉放送用幹線リレー駆動部105では、幹線L10における信号線Ldの線間に直流電圧が印加されることにより、駆動回路105cが動作して幹線リレー104A,104Bの励磁コイルに励磁電流を流すことにより幹線リレー104A,104Bを駆動し、各幹線L11,L12における信号線Ldに挿入された幹線リレー接点101A,101Bを双方とも閉成する。ここで、経路切替器10では各幹線L11,L12における信号線Ldに直流電圧阻止用のコンデンサ103A,103Bがそれぞれ挿入されているから、通話制御装置5の一斉放送用幹線電源重畳回路53により印加された直流電圧が住戸機2へ印加されることはない。
そして、一斉放送を終了するに当たっては、全ての住戸機2に対して通話制御装置5から制御線Lcを介して制御信号(一斉放送終了コマンド)が伝送され、この一斉放送終了コマンドに応じて全ての住戸機2のCPU20が住戸機リレーのリレー接点29を開成するとともに通話制御装置5のCPU50が一斉放送用幹線電源重畳回路53による通話線Laの線間への直流電圧印加を停止する。経路切替器10の一斉放送用幹線リレー駆動部105では、幹線L10における信号線Ldの線間への直流電圧印加が停止されることにより、幹線リレー駆動部105における駆動回路105cが停止し、各幹線L11,L12における信号線Ldに挿入された幹線リレー接点101A,101Bを開成する。
上述した動作により、経路切替器10においては2系統の幹線L11,L12が双方とも幹線制御装置3側の幹線L10と接続されるから、一斉放送機器から通話制御装置5を介して通話線Laに送出される一斉放送用の音声信号が各幹線L11,L12にそれぞれ分岐接続されている全ての住戸機2に伝送されてスピーカ21bから出力される。このとき、経路切替器10の幹線リレー104A,104Bは、通話制御装置5によって信号線Ldの線間に印加された直流電圧を電源として一斉放送用幹線リレー駆動部105により駆動され、何れの住戸機2からも信号線Ldの線間に直流電圧を印加する必要がないから、一斉放送時に信号線Ldの線間に印加される直流電圧の衝突も生じない。しかも、一斉放送時に信号線Ldの線間に直流電圧を印加する住戸機2を設定するといった制御が不要になるから、実施形態1に比較してシステム構成が簡素化できるという利点がある。
尚、本実施形態においても全ての住戸機2を一斉放送の対象とする必要はなく、例えば、一斉放送の内容に応じて対象とする住戸機2を限定してもよい。
(実施形態4)
本実施形態は、図4に示すように経路切替器10における幹線リレー接点101A,101Bを常閉型とした点に特徴があり、その他の基本構成は実施形態1と共通であるから、共通の構成要素には同一の符号を付して説明を省略する。
本実施形態に用いる経路切替器10は、図4に示すように幹線L10から分配された2系統の各幹線L11,L12における信号線Ldに常閉型の幹線リレー接点101C,101Dがそれぞれ挿入されている。また、経路切替器10は、幹線リレー接点101C,101Dよりも住戸機2側において信号線Ldの線間電圧から直流成分を分離するとともに分離した直流成分を電源として幹線リレー(図示せず)を駆動することにより幹線リレー接点101C,101Dを開成する幹線リレー駆動部102C,102Dを備えている。この幹線リレー駆動部102C,102Dは、音声信号並びに映像信号の通過を阻止する一対のインダクタ102aと、交流入力端がそれぞれインダクタ102aを介して幹線L12,L11における信号線Ldにそれぞれ接続されたダイオードブリッジ102bと、ダイオードブリッジ102bの脈流出力端から取り出した直流電圧を定電圧化して幹線リレーの励磁コイルに励磁電流を流す駆動回路102cとで構成されている。さらに、各系統の幹線L11,L12における信号線Ldにおいて幹線リレー接点101C,101Dと幹線リレー駆動部102D,102Cとの間には、音声信号並びに映像信号を通過させるとともに直流電圧を阻止する直流電圧阻止用のコンデンサ103C,103Dがそれぞれ挿入されている。
次に本実施形態の要部の動作を説明する。まず、ロビーインターホン1と、ロビーインターホン1で選択された1台の住戸機2(例えば、住戸機211)との間で個別通話する場合について説明する。ロビーインターホン1で選択された住戸機211に対して通話制御装置5から制御線Lcを介して制御信号(呼出コマンド)が伝送され、この制御信号に含まれるアドレスが一致した住戸機211では、CPU20が呼出コマンドに応じて住戸機リレーのリレー接点29を閉成するとともにFM復調部25aやモニタ22を起動してロビーインターホン1のカメラにおいて撮像された来訪者の映像を住戸機2のモニタ22に表示させ、さらに音声回路24cを通じてスピーカ21bから呼出音を送出させる。そして、ロビーインターホン1からの呼出に応答して居住者が住戸機211の応答釦(図示せず)を押操作すると、住戸機211のCPU20が音声回路24cを動作させて通話可能な状態にするとともに幹線電源重畳回路200によって幹線L11における信号線Ldの線間に直流電圧を印加する。経路切替器10の幹線リレー駆動部102Dでは、幹線L11における信号線Ldの線間に直流電圧が印加されると駆動回路102cが動作して幹線リレーの励磁コイルに励磁電流を流すことにより幹線リレーを駆動し、直流電圧が印加されていない幹線L12、すなわち、ロビーインターホン1に選択されなかった住戸機221,…のみが分岐接続されている幹線L12における信号線Ldに挿入された幹線リレー接点101Dを開成する。一方、ロビーインターホン1に選択されなかった住戸機212,…、221,…では、CPU20が住戸機リレーのリレー接点29を閉成せず、また幹線電源重畳回路200によって信号線Ldの線間に直流電圧を印加しないから、ロビーインターホン1に選択された住戸機211が分岐接続されている幹線L11においては、幹線リレー接点101Cが閉成された状態のままとなる。このとき、経路切替器10では幹線L11における信号線Ldに挿入された直流電圧阻止用のコンデンサ103Cにより、住戸機211の幹線電源重畳回路200によって信号線Ldの線間に印加された直流電圧を阻止しているため、常閉型の幹線リレー接点101Dを介して他方の幹線リレー駆動部102Cに直流電圧が印加されることがなく、幹線L11における信号線Ldに挿入された幹線リレー接点101Cが誤って開成することを防いでいる。
上述した動作により、経路切替器10においては2系統の幹線L11,L12のうちでロビーインターホン1に選択された住戸機211が分岐接続された幹線L11のみが幹線制御装置3側の幹線L10と接続され、他方の幹線L12が幹線制御装置3側の幹線L10と切り離されるから、ロビーインターホン1と選択された住戸機211との間でのみ通話が可能になるとともに、選択された住戸機211でのみロビーインターホン1のカメラで撮像された来訪者をモニタ22に表示することが可能になる。
次に一斉放送時の動作について説明する。一斉放送を開始するに当たって全ての住戸機2に対して通話制御装置5から制御線Lcを介して制御信号(一斉放送開始コマンド)が伝送され、この一斉放送開始コマンドに応じて全ての住戸機2のCPU20が住戸機リレーのリレー接点29を閉成する。但し、何れの住戸機2においてもCPU20は幹線電源重畳回路200による信号線Ldの線間への直流電圧印加を行わない。したがって、経路切替器10の幹線リレー駆動部102C,102Dでは、幹線L11,L12における信号線Ldの線間に直流電圧が印加されないことから、2つの幹線リレー駆動部102C,102Dにおける駆動回路102cが双方とも動作せず、各幹線L11,L12における信号線Ldに挿入された幹線リレー接点101C,101Dは双方とも閉成した状態に維持される。
そして、全ての住戸機2に対して通話制御装置5から制御線Lcを介して制御信号(一斉放送終了コマンド)が伝送され、この一斉放送終了コマンドに応じて全ての住戸機2のCPU20が住戸機リレーのリレー接点29を開成することによって、一斉放送を終了する。
上述した動作により、経路切替器10においては2系統の幹線L11,L12が双方とも幹線制御装置3側の幹線L10と接続されるから、一斉放送機器から通話制御装置5を介して通話線Laに送出される一斉放送用の音声信号が各幹線L11,L12にそれぞれ分岐接続されている全ての住戸機2に伝送されてスピーカ21bから出力される。このとき、経路切替器10では常閉型の幹線リレー接点101C,101Dを介して各幹線L11,L12が幹線L10と接続された状態にあるため、何れの住戸機2からも信号線Ldの線間に直流電圧を印加する必要がないから、一斉放送時に信号線Ldの線間に印加される直流電圧の衝突も生じない。しかも、一斉放送時に信号線Ldの線間に直流電圧を印加する住戸機2を設定したり、あるいは通話制御装置5に一斉放送用幹線電源重畳回路53を設けて一斉放送時に通話線Laの線間に直流電圧を印加するといった構成が不要になるから、実施形態1〜3に比較してシステム構成が簡素化できるという利点がある。
尚、本実施形態においても全ての住戸機2を一斉放送の対象とする必要はなく、例えば、一斉放送の内容に応じて対象とする住戸機2を限定してもよい。
(実施形態5)
本実施形態は、図5に示すように複数台の経路切替器10を多段に接続できるようにした点に特徴がある。但し、基本構成は実施形態4と共通であるから、共通の構成要素には同一の符号を付して説明を省略する。
本実施形態の経路切替器10は、図5に示すように分配された2つの系統の各幹線L1について住戸機2の幹線電源重畳回路200によって信号線Ldの線間に印加される直流電圧を検出したときに、各系統の幹線L1において幹線リレー接点101C,101Dよりもロビーインターホン1側の信号線Ldの線間に直流電圧を印加する第2の幹線電源供給手段を備えている。第2の幹線電源供給手段は、インダクタ106aを介して分配前の幹線L1における信号線Ldの線間に直流電圧を印加する電源重畳回路106bと、幹線リレー駆動部102C,102Dの駆動回路102cから電源重畳回路106bへの給電経路に挿入されるとともに駆動回路102cにより駆動されるリレー(図示せず)によって閉成される常開型の給電リレー接点107C,107Dとを備え、給電リレー接点107C又は107Dが閉成して幹線リレー駆動部102C又は102Dの駆動回路102cから電源が供給されたときに電源重畳回路106bが動作するように構成されている。
次に本実施形態の要部の動作を説明する。但し、以下では説明を簡単にするために、幹線制御装置3と幹線L10を介して直接接続された経路切替器10を経路切替器101、経路切替器101を介して分配された2系統の幹線L1をそれぞれ幹線L11及び幹線L12、各系統の幹線L11,L12を分配する経路切替器10を各々経路切替器102,103、経路切替器102,103を介して分配された各2系統の幹線L1をそれぞれ幹線L111,L112及び幹線L121,L122と表記し、各幹線L111、L112、L121、L122に分岐器7を介して分岐接続された複数台の住戸機2を住戸機2111,2112,…、住戸機2121,2122,…、住戸機2211,2212,…、住戸機2221,2222,…と表記する。
まず、ロビーインターホン1と、ロビーインターホン1で選択された1台の住戸機2(例えば、住戸機2111)との間で個別通話する場合について説明する。ロビーインターホン1で選択された住戸機2111に対して通話制御装置5から制御線Lcを介して制御信号(呼出コマンド)が伝送され、この制御信号に含まれるアドレスが一致した住戸機2111では、CPU20が呼出コマンドに応じて住戸機リレーのリレー接点29を閉成するとともにFM復調部25aやモニタ22を起動してロビーインターホン1のカメラにおいて撮像された来訪者の映像を住戸機2のモニタ22に表示させ、さらに音声回路24cを通じてスピーカ21bから呼出音を送出させる。そして、ロビーインターホン1からの呼出に応答して居住者が住戸機2111の応答釦(図示せず)を押操作すると、住戸機2111のCPU20が音声回路24cを動作させて通話可能な状態にするとともに幹線電源重畳回路200によって幹線L111における信号線Ldの線間に直流電圧を印加する。経路切替器102の幹線リレー駆動部102Dでは、幹線L111における信号線Ldの線間に直流電圧が印加されると、一方の幹線リレー駆動部102Dにおける駆動回路102cが動作して幹線リレーの励磁コイルに励磁電流を流すことにより幹線リレーを駆動し、直流電圧が印加されていない幹線L112、すなわち、ロビーインターホン1に選択されなかった住戸機2121,…のみが分岐接続されている幹線L112における信号線Ldに挿入された幹線リレー接点101Dを開成する。一方、ロビーインターホン1に選択されなかった住戸機2112,…、2121,…では、CPU20が住戸機リレーのリレー接点29を閉成せず、また幹線電源重畳回路200によって信号線Ldの線間に直流電圧を印加しないから、ロビーインターホン1に選択された住戸機2111が分岐接続されている幹線L111においては、幹線リレー接点101Cが閉成された状態のままとなる。さらに経路切替器102では、幹線リレー駆動部102Dにおける駆動回路102cが動作し、駆動回路102cから電源重畳回路106bへの給電経路に挿入されたリレーが駆動されるから、給電リレー接点107Cが閉成して駆動回路102cから電源が供給されて電源重畳回路106bが動作して幹線L11における信号線Ldの線間に直流電圧が印加される。尚、経路切替器103では何れの幹線L121,L122における信号線Ldにも直流電圧が印加されないため、信号線Ldに挿入されている幹線リレー接点101C,101Dは何れも閉成状態のままとなり、電源重畳回路106bも動作しないから幹線L12における信号線Ldの線間に直流電圧は印加されない。
そして、経路切替器101では、経路切替器102の電源重畳回路106bによって幹線L11における信号線Ldの線間に直流電圧が印加されるため、幹線リレー駆動部102Dにおける駆動回路102cが動作して幹線リレーを駆動し、直流電圧が印加されていない幹線L12における信号線Ldに挿入された幹線リレー接点101Dを開成するとともに、駆動回路102cから電源重畳回路106bへの給電経路に挿入されたリレーが駆動されて給電リレー接点107Cが閉成され、駆動回路102cから電源が供給されて電源重畳回路106bが動作し、幹線L10における信号線Ldの線間に直流電圧が印加される。また、経路切替器103では電源重畳回路106bが動作しないために幹線L12における信号線Ldの線間に直流電圧が印加されないから、幹線L11においては幹線リレー接点101Cが閉成された状態のままとなる。
上述した動作により、経路切替器102においては2系統の幹線L111,L112のうちでロビーインターホン1に選択された住戸機2111が分岐接続された幹線L111のみが経路切替器101側の幹線L11と接続され、他方の幹線L112が経路切替器101側の幹線L11と切り離され、さらに経路切替器101においては2系統の幹線L11,L12のうちで経路切替器102と接続された幹線L11のみが幹線制御装置3側の幹線L10と接続され、経路切替器103と接続された他方の幹線L12が幹線制御装置3側の幹線L10と切り離される。その結果、ロビーインターホン1と選択された住戸機2111との間でのみ通話が可能になるとともに、選択された住戸機2111でのみロビーインターホン1のカメラで撮像された来訪者をモニタ22に表示することが可能になる。
次に一斉放送時の動作について説明する。一斉放送を開始するに当たって全ての住戸機2に対して通話制御装置5から制御線Lcを介して制御信号(一斉放送開始コマンド)が伝送され、この一斉放送開始コマンドに応じて全ての住戸機2のCPU20が住戸機リレーのリレー接点29を閉成する。但し、何れの住戸機2においてもCPU20は幹線電源重畳回路200による信号線Ldの線間への直流電圧印加を行わない。したがって、経路切替器102,103の幹線リレー駆動部102C,102Dでは、幹線L111,L112,L121,L122における信号線Ldの線間に直流電圧が印加されないことから、2つの幹線リレー駆動部102C,102Dにおける駆動回路102cが双方とも動作せず、各幹線L111,L112,L121,L122における信号線Ldに挿入された幹線リレー接点101C,101Dは双方とも閉成した状態に維持されるとともに、電源重畳回路106bも動作しないから何れの幹線L11,L12における信号線Ldの線間にも直流電圧が印加されない。故に、経路切替器101の幹線リレー駆動部102C,102Dでは、幹線L11,L12における信号線Ldの線間に直流電圧が印加されないことから、2つの幹線リレー駆動部102C,102Dにおける駆動回路102cが双方とも動作せず、各幹線L11,L12における信号線Ldに挿入された幹線リレー接点101C,101Dは双方とも閉成した状態に維持される。
そして、全ての住戸機2に対して通話制御装置5から制御線Lcを介して制御信号(一斉放送終了コマンド)が伝送され、この一斉放送終了コマンドに応じて全ての住戸機2のCPU20が住戸機リレーのリレー接点29を開成することによって、一斉放送を終了する。
上述した動作により、2台の経路切替器102,103においては各2系統の幹線L111,L112、L121、L122が何れも経路切替器101を介して幹線制御装置3側の幹線L10と接続されるから、一斉放送機器から通話制御装置5を介して通話線Laに送出される一斉放送用の音声信号が各幹線L111,L112,L121,L122にそれぞれ分岐接続されている全ての住戸機2に伝送されてスピーカ21bから出力される。
而して、本実施形態の経路切替器10においては、分配された2つの系統の各幹線L1について住戸機2の幹線電源重畳回路200によって信号線Ldの線間に印加される直流電圧を検出したときに、各系統の幹線L1において幹線リレー接点101C,101Dよりもロビーインターホン1側の信号線Ldの線間に直流電圧を印加する第2の幹線電源供給手段を備えており、個別通話時に各系統の幹線L11,L12における信号線Ldの線間に第2の幹線電源供給手段により直流電圧が印加可能であるから、ロビーインターホン1と経路切替器102,103との間に別の経路切替器101を挿入し、図示例のように複数台の経路切替器101,102,103を多段に接続する場合においても個別通話の対象外である住戸機2が分岐接続された幹線L1が切り離され、信号線Ldを介して伝送される音声信号の減衰を抑制することができる。
尚、本実施形態においても全ての住戸機2を一斉放送の対象とする必要はなく、例えば、一斉放送の内容に応じて対象とする住戸機2を限定してもよい。
(実施形態6)
本実施形態は、実施形態5と同様に複数台の経路切替器10を多段に接続できるようにした点に特徴がある。但し、基本構成は実施形態4と共通であるから、共通の構成要素には同一の符号を付して説明を省略する。
本実施形態の経路切替器10では、図6に示すように2つの系統の幹線L11,L12における信号線Ldに挿入された直流電圧阻止用コンデンサ103C,103Dの両端に常開型の短絡リレー接点108C,108Dが並列接続されている。一方の短絡リレー接点108Cは、幹線リレー駆動部102Dにおける駆動回路102cが動作し、短絡リレー(図示せず)の励磁コイルに励磁電流を流すことにより短絡リレーを駆動することで閉成され、他方の短絡リレー接点108Dは、幹線リレー駆動部102Cにおける駆動回路102cが動作し、短絡リレー(図示せず)の励磁コイルに励磁電流を流すことにより短絡リレーを駆動することで閉成される。そして、短絡リレー接点108C,108Dが閉成されると直流電圧阻止用コンデンサ103C,103Dの両端が短絡リレー接点108C,108Dを介して短絡され、信号線Ldの線間に印加された直流電圧が直流電圧阻止用コンデンサ103C,103Dで阻止されなくなる。
次に本実施形態の要部の動作を説明する。まず、ロビーインターホン1と、ロビーインターホン1で選択された1台の住戸機2(例えば、住戸機211)との間で個別通話する場合について説明する。ロビーインターホン1で選択された住戸機211に対して通話制御装置5から制御線Lcを介して制御信号(呼出コマンド)が伝送され、この制御信号に含まれるアドレスが一致した住戸機211では、CPU20が呼出コマンドに応じて住戸機リレーのリレー接点29を閉成するとともにFM復調部25aやモニタ22を起動してロビーインターホン1のカメラにおいて撮像された来訪者の映像を住戸機2のモニタ22に表示させ、さらに音声回路24cを通じてスピーカ21bから呼出音を送出させる。そして、ロビーインターホン1からの呼出に応答して居住者が住戸機211の応答釦(図示せず)を押操作すると、住戸機211のCPU20が音声回路24cを動作させて通話可能な状態にするとともに幹線電源重畳回路200によって幹線L11における信号線Ldの線間に直流電圧を印加する。経路切替器10の幹線リレー駆動部102Dでは、幹線L11における信号線Ldの線間に直流電圧が印加されると駆動回路102cが動作して幹線リレーの励磁コイルに励磁電流を流すことにより幹線リレーを駆動し、直流電圧が印加されていない幹線L12、すなわち、ロビーインターホン1に選択されなかった住戸機221,…のみが分岐接続されている幹線L12における信号線Ldに挿入された幹線リレー接点101Dを開成するとともに、駆動回路102cによって短絡リレーの励磁コイルに励磁電流を流すことにより短絡リレーを駆動し、直流電圧が印加されている幹線L11、すなわち、ロビーインターホン1に選択された住戸機211が分岐接続されている幹線L11における信号線Ldに挿入された直流電圧阻止用コンデンサ103Cの両端に接続された短絡リレー接点108Cを閉成する。
一方、ロビーインターホン1に選択されなかった住戸機212,…、221,…では、CPU20が住戸機リレーのリレー接点29を閉成せず、また幹線電源重畳回路200によって信号線Ldの線間に直流電圧を印加しないから、ロビーインターホン1に選択された住戸機21が分岐接続されている幹線L11においては、幹線リレー接点101Cが閉成された状態のままとなり、短絡リレー接点108Dが開成された状態のままとなる。このとき、幹線リレー駆動部102Dが動作して幹線リレー接点101Dが開成されるまでの期間においては直流電圧阻止用コンデンサ103Cにより、住戸機21の幹線電源重畳回路200によって信号線Ldの線間に印加された直流電圧を阻止しているため、常閉型の幹線リレー接点101Dを介して他方の幹線リレー駆動部102Cに直流電圧が印加されることがなく、幹線L11における信号線Ldに挿入された幹線リレー接点101Cが誤って開成することを防ぐことができる。
上述した動作により、経路切替器10においては2系統の幹線L11,L12のうちでロビーインターホン1に選択された住戸機211が分岐接続された幹線L11のみが幹線制御装置3側の幹線L10と接続され、他方の幹線L12が幹線制御装置3側の幹線L10と切り離されるから、ロビーインターホン1と選択された住戸機211との間でのみ通話が可能になるとともに、選択された住戸機211でのみロビーインターホン1のカメラで撮像された来訪者をモニタ22に表示することが可能になる。また、住戸機211によって信号線Ldの線間に直流電圧が印加されている幹線L11においては、直流電圧阻止用コンデンサ103Cの両端が短絡リレー接点108Cを介して短絡されるため、信号線Ldの線間に印加された直流電圧が直流電圧阻止用コンデンサ103Cに阻止されずに分配前の幹線L10における信号線Ldの線間にも印加されることになる。
次に一斉放送時の動作について説明する。一斉放送を開始するに当たって全ての住戸機2に対して通話制御装置5から制御線Lcを介して制御信号(一斉放送開始コマンド)が伝送され、この一斉放送開始コマンドに応じて全ての住戸機2のCPU20が住戸機リレーのリレー接点29を閉成する。但し、何れの住戸機2においてもCPU20は幹線電源重畳回路200による信号線Ldの線間への直流電圧印加を行わない。したがって、経路切替器10の幹線リレー駆動部102C,102Dでは、幹線L11,L12における信号線Ldの線間に直流電圧が印加されないことから、2つの幹線リレー駆動部102C,102Dにおける駆動回路102cが双方とも動作せず、各幹線L11,L12における信号線Ldに挿入された幹線リレー接点101C,101Dが閉成した状態に維持されるとともに短絡リレー接点108C,108Dが開成した状態に維持される。
そして、全ての住戸機2に対して通話制御装置5から制御線Lcを介して制御信号(一斉放送終了コマンド)が伝送され、この一斉放送終了コマンドに応じて全ての住戸機2のCPU20が住戸機リレーのリレー接点29を開成することによって、一斉放送を終了する。
上述した動作により、経路切替器10においては2系統の幹線L11,L12が双方とも幹線制御装置3側の幹線L10と接続されるから、一斉放送機器から通話制御装置5を介して通話線Laに送出される一斉放送用の音声信号が各幹線L11,L12にそれぞれ分岐接続されている全ての住戸機2に伝送されてスピーカ21bから出力される。
而して、本実施形態の経路切替器10においては、分配された2つの系統の各幹線L11,L12について住戸機2の幹線電源重畳回路200によって信号線Ldの線間に印加される直流電圧を検出したときに、直流電圧が検出された幹線L11又はL12における信号線Ldに挿入された直流電圧阻止用コンデンサ103C又は103Dの両端に接続された短絡リレー接点108C又は108Dを閉成しているから、個別通話時において分配後の幹線L11又はL12における信号線Ldの線間に印加された直流電圧を、分配前の幹線L10における信号線Ldの線間に印加することができる。その結果、実施形態5と同様に複数台の経路切替器10を多段に接続する場合においても個別通話の対象外である住戸機2が分岐接続された幹線L1を切り離し、信号線Ldを介して伝送される音声信号の減衰を抑制することができる。しかも、実施形態5のように経路切替器10に第2の幹線電源供給手段を設ける場合に比較して構成が簡素化できるという利点もある。
尚、本実施形態においても全ての住戸機2を一斉放送の対象とする必要はなく、例えば、一斉放送の内容に応じて対象とする住戸機2を限定してもよい。
(実施形態7)
本実施形態は、図7に示すように経路切替器10における幹線リレー接点101A,101Bを切替型とした点に特徴があり、その他の基本構成は実施形態1と共通であるから、共通の構成要素には同一の符号を付して説明を省略する。
本実施形態に用いる経路切替器10は、図7に示すように幹線L10から分配された2系統の各幹線L11,L12における信号線Ldに切替型の幹線リレー接点101E,101Fがそれぞれ挿入されている。幹線リレー接点101E,101Fは、各幹線L11,L12の幹線L10側に設けられた共通接点101aと、共通接点101aに対して常閉である常閉側切替接点101bと、共通接点101aに対して常開であって各幹線L11,L12の住戸機2側に設けられた常開側切替接点101cとからなり、互いの常閉側切替接点101bと常開側切替接点101c同士が、音声信号並びに映像信号を通過させるとともに直流電圧を阻止する直流電圧阻止用のコンデンサ103E,103Fを介してそれぞれ接続されて構成されている。そして、これら2つの幹線リレー接点101E、101Fは、幹線リレー駆動部102E,102Fにより幹線リレー(図示せず)を駆動することで共通接点101aが常閉側切替接点101bから常開側切替接点101cに切替接続されるものであって、幹線リレー駆動部102E,102Fが幹線リレーを駆動していない状態では、ロビーインターホン1側の幹線L10と一方の系統の幹線L11とが幹線リレー接点101F及びコンデンサ103Fを介して接続されるとともにロビーインターホン1側の幹線L10と他方の系統の幹線L12とが幹線リレー接点101E及びコンデンサ103Eを介して接続された状態にあり、幹線リレー駆動部102E,102Fが幹線リレーを駆動している状態では、ロビーインターホン1側の幹線L10と一方の系統の幹線L11とが幹線リレー接点101Eを介して接続されるとともにロビーインターホン1側の幹線L10と他方の系統の幹線L12とが幹線リレー接点101Fを介して接続された状態にある。尚、幹線リレー駆動部102E,102Fは何れも実施形態1における幹線リレー駆動部102A,102Bと同構成であるから説明は省略する。
次に本実施形態の要部の動作を説明する。まず、ロビーインターホン1と、ロビーインターホン1で選択された1台の住戸機2(例えば、住戸機211)との間で個別通話する場合について説明する。ロビーインターホン1で選択された住戸機211に対して通話制御装置5から制御線Lcを介して制御信号(呼出コマンド)が伝送され、この制御信号に含まれるアドレスが一致した住戸機211では、CPU20が呼出コマンドに応じて住戸機リレーのリレー接点29を閉成するとともにFM復調部25aやモニタ22を起動してロビーインターホン1のカメラにおいて撮像された来訪者の映像を住戸機2のモニタ22に表示させ、さらに音声回路24cを通じてスピーカ21bから呼出音を送出させる。そして、ロビーインターホン1からの呼出に応答して居住者が住戸機211の応答釦(図示せず)を押操作すると、住戸機211のCPU20が音声回路24cを動作させて通話可能な状態にするとともに幹線電源重畳回路200によって幹線L11における信号線Ldの線間に直流電圧を印加する。経路切替器10の幹線リレー駆動部102Eでは、幹線L11における信号線Ldの線間に直流電圧が印加されると駆動回路102cが動作して幹線リレーの励磁コイルに励磁電流を流すことにより幹線リレーを駆動し、幹線L11に挿入されている幹線リレー接点101Eにおいて共通接点101aを常閉側切替接点101bから常開側切替接点101cに切替接続する。一方、ロビーインターホン1に選択されなかった住戸機212,…、221,…では、CPU20が住戸機リレーのリレー接点29を閉成せず、また幹線電源重畳回路200によって信号線Ldの線間に直流電圧を印加しないから、ロビーインターホン1に選択されなかった住戸機221,…のみが分岐接続されている幹線L12に挿入されている幹線リレー接点101Fにおいては共通接点101aが常閉側切替接点101bに接続された状態のままとなる。このとき、経路切替器10では幹線リレー接点101Eの常開側切替接点101cと幹線リレー接点101Fの常閉側切替接点101bとの間に挿入されたコンデンサ103Fにより、住戸機211の幹線電源重畳回路200によって信号線Ldの線間に印加された直流電圧を阻止しているため、幹線リレー接点101Fを介して他方の幹線リレー駆動部102Fに直流電圧が印加されることがなく、幹線L12における信号線Ldに挿入された幹線リレー接点101Fが誤って切り替えられることを防いでいる。
上述した動作により、経路切替器10においては2系統の幹線L11,L12のうちでロビーインターホン1に選択された住戸機211が分岐接続された幹線L11のみがロビーインターホン1側の幹線L10と接続され、他方の幹線L12がロビーインターホン1側の幹線L10と切り離されるから、ロビーインターホン1と選択された住戸機211との間でのみ通話が可能になるとともに、選択された住戸機211でのみロビーインターホン1のカメラで撮像された来訪者をモニタ22に表示することが可能になる。
次に一斉放送時の動作について説明する。一斉放送を開始するに当たって全ての住戸機2に対して通話制御装置5から制御線Lcを介して制御信号(一斉放送開始コマンド)が伝送され、この一斉放送開始コマンドに応じて全ての住戸機2のCPU20が住戸機リレーのリレー接点29を閉成する。但し、何れの住戸機2においてもCPU20は幹線電源重畳回路200による信号線Ldの線間への直流電圧印加を行わない。したがって、経路切替器10の幹線リレー駆動部102E,102Fでは、幹線L11,L12における信号線Ldの線間に直流電圧が印加されないことから、2つの幹線リレー駆動部102E,102Fにおける駆動回路102cが双方とも動作せず、各幹線L11,L12における信号線Ldに挿入された幹線リレー接点101E,101Fは双方とも共通接点101aが常閉側切替接点101bに接続された状態に維持される。
そして、全ての住戸機2に対して通話制御装置5から制御線Lcを介して制御信号(一斉放送終了コマンド)が伝送され、この一斉放送終了コマンドに応じて全ての住戸機2のCPU20が住戸機リレーのリレー接点29を開成することによって、一斉放送を終了する。
上述した動作により、経路切替器10においては2系統の幹線L11,L12が双方ともロビーインターホン1側の幹線L10と接続されるから、一斉放送機器から通話制御装置5を介して通話線Laに送出される一斉放送用の音声信号が各幹線L11,L12にそれぞれ分岐接続されている全ての住戸機2に伝送されてスピーカ21bから出力される。このとき、経路切替器10では幹線リレー接点101E,101Fにおける共通接点101aが常閉側切替接点101bに接続されて各幹線L11,L12が幹線L10と接続された状態にあるため、何れの住戸機2からも信号線Ldの線間に直流電圧を印加する必要がないから、一斉放送時に信号線Ldの線間に印加される直流電圧の衝突も生じない。
而して、本実施形態の経路切替器10においては、分配された2つの系統の各幹線L11,L12について住戸機2の幹線電源重畳回路200によって信号線Ldの線間に印加される直流電圧を検出したときに、直流電圧が検出された幹線L11又はL12における信号線Ldに挿入された直流電圧阻止用コンデンサ103C又は103Dの両端が幹線リレー接点101E又は101Fの共通接点101a及び常開側切替接点101cを介して短絡されるから、個別通話時において分配後の幹線L11又はL12における信号線Ldの線間に印加された直流電圧を、分配前の幹線L10における信号線Ldの線間に印加することができる。その結果、実施形態5と同様に複数台の経路切替器10を多段に接続する場合においても個別通話の対象外である住戸機2が分岐接続された幹線L1を切り離し、信号線Ldを介して伝送される音声信号の減衰を抑制することができる。しかも、実施形態5のように経路切替器10に第2の幹線電源供給手段を設ける場合に比較して構成が簡素化できるという利点もある。
尚、本実施形態においても全ての住戸機2を一斉放送の対象とする必要はなく、例えば、一斉放送の内容に応じて対象とする住戸機2を限定してもよい。
(実施形態8)
本実施形態は、図8に示すように一斉放送機器である通話制御装置5が個別通話時に信号線Ldに判別信号を重畳させ、経路切替器10では、信号線Ldの線間に直流電圧が印加されるとともに信号線Ldに重畳された判別信号を検出したときに幹線リレー接点101C又は101Dを開成するようにした点に特徴がある。但し、本実施形態の基本構成は実施形態4と共通であるから、共通の構成要素には同一の符号を付して説明を省略する。
本実施形態の通話制御装置5は一斉放送機器を兼ねており、実施形態3と同様に音声を入出力するマイクロホン51a及びスピーカ51bを備え、マイクロホン51aとスピーカ51bとはそれぞれ増幅器54a,54bを介して音声回路54cに接続され、ロビーインターホン1及び住戸機2との間で通話線Laを通して音声信号を授受することができるようになっている。また通話制御装置5には、音声信号の周波数及び映像信号の搬送波周波数の何れとも異なる周波数を有した判別信号を発生する判別信号発生回路57が設けられており、この判別信号発生回路57が発生する判別信号を通話線Laに重畳している。尚、判別信号発生回路57は、制御信号送受信回路52で制御線Lcを介して呼出コマンドの制御信号を伝送する際にCPU50によって動作させられるものであり、言い換えれば、個別通話時にのみ判別信号を通話線Laに重畳するのである。そして、通話制御装置5において通話線Laに重畳された判別信号は、幹線制御装置3を介して信号線Ldにも重畳されることになる。
一方、経路切替器10の幹線リレー駆動部102C,102Dは、インダクタ102a、ダイオードブリッジ102b、駆動回路102cに加えて信号線Ldに重畳された判別信号を検出する判別信号検出回路102eを有している。この判別信号検出回路102eは、例えば判別信号が有する周波数を通過させるとともに音声信号の周波数及びFM映像信号の搬送波周波数を通過させないバンドパスフィルタを有し、バンドパスフィルタを通過した周波数の信号振幅が所定のしきい値を超えたときに判別信号を検出し、判別信号を検出したときに駆動回路102cから励磁コイルへの給電路を閉じて幹線リレーを駆動し、直流電圧が印加されていない信号線Ldに挿入されている幹線リレー接点101C(又は101D)を開成させるものである。
次に本実施形態の要部の動作を説明する。まず、ロビーインターホン1と、ロビーインターホン1で選択された1台の住戸機2(例えば、住戸機211)との間で個別通話する場合について説明する。ロビーインターホン1で選択された住戸機211に対して通話制御装置5から制御線Lcを介して制御信号(呼出コマンド)が伝送され、この制御信号に含まれるアドレスが一致した住戸機211では、CPU20が呼出コマンドに応じて住戸機リレーのリレー接点29を閉成するとともにFM復調部25aやモニタ22を起動してロビーインターホン1のカメラにおいて撮像された来訪者の映像を住戸機2のモニタ22に表示させ、さらに音声回路24cを通じてスピーカ21bから呼出音を送出させる。そして、ロビーインターホン1からの呼出に応答して居住者が住戸機211の応答釦(図示せず)を押操作すると、住戸機211のCPU20が音声回路24cを動作させて通話可能な状態にするとともに幹線電源重畳回路200によって幹線L11における信号線Ldの線間に直流電圧を印加する。また通話制御装置5では、CPU50が制御信号送受信回路52により制御線Lcを介して呼出コマンドの制御信号を伝送する際に判別信号発生回路57を動作させて通話線Laに判別信号を重畳させる。経路切替器10の幹線リレー駆動部102Dでは、幹線L11における信号線Ldの線間に直流電圧が印加されると駆動回路102cが幹線リレーの励磁コイルに励磁電流を流すように動作し、信号線Ldに重畳された判別信号を検出した判別信号検出回路102eが励磁電流の給電路を閉じることにより幹線リレーを駆動し、直流電圧が印加されていない幹線L12、すなわち、ロビーインターホン1に選択されなかった住戸機221,…のみが分岐接続されている幹線L12における信号線Ldに挿入された幹線リレー接点101Dを開成する。一方、ロビーインターホン1に選択されなかった住戸機212,…、221,…では、CPU20が住戸機リレーのリレー接点29を閉成せず、また幹線電源重畳回路200によって信号線Ldの線間に直流電圧を印加しないから、ロビーインターホン1に選択された住戸機211が分岐接続されている幹線L11においては、幹線リレー接点101Cが閉成された状態のままとなる。
上述した動作により、経路切替器10においては2系統の幹線L11,L12のうちでロビーインターホン1に選択された住戸機211が分岐接続された幹線L11のみが幹線制御装置3側の幹線L10と接続され、他方の幹線L12が幹線制御装置3側の幹線L10と切り離されるから、ロビーインターホン1と選択された住戸機211との間でのみ通話が可能になるとともに、選択された住戸機211でのみロビーインターホン1のカメラで撮像された来訪者をモニタ22に表示することが可能になる。
次に一斉放送時の動作について説明する。一斉放送を開始するに当たって全ての住戸機2に対して通話制御装置5から制御線Lcを介して制御信号(一斉放送開始コマンド)が伝送され、この一斉放送開始コマンドに応じて全ての住戸機2のCPU20が住戸機リレーのリレー接点29を閉成する。但し、何れの住戸機2においてもCPU20は幹線電源重畳回路200による信号線Ldの線間への直流電圧印加を行わない。したがって、経路切替器10の幹線リレー駆動部102C,102Dでは、幹線L11,L12における信号線Ldの線間に直流電圧が印加されないことから、2つの幹線リレー駆動部102C,102Dにおける駆動回路102cが双方とも動作せず、各幹線L11,L12における信号線Ldに挿入された幹線リレー接点101C,101Dは双方とも閉成した状態に維持される。
そして、全ての住戸機2に対して通話制御装置5から制御線Lcを介して制御信号(一斉放送終了コマンド)が伝送され、この一斉放送終了コマンドに応じて全ての住戸機2のCPU20が住戸機リレーのリレー接点29を開成することによって、一斉放送を終了する。
上述した動作により、経路切替器10においては2系統の幹線L11,L12が双方とも幹線制御装置3側の幹線L10と接続されるから、通話制御装置5から通話線Laに送出される一斉放送用の音声信号が各幹線L11,L12にそれぞれ分岐接続されている全ての住戸機2に伝送されてスピーカ21bから出力される。
而して本実施形態によれば、ロビーインターホン1から選択された1台の住戸機2が信号線Ldの線間に直流電圧を印加し且つ通話制御装置5から信号線Ld(通話線La)に重畳する判別信号を判別信号検出回路102eにより検出しているときに経路切替器10の幹線リレー駆動部102C又は102Dが幹線リレー接点101C又は101Dを開成するため、経路切替器10における個別通話への経路の切替が確実に行えるという利点がある。
尚、本実施形態においても全ての住戸機2を一斉放送の対象とする必要はなく、例えば、一斉放送の内容に応じて対象とする住戸機2を限定してもよい。
(実施形態9)
本実施形態は、図9に示すように個別通話時に信号線Ldを介して伝送されるFM映像信号の搬送波を検出する搬送波検出手段を経路切替器10の幹線リレー駆動部102C,102Dに設け、信号線Ldの線間に直流電圧が印加されるとともに信号線Ldを介して伝送されるFM映像信号の搬送波を検出したときに幹線リレー接点101C又は101Dを開成するようにした点に特徴がある。但し、本実施形態の基本構成は実施形態4と共通であるから、共通の構成要素には同一の符号を付して説明を省略する。
本実施形態における経路切替器10の幹線リレー駆動部102C,102Dは、インダクタ102a、ダイオードブリッジ102b、駆動回路102cに加えて信号線Ldを介して伝送されるFM映像信号の搬送波(キャリア)を検出するキャリア検出回路102fを有している。このキャリア検出回路102fは、例えばFM映像信号の搬送波が有する周波数を通過させるバンドパスフィルタを有し、バンドパスフィルタを通過した周波数の信号振幅が所定のしきい値を超えたときにキャリアを検出し、キャリアを検出したときに駆動回路102cから励磁コイルへの給電路を閉じて幹線リレーを駆動し、直流電圧が印加されていない信号線Ldに挿入されている幹線リレー接点101C(又は101D)を開成させるものである。
次に本実施形態の要部の動作を説明する。まず、ロビーインターホン1と、ロビーインターホン1で選択された1台の住戸機2(例えば、住戸機211)との間で個別通話する場合について説明する。ロビーインターホン1で選択された住戸機211に対して通話制御装置5から制御線Lcを介して制御信号(呼出コマンド)が伝送され、この制御信号に含まれるアドレスが一致した住戸機211では、CPU20が呼出コマンドに応じて住戸機リレーのリレー接点29を閉成するとともにFM復調部25aやモニタ22を起動してロビーインターホン1のカメラにおいて撮像された来訪者の映像を住戸機2のモニタ22に表示させ、さらに音声回路24cを通じてスピーカ21bから呼出音を送出させる。そして、ロビーインターホン1からの呼出に応答して居住者が住戸機211の応答釦(図示せず)を押操作すると、住戸機211のCPU20が音声回路24cを動作させて通話可能な状態にするとともに幹線電源重畳回路200によって幹線L11における信号線Ldの線間に直流電圧を印加する。経路切替器10の幹線リレー駆動部102Dでは、幹線L11における信号線Ldの線間に直流電圧が印加されると駆動回路102cが幹線リレーの励磁コイルに励磁電流を流すように動作し、信号線Ldを介して伝送されるFM映像信号の搬送波(キャリア)を検出したキャリア検出回路102fが励磁電流の給電路を閉じることにより幹線リレーを駆動し、直流電圧が印加されていない幹線L12、すなわち、ロビーインターホン1に選択されなかった住戸機221,…のみが分岐接続されている幹線L12における信号線Ldに挿入された幹線リレー接点101Dを開成する。一方、ロビーインターホン1に選択されなかった住戸機212,…、221,…では、CPU20が住戸機リレーのリレー接点29を閉成せず、また幹線電源重畳回路200によって信号線Ldの線間に直流電圧を印加しないから、ロビーインターホン1に選択された住戸機211が分岐接続されている幹線L11においては、幹線リレー接点101Cが閉成された状態のままとなる。
上述した動作により、経路切替器10においては2系統の幹線L11,L12のうちでロビーインターホン1に選択された住戸機211が分岐接続された幹線L11のみが幹線制御装置3側の幹線L10と接続され、他方の幹線L12が幹線制御装置3側の幹線L10と切り離されるから、ロビーインターホン1と選択された住戸機211との間でのみ通話が可能になるとともに、選択された住戸機211でのみロビーインターホン1のカメラで撮像された来訪者をモニタ22に表示することが可能になる。
次に一斉放送時の動作について説明する。一斉放送を開始するに当たって全ての住戸機2に対して通話制御装置5から制御線Lcを介して制御信号(一斉放送開始コマンド)が伝送され、この一斉放送開始コマンドに応じて全ての住戸機2のCPU20が住戸機リレーのリレー接点29を閉成する。但し、何れの住戸機2においてもCPU20は幹線電源重畳回路200による信号線Ldの線間への直流電圧印加を行わない。したがって、経路切替器10の幹線リレー駆動部102C,102Dでは、幹線L11,L12における信号線Ldの線間に直流電圧が印加されないことから、2つの幹線リレー駆動部102C,102Dにおける駆動回路102cが双方とも動作せず、各幹線L11,L12における信号線Ldに挿入された幹線リレー接点101C,101Dは双方とも閉成した状態に維持される。
そして、全ての住戸機2に対して通話制御装置5から制御線Lcを介して制御信号(一斉放送終了コマンド)が伝送され、この一斉放送終了コマンドに応じて全ての住戸機2のCPU20が住戸機リレーのリレー接点29を開成することによって、一斉放送を終了する。
上述した動作により、経路切替器10においては2系統の幹線L11,L12が双方とも幹線制御装置3側の幹線L10と接続されるから、一斉放送機器から通話制御装置5を介して通話線Laに送出される一斉放送用の音声信号が各幹線L11,L12にそれぞれ分岐接続されている全ての住戸機2に伝送されてスピーカ21bから出力される。
而して本実施形態によれば、ロビーインターホン1から選択された1台の住戸機2が信号線Ldの線間に直流電圧を印加し且つ信号線Ldを介して伝送されるFM映像信号の搬送波をキャリア検出回路102fにより検出しているときに経路切替器10の幹線リレー駆動部102C又は102Dが幹線リレー接点101C又は101Dを開成するため、経路切替器10における個別通話への経路の切替が確実に行えるという利点がある。しかも、個別通話か否かの判断をFM映像信号の搬送波を検出することで行っているため、実施形態8のように判別信号を信号線Ldに重畳させる判別信号発生回路102eを通話制御装置5に設ける必要がないからシステム構成が簡素化できるという利点もある。
尚、本実施形態においても全ての住戸機2を一斉放送の対象とする必要はなく、例えば、一斉放送の内容に応じて対象とする住戸機2を限定してもよい。