従来の技術として説明したように、伝送線路のうち制御線Lcは共用部装置(ロビーインターホン)1が相手先の住戸機2を選択するための制御信号を伝送するから、ロビーインターホン1および住戸機2において制御線Lcに接続される回路は常時動作させておくことが必要である。つまり、ロビーインターホン1が住戸機2を選択するためのアドレスを含む制御信号は、すべての住戸機2に伝送されるから、すべての住戸機2において制御信号送受信回路26およびCPU20は常時作動する。これに対して、音声信号および映像信号に対する処理は住戸機2の選択後に行えばよいから、音声信号と映像信号とは一括して扱うことができ、しかも、音声信号と映像信号とは周波数帯域が異なるから(音声信号に対して映像信号は周波数が十分に高い)、周波数多重化の技術によって多重化することができる。
そこで、以下に説明する実施形態では、ロビーインターホン1と幹線制御装置3との間は図13に示した従来構成と同様に3対のペア線からなる伝送線路を介して接続するが、幹線制御装置3において音声信号と映像信号とを多重化することにより、幹線制御装置3から先においては伝送線路に用いる線数を従来構成よりも低減した例について説明する。なお、制御信号はロビーインターホン1から住戸機2の呼出に用いるだけではなく、一斉放送の開始を指示する目的にも用いられる。この種の制御信号にはベースバンド信号を用いることもあり、ベースバンド信号は周波数帯域が広く、音声信号や映像信号との分離が困難であるから、このことからも音声信号および映像信号と制御信号とを各別に伝送することが伝送品質の点から必要になる。
(実施形態1)
本実施形態は、図1に示すように、ロビーインターホン1に対して3対のペア線からなる伝送線路を介して幹線制御装置3を接続し、さらに幹線制御装置3と複数台の住戸機2とを2対のペア線からなる伝送線路を介して接続したものである(但し、同図では制御線Lcを省略している)。2対のペア線からなる伝送線路は、図13に示した従来構成と同様にロビーインターホン1に接続される幹線L1と、住戸機2に接続される住戸別線L2とからなり、幹線L1と住戸別線L2との間には分岐器7が挿入される。図1を見ればわかるように、本実施形態の基本的な構成は図13に示した従来構成と同様であって、図1において図13に示した従来構成と同機能の構成には同符号を付してある。
本実施形態と従来構成との主な相違点は、図13に示した従来構成における伝送線路では通話線Laと映像線Lbと制御線Lcとの3対のペア線を用いていたのに対して、本実施形態では、ロビーインターホン1と幹線制御装置3の間の伝送線路は同じく3対のペア線を用いるが、幹線制御装置3から住戸機2までの伝送線路には信号線Ldと制御線Lc(図示せず)との2対のペア線を用いている点である。但し、ロビーインターホン1と幹線制御装置3との間では、図13に示した従来構成と同様に通話制御装置5を介して通話線La及び制御線Lc(図示せず)が接続されている。
信号線Ldは音声信号と映像信号とをともに伝送するものであって、音声信号と映像信号との両方で信号線Ldを用いるために、幹線制御装置3に及び住戸機2にはそれぞれ多重分離回路201,34A,34Bを設けている。住戸機2の多重分離回路201は、音声回路24cと信号線Ldとの間に挿入される低周波通過部201aと、結合トランス25cと信号線Ldとの間に挿入される高周波通過部201bとからなる。低周波通過部201aは音声信号伝送帯域に対して低インピーダンスであって映像信号帯域に対して高インピーダンスのものを用い、高周波通過部201bは音声信号伝送帯域に対して高インピーダンスであって映像信号伝送帯域に対して低インピーダンスのものを用いる。図示例では、低周波通過部201aとしてインダクタを用い、高周波通過部201bとしてコンデンサを用いている。また、幹線制御装置3の多重分離回路34A,34Bは、音声信号伝送帯域に対して低インピーダンスであって映像信号帯域に対して高インピーダンスとなるインダクタを、信号線Ldが接続された分配回路31cの2次側と通話線Laとの間にそれぞれ挿入して構成される。
また本実施形態における幹線制御装置3は、多重分離回路34A,34Bと分配回路31cの2次側との間にそれぞれ挿入された常閉型の2つの幹線リレー接点35A,35Bと、通話線Laを介して2つの系統の幹線L1における信号線Ldにそれぞれ直流電源を重畳する電源重畳回路32と、電源重畳回路32によって重畳される直流電源によりループ回路(後述する)を介して信号線Ldに流れる直流電流を各別に検出する電流検出回路36と、電流検出回路36で検出された信号線Ldの直流電流検出値が所定のしきい値を超えていれば幹線リレー(図示せず)を駆動することによりしきい値を超える直流電流が検出されていない信号線Ldに接続されている幹線リレー接点35A又は35Bを開成する幹線切替制御回路37とを備えている。ここで、幹線制御装置3においては2線の通話線Laの一方がグランドに接続されている。このように本実施形態では、幹線リレー接点35A,35B並びに幹線リレーが幹線スイッチ要素に相当し、電流検出回路36及び幹線切替制御回路37が幹線スイッチ要素駆動手段に相当する。
一方、住戸機2には、住戸別線2における信号線Ldの線間を閉結する閉結スイッチ200aを有したループ形成回路200が設けられており、CPU20によって閉結スイッチ200aが閉結されたときに住戸別線L2及び幹線L1における信号線Ld並びに幹線制御装置3内の通話線Laを介してループ回路が形成される。そして、このループ回路には幹線制御装置3の電源重畳回路32から重畳される直流電源によって略一定の直流電流が流れることになる。尚、ループ回路に流れる直流電流が音声回路24cに流れ込むのを阻止するため、低周波通過部201aと音声回路24cとの間における信号線Ldに直流阻止用のコンデンサ24dが挿入されている。幹線制御装置3においては、電流検出回路36がループ回路に流れる直流電流を検出するとともにその検出値が所定のしきい値を超えていれば、2系統の幹線L1のうちで直流電流を検出した方の幹線L1を示すループ回路検出信号を幹線切替制御回路37に出力し、ループ回路検出信号を受け取った幹線切替制御回路37が2系統の幹線L1における信号線Ldのうちで直流電流を検出しなかった方の幹線L1における信号線Ldと通話線Laとの間に挿入されている幹線リレー接点35A又は35Bを開成する。尚、幹線制御装置3においてもループ回路に流れる直流電流が分配回路31cの出力側に流れ込むのを阻止するため、通話線Laと2系統の幹線L11,L12における信号線Ldの接続点と分配回路31cの2次側との間にそれぞれコンデンサ31dが挿入されている。
次に本実施形態の要部の動作を説明する。但し、以下では説明を簡単にするために、幹線制御装置3を介して分配された2系統の幹線L1をそれぞれ幹線L11及び幹線L12と表記し、一方の幹線L11に分岐器7を介して分岐接続された複数台の住戸機2を住戸機211,…、他方の幹線L12に分岐器7を介して分岐接続された複数台の住戸機2を住戸機221,222,…と表記する。尚、図1は何れの住戸機2もロビーインターホン1で選択されていない状態(以下、「待機状態」と呼ぶ)を示している。
まず、ロビーインターホン1と、ロビーインターホン1で選択された1台の住戸機2(例えば、住戸機221)との間で個別通話する場合について説明する。ロビーインターホン1で選択された住戸機221に対して通話制御装置5から制御線Lcを介して制御信号(呼出コマンド)が伝送され、この制御信号に含まれるアドレスが一致した住戸機221では、CPU20が呼出コマンドに応じて住戸機リレーのリレー接点29を閉成するとともにFM復調部25aやモニタ22を起動してロビーインターホン1のカメラにおいて撮像された来訪者の映像を住戸機2のモニタ22に表示させ、さらに音声回路24cを通じてスピーカ21bから呼出音を送出させる。そして、ロビーインターホン1からの呼出に応答して居住者が住戸機221の応答釦(図示せず)を押操作すると、住戸機221のCPU20が音声回路24cを動作させて通話可能な状態にするとともにループ形成回路200の閉結スイッチ200aを閉結して住戸別線L2及び幹線L12における信号線Ld並びに幹線制御装置3内の通話線Laを介したループ回路を形成する。幹線制御装置3では、住戸機221のループ形成回路200によって形成されたループ回路に流れる直流電流を電流検出回路36で検出し、その検出値がしきい値を超えていれば幹線切替制御回路37が幹線リレーを駆動し、ループ回路が形成されていない幹線L11、すなわち、ロビーインターホン1に選択されなかった住戸機211,…のみが分岐接続されている幹線L11における信号線Ldと通話線Laとの間に挿入された幹線リレー接点35Aを開成する。一方、ロビーインターホン1に選択されなかった住戸機211,…、222,…では、CPU20が住戸機リレーのリレー接点29を閉成せず、またループ形成回路200によってループ回路が形成されないから、ロビーインターホン1に選択された住戸機221が分岐接続されている幹線L12においては、幹線リレー接点35Bが閉成された状態のままとなる(図2参照)。
上述した動作により、幹線制御装置3においては2系統の幹線L11,L12のうちでロビーインターホン1に選択された住戸機221が分岐接続された幹線L12における信号線Ldのみが通話線Laと接続され、他方の幹線L11における信号線Ldが通話線Laと切り離されるから、ロビーインターホン1と選択された住戸機221との間でのみ通話が可能になるとともに、選択された住戸機221でのみロビーインターホン1のカメラで撮像された来訪者をモニタ22に表示することが可能になる。そして、個別通話の終了時には住戸機221のCPU20が住戸機リレーのリレー接点29を開成するとともに閉結スイッチ200aを開いてループ回路を開放し、幹線制御装置3では、ループ回路が開放されて直流電流が検出されなくなると幹線切替制御回路37が幹線リレーの駆動を停止し幹線リレー接点35Aを閉成して待機状態に戻る。
次に、集合住宅の管理室に設置された一斉放送機器(例えば、いわゆる警報監視盤などのように音声入力が可能であって幹線を介して各住戸機に音声信号を送信し得る構成を備えた機器)から全ての住戸の住戸機2に対して避難誘導等のための音声を一斉に放送する場合について説明する。一斉放送を開始するに当たって全ての住戸機2に対して通話制御装置5から制御線Lcを介して制御信号(一斉放送開始コマンド)が伝送され、この一斉放送開始コマンドに応じて全ての住戸機2のCPU20が住戸機リレーのリレー接点29を閉成する。但し、何れの住戸機2においてもCPU20はループ形成回路200によるループ回路の形成を行わない。したがって、幹線制御装置3では、幹線L11,L12における信号線Ldの何れにも電流検出回路36で直流電流が検出されないことから、幹線切替制御回路37が幹線リレーを駆動せず、各幹線L11,L12における信号線Ldと通話線Laとの間に挿入された幹線リレー接点35A,35Bは双方とも閉成した状態に維持される。
そして、全ての住戸機2に対して通話制御装置5から制御線Lcを介して制御信号(一斉放送終了コマンド)が伝送され、この一斉放送終了コマンドに応じて全ての住戸機2のCPU20が住戸機リレーのリレー接点29を開成することによって、一斉放送を終了して待機状態に戻る。
上述した動作により、幹線制御装置3においては2系統の幹線L11,L12における信号線Ldが双方とも通話線Laと接続されるから、一斉放送機器から通話制御装置5を介して通話線Laに送出される一斉放送用の音声信号が各幹線L11,L12にそれぞれ分岐接続されている全ての住戸機2に伝送されてスピーカ21bから出力される。
このように本実施形態によれば、一斉放送開始を指示する制御信号(一斉放送開始コマンド)が制御線Lcを介して伝送され、各系統の幹線L11,L12において当該幹線L11,L12に分岐接続された複数台の住戸機2で住戸機リレーのリレー接点29が閉成されれば、幹線制御装置3においては全ての系統の幹線L11,L12における信号線Ldが通話線Laと接続されることとなるから、個別通話時と同じ伝送線路(信号線Ld)を使って複数台の住戸機2に向けた一斉放送が可能となる。しかも、個別通話時にはロビーインターホン1で選択された住戸機2が分岐接続されている幹線L1における信号線Ldのみが通話線Laと接続され、ロビーインターホン1で選択されなかった住戸機2のみが分岐接続されている幹線L1における信号線Ldは通話線Laと切り離されるから、個別通話時に不要な幹線L1を切り離すことで伝送線路の容量成分による音声信号の減衰を抑制することができる。
尚、本実施形態では一斉放送の対象をシステムに含まれる全ての住戸機2として説明したが、必ずしも全ての住戸機2を一斉放送の対象とする必要はなく、例えば、一斉放送の内容に応じて対象とする住戸機2を限定してもよい。
(実施形態2)
本実施形態は、図3及び図4に示すように複数台の幹線制御装置3を多段に接続できるようにした点に特徴がある。但し、基本構成は実施形態1と共通であるから、共通の構成要素には同一の符号を付して説明を省略する。
本実施形態の幹線制御装置3は、分配前の幹線L1における信号線Ldに直流電流を流すループ回路を形成する状態とループ回路が形成されない状態とを切り替える第2のループ形成回路38を備えている。第2のループ形成回路38は、分配前の幹線L1の信号線Ld(又は映像線Lb)における結合トランス31aの1次側の線間に直流阻止用のコンデンサ31eを介して挿入された閉結スイッチ38aと、電流検出回路36で検出された検出値がしきい値を超えているときに閉結スイッチ38aを閉結する駆動回路38bとで構成されている。そして本実施形態では、図3に示すようにロビーインターホン1と幹線制御装置3との間に別の幹線制御装置3を挿入して複数台の幹線制御装置3を多段に接続することで幹線L1を3系統以上に分配させるようにしている。
次に本実施形態の要部の動作を説明する。但し、以下では説明を簡単にするために、ロビーインターホン1並びに通話制御装置5に直接接続される幹線制御装置3を幹線制御装置31、幹線制御装置31で分配された幹線L11,L12に接続されてさらに2系統の幹線L1に分配する幹線制御装置3を幹線制御装置32,…、幹線制御装置32を介して幹線L11から分配された2系統の幹線をそれぞれ幹線L111及び幹線L112と表記し、各幹線L111、L112に分岐器7を介して分岐接続された複数台の住戸機2を住戸機2111,…、住戸機2121,2122,…と表記する。また本実施形態においても幹線L11,L12,L111,L112における制御線Ldの図示は省略している。
まず、ロビーインターホン1と、ロビーインターホン1で選択された1台の住戸機2(例えば、住戸機2121)との間で個別通話する場合について説明する。ロビーインターホン1で選択された住戸機2121に対して通話制御装置5から制御線Lcを介して制御信号(呼出コマンド)が伝送され、この制御信号に含まれるアドレスが一致した住戸機2121では、CPU20が呼出コマンドに応じて住戸機リレーのリレー接点29を閉成するとともにFM復調部25aやモニタ22を起動してロビーインターホン1のカメラにおいて撮像された来訪者の映像を住戸機2のモニタ22に表示させ、さらに音声回路24cを通じてスピーカ21bから呼出音を送出させる。そして、ロビーインターホン1からの呼出に応答して居住者が住戸機2121の応答釦(図示せず)を押操作すると、住戸機2121のCPU20が音声回路24cを動作させて通話可能な状態にするとともにループ形成回路200の閉結スイッチ200aを閉結してループ回路を形成する。幹線制御装置32では、住戸機2121のループ形成回路200によって形成されたループ回路に流れる直流電流を電流検出回路36で検出し、その検出値がしきい値を超えていれば幹線切替制御回路37が幹線リレーを駆動し、ループ回路が形成されていない幹線L111、すなわち、ロビーインターホン1に選択されなかった住戸機2111,…のみが分岐接続されている幹線L111における信号線Ldと通話線Laとの間に挿入された幹線リレー接点35Aを開成する。一方、ロビーインターホン1に選択されなかった住戸機2111,…、2122,…では、CPU20が住戸機リレーのリレー接点29を閉成せず、またループ形成回路200によってループ回路が形成されないから、ロビーインターホン1に選択された住戸機2121が分岐接続されている幹線L12においては、幹線リレー接点35Bが閉成された状態のままとなる。さらに幹線制御装置32では、電流検出回路36で検出された検出値がしきい値を超えていることから、駆動回路38bが閉結スイッチ38aを閉結して第2のループ形成回路38により幹線L11における信号線Ldを介したループ回路を形成する。尚、幹線L12に接続される幹線制御装置(図示せず)においては、ループ回路が形成されないために第2のループ形成回路38によってループ回路が形成されることはない。
そして、幹線制御装置31では、幹線制御装置32の第2のループ形成回路38によって幹線L11における信号線Ldを介して形成されるループ回路の直流電流を電流検出回路36で検出し、その検出値がしきい値を超えていれば幹線切替制御回路37が幹線リレーを駆動してループ回路が形成されていない幹線L12における信号線Ldと通話線Laとの間に挿入された幹線リレー接点35Bを開成するとともに、閉結スイッチ38aを閉結して第2のループ形成回路38により幹線L1における信号線Ld(図示例では通話線La及び映像線Lb)を介したループ回路を形成する(図4参照)。
上述した動作により、幹線制御装置32においては2系統の幹線L111,L112のうちでロビーインターホン1に選択された住戸機2121が分岐接続された幹線L112のみが幹線制御装置31側の幹線L11と接続され、他方の幹線L111が幹線制御装置31側の幹線L11と切り離され、さらに幹線制御装置31においては2系統の幹線L11,L12のうちで幹線制御装置32と接続された幹線L11のみがロビーインターホン1側の幹線L1(図示例では通話線Laと映像線Lb)と接続され、幹線制御装置33と接続された他方の幹線L12がロビーインターホン1側の幹線L1(図示例では通話線Laと映像線Lb)と切り離される。その結果、ロビーインターホン1と選択された住戸機2121との間でのみ通話が可能になるとともに、選択された住戸機2121でのみロビーインターホン1のカメラで撮像された来訪者をモニタ22に表示することが可能になる。
次に一斉放送時の動作について説明する。一斉放送を開始するに当たって全ての住戸機2に対して通話制御装置5から制御線Lcを介して制御信号(一斉放送開始コマンド)が伝送され、この一斉放送開始コマンドに応じて全ての住戸機2のCPU20が住戸機リレーのリレー接点29を閉成する。但し、何れの住戸機2においてもCPU20はループ形成回路200によるループ回路の形成を行わない。したがって、幹線制御装置32では、幹線L111,L112における信号線Ldの何れにも電流検出回路36で直流電流が検出されないことから、幹線切替制御回路37が幹線リレーを駆動せず、各幹線L111,L112における信号線Ldと通話線Laとの間に挿入された幹線リレー接点35A,35Bは双方とも閉成した状態に維持されるとともに、第2のループ形成回路38によるループ回路の形成も行われない。故に、幹線制御装置31においても、幹線L11,L12における信号線Ldの何れにも電流検出回路36で直流電流が検出されないから、幹線切替制御回路37が幹線リレーを駆動せず、各幹線L11,L12における信号線Ldと通話線Laとの間に挿入された幹線リレー接点35A,35Bは双方とも閉成した状態に維持される。
そして、全ての住戸機2に対して通話制御装置5から制御線Lcを介して制御信号(一斉放送終了コマンド)が伝送され、この一斉放送終了コマンドに応じて全ての住戸機2のCPU20が住戸機リレーのリレー接点29を開成することによって、一斉放送を終了して待機状態に戻る。
上述した動作により、2台の幹線制御装置32においては各2系統の幹線L111,L112が何れも幹線制御装置31を介してロビーインターホン1側の幹線L1(図示例では通話線Laと映像線Lb)と接続されるから、一斉放送機器から通話制御装置5を介して通話線Laに送出される一斉放送用の音声信号が各幹線L111,L112にそれぞれ分岐接続されている全ての住戸機2に伝送されてスピーカ21bから出力される。
而して、本実施形態の幹線制御装置3においては、分配前の幹線L1における信号線Ldに直流電流を流すループ回路を形成する状態とループ回路が形成されない状態とを切り替える第2のループ形成回路38を備え、電流検出回路36で検出された検出値がしきい値を超えているときに駆動回路38bによって閉結スイッチ38aが閉結されることで第2のループ形成回路38がループ回路を形成する状態に切り替えられるから、ロビーインターホン1と幹線制御装置32との間に別の幹線制御装置31を挿入し、図示例のように複数台の幹線制御装置31,32を多段に接続する場合においても個別通話の対象外である住戸機2が分岐接続された幹線L1が切り離され、信号線Ldを介して伝送される音声信号の減衰を抑制することができる。
尚、本実施形態においても全ての住戸機2を一斉放送の対象とする必要はなく、例えば、一斉放送の内容に応じて対象とする住戸機2を限定してもよい。
(実施形態3)
本実施形態は、図5に示すように幹線制御装置3に内部回路を制御するCPU30が設けられ、CPU30には制御線Lcとのインタフェースとなる制御信号送受信回路39が接続されるとともに、住戸機2にはループ形成回路200が設けられていない点に特徴がある。但し、その他の基本構成は実施形態1と共通であるから、共通の構成要素には同一の符号を付して説明を省略する。
幹線制御装置3に設けられた制御信号送受信回路39は、CPU30から出力された制御信号を制御線Lcに送出し、制御線Lcから受信した制御信号をCPU30に引き渡す機能を有する。そして、幹線制御装置3のCPU30では、制御線Lcを介して通話制御装置5から伝送される制御信号(呼出コマンド)を制御信号送受信回路39から受け取ると、制御信号に含まれるアドレスに基づき、幹線切替制御回路37を制御して幹線リレー接点35A又は35Bの何れか一方のみを開成し、個別通話に不要となる方の幹線L1における信号線Ldを通話線Laから切り離すように動作する。
次に本実施形態の要部の動作を説明する。まず、ロビーインターホン1と、ロビーインターホン1で選択された1台の住戸機2(例えば、住戸機221)との間で個別通話する場合について説明する。ロビーインターホン1で選択された住戸機221に対して通話制御装置5から制御線Lcを介して制御信号(呼出コマンド)が伝送され、この制御信号に含まれるアドレスが一致した住戸機221では、CPU20が呼出コマンドに応じて住戸機リレーのリレー接点29を閉成するとともにFM復調部25aやモニタ22を起動してロビーインターホン1のカメラにおいて撮像された来訪者の映像を住戸機2のモニタ22に表示させ、さらに音声回路24cを通じてスピーカ21bから呼出音を送出させる。そして、ロビーインターホン1からの呼出に応答して居住者が住戸機221の応答釦(図示せず)を押操作すると、住戸機221のCPU20が音声回路24cを動作させて通話可能な状態にする。幹線制御装置3では、制御信号送受信回路39で受信した上記制御信号がCPU30に引き渡されると、CPU30が制御信号に含まれるアドレスに基づいてロビーインターホン1で選択された住戸機221が分岐接続されている幹線L12を判定し、さらにその判定結果に応じて幹線切替制御回路37を制御し、ロビーインターホン1で選択されなかった住戸機211のみが分岐接続されている幹線L11における信号線Ldと通話線Laとの間に挿入されている幹線リレー接点35Aを開成し、他方の幹線リレー接点35Bは閉成された状態に維持される。
上述した動作により、幹線制御装置3においては2系統の幹線L11,L12のうちでロビーインターホン1に選択された住戸機221が分岐接続された幹線L12における信号線Ldのみが通話線Laと接続され、他方の幹線L11における信号線Ldが通話線Laと切り離されるから、実施形態1と同様にロビーインターホン1と選択された住戸機221との間でのみ通話が可能になるとともに、選択された住戸機221でのみロビーインターホン1のカメラで撮像された来訪者をモニタ22に表示することが可能になる。そして、個別通話の終了時には住戸機221のCPU20が住戸機リレーのリレー接点29を開成するとともに制御信号送受信回路26を介して制御線Lcに制御信号(個別通話終了コマンド)を送信し、幹線制御装置3では、制御信号送受信回路39で受信した上記制御信号がCPU30に引き渡されると、CPU30が幹線切替制御回路37を制御して幹線リレー接点35Aを閉成することで待機状態に戻る。尚、幹線制御装置3においては、制御信号に含まれるアドレスと幹線L11,L12との対応関係を図示しないメモリに記憶しており、このメモリに記憶された対応関係に基づいてCPU30がロビーインターホン1で選択された住戸機221が分岐接続されている幹線L12を判別している。
次に一斉放送時の動作について説明する。一斉放送を開始するに当たって全ての住戸機2に対して通話制御装置5から制御線Lcを介して制御信号(一斉放送開始コマンド)が伝送され、この一斉放送開始コマンドに応じて全ての住戸機2のCPU20が住戸機リレーのリレー接点29を閉成する。また、幹線制御装置3では、制御信号送受信回路39で受信した上記制御信号がCPU30に引き渡されても一斉放送開始コマンドであることから幹線切替制御回路37に対する制御は行わず、各幹線L11,L12における信号線Ldと通話線Laとの間に挿入された幹線リレー接点35A,35Bは双方とも閉成した状態に維持される。
そして、全ての住戸機2に対して通話制御装置5から制御線Lcを介して制御信号(一斉放送終了コマンド)が伝送され、この一斉放送終了コマンドに応じて全ての住戸機2のCPU20が住戸機リレーのリレー接点29を開成することによって、一斉放送を終了して待機状態に戻る。
上述した動作により、幹線制御装置3においては2系統の幹線L11,L12における信号線Ldが双方とも通話線Laと接続されるから、一斉放送機器から通話制御装置5を介して通話線Laに送出される一斉放送用の音声信号が各幹線L11,L12にそれぞれ分岐接続されている全ての住戸機2に伝送されてスピーカ21bから出力される。
このように本実施形態においても実施形態1と同様に、個別通話時と同じ伝送線路(信号線Ld)を使って複数台の住戸機2に向けた一斉放送が可能になるとともに、個別通話時にはロビーインターホン1で選択された住戸機2が分岐接続されている幹線L1における信号線Ldのみが通話線Laと接続され、ロビーインターホン1で選択されなかった住戸機2のみが分岐接続されている幹線L1における信号線Ldは通話線Laと切り離されるから、個別通話時に不要な幹線L1を切り離すことで伝送線路の容量成分による音声信号の減衰を抑制することができる。しかも、実施形態1,2のように全ての住戸機2にループ形成回路200を設けると同時に幹線制御装置3に電源重畳回路32を設ける場合に比較して部品点数の削減によるコストダウンが図れるという利点がある。
尚、本実施形態においても全ての住戸機2を一斉放送の対象とする必要はなく、例えば、一斉放送の内容に応じて対象とする住戸機2を限定してもよい。
(実施形態4)
本実施形態は、図6に示すように幹線制御装置3で分配された幹線L1をさらに複数系統(図示例では2系統)に分配するための幹線分配器4を備えた点に特徴がある。但し、幹線分配器4以外の構成については実施形態3と共通であり、また、幹線分配器4の基本構成については従来例と共通であるから、それぞれ共通の構成要素には同一の符号を付して説明を省略する。尚、本実施形態における幹線制御装置3では、信号線Ldを介して幹線分配器4への給電を行うために電源重畳回路32を備えている。
幹線分配器4では、幹線制御装置3から信号線Ldを介して入力するFM映像信号が平衡−不平衡変換のための結合トランス41aを介して増幅器41bに入力され、増幅器41bで増幅された後に分配回路41cにより2系統に分配される。幹線分配器4には信号線Ldに重畳された直流電源から増幅器41b等の内部回路の動作電源を作成する受電回路42a及び電源回路42bが設けられるとともに、結合トランス41aの入力側と分配回路41cの出力側とが、FM映像信号に対して高インピーダンスであり且つ音声信号に対して低インピーダンスとなる映像分離コイル43を介して接続されることにより、分配後の各系統の信号線LdにおいてFM映像信号に音声信号が多重化されると同時に直流電源が重畳されている。
また、幹線分配器4において映像分離コイル43を介して結合トランス41aの入力側と分配回路41cの出力側とを接続する経路(以下、「音声信号バイパス経路」と呼ぶ)には、映像分離コイル43と分配回路41cの出力側との間にそれぞれ常閉型の分配器リレー接点44A,44Bが挿入され、図示しないリレーを駆動することでこれらの分配器リレー接点44A,44Bを各別に開成する幹線切替制御回路45が設けられている。さらに幹線分配器4には内部回路を制御するCPU40が設けられ、CPU40には制御線Lcとのインタフェースとなる制御信号送受信回路46が接続される。制御信号送受信回路46は、CPU40から出力された制御信号を制御線Lcに送出し、制御線Lcから受信した制御信号をCPU40に引き渡す機能を有する。そして、幹線分配器4のCPU40では、制御線Lcを介して通話制御装置5から伝送される制御信号(呼出コマンド)を制御信号送受信回路46から受け取ると、制御信号に含まれるアドレスに基づき、幹線切替制御回路45を制御して分配器リレー接点44A又は44Bの何れか一方のみを開成し、個別通話に不要となる方の幹線L1における信号線Ldを音声信号バイパス経路から切り離すように動作する。
次に本実施形態の要部の動作を説明する。但し、以下では説明を簡単にするために、幹線制御装置3で分配された幹線L1を幹線L11,L12と表記し、さらに幹線分配器4で幹線L11から2系統に分配された幹線L1を幹線L111,L112と表記し、各幹線L111、L112に分岐器7を介して分岐接続された複数台の住戸機2を住戸機2111,…、住戸機2121,2122,…と表記する。
まず、ロビーインターホン1と、ロビーインターホン1で選択された1台の住戸機2(例えば、住戸機2121)との間で個別通話する場合について説明する。ロビーインターホン1で選択された住戸機2121に対して通話制御装置5から制御線Lcを介して制御信号(呼出コマンド)が伝送され、この制御信号に含まれるアドレスが一致した住戸機2121では、CPU20が呼出コマンドに応じて住戸機リレーのリレー接点29を閉成するとともにFM復調部25aやモニタ22を起動してロビーインターホン1のカメラにおいて撮像された来訪者の映像を住戸機2のモニタ22に表示させ、さらに音声回路24cを通じてスピーカ21bから呼出音を送出させる。そして、ロビーインターホン1からの呼出に応答して居住者が住戸機2121の応答釦(図示せず)を押操作すると、住戸機2121のCPU20が音声回路24cを動作させて通話可能な状態にする。幹線分配器4では、制御信号送受信回路46で受信した上記制御信号がCPU40に引き渡されると、CPU40が制御信号に含まれるアドレスに基づいてロビーインターホン1で選択された住戸機2121が分岐接続されている幹線L112を判定し、さらにその判定結果に応じて幹線切替制御回路45を制御し、ロビーインターホン1で選択されなかった住戸機2111,…のみが分岐接続されている幹線L111における信号線Ldとの間の音声信号バイパス経路に挿入されている分配器リレー接点44Aを開成し、他方の分配器リレー接点45Bは閉成された状態に維持される。また幹線制御装置3では、制御信号送受信回路39で受信した上記制御信号がCPU30に引き渡されると、CPU30が制御信号に含まれるアドレスに基づいてロビーインターホン1で選択された住戸機2121が分岐接続されている幹線L11を判定し、さらにその判定結果に応じて幹線切替制御回路37を制御し、ロビーインターホン1で選択されなかった住戸機2のみが分岐接続されている幹線L12における信号線Ldと通話線Laとの間に挿入されている幹線リレー接点35Bを開成し、他方の幹線リレー接点35Aは閉成された状態に維持される。
上述した動作により、幹線分配器4においては2系統の幹線L111,L112のうちでロビーインターホン1に選択された住戸機2121が分岐接続された幹線L112における信号線Ldのみが音声信号バイパス経路と接続され、他方の幹線L111における信号線Ldが音声信号バイパス経路と切り離され、さらに、幹線制御装置3においては2系統の幹線L11,L12のうちでロビーインターホン1に選択された住戸機2121が分岐接続された幹線L11における信号線Ldのみが通話線Laと接続され、他方の幹線L12における信号線Ldが通話線Laと切り離される。その結果、実施形態3と同様にロビーインターホン1と選択された住戸機2121との間でのみ通話が可能になるとともに、選択された住戸機2121でのみロビーインターホン1のカメラで撮像された来訪者をモニタ22に表示することが可能になる。そして、個別通話の終了時には住戸機2121のCPU20が住戸機リレーのリレー接点29を開成するとともに制御信号送受信回路26を介して制御線Lcに制御信号(個別通話終了コマンド)を送信し、幹線制御装置3並びに幹線分配器4では、制御信号送受信回路39,46で受信した上記制御信号がCPU30,40に引き渡されると、CPU30,40が幹線切替制御回路37,45を制御して幹線リレー接点35A及び分配器リレー接点44Bを閉成することで待機状態に戻る。尚、幹線分配器4においては、幹線制御装置3と同様に制御信号に含まれるアドレスと幹線L111,L112との対応関係を図示しないメモリに記憶しており、このメモリに記憶された対応関係に基づいてCPU40がロビーインターホン1で選択された住戸機2121が分岐接続されている幹線L112を判別している。
次に一斉放送時の動作について説明する。一斉放送を開始するに当たって全ての住戸機2に対して通話制御装置5から制御線Lcを介して制御信号(一斉放送開始コマンド)が伝送され、この一斉放送開始コマンドに応じて全ての住戸機2のCPU20が住戸機リレーのリレー接点29を閉成する。また、幹線制御装置3及び幹線分配器4では、制御信号送受信回路39,46で受信した上記制御信号がCPU30,40に引き渡されても一斉放送開始コマンドであることから幹線切替制御回路37,45に対する制御は行わず、幹線リレー接点35A,35B並びに分配器リレー接点44A,44Bは双方とも閉成した状態に維持される。
そして、全ての住戸機2に対して通話制御装置5から制御線Lcを介して制御信号(一斉放送終了コマンド)が伝送され、この一斉放送終了コマンドに応じて全ての住戸機2のCPU20が住戸機リレーのリレー接点29を開成することによって、一斉放送を終了して待機状態に戻る。
上述した動作により、幹線制御装置3並びに幹線分配器4においては2系統の幹線L11,L12、L112,L112における信号線Ldが双方とも通話線La若しくは音声信号バイパス経路と接続されるから、一斉放送機器から通話制御装置5を介して通話線Laに送出される一斉放送用の音声信号が各幹線L11,L12、L111,L112にそれぞれ分岐接続されている全ての住戸機2に伝送されてスピーカ21bから出力される。
このように本実施形態においては、幹線分配器4を用いて幹線L1を分配する場合においても実施形態1や3と同様に、個別通話時と同じ伝送線路(信号線Ld)を使って複数台の住戸機2に向けた一斉放送が可能になるとともに、個別通話時にはロビーインターホン1で選択された住戸機2が分岐接続されている幹線L1における信号線Ldのみが通話線Laと接続され、ロビーインターホン1で選択されなかった住戸機2のみが分岐接続されている幹線L1における信号線Ldは通話線Laと切り離されるから、個別通話時に不要な幹線L1を切り離すことで伝送線路の容量成分による音声信号の減衰を抑制することができる。
尚、本実施形態においても全ての住戸機2を一斉放送の対象とする必要はなく、例えば、一斉放送の内容に応じて対象とする住戸機2を限定してもよい。
(実施形態5)
本実施形態は、図7に示すように個別通話時に信号線Ldを介して伝送されるFM映像信号の搬送波(キャリア)を検出するFMキャリア検出回路39を幹線制御装置3に設け、ループ回路に流れる直流電流が電流検出回路36で検出されるとともに信号線Ldを介して伝送されるFM映像信号の搬送波がFMキャリア検出回路39で検出されたときに幹線切替制御回路37が幹線リレー接点35A又は35Bを開成するようにした点に特徴がある。但し、本実施形態の基本構成は実施形態2と共通であるから、共通の構成要素には同一の符号を付して説明を省略する。
FMキャリア検出回路39は、例えばFM映像信号の搬送波が有する周波数を通過させるバンドパスフィルタを有し、バンドパスフィルタを通過した周波数の信号振幅が所定のしきい値を超えたときにキャリアを検出し、キャリアを検出したときにHレベルのキャリア検出信号を出力するものである。また、幹線制御装置3には、電流検出回路36の代わりに、一方の幹線リレー接点35Aを介してループ回路に流れる電流を検出する第1の電流検出回路36Aと、他方の幹線リレー接点35Bを介してループ回路に流れる電流を検出する第2の電流検出回路36Bとが設けられ、第1及び第2の電流検出回路36A,36Bでは直流電流の検出値が所定のしきい値を超えているときにHレベルとなるループ回路検出信号を出力する。さらに、FMキャリア検出回路39が出力するキャリア検出信号が2つのアンドゲートAD1,AD2の一方の入力端にそれぞれ入力され、第1の電流検出回路36Aが出力するループ回路検出信号が一方のアンドゲートAD1の他方の入力端に入力され、第2の電流検出回路36Bが出力するループ回路検出信号が他方のアンドゲートAD2の他方の入力端に入力されている。幹線切替制御回路37では、これら2つのアンドゲートAD1,AD2の出力を取り込み、一方のアンドゲートAD1の出力がHレベルのときに幹線リレー接点35Bを開成し、他方のアンドゲートAD2の出力がHレベルのときに幹線リレー接点35Aを開成するように動作する。
次に本実施形態の要部の動作を説明する。但し、以下では説明を簡単にするため、実施形態2と同様にロビーインターホン1並びに通話制御装置5に直接接続される幹線制御装置3を幹線制御装置31、幹線制御装置31で分配された幹線L11,L12に接続されてさらに2系統の幹線L1に分配する幹線制御装置3を幹線制御装置32,…、幹線制御装置32を介して幹線L11から分配された2系統の幹線をそれぞれ幹線L111及び幹線L112と表記し、各幹線L111、L112に分岐器7を介して分岐接続された複数台の住戸機2を住戸機2111,…、住戸機2121,2122,…と表記する。また本実施形態においても幹線L11,L12,L111,L112における制御線Ldの図示は省略している。
まず、ロビーインターホン1と、ロビーインターホン1で選択された1台の住戸機2(例えば、住戸機2121)との間で個別通話する場合について説明する。ロビーインターホン1で選択された住戸機2121に対して通話制御装置5から制御線Lcを介して制御信号(呼出コマンド)が伝送され、この制御信号に含まれるアドレスが一致した住戸機2121では、CPU20が呼出コマンドに応じて住戸機リレーのリレー接点29を閉成するとともにFM復調部25aやモニタ22を起動してロビーインターホン1のカメラにおいて撮像された来訪者の映像を住戸機2のモニタ22に表示させ、さらに音声回路24cを通じてスピーカ21bから呼出音を送出させる。そして、ロビーインターホン1からの呼出に応答して居住者が住戸機2121の応答釦(図示せず)を押操作すると、住戸機2121のCPU20が音声回路24cを動作させて通話可能な状態にするとともにループ形成回路200の閉結スイッチ200aを閉結してループ回路を形成する。幹線制御装置32では、住戸機2121のループ形成回路200によって形成されたループ回路に流れる直流電流を第2の電流検出回路36Bで検出し、その検出値がしきい値を超えていればHレベルのループ回路検出信号を出力する。また、FMキャリア検出回路39では信号線Ldを介して伝送されるFM映像信号のキャリアを検出してHレベルのキャリア検出信号を出力するから、2つの入力が何れもHレベルとなることで一方のアンドゲートAD2の出力がHレベルとなり、幹線切替制御回路37が幹線リレーを駆動してループ回路が形成されていない幹線L111、すなわち、ロビーインターホン1に選択されなかった住戸機2111,…のみが分岐接続されている幹線L111における信号線Ldと通話線Laとの間に挿入された幹線リレー接点35Aを開成する。一方、ロビーインターホン1に選択されなかった住戸機2111,…、2122,…では、CPU20が住戸機リレーのリレー接点29を閉成せず、またループ形成回路200によってループ回路が形成されないから、第1及び第2の電流検出回路36A,36Bの何れからもHレベルのループ回路検出信号が出力されず、2つのアンドゲートAD1,AD2の出力が双方ともLレベルとなる。そのため、幹線切替制御回路37が幹線リレーを駆動せず、ロビーインターホン1に選択された住戸機2121が分岐接続されている幹線L12においては、幹線リレー接点35Bが閉成された状態のままとなる。さらに幹線制御装置32では、第2の電流検出回路36Bで検出された検出値がしきい値を超えていることから、駆動回路38bが閉結スイッチ38aを閉結して第2のループ形成回路38により幹線L11における信号線Ldを介したループ回路を形成する。尚、幹線L12に接続される幹線制御装置(図示せず)においては、ループ回路が形成されないために第2のループ形成回路38によってループ回路が形成されることはない。
そして、幹線制御装置31では、幹線制御装置32の第2のループ形成回路38によって幹線L11における信号線Ldを介して形成されるループ回路の直流電流を第1の電流検出回路36Aで検出し、その検出値がしきい値を超えていればHレベルのループ回路検出信号を出力する。また、FMキャリア検出回路39では信号線Ldを介して伝送されるFM映像信号のキャリアを検出してHレベルのキャリア検出信号を出力するから、2つの入力が何れもHレベルとなることで一方のアンドゲートAD1の出力がHレベルとなり、幹線切替制御回路37が幹線リレーを駆動してループ回路が形成されていない幹線L12における信号線Ldと通話線Laとの間に挿入された幹線リレー接点35Bを開成するとともに、閉結スイッチ38aを閉結して第2のループ形成回路38により幹線L1における信号線Ld(図示例では通話線La及び映像線Lb)を介したループ回路を形成する(図7参照)。
上述した動作により、幹線制御装置32においては2系統の幹線L111,L112のうちでロビーインターホン1に選択された住戸機2121が分岐接続された幹線L112のみが幹線制御装置31側の幹線L11と接続され、他方の幹線L111が幹線制御装置31側の幹線L11と切り離され、さらに幹線制御装置31においては2系統の幹線L11,L12のうちで幹線制御装置32と接続された幹線L11のみがロビーインターホン1側の幹線L1(図示例では通話線Laと映像線Lb)と接続され、幹線制御装置33と接続された他方の幹線L12がロビーインターホン1側の幹線L1(図示例では通話線Laと映像線Lb)と切り離される。その結果、ロビーインターホン1と選択された住戸機2121との間でのみ通話が可能になるとともに、選択された住戸機2121でのみロビーインターホン1のカメラで撮像された来訪者をモニタ22に表示することが可能になる。
次に一斉放送時の動作について説明する。一斉放送を開始するに当たって全ての住戸機2に対して通話制御装置5から制御線Lcを介して制御信号(一斉放送開始コマンド)が伝送され、この一斉放送開始コマンドに応じて全ての住戸機2のCPU20が住戸機リレーのリレー接点29を閉成する。但し、何れの住戸機2においてもCPU20はループ形成回路200によるループ回路の形成を行わない。したがって、幹線制御装置32では、幹線L111,L112における信号線Ldの何れにも第1及び第2の電流検出回路36A,36Bで直流電流が検出されないことから、2つのアンドゲートAD1,AD2の出力が双方ともLレベルとなり、幹線切替制御回路37が幹線リレーを駆動せず、各幹線L111,L112における信号線Ldと通話線Laとの間に挿入された幹線リレー接点35A,35Bは双方とも閉成した状態に維持されるとともに、第2のループ形成回路38によるループ回路の形成も行われない。故に、幹線制御装置31においても、幹線L11,L12における信号線Ldの何れにも第1及び第2の電流検出回路36A,36Bで直流電流が検出されないから、2つのアンドゲートAD1,AD2の出力が双方ともLレベルとなり、幹線切替制御回路37が幹線リレーを駆動せず、各幹線L11,L12における信号線Ldと通話線Laとの間に挿入された幹線リレー接点35A,35Bは双方とも閉成した状態に維持される。
そして、全ての住戸機2に対して通話制御装置5から制御線Lcを介して制御信号(一斉放送終了コマンド)が伝送され、この一斉放送終了コマンドに応じて全ての住戸機2のCPU20が住戸機リレーのリレー接点29を開成することによって、一斉放送を終了して待機状態に戻る。
上述した動作により、2台の幹線制御装置32においては各2系統の幹線L111,L112が何れも幹線制御装置31を介してロビーインターホン1側の幹線L1(図示例では通話線Laと映像線Lb)と接続されるから、一斉放送機器から通話制御装置5を介して通話線Laに送出される一斉放送用の音声信号が各幹線L111,L112にそれぞれ分岐接続されている全ての住戸機2に伝送されてスピーカ21bから出力される。
而して本実施形態によれば、ロビーインターホン1から選択された1台の住戸機2がループ回路を形成することで第1又は第2の電流検出回路36A,36Bでしきい値を超える直流電流が検出され且つ信号線Ldを介して伝送されるFM映像信号の搬送波をFMキャリア検出回路39により検出しているときに幹線切替制御回路37が幹線リレー接点35A又は35Bを開成するため、幹線制御装置3における個別通話への経路の切替が確実に行えるという利点がある。
尚、本実施形態においても全ての住戸機2を一斉放送の対象とする必要はなく、例えば、一斉放送の内容に応じて対象とする住戸機2を限定してもよい。
(実施形態6)
本実施形態は、図8に示すように幹線制御装置3で分配された幹線L1をさらに複数系統(図示例では2系統)に分配するための幹線分配器4を備えた点に特徴がある。但し、幹線分配器4以外の構成については実施形態1と共通であり、また、幹線分配器4の構成は従来例と共通であるから、それぞれ共通の構成要素には同一の符号を付して説明を省略する。
本実施形態では、従来例と同様に信号線Ldを介して幹線制御装置3から幹線分配器4へ給電しており、システムに含まれる幹線分配器4の台数が増えるにつれて信号線Ldに流れる直流電流の電流値が増加する。例えば、幹線分配器4の消費電流が20ミリアンペア(mA)とすれば、20mA×幹線分配器4の台数分だけ消費電流が増えることになる。さらに、個別通話時に形成されるループ回路で消費される電流分(例えば、10mA)が幹線分配器4の消費電流に加算されるため、個別通話時に信号線Ld(ループ回路)に流れる直流電流の合計値は、20mA×幹線分配器4の台数+10mAとなる。したがって、幹線制御装置3の電流検出回路36において検出値と比較するしきい値も、システムに含まれる幹線分配器4の台数に応じた値に設定する必要がある。
そこで本実施形態における幹線制御装置3では、電流検出回路36を、一方の幹線リレー接点35Aを介してループ回路に流れる電流を検出する第1の電流検出回路36Aと、他方の幹線リレー接点35Bを介してループ回路に流れる電流を検出する第2の電流検出回路36Bとに分けるとともに、第1の電流検出回路36Aにおけるしきい値を設定する第1のしきい値設定回路300Aと、第2の電流検出回路36Bにおけるしきい値を設定する第2のしきい値設定回路300Bとを設けることによって、分配された各幹線L1毎にループ回路が形成されているか否かを判断するためのしきい値を設定可能としている。
第1及び第2のしきい値設定回路300A,300Bは同構成であって、図9に示すようにループ回路中に挿入される検出抵抗Rxと、オペアンプOPと抵抗R1〜R4で構成され、検出抵抗Rxの両端に生じる電位差(ループ回路に流れる直流電流の電流値に相当)を増幅する増幅回路と、増幅回路で増幅された検出値(電圧値)Vxをしきい値Vthと比較するコンパレータCPとを備え、例えば、検出値Vxがしきい値Vthを超えたときにHレベルのループ回路検出信号をコンパレータCPから出力するものである。また、第1及び第2のしきい値設定回路300A,300Bも同構成であって、図9に示すように両端に定電圧が印加される可変抵抗VRからなり、可変抵抗VRの抵抗値を変化させることでコンパレータCPに入力するしきい値Vthが設定できるようになっている。
而して、図9に示すように幹線制御装置3で分配された2系統の幹線L11,L12のうちで一方の幹線L11に2台の幹線分配器41,42が挿入されているとすれば、当該幹線L11における信号線Ldを介したループ回路には、個別通話時に10mA+20mA×2台=50mAの直流電流が流れることになるから、当該ループ回路に流れる直流電流を検出する第1の電流検出回路36Aに対して、第1のしきい値設定回路300Aの可変抵抗VRを調整することにより待機時における2台の幹線分配器41,42の消費電流の合計値(=40mA)よりも大きく且つ個別通話時にループ回路に流れる直流電流の電流値(=50mA)よりも小さい値にしきい値Vthを設定すればよい。尚、本実施形態の動作は基本的に実施形態1と共通であるから説明を省略する。
上述のように本実施形態では、幹線制御装置3の電源重畳回路32から信号線Ldを介して動作電源を供給する幹線分配器4の台数に応じて、第1及び第2の電流検出回路36A,36Bにおけるしきい値Vthをそれぞれ第1及び第2のしきい値設定回路300A,300Bで設定可能としたため、幹線分配器4の台数にかかわらず、個別通話時における幹線L1の切り離しを行うことができる。
但し、電流容量等の関係から1台の幹線制御装置3から出力される一つの幹線に対して接続可能な幹線分配器4の台数には上限値(例えば、2台)が存在し、幹線分配器4の台数が0〜2台の間で変更されたとしても、待機時の消費電流は40mA以下であり、個別通話時にループ回路に流れる電流値は50mA以下となるから、第1及び第2の電流検出回路36A,36Bにおけるしきい値を40mAよりも大きく且つ50mAよりも小さい値に固定しておけば、しきい値設定回路300A,300Bを設けなくても、幹線分配器4の台数にかかわらず、個別通話時における幹線L1の切り離しを行うことができる。
(実施形態7)
本実施形態は、図10に示すように幹線分配器4が備えるFM映像信号増幅用の増幅器41bを個別通話時にのみ動作させるようにした点に特徴がある。但し、幹線分配器4以外の構成については実施形態1と共通であり、また、幹線分配器4の基本構成は実施形態4と共通であるから、それぞれ共通の構成要素には同一の符号を付して説明を省略する。
本実施形態における幹線分配器4は、実施形態4における幹線分配器4が備えていたCPU40並びに制御信号送受信回路46の代わりに、個別通話時に形成されるループ回路を介して音声信号バイパス経路に流れる直流電流を各別に検出する電流検出回路47と、電流検出回路47で検出された直流電流の検出値が所定のしきい値を超えていればリレー(図示せず)を駆動することによりしきい値を超える直流電流が検出されていない信号線Ldに接続されている分配器リレー接点44A又は44Bを開成する幹線切替制御回路45と、電流検出回路47で検出された直流電流の検出値が所定のしきい値を超えているときに増幅器41bに給電して動作させ、検出値がしきい値を超えていないときに増幅器41bへの給電を停止させる増幅器制御回路41dとを備えている。
而して、ロビーインターホン1で選択された住戸機2(例えば、住戸機2112)においてループ形成回路200の閉結スイッチ200aが閉結されると、2台の幹線分配器41,42の音声信号バイパス経路を介して幹線制御装置3との間にループ回路が形成され、そのループ回路に直流電流が流れることになる。各幹線分配器41,42では、ループ回路に流れる直流電流を電流検出回路47で検出しその検出値がしきい値を超えているときに電流検出回路47からループ回路検出信号を出力し、そのループ回路検出信号を受け取った幹線切替制御回路45がリレーを駆動し、ロビーインターホン1で選択されなかった住戸機2のみが分岐接続されている幹線L1における信号線Ldとの間の音声信号バイパス経路に挿入されている分配器リレー接点44A又は44Bを開成し、他方の分配器リレー接点44B又は44Aは閉成された状態に維持される。また、電流検出回路47からループ回路検出信号が出力されると増幅器制御回路41dが増幅器41bに給電して動作させる。尚、幹線制御装置3においても、実施形態1と同様にロビーインターホン1で選択されなかった住戸機2のみが分岐接続されている幹線L1における信号線Ldと通話線Laとの間に挿入されている幹線リレー接点35A又は35Bを開成し、他方の幹線リレー接点35B又は35Aは閉成された状態に維持される。
したがって、各幹線分配器41,42においては2系統の幹線L1のうちでロビーインターホン1に選択された住戸機2が分岐接続された幹線L1における信号線Ldのみが音声信号バイパス経路と接続され、他方の幹線L1における信号線Ldが音声信号バイパス経路と切り離され、さらに、幹線制御装置3においては2系統の幹線L1のうちでロビーインターホン1に選択された住戸機2が分岐接続された幹線L1における信号線Ldのみが通話線Laと接続され、他方の幹線L1における信号線Ldが通話線Laと切り離される。その結果、実施形態4と同様にロビーインターホン1と選択された住戸機2との間でのみ通話が可能になるとともに、選択された住戸機2でのみロビーインターホン1のカメラで撮像された来訪者をモニタ22に表示することが可能になる。しかも、幹線分配器41,42においては個別通話時にのみ増幅器41bを動作させるので、個別通話時以外の待機時や一斉放送時には増幅器41bによる電力消費分だけ省電力化が図れるという利点がある。
(実施形態8)
本実施形態は、図11に示すように基本的な構成が実施形態6と共通であり、共通の構成要素には同一の符号を付して説明を省略する。
本実施形態における幹線制御装置3には、分配された2系統の幹線L11,L12における信号線Ldの線間に生じる電圧変動を各別に検出する電圧変動検出回路301が設けられている。また、幹線制御装置3の電源重畳回路32は、幹線分配器4への給電電圧を2通り、すなわち、幹線分配器4の内部回路が正常に動作する定格電圧値(例えば、10V)と、内部回路が待機動作(正常動作はしないが定格電圧値の給電が行われると直ちに正常動作に移行可能な状態)する待機電圧値(例えば、1V)とに切替可能に構成されており、第1又は第2の電圧検出回路36A,36BからHレベルのループ回路検出信号が出力されたときに待機電圧値から定格電圧値に給電電圧を切り替えるとともに、電圧変動検出回路301が電圧変動が検出されたときに定格電圧値から待機電圧値に給電電圧を切り替えるように動作する。
また、本実施形態における住戸機2は、閉結スイッチ200aが閉結されてループ回路が形成されている状態で信号線Ldの線間電圧を変動させる線間電圧変動手段(図示せず)がループ形成回路200に設けられており、個別通話の終了時にCPU20が線間電圧変動手段により信号線Ldの線間電圧を変動させた後に閉結スイッチ200aを開いてループ回路を開放するように構成されている。尚、線間電圧変動手段については図示していないが、例えば、ループ回路中に抵抗を挿入する状態と挿入しない状態とを切り替えるような回路でよい。
而して、ロビーインターホン1で選択された住戸機2(例えば、住戸機2121)においてループ形成回路200の閉結スイッチ200aが閉結されると、2台の幹線分配器41,42の音声信号バイパス経路を介して幹線制御装置3との間にループ回路が形成され、そのループ回路に直流電流が流れることになる。幹線制御装置3では、住戸機2121のループ形成回路200によって形成されたループ回路に流れる直流電流を第1の電流検出回路36Aで検出し、その検出値がしきい値を超えていればHレベルのループ回路検出信号を出力し、幹線切替制御回路37が幹線リレーを駆動してループ回路が形成されていない幹線L12、すなわち、ロビーインターホン1に選択されなかった住戸機2のみが分岐接続されている幹線L12における信号線Ldと通話線Laとの間に挿入された幹線リレー接点35Bを開成する。さらに、第1の電圧検出回路36AからHレベルのループ回路検出信号が出力されると電源重畳回路32が信号線Ld(通話線La)に重畳する直流電源の電圧値を待機電圧値から定格電圧値に切り替えるから、2台の幹線分配器41,42の内部回路が待機動作から正常動作に移行する。
一方、個別通話の終了時においては、住戸機2121のCPU20が線間電圧変動手段により信号線Ldの線間電圧を変動させた後に閉結スイッチ200aを開いてループ回路を開放し、さらに住戸機リレーのリレー接点29を開成すると、信号線Ldの線間電圧変動が幹線制御装置3における電圧変動検出回路301で検出されるから、電源重畳回路32は給電電圧を定格電圧値から待機電圧値に切り替える。
したがって、各幹線分配器41,42においては2系統の幹線L1のうちでロビーインターホン1に選択された住戸機2が分岐接続された幹線L1における信号線Ldのみが音声信号バイパス経路と接続され、他方の幹線L1における信号線Ldが音声信号バイパス経路と切り離され、さらに、幹線制御装置3においては2系統の幹線L1のうちでロビーインターホン1に選択された住戸機2が分岐接続された幹線L1における信号線Ldのみが通話線Laと接続され、他方の幹線L1における信号線Ldが通話線Laと切り離される。その結果、実施形態6と同様にロビーインターホン1と選択された住戸機2との間でのみ通話が可能になるとともに、選択された住戸機2でのみロビーインターホン1のカメラで撮像された来訪者をモニタ22に表示することが可能になる。しかも、幹線分配器41,42においては個別通話時にのみ増幅器41b等の内部回路を動作させるので、個別通話時以外の待機時や一斉放送時には内部回路による電力消費分だけ省電力化が図れるという利点がある。
尚、住戸機2において線間電圧変動手段によって信号線Ldの線間電圧が変動した場合、音声回路24cを通してスピーカ21bから出力される音にノイズが発生したり、モニタ22に表示される映像が乱れるなどの現象が生じる虞があるので、線間電圧変動手段によって信号線Ldの線間電圧を変動させる前にCPU20が音声回路24cを停止するとともにモニタ22への給電を停止することでスピーカ21b並びにモニタ22をオフ状態とし、上述のような現象が生じるのを防ぐことが望ましい。
(実施形態9)
本実施形態は、図12に示すように幹線制御装置3で分配された幹線L1に挿入されてFM映像信号を増幅する機能を有した映像増幅器8を備えた点に特徴がある。但し、映像増幅器8以外の構成については実施形態1と共通であるから、それぞれ共通の構成要素には同一の符号を付して説明を省略する。
映像増幅器8には、信号線Ldに挿入されて音声信号並びに直流電圧・電流を阻止する各一対のコンデンサ83a,83bと、2組のコンデンサ83a,83bの間で信号線Ldに挿入されてFM映像信号を増幅する増幅器82と、信号線Ldに対して2組のコンデンサ83a,83b並びに増幅器82と並列に接続され、音声信号を通過させて直流電圧・電流を阻止する直流阻止用のコンデンサ84a及びFM映像信号の周波数帯域で高インピーダンスであり且つ音声信号に対して低インピーダンスとなる映像分離コイル84bが挿入された音声信号バイパス経路とが設けられている。さらに、映像増幅器8は、個別通話時に住戸機2との間で形成されるループ回路を介して信号線Ldに流れる直流電流を検出する電流検出回路85と、一方の組のコンデンサ83bと音声信号バイパス経路との間で信号線Ldの線間を閉結する閉結スイッチ87aを有し信号線Ldに直流電流を流すループ回路を形成する状態とループ回路が形成されない状態とを切り替える第3のループ形成回路87と、電流検出回路85で検出された直流電流の検出値が所定のしきい値を超えていれば閉結スイッチ87aを閉結することにより第3のループ形成回路87にループ回路を形成させるループ制御回路86と、信号線Ldに直流電源を重畳する電源重畳回路88とを備えている。尚、映像増幅器8の内部電源は、電源回路89によって商用電源(交流100V)から生成される。
而して、映像増幅器8においては信号線Ld並びに音声信号バイパス経路に直流電流を阻止するコンデンサ83a,83b,84aが挿入されているため、住戸機2のループ形成回路200における閉結スイッチ200aが閉結されても直流電流が流れるループ回路が形成されなくなってしまい、幹線制御装置3においてはループ回路形成に基づく個別通話の判断が行えなくなってしまう。これに対して本実施形態では、信号線Ldの送り側に対しては電源重畳回路88によって直流電源を重畳することで住戸機2のループ形成回路200における閉結スイッチ200aが閉結されたときにループ回路に直流電流を流し、その直流電流を電流検出回路85で検出するとともにその検出値が所定のしきい値を超えていればループ制御回路86が閉結スイッチ87aを閉結することにより第3のループ形成回路87にループ回路を形成させ、映像増幅器8と幹線制御装置3との間で信号線Ldを介してループ回路を形成するようにしている。したがって、幹線制御装置3と住戸機2との間の信号線Ldに映像増幅器8が挿入されていても個別通話時に直流電流が流れるループ回路を形成することができ、幹線制御装置3で分配した信号線L11,L12に映像増幅器8を挿入する場合においても個別通話の対象外である住戸機2が分岐接続された幹線L1が切り離され、信号線Ldを介して伝送される音声信号の減衰を抑制することができる。