JP2006176669A - 土壌用固化材及び土壌用混合固化材 - Google Patents

土壌用固化材及び土壌用混合固化材 Download PDF

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Abstract

【課題】関東ローム等火山灰土を固化し、六価クロム溶出等の環境汚染を起こさない土壌用固化剤の提供。
【解決手段】土壌に混入させ固化させるための土壌用固化剤であって、当該土壌用固化剤は、700℃〜1000℃で焼成し、粉末度4000cm/g以上となるように調整された酸化マグネシウムであることを特徴とする。そして、この土壌用固化剤には、必要に応じてpH調整剤、強度向上剤等を添加して用いる。
【選択図】なし

Description

本発明は、土壌用固化材及び土壌用混合固化材に関し、詳しくは火山灰土を始めとして種々の土壌の強度を向上させることができる土壌用固化材及び土壌用混合固化材に関する。
従来から、土質改良分野において、固化材としてセメント系材料や石灰系材料又はこれらの混合材料が主として用いられており、関東ローム等の火山灰土においても同様の材料が用いられている。
例えば、特許文献1(特開2004−299972号公報)には、カルシウムアルミネート系クリンカ鉱物を含有し、かつ該カルシウムアルミネート系クリンカ鉱物に対して一定量の硫化物硫黄を含有されてなるセメント系固化材が記載されている。この特許文献1に係る固化材は、火山灰質粘性度に特に有効であり、六価クロムの溶出を防止でき、しかも十分な強度増進効果が得られるとされている。
また、特許文献2(特開2002−137950号公報)には、セメント成分と石膏又はこれに加えてスラグを一定量含むセメント系固化材が記載されている。特許文献3(特開2002−294232号公報)には、セメント成分に対して生石灰と石膏又はこれに加えてスラグを一定量含むセメント石灰系固化材が記載されている。これら特許文献2及び特許文献3に係る固化材は、火山灰土を始めとする各種土質の固化、改良処理に使用して強度発現性に優れるとされている。
特許文献4(特開平10−182212号公報)には、ポルトランドセメント、石膏、生石灰、及びアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩を一定割合で有する流動化埋戻用固化材が記載され、さらに特許文献4には該流動化埋戻用固化材を、調整含水比が160〜220%である火山灰質粘性土に添加した流動化処理土が記載されている。この特許文献4に係る固化材は、流動性と速硬性とを得ることが出来るものの、このようなセメント材料を用いた場合、対象土の種類によっては、固化後の強度が得られにくいことが多い。また、改良土からセメント材料に含まれる六価クロムが土壌環境基準を超えて溶出することが指摘されている。石灰材料は消石灰と生石灰があり、関東ローム等火山灰土に対しては生石灰が効果的である。生石灰は土の水分と急激に反応して消石灰を生じ土の状態を改善するが、反応時に高熱を発生する。生石灰は消防法の規制を受け、建設工事等多量に使用する場合は、その取り扱いに注意が必要である。また石灰改良土は耐水性がなく水に長時間接触すると崩壊するという欠点を有している。
特開2004−299972号公報 特開2002−137950号公報 特開2002−294232号公報 特開平10−182212号公報
従って、本発明は、従来のセメント材料や石灰材料に代わる材料であって、関東ローム等火山灰土を固化することのできる材料を提供することを目的とするものである。すなわち、セメント材料で十分な固化強度が得られなかった関東ローム等火山灰土に対して、適切な固化強度をもたらし、改良土からの六価クロムの溶出リスクを除去し、土との反応時に発熱がなくその取り扱いが簡便な材料を提供することを目的とする。
そこで、本件発明者等は、鋭意研究の結果、以下の発明に想到したのである。なお、以下に述べる土壌用固化剤は、関東ローム等の脆い火山灰土を固化することの可能な材料ではあるが、他の材質の土壌の固化にも有効に使用出来るものである。
本件発明に係る土壌用固化剤に関する基本的技術思想は、「土壌に混入させ固化させるための土壌用固化剤であって、当該土壌用固化剤は、700℃〜1000℃で焼成し、粉末度4000cm/g以上となるように調整された酸化マグネシウムであることを特徴とする土壌用固化材。」である。
また、この本件発明に係る土壌用固化剤は、pH調整剤を含有させることも好ましい。
そして、本件発明に係る土壌固化剤に、pH調整剤を含ませる場合には、上記酸化マグネシウム100重量部に対して、上記pH調整剤を1重量部〜100重量部含有させることが好ましい。
また、この本件発明に係る土壌用固化剤は、強度向上剤を含有するものとすることも好ましい。
そして、本件発明に係る土壌固化剤に強度向上剤を含ませる場合には、上記酸化マグネシウム100重量部に対して、上記強度向上剤を5重量部〜100重量部含有するものとする事が好ましい。
以上に述べた土壌固化剤は、火山灰土の固化に好適である。
(土壌用混合固化剤)
もう一つの土壌用固化剤は、請求項1〜請求項5のいずれかに記載の土壌用固化材と火山灰土とからなる土壌用混合固化材である。
この土壌用混合固化材は、前記土壌用固化剤100重量部に対して、火山灰土を5重量部〜300重量部含有するものとする事が好ましい。
そして、本件発明に係る土壌用混合固化剤は、固化させる土壌として、固化して十分な強度を得ることが困難な沖積土壌又はサンド質土壌に対して有効なものとなる。
本件発明に係る土壌用固化剤及び土壌用混合固化剤は、従来のセメント材料や石灰系材に代わる材料であり、セメント材料等で十分な固化強度が得られなかった関東ローム等の火山灰土を、十分な強度に固化することのできる材料である。しかも、本件発明に係る土壌用固化剤又は土壌用混合固化剤を用いることで、土壌の当該固化剤を添加した改良土から、六価クロムの溶出リスクを無くし、土壌との反応時に発熱がなく、その取り扱いが簡便な材料を提供することを目的とする。
以下、本発明を実施するための最良の形態について説明する。
(土壌用固化剤)
本件発明に係る土壌用固化剤は、上述のように700℃〜1000℃で焼成し、粉末度4000cm/g以上となるように調整された酸化マグネシウムである。酸化マグネシウムは土中の水と反応すると、水酸化マグネシウムを生じる。この水酸化マグネシウムは難溶性であるが、土に対して硬化物としての強度をもたらすものではなく、土壌中のシリカ成分等を反応して、その反応生成物が固化に寄与すると考えられる。その結果、人間の足で踏んだときに適度な弾性を持ち、土を踏みしめる感触を残す程度の固化が可能となる。
ここで用いる酸化マグネシウムは、酸化マグネシウムを700℃〜1000℃で焼成し、粉末度4000cm/g以上となるように調整された酸化マグネシウムである。酸化マグネシウムを700℃〜1000℃で焼成するのは、後に焼成後の酸化マグネシウムを解砕し粉砕することで、粉末度4000cm/g以上となるようにするために最も良好な焼成温度範囲なのである。ここで焼成温度が700℃未満になると、焼成不良を起こしやすく酸化マグネシウムの細粒化が行えず、活性度に優れた良好な酸化マグネシウム粉末を得ることが出来ない。そして、焼成温度を1000℃を超えるものとすると、焼成後の酸化マグネシウムが強固に凝集し易くなり、後の解砕作業が困難となり、低温焼成品に比べて固化速度が遅くなる傾向が強くなる。
また、上記温度範囲で焼成を行う場合の時間は、大気雰囲気中で4時間〜5時間の範囲とすることが好ましい。4時間未満の加熱時間の場合には、焼成後のミル装置を用いての粉末化作業が困難となる。そして、5時間を超える焼成時間とすると、得られた焼成後の酸化マグネシウムの活性度が低下し、固化反応を迅速に行わせることが出来なくなるのである。
一般的に酸化マグネシウム(MgO)には、低温焼成品(1000℃以下での焼成)と高温焼成品(1000℃を超える温度での焼成)とがある。しかしながら、本発明の目的を達成するためには、上述のような700℃〜1000℃の範囲での低温焼成品を用いる事が反応性に優れた活性度を維持する観点から好ましい。そして、酸化マグネシウムの粉末度は4000cm/g以上が好ましい。粉末度が、4000cm/g以下のものを用いると、低温焼成品を用いても、土壌の固化速度が遅くなり、土壌の固化に適さなくなるのである。ここで言う粉末度とは、所謂粉体として捉えたときの比表面積であり、本件発明では、実測した値であり、酸化マグネシウム粉2.00gを75℃で10分間の脱気処理を行った後、モノソーブ(カンタクロム社製)を用いてBET1点法で測定した結果として得られる比表面積のことである。
更に言えば、上記温度範囲で酸化マグネシウムを焼成することで、酸化マグネシウムを焼成し、粉体化するため現在の技術レベルのミル処理をすると、経験的に4000cm/g〜9500cm/gの粉末度の酸化マグネシウム粉と出来ることが判明している。そこで、粉末度が8500cm/g以上とすると、急激に固化反応の速度が上昇する傾向にある。そこで、より好ましくは8500cm/g〜9500cm/gの粉末度の酸化マグネシウム粉として用いることが好ましいのである。
そして、上記酸化マグネシウムは、対象火山灰土1m(有姿もしくは地山状態)に対して30kg〜300kgを添加することが望ましい。酸化マグネシウムの添加量が30kg未満の場合には、関東ローム土を始めとする火山灰土の殆どを速やかに固化させることは困難となる。一方、酸化マグネシウム添加量が300kgを超えて添加すると、硬化時の発熱が大きくなり固化が進行し過ぎて、固化土壌に微小な亀裂や肌荒れを生じ美観が損なわれ脆くなると共に、強アルカリになるため六価クロムの溶出を引き起こしやすくなるのである。
そして、本件発明に係る土壌固化剤に対しpH調整剤を添加することも好ましい。関東ロームは、セメント系固化剤又は石灰改良土を混合し固化させようとして、アルカリ性になると六価クロムの溶出が顕著になる傾向にある。しかしながら、酸化マグネシウムを添加した土壌のpHは、おおむね9〜10の弱アルカリ性範囲となるが、六価クロムの溶出現象を引き起こさない。このpHは、セメントや石灰改良土のpH(1l〜12)と対比すると弱アルカリ性であると言えるが、さらに中性領域とすることが求められる場合がある。このような場合に、pH調整剤を用いるのである。そして、pH調整剤によりpH5.8〜pH8.6の中性領域に調製する事で、生態系に与える環境的影響を排除出来るのである。pH調整剤には、例えば硫酸アルミニウム、ポリ塩化アルミニウム、硫酸第一鉄、硫酸第二鉄、塩化第二鉄、リン酸、第一リン酸ナトリウム、重過リン酸カルシウム、過リン酸カルシウム、スルファミン酸、クエン酸などがあり、これらのpH調整剤は、二種以上を混合して用いることも可能である。
そして、pH調整剤を用いる場合、上述のようにpH5.8〜pH8.6の中性領域となるように添加するのであるから、pH調整剤の含有量は、特に限定を要するものではない。しかしながら、火山灰土の性質と、そこに混合させる酸化マグネシウムの量とを考え、酸化マグネシウム量を基準として、pH調整剤の量を考えることが好ましい。従って、酸化マグネシウム量100重量部に対して、上記pH調整剤を1重量部〜100重量部の範囲で使用することが好ましい。酸化マグネシウムに対するpH調整剤量が、1重量部未満になると、pH調整の目的の範囲に入らない。これに対し、酸化マグネシウムに対するpH調整剤量が、100重量部を超えると、pHが強酸性側になり好ましくない。
また、この本件発明に係る土壌用固化剤は、強度向上剤を含有するものとすることも好ましい。ここで言う強度向上剤には、2つの種類の強度向上剤を選択的に使用することが可能である。その一つは、硫酸マグネシウムを用いるのである。酸化マグネシウムと硫酸マグネシウムとを併用することにより、改良土に酸性の硫酸マグネシウムを混入させることで、改良土の硬化を促進させる効果と同時にpHを低くする作用もあることから望ましい。
もう一つの強度向上剤として、シリカの細粒を用いることも好ましい。本件発明に係る土壌用固化剤は、関東ロームの固化に適している。その理由はシリカを大量に含んだアロフェンと酸化マグネシウム(土壌中は水酸化マグネシウム)との反応にある。このアロフェンは、火山灰の風化により化学的な変質を受け、シリカを多量に含む粘度鉱物であり、その形状は中空球で、重金属イオンに対する選択反応性が高いため、マグネシウムとの反応性に富むものと考えられる。従って、関東ロームから抽出したアロフェンを強度向上剤として用いることが好ましいが、アロフェンに替えて、アロフェンの主成分であるシリカを強度向上剤として用いることが可能となる。
そして、本件発明に係る土壌固化剤に強度向上剤を含ませる場合には、上記酸化マグネシウム100重量部に対して、上記強度向上剤を5重量部〜100重量部含有するものとする事が好ましい。強度向上剤の添加量が、5重量部未満の場合には、強度向上効果を発揮し得ない。一方、強度向上剤の添加量が、100重量部を超えると、上述した酸化マグネシウムの添加量とのバランスを欠き、固化後の強度は上昇しても、弾力性のない脆い固化状態となるのである。更に好ましくは、上記酸化マグネシウム100重量部に対して、上記強度向上剤を5重量部〜50重量部とするのである。50重量部を超え、100重量部以下の範囲は、添加量に応じた顕著な固化強度を得ることが出来ず、緩やかな上昇に止まるためである。
(土壌用混合固化剤)
もう一つの土壌用固化剤は、上述の土壌用固化材と火山灰土とを混合してなる土壌用混合固化材である。本件発明に係る土壌用固化剤は、関東ローム等の火山灰土の固化に最適であり、固化を良好に行うためには、アロフェンの如きシリカ成分を多量に含有することが必要となる。従って、本件発明に係る土壌用固化剤を、他のアロフェンの如き成分の少ない火山灰土、沖積土壌、サンド質土壌等に混合して、直接固化させることが困難な場合がある。
そこで、本件発明に係る土壌用固化剤と関東ロームと同様の品質の火山灰土とを混合した土壌用混合固化剤として用いることで、他の非晶質成分であるアロフェンの如き成分の少ない火山灰土、沖積土壌、サンド質土壌の適正な固化が可能となる。
このとき土壌用混合固化材は、前記土壌用固化剤100重量部に対して、火山灰土を5重量部〜300重量部含有するものとする事が好ましい。このときの火山灰土は、入手しやすく、酸化マグネシウムによって大きな強度が得られるものが好ましい。混合する火山灰土の形態は、地山状態、乾燥状態のいずれでもよいが、乾燥後十分に粉砕した方が混合性が向上し、固化強度が得られやすい。火山灰土が5重量部未満の場合には、アロフェンの如きシリカ成分の少ない沖積土壌、サンド質土壌の固化が出来ない。そして、火山灰土を300重量部を超えて添加すると、沖積土壌又はサンド質土壌の固化進行が著しく、固化後の土壌に微小な亀裂や肌荒れを生じ美観が損なわれると共に脆くなる。
更に、本件発明に係る土壌固化剤(又は土壌混合固化剤)の土壌(火山灰土、沖積土壌、サンド質土壌のいずれか)に対する混合方法としては、地盤改良工事に用いられる混合機を用いることができる。この混合機には、土壌改質を行う原位置で土壌固化剤(又は土壌混合固化剤)と土壌とを混合するタイプの装置と、地上で土壌固化剤(又は土壌混合固化剤)と土壌とを混合するタイプの装置とがある。火山灰土を、地盤材料として再利用する場合は、後者の地上で混合するほうが効果的で高品質の改質土壌を得ることができる。いずれの場合も粉体と水とをスラリー状として用いても良い。そして、そのスラリーに添加する水の量を増やすことで、改質土壌はスラリー状となり、流動化処理土とすることもできる。以下、本件発明を実施例に基づきさらに詳細に説明するが、本件発明に係る技術的思想は、他の具体的実施例として具現化することが可能である。
実施例1は、本件発明に係る土壌固化剤が、火山灰土の固化に対して極めて有効となることを実証するための実施例であり、以下に述べる比較例1〜比較例3と対比するためのものである。
この実施例1では、種々の対象土に、土壌固化剤を混入させ、酸化マグネシウム改良土の火山灰土に対する混合28日後の固化強度を示した。ここで用いた土壌用固化剤は、酸化カルシウムを900℃で4.5時間焼成し、粉砕機で解砕処理することで、粉末度8900cm/gとなるように調整した酸化マグネシウム粉である。そして、対象土1mに対して、上記土壌固化剤100kgを混合させたものである。その結果を、比較例と共に表1に示す。
そして、一軸圧縮強度の測定は、安定処理混合物の一軸圧縮試験方法(舗装試験法便覧 日本道路協会)に準拠し、供試体寸法を直径100mm、高さ127mmの円柱状とし、供試体の作成は3層25回とした。以下、同様である。
この実施例2では、土壌用混合固化剤を用い、山砂を固化させた場合の、材齢による一軸圧縮強度の測定結果の変化を示した。この実施例2は、以下に述べる比較例4と対比するためのものである。
ここで言う土壌用混合固化剤は、実施例1で用いた土壌用固化剤100重量部(900kg)に対し、関東ローム111重量部(約1000kg)を混合したものである。そして、この土壌用混合固化剤を2500kgの山砂に混合し改良土とした。この改良土に関して、実施例1と同様にして一軸圧縮強度を測定し、その測定結果を、実施例3及び比較例4と共に表2に示した。
この実施例3では、強度向上剤を含んだ土壌用混合固化剤を用い、山砂を固化させた場合の、材齢による一軸圧縮強度の測定結果の変化を示した。この実施例3は、以下に述べる比較例4と対比するためのものである。
ここで言う強度向上剤を含んだ土壌用混合固化剤は、実施例1で用いた土壌用固化剤100重量部(900kg)に対し、関東ローム111重量部(約1000kg)、強度向上剤としての硫酸マグネシウム11重量部(約100kg)を混合し改良土とした。この改良土に関して、実施例1と同様にして一軸圧縮強度を測定し、その測定結果を、実施例2、比較例4と共に表2に示した。
この実施例3では、強度向上剤を含んだ土壌用混合固化剤を用い、山砂を固化させた場合の、材齢による一軸圧縮強度の測定結果の変化を示した。この実施例4は、以下に述べる比較例4と対比するためのものである。
ここで言う強度向上剤を含んだ土壌用混合固化剤は、実施例1で用いた土壌用固化剤100重量部(900kg)に対し、関東ローム111重量部(約1000kg)、強度向上剤としてのシリカ細粒20重量部(約180kg)を混合し改良土とした。この改良土に関して、実施例1と同様にして一軸圧縮強度を測定し、その測定結果を、実施例2、実施例3、比較例4と共に表2に示した。
この実施例5では、強度向上剤を含んだ土壌用混合固化剤を用い、山砂を固化させた場合の、材齢による一軸圧縮強度の測定結果の変化を示した。この実施例5は、以下に述べる比較例4と対比するためのものである。
ここで言う強度向上剤を含んだ土壌用混合固化剤は、実施例1で用いた土壌用固化剤100重量部(900kg)に対し、関東ローム111重量部(約1000kg)、強度向上剤としての硫酸マグネシウム11重量部(約100kg)とシリカ細粒20重量部(約180kg)を混合し改良土とした。この改良土に関して、実施例1と同様にして一軸圧縮強度を測定し、その測定結果を、実施例2、実施例3、実施例4、比較例4と共に表2に示した。
この実施例6は、関東ロームを固化させた改質土からの六価クロムの溶出を抑制出来ている効果を示すためのものである。ここでは、関東ロームに水を添加して、関東ロームを100wt%としたときの含水率150wt%の流動化処理土用に調整したのスラリー1mに対して、実施例1で用いた土壌用固化剤300kgを混合添加した。
そして、六価クロムの溶出試験は、環境庁告示46号試験(JLT−46)に準拠して行った。そして、六価クロムの定量分析は、JIS K0102 パラグラフ65.2.1に準拠し、吸光光度計で測定した。その結果の六価クロム溶出量を、比較例5と同時に表3に示した。
比較例
(比較例1)
比較例1は、実施例1と対比するための実施例であり、実施例1の本件発明に係る土壌用固化剤に代えて、高炉セメントを土壌用固化剤として用いたものであり、その他の条件は、実施例1と同様である。そして、結果を、実施例1と共に表1に示した。
(比較例2)
比較例2は、実施例1と対比するための実施例であり、実施例1の本件発明に係る土壌用固化剤に代えて、消石灰を土壌用固化剤として用いたものであり、その他の条件は、実施例1と同様である。そして、結果を、実施例1と共に表1に示した。
(比較例3)
比較例2は、実施例1と対比するための実施例であり、実施例1の本件発明に係る土壌用固化剤に代えて、生石灰を土壌用固化剤として用いたものであり、その他の条件は、実施例1と同様である。そして、結果を、実施例1と共に表1に示した。
Figure 2006176669
(比較例4)
比較例4は、実施例2及び実施例3と対比するためのものであり、実施例3の本件発明に係る土壌用混合固化剤の関東ローム成分を抜いた点が異なる。その他の条件は、実施例3と同様である。そして、結果を、実施例2及び実施例3と共に表2に示した。
Figure 2006176669
(比較例5)
比較例5は、実施例4と対比するための実施例であり、実施例4の本件発明に係る土壌用固化剤に代えて、通常のポルトランドセメントを土壌用固化剤として用いたものであり、その他の条件は、実施例4と同様である。そして、六価クロム溶出量を測定した結果を、実施例4と共に表3に示した。
Figure 2006176669
(実施例と比較例との対比)
最初に表1を用いて、実施例1と比較例1〜比較例3とを対比する。実施例1の酸化マグネシウム改良土の火山灰土に対する混合28日後の固化強度と、比較例1の土壌固化剤としてセメントを用いた場合、比較例2の消石灰を用いた場合、比較例3の生石灰を用いた場合のそれぞれの改良土を比較すると、実施例1の酸化マグネシウム改良土の固化強度は、いずれの火山灰土に対しても、比較例と比べても大きく上回っている。
次に、表2を用いて実施例2〜実施例5と比較例4とを対比する。実施例2〜実施例5の土壌固化剤の一部として関東ロームを加えた場合は、材令とともに酸化マグネシウムと関東ロームに含まれる非晶質成分が反応して硬化物が生成され、固化強度は増加している。これに対し、山砂に対して酸化マグネシウム及び硫酸マグネシウムのみを加え、関東ロームを加えなかった場合には、材令初期には大きな強度が得られるが、材令とともに強度が低下している。山砂には、酸化マグネシウムと反応して硬化物を生成する非晶質成分が無いためと考えられる。また、強度向上剤を添加した実施例3〜実施例5が実施例2よりも高い固化強度を発揮する事が分かる。
更に、表3を用いて実施例6と比較例5とを対比する。実施例6は、酸化マグネシウムを土壌固化剤として用いた流動化処理土からの六価クロム溶出量は、検出限界以下の0.01mg/L以下となり、土壌環境基準である0.05mg/Lを下回り、固化材としての環境安全性に優れていることが分かる。一方、土壌固化剤として通常のポルトランドセメントを用いた場合は、従来から指摘されているように、改良土からの溶出量が0.07mg/Lとなり、土壌環境基準を上回り、固化材として使用が不適当であることが分かる。
以上の通り、本件発明に、上述の粉体特性を備える酸化マグネシウムを土壌用固化剤として用いることで、関東ローム等の火山土を、従来の土壌固化剤に比べ、高い固化強度を得ることが可能であり、関東ローム等火山灰土を対象としたあらゆる地盤改良工事に適用できる。
また、関東ロームに含まれているような非晶質成分が少ない沖積土や砂質土壌に対しては、酸化マグネシウムと関東ローム等の火山灰土とを混合した土壌用混合固化材とすることにより、高い固化強度が得られ沖積土や砂を対象とした地盤改良にも適用できる。
更に、本件発明に係る土壌用固化剤及び土壌用混合固化剤を用いた、酸化マグネシウム改良土からは、六価クロム溶出量が極めて少なく土壌環境基準を容易に満たすものとなり、地盤改良に際しての環境安全性を確保出来るのである。

Claims (9)

  1. 土壌に混入させ固化させるための土壌用固化剤であって、当該土壌用固化剤は、700℃〜1000℃で焼成し、粉末度4000cm/g以上となるように調整された酸化マグネシウムであることを特徴とする土壌用固化材。
  2. pH調整剤を含有する請求項1に記載の土壌用固化材。
  3. 上記酸化マグネシウム100重量部に対して、上記pH調整剤を1重量部〜100重量部含有する請求項2に記載の土壌用固化材。
  4. 強度向上剤を含有する請求項1〜請求項4のいずれかに記載の土壌用固化材。
  5. 上記酸化マグネシウム100重量部に対して、上記強度向上剤を1重量部〜100重量部含有する請求項4に記載の土壌用固化材。
  6. 上記土壌が火山灰土である請求項1〜請求項5のいずれかに記載の土壌用固化材。
  7. 土壌に混入させ固化させるための土壌用固化剤であって、請求項1〜請求項5のいずれかに記載の土壌用固化材と火山灰土とからなる土壌用混合固化材。
  8. 前記土壌用固化剤100重量部に対して、火山灰土を5重量部〜300重量部含有する請求項7に記載の土壌用混合固化材。
  9. 上記土壌が沖積土壌又はサンド質土壌である請求項7又は請求項8に記載の土壌用混合固化材。
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