JP2006174349A - 画像修復方法及び画像修復処理装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】写真フィルム画像の画像データ化に使用されている照射光の拡散度にかかわらず、写真フィルムに生じた傷、特にベース傷の修復を精度よく行うことができる画像処理技術を提供する。
【解決手段】写真フィルムへの照射光を通じて取得された多数の画素から構成される非可視光画像データと可視光画像データに基づいて、前記写真フィルムに生じているベース傷による影響を修復する画像修復処理装置。照射光の拡散度を算定する照射光拡散度算定部61aと、ベース傷による可視光画像データのベース傷による影響を修復するベース傷修復部62aと、ベース傷修復部における修復量を照射光拡散度算定部61aで算定された拡散度に応じて調整する修復量調整部62bとが備えられている。
【選択図】 図3

Description

本発明は、写真フィルムへの照射光を通じて取得された多数の画素から構成される非可視光画像データと可視光画像データに基づいて、前記写真フィルムに生じている傷、特に写真フィルムのベース面に付された傷であるベース傷による影響を修復する画像修復方法及び画像修復処理装置に関する。
ネガフィルム、ポジフィルム等の写真フィルムに記録された画像を印画紙へ出力するプリンタとして、最近は、写真フィルムの画像を透過した照射光がCCDなどで光電変換するフィルムスキャナを用い、さらにフィルムスキャナを通じてデジタル化された画像データを最適に画像処理し、この画像データに基づいて変調した光を用いて印画紙を露光するデジタル方式のプリンタが主流となっている。
このようなデジタル方式のプリンタでは、取得された画像データに対する画像処理の段階で、写真フィルムに生じた傷の影響を効果的に修復することが可能となる(例えば、特許文献1参照)。この傷消し画像処理技術は、写真フィルムに赤外光を照射した際、写真フィルムを透過する赤外光が写真フィルムに付いた傷により散乱されるが、写真フィルムの画像を形成する色素によって基本的に影響を受けないという原理に基づいている。つまり、写真フィルムを透過した赤外光により形成される赤外画像データにおいては、傷の情報のみが含まれることになり、傷の影響を受けている画素のみ、その画素値が低下する傾向にある。また、同一の写真フィルムに可視光線を透過させて形成される可視光画像データ(赤色成分、緑色成分、青色成分のデジタル画像データ)においても、基本的には赤外画像データと同程度に傷の影響を受けている画素の画素値の低下が生じると考えられる。よって、赤外画像データにおいて、画素値が低下している画素を傷による影響を受けている画素と判断することができ、可視光画像データにおいて対応する画素の色成分ごとの画素値に、赤外画像データの画素値低下量を加算することにより、傷による影響を除去するのである。
しかしながら、厳密には、可視光画像データと赤外画像データとで、同一の傷から受ける影響の大きさは完全に一致しておらず、写真フィルムに付いた傷の程度の軽重によって、赤外画像データとデジタル画像データとで傷による影響の大きさが変わってくる。これは、写真フィルムに付された傷によって散乱される光の量が、光の波長によって異なり、可視光から形成されるデジタル画像データと赤外光から形成される赤外画像データとでは、傷による影響の度合いが微妙に異なるからである。したがって、上述した従来の画像修復技術では、写真フィルムに付いた傷の程度に応じて、傷の補正に過不足が生じる場合があり、傷による影響を完全に除去することができないという問題が生じてしまう。このため、傷による影響を受けている画素を中心画素としたフィルタ演算により得られる濃度を傷周辺濃度とするとともに傷周辺濃度から中心画素の濃度を減算して得られる値を補正量とし、中心画素の各色成分の画素値にこの補正量を加算することで傷補正を行う際に、上記フィルタ演算が、フィルタ演算で参照される各画素に関し、中心画素の画素値と参照される画素の画素値との差の絶対値を求め、この絶対値と負の相関関係となる重みを与えることが、提案されている(例えば、引用文献2参照)。しかしながら、この画像修復技術では、全てのフィルムスキャナにおける照射光(可視光及び赤外光)の光特性が一定であることが前提とされているが、ある程度の機体個体差は避けられず、ましてや光トンネル機構や光ファイバ機構といった異なる形式の光照射機構を採用している機種における照射光の光特性、特に拡散度は、かなりの差が生じている。このような照射光の光特性の差が、可視光画像データと赤外画像データに及ぼす同一の傷からの影響の大きさの違いを引き起こし、結果的に画像修復の品質低下をもたらすことが、本出願の発明者の知見により明らかになった。
特開2000−341473号公報(段落番号0043〜0047、図3) 特開2004−104232号公報(段落番号0006〜0013)
本発明は、上記の問題点を解決するためになされたもので、その課題は、写真フィルム画像の画像データ化に使用されている照射光の拡散度にかかわらず、写真フィルムに生じた傷、特にベース傷の修復を精度よく行うことができる画像処理技術を提供することにある
写真フィルムへの照射光を通じて取得された多数の画素から構成される非可視光画像データと可視光画像データに基づいて前記写真フィルムに生じている傷、特にベース傷による影響を修復する画像修復方法において、上記課題を解決するため、本発明では、前記照射光の拡散度を算定し、前記ベース傷による前記非可視光画像データの変化量を用いて前記可視光画像データのベース傷による影響を修復する際に前記拡散度に応じてその修復量を調整することを特徴とする。
この特徴により、まず写真フィルムに形成されている撮影コマ画像をデジタル画像化するフィルムスキャナに用いられる照射光の拡散度が算定され、この拡散度に応じてベース傷が非可視光画像データと可視光画像データに及ぼす影響を調整して、前記可視光画像データのベース傷による影響を修復することになるので、フィルムスキャナの個体差の結果生じる照射光の拡散度のばらつきにもかかわらず、写真フィルムに生じた傷、特にベース傷の修復を精度よく行うことができる。なお、ここで言うベース傷とは、写真フィルムを構成するベース層と乳剤層の内ベース層に生じた傷、及びベース層や乳剤層の表面に付着したゴミや埃などの非可視光と可視光の両者に光学的に影響を与えるものも含むものである。
照射光の拡散度を算定する具体的な実施形態の1つとして、まずは、NDフィルタを通過した照射光に基づく画像データから算出された粒状度に基づいて照射光の拡散度を算定する技術が挙げられる。一般的なフィルムスキャナにはシェーディング補正等の目的でNDフィルタが装備されているので、このNDフィルタに照射光を当てて取得された画像データからそれ自体はよく知られた粒状度測定アルゴリズムを用いて粒状度を測定し、この粒状度と照射光の拡散度の依存関係から照射光の拡散度を算定する。粒状度測定アルゴリズムも、写真フィルムの粒状度に基づく輪郭強調の調整などのために、一般的にフィルムスキャナに付随するものであることから、特別に高いコストをかけることなしに、照射光の拡散度を算定することが可能となる。
この画像修復技術の前提となる画像デジタル化においてスキャニング対象となるのは写真フィルムであるということを考慮して、写真フィルムにおける照射光の拡散度を求めるという観点からは、前記照射光の拡散度が前記写真フィルムのスヌケ部分の可視光画像データから算出された粒状度に基づいて算定されることも好適な実施形態の1つとして提案される。写真フィルムのスヌケ部分とは未露光部分であり、安定した一様濃度が期待されるので、この部分から取得された画像データを構成する画素値の分布状態から照射光の拡散度を求めることが可能となる。また、この方法は、スキャニング対象としての写真フィルムの一部を利用しているので、一連の画像デジタル化のスキャニングプロセス時に実施することができるという副次的な利点も得られる。
前述したように、照射光の拡散度を一連の画像デジタル化のスキャニングプロセス時に算定する場合の好適な方法として、このスキャニングプロセスが前記非可視光画像データと可視光画像データを低解像度で取得するプレスキャンと前記非可視光画像データと可視光画像データを高解像度で取得する本スキャンとに分けられている場合、前記照射光の拡散度がプレスキャン時に算定され、前記プレスキャンに続いて実行される本スキャン時に前記可視光画像データが修復されるような手順を採用することが処理の合理化の点で好都合である。
照射光の拡散度算定処理を最も簡単化するためには、前記写真フィルムの形成されている撮影コマ画像からの画像データから算出された粒状度に基づいて照射光の拡散度が算定される方法が提案される。これは、いずれにしてもスキャニングして取得される撮影コマ画像の画像データから粒状度を求めて、この粒状度から照射光の拡散度を算定するので、余計な部分をスキャニングするといった無駄を省くことができる。
本発明では、さらに、上述した画像修復方法を実施する画像修復処理装置も権利の対象としており、そのような画像修復処理装置は、照射光の拡散度を算定する照射光拡散度算定部と、前記ベース傷による前記可視光画像データのベース傷による影響を修復するベース傷修復部と、前記ベース傷修復部における修復量を前記照射光拡散度算定部で算定された拡散度に応じて調整する修復量調整部とが備えられていることを特徴としている。当然ながら、このような画像修復処理装置も上述した画像修復方法で述べたすべての実施態様を流用できるとともに、上述した全ての作用効果を得ることができる。
本発明によるその他の特徴及び利点は、以下図面を用いた実施形態の説明により明らかになるだろう。
本発明の実施の形態について、図面に基づいて説明する。
図1は本発明による画像修復技術を採用したフィルム傷修復処理ユニットを搭載した写真プリント装置を示す外観図であり、この写真プリント装置は、ここでは図示されていないフィルム現像機によって現像処理された写真フィルム1(以下、単にフィルムと略称する)の撮影画像コマを多数の画素からなるデジタル画像データ(以下、単に画像データと略称する)として読み取るフィルムスキャナ3や取得された画像データに画像処理を施してプリント情報を作成するコントローラ5などを備えた操作ステーションOSと、操作ステーションOSからのプリント情報に基づいて印画紙2に対して露光処理と現像処理とを行って写真プリント2aを作成するプリントステーションPSとから構成されている。コントローラ5は、基本的には汎用パソコンから構成されており、本発明による画像修復技術を組み込んだフィルム傷修復処理ユニットを実装している。このパソコンには、この写真プリント装置の操作画面を表示するモニタ4a、デジタルカメラ等で利用されているメモリカード等から画像データを読み込むメディアリーダ4b、オペレータによる操作入力に用いられるキーボード4c等が組み込まれている。
プリントステーションPSは、図2に示されているように、2つの印画紙マガジン11に納めたロール状の印画紙2を引き出してシートカッター12でプリントサイズに切断すると共に、このように切断された印画紙2に対し、バックプリント部13で色補正情報やコマ番号などのプリント処理情報を印画紙2の裏面に印字するとともに、露光プリント部14で印画紙2の表面に撮影画像の露光を行い、この露光後の印画紙2を複数の現像処理槽を有した処理槽ユニット15に送り込んで現像処理する。乾燥の後に装置上部の横送りコンベア16からソータ17に送られた印画紙2、つまり写真プリント2aは、このソータ17の複数のトレイ17aにオーダ単位で仕分けられた状態で集積される(図1参照)。
上述した印画紙2に対する各種処理に合わせた搬送速度で印画紙2を搬送するために印画紙搬送機構18が敷設されている。印画紙搬送機構18は、印画紙搬送方向に関して露光部14の前後に配置されたチャッカー式印画紙搬送ユニット18aを含む複数の挟持搬送ローラ対から構成されている。
露光プリント部14には、副走査方向に搬送される印画紙2に対して、主走査方向に沿って操作ステーションOSからのプリントデータなどのプリント情報に基づいてR(赤)、G(緑)、B(青)の3原色のレーザ光線の照射を行うライン露光ヘッドが設けられている。処理槽ユニット15は、発色現像処理液を貯留する発色現像槽15aと、漂白定着処理液を貯留する漂白定着槽15bと、安定処理液を貯留する安定槽15cを備えている。
フィルムスキャナ3はフィルム傷修復のための構成部材を備えたフィルムスキャナであり、主な構成要素として、照明光学系31、撮像光学系としてのズームレンズ32、入射してきた光を可視光と非可視光としての赤外光に分けるダイクロイックミラー33、可視光用センサユニット34、赤外光用センサユニット35を備えている。照明光学系31は、光源としてのハロゲンランプ又は発光ダイオード(R・G・B・IRの各色LED)と、その光源からの光を照射光として調光するミラートンネルや拡散板などから構成されている。さらに、照射光がフィルム1に当たる手前の位置にNDフィルタ36が、照射光の光路に対して直交する方向で進退移動可能に設けられている。このNDフィルタ36はシェーディング補正処理時や本発明による画像修復に利用される照射光の拡散度を算定する際に照射光の光路に進入し、NDフィルタ36の透過光のデジタル画像データ化のために用いられる。
可視光用センサユニット34は、フィルム1の3つの基本色成分(例えばR:赤色成分、G:緑色成分、B:青色成分)からなる可視光画像を検出するためにそれぞれ適合するカラーフィルタを装着した3つのCCDアレイ34aと、これらのCCDアレイ34aによって検出された可視光信号を処理して基本色成分で構成されたR・G・B画像データを生成してコントローラ5へ転送する可視光用信号処理回路34bを備えている。これに対して、赤外光用センサユニット35は、フィルム1に付いている傷の状態を赤外光画像として検出するためにダイクロイックミラー33から分岐された赤外光のみを受けるように配置されたCCDアレイ35aと、このCCDアレイ35aによって検出された赤外光信号を処理して赤外光画像データを生成してコントローラ5へ転送する赤外光用信号処理回路35bを備えている。
このように構成されたフィルムスキャナ3では、フィルム1の撮影画像コマが所定の読取位置に位置決めされると、撮影画像コマの読取処理が開始されるが、その際撮影画像コマの投影光像は、フィルム搬送機構37によるフィルム1の副走査方向への送り操作により、複数のスリット画像に分割された形で順次可視光用センサユニット34及び赤外光用センサユニット35によって読み取られ、R、G、Bの色成分の画像信号並びに赤外成分の画像信号に光電変換され、生の画像データとしてコントローラ5に送られる。このような、照明光学系31、撮像光学系32、可視光用センサユニット34及び赤外光用センサユニット35の各制御はコントローラ5からの動作指令によって行われている。
コントローラ5は、CPUを中核部材として、入力されたデータに対して種々の処理を行うための機能部がハードウエア又はソフトウエア或いはその両方で構築されているが、本発明に特に関係する機能部として、図3に示されているように、可視光用センサユニット34によって取得された可視光画像データ及び赤外光用センサユニット35によって取得された赤外光画像データを用いて後で詳しく説明するフィルム1の傷に起因する欠陥画素(傷画素)の修正を行うフィルム傷修復処理ユニット6、フィルム傷修正されメモリ51に展開されている画像データに対して色調補正やフィルタリング(ぼかしやシャープネスなど)やトリミングなどの各種画像処理を施す画像処理部52、画像データやその他の表示アイテムをビデオメモリに取り込むとともにこのビデオメモリに展開されたイメージをビデオコントローラによってビデオ信号に変換してモニタ4aに送るビデオ制御部53、画像処理部52で処理された最終的な画像データ等をプリントデータに変換してプリントステーションPSの露光プリント部14に転送するプリントデータ生成部54、GUIを用いて作り出された操作画面の下でキーボード4c等を通じて入力された操作指令や予めプログラム化された操作指令に基づいて各機能部を制御するプリント管理部55が挙げられる。
フィルム傷修復処理ユニット6は、フィルムスキャナ3から送られてきた可視光画像データおよび赤外光画像データを用いて、ベース傷修復処理と乳剤傷修復処理を実行するものであり、前処理モジュール61と、ベース傷修復モジュール62と、乳剤傷判定モジュール63と、乳剤傷修復モジュール64、内部メモリ65を備えている。
前処理モジュール61は、ベース傷修復処理、および乳剤傷検出処理の前段階となる処理を実行するモジュールである。具体的には、前処理モジュール61は、フィルムスキャナ3の照射光の拡散度を算定する照射光拡散度算定部61aと、傷による影響を受けていない画素(以下、「正常画素」とする)の赤外光画像データの画素値であるクリアフィルム値(以下CF値と略称する)を算定するCF値算定部61bとを備えている。
同一フィルム1から得られた赤外光画像データと可視光画像データとでは互いに画素が対応関係にある。一方、フィルム1を透過する赤外光は、フィルム1のベース傷により影響を受けるものの、フィルム1の色素により影響を受けることがない。すなわち、赤外光画像データにはベース傷の情報が含まれるものの、フィルム1に形成されている画像情報が含まれることはなく、ベース傷の影響を受けている画素(以下、「ベース傷画素」とする)は、傷のない状態から画素値が低下する傾向にある。よって、CF値は、正常画素とベース傷画素とを区別するための閾値として用いることができ、赤外光画像データの画素値がCF値以下の画素をベース傷画素と判断することができる。
ベース傷修復モジュール62には、CF値を用いて検出したベース傷画素の修復処理を実行するベース傷修復部62aが備えられており、具体的には、ベース傷画素に関して、CF値から赤外光画像データの画素値を引くことにより、該当ベース傷画素における傷のない状態からの画素値低下量を算出すると共に、可視光画像データにおける赤色成分,緑色成分,青色成分の各画素値に、上記画素値低下量を加算する処理を実行する。ベース傷は、フィルム1上のベース面に傷が付されているものの、基本的に色素が欠落しているものではないので、ベース傷画素における傷のない状態からの画素値低下量は、赤色成分,緑色成分,青色成分でほぼ等しいと考えられる。したがって、各ベース傷画素に関して、CF値と赤外光画像データの画素値との差である画素値低下量を、赤色成分,緑色成分,青色成分の各画素値に加算すれば、ベース傷による影響をベース傷画素から除去することができる。
しかしながら、照射光、例えば赤外光の拡散度が可視光に較べより大きい場合、傷による影響が少なくなり、その結果、フィルム1に大きなベース傷が存在していても、傷領域の赤外光画像データの画素値がそれほど低下しなくなり、これに反して可視光画像データの画素値は大きく低下することになり、正確なベース傷修復ができなくなる。つまり、ベース傷画素に関して、可視光画像データの画素値と赤外光画像データの画素値の相関(落ち込み度合い)が照射光の拡散度によって異なるため、CF値と赤外光画像データの画素値との差である画素値低下量を単純にベース傷の修復量として赤色成分,緑色成分,青色成分の各画素値に加算するのではなく、照射光の拡散度に応じてその修復量を調整する修復量調整部62bがベース傷修復モジュール62に備えられている。
前述したベース傷とは異なり、乳剤傷は、フィルム1の各色成分の色素が欠落するから、乳剤傷画素における可視光画像データの画素値は、乳剤傷がない状態から上昇する。さらに、色素の欠落量は、色成分ごとに異なるものである。このため、乳剤傷画素における可視光画像データの傷がない状態からの画素値上昇量は、赤色成分,緑色成分,青色成分のそれぞれで異なるものとなる。したがって、乳剤傷による影響を乳剤傷画素から除去するためには、上記ベース傷修復処理とは異なる処理が必要になる。乳剤傷修復のためには、前処理モジュール61により算定されたCF値を赤外光画像データに適用しながら可視光画像データを処理して、乳剤傷画素を検出し、検出された乳剤傷画素の画素位置を示した乳剤傷マップを作成する乳剤傷判定モジュール63と、この乳剤傷マップで規定される乳剤傷画素位置に対応する可視光画像データの色成分ごとの画素値を補間法を用いて修正することで乳剤傷修復処理を実行する乳剤傷修復モジュール64が利用される。
つぎに、フィルム傷修復処理ユニット6における処理の流れについて、図4に示すフローチャートに基づいて説明する。まず、フィルムスキャナ3の照明光学系31から照射される照射光の拡散度を算定する(#01)。
この実施形態では、照射光の拡散度はNDフィルタ36を用いて行われる。NDフィルタ36を照射光光路に進入させた状態で、可視光用センサユニット34と赤外光用センサユニット35を駆動させて、NDフィルタ36の可視光画像データと赤外光画像データを取得し、これらの画像データに対して、照射光拡散度算定部61aは粒状度算出プログラムを起動させて、画素値のばらつき状態である粒状度を求める。この粒状度算出プログラムの基礎となるアルゴリズムは写真プリントのための画像処理の分野ではよく知られているので、ここでは、入力画像において基準画素数(例えば7×7画素)からなるマスクを設定し、各画像データ上でこのマスクを1画素ごとにシフトさせると共に、各シフト位置でマスクに含まれる各画素の画像データの標準偏差を算出し、さらに各シフト位置における標準偏差の平均値を算出して、これを画像データの粒状度としている、本願の出願人による特許文献である公開2004−266481号公報を挙げるだけとし、詳しい説明は省略する。そして、NDフィルタ36自体は実質的に粒状度を示さない光学品質を有するものであることから、シェーディング補正が適正になされている場合この粒状度は主に照射光の拡散度に依存する値であるとみなすことができるので、算出された各色光(R・G・B光及び赤外光)の画像データの粒状度から各色光の拡散度を導くことができる。得られた照射光の拡散度は、ベース傷修復モジュール修復量調整部62bに与えられる。
次いで、フィルムスキャナによる通常の写真フィルムスキャニングが開始される。このフィルムスキャニングによってフィルム1からの画像データ、ここでは可視光画像データ及び赤外光画像データが取得される(#02)。これらのフィルム1の画像データは、CF算定部61bにおけるCF値の算定のために利用される(#03)。
CF値とは、基本的には正常画素の赤外光画像データの画素値であるが、代表的なCF値算定方法の1つが、前述した特許文献2である特開2004−132743号公報の段落番号0068〜0080に詳しく説明されている。つまり、CF値を求めるに先立って、まず、仮のCF値を算出して、この仮のCF値を閾値として、正常画素と考えうる画素のみを検出し、検出された正常画素と考えうる画素のみを用いて赤色リーケージ算出を行うことで、赤外光画像データから赤色リーケージを除去した補正赤外光画像データを作り出し、そこから真のCF値を求めている。その結果、このCF値は、仮のCF値よりも、正常画素の赤外光画像データの画素値に近い値となる。なお、本発明では、このCF値の算定に関して特定の方法を限定しておらず、種々の方法を利用することができる。
次いで、ベース傷修復モジュール62は、赤外光画像データ及び可視光画像データと、そして、前処理モジュール61で算定されたCF値及び拡散度を用いてベース傷修復処理を行う(#04)。このベース傷修復処理では、赤外光画像データの画素値がCF値より低い画素がベース傷画素と判断されるとともに、各ベース傷画素に関し、
(修復量)=〔(CF値)−(赤外光画像データの画素値)〕×調整率、
が算出され、各ベース傷画素に関して、可視光画像データにおける各色成分の画素値に上記修復量が加算されることで、ベース傷修復後の可視光画像データが出力されることになる。ここで調整率は、照射光拡散度算定部61aで算定された拡散度に依存する数値であり、修復量調整部62bにおいて求められる。
なお、修復量は、可視光画像データを構成する各色(R・G・B)データ毎に求められるが、R・G・B光毎に拡散度が異なることも考慮して、調整率も各色に用意される。つまり、R・G・B光と赤外光それぞれの拡散度が照射光拡散度算定部61aで算定され、それぞれの拡散度に応じて調整率が修復量調整部62bによって決定される。調整率は数式で表すと、
R_調整率=f(R_拡散度,IR_拡散度)、
G_調整率=f(G_拡散度,IR_拡散度)、
B_調整率=f(B_拡散度,IR_拡散度)、
となるので、照射光の拡散度を算定する毎に各調整率を式から算出してもよいが、あらかじめテーブル化して、ベース傷修復モジュール62に組み込んでおいてもよい。各色の拡散度から各色の調整率を導出する関数:fは、種々のベース傷を有するテストフィルムを用いて実験的かつ統計学的に求めることができる。
次に、乳剤傷判定モジュール63がベース傷除去後の可視光画像データと赤外光画像データ及び前処理モジュール61で決定されたCF値を用いて乳剤傷画素を検出し、可視光画像データに含まれている乳剤傷画素を修正する乳剤傷除去処理が実行される(#05)。乳剤傷修復処理は、いわゆる周辺の正常画素の画素値を用いた補間法によって行われ、種々の乳剤傷修復アルゴリズムが知られているが、例えば、特開2001−78038号公報や特開2004−266481号公報が参照される。乳剤傷除去処理を受けた可視光画像データは画像処理部52に適当な画像処理を施された後、写真プリント作製のためのプリントデータに変換される。
以下に、別実施形態を列挙する。
(1)上述した実施形態の説明では、照射光の拡散度が、NDフィルタ36からの可視光画像データから算出された粒状度に基づいて算定されたが、これに代えて、写真フィルム1のスヌケ部分からの画像データから算出された粒状度に基づいて照射光の拡散度を算定してもよい。また、精度的には不利となるかもしれないが、いずれにしても写真プリント作製のために取得しなければならない写真フィルム1の撮影コマ画像の画像データからその粒状度を求め、求められた粒状度から照射光の拡散度を算定することも、スキャニングの簡素化の観点からは利点がある。なお、写真フィルム1に基づく画像データの粒状度は写真フィルム1の感度によって差をもつので、種々の感度の写真フィルム1を取り扱う場合には、あらかじめDXコードなどからフィルム感度を求めておいて、そのフィルム感度別に算出された粒状度から拡散度を決定する必要がある。
(2)フィルムスキャナ3は、低解像度で画像データを取得するプレスキャンと高解像度で画像データを取得する本スキャンの2つのモードで駆動させることが可能であるので、プレスキャンにおいて撮影コマ画像部分とスヌケ部分とに関する可視光画像データであるR・G・B画像データと非可視光画像データである赤外光画像データとを取得したのち、それらの粒状度を求め、その結果得られる照射光の拡散度から修正率を決定して、続いて行われる本スキャンで取得されるR・G・B画像データと赤外光画像データに対してベース傷修復処理を施すことも可能である。つまり、本スキャン時には拡散度つまり修復量のための調整率が決定しているので、本スキャン時に、ベース傷修復を実行することができる。
(3)上記実施形態の説明ではカラータイプのフィルムスキャナを例示したが、モノクロタイプのフィルムスキャナにも本発明は適用可能であり、さらにフィルム傷検出のために赤外光以外の非可視光を用いることも可能である。
本発明は、フィルムスキャナによって取得された画像データからフィルム傷、特にベース傷の影響を除去する画像修復技術に適用することができる。
本発明による画像修復技術を採用したフィルム傷修復処理ユニットを搭載した写真プリント装置を示す外観図 写真プリント装置の模式構成図 コントローラの機能ブロック図 傷修復処理のフローチャート
符号の説明
3:フィルムスキャナ
6:フィルム傷修復処理ユニット
34:可視光用センサユニット
35:赤外光用センサユニット
61:前処理モジュール
61a:照射光拡散度算定部
61b:CF値算定部
62:ベース傷修復モジュール
62a:ベース傷修復部
62b:修復量調整部
64:乳剤傷修復モジュール

Claims (6)

  1. 写真フィルムへの照射光を通じて取得された多数の画素から構成される非可視光画像データと可視光画像データに基づいて、前記写真フィルムに生じているベース傷による影響を修復する画像修復方法において、
    前記照射光の拡散度を算定し、前記ベース傷による前記非可視光画像データの変化量を用いて前記可視光画像データのベース傷による影響を修復する際に前記拡散度に応じてその修復量を調整することを特徴とする画像修復方法。
  2. 前記照射光の拡散度が、NDフィルタを通過した照射光に基づく可視光画像データから算出された粒状度に基づいて算定されることを特徴とする請求項1に記載の画像修復方法。
  3. 前記照射光の拡散度が、前記写真フィルムのスヌケ部分からの画像データから算出された粒状度に基づいて算定されることを特徴とする請求項1に記載の画像修復方法。
  4. 前記照射光の拡散度が前記非可視光画像データと可視光画像データを低解像度で取得するプレスキャン時に算定され、前記プレスキャンに続いて実行されるとともに前記非可視光画像データと可視光画像データを高解像度で取得する本スキャン時に前記可視光画像データが修復されることを特徴とする請求項3に記載の画像修復方法。
  5. 前記照射光の拡散度が、前記写真フィルムに形成されている撮影コマ画像からの画像データから算出された粒状度に基づいて算定されることを特徴とする請求項1に記載の画像修復方法。
  6. 写真フィルムへの照射光を通じて取得された多数の画素から構成される非可視光画像データと可視光画像データに基づいて、前記写真フィルムに生じているベース傷による影響を修復する画像修復処理装置において、
    前記照射光の拡散度を算定する照射光拡散度算定部と、前記ベース傷による前記可視光画像データのベース傷による影響を修復するベース傷修復部と、前記ベース傷修復部における修復量を前記照射光拡散度算定部で算定された拡散度に応じて調整する修復量調整部とが備えられていることを特徴とする画像修復処理装置。
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