JP2006167797A - 接合金属板の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】 接合金属板の外側へ接着剤を流出させることなく、上側金属板と下側金属板の曲成部にも接着剤を充填させて接合金属板の接合強度を向上させる。
【解決手段】 略上下に延びる上壁部11と略水平に延びる上側フランジ部12が湾曲形成された上側曲成部13を介して連続して形成される上側金属板10と、略上下に延びる下壁部21と略水平に延びる下側フランジ部22が湾曲形成された下側曲成部23を介して連続して形成される下側金属板20と、を有し、上側フランジ部12と下側フランジ部22が接着剤30を用いて接合される接合金属板1の製造方法であって、上側曲成部13と下側曲成部23の対向面の少なくとも一方における接着剤30に対する濡れ性を、上側フランジ部12と下側フランジ部22の対向面の接着剤30に対する濡れ性に比べて高くする表面処理工程を有する。
【選択図】図1
【解決手段】 略上下に延びる上壁部11と略水平に延びる上側フランジ部12が湾曲形成された上側曲成部13を介して連続して形成される上側金属板10と、略上下に延びる下壁部21と略水平に延びる下側フランジ部22が湾曲形成された下側曲成部23を介して連続して形成される下側金属板20と、を有し、上側フランジ部12と下側フランジ部22が接着剤30を用いて接合される接合金属板1の製造方法であって、上側曲成部13と下側曲成部23の対向面の少なくとも一方における接着剤30に対する濡れ性を、上側フランジ部12と下側フランジ部22の対向面の接着剤30に対する濡れ性に比べて高くする表面処理工程を有する。
【選択図】図1
Description
本発明は、2つの金属板が互いのフランジ部にて接着剤及び溶接により接合される接合金属板の製造方法に関する。
自動車車両、鉄道車両等の大型製品における金属板同士の接合には、スポット溶接が用いられる。スポット溶接は、重ね合わせた2枚の金属板を一対の電極チップで挟み込み、挟圧しながら板厚方向に電流を流すことにより、両金属板に溶接ナゲットと呼ばれる溶融した部分を形成し、このナゲットにより両金属板を点状に溶接するものである。
このスポット溶接を施す際に、各金属板の接合部分に予め接着剤を充填しておくウエルドボンド接合と呼ばれる接合工法がある(例えば、特許文献1参照。)。この接合工法によれば、スポット溶接による接合強度に接着剤による接合強度が加わるので、スポット溶接の打点の位置及び数が同一である場合には接着剤が凝固した分だけ接合強度を向上させることができる。
特許文献1に記載の接合金属板では、2枚の金属板が連続的に1つの壁部をなし、各金属板の境界部に壁部と略直角なフランジ部が形成される。
そして、各フランジ部の間に接着剤が充填された状態で、各フランジ部を重ね合わせてスポット溶接が施される。接合金属板が袋状構造をなす場合は、各フランジ部を重ね合わせる前に、上側金属板と下側金属板の少なくとも一方のフランジ部に接着剤を予め塗布することとなる。各金属板とも、壁部とフランジ部は湾曲した曲成部を介して連続的に形成されている。このように、車両のアウタパネルとインナパネルのような2枚の金属板により袋状に形成される部位では、各金属板にフランジ部を形成してスポット溶接を施すものが一般的である。
特開2004−82136号公報
そして、各フランジ部の間に接着剤が充填された状態で、各フランジ部を重ね合わせてスポット溶接が施される。接合金属板が袋状構造をなす場合は、各フランジ部を重ね合わせる前に、上側金属板と下側金属板の少なくとも一方のフランジ部に接着剤を予め塗布することとなる。各金属板とも、壁部とフランジ部は湾曲した曲成部を介して連続的に形成されている。このように、車両のアウタパネルとインナパネルのような2枚の金属板により袋状に形成される部位では、各金属板にフランジ部を形成してスポット溶接を施すものが一般的である。
ところで、各金属板のフランジ部の間のみならず、曲成部側にも接着剤を凝固させることができれば、接合強度が飛躍的に向上する。ここで、フランジ部に塗布される接着剤の量を増やし、スポット溶接の挟圧時に各フランジ部から各曲成部側へ接着剤を積極的にはみ出させることにより、接着剤を各曲成部に充填させることが考えられる。
しかしながら、フランジ部に塗布される接着剤の量を増やすと、各曲成部と反対側からも接着剤がはみ出して接合金属板の外側へ流出し、この接着剤を後工程で拭き取る必要が生じる。
しかしながら、フランジ部に塗布される接着剤の量を増やすと、各曲成部と反対側からも接着剤がはみ出して接合金属板の外側へ流出し、この接着剤を後工程で拭き取る必要が生じる。
本発明は、前記事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、接合金属板の外側へ接着剤を流出させることなく、上側金属板と下側金属板の曲成部にも接着剤を充填させて接合金属板の接合強度を向上させることのできる接合金属板の製造方法を提供することにある。
前記目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、略上下に延びる上壁部と略水平に延びる上側フランジ部が湾曲形成された上側曲成部を介して連続して形成される上側金属板と、略上下に延びる下壁部と略水平に延びる下側フランジ部が湾曲形成された下側曲成部を介して連続して形成される下側金属板と、を有し、前記上側フランジ部と前記下側フランジ部が接着剤を用いて接合される接合金属板の製造方法であって、前記上側曲成部と前記下側曲成部の対向面の少なくとも一方における前記接着剤に対する濡れ性を、前記上側フランジ部と前記下側フランジ部の対向面の前記接着剤に対する濡れ性に比べて高くする表面処理工程と、前記表面処理工程の後、前記上側フランジ部と前記下側フランジ部の対向面の少なくとも一方に前記接着剤を塗布する塗布工程と、前記塗布工程の後、前記上側フランジ部と前記下側フランジ部を重ね合わせる位置決め工程と、前記位置決め工程の後、前記上側フランジ部と前記下側フランジ部を挟圧して、前記上側フランジ部と前記下側フランジ部を溶接する接合工程と、を有することを特徴とする。
請求項1に記載の発明によれば、塗布工程にて上側フランジ部と下側フランジ部の対向面の少なくとも一方に塗布された接着剤は、位置決め工程にて上側フランジ部と下側フランジ部が重ね合わされた後、接合工程にて上側フランジ部と下側フランジ部が挟圧されると各フランジ部間に行き渡る。ここで、表面処理工程にて上側曲成部と下側曲成部の対向面の少なくとも一方における接着剤に対する濡れ性が、上側フランジ部と下側フランジ部の対向面の接着剤に対する濡れ性に比べて高くされているので、各フランジ部間から各曲成部間に接着剤が流出しやすくなっている。
これにより、接合工程にて、接着剤が各フランジ部から各曲成部側へ流出し、各曲成部間に接着剤が充填される。このとき、各フランジ部における各曲成部と反対側から接着剤がはみ出ることはない。
従って、製造された接合金属板は各フランジ部同士に加えて上側曲成部及び下側曲成部においても上側金属板と下側金属板とが接着されることとなり、各フランジ部同士のみで上側金属板と下側金属板を接着する従来のものに比して飛躍的に接合金属板の接合強度を向上させることができる。また、接合金属板の外側表面へ接着剤が流出することはなく、接着剤を後工程で拭き取る必要はない。
これにより、接合工程にて、接着剤が各フランジ部から各曲成部側へ流出し、各曲成部間に接着剤が充填される。このとき、各フランジ部における各曲成部と反対側から接着剤がはみ出ることはない。
従って、製造された接合金属板は各フランジ部同士に加えて上側曲成部及び下側曲成部においても上側金属板と下側金属板とが接着されることとなり、各フランジ部同士のみで上側金属板と下側金属板を接着する従来のものに比して飛躍的に接合金属板の接合強度を向上させることができる。また、接合金属板の外側表面へ接着剤が流出することはなく、接着剤を後工程で拭き取る必要はない。
請求項2に記載の発明では、略上下に延びる上壁部と略水平に延びる上側フランジ部が湾曲形成された上側曲成部を介して連続して形成される上側金属板と、略上下に延びる下壁部と略水平に延びる下側フランジ部が湾曲形成された下側曲成部を介して連続して形成される下側金属板と、を有し、前記上側フランジ部と前記下側フランジ部が溶接により接合され前記上側金属板と前記下側金属板で閉断面を形成する接合金属板の製造方法であって、前記上側フランジ部と前記下側フランジ部の対向面の少なくとも一方に接着剤を塗布する塗布工程と、前記塗布工程の後、前記上側フランジ部と前記下側フランジ部を重ね合わせ、前記上側金属板と前記下側金属板で閉断面が形成されるよう前記上側金属板と前記下側金属板の位置決めを行う位置決め工程と、前記位置決め工程の後、前記閉断面の内部を外部に比して低い圧力とする圧力差生成工程と、を有することを特徴とする。
請求項2に記載の発明によれば、塗布工程にて上側フランジ部と下側フランジ部の対向面の少なくとも一方に塗布された接着剤は、位置決め工程にて上側フランジ部と下側フランジ部が重ね合わされると各フランジ部間に介在した状態となる。この後、圧力差生成工程にて閉断面の内外に圧力差が生じると、この圧力差により各フランジ部間に介在する接着剤は閉断面の内側、すなわち各曲成部側へ流出し、各曲成部間に接着剤が充填される。
従って、製造された接合金属板は各フランジ部同士に加えて上側曲成部及び下側曲成部においても上側金属板と下側金属板とが接着されることとなり、各フランジ部同士のみで上側金属板と下側金属板を接着する従来のものに比して飛躍的に接合金属板の接合強度を向上させることができる。また、接合金属板の外側表面へ接着剤が流出することはなく、接着剤を後工程で拭き取る必要はない。
従って、製造された接合金属板は各フランジ部同士に加えて上側曲成部及び下側曲成部においても上側金属板と下側金属板とが接着されることとなり、各フランジ部同士のみで上側金属板と下側金属板を接着する従来のものに比して飛躍的に接合金属板の接合強度を向上させることができる。また、接合金属板の外側表面へ接着剤が流出することはなく、接着剤を後工程で拭き取る必要はない。
請求項3に記載の発明では、請求項1または2に記載の接合金属板の製造方法において、前記塗布工程にて、前記上側フランジ部と前記下側フランジ部の対向面の少なくとも一方に加え、前記上側曲成部の前記対向面にも接着剤を塗布することを特徴とする。
請求項3に記載の発明によれば、請求項1または2の作用に加え、塗布工程にて上側曲成部の対向面にも接着剤が塗布されるので、位置決め工程にて上側フランジ部と下側フランジ部を重ね合わせると、上側曲成部に塗布された接着剤は自重により上側曲成部と下側曲成部の間に移動する。これにより、各曲成部間により確実に接着剤を充填することができる。
このように、本発明によれば、接合金属板の外側へ接着剤を流出させることなく、上側金属板と下側金属板の曲成部にも接着剤を充填させて接合金属板の接合強度を向上させることができる。
図1から図3は本発明の第1の実施形態を示すもので、図1は自動車車体のサイドメンバの模式的な斜視図、図2はサイドメンバの模式的な断面図、図3は各フランジ部及び各曲成部の表面粗さを示すサイドメンバの一部断面説明図である。
図1に示すように、この接合金属板1は、自動車車体における略前後へ延びるサイドメンバに用いられ、断面が略ハット状に形成された上側金属板10と、断面が略逆ハット状に形成された下側金属板20が接合されたものである。それぞれ鉄からなる上側金属板10と下側金属板20は、合わせ面に接着剤30を塗布した状態でスポット溶接により接合され、上側金属板10の上壁部11と下側金属板20の下壁部21が連続的に縦壁31を形成する。上側金属板10は略水平に延びる上側フランジ部12を有し、下側金属板20は略水平に延びる下側フランジ部22を有し、上側フランジ部12の下面と下側フランジ部22の上面が合わせ面をなしている。
図1に示すように、上側金属板10は、略上下に延びる上壁部11と略水平に延びる上側フランジ部12が、湾曲形成された上側曲成部13を介して連続して形成される。また、下側金属板20は、略上下に延びる下壁部21と略水平に延びる下側フランジ部22が、湾曲形成された下側曲成部23を介して連続して形成される。
図2に示すように、上側曲成部13と下側曲成部23は、ほぼ同じ曲率で形成され、それぞれ各金属板10,20により形成される閉断面内部へ凸に形成されている。これにより、縦壁31と各フランジ部12,22が滑らかに接続されている。各フランジ部12,22の間には凝固した接着剤30が介在する。
また、図3に示すように、上側曲成部13と下側曲成部23の対向面の表面は、それぞれ上側フランジ部12と下側フランジ部22の対向面に比して粗く形成されている。これにより、各曲成部13,23における接着剤30に対する濡れ性が、各フランジ部12,22の対向面の接着剤30に対する濡れ性に比べて高くなっている。
この接合金属板1では、上側金属板10の上側フランジ部12と下側金属板20の下側フランジ部22が、接着剤30を介在させて重ね合わせた状態で挟圧して溶接することにより接合される。本実施形態においては、この挟圧は、スポット溶接時に一対の電極チップで各フランジ部12,22を挟み込むことにより行われる。スポット溶接は、前後方向に間隔をおいて施され、各フランジ部12,22に前後に並ぶ複数のナゲット32が形成される(図1参照)。
以上のように構成された金属接合板1の製造方法について説明する。
まず、表面粗さが均一の金属板に曲げ加工を施して、上側金属板10を略ハット状に、下側金属板20を略逆ハット状に、それぞれ成型する。そして、上側曲成部13と下側曲成部23の対向面をショットピーニング加工等により、図3に示すようにそれぞれ上側フランジ部12と下側フランジ部22の対向面に比して粗くする(表面処理工程)。尚、予め、金属板の各曲成部13,23となる領域を各フランジ部12,22となる領域よりも表面を粗くしておいてから、金属板に曲げ加工を施してもよい。
まず、表面粗さが均一の金属板に曲げ加工を施して、上側金属板10を略ハット状に、下側金属板20を略逆ハット状に、それぞれ成型する。そして、上側曲成部13と下側曲成部23の対向面をショットピーニング加工等により、図3に示すようにそれぞれ上側フランジ部12と下側フランジ部22の対向面に比して粗くする(表面処理工程)。尚、予め、金属板の各曲成部13,23となる領域を各フランジ部12,22となる領域よりも表面を粗くしておいてから、金属板に曲げ加工を施してもよい。
表面処理工程の後、下側フランジ部22の対向面に接着剤30を塗布する(塗布工程)。本実施形態においては、接着剤30の塗布は、接着剤送出装置に接続されたノズルから下側フランジ部22へ向かって接着剤30を吐出させることにより行う。
塗布工程の後、上側フランジ部12と下側フランジ部22を重ね合わせる(位置決め工程)。これにより、上側フランジ部12と下側フランジ部22の間で接着剤30が押しつぶされて拡散する。
そして、位置決め工程の後、上側フランジ部12と下側フランジ部22を挟圧して溶接する(溶接工程)。この挟圧により、各フランジ部12,22に接着剤30が行き渡るようになっている。
ここで、表面処理工程にて上側曲成部13及び下側曲成部23の表面が粗されて、上側曲成部13と下側曲成部23の対向面における接着剤30に対する濡れ性が、上側フランジ部12と下側フランジ部22の対向面の接着剤30に対する濡れ性に比べて高くされているので、図3中の矢印に示すように、各フランジ部12,22間から各曲成部13,23間に接着剤30が流出しやすくなっている。
これにより、接合工程にて、接着剤30が各フランジ部12,22から各曲成部13,23側へ流出し、図2に示すように各曲成部13,23間に接着剤30が充填される。このとき、各フランジ部12,22における各曲成部13,23と反対側から接着剤30がはみ出ることはない。
このように、本実施形態の接合金属板1の製造方法によれば、製造された接合金属板1は各フランジ部12,22同士に加えて上側曲成部13及び下側曲成部23においても上側金属板10と下側金属板20とが接着されることとなり、各フランジ部12,22同士のみで上側金属板10と下側金属板20を接着する従来のものに比して飛躍的に接合金属板1の接合強度を向上させることができる。また、接合金属板1の外側表面へ接着剤30が流出することはなく、接着剤30を後工程で拭き取る必要はない。
ここで、図4に、接着剤30の塗布状態により接合強度がどのように変化するか計測した実験データを示す。実験は、各フランジ部12,22をスポット溶接のみで接合したもの(以下、サンプル1という)と、図5に示すようにスポット溶接に加えて各フランジ部12,22の間で接着剤30を凝固させたもの(以下、サンプル2という)と、図2に示すようにスポット溶接に加えて各フランジ部12,22及び各曲成部13,23の間で接着剤30を凝固させたもの(以下、サンプル3という)とに分けて行った。サンプル1〜3は、それぞれ実際の自動車車体に用いられているサイドメンバと同形状のものとした。
図4に示すように、各フランジ部12,22の接合強度は、サンプル3、サンプル2、サンプル1の順に高い値が得られた。尚、図4においては、各フランジ部12,22の開口変位を横軸とし、この開口変位に必要な荷重を縦軸としている。サンプル2とサンプル3を比較すると、同じ開口変位では、サンプル3の方が約1.5倍以上の荷重を加えなければならないことが実験的に証明されている。このように、実験的にも、各フランジ部12,22のみならず上側曲成部13または下側曲成部23にも接着剤30が充填されて凝固すると、接合強度が飛躍的に向上することが確認されている。
尚、第1の実施形態においては、上側曲成部13及び下側曲成部23の対向面の表面を、上側フランジ部12及び下側フランジ部22の対向面の表面より粗くしたものを示したが、上側曲成部13と下側曲成部23の一方の対向面について表面処理を施せば、接着剤30を各フランジ部12,22から流出しやすくすることができる。
また、第1の実施形態においては、各曲成部13,23の表面粗さを各フランジ部12,22に対して大きくすることで濡れ性を高くするものを示したが、吸湿剤を用いるなどして各曲成部13,23の濡れ性を各フランジ部12,22に対して高くしてもよい。
また、前記実施形態においては、下側フランジ部22の対向面に接着剤30を塗布するものを示したが、上側フランジ部12の対向面に接着剤30を塗布してもよいし、上側フランジ部12と下側フランジ部22の両方の対向面に接着剤30を塗布してもよい。このとき、各曲成部13,23側にこれと反対側よりも接着剤30を多めに塗布すると、より効果的に接着剤30を各曲成部13,23の間に充填することができる。ここで、上側金属板10に接着剤30を塗布する場合は、上側フランジ部12の対向面が上となるよう上下逆さとして接着剤30を塗布する。この後、上側金属板10を裏返して、上側フランジ部12と下側フランジ部22を重ね合わせることとなる。
さらに、上側フランジ部12と下側フランジ部22の対向面の少なくとも一方に加え、上側曲成部13の対向面に接着剤30を塗布してもよい。この場合、位置決め工程にて上側フランジ部12と下側フランジ部22を重ね合わせると、上側曲成部13に塗布された接着剤30は、自重により上側曲成部13と下側曲成部23の間に移動する。これにより、各曲成部13,23間により確実に接着剤30を充填することができる。
図6及び図7は本発明の第2の実施形態を示すもので、図6は自動車車体のサイドメンバの模式的な斜視図、図7はサイドメンバの模式的な断面図である。
図6に示すように、この接合金属板101もまた、自動車車体における略前後へ延びるサイドメンバに用いられ、断面が略ハット状に形成された上側金属板110と、断面が略逆ハット状に形成された下側金属板120が接合されたものである。上側金属板110及び下側金属板120は、それぞれほぼ左右対称に形成され、互いにほぼ上下逆さの形状を呈している。
図7に示すように、上側金属板110は、左端側及び右端側にて、略上下に延びる上壁部111と略左右に延びる上側フランジ部112が、湾曲形成された上側曲成部113を介して連続して形成される。下側金属板120も、左端側及び右端側にて、略上下に延びる下壁部121と略水平に延びる下側フランジ部122が、湾曲形成された下側曲成部123を介して連続して形成される。第1の実施形態と同様に、各上壁部111と各下壁部121とで左右一対の縦壁131をそれぞれ形成する。尚、各上壁部111、各上側フランジ部112、各上側曲成部113、各下壁部121、各下側フランジ部122及び各下側曲成部123の構成は第1の実施形態と同様である。そして、各上側フランジ部112と各下側フランジ部122がそれぞれ溶接により接合され、上側金属板110と前記下側金属板120で略四角形状の閉断面を形成する。
また、前記実施形態と同様に、各フランジ部112,122の間には凝固した接着剤30が介在する。また、この接合金属板101も、上側金属板110の上側フランジ部112と下側金属板120の下側フランジ部122が、接着剤30を介在させて重ね合わせた状態で挟圧して溶接することにより接合される。本実施形態においては、この挟圧は、スポット溶接時に一対の電極チップで各フランジ部112,122を挟み込むことにより行われる。スポット溶接は、前後方向に間隔をおいて施され、各フランジ部112,122に前後に並ぶ複数のナゲット32が形成される(図6参照)。
以上のように構成された金属接合板101の製造方法について説明する。
まず、金属板に曲げ加工を施して、上側金属板110を略ハット状に、下側金属板120を略逆ハット状に、それぞれ成型する。この後、各下側フランジ部122の対向面に接着剤30を塗布する(塗布工程)。本実施形態においては、接着剤30の塗布は、接着剤送出装置に接続されたノズルから各下側フランジ部122へ向かって接着剤30を吐出させることにより行う。
まず、金属板に曲げ加工を施して、上側金属板110を略ハット状に、下側金属板120を略逆ハット状に、それぞれ成型する。この後、各下側フランジ部122の対向面に接着剤30を塗布する(塗布工程)。本実施形態においては、接着剤30の塗布は、接着剤送出装置に接続されたノズルから各下側フランジ部122へ向かって接着剤30を吐出させることにより行う。
塗布工程の後、各上側フランジ部112と各下側フランジ部122を重ね合わせ、上側金属板110と下側金属板120で閉断面が形成されるよう上側金属板110と下側金属板120の位置決めを行う(位置決め工程)。これにより、塗布工程にて各下側フランジ部122の対向面に塗布された接着剤30は、上側フランジ部112と下側フランジ部122の間に介在した状態となる。そして、各上側フランジ部112と各下側フランジ部122を挟圧して溶接する。この挟圧により、各フランジ部112,122に接着剤30が行き渡るようになっている。
この後、閉断面の内部を外部に比して低い圧力とする(圧力差生成工程)。本実施形態においては、接合金属板101の前端及び後端が開口していることから、接合金属板101の前端と後端の開口の一方に吸引装置を接続して、閉断面内部の空気を吸引することにより圧力差を生成する。このとき、接合金属板101の他方の開口と、上側金属板110及び下側金属板120に形成された電着塗装用の孔や位置決め用の孔を、ビニル樹脂等により塞ぐと圧力差の生成に効果的である。
このように、圧力差生成工程にて閉断面の内外に圧力差が生じると、図7中の矢印に示すように、この圧力差により各上側フランジ部112と各下側フランジ部122の間に介在する接着剤30は閉断面の内側、すなわち各曲成部113,123側へ流出し、各曲成部113,123間に接着剤30が充填される。
従って、本実施形態の接合金属板101の製造方法によれば、製造された接合金属板101は各上側フランジ部112と各下側フランジ部122に加えて、各上側曲成部113及び各下側曲成部123においても上側金属板110と下側金属板120とが接着されることとなり、各フランジ部112,122同士のみで上側金属板110と下側金属板120を接着する従来のものに比して飛躍的に接合金属板101の接合強度を向上させることができる。また、接合金属板101の外側表面へ接着剤30が流出することはなく、接着剤30を後工程で拭き取る必要はない。
尚、第2の実施形態においても、第1の実施形態と同様に、各曲成部113,123の接着剤30に対する濡れ性を各フランジ部112,122に対して高くすると、より効果的に接着剤30を各曲成部113,123の間に充填することができる。
さらに、上側フランジ部112と下側フランジ部122の対向面の少なくとも一方に加え、上側曲成部113の対向面に接着剤30を塗布してもよい。この場合、位置決め工程にて上側フランジ部112と下側フランジ部122を重ね合わせると、上側曲成部13に塗布された接着剤30は、自重により上側曲成部113と下側曲成部123の間に移動する。これにより、各曲成部113,123間により確実に接着剤30を充填することができる。
また、第2の実施形態においては、各上側フランジ部112と各下側フランジ部122を溶接してから閉断面の内外に圧力差を生じさせるものを示したが、圧力差により接着剤30を各曲成部113,123側へ移動させてから溶接してもよい。
さらに、第1及び第2の実施形態においては、接合金属板1が自動車車体に用いられるものを示したが、鉄道車体、航空機等に用いることもできる。また、自動車車体のサイドメンバに用いられるものを示したが、クロスメンバやピラーのような他の部分に用いられるものであってもよい。ここで、ピラーのように上下に延び前後または左右に金属板が分割構成されるものであっても、一方の金属板を上側とし他方の金属板を下側として接合を行い、接着剤が凝固した後に他の部分に組み付ければよい。
さらにまた、第1及び第2の実施形態においては、略ハット状の金属板と略逆ハット状の金属板とを接合するものを示したが、上側金属板が上壁部、上側湾曲部及び上側フランジ部を有し、下側金属板が下壁部、下側湾曲部及び下側フランジ部を有するものであれば、上側金属板及び下側金属板の形状は問わない。また、第2の実施形態のように接合金属板が上下対称であったり左右対称である必要もない。
また、第1及び第2の実施形態においては、スポット溶接により上側フランジ部12,112と下側フランジ部22,122を溶着するものを示したが、シーム溶接のようなスポット溶接以外の抵抗溶接方式を用いてもよいし、例えばレーザー溶接であっても、接着剤30を各フランジ部12,22,112,122間及び各曲成部13,23,113,123間に充填させて溶接することが可能である。
また、第1及び第2の実施形態においては、上側金属板10,110と下側金属板20,120が鉄からなるものを示したが、例えばアルミニウムなど他の金属からなるものであってもよい。また、接着剤30が貯留しやすいように、上側フランジ部12,112と下側フランジ部22,122の間に板部材を介在させたりしてもよいし、その他、具体的な細部構造等についても適宜に変更可能であることは勿論である。
1 接合金属板
10 上側金属板
11 上壁部
12 上側フランジ部
13 上側曲成部
20 下側金属板
21 下壁部
22 下側フランジ部
23 下側曲成部
30 接着剤
101 接合金属板
110 上側金属板
111 上壁部
112 上側フランジ部
113 上側曲成部
120 下側金属板
121 下壁部
122 下側フランジ部
123 下側曲成部
10 上側金属板
11 上壁部
12 上側フランジ部
13 上側曲成部
20 下側金属板
21 下壁部
22 下側フランジ部
23 下側曲成部
30 接着剤
101 接合金属板
110 上側金属板
111 上壁部
112 上側フランジ部
113 上側曲成部
120 下側金属板
121 下壁部
122 下側フランジ部
123 下側曲成部
Claims (3)
- 略上下に延びる上壁部と略水平に延びる上側フランジ部が湾曲形成された上側曲成部を介して連続して形成される上側金属板と、略上下に延びる下壁部と略水平に延びる下側フランジ部が湾曲形成された下側曲成部を介して連続して形成される下側金属板と、を有し、前記上側フランジ部と前記下側フランジ部が接着剤を用いて接合される接合金属板の製造方法であって、
前記上側曲成部と前記下側曲成部の対向面の少なくとも一方における前記接着剤に対する濡れ性を、前記上側フランジ部と前記下側フランジ部の対向面の前記接着剤に対する濡れ性に比べて高くする表面処理工程と、
前記表面処理工程の後、前記上側フランジ部と前記下側フランジ部の対向面の少なくとも一方に前記接着剤を塗布する塗布工程と、
前記塗布工程の後、前記上側フランジ部と前記下側フランジ部を重ね合わせる位置決め工程と、
前記位置決め工程の後、前記上側フランジ部と前記下側フランジ部を挟圧して、前記上側フランジ部と前記下側フランジ部を溶接する接合工程と、を有することを特徴とする接合金属板の製造方法。 - 略上下に延びる上壁部と略水平に延びる上側フランジ部が湾曲形成された上側曲成部を介して連続して形成される上側金属板と、略上下に延びる下壁部と略水平に延びる下側フランジ部が湾曲形成された下側曲成部を介して連続して形成される下側金属板と、を有し、前記上側フランジ部と前記下側フランジ部が溶接により接合され前記上側金属板と前記下側金属板で閉断面を形成する接合金属板の製造方法であって、
前記上側フランジ部と前記下側フランジ部の対向面の少なくとも一方に接着剤を塗布する塗布工程と、
前記塗布工程の後、前記上側フランジ部と前記下側フランジ部を重ね合わせ、前記上側金属板と前記下側金属板で閉断面が形成されるよう前記上側金属板と前記下側金属板の位置決めを行う位置決め工程と、
前記位置決め工程の後、前記閉断面の内部を外部に比して低い圧力とする圧力差生成工程と、を有することを特徴とする接合金属板の製造方法。 - 前記塗布工程にて、前記上側フランジ部と前記下側フランジ部の対向面の少なくとも一方に加え、前記上側曲成部の前記対向面にも接着剤を塗布することを特徴とする請求項1または2に記載の接合金属板の製造方法。
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Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
WO2020067447A1 (ja) | 2018-09-28 | 2020-04-02 | 日本製鉄株式会社 | 接着接合構造体および自動車用部品 |
JP7472754B2 (ja) | 2020-10-22 | 2024-04-23 | マツダ株式会社 | パネル接合構造 |
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-
2004
- 2004-12-20 JP JP2004367774A patent/JP2006167797A/ja active Pending
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