JP2006165923A - 圧電型超音波振動子 - Google Patents

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Abstract

【課題】部材構成が単純であり尚且つ薄型を維持したまま、狭指向特性で高音圧の超音波放射を可能とするような圧電型超音波振動子を提供すること。
【解決手段】両主面に薄膜電極が形成され、厚み方向に分極された圧電素子を振動板の片面に配して成る圧電型超音波振動子において、振動板の音場振動放射方向側の断面形状をすり鉢形の凹形状とした構成を採用し、従来の構成の様に共振子を用いずとも、狭指向特性を保ちながら、圧電型超音波振動子の音波放射側へより高音圧の超音波を放射することができるようにした。
【選択図】 図1

Description

本発明は、両主面に電極が形成された板状の圧電素子を振動板の片面に貼り付けて成る圧電型超音波振動子に関するものであり、更に詳しくは、超音波放射の狭指向特性及び音圧の向上を目的として、振動板の構造を改善した圧電型超音波振動子に関するものである。
近年における超音波分野の技術的進展は著しく、この傾向に伴って、超音波振動子自体に対する高機能化や小型化薄型化の要求は益々高まりつつある。
以下、従来の圧電型超音波振動子24について、図4の断面図を用いて説明する(例えば特許文献1を参照)。
圧電素子1dは、圧電効果を持つ板材の両主面に薄膜電極を形成して成るもので、両電極に電圧信号を印加することにより機械的応力を生じさせる。なお、本図面では、防滴型超音波振動子における主要駆動部分を例として説明しているが、圧電型超音波振動子としての基本的な構造及び動作原理は、防滴型超音波振動子に限らず変わりは無い。
この圧電素子1dは、導電性を有する筐体2dの一部である振動板3dに接着されており、接着面側に形成された薄膜電極は、振動板3d、筐体2d、接着電極4dを経て配線5dへ導通されている。また、圧電素子1dの接着面と対面に形成された薄膜電極は、接着電極6dを経て配線7dへ導通されている。この両配線5d、7dを介して圧電素子1dの両主面の電極へ超音波領域の電気交流信号を印加すると、前述した様に機械的応力により、印加された電気交流信号と同じ周波数で圧電素子1dの長手方向へ伸縮運動が生じる。
ここで、振動板3dは圧電効果を持たず機械的応力が生じないため、圧電素子1dと振動板3dは一体となって上下方向に撓み振動が誘起される。そして振動板3dが周辺支持で固定されたまま撓み振動することにより、振動板3dの圧電素子1dが接着された端面と反対側の面(以下、放射面と呼ぶ)より、印加された電気交流信号と同じ周波数の超音波が放射される。
しかしながら、図4で示すような従来の圧電型超音波振動子24では、振動板3dの放射面が平面となっているため、撓み振動によって生成される超音波は放射状に拡散し易くなり、放射軸9d方向正面への収束性が維持し難くなってしまう。そのため、超音波の狭指向特性を必要とするような用途には適さない。更に、上記のように放射軸9d方向正面への収束性が低いことに伴って、放射軸9d方向正面への超音波の音圧が低くなってしまう。
そこで、この様な問題を解決し、狭指向特性および高音圧を向上させる一手段として、図5に示すような構成の圧電型超音波振動子25が知られている。この圧電型超音波振動子25は、すり鉢形状を有する軽く且つ小型の共振子16が、振動板3eの放射面中央部に載置されている点で、図4の圧電型超音波振動子24とは異なっており、それ以外の基本的構造及び駆動原理は全く同様となっている。
この構成において、上述したような撓み振動が振動板3eに誘起されると、振動板3eの放射面中央部で振動振幅は最も大きくなるが、その放射面中央部に載置された共振子16が非常に軽く小型であるため、この振動振幅は抑制されることが無い。そこで、載置さ
れた共振子16も振動板3eの放射面中央部における振動と略等しい大きさの振幅で上下に振動することとなり、振動板3eだけでなく、この共振子16自身も超音波を放射する作用を有するようになる。
その結果、共振子16を設けない場合と比較して、より広い振動面積で超音波を放射することができるばかりでなく、振動振幅の大きい共振子16の部分からより大きな音圧の超音波を放射することができるようになる。また更に、この共振子16はすり鉢形状を有しているため、放射軸9e方向への超音波振動の収束性を高めることができる。従って、超音波振動子として重要な狭指向性および放射軸9e方向正面への音圧を向上させることが可能となる。
特開2000−241532号公報(第3頁、図1)
しかしながら、図5で示したような共振子16を設けた圧電型超音波振動子25は、共振子16の分だけ余計な厚みが必要となってしまう為、超音波振動子として薄型化を追及する際にはその存在が特に大きな課題となる。
また更に、この圧電型超音波振動子25で用いられる共振子16は、可能な限り軽く薄い部材で構成する必要があり、尚且つ振動板3eの放射面との接着部分は最小限の面積とする必要があることから、超音波振動子としての構造的な強度を保つことが困難となってしまう。
それ以外にも、この共振子16を設けることで、振動部分形状の複雑化に伴う分割振動を誘起し易くなり、不可測で且つ不要な複数の共振点を持ってしまう可能性もある。この様な分割振動に伴う複数の共振点を有すると、圧電型超音波振動子が本来必要とする共振点(即ち駆動する周波数)付近において、振動振幅の減少や振動様態の不安定化など振動特性を阻害する要因となり、良好な音圧周波数特性を維持することが困難となってしまう。
上記目的を達成するために、本発明の圧電型超音波振動子は、下記記載の構成を採用する。
本発明による圧電型超音波振動子は、両主面に薄膜電極が形成され、厚み方向に分極された圧電素子を振動板の片面に配して成る圧電型超音波振動子において、振動板の音場振動放射方向側の断面形状はすり鉢形の凹形状としたことを特徴とするものである。
また、本発明による圧電型超音波振動子は、振動板に前述した凹形状を複数個設けて成ることを特徴とするものである。
さらに、本発明による圧電型超音波振動子は、前述した凹形状における最底部を、この凹形状における口縁部の中心位置からずらした形状としたことを特徴とするものである。
またさらに、本発明による圧電型超音波振動子は、前述した凹形状における最底部とこの凹形状における口縁部の中心位置とを結ぶ軸が、振動板に設けた複数個の凹形状において、異なる方向に設定されていることを特徴とするものである。
本発明による圧電型超音波振動子では、振動板の振動放射方向の断面形状がすり鉢形状の凹形状であり、且つこの凹形状における最底部と凹形状における口縁部の中心位置とが、振動板の垂直軸上で一致している構成により、従来の構成の超音波振動子の様に、より広い振動面積で超音波を放射面から放射するための共振子をわざわざ載置する必要が無くなり、狭指向特性を保ちながら、圧電型超音波振動子の音波放射側へより高音圧の超音波を放射することができるようになる。
その為、上述した共振子を載置せずに、振動板及び圧電素子のみから成る簡略な部材構成により、超音波振動子として薄型化を実現することが可能となる。
また、上述した共振子を載置しないことによって、従来の構成で課題となっていた構造的な強度の弱さを解消することができるようになる。
更に、超音波振動子から共振子を取り除いた構成により、振動部分形状が簡略化され、分割振動に伴う不要な複数の共振点も無くすことができるようになる。この事から、圧電型超音波振動子が本来必要とする共振点付近において、振動振幅の減少や振動様態の不安定化などの振動特性を阻害する要因が取り除かれ、良好な音圧周波数特性を維持することができるようになる。
また、一枚の振動板の放射面に複数個の凹形状を形成し、この各凹形状の形状について、凹形状の最底部と凹形状の口縁部における中心位置を振動板の垂直軸上でずらした構成を採用することにより、圧電素子及び振動板から成る一組の駆動機構で複数の任意の方向へ狭指向特性で高音圧の超音波を放射することができるようになる。
まず、本発明の第一の実施例における圧電型超音波振動子の一構成例およびその構成における作用について説明する。
図1は、本発明に係る圧電型超音波振動子21の構成例を示している。尚、本発明の構成における同部材については背景技術と同符号を用いて説明する。
図1の断面図に示すように、本発明の圧電型超音波振動子21は、圧電効果を持つ板材の両主面に薄膜電極を形成して成る圧電素子1aと、この圧電素子1aを、導電性を有する筐体2aの一部である振動板3aに導通接着し、圧電素子1aの接着面側に形成された薄膜電極が接着電極4aを経て配線5aへ導通されている点と、圧電素子1aの接着面と対面に形成された薄膜電極が接着電極6aを経て配線7aへ導通されている点については背景技術と同様であるが、本発明の圧電型超音波振動子21は、振動板3aの放射面における断面形状がすり鉢形状の凹形状になっている点に特徴を有する。
更に、この凹形状の最底部が、凹形状における口縁部の中心位置と、図面の垂直軸方向で一致させた例を示している。
次に、本発明による圧電型超音波振動子の機能及び作用について説明する。
この圧電型超音波振動子21に超音波周波数の電気交流信号が印加されると、背景技術で述べたのと同様に、圧電素子1aと振動板3aが一体となって上下方向に撓み振動が誘起される。
この撓み振動により、振動板3aの放射面から超音波が生成されるが、この放射面の凹形状がすり鉢形状となっており、且つこの放射面の各部から生成される超音波が放射面の各法線方向へ放射されることにより、放射面全体から放射される超音波は矢印8aで示されるように、全てが凹形状の最底部と凹形状の口縁部における中心位置とを結ぶ軸、つま
り前述した垂直軸に相当する放射軸9aへ集束する方向へ伝搬されることになる。
そのため、放射面が平面であった背景技術の場合と比較して、放射される超音波の拡散作用を軽減することが可能となり、その結果、狭指向特性の良好な超音波振動子を実現することができる。また、放射面の凹形状における最底部が、凹形状の口縁部における中心位置と、図面の垂直軸方向で一致させていることにより、放射面全体の構造は、凹形状の最底部と凹形状における口縁部の中心位置とを結ぶ放射軸9aで軸対称となる。そのため、放射面の各部から生成される超音波が相互に重なることで生じる増幅作用が強くなり、非常に高音圧の超音波を生成することができるようになる。
従って、本発明による圧電型超音波振動子21では、振動板3aの放射面における断面形状をすり鉢形状の凹形状とすることで、超音波放射の集束性が高まるため、図5で示した共振子16をわざわざ載置する必要が無いまま狭指向特性と高音圧を実現できる。そのため、全体の部材構成を簡素化することができるだけでなく、共振子16を設けないことにより超音波振動子の薄型化に著しい寄与を果たす。
また、本発明の圧電型超音波振動子21は、共振子16を載置しない部材構成によって、従来の構成で課題となっていた構造的な強度の弱さを解消することができるようになる。
またそればかりでなく、本発明の圧電型超音波振動子21では、図5で示した共振子16を設けることによる振動部分形状の複雑化に伴う分割振動を、実質上無くすことができる。従って、このような不要な共振点の数を減少させ、圧電型超音波振動子が本来必要とする共振点付近において、振動振幅や振動様態の安定性などの振動特性を維持することが可能となる。即ち、超音波振動子としての良好な音圧周波数特性を実現することができるようになる。
次に、本発明の第二の実施例における圧電型超音波振動子の他の構成例、およびその構成例における作用について説明をする。図2は、本発明に係る圧電型超音波振動子22の構成例を示している。
図2における圧電型超音波振動子22は、先に図1で示した圧電型超音波振動子21の構成例に代えて、凹形状における最底部と凹形状における口縁部の中心位置とを、振動板3bと垂直な方向でずらして構成されている。他の構成は、第一の実施例で示したと同様である。
上記のような構成とすることにより、前述した部材構成が単純であり尚且つ薄型を維持したまま、狭指向特性で高音圧の超音波放射を可能とする利点のみならず、凹形状における最底部と凹形状における口縁部の中心位置と結ぶ放射軸9bを任意に設定し、その放射軸9bの方向へ、狭指向特性で高音圧の超音波放射を可能とするような圧電型超音波振動子を提供することができるようになる。
このように、凹形状の最底部と口縁部の中心位置を、振動板3bの垂直軸上でずらした構成により、凹形状の最底部と口縁部の中心位置を結ぶ放射軸9bの方向は、振動板の垂直軸方向からずれることとなる。そのため、この凹形状の放射面から生成される超音波は、上記放射軸9bの方向へ集束されるように伝搬されることとなる。即ち、本発明の圧電型超音波振動子22では、非常に簡単な構造により、放射される超音波の狭指向特性を、任意に振動板3bの垂直軸方向から傾斜した方向へ制御することができるようになる。
次に、本発明の第三の実施例である、図2における圧電型超音波振動子22を複数個適用した振動子の構成例、およびその構成例における作用について説明をする。
図3は本発明における圧電型超音波振動子のさらに他の構成例を示す斜視図であり、圧電素子1cを貼り付けた振動板3cと、この振動板3cの放射面に複数個の凹形状を形成し、さらにこの形態においては、この各凹形状の形状について、凹形状の最底部10と凹形状の口縁部における中心位置11を振動板3cの垂直軸上でずらして構成した圧電型超音波振動子23の構成例を示したものである。
そして、各凹形状における最底部と口縁部の中心位置を結ぶ放射軸12〜15は、互いに別々の方向を向いた形態となっている。尚、本図面においては、圧電素子1cと振動板3cの外形形状が矩形となっているが、これらの外形形状は、前述したような振動板と圧電素子の撓み振動を誘起できれば、どのような形状の組み合わせであっても構わない。
上記のように、凹形状の最底部10と口縁部の中心位置11を、振動板3cの垂直軸上でずらした構成により、図2で示した圧電型超音波振動子22と同様に、凹形状の最底部10と口縁部の中心位置11を結ぶ放射軸12の方向は、振動板の垂直軸方向からずれることとなる。そのため、この凹形状の放射面から生成される超音波は、上記放射軸12の方向へ集束されるように伝搬されることとなる。即ち、本発明の圧電型超音波振動子23では、非常に簡単な構造により、放射される超音波の狭指向特性を、振動板の垂直軸方向から傾斜した方向へ制御することができるようになる。
また、上述したように、振動板3cに複数個の凹形状を設け、互いに別々の方向を向けた形態とすることで、振動板3c及び圧電素子1cから成る一組の駆動機構だけで、複数の任意な方向へ狭指向特性の良好で且つ音圧の高い超音波を放射することができるようになる。
このことは例えば、別々の方向へ複数の超音波を放射するような必要がある用途の場合、従来では複数個の超音波振動子を組み合わせて装置を構成し、放射角度の調整を行うなど煩雑さを要していた作業が、本発明では一つの超音波振動子を用いるだけで、上記のような煩雑な作業無しにそれが可能となる。また、そればかりでなく、本発明による圧電型超音波振動子23では、従来のように複数個の超音波振動子を組み合わせることで生じていた装置の大型化を回避することができるようになる。
尚、上述した圧電型超音波振動子23の説明では、複数個の超音波スピーカーで狭指向性の音波をそれぞれ異なる方向に放射する形態について説明をしたが、例えば、一対のスピーカーからは同じ方向に音波を放出し、他のスピーカーからはそれと異なる方向に音波を放射できるように構成して、各方向に放射する音圧を意図的に代えた形態としても構わない。
また、各スピーカーを構成する凹形状の径、または深さを任意に代えて、各スピーカーから放出される音圧を代えた形態としても構わない。
さらに、上述した形態では、図2に示した圧電型超音波振動子22を複数個組込んだ構成例を示しているが、図1で示した圧電型超音波振動子21を複数個組込んだ構成で振動子を構成しても構わない。その際は、別々の方向へ複数の超音波を放射するような必要がある用途等への適用はできなくなるが、同じ方向を向いた複数個の圧電型超音波振動子21により、高音圧の音波を放射面から出射させることができるようになる。
本発明における圧電型超音波振動子の構成を示す断面図である。 本発明における圧電型超音波振動子の他の構成を示す断面図である。 本発明における圧電型超音波振動子のさらに他の構成を示す斜視図である。 従来の圧電型超音波振動子の構成例を示す断面図である。 従来の他の圧電型超音波振動子の構成例を示す断面図である。
符号の説明
1a〜1e 圧電素子
2a、2b、2d 筐体
3a〜3e 振動板
4a、4b、4d、4e、6a、6b、6d、6e 接着電極
5a、5b、5d、5e、7a、7b、7d、7e 配線
9a、9b、9d、9e、12〜15 放射軸
21〜25 圧電型超音波振動子

Claims (4)

  1. 両主面に薄膜電極が形成され、厚み方向に分極された圧電素子を振動板の片面に配して成る圧電型超音波振動子において、
    前記振動板の音場振動放射方向側の断面形状をすり鉢形の凹形状としたことを特徴とする圧電型超音波振動子。
  2. 前記振動板に前記凹形状を複数個設けて成ることを特徴とする請求項1に記載の圧電型超音波振動子。
  3. 前記凹形状における最底部を、前記凹形状における口縁部の中心位置からずらした形状としたことを特徴とする請求項1または2に記載の圧電型超音波振動子。
  4. 前記凹形状における最底部と前記凹形状における口縁部の中心位置とを結ぶ軸が、前記振動板に設けた複数個の前記凹形状において、異なる方向に設定されていることを特徴とする請求項3に記載の圧電型超音波振動子。
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