JP2006163026A - テラヘルツ波発生方法及び装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 非線形光学結晶12の一端面12aをテラヘルツ波4の発生方向にほぼ直交させ、端面上のほぼ同一点13においてポンプ光2とアイドラー光3を全反射させ、かつ発生したテラヘルツ波4をほぼ垂直に出射する。
【選択図】 図1
Description
テラヘルツ波の特徴の1つは、電波の物質透過性を有する最短波長域であり、かつ光波の直進性を備えた最長波長であるという点である。すなわち、電波のように様々な物質を透過することができ、波長が短い(1mm前後〜30μm前後)ことから、電波帯では最も高い空間分解能が得られ、かつ光波のようにレンズやミラーによる引き回しが可能である。
ラマン活性かつ遠赤外活性を有する非線形光学結晶1にポンプ光2を一定方向に入射すると、誘導ラマン効果(又はパラメトリック相互作用)により物質の素励起波(ポラリトン)を介してアイドラー光3とテラヘルツ波4が発生する。この場合、ポンプ光2(ωp)、テラヘルツ波4(ωT)、アイドラー光3(ωi)の間には、式(1)で示すエネルギー保存則と式(2)で示す運動量保存則(位相整合条件)が成り立つ。なお、式(2)はベクトルであり、ノンコリニアな位相整合条件は、この図10(B)に示すように表現できる。
κp=κT+κi...(2)
なお、基本的な光パラメトリック過程は、1個のポンプ光子の消滅と、1個のアイドラー光子および1個のシグナル光子の同時生成によって定義される。アイドラー光あるいはシグナル光が共振する場合、ポンプ光強度が一定のしきい値を超えるとパラメトリック発振が生じる。また、1個のポンプ光子の消滅と、1個のアイドラー光子および1個のポラリトンの同時生成が誘導ラマン散乱であり、広義のパラメトリック相互作用に含まれる。
また図11に示したようにアイドラー光3に対して特定方向に共振器M1,M2を構成することで、特定方向のアイドラー光3とテラヘルツ波4の強度を高めることができる。
しかし、かかる従来の手段には、以下の問題点があった。
(1)テラヘルツ波の発生点が非線形光学結晶の内部であるため、結晶内部での吸収量が多い。例えば、上述のように、LiNbO3結晶の吸収によって、長さ3mmを進む間にテラヘルツ波は約0.1%程度まで減少する。
(2)非線形光学結晶とプリズムの境界面では斜めにテラヘルツ波が入射するため、透過率が減少し、テラヘルツ波の取り出し効率が低い。
(3)単一のプリズムでは取り出せるテラヘルツ波の出力が弱すぎ、またプリズムアレイを用いると、出力は高まるが、複数のプリズムからなるプリズムアレイでテラヘルツ波4が分散して取り出されるので、テラヘルツ波の波面が不均一となり出射ビーム径も円状(もしくは楕円状)にならず、応用展開において支障をきたしてきた。
すなわち、テラヘルツ波4の出力分布がその光軸まわりに回転対称であれば、光軸上から出た光線の屈折、反射などにおける光線追跡が容易にできるが、従来の手段では発生時のテラヘルツ波が回転対称から大きく外れているためガウス光学系の適用が困難であった。
非線形光学結晶の一端面をテラヘルツ波の発生方向にほぼ直交させ、該端面上のほぼ同一点においてポンプ光とアイドラー光を全反射させ、かつ発生したテラヘルツ波をほぼ垂直に出射する、ことを特徴とするテラヘルツ波発生方法が提供される。
前記非線形光学結晶の一端面がテラヘルツ波の発生方向にほぼ直交し、該端面上のほぼ同一点においてポンプ光とアイドラー光が全反射し、これにより発生したテラヘルツ波がほぼ垂直に出射するように位置決めされている、ことを特徴とするテラヘルツ波発生装置が提供される。
また、発生したテラヘルツ波を非線形光学結晶の一端面に対してほぼ垂直に出射するので、端面(界面)での反射がほとんどなく、界面から外部への取出し効率を高めることができる。
さらに、テラヘルツ波の発生点はポンプ光とアイドラー光の全反射点またはその近傍となり、実質的に1点で発生しかつ端面に対してほぼ垂直に出射するので、ガウス光学系の適用が容易な回転対称に近いテラヘルツ波の出力分布を得ることができる。
登頂型の共振器は回転ステージ上に配置し回転することで、ポンプ光の共振器に対する角度を変化させることで、テラヘルツ波の波長を連続的に変えることができる。また、ポンプ光の入射角を可動ミラーなどで変えることにより固定された共振器に対してポンプ光の共振器に対する角度を変化させることが可能であるので、テラヘルツ波の波長を連続的に変えることもできる。
これにより、この方向のアイドラー波の光強度が高まり、ノンコリニアな位相整合条件を満たすテラヘルツ波の強度を大幅に高まることができる。
また、第2レーザー光で強化されるアイドラー波の指向性が強く、かつ第1レーザー光と第2レーザー光の両方が単一周波数のレーザー光であるので、発生するテラヘルツ波の発生方向の指向性が高まるばかりでなく、スペクトル幅も大幅に狭線化できる。
この方法により、テラヘルツ波の波長を変化させることができる。
この構成により、ポンプ光の波長を変えてテラヘルツ波の波長を変化させることができる。
かかる反射低減部材として非線形光学結晶の屈折率より低い屈折率を有する複数の異なる平行基板を用いて、段階的に屈折率を大気の屈折率に近づけることで、反射率を低減し、テラヘルツ波の取り出し効率を向上できる。また、減反射加工を用いることにより、端面でのテラヘルツ波の反射をさらに低減し、界面から外部への取り出し効率を更に高めることができる。
かかる集光レンズにより、テラヘルツ波を平行光として取り出すことができる。また、テラヘルツ波をテラヘルツファイバーの端面に集光させ、テラヘルツファイバーを介して自由に伝播させることができる。また、集光レンズとして反射低減部材の一部もしくは全部を用いることにより、光学素子の点数を少なくし、効率の良い光学系の配置が可能となる。
この図に示すように、本発明のテラヘルツ波発生装置10は、パラメトリック効果によってテラヘルツ波発生が可能な非線形光学結晶12と、この非線形光学結晶12内にポンプ光2としてレーザ光を入射する第1レーザー装置14とを備え、ノンコリニア位相整合条件を満たす方向にアイドラー光3とテラヘルツ波4を発生させるようになっている。
また、この例において、本発明のテラヘルツ波発生装置10は、更に、非線形光学結晶12内で発生するアイドラー光3を同一の全反射点13で全反射させかつ増幅する登頂型の共振器15とを備える。共振器15は、2枚の反射ミラー15a,15bからなる。反射ミラー15a,15bは、ポンプ光2は透過し、アイドラー光3は反射して、非線形光学結晶12内で発生するアイドラー光3を増幅するように構成されている。
なお、この共振器15の代わりに、非線形光学結晶12内で発生するアイドラー光3の発生方向に単一周波数の別の第2レーザー光を光注入する第2レーザー装置を備えてもよい。
また、発生するテラヘルツ波4の波長を可変にするために、第1レーザー装置14は、ポンプ光2の波長を変えることができる可変波長レーザー装置であるのがよい。
また、可変波長レーザー装置を用いる代わりに、その他の構成位置を変えずに、ポンプ光の入射角を変化させてもよい。
この図に示すように、非線形光学結晶12の一端面12a(この図で上面)は、テラヘルツ波4の発生方向にほぼ直交し、この端面12a上のほぼ同一点13においてポンプ光2とアイドラー光3が全反射し、これにより発生したテラヘルツ波4がほぼ垂直に出射するように位置決めされている。
この図において、非線形光学結晶12の端面12aに対するポンプ光2とアイドラー光3の入射角θp、θiはそれぞれの全反射角θrより大きく設定されている。また、テラヘルツ波4の端面12aに対する入射角は、その全反射角より小さく、この例では端面12aに対しほぼ直交するように設定される。
この空間的な広がりを持って出射するアイドラー光3に対して特定方向(角度θi)に共振器15を構成することで、特定方向のアイドラー光3の強度を高めることができる。
このとき、ポンプ光2(励起光)、アイドラー光3、テラヘルツ波4の3波間には式(1)(2)で示したエネルギー保存則および運動量保存則である位相整合条件が成り立つ。
本発明は、ポンプ光2(励起光)を非線形光学結晶12の端面12aに斜めに入射し、非線形光学結晶の端面12aで全反射させ、全反射点13を頂点に登頂型の左右対称な共振器15を構成し、テラヘルツ波4は非線形光学結晶12の端面12aに対してほぼ垂直に取り出すことを特徴とする。
例えば非線形光学結晶12にLiNbO3を用いた場合、ポンプ光2およびアイドラー光3はテラヘルツ波4とそれぞれ例えば、64.3°、65°をなすため、テラヘルツ波4を結晶端面12aに対して垂直(出射角0°)に発生させるには、結晶端面にポンプ光を64.3°の角度で入射させる必要がある。このときアイドラー光は端面に対して65°の角度で発生するように2枚のミラー15a,15bを配置する必要がある。
境界面(端面12a)での透過率Tは屈折率差にも依存する。テラヘルツ波4を非線形光学結晶12から大気中に取り出す場合、非線形光学結晶12の端面12aに低屈折率の材料16を取り付け、内部反射を抑え大気中への取り出し効率を向上することができる。
またこの図において、○印(case1)は、非線形光学結晶にLiNbO3結晶を用いて、LiNbO3結晶(テラヘルツ波屈折率:5.25)から直接大気中にテラヘルツ波を取り出す場合のLiNbO3と大気境界面での透過率である。
この図から入射角0°のとき透過率が最大となり入射角が大きくなるにつれて減少することがわかる。このことはLiNbO3で発生したテラヘルツ波を最も効率よく取り出せる角度は、入射角0°つまり、非線形光学結晶から垂直に出射するときを意味している。すなわち、非線形光学結晶12からテラヘルツ波4を垂直に取り出す場合が、最も効率よくテラヘルツ波を取り出せることがわかる。
ただし、この低屈折率の条件として、非線形光学結晶との端面にてポンプ光、アイドラー光に対しては全反射となることが条件である。例えば、非線形光学結晶にLiNbO3結晶を用い、反射低減部材としてMgO結晶を用いる場合、ポンプ光およびアイドラー光に対するLiNbO3とMgO屈折率はそれぞれ2.15、1.72であることから全反射角はその境界面で53.1°となる。テラヘルツ波を垂直に取り出すにはポンプ光とアイドラー光の結晶への入射角が64.3°、65°であるため、ポンプ光とアイドラー光は結晶端面に対して64.3°、65°で入射させる。これは全反射角53.1°より大きいため全反射となり、登頂型の共振器構成が可能となる。
テラヘルツ波4を非線形光学結晶の端面12aから垂直に取り出すことで、テラヘルツ波のビーム形状を乱れなくほぼガウス型のビームプロファイルで取り出すことができる。
すなわち、従来の技術ではテラヘルツ波の取り出しにシリコンプリズムアレイ9を用いていたため、波面が乱れてしまい、集光に複数のレンズを用いる必要があったが、本発明では平面からテラヘルツ波が出射するため、ガウス型のビーム径は出射するためこれらの問題が改善できる。
なお、上記で述べた反射低減部材を材料としたコリメートレンズを直接取り付けてもよい。
また樹脂レンズを用いることができるので、図6のようにレンズ18とテラヘルツファイバー19を組み合わせたファイバーカプラーを直接取り付けることができる。
この実施例では、非線形光学結晶12は、4×5×50mmのLiNbO3結晶2本と台形状のLiNbO3結晶で構成されている。また非線形光学結晶12の頂端面12aには厚さ1mmのMgO基板16を貼り付け、そこからテラヘルツ波4を取り出している。ポンプ光2を入射するためには1.064μmのNd:YAGレーザー14を用いた。ポンプ光2はミラー(M1)15aから共振器内に入射し登頂点(頂端面12a)で反射されミラー(M2)15bから出射する。結晶内で発生したアイドラー光3は共振器ミラーM1,M2で共振し増幅されテラヘルツ波4が登頂点12aから垂直方向に出射する。出射したテラヘルツ波4はMgO基板16とテラヘルツ用レンズ22を介してボロメーター検出器23で検出される。なお、21はポンプ光2を遮断するダンパーである。
この図から、半値全幅は約7mmであり、ほぼガウス形状で出射していることが確認された。このときのテラヘルツ波は1.6THzである。
これに対して、本発明では、テラヘルツ波の発生点がポンプ光とアイドラー光の全反射点またはその近傍となり、実質的に1点で発生しかつ端面に対してほぼ垂直に出射するので、ガウス光学系の適用が容易な回転対称に近いテラヘルツ波の出力分布を得ることができることが、図8の実施例からも確認された。
本発明では、テラヘルツ波パラメトリック発振器の構成において、非線形光学結晶の端面でポンプ光とアイドラー光を反射させ、反射点を頂点とした登頂型の共振器を構成する。ポンプ光の端面での反射角は、ポンプ光自身とアイドラー光が全反射し、位相整合条件下でテラヘルツ波が反射面に対して垂直に出射する角度とする。
このとき、テラヘルツ波出射点(ポンプ光、アイドラー光の反射点)に、ポンプ光、アイドラー光は全反射し、テラヘルツ波に対しては、その反射を低減させるような素材を取付けることが重要となる。
例えば、MgO結晶は、ポンプ光とアイドラー光に対する屈折率が1.72であり、テラヘルツ波に対する屈折率は3.25であるため、非線形光学結晶面でテラヘルツ波の反射を低減させ、アイドラー光に対して共振器を構成することが可能となる。MgO基板16にはレンズ18や樹脂などの取り付けが可能である。
3 アイドラー光、4 テラヘルツ波、
5 レーザ装置、6 プリズム、
7 第1レーザー光、8 第2レーザー光、
9 プリズムアレイ
10 テラヘルツ波発生装置、
12 非線形光学結晶(LiNbO3結晶)、12a 一端面(頂端面)、
13 全反射点、15 共振器、15a,15b 反射ミラー(共振器ミラー)、
16 反射低減部材(低屈折率基板、MgO基板)、
18 集光レンズ、19 テラヘルツファイバー、
21 ダンパー、22 テラヘルツ用レンズ、23 ボロメーター検出器
Claims (12)
- パラメトリック効果によってテラヘルツ波発生が可能な非線形光学結晶内にポンプ光を入射し、ノンコリニア位相整合条件を満たす方向にアイドラー光とテラヘルツ波を発生させるテラヘルツ波発生方法であって、
非線形光学結晶の一端面をテラヘルツ波の発生方向にほぼ直交させ、該端面上のほぼ同一点においてポンプ光とアイドラー光を全反射させ、かつ発生したテラヘルツ波をほぼ垂直に出射する、ことを特徴とするテラヘルツ波発生方法。 - 非線形光学結晶の前記端面に対するポンプ光とアイドラー光の入射角θp、θiはそれぞれの全反射角より大きく、テラヘルツ波の入射角はその全反射角より小さい、ことを特徴とする請求項1に記載のテラヘルツ波発生方法。
- 前記ポンプ光として第1レーザー光を入射し、非線形光学結晶内で発生するアイドラー光を該全反射点で全反射させかつ増幅する登頂型の共振器を構成する、ことを特徴とする請求項1に記載のテラヘルツ波発生方法。
- 前記ポンプ光として単一周波数の第1レーザー光を使用し、かつ、非線形光学結晶内で発生するアイドラー光の発生方向に単一周波数の別の第2レーザー光を光注入する、ことを特徴とする請求項1に記載のテラヘルツ波発生方法。
- 前記ポンプ光の波長又はその入射角を変化させて、テラヘルツ波の波長を変化させる、ことを特徴とする請求項1に記載のテラヘルツ波発生方法。
- パラメトリック効果によってテラヘルツ波発生が可能な非線形光学結晶と、該非線形光学結晶内にポンプ光を入射するレーザー装置とを備え、ノンコリニア位相整合条件を満たす方向にアイドラー光とテラヘルツ波を発生させるテラヘルツ波発生装置であって、
前記非線形光学結晶の一端面がテラヘルツ波の発生方向にほぼ直交し、該端面上のほぼ同一点においてポンプ光とアイドラー光が全反射し、これにより発生したテラヘルツ波がほぼ垂直に出射するように位置決めされている、ことを特徴とするテラヘルツ波発生装置。 - 非線形光学結晶の前記端面に対するポンプ光とアイドラー光の入射角θp、θiはそれぞれの全反射角より大きく、テラヘルツ波の入射角はその全反射角より小さい、ことを特徴とする請求項6に記載のテラヘルツ波発生装置。
- 前記ポンプ光として第1レーザー光を出力する第1レーザー装置と、非線形光学結晶内で発生するアイドラー光を該全反射点で全反射させかつ増幅する登頂型の共振器とを備える、ことを特徴とする請求項6に記載のテラヘルツ波発生装置。
- 前記ポンプ光として単一周波数の第1レーザー光を出力する第1レーザー装置と、かつ、非線形光学結晶内で発生するアイドラー光の発生方向に単一周波数の別の第2レーザー光を光注入する第2レーザー装置とを備える、ことを特徴とする請求項6に記載のテラヘルツ波発生装置。
- 前記第1レーザー装置は、ポンプ光の波長を変えることができる可変波長レーザー装置である、ことを特徴とする請求項8又は9に記載のテラヘルツ波発生装置。
- 前記非線形光学結晶の一端面にテラヘルツ波の反射率を低減する反射低減部材を備える、ことを特徴とする請求項6に記載のテラヘルツ波発生装置。
- 前記非線形光学結晶の一端面にテラヘルツ波を集光する集光レンズを備える、ことを特徴とする請求項6に記載のテラヘルツ波発生装置。
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