JP2006162715A5 - - Google Patents
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Description
本発明は、木管楽器用消音器に関するものである。
一般に金管楽器のように先端のベルのみから吹奏音が発生する管楽器では、このベルに消音器を装着することで消音が可能となる。ところが、クラリネット属、サクソフォーン属、オーボエ属などに分類されるような木管楽器では、管体に多くの音孔が形成されており、この音孔の全てから吹奏音が発生するため、ベルに消音器を装着したのみで消音することは不可能である。
木管楽器の消音を試みる最も簡便な手段は、木管楽器の管体の内部に柔らかい布や紙などを挿入して弱音効果を得るようにするものであるが、消音率が十分でなく、鳴きむらが発生したり息苦しいなどの問題があった。なお、楽器の分野における消音器、弱音器、ミュートなどの呼び方については、厳密に区別されるものではない。
木管楽器の消音に関するこのような問題から、布製の消音バッグにサクソフォンの主体を収容して消音効果を得ようとするものがある(例えば、特許文献1)。これは図5に示すような形状の布製のバックに側部をファスナーで開口できるようにし、サクソフォンのネック20を外部に露呈させ、側部の開口部から演奏者が指先を挿入してキー操作をするとともにマウスピース7から呼気を吹き込んで吹奏練習を行うようにするものである。
この方法は、布製バックの内部に発生した吹奏音を透過させて減衰を図る方法と考えられるが、消音効果が十分でなく、しかも低音域の音程が悪く発音自体が難しいという重大な欠点がある。実際には、吹奏音を透過させて減衰を図る以前に、消音器各部に多数存在する隙間から消音されていない吹奏音が大きい音量で漏れ出てしまっており、消音効果を十分に得ることができない。
低音域の音程が悪く発音自体難しいという現象は、布製バック内の空間が安易に設定され、楽器の位置を固定できない構造であり、隙間が多く存在することから密閉性が悪い構造によることから、楽器本来の自然な定在波に影響を及ぼす別の音響モードが発生し易いため、音程や発音が悪化するのである。
一方、円筒状に形成した容器にサクソフォンを収容し、消音効果を得ようとするものが提案されている(例えば、特許文献2)。これは図6に示すように、円筒状の発泡スチロールをゴム製遮音シートで巻いた筒体を形成し、この内部にサクソフォンを収容するようにしたため各部に隙間が多く生じる構造となり、この隙間から吹奏音が大きい音量で漏れ出すという重大な欠点がある。しかも、装置が巨大となって大きな重量となり、何よりも通常の姿勢で演奏できないという問題がある。
特開平10−113209号公報
特開平06−214559号公報
このように、従来の木管楽器用消音器では、消音器内部で発生した吹奏音が消音器外部へ大きく漏れ出てしまう構造であるため消音効果を十分に得ることができない。また、消音器内部の空間が安易に設定され、且つ、消音器内部の空間の適正な位置に楽器を固定できない構造であるので、音程や発音が不安定となってしまい自然な吹奏感覚が得られない。しかも、演奏者の呼気に含まれる水分に対する対策も不十分である。本発明はこのような従来の問題に鑑みなされたもので、消音性能を向上し、自然な吹奏感覚が得られ、呼気による水分に対する対策を十分に施した新規なる木管楽器用消音器を提供することを目的とするものである。
そこで本発明は、以下に述べる手段により上記課題を解決するようにした。即ち、請求項1記載の発明では、内部空間内に収容する木管楽器の全ての音孔を内包できるようにし、且つ、長手方向で二分割する構造により開閉可能となるようにした硬質の筐体の内面に吸水性および吸湿性を備えた吸音層を着脱可能に配設するとともに、該筐体の胴部に内部空間の密閉状態を保ちつつ演奏者によるキー操作が可能となるようにした窓孔部材を設けるとともに、収容した木管楽器を内部空間のほぼ中央に安定させる固定手段を備えた木管楽器用消音器となるようにする。
請求項2記載の発明では、上記請求項1記載の木管楽器用消音器において、筐体に凹部を形成し、該筐体の内部空間に発生した吹奏音をマイクロフォンで集音し、電気音響信号により演奏者が吹奏音を聴取できるようにした電子モジュールを、前記凹部に配設可能となるようにする。
請求項3記載の発明では、上記請求項1記載の木管楽器用消音器において、前記筐体を吊支するためのストラップリングを、収容する木管楽器本体に近い位置となるようにして筐体の後壁面に配設する。
本発明の木管楽器用消音器によれば、十分な消音性能が得られるとともに呼気による水分対策も万全となり、しかも、木管楽器を収容するに合理的な形状となることから自然な吹奏感覚で演奏を楽しむことができ、そして、可搬性が向上することから運搬も容易となり、どのような場所においても環境を配慮することなく木管楽器の演奏を楽しむことができる。また、消音器内で発生した吹奏音を電気音響信号にして演奏者による聴取が可能となり、高い練習効果が得られる。
図1は、本発明の木管楽器用消音器であり、演奏者が演奏姿勢をとった場合の右手側の側面を示すもので、同図におけるA−A線の断面を図2に示す。本発明の構成において主体となる筐体は分割構造となっており、右シェル1と左シェル12が蝶番4により連結されており、したがって、この蝶番4を支点にして右シェル1と左シェル12が拡開し、内部空間を露呈させることができる。
符号5は、パッチン錠であり、右シェル1と左シェル12の開口を閉止したとき施錠の機能を果たす。なお、符号17は右シェル1の開口端に配設された凸パッキンであり、符号18は左シェル12の開口端に配設された凹パッキンを示す。これにより、右シェル1と左シェル12の開口を閉止したとき、凸パッキン17と凹パッキン18が密接して気密性が維持されることになる。
符号2は、右手挿入用の窓孔部材であり、符号13は左手挿入用の窓孔部材を示す。この窓孔部材2、13は、例えば、伸縮性のあるエチレン・プロピレン・ジエンゴム(EPDM)のような素材で成形することにより、窓孔から挿入した左右の前腕の外周に窓孔部材2、13と密着するため、収容した木管楽器のキーを操作しても内部空間の密閉状態を維持することができる。
符号3は、右シェルと1と左シェル12で構成された筐体を吊支するためのストラップリングであり、収容する木管楽器本体に近い位置となるようにして筐体の後壁面に配設する。符号6は収容した木管楽器であり、この木管楽器がアルトサクソフォンとする場合、右シェル1と左シェル12で構成される筐体の高さHを720mm、幅Dを240mm、奥行きWを320mmとすることにより、木管楽器内部の定在波に影響を及ぼさないものとすることができる。
符号11は、ネックパッキンであり、木管楽器6を収容して右シェル1と左シェル12を閉止したとき、木管楽器6のネックがこのネックパッキン11に挟まれ、この部分を気密状態とすることができる。そして、ネックパッキン11から外部へ木管楽器6のマウスピース7、リード8、リガチャー9が露呈し、吹奏が可能となる。なお、符号10は木管楽器6のネック部分の最上部の音孔を示すもので、このことから、木管楽器6の全ての音孔が消音器の内部空間に内包されることになる。
符号14は、右シェル吸音層であり、符号15は左シェル吸音層を示す。この右シェル吸音層14および左シェル吸音層15は、吸湿および吸水性に優れた繊維質などの素材を用いるのが好ましい。なお、右シェル吸音層14および左シェル吸音層15は、面ファスナー19により各々右シェル1および左シェル12に取り付けられる。符号16はネック支持台であり、収容した木管楽器6のネック20を挟持するように構成されており、このネック支持台で木管楽器6を消音器の内部空間のほぼ中央に安定させて固定することができる。
このように構成される木管楽器用消音器においては、木管楽器内部の定在波の終端はほぼ音孔の位置とみなすことができ、低音域の音ほど波長が長くなるため、その音孔の開口端の周囲には十分な空間が必要となる。仮に、その空間が不十分である場合は、音程および発音に悪影響を及ぼす結果となるため、右シェル1および左シェル12の成形形状を配慮する必要がある。また、消音器の密閉度が高い場合、演奏者が吹き込んだ呼気の逃げ道を失い、息苦しさ演奏者に与えることがある。このような場合のため、通気口21を備えるようにすればよいが、この通気口21の大きさ、位置および個数は、消音効率と息苦しさを考慮し、適宜設定すればよい。
以上の説明は本発明の基本的構成を示すもので、閉ざされた空間である消音器内部では、音孔から放射された音波は近傍の消音器内壁で反射し、その反射波が木管楽器内部の定在波に悪影響を及ぼす場合がある。したがって、木管楽器の位置が消音器内部で移動してしまう構造では、音が安定しないことになる。そこで、ネック支持台16と同様な方法で木管楽器を筐体内部の空間のほぼ中央に固定することができる機構を複数箇所に設け、木管楽器の収容位置を一定に保つようにすることが望ましい。
また、音波は硬い壁ほど反射波が強くなり、右シェル吸音層14および左シェル吸音層15に採用する素材の物性によっても音波の反射量や方向が影響される。したがって、消音器内部の音響空間形状を設定する場合は、木管楽器の構造や音域とともに右シェル吸音層14および左シェル吸音層15の素材の物性をも考慮しなくてはならない。つまり、木管楽器内部の定在波に悪影響を及ぼさない消音器の内部の音響空間形状は、諸条件を設定した上で求められる。
本発明の右シェル吸音層14および左シェル吸音層15は、前述したように反射波を抑える働きの他に重要な機能を備えている。第1に、吸音および右シェル1および左シェル12の振動を抑えることにより消音効果を高めることができる。第2に、吸湿および吸水性が非常に高いものとして、演奏者の吹奏による呼気に含まれる水分を強力に吸収することにある。
演奏者による長時間の練習などで吸い取られた水分は、右シェル吸音層14および左シェル吸音層15に一旦吸収されるが、右シェル1と左シェル12を拡開して内部空間を外気に晒せば、吸収された水分は放散され水分吸収能力を復元することができる。なお、吸湿にはポアクリルレート系、給水にはアクリル系繊維が好ましく、それらを混合したものが理想的な素材となる。また、本発明では、面ファスナー19により右シェル吸音層14および左シェル吸音層15を着脱可能となるようにしたので、洗濯することが可能であり衛生状態を高く保つことができる。
つぎに、図3は、本発明を発展的に構成した例を示す木管楽器用消音器であり、右シェル1および左シェル12による筐体の内部空間に発生した吹奏音をマイクロフォンで集音し、電気音響信号により演奏者が吹奏音を聴取できるようにしたものである。即ち、消音器の本来の機能は、外部空間に吹奏音が漏れ出さないようにするものであるが、これは演奏者が吹奏音を聴取できないことでもあり、練習効果に影響を及ぼす可能性がある。
そこで、図3および同図のB−B線の断面である図4に示す構成では、筐体の内部空間に発生した吹奏音をマイクロフォン24で集音し、このマイクロフォン24の電気音響信号を右シェル1の胴部に形成した凹部に配設した電子モジュール22へ導き、イヤホーン23により聴取可能となるようにした。なお、同構成では、右シェル1にマイク穴26を形成し、このマイク穴26にパッキン25を介してマイクロフォン24を臨ませ、固定ネジ27で取り付けるようにしている。
以上のように構成したことから、筐体の内部空間で発生した吹奏音はマイクロフォン24で集音され、電子モジュール22で増幅された電気音響信号によりイヤホーン23が駆動され、これにより演奏者が吹奏音を聴取することができる。なお、電子モジュール22に残響回路や外部入出力端子を設ければ、カラオケ演奏やモニタリングなども可能となり、演奏の楽しさを増加することができる。
以上詳細に説明したように本発明の木管楽器用消音器では、右シェルと左シェルにより構成される筐体を収容する木管楽器の外形形状に合わせて形成することにより、各種の木管楽器用消音器とすることができる。即ち、実施例として説明したサクソフォン属の木管楽器に限らず、クラリネット属あるいはオーボエ属などの木管楽器についてもその外形形状に合わせて筐体を形成することにより対応することができ、楽器産業上の利用範囲を大きなものとすることができる。
1・・・・・・右シェル
2・・・・・・窓孔部材(右手挿入用)
3・・・・・・ストラップリング
4・・・・・・蝶番
5・・・・・・パッチン錠
6・・・・・・木管楽器(アルトサックスフォン)
7・・・・・・マウスピース
8・・・・・・リード
9・・・・・・リガチャー
10・・・・・音孔(最上部)
11・・・・・ネックパッキン
12・・・・・左シェル
13・・・・・窓孔部材(左手挿入用)
14・・・・・右シェル吸音層
15・・・・・左シェル吸音層
16・・・・・ネック支持台
17・・・・・凸パッキン
18・・・・・凹パッキン
19・・・・・面ファスナー
20・・・・・ネック
21・・・・・通気孔
22・・・・・電子モジュール
23・・・・・イヤホーン
24・・・・・マイクロフォン
25・・・・・パッキン
26・・・・・マイク穴
27・・・・・固定ネジ
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Claims (3)
- 内部空間内に収容する木管楽器の全ての音孔を内包できるようにし、且つ、長手方向で二分割する構造により開閉可能となるようにした硬質の筐体の内面に吸水性および吸湿性を備えた吸音層を着脱可能に配設するとともに、該筐体の胴部に内部空間の密閉状態を保ちつつ演奏者によるキー操作が可能となるようにした窓孔部材を設けるとともに、収容した木管楽器を内部空間のほぼ中央に安定させる固定手段を備えたことを特徴とする木管楽器用消音器。
- 前記筐体に凹部を形成し、該筐体の内部空間に発生した吹奏音をマイクロフォンで集音し、電気音響信号により演奏者が吹奏音を聴取できるようにした電子モジュールを、前記凹部に配設可能となるようにしたことを特徴とする請求項1記載の木管楽器用消音器。
- 前記筐体を吊支するためのストラップリングを、収容する木管楽器本体に近い位置となるようにして筐体の後壁面に配設したことを特徴とする請求項1記載の木管楽器用消音器。
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