JP2006162711A - 反射防止機能を持つセルフクリーニングコーティング膜とその構成体 - Google Patents

反射防止機能を持つセルフクリーニングコーティング膜とその構成体 Download PDF

Info

Publication number
JP2006162711A
JP2006162711A JP2004350501A JP2004350501A JP2006162711A JP 2006162711 A JP2006162711 A JP 2006162711A JP 2004350501 A JP2004350501 A JP 2004350501A JP 2004350501 A JP2004350501 A JP 2004350501A JP 2006162711 A JP2006162711 A JP 2006162711A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
tio
sio
particles
coating
self
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2004350501A
Other languages
English (en)
Inventor
Shinton Cho
▲しんとん▼ 張
Akira Fujishima
昭 藤嶋
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Kanagawa Academy of Science and Technology
Original Assignee
Kanagawa Academy of Science and Technology
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Kanagawa Academy of Science and Technology filed Critical Kanagawa Academy of Science and Technology
Priority to JP2004350501A priority Critical patent/JP2006162711A/ja
Publication of JP2006162711A publication Critical patent/JP2006162711A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Landscapes

  • Surface Treatment Of Optical Elements (AREA)
  • Catalysts (AREA)

Abstract

【課題】反射防止膜とセルフクリーニング機能を併せ持つTiO2系粒子膜とを提供する。
【解決手段】ナノサイズ粒径のTiO2粒子が付着したサブミクロンサイズ粒径のSiO2粒子によるTiO2-SiO2複合粒子膜とする。
【選択図】図2

Description

本願発明は、太陽電池、照明、温室等の広範囲な領域において有用な、反射防止機能を持つTiO2系のセルフクリーニング膜とその構成体に関するものである。
セルフクリーニング機能を有するコーティングは維持時間と維持費用が大きく軽減されるため、興味深く魅力的である。天然のセルフクリーニング表面である蓮の葉は常に清浄を保っているが、これは葉の超疎水性表面を雨粒が伝い落ち、汚染された埃を洗い落とすためである。蓮の葉のセルフクリーニング機能を模倣するための試みは多数行われているが、現在まで達成された成功例はほとんどない。ただ、TiO2の超親水性機能(非特許文献1−2)と光触媒機能(非特許文献3)を利用する代替法は、ある程度成功している。タイル、ガラス、プラスチックなどのTiO2をコーティングしたセルフクリーニング製品には市販品も存在している。この種のセルフクリーニング表面にみられる利点の一つは、紫外線(UV)照射条件下でTiO2が汚染性有機物を分解し(非特許文献4)、表面に付着した微生物を殺す(非特許文献5)という性質である。さらに超親水性のTiO2コーティングでは水滴が表面上に急速かつ完全に拡がりやすくなっており、これも除染過程の助けになっている。
このように、TiO2をガラスやプラスチックなどの透明基材上に容易にコーティングし、セルフクリーニング機能を賦与することが可能である。しかしながら、TiO2の場合、その屈折率が大きいため(アナターゼではn〜2.52;ルチルでは2.76)、このコーティングにより常に透明基材の表面反射が促進されるという問題がある。空気-ガラス界面反射は可視光で約4%であるが、空気-TiOs界面反射は20%という高い値を示すことになる。太陽電池、照明、温室などでは、表面反射の低い、すなわち光透過率の大きなセルフクリーニングが望ましいことから、これら各種の用途への適用については、TiO2コーティングによる表面反射は解決すべき問題点であった。
Wang, R.;Hashimoto, K.;Fujishima, A.;Chikuni, M.;Kojima, E.;Kitamura, A.;Shimohigoshi, M.;Watanabe, T.Nature 1997, 388, 431-432. Wang, R.;Hashimoto, K.;Fujishima, A.;Chikuni, M.;Kojima, E.;Kitamura, A.;Shimohigoshi, M.;Watanabe, T. Adv. Mater. 1998, 10, 135-138. Fujishima, A.;Rao, T.N.;Tryk, D,A.J.Photochem. Photobiol. C:Photochem. Rev, 2000, 1, 1-21. Minabe, T.;Tryk, D.A.;Sawayama, P.;Kikuchi, Y.;Hashimoto, K.;Fujishima, A.J.Photochem. Photobiol. A:Chem. 2000, 137, 53-62 Kikuchi, Y.;Sunada, K.;Iyoda, T.;Hashimoto, K.;Fujishima, A.J.Photochem. Photobiol, A.;Chem. 1997, 106, 51.
本願発明は、以上のとおりの背景から、TiO2コーティングの有する優れたセルフクリーニング機能を生かすとともに、表面反射の低い、光透過率の大きなコーティングを可能とする新しい反射防止機能を持つセルフクリーニングコーティングの手段を提供することを課題としている。
反射防止(AR)コーティングは光学装置の表面反射を軽減するために広く用いられている。ARの原理は、空気-コーティング界面ならびにコーティング-基材界面より生じる反射光に対する干渉である。理想的な単一均一層ARコーティングは以下の条件を満たす必要がある。すなわち、λを入射光の波長としてコーティングの厚みはλ/4であり、ne、na、nsをそれぞれコーティング、空気、基材の屈折率としてne=(na×ns)1/2である。ガラスや透明プラスチックなどのようにnsが1.50ある場合にゼロ反射を得るためには、neは1.22でなければならない。この値は任意の均一な誘電体の値を下回るため、従来のARコーティングでは多くの場合、AR効果を得るために常に2次元または3次元のポーラス構造を採用している。
そこで本発明者は、このような従来のARコーティングにおけるポーラス構造の知見をも踏まえて鋭意検討し、段階的な静電付着(electrostatic deposition)により、サブマイクロメートルサイズのSiO2粒子とナノサイズのTiO2粒子を用いた階層的なポーラスコーティングにより、セルフクリーニングとARの機能が共に実現され、このコーティングの階層構造のため、コーティングされたTiO2粒子は表面反射を増大させず、その代わりにコーティングのAR機能が改善されるとのことを見出し、本願発明を完成した。
すなわち、本願発明は反射防止機能を持つセルフクリーニングコーティング膜とその構成体を提供するものであって、以下のことを特徴としている。
第1:基板上に形成された、ナノサイズ粒径のTiO2粒子が付着したサブミクロンサイズ粒径のSiO2粒子によるTiO2-SiO2複合粒子膜である反射防止機能を持つセルフクリーニングコーティング膜。
第2:TiO2粒子の平均粒径は、2nm〜50nmの範囲で、SiO2粒子の平均粒径は50nm〜150nmの範囲である上記のセルフクリーニングコーティング膜。
第3:TiO2粒子の平均粒径:D1とSiO2粒子の平均粒径:D2の比が、D1/D2=0.05〜0.5の範囲内である上記のセルフクリーニングコーティング膜。
第4:粒子膜におけるTiO2粒子の体積(V1)とSiO2粒子の体積(V2)の比が、V1/V2=0.01〜0.10の範囲内である上記のセルフクリーニングコーティング膜。
第5:静電付着法により形成されたTiO2-SiO2複合粒子膜である上記のセルフクリーニングコーティング膜。
第6:上記いずれかの反射防止機能を持つセルフクリーニングコーティング膜が少くともその構成の一部とされていることを特徴とする反射防止セルフクリーニング構成体。
第7:波長 450nm〜800nmの光の透過率が95%以上である上記のセルフクリーニング構成体。
上記のとおりの本願発明によれば、反射防止機能とセルフクリーニング機能を併せ持つTiO2-SiO2複合粒子膜が提供され、光透過性が求められる各種用途においてその優れた機能が発揮されることになる。
本願発明の反射防止機能を持つセルフクリーニングコーティング膜は、上記のとおり、基板上に形成されたTiO2-SiO2複合粒子膜であるが、TiO2はナノサイズ、すなわち好適には100nm未満のナノメートルサイズの粒径の超微粒子であって、このものは、サブミクロンサイズ、すなわち好適には500nm未満の粒径のSiO2微粒子の表面に付着している。
TiO2超微粒子としては、平均粒径が2nm〜50nmの範囲のものが、またSiO2粒子としては、平均粒径が50nm〜150nmの範囲のものが好適なものとして例示される。また、TiO2粒子の平均粒径D1と、SiO2粒子の平均粒径D2の比は、D1/D2=0.15〜0.85の範囲にあること、さらには0.05〜0.5の範囲にあることが好ましい。
TiO2-SiO2複合粒子膜を構成するTiO2とSiO2の組成体積比としては、V1(TiO2)/V2(SiO2)=0.1〜0.20、さらには0.01〜0.10の範囲が好ましい。さらに基板上の膜厚としては、用途に応じて光透過率等の特性を考慮し、適宜としてよいが、一般的には50nm〜500nmの範囲とすることが好適に考慮される。
TiO2、SiO2の各粒子は様々な方法によって製造、調製されたものであってよく、また本願発明のTiO2-SiO2複合粒子膜も様々な方法で、SiO2粒子の層として単層もしくは多層に形成されてよい。なかでも、静電付着(沈着)法により形成することが好適に考慮される。たとえば基板表面を正に帯電させ、SiO2微粒子を付着させ、次いでTiO2超微粒子をSiO2粒子表面に付着させる方法等が考慮される。SiO2、TiO2はコロイド溶液として使用し、基板、あるいはSiO2粒子を付着させた基板をコロイド溶液に浸漬することで静電付着が実現される。この方法は極めて簡便であって、TiO2−SiO2複合粒子膜の組成構成、その特性のコントロールも容易である。
たとえば、TiO2コロイド溶液におけるTiO2の濃度や粒径等を変更することによって、コーティング膜の光透過性、反射防止特性等を制御することが容易である。
浸漬の条件(たとえば時間)等も適宜に定めることができる。
そしてまた、基板は各種のものであってよい。たとえばガラス、セラミックス、プラスチック等であり、反射防止機能を持つ透光性部材、部品として各種用途のための構成体とすることができる。
そこで以下に実施例を示し、さらに詳しく説明する。もちろん、以下の例によって発明が限定されることはない。
(A)材料:
Poly(diallyldimethyl ammonium)(PDDA、Aldrich、中程度分子量と低分子量)ならびにsodium poly(4-styrene sulfonate)(PSS、Aldrich、分子量70000)は市販品を利用し、それ以上精製せず2mg・mL-1の濃度で使用した。PDDAは線状四級アンモニウムポリカチオンであり、PSSは線状ポリカチオンである。水溶性SiO2コロイド溶液(MP1040、Nissan Kagaku、Japan)は遠心分離により精製し、脱イオン水で希釈して100mg/mL(pH〜9)濃度とした。水溶性TiO2コロイド溶液(STS-01、Ishihara Sankyo、Japan)は希釈して1、10、100mg/mL濃度とした。全ての実験で、約18MΩ・cmの規定の抵抗を有する脱イオン水を用いた。
(B)粒子コーティングの調製:
TiO2-SiO2コーティングの調製についてはその概要を図1に示した。具体的には、まず、ガラス基材を濃縮H2SO4/H2O2溶液(容積比7:3)で洗浄してから脱イオン水で洗浄した。洗浄済みの基材を交互に5分ずつPDDA溶液とPSS溶液中に浸し、その間に水で洗浄した。(PDDA/PSS)4/PDDAの多分子層が調製され、以後全ての操作でこれを使用した。このポリマー交互層の上にSiO2粒子を付着させたが、これにはSiO2コロイド溶液を使用した。この手順は公知のSiO2粒子ARコーティングの調製法に類似している。SiO2粒子のコーティングは後に500℃で1時間にわたり焼成してポリマーを除去するか、あるいはこれを行うことなく次の操作に直接使用した。
次の段階では低分子量PDDAとPSSを用いて、2サイクルにわたり単一層のSiO2粒子を交互にカバーした。この時、最終層はPDDAではなくPSSであった。次に単層SiO2粒子上にTiO2粒子を付着させたが、これは異なる濃度のTiO2コロイド溶液中に5分間基材を浸し、続いて脱イオン水を用いて十分に洗浄して行った。調製されたコーティングは500℃で1時間にわたり焼成してポリマーを除去した。
(C)セルフクリーニング実験:
焼成したTiO2-SiO2粒子コーティングを、単層のoctyldodecyldimethylchlorosilane(ODS)により修飾した。主としてコーティング済みガラス基材を140℃で2時間にわたり予熱し、その後、1%のODS無水トルエン溶液中に浸した。一夜にわたりN2保護条件下で還流してから、ODS溶液からコーティングを取り出し、エタノールで洗浄した。処置後のコーティングは疎水性であった。次にODS修飾した基材を、UV-Aバンドの紫外線光を発するブラックライトランプ下に置いた。そしてTiO2-SiO2コーティングによるセルフクリーニング機能を評価したが、これは照射中に間隔を置いた10カ所のフィルムに対する水接触角を測定して行った。全ての実験で表面に照射される光の強度は1.5mW/cm2であったが、これはTopcon電力計により測った。対照実験ではやはりODSを用いてSiO2粒子コーティングを処理し、照射中に表面上の水接触角を測定した。
(D)その他の測定:
粒子コーティングの透過スペクトル測定は、垂直入射でShimadzu UV3100分光計を使用して行った。コーティングの表面形態と断面についてはPhilips FP6800走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて調べた。試料は全て市販のスパッタリング装置により、オスミウムでコーティングしてからSEM測定を行った。接触角については、室温、静止モードにて接触角測定器(Kyowa CA-X)を用いて測定し、FMASソフトウェアで分析した。このソフトウェアによって従来の静的な接触角測定に加えて、表面上に液体飛沫が拡がる途中の一過性の接触角を測定することが可能となった。単一結晶シリコンウエハー上に塗装されたコーティングのIR反射スペクトルについては、JACSO Irtron IRT-30赤外線顕微鏡を用いて記録した。
(E)結果と評価:
1)AR機能:
図2に示すのは、複数の粒子コーティングの透過スペクトルである。350nm-800nmの光波長でのガラス基材の透過率は、およそ90-92%である。ガラス基材の両端を球形のSiO2粒子で覆うことによりスペクトル全体で透過率が増加し、この場合に最も有効な波長は530nmであった。この波長は単層SiO2の厚みに基づいていた(平均直径、126±13nm)。SiO2粒子でコーティングされたガラス基質の透過率は、この波長で98.33%にもなった。焼成前後におけるSiO2コーティング透過率の変化は無視可能な程度であった。SiO2粒子コーティングに続いて、同じ静電引力法によりTiO2ナノ粒子によるコーティングを行った。使用したTiO2ナノ粒子は、市販されているアナターゼコロイド溶液であり、平均粒子サイズは約30nmであった。図2に示すように、TiO2層を追加することにより透過バンドが長波長側にシフトした。最大透過率は、1mg/mL TiO2(T-1)と10mg/mL TiO2(T-10)を用いて作成したコーティングでは590nm付近、100mg/mL TiO2(T-100)を用いたコーティングでは630nm付近であった。透過バンドのシフトにもかかわらず、TiO2粒子層を加えることにより、更に最大透過率の改善がみられた。最大透過率はそれぞれT-1では98.67%、T-10では99.22%、T-100では99.09%であった。この実験を数回繰り返したところ、上記の現象がすべて再現された。
なお、計算によると、コーティング膜におけるSiO2粒子に対するTiO2粒子の体積比は、T-1で1.4%、T-10で2.6%、T-100で4.8%であった。
図3に示すのは、いくつかのARコーティングの電子顕微鏡写真である。ガラス基材上にSiO2粒子がランダムに充填されており、500℃の焼成のために球形からの変形が生じている(図3a)。TiO2粒子によるコーティングによってSiO2粒子の表面が粗くなっており、T-1では平均粒子径が増加して138±13nmになっている様子が図3bに示されている。T-10のARコーティングによっても図3bと同様な表面形態が見られるが、ここでは平均粒子径が141±12nmとやや増加している。100mg/mL TiO2の使用時には粒子径の評価は不可能であるが、これはSiO2粒子がTiO2ナノ粒子と完全に重なっているためである(図3c)。これらの図からTiO2濃度の増加は静電吸着に有利であることが示され、これはTiO2-SiO2粒子コーティング透過バンドの濃度に依存した赤方移動の理由となっているが、これはTiO2ナノ粒子の濃度が増加するとコーティングの厚みの平均値が増加するためである。同様な現象はSiO2粒子多重層の静電集合においても観察されている。
静電引力塗装の特性として、断面顕微鏡写真(図3d)に示されるようにサブマイクロメートルサイズのSiO2粒子による湾曲面は、ほとんど全てTiO2ナノ粒子によりコーティングされる。この種の形態はセルフクリーニング機能には非常に重要である。
表面の粒子密度から、SiO2粒子層の屈折率は1.24であると概算される。TiO2ナノ粒子でSiO2ポーラス層を覆うことにより、当該層の屈折率が増大したことは明らかである。しかしここではTiO2粒子によるコーティング後に透過性の増加も見られた。対照実験では、TiO2粒子ではなくSiO2ナノ粒子(35-55nm、Catal & Chem. Ind. CO., Japan)を用いてSiO2粒子層をコーティングした。ここでもやはり透過バンドの赤方移動とともに、最大透過度の増加が見られた。従って静電引力により調製したナノ粒子層を追加すると、SiO2粒子層の透過性が増加することは普遍的な現象であると思われる。これは表面反射を軽減する場合、均一な屈折率を有するコーティングと比べて本願発明のような段階的屈折率を有するARコーティングのほうが常に優れているためであると推察される。
2)光触媒機能:
TiO2-SiO2粒子コーティングは二成分表面を有しており、そこではTiO2とSiO2粒子がいずれも周囲環境に露出している。このコーティングのセルフクリーニング機能を評価する場合、従来の色素結合-分解法は妥当ではないが、それはメチレンブルーなどの色素分子がSiO2粒子上に十分吸着されないためである。そこで今回は別法により、TiO2-SiO2粒子コーティングのセルフクリーニング機能を調べた。この方法ではまずODS単層により、TiO2とSiO2粒子を表面で修飾する。この修飾により粒子コーティングは疎水性となり、接触角が120°より大きくなる。次にUV照射途中で、表面上での接触角の変化をモニターする。TiO2とSiO2粒子の両者に接触するODS分子は光分解されると、コーティング上の水接触角は明らかに減少することになる。UV照射後にODS分子がSiO2粒子上に残存するならば、コーティング上の水接触角は依然として大きくなる。今回の実験では1.5mW/cm2のUV光を用いたが、これは日光のUV部分と比較してかなり弱いものであった。
図4に示すように、ODS修飾されたSiO2コーティングの水接触角のUV照射中における変化は無視可能な程度であった。対照的にTiO2-SiO2ARコーティングでは照射中に水接触角の明らかな減少が示された。ここでは接触角の減少率が、調整時に用いたTiO2コロイド溶液の濃度に依存していることが判った。3種類の試料のうち、水接触角の最も急速な減少が観察されたのは、ODS修飾されたT-100コーティングであった。このコーティング上での水接触角は、3時間で124°から約0°まで減少した。3種類の試料のうち、ODS修飾されたT-1コーティングでは水接触角の減少が最も緩やかであることが示された。このコーティング上での水接触角は、15時間で125°から58°に減少しただけであった。
ここではODS修飾されたT-100コーティングについて、UV照射前後のIR反射スペクトルを測定した。3時間にわたる照射後も、IRによって表面にアルキル鎖が存在する証拠は見られなかった(補足情報を参照)。従って、TiO2とSiO2粒子上のODS分子は完全に光分解されていた。TiO2の光触媒性酸化については2種類の主要経路が提示されている。一つはTiO2の価電子帯中の穴による直接光触媒性酸化である。もう一つはOH・など活性酸素種による光触媒性酸化である。前者の過程は急速な反応速度でTiO2表面において生じ、これに対して後者の過程では活性酸素種が浸透するため、表面から数十マイクロメートル離れた有機物に対しても有効であるが、浸透過程のため進行速度は比較的緩やかである。明らかにSiO2粒子上のODS分子は後者の経路で光分解していると考えられるが、これは複合コーティング中のTiO2粒子からの距離が短いためである。TiO2粒子はその表面に存在するODS分子を最初に分解し、次に光生成した活性酸素種の浸透により、これより緩やかな速度でSiO2粒子上のODS分子を分解した。上記のように、SiO2粒子上のTiO2粒子による被覆度はTiO2粒子濃度に依存していた。ODS修飾されたT-100コーティングでは、3種類の試料のうち水接触角の減少が最も急速であったが、これはTiO2粒子の被覆度が最大であったためである。
3)表面湿潤性:
調製状態のTiO2粒子コーティングは、表1に示すように超両親媒性を示した。
このコーティング上では、水と液体パラフィンはいずれも完全に展開し、その接触角は2°未満であった。コーティングのセルフクリーニング機能は調製条件に依存していたが、それでも3種類の試料すべて(T-1、T-10、T-100)に同様の表面湿潤性が見られた。TiO2-SiO2コーティング上における1マイクロリットルの水の展開は、図5に示すように1.2秒と非常に急速であった。4週間にわたる暗所保存後においても、この表面の水接触角は5°を保っており、UV照射後にほぼ0°の接触角を取り戻すことが可能であった。比較として単結晶TiO2や従来のTiO2ゾル-ゲルコーティングで超両親媒性が見られるのは、UV照射後のみであった。
この異常な超両親媒性に対する説明の一つは、階層的粒子コーティングにより大きな表面の粗さが生じてこれが表面浸潤性を改善しているというものであり、これはWenzelの理論(次式)に説明されている。
ここで見かけ上の接触角(θ)は内因性の接触角(θ)より粗さ(r)倍だけ増大する。平坦なガラス基材の水接触角は5°、液体パラフィンの接触角は36°を示した。しかしSiO2ARコーティングではさらに良好な湿潤挙動が見られ、水接触角は3°、液体パラフィンの接触角は12°であったが、これは表面粗さが増加したためである。さらにこのコーティングの著しい表面湿潤性には、TiO2ナノ粒子層が重要な役割を果たしている。ここでは静電引力による同じ方法を用いて、TiO2ナノ粒子を平坦なガラス基材上に塗装した。この表面は良い湿潤性を示し、水のCAは2°未満、液体パラフィンのCAは5°未満であった。ナノ粒子の大きな表面エネルギーが、水と液体パラフィンの浸潤に望ましい条件となっていることは明らかである。
以上の結果から、単純な静電引力法による階層的TiO2-SiO2粒子コーティングにみられる、ARとセルフクリーニング機能の組み合わせの結果が確認される。サブミクロメートルサイズのSiO2粒子単層を用いることによって屈折率の低いポーラス構造が得られ、これがAR機能を誘導する。そしてSiO2層の表面にナノサイズのTiO2粒子をコーティングし、これによってセルフクリーニング機能と超両親媒性シェル層が得られる。TiO2ナノ粒子により大きな屈折率が得られるにもかかわらず、TiO2-SiO2コーティングによりガラス基材の最大透過性が99%を上回るまで改善される。
粒子コーティングの調製の概要を示した図である。 コーティング膜の光透過率(%)スペクトルを例示した図であって、(a)ガラス基板、(b)SiO2粒子、(c)T−1、(d)T−10、(e)T−100 の場合を示している。 粒子コーティング膜のSEM 写真であって、SiO2粒子コーティング(a)、T−1コーティング(b)、T−100コーティング(c)T−100コーティング断面(d)を示し、棒状スケールは、a、b、cにおいて500nmを、dにおいて200nmを示している。 接触角を経時的に例示した図であって、SiO2粒子(菱形)、T−1コーティング(三角)、T−10コーティング(四角)、T−100 コーティング(黒丸)を示している。 接触角と水の展開時間との関係を例示した図であって、T−100コーティング(黒四角)、UV−照射(1時間)後のT−100コーティング(三角)、SiO2コーティング(黒丸)を示している。

Claims (7)

  1. 基板上に形成された、ナノサイズ粒径のTiO2粒子が付着したサブミクロンサイズ粒径のSiO2粒子によるTiO2-SiO2複合粒子膜であることを特徴とする反射防止機能を持つセルフクリーニングコーティング膜。
  2. TiO2粒子の平均粒径は、2nm〜50nmの範囲で、SiO2粒子の平均粒径は50nm〜150nmの範囲であることを特徴とする請求項1の反射防止機能を持つセルフクリーニングコーティング膜。
  3. TiO2粒子の平均粒径:D1とSiO2粒子の平均粒径:D2の比が、D1/D2=0.05〜0.5の範囲内であることを特徴とする請求項1または2の反射防止機能を持つセルフクリーニングコーティング膜。
  4. 粒子膜におけるTiO2粒子の体積(V1)とSiO2粒子の体積(V2)の比が、V1/V2=0.01〜0.10の範囲内であることを特徴とする請求項1から3のいずれかの反射防止機能を持つセルフクリーニングコーティング膜。
  5. 静電付着法により形成されたTiO2-SiO2複合粒子膜であることを特徴とする請求項1から4のいずれかの反射防止機能を持つセルフクリーニングコーティング膜。
  6. 請求項1から5のいずれかの反射防止機能を持つセルフクリーニングコーティング膜が少くともその構成の一部とされていることを特徴とする反射防止セルフクリーニング構成体。
  7. 波長 450nm〜800nmの光の透過率が95%以上であることを特徴とする請求項6の反射防止セルフクリーニング構成体。

JP2004350501A 2004-12-02 2004-12-02 反射防止機能を持つセルフクリーニングコーティング膜とその構成体 Pending JP2006162711A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2004350501A JP2006162711A (ja) 2004-12-02 2004-12-02 反射防止機能を持つセルフクリーニングコーティング膜とその構成体

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2004350501A JP2006162711A (ja) 2004-12-02 2004-12-02 反射防止機能を持つセルフクリーニングコーティング膜とその構成体

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2006162711A true JP2006162711A (ja) 2006-06-22

Family

ID=36664840

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2004350501A Pending JP2006162711A (ja) 2004-12-02 2004-12-02 反射防止機能を持つセルフクリーニングコーティング膜とその構成体

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2006162711A (ja)

Cited By (7)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2010079495A1 (en) 2009-01-12 2010-07-15 Cleansun Energy Ltd. A substrate having a self cleaning anti-reflecting coating and method for its preparation
WO2011021383A1 (ja) 2009-08-17 2011-02-24 日本板硝子株式会社 光触媒膜を備えたガラス物品
JP2013224879A (ja) * 2012-04-23 2013-10-31 Sharp Corp 蛍光検出装置および蛍光検出方法
CN103524048A (zh) * 2013-09-29 2014-01-22 南通汉瑞实业有限公司 一种多层SiO2无机增透膜的制备方法
CN104071988A (zh) * 2013-03-28 2014-10-01 中国科学院理化技术研究所 耐磨的长效自清洁的增透涂层的制备方法以及耐磨的长效自清洁的增透涂层
JP2014188416A (ja) * 2013-03-26 2014-10-06 Panahome Corp 光触媒体
CN113113497A (zh) * 2021-04-13 2021-07-13 河南大学 一种使用有机增效剂的太阳能电池及其制备方法

Citations (7)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH04155731A (ja) * 1990-10-19 1992-05-28 Toshiba Corp 反射防止膜および陰極線管
JPH1133100A (ja) * 1997-07-18 1999-02-09 Lion Corp 光触媒微粒子含有中実多孔質シリカ粒子とその使用方法、および光触媒含有高分子固体
JP2000344510A (ja) * 1999-06-02 2000-12-12 Hoya Corp 酸化チタン−酸化珪素複合膜の製造方法
JP2001009295A (ja) * 1999-04-28 2001-01-16 Toshiba Lighting & Technology Corp 光触媒体、ランプおよび照明器具
JP2001328201A (ja) * 2000-03-14 2001-11-27 Toshiba Lighting & Technology Corp 光触媒体、光触媒体の製造方法、光触媒体の下地層用塗布液、光触媒膜用塗布液および機能体
JP2002006108A (ja) * 2000-04-17 2002-01-09 Dainippon Printing Co Ltd 反射防止膜およびその製造方法
JP2002361767A (ja) * 2001-04-06 2002-12-18 Dainippon Printing Co Ltd 微粒子層積層膜およびそれを用いた光学機能材

Patent Citations (7)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH04155731A (ja) * 1990-10-19 1992-05-28 Toshiba Corp 反射防止膜および陰極線管
JPH1133100A (ja) * 1997-07-18 1999-02-09 Lion Corp 光触媒微粒子含有中実多孔質シリカ粒子とその使用方法、および光触媒含有高分子固体
JP2001009295A (ja) * 1999-04-28 2001-01-16 Toshiba Lighting & Technology Corp 光触媒体、ランプおよび照明器具
JP2000344510A (ja) * 1999-06-02 2000-12-12 Hoya Corp 酸化チタン−酸化珪素複合膜の製造方法
JP2001328201A (ja) * 2000-03-14 2001-11-27 Toshiba Lighting & Technology Corp 光触媒体、光触媒体の製造方法、光触媒体の下地層用塗布液、光触媒膜用塗布液および機能体
JP2002006108A (ja) * 2000-04-17 2002-01-09 Dainippon Printing Co Ltd 反射防止膜およびその製造方法
JP2002361767A (ja) * 2001-04-06 2002-12-18 Dainippon Printing Co Ltd 微粒子層積層膜およびそれを用いた光学機能材

Cited By (13)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2010079495A1 (en) 2009-01-12 2010-07-15 Cleansun Energy Ltd. A substrate having a self cleaning anti-reflecting coating and method for its preparation
US9073782B2 (en) 2009-01-12 2015-07-07 Cleansun Energy Ltd. Substrate having a self cleaning anti-reflecting coating and method for its preparation
US8541106B2 (en) 2009-08-17 2013-09-24 Nippon Sheet Glass Company, Limited Glass article provided with photocatalyst film
EP2468694A1 (en) * 2009-08-17 2012-06-27 Nippon Sheet Glass Company, Limited Glass article provided with photocatalyst film
EP2468694A4 (en) * 2009-08-17 2014-07-09 Nippon Sheet Glass Co Ltd GLASS ARTICLES EQUIPPED WITH A PHOTO CATALYST FILM
WO2011021383A1 (ja) 2009-08-17 2011-02-24 日本板硝子株式会社 光触媒膜を備えたガラス物品
KR101729802B1 (ko) * 2009-08-17 2017-04-24 니혼 이타가라스 가부시키가이샤 광촉매막을 구비한 유리 물품
JP2013224879A (ja) * 2012-04-23 2013-10-31 Sharp Corp 蛍光検出装置および蛍光検出方法
JP2014188416A (ja) * 2013-03-26 2014-10-06 Panahome Corp 光触媒体
CN104071988A (zh) * 2013-03-28 2014-10-01 中国科学院理化技术研究所 耐磨的长效自清洁的增透涂层的制备方法以及耐磨的长效自清洁的增透涂层
CN104071988B (zh) * 2013-03-28 2016-06-01 中国科学院理化技术研究所 耐磨的长效自清洁的增透涂层的制备方法以及耐磨的长效自清洁的增透涂层
CN103524048A (zh) * 2013-09-29 2014-01-22 南通汉瑞实业有限公司 一种多层SiO2无机增透膜的制备方法
CN113113497A (zh) * 2021-04-13 2021-07-13 河南大学 一种使用有机增效剂的太阳能电池及其制备方法

Similar Documents

Publication Publication Date Title
Mozumder et al. Recent developments in multifunctional coatings for solar panel applications: A review
Padmanabhan et al. Titanium dioxide based self-cleaning smart surfaces: A short review
Ragesh et al. A review on ‘self-cleaning and multifunctional materials’
Cherupurakal et al. Recent advances in superhydrophobic polymers for antireflective self-cleaning solar panels
Wang et al. Transparent nanostructured coatings with UV-shielding and superhydrophobicity properties
JP3786365B2 (ja) 親水性表面を備えた部材
Syafiq et al. Superhydrophilic Smart Coating for Self‐Cleaning Application on Glass Substrate
Ahmad et al. Facile two-step functionalization of multifunctional superhydrophobic cotton fabric for UV-blocking, self cleaning, antibacterial, and oil-water separation
JP5511159B2 (ja) 光触媒膜、光触媒膜の製造方法、物品および親水化方法
US20130202866A1 (en) Mechanically stable nanoparticle thin film coatings and methods of producing the same
Yao et al. Fabrication of mechanically robust, self-cleaning and optically high-performance hybrid thin films by SiO 2 &TiO 2 double-shelled hollow nanospheres
JP2009515032A (ja) 超親水性コーティング
KR101316734B1 (ko) 소수성 반사방지 기판 및 그 제조방법, 그를 포함하는 태양전지 모듈
Gupta et al. Self cleaning finishes for textiles
Xiong et al. Ultraviolet-durable superhydrophobic nanocomposite thin films based on cobalt stearate-coated TiO2 nanoparticles combined with polymethylhydrosiloxane
Somasundaram et al. Application of nanoparticles for self-cleaning surfaces
JP2006162711A (ja) 反射防止機能を持つセルフクリーニングコーティング膜とその構成体
Zhang et al. Superior self-cleaning surfaces via the synergy of superhydrophobicity and photocatalytic activity: Principles, synthesis, properties, and applications
Fernando et al. Remediation of Fouling on Painted Steel Roofing via Solar Energy Assisted Photocatalytic Self‐Cleaning Technology: Recent Developments and Future Perspectives
Carneiro et al. Development of photocatalytic ceramic materials through the deposition of TiO2 nanoparticles layers
Wahyuningsih et al. Preparation Composite TiO2 Anatase with Polydimetilsiloxane and Polytetrafluoroethylene for Self Cleaning on Glass Substrate
JP3661814B2 (ja) 膜構造材及びその清浄化方法
WO2012011415A1 (ja) 光触媒層を備えてなる複合材の使用
Rabeel et al. Highly Transparent N-Type TiO2 Coatings for Self-Cleaning Glass Application
Yang Fabrication of Antireflective Self‐Cleaning Surfaces Using Layer‐by‐Layer Assembly Techniques

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20071128

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20100527

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20100601

A02 Decision of refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02

Effective date: 20101019