JP2006160705A - ベンゾオキサゾール基を含有する芳香族ジアミンおよびポリイミドベンゾオキサゾール前駆体の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】力学特性が優れたポリイミドベンゾオキサゾール成型体が得られる高分子量のポリアミック酸が効率よく安定して製造できるベンゾオキサゾール構造を有する芳香族ジアミンを提供する。
【解決手段】リン元素含有量が500ppm以下であるベンゾオキサゾール基を含有する芳香族ジアミン。また、芳香族ジアミンと芳香族テトラカルボン酸無水物を反応させてポリイミドベンゾオキサゾール前駆体であるポリアミック酸を製造する方法において、上記のベンゾオキサゾール基を含有する芳香族ジアミンを用いるポリイミドベンゾオキサゾール前駆体であるポリアミック酸の製造方法。
【選択図】なし
【解決手段】リン元素含有量が500ppm以下であるベンゾオキサゾール基を含有する芳香族ジアミン。また、芳香族ジアミンと芳香族テトラカルボン酸無水物を反応させてポリイミドベンゾオキサゾール前駆体であるポリアミック酸を製造する方法において、上記のベンゾオキサゾール基を含有する芳香族ジアミンを用いるポリイミドベンゾオキサゾール前駆体であるポリアミック酸の製造方法。
【選択図】なし
Description
本発明はポリイミドベンゾオキサゾールの製造原料であるベンゾオキサゾール構造を有する芳香族ジアミンおよびポリイミドベンゾオキサゾール前駆体であるポリアミック酸の製造方法に関する。さらに詳しくは、力学特性が優れたポリイミドベンゾオキサゾール成型体が得られるベンゾオキサゾール構造を有する芳香族ジアミンおよび高分子量のポリアミック酸が安定して製造できる製造方法に関する。
ポリイミドベンゾオキサゾールは、イミド構造とベンゾオキサゾール構造を持つポリマーで、ポリイミドを上回る耐熱性と弾性率を持つポリマーとして、期待されている。ポリイミドベンオキサゾールは、その重合方法、フィルム、繊維への成形が開示されている(特許文献1〜5および非特許文献1等参照)。
米国特許第4,087,409号明細書
特公昭45−8435号公報
特開平6−56992号公報
特表平10−508059号公報
特表平11−504369号公報
Appl.Polym.Sym.,No.9,pp145(1969)
繊維に成形する場合には、例えば、ポリイミドベンゾオキサゾールの先駆体ポリアミック酸溶液を紡糸口金から押出し、NMP/水=75/25の凝固浴を通して繊維状とし、無水酢酸、ピリジンなどの化学閉環剤を含有した浴を通過させた後、乾燥、熱処理を加えてポリイミドベンゾオキサゾール繊維とすることが出来る。
フィルムへ成形する場合には、ポリイミドベンゾオキサゾールの先駆体ポリアミック酸溶液をポリエステルフィルムや、ガラス板、SUS板などの支持体上にキャストし、薄く塗り広げ、溶媒を除去した自己支持性フィルムを作製したのち支持体から剥離し、200〜400℃に加熱してポリイミドベンゾオキサゾールフィルムとすることが出来る。
フィルムへ成形する場合には、ポリイミドベンゾオキサゾールの先駆体ポリアミック酸溶液をポリエステルフィルムや、ガラス板、SUS板などの支持体上にキャストし、薄く塗り広げ、溶媒を除去した自己支持性フィルムを作製したのち支持体から剥離し、200〜400℃に加熱してポリイミドベンゾオキサゾールフィルムとすることが出来る。
上記成型体の特性、特に、力学特性はポリイミドベンゾオキサゾールの分子量の影響が大きく、実用的な特性を得るにはあるレベル以上の分子量が不可欠である。このためには前駆体であるポリアミック酸についても高分子量であることが必要である。一般にポリアミック酸の重合度はポリアミック酸溶液の溶液粘度の測定により管理されている。ポリイミドベンゾオキサゾールは、ジアミン成分に剛直な成分を持つためと推定されるが、特許文献4にも記述されているごとく、同じ程度の分子量の他構造のポリイミドのポリアミック酸に比べて重合度が粘度に及ぼす影響が大きい。
ベンゾオキサゾール構造を有するポリアミック酸は、ベンゾオキサゾール構造を有する芳香族ジアミンとテトラカルボン酸二無水物の反応により製造されるが、ベンゾオキサゾール構造を有する芳香族ジアミンは汎用のポリイミドに用いられる芳香族ジアミンに比べアミノ基の求核性が低く、酸無水物との反応性が数100倍程度低いため、高分子量のポリアミック酸を得るには極めて長時間を要する。
また、一般にポリアミック酸の重合度はポリアミック酸溶液の溶液粘度の測定により管理されている。ポリイミドベンゾオキサゾールは、ジアミン成分に剛直な成分を持つためと推定されるが、特許文献4にも記述があるように、同じ程度の分子量の他構造のポリイミドのポリアミック酸に比べて重合度が粘度に及ぼす影響が大きい。従って、工業生産においては、特定された分子量のポリアミック酸を効率良く、かつ安定して製造でき、特定範囲の分子量に厳密に調整することは非常に重要である。
一方、ベンゾオキサゾール構造を有する芳香族ジアミンは、芳香族アルデヒドにヒドロキシアミンを作用させて芳香族アルデヒドオキシムとした後にハロゲン化して芳香族ヒドロキサモイルハライドとし、次にオルソ位にヒドロキシグループ、チオールグループ、アミノグループを有する芳香族アミンと反応させることによってアミノアリルアミノアラゾールを製造する方法(特許文献6および7参照)、ニトロアリルカルボニル化合物をアミノニトロアリオール又はアミノニトロチオール又はトリアミノニトロアレンと反応させてジニトロアニリドとした後、還元・環化を経てアミノアリルアミノアラゾールを製造する方法が開示されている(特許文献8参照)、2,4−ジニトロフェノールと4−ニトロベンゾイルクロリドから4−ニトロ安息香酸ジニトロフェニルエステルを合成した後、該化合物を還元することによってアミノアリルアミノアラゾールを製造する方法が開示されている(非特許文献2、および特許文献9参照)および2,4−ジアミノフェノール二塩酸塩と4−アミノ安息香酸をポリリン酸中で反応させることによりアミノアリルアミノアラゾールを製造する方法が開示されている(非特許文献3、および特許文献10参照)が開示されている。
米国特許第5,567,843号明細書
米国特許第6,222,044号明細書
米国特許第5,739,344号明細書
Chemische Berichte 32、1431(1899)
特公昭45−8435号公報
Heterocyclic Chem.6、119(1969)
特開平6−56992号公報
ベンゾオキサゾール構造を有するポリアミック酸の生成反応においても、他の重縮合反応と同様に、高分子量のポリマーを得るには出発原料の純度が重要である。例えば、汎用ポリイミド前駆体のポリアミック酸の製造において、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物として、混在するビフェニルトリカルボン酸とその無水物の総含有量が0.2質量%以下であるビフェニルテトラカルボン酸二無水物を用いることが必要であることが開示されている(特許文献11参照)
特開平7−3000525号公報
本発明者等は、これらの背景に基きベンゾオキサゾール構造を有するポリアミック酸の製造において、ベンゾオキサゾール構造を有する芳香族ジアミンおよびテトラカルボン酸二無水物の純度についても配慮し、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)法で定量される純度として99質量%以上のものを使用してきた。ところが、このように高純度の原料を用いているにも拘らずベンゾオキサゾール構造を有する芳香族ジアミンのロットによりポリアミック酸の生成速度や得られるポリアミック酸の分子量が大きく変動することに遭遇した。前記の特許文献や非特許文献においては、ポリアミック酸の生成速度や得られるポリアミック酸の分子量が安定して得られる芳香族ジアミンの品質に関しては開示がなされていない。
本発明は従来技術の課題を背景になされたもので、力学特性が優れたポリイミドベンゾオキサゾール成型体が得られるベンゾオキサゾール構造を有する芳香族ジアミン、および高分子量のポリアミック酸が安定して製造できるポリイミドベンゾオキサゾール前駆体の製造方法を提供することにある。
本発明者らは、上記課題を解決するために、鋭意検討した結果、遂に本発明を完成するに到った。すなわち本発明は、リン元素含有量が500ppm以下であるベンゾオキサゾール基を含有する芳香族ジアミンである。また、主としてベンゾオキサゾール基を含有する芳香族ジアミンと芳香族テトラカルボン酸無水物を反応させてポリイミドベンゾオキサゾール前駆体であるポリアミック酸を製造する方法において、上記のベンゾオキサゾール基を含有する芳香族ジアミンを用いることを特徴とするポリイミドベンゾオキサゾール前駆体であるポリアミック酸の製造方法である。
本発明のベンゾオキサゾール構造を有する芳香族ジアミン、およびそれを用いたポリイミドベンゾオキサゾール前駆体であるポリアミック酸の製造方法により、力学特性の優れた高分子量のポリイミドベンゾオキサゾール成型体を得ることができるという利点がある。
これらの中でも、合成のし易さの観点から、アミノ(アミノフェニル)ベンゾオキサゾールの各異性体が好ましい。ここで、「各異性体」とは、アミノ(アミノフェニル)ベンゾオキサゾールが有する2つアミノ基が配位位置に応じて定められる各異性体である(例;上記「化1」〜「化4」に記載の各化合物)。これらのジアミンは、単独で用いてもよいし、二種以上を併用してもよい。
本発明においては、前記ベンゾオキサゾール構造を有する芳香族ジアミンを70モル%以上使用することが好ましい。
本発明においては、前記ベンゾオキサゾール構造を有する芳香族ジアミンを70モル%以上使用することが好ましい。
本発明においては、全ジアミンの30モル%以下であれば下記に例示されるベンゾオキサゾール構造を有しないジアミン類を一種又は二種以上を併用しても構わない。例えば、例えば、4,4’−ビス(3−アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]ケトン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルフィド、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、2,2−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、m−フェニレンジアミン、o−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、m−アミノベンジルアミン、p−アミノベンジルアミン、
3,3’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’−ジアミノジフェニルスルホキシド、3,4’−ジアミノジフェニルスルホキシド、4,4’−ジアミノジフェニルスルホキシド、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、3,4’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、3,3’−ジアミノベンゾフェノン、3,4’−ジアミノベンゾフェノン、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、3,3’−ジアミノジフェニルメタン、3,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]メタン、1,1−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]エタン、1,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]エタン、1,1−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、1,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、1,3−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、
1,1−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ブタン、1,3−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ブタン、1,4−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ブタン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノシ)フェニル]ブタン、2,3−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ブタン、2−[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]−2−[4−(4−アミノフェノキシ)−3−メチルフェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)−3−メチルフェニル]プロパン、2−[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]−2−[4−(4−アミノフェノキシ)−3,5−ジメチルフェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)−3,5−ジメチルフェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、
1,4−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ケトン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルフィド、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホキシド、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、1,3−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、1,4−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、4,4’−ビス[(3−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、1,1−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、1,3−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、3,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、
2,2−ビス[3−(3−アミノフェノキシ)フェニル]−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]メタン、1,1−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]エタン、1,2−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]エタン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホキシド、4,4’−ビス[3−(4−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ジフェニルエーテル、4,4’−ビス[3−(3−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ジフェニルエーテル、4,4’−ビス[4−(4−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)フェノキシ]ベンゾフェノン、4,4’−ビス[4−(4−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)フェノキシ]ジフェニルスルホン、ビス[4−{4−(4−アミノフェノキシ)フェノキシ}フェニル]スルホン、1,4−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェノキシ−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェノキシ−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(4−アミノ−6−トリフルオロメチルフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(4−アミノ−6−フルオロフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(4−アミノ−6−メチルフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(4−アミノ−6−シアノフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、
3,3’−ジアミノ−4,4’−ジフェノキシベンゾフェノン、4,4’−ジアミノ−5,5’−ジフェノキシベンゾフェノン、3,4’−ジアミノ−4,5’−ジフェノキシベンゾフェノン、3,3’−ジアミノ−4−フェノキシベンゾフェノン、4,4’−ジアミノ−5−フェノキシベンゾフェノン、3,4’−ジアミノ−4−フェノキシベンゾフェノン、3,4’−ジアミノ−5’−フェノキシベンゾフェノン、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジビフェノキシベンゾフェノン、4,4’−ジアミノ−5,5’−ジビフェノキシベンゾフェノン、3,4’−ジアミノ−4,5’−ジビフェノキシベンゾフェノン、3,3’−ジアミノ−4−ビフェノキシベンゾフェノン、4,4’−ジアミノ−5−ビフェノキシベンゾフェノン、3,4’−ジアミノ−4−ビフェノキシベンゾフェノン、3,4’−ジアミノ−5’−ビフェノキシベンゾフェノン、1,3−ビス(3−アミノ−4−フェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノ−4−フェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノ−5−フェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノ−5−フェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノ−4−ビフェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノ−4−ビフェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノ−5−ビフェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノ−5−ビフェノキシベンゾイル)ベンゼン、2,6−ビス[4−(4−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)フェノキシ]ベンゾニトリルおよび上記芳香族ジアミンにおける芳香環上の水素原子の一部もしくは全てがハロゲン原子、炭素数1〜3のアルキル基又はアルコキシル基、シアノ基、又はアルキル基又はアルコキシル基の水素原子の一部もしくは全部がハロゲン原子で置換された炭素数1〜3のハロゲン化アルキル基又はアルコキシル基で置換された芳香族ジアミン等が挙げられる。
本発明におけるベンゾオキサゾール構造を有する芳香族ジアミン類としては、製造の容易さや最終製品であるポリイミドベンゾオキサゾールの特性バランス等の点より、5−アミノ−2−(4−アミノフェニル)ベンズオキサゾール(化1)の使用が特に好ましい。
上記のベンゾオキサゾール基を有する芳香族ジアミンの製造方法は限定されない。例えば、前述した各種の公知の方法が挙げられる。
上記のベンゾオキサゾール基を有する芳香族ジアミンは、リン元素含有量が500ppm以下である。100ppm以下がより好ましく、50ppm以下がさらに好ましい。
リン元素含有量が500ppmを超えた芳香族ジアミンを用いるとポリアミック酸の生成速度が遅くなるとともに、得られるポリアミック酸の分子量が頭打ちになり、重合の生産性が低下したり、所定の分子量のポリアミック酸が得られなくなるので好ましくない。この原因は不明であるが、リン元素含有量の多い芳香族ジアミンの水可溶性成分は酸性を示すことより、リン元素の少なくとも一部はリン酸等のリンの酸化合物の形態で含有されているものと推察される。例えば、芳香族ジアミンの製造工程の一つであるベンゾオキサゾール環の形成反応において用いられるポリリン酸より生成する酸が反応生成物に混入し、最終的に芳香族ジアミンの塩が生成した可能性が示唆される。この混入した芳香族ジアミンとリン元素含有の酸との塩がポリアミック酸の反応抑制の一要因になっているものと推定される。従って、本発明は、芳香族ジアミンの製造工程でリン酸等のリン含有の酸や該酸を生成する化合物を使用する方法で製造された芳香族ジアミンに適用するのが好ましい。
上記特性を有した芳香族ジアミンの製造方法は限定されないが、例えば、芳香族ジアミンの製造工程あるいはポリアミック酸の製造に用いる前に、芳香族ジアミンを水あるいはアルカリ水溶液で充分に洗浄する方法、芳香族ジアミンをアセトニトリル等の特定の溶媒に溶解しこれらの溶媒に対する不溶分を除去する方法等が挙げられる。
本発明におけるポリイミドベンゾオキサゾール前駆体は、上記のベンゾオキサゾール基を含有する芳香族ジアミンと芳香族テトラカルボン酸無水物を反応して得られるポリアミック酸である。該ポリアミック酸の製造方法は限定されないが、ポリアミック酸を溶解する有機溶媒中で反応させる方法が好ましい。
本発明で用いられる芳香族テトラカルボン酸類は好ましくは芳香族テトラカルボン酸無水物類である。芳香族テトラカルボン酸無水物類としては、具体的には、以下のものが挙げられる。
本発明においては、全テトラカルボン酸二無水物の30モル%以下であれば下記に例示される非芳香族のテトラカルボン酸二無水物類を一種又は二種以上を併用しても構わない。用いられるテトラカルボン酸無水物としては、例えば、ブタン−1,2,3,4−テトラカルボン酸二無水物、ペンタン−1,2,4,5−テトラカルボン酸二無水物、シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、シクロペンタン−1,2,3,4−テトラカルボン酸二無水物、シクロヘキサン−1,2,4,5−テトラカルボン酸二無水物、シクロヘキサ−1−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、3−エチルシクロヘキサ−1−エン−3−(1,2),5,6−テトラカルボン酸二無水物、1−メチル−3−エチルシクロヘキサン−3−(1,2),5,6−テトラカルボン酸二無水物、1−メチル−3−エチルシクロヘキサ−1−エン−3−(1,2),5,6−テトラカルボン酸二無水物、1−エチルシクロヘキサン−1−(1,2),3,4−テトラカルボン酸二無水物、1−プロピルシクロヘキサン−1−(2,3),3,4−テトラカルボン酸二無水物、1,3−ジプロピルシクロヘキサン−1−(2,3),3−(2,3)−テトラカルボン酸二無水物、ジシクロヘキシル−3,4,3’,4’−テトラカルボン酸二無水物、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2,3,5,6ラカルボン酸二無水物、1−プロピルシクロヘキサン−1−(2,3),3,4−テトラカルボン酸二無水物、1,3−ジプロピルシクロヘキサン−1−(2,3),3−(2,3)−テトラカルボン酸二無水物、ジシクロヘキシル−3,4,3’,4’−テトラカルボン酸二無水物、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、ビシクロ[2.2.2]オクタン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、ビシクロ[2.2.2]オクト−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物等である。これらのテトラカルボン酸二無水物は単独でも二種以上を用いることも可能である。
本発明のポリアミック酸の合成時に使用する極性有機溶剤としては、原料モノマーおよび生成するポリアミック酸のいずれをも溶解するものであれば特に限定されないが、例えば、N−メチル−2−ピロリドン,N−アセチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスホリックアミド、エチルセロソルブアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、スルホラン、ハロゲン化フェノール、テトラヒドロフラン、トルエン、キシレン類等があげられ,これらの溶媒は,単独あるいは混合して使用することができる。極性有機溶媒の使用量は,仕込みモノマーを溶解するのに十分な量であればよく,通常は5〜40質量%であり,好ましくは10〜20質量%の固形分を含むものであればよい。
本発明で用いるポリアミック酸の有機溶媒溶液は、固形分を好ましくは5〜40質量%、より好ましくは10〜20質量%を含有するものであって、またその粘度はブルックフィールド粘度計による測定で10〜2000Pa・s、好ましくは50〜1000Pa・sのものが、安定した送液が可能であることから好ましい。重合反応は、有機溶媒中で撹拌および/又は混合しながら、0〜80℃の温度範囲で、10分〜100時間連続して進められるが、必要により重合反応を分割したり、温度を上下させてもかまわない。この場合に、両反応体の添加順序には特に制限はないが、芳香族ジアミン類は反応溶媒に対する溶解性がひくいので、芳香族ジアミン類を反応溶媒に分散あるいは溶解した分散液あるいは溶液に芳香族テトラカルボン酸無水物類を添加するのが好ましい。
本発明においては、反応液に用いる溶媒中の水分量が1000ppm以下で、反応系の空間が露点−20℃(0.1質量%)以下の気体で満たされていることが好ましい。溶媒中の水分量は500ppm以下がより好ましく、100ppm以下がさらに好ましい。気体の露点は−40℃(0.013質量%)以下が好ましく、−60℃(0.0011質量%)以下がさらに好ましい。(KT窒素ガスの露点−76〜−85℃)ここで、反応系の空間とは反応缶のみでなく原料の仕込み系やポリアミック酸の貯留を含めたポリアミック酸の製造にかかわる全工程の空間を指す。本要件を満たさないと前記の本発明の要件を満たしてもポリアミック酸の生成速度や到達分子量に悪影響がでる場合がある。
本発明においては、ポリアミック酸の分子量を特定範囲に制御する方法として、無水マレイン酸、2,3−ジメチルマレイン酸無水物、3−(3−フェニルエチニルフェノキシ)アニリン、無水フタル酸、アニリン、ビニルフタル酸無水物、エチニルアニリンおよび4−アミノベンゾシクロブテン等のモノジカルボン酸無水物やモノアミン等の末端封鎖剤を反応系に添加して行ってもよい。
本発明においては、最終製品であるポリイミドベンゾオキサゾール成型体である繊維やフィルムの滑り性を改良するために、無機あるいは有機よりなる不活性微粒子を反応系に添加してもよい。この不活性微粒子の種類、粒子径および添加量は、成型体において求められる特性に合う様に適宜選択される。
本発明におけるポリアミック酸は還元粘度で2.0〜6.0dl/gであることが好ましい。3.0〜5.5dl/gがより好ましい。2.0dl/g未満ではポリアミック酸のイミド化反応により得られるポリイミドベンゾオキサゾールの力学特性が劣るので好ましくない。逆に、6.0dl/gを超えた場合は繊維やフィルムの形態にする成型加工の加工適性が悪化するので好ましくない。
本発明において得られたポリアミック酸は、ポリアミック酸の状態でフィルム等の形態に成型した後に、アミド酸結合の脱水環化反応を行いポリイミド結合に変換しポリイミドベンゾオキサゾール成型体とするのが好ましい。例えば、成型体がフィルムの場合は、ポリアミック酸溶液を回転する支持体にフィルム状に連続的に押し出し又は塗布し、乾燥して得た自己支持性フィルムを、前記支持体から剥離し、延伸、乾燥、熱処理することにより製造されるが、ポリアミック酸の有機溶媒からポリイミドベンゾオキサゾールフィルムを製造する代表的な方法としては、閉環触媒および脱水剤を含有しないポリアミック酸の有機溶媒溶液をスリット付き口金から支持体上に流延してフィルムに成形し、支持体上で加熱乾燥することにより自己支持性を有するフィルムにした後、支持体より自己支持性フィルムを剥離し、更に高温下で加熱処理することによりイミド化する熱閉環法、および閉環触媒や脱水剤を含有せしめたポリアミック酸の有機溶媒をスリット付き口金から支持体上に流延してフィルム状に成形し、支持体上でイミド化を一部進行させて自己支持性を有するフィルムとした後、支持体より自己支持性フィルムを剥離し、加熱処理しイミド化を行う化学閉環法が挙げられる。
閉環触媒の具体例としては、トリメチルアミン、トリエチルアミンなどの脂肪族第3級アミンおよびイソキノリン、ピリジン、ベータピコリンなどの複素環式第3級アミンなどが挙げられるが、複素環式第3級アミンから選ばれる少なくとも一種のアミンを使用することが好ましい。
脱水剤の具体例としては、無水酢酸、無水プロピオン酸、無水酪酸などの脂肪族カルボン酸無水物、および無水安息香酸などの芳香族カルボン酸無水物などが挙げられるが、無水酢酸および/又は無水安息香酸が好ましい。ポリアミック酸に対する閉環触媒の含有量は、閉環触媒の含有量(モル)/ポリアミック酸の含有量(モル)が0.1〜8となる範囲が好ましい。また、ポリアミック酸に対する脱水剤の含有量は、脱水剤の含有量(モル)/ポリアミック酸の含有量(モル)が0.1〜4となる範囲が好ましい。尚、この場合には、アセチルアセトンなどのゲル化遅延剤を併用してもよい。
脱水剤の具体例としては、無水酢酸、無水プロピオン酸、無水酪酸などの脂肪族カルボン酸無水物、および無水安息香酸などの芳香族カルボン酸無水物などが挙げられるが、無水酢酸および/又は無水安息香酸が好ましい。ポリアミック酸に対する閉環触媒の含有量は、閉環触媒の含有量(モル)/ポリアミック酸の含有量(モル)が0.1〜8となる範囲が好ましい。また、ポリアミック酸に対する脱水剤の含有量は、脱水剤の含有量(モル)/ポリアミック酸の含有量(モル)が0.1〜4となる範囲が好ましい。尚、この場合には、アセチルアセトンなどのゲル化遅延剤を併用してもよい。
ポリアミック酸溶液をフィルム状に成形する際に用いられる支持体はドラム又はベルト状回転体が挙げられる。ポリアミック酸溶液は支持体上に塗布され、加熱乾燥により自己支持性を与えられる。支持体の表面は金属、プラスチック、ガラス、磁器などが挙げられ、好ましくは金属であり、更に好ましくは錆びなくて耐腐食に優れるSUS材である。また、Cr、Ni、Snなどの金属メッキをしても良い。本発明における支持体表面は必要に応じて鏡面にしたり、あるいは梨地状に加工することができる。
支持体へのポリアミド酸溶液の塗布は、スリット付き口金からの流延、押出機による押出し、スキージコーティング、リバースコーティング、ダイコーティング、アプリケータコーティング、ワイヤーバーコーティング等を含むが、これらに限られず、従来公知の溶液の塗布手段を適宜用いることができる。
本発明でのポリイミド前駆体であるポリアミド酸の自己支持性フィルムであるグリーンフィルムを得る際の乾燥方法は加熱乾燥である。加熱方法としては、赤外線加熱、温風加熱、マイクロ波加熱など公知の方法を用いることができる。
支持体上で乾燥し、自己支持性となったフィルム(グリーンフィルム)は支持体より剥離され、150〜500℃の温度にて最終乾燥(熱処理)によってアミド酸の脱水閉環を行いポリイミドフィルムが得られる。
本発明のポリイミドフィルムの厚さは特に限定されないが、電子基板の基材に用いることを考慮すると、通常1〜150μm、好ましくは3〜50μmである。この厚さはポリアミド酸溶液を支持体に塗布する際の塗布量や、ポリアミド酸溶液の濃度によって容易に制御し得る。
支持体上で乾燥し、自己支持性となったフィルム(グリーンフィルム)は支持体より剥離され、150〜500℃の温度にて最終乾燥(熱処理)によってアミド酸の脱水閉環を行いポリイミドフィルムが得られる。
本発明のポリイミドフィルムの厚さは特に限定されないが、電子基板の基材に用いることを考慮すると、通常1〜150μm、好ましくは3〜50μmである。この厚さはポリアミド酸溶液を支持体に塗布する際の塗布量や、ポリアミド酸溶液の濃度によって容易に制御し得る。
本発明のポリイミドフィルムは、通常は無延伸フィルムであるが、1軸又は2軸に延伸しても構わない。ここで、無延伸フィルムとは、テンター延伸、ロール延伸、インフレーション延伸などによってフィルムの面拡張方向に機械的な外力を意図的に加えずに得られるフィルムをいう。
得られたポリイミドフィルムをそのままフィルム基材として用いてもよい。上記フィルムを表面処理剤や表面活性化剤で処理していない場合には、コロナ放電処理、低温又は常圧プラズマ処理、紫外線照射、火炎処理等といった表面処理を施すことが好ましい。
以下、実施例によってさらに詳しくこの発明を説明するが、これら実施例によってこの発明は限定されるものではない。
1.ポリアミック酸の還元粘度(ηsp/C)の測定
ポリアミック酸を0.2g/dlの濃度になるように脱水したN−メチルピロリドン(窒素雰囲気下、N−メチルピロリドンに対して約10質量%のトルエンを添加し、トルエンが完全に留出するまで共沸蒸留を行った)で溶解・希釈した溶液を、ウベローデ型粘度計を用いて25℃で測定した。
1.ポリアミック酸の還元粘度(ηsp/C)の測定
ポリアミック酸を0.2g/dlの濃度になるように脱水したN−メチルピロリドン(窒素雰囲気下、N−メチルピロリドンに対して約10質量%のトルエンを添加し、トルエンが完全に留出するまで共沸蒸留を行った)で溶解・希釈した溶液を、ウベローデ型粘度計を用いて25℃で測定した。
2.芳香族ジアミンのHPLC分析法による純度評価
下記条件で測定した。純度はピーク面積比で算出した。
装置: 日立製作所製の以下のパーツを組み合わせたシステム
送液ポンプ:L6200、検出器:L4200、カラム高温槽:L5020
脱気装置:L−5020、インテグレーター:D−2500
カラム: Inertsil−ODS3 φ4.6×250mm
移動相: アセトニトリル/水=6/4(vol/vol)、
リン酸0.0085モル/l
流速: 1ml/min
検出: UV(230nm)
展開温度:30℃
試料濃度:1mg/ml
試料注入量:20μl
下記条件で測定した。純度はピーク面積比で算出した。
装置: 日立製作所製の以下のパーツを組み合わせたシステム
送液ポンプ:L6200、検出器:L4200、カラム高温槽:L5020
脱気装置:L−5020、インテグレーター:D−2500
カラム: Inertsil−ODS3 φ4.6×250mm
移動相: アセトニトリル/水=6/4(vol/vol)、
リン酸0.0085モル/l
流速: 1ml/min
検出: UV(230nm)
展開温度:30℃
試料濃度:1mg/ml
試料注入量:20μl
3.芳香族ジアミン中のリン元素含有量
芳香族ジアミン0.1gを濃硫酸、過塩素酸、硝酸の混酸中6時間かけて穏やかに加熱して湿式分解し、希釈した後、モリブデン酸アンモニウム溶液と硫酸ヒドラジン溶液を加えて発色させ、830nmの吸光度を測定することにより定量した。
芳香族ジアミン0.1gを濃硫酸、過塩素酸、硝酸の混酸中6時間かけて穏やかに加熱して湿式分解し、希釈した後、モリブデン酸アンモニウム溶液と硫酸ヒドラジン溶液を加えて発色させ、830nmの吸光度を測定することにより定量した。
4.フィルムの引張破断強度および引張破断伸度
乾燥後のフィルムを長手方向(MD方向)および幅方向(TD方向)にそれぞれ長さ100mm、幅10mmの短冊状に切り出して試験片とし、引張試験機(島津製作所株式会社製、オートグラフ(R)機種名AG−5000A)を用い、引張速度50mm/分、チャック間距離40mmで測定し、引張破断強度および引張破断伸度を求めた。
乾燥後のフィルムを長手方向(MD方向)および幅方向(TD方向)にそれぞれ長さ100mm、幅10mmの短冊状に切り出して試験片とし、引張試験機(島津製作所株式会社製、オートグラフ(R)機種名AG−5000A)を用い、引張速度50mm/分、チャック間距離40mmで測定し、引張破断強度および引張破断伸度を求めた。
実施例1
(芳香族ジアミンの調製)
2−アミノ−4−ニトロフェノールと4−ニトロベンゾイルクロライドの反応により得られた4,4’−ジニトロ−2−ヒドロキシベンズアニリドをPd/C触媒の存在下で還元して4,4’−ジアミノー2−ヒドロキシベンズアニリドを得た。得られた4,4’−ジアミノ−2−ヒドロキシベンズアニリドをポリ燐酸を加えたN−メチルー2−ピロリドン中で反応させてオキサゾール環を形成させて2−(4−アミノフェニル)−5−アミノベンゾオキサゾールを得た。得られた反応生成物にイオン交換水を添加し2−(4−アミノフェニル)−5−アミノベンゾオキサゾールを析出させて濾別した。6容量倍のメタノールで洗浄した後、室温で6容量倍の5質量%の炭酸ナトリウム水溶液で洗浄し、さらに60℃の温水で3回洗浄し、乾燥した。HPLC分析法による純度は99.5質量%以上であった。また、リン元素含有量は1ppm以下であった。
(ポリアミック酸の調製)
攪拌機を備えた500mlのセパラブルフラスコに2−(4−アミノフェニル)−5−アミノベンゾオキサゾール22.53gを投入し、ついで、水分率が31ppmのN−メチルピロリドン390mlを加え溶解するまで攪拌した。ついで氷冷しながらピロメリット酸無水物21.81gを徐々に加え溶解させた。溶解後、水を54μg添加して、重合系の水分率を150ppmになるように調整した。その後室温で2日間攪拌を継続しポリアミック酸溶液を得た。得られたポリアミック酸の還元粘度(ηsp/C)は4.80dl/gであった。
上記反応は露点がー85℃である窒素気流下で行った。
(ポリイミドベンゾオキサゾールフィルムの調製)
上記ポリアミック酸溶液を鏡面研磨したステンレス板にドクターブレードを用いて流延した。110℃のオーブン中で20分間加熱して自己支持性フィルムを得た。この自己支持性フィルムをアルミニウム金属製の枠に固定し、150℃の高温オーブンに入れて、300℃まで昇温し、同温度で1時間保持した。さらに400℃まで昇温し同温度でさらに1時間保持した。次いで、試料を冷却し取り出した。300℃および400℃までの昇温時間はそれぞれ30分間とした。フィルム厚みは25μmとなるように調製した。
得られたポリイミドベンゾオキサゾールフィルムの引張破断強度、引張破断伸度は、良好な特性を有していた。
(芳香族ジアミンの調製)
2−アミノ−4−ニトロフェノールと4−ニトロベンゾイルクロライドの反応により得られた4,4’−ジニトロ−2−ヒドロキシベンズアニリドをPd/C触媒の存在下で還元して4,4’−ジアミノー2−ヒドロキシベンズアニリドを得た。得られた4,4’−ジアミノ−2−ヒドロキシベンズアニリドをポリ燐酸を加えたN−メチルー2−ピロリドン中で反応させてオキサゾール環を形成させて2−(4−アミノフェニル)−5−アミノベンゾオキサゾールを得た。得られた反応生成物にイオン交換水を添加し2−(4−アミノフェニル)−5−アミノベンゾオキサゾールを析出させて濾別した。6容量倍のメタノールで洗浄した後、室温で6容量倍の5質量%の炭酸ナトリウム水溶液で洗浄し、さらに60℃の温水で3回洗浄し、乾燥した。HPLC分析法による純度は99.5質量%以上であった。また、リン元素含有量は1ppm以下であった。
(ポリアミック酸の調製)
攪拌機を備えた500mlのセパラブルフラスコに2−(4−アミノフェニル)−5−アミノベンゾオキサゾール22.53gを投入し、ついで、水分率が31ppmのN−メチルピロリドン390mlを加え溶解するまで攪拌した。ついで氷冷しながらピロメリット酸無水物21.81gを徐々に加え溶解させた。溶解後、水を54μg添加して、重合系の水分率を150ppmになるように調整した。その後室温で2日間攪拌を継続しポリアミック酸溶液を得た。得られたポリアミック酸の還元粘度(ηsp/C)は4.80dl/gであった。
上記反応は露点がー85℃である窒素気流下で行った。
(ポリイミドベンゾオキサゾールフィルムの調製)
上記ポリアミック酸溶液を鏡面研磨したステンレス板にドクターブレードを用いて流延した。110℃のオーブン中で20分間加熱して自己支持性フィルムを得た。この自己支持性フィルムをアルミニウム金属製の枠に固定し、150℃の高温オーブンに入れて、300℃まで昇温し、同温度で1時間保持した。さらに400℃まで昇温し同温度でさらに1時間保持した。次いで、試料を冷却し取り出した。300℃および400℃までの昇温時間はそれぞれ30分間とした。フィルム厚みは25μmとなるように調製した。
得られたポリイミドベンゾオキサゾールフィルムの引張破断強度、引張破断伸度は、良好な特性を有していた。
比較例1
実施例1の方法においては、2−(4−アミノフェニル)−5−アミノベンゾオキサゾールの炭酸ナトリウム水溶液および温水による洗浄を全く行わなかった以外は、実施例1と同様にして比較例1の芳香族ジアミン、ポリアミック酸およびポリイミドベンゾオキサゾールフィルムを得た。
芳香族ジアミンのHPLC分析法による純度は99.5質量%以上と高く、実施例1で得られた芳香族ジアミンと差異は見られなかったが、リン元素含有量が760ppmと高かった。そのため、ポリアミック酸の生成反応が遅く、得られたポリアミック酸のηsp/Cは2.20dl/gと低かった。結果を表1に示す。本比較例で得られたポリイミドベンゾオキサゾールフィルムは可撓性がなく脆かった。
実施例1の方法においては、2−(4−アミノフェニル)−5−アミノベンゾオキサゾールの炭酸ナトリウム水溶液および温水による洗浄を全く行わなかった以外は、実施例1と同様にして比較例1の芳香族ジアミン、ポリアミック酸およびポリイミドベンゾオキサゾールフィルムを得た。
芳香族ジアミンのHPLC分析法による純度は99.5質量%以上と高く、実施例1で得られた芳香族ジアミンと差異は見られなかったが、リン元素含有量が760ppmと高かった。そのため、ポリアミック酸の生成反応が遅く、得られたポリアミック酸のηsp/Cは2.20dl/gと低かった。結果を表1に示す。本比較例で得られたポリイミドベンゾオキサゾールフィルムは可撓性がなく脆かった。
実施例2および3
実施例1の方法において、2−(4−アミノフェニル)−5−アミノベンゾオキサゾールの温水洗浄回数をそれぞれ2および1回とする以外は、実施例同様の方法で実施例2〜4のポリアミック酸を得た。2−(4−アミノフェニル)−5−アミノベンゾオキサゾール、ポリアミック酸およびポリイミドベンゾオキサゾールフィルムの特性を表1に示す。
実施例1の方法において、2−(4−アミノフェニル)−5−アミノベンゾオキサゾールの温水洗浄回数をそれぞれ2および1回とする以外は、実施例同様の方法で実施例2〜4のポリアミック酸を得た。2−(4−アミノフェニル)−5−アミノベンゾオキサゾール、ポリアミック酸およびポリイミドベンゾオキサゾールフィルムの特性を表1に示す。
比較例2および3
実施例2および3の方法において、2−(4−アミノフェニル)−5−アミノベンゾオキサゾールの炭酸ナトリウム水溶液による洗浄を取り止め、温水洗浄のみとする以外は、それぞれ実施例2および3同様の方法で比較例2および3のポリアミック酸を得た。2−(4−アミノフェニル)−5−アミノベンゾオキサゾール、ポリアミック酸およびポリイミドベンゾオキサゾールフィルムの特性を表1に示す。
実施例2および3の方法において、2−(4−アミノフェニル)−5−アミノベンゾオキサゾールの炭酸ナトリウム水溶液による洗浄を取り止め、温水洗浄のみとする以外は、それぞれ実施例2および3同様の方法で比較例2および3のポリアミック酸を得た。2−(4−アミノフェニル)−5−アミノベンゾオキサゾール、ポリアミック酸およびポリイミドベンゾオキサゾールフィルムの特性を表1に示す。
実施例4および比較例4
実施例1および比較例1の方法において、ピロメリット酸無水物をビフェニルテトラカルボン酸無水物に変更する以外は、それぞれ実施例1および比較例1と同様にして実施例5および比較例4のポリアミック酸およびポリイミドベンゾオキサゾールフィルムを得た。実施例5で得られたポリアミック酸は実施例1で得られたポリアミック酸と同様に還元粘度が高く、力学特性の優れたポリイミドベンゾオキサゾールフィルムが得られた。一方、比較例4で得られたポリアミック酸は比較例1で得られたポリアミック酸と同様に還元粘度が低く、可撓性のない脆いフィルムしか得られなかった。
実施例1および比較例1の方法において、ピロメリット酸無水物をビフェニルテトラカルボン酸無水物に変更する以外は、それぞれ実施例1および比較例1と同様にして実施例5および比較例4のポリアミック酸およびポリイミドベンゾオキサゾールフィルムを得た。実施例5で得られたポリアミック酸は実施例1で得られたポリアミック酸と同様に還元粘度が高く、力学特性の優れたポリイミドベンゾオキサゾールフィルムが得られた。一方、比較例4で得られたポリアミック酸は比較例1で得られたポリアミック酸と同様に還元粘度が低く、可撓性のない脆いフィルムしか得られなかった。
実施例5および比較例5
実施例1および比較例1において、芳香族ジアミン調製時の原料の4−ニトロベンゾイルクロライドを3−ニトロベンゾイルクロライドに替え、得られる芳香族ジアミンを2−(3−アミノフェニル)−5−アミノベンゾオキサゾールに変更する以外は、実施例1および比較例1と同様にして実施例5および比較例5のポリアミック酸およびポリイミドベンゾオキサゾールフィルムを得た。それぞれ実施例1および比較例1と同様の結果が得られた。
実施例1および比較例1において、芳香族ジアミン調製時の原料の4−ニトロベンゾイルクロライドを3−ニトロベンゾイルクロライドに替え、得られる芳香族ジアミンを2−(3−アミノフェニル)−5−アミノベンゾオキサゾールに変更する以外は、実施例1および比較例1と同様にして実施例5および比較例5のポリアミック酸およびポリイミドベンゾオキサゾールフィルムを得た。それぞれ実施例1および比較例1と同様の結果が得られた。
以上述べてきたように、本発明のベンゾオキサゾール構造を有する芳香族ジアミンを原料にすることによって得られるポリイミドベンゾオキサゾール前駆体であるポリアミック酸からは、力学特性の優れた高分子量のポリイミドベンゾオキサゾール成型体を効率よく得ることができるので産業上極めて有用である。
Claims (2)
- リン元素含有量が500ppm以下であるベンゾオキサゾール基を含有する芳香族ジアミン。
- 主としてベンゾオキサゾール基を含有する芳香族ジアミンと芳香族テトラカルボン酸無水物を反応させてポリイミドベンゾオキサゾール前駆体であるポリアミック酸を製造する方法において、請求項1に記載のベンゾオキサゾール基を含有する芳香族ジアミンを用いることを特徴とするポリイミドベンゾオキサゾール前駆体であるポリアミック酸の製造方法。
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WO2008047591A1 (fr) * | 2006-10-04 | 2008-04-24 | Toyo Boseki Kabushiki Kaisha | Résine de polyimide, vernis de polyimide et film de polyimide |
WO2020008828A1 (ja) * | 2018-07-05 | 2020-01-09 | 東洋紡株式会社 | ジアミン化合物およびその製造方法 |
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-
2004
- 2004-12-10 JP JP2004357800A patent/JP2006160705A/ja not_active Withdrawn
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