本発明における開閉扉用クッションの第1実施形態を図1〜図5に従って説明する。
なお、図中矢印UPは車体上方方向を示し、図中矢印FRは車体前方方向を示し、図中矢印INは車幅内側方向を示している。
図4に示される如く、本実施形態では、自動車のボデー10の前部10Aに、車体前後方向に沿って取付部材としてのエプロンアッパメンバ12が取付けられており、エプロンアッパメンバ12はボデー10の前部10Aにおける車幅方向両端上部にそれぞれ取付けられている。また、エプロンアッパメンバ12の前端部には、ラジエータサポートアッパ14が架設されている。
エプロンアッパメンバ12の前方上部には、それぞれ開閉扉用クッションとしての位置決め用のフードクッション16が取付けられている。また、エプロンアッパメンバ12の上部には開閉蓋としてのフード20が、後端部に配設されたヒンジを介して取付けられており、エンジンルーム22が開閉可能となっている。
図1に示される如く、フード20は、フード20の上部を構成するフードアウタパネル24とフード20の下部を構成するフードインナパネル26とを備えており、フードアウタパネル24の外周縁部24Aとフードインナパネル26の外周縁部26Aとがフェミング加工によって互いに結合されている。
図3に示される如く、エプロンアッパメンバ12の上壁部12Aには、プレス成形によって、孔30が形成されており、孔30の周縁部には、孔30の径方向に沿って伸びる切欠32が一箇所形成されている。
また、孔30の周縁部は、切欠32を挟んで対向する一方の周縁部32Aから、他方の周縁部32Bにかけて次第に低くなるように傾斜している。これによって、孔30の周縁部には雌螺子の一周が形成されている。従って、切欠32を通して孔30にフードクッション16が螺合できるようになっている。
また、フードクッション16は円柱状のゴム、樹脂等の弾性部材で構成されており、外周部16Aには、所定のピッチで螺子溝34がフードクッション16の軸線回りにフードクッション16の全長に亘って刻まれており、螺子溝34の間が螺子山36となっている。
図1に示される如く、エプロンアッパメンバ12の孔30にフードクッション16の螺子溝36が螺合しており、エプロンアッパメンバ12の孔30の板厚M1に比べて、フードクッション16の螺子溝36の溝幅W1(フードクッション16の軸線方向における隣接する螺子山36間の距離)が若干小さくなっている。このため、エプロンアッパメンバ12の孔30の周縁部とフードクッション16の螺子山36との間に強い張力が生じて通常使用時にフードクッション16が緩まず、且つ、螺合作業時の負荷が大きすぎない関係になっている。また、溝幅W1によって螺合可能となる板厚M1に、所定の許容範囲を持たせることができる。即ち、板厚M1が僅かに異なる場合にも、フードクッション16を螺合できるようになっている。
フードクッション16は螺子溝34と螺子山36とがエプロンアッパメンバ12の孔30に螺合することでエプロンアッパメンバ12に取付けられている。また、フードクッション16の上端部16Cは、フード20が閉止状態にある時にフードインナパネル26の下面26Bに当接して、フードクッション16は軸方向へ弾性圧縮変形するようになっている。
フードクッション16のエプロンアッパメンバ12からの突出部の高さH1は、フードクッション16の下端部16Bのエプロンアッパメンバ12への捩じ込み量によって調整できる。
また、螺子山36は方形断面の角螺子で構成されており、螺子山36の根元部36Aには、凹部40が螺子山36に沿って周方向へ連続して形成されている。この凹部40の深さ方向は、螺子山36の下端部側から上端部側に向かって、フードクッション16の軸線に並行とされており、凹部40は螺子山36の根元部36Aの断面積を小さくすることで、根元部36Aを螺子山36の他の部位に比べて容易に折れ、破断等の塑性変形する脆弱部としている。
このため、螺子山36は、フードクッション16に車体上方から下方へ向かって作用するフード20の閉止方向力が所定値までは塑性変形せず、フード20の閉止方向力が所定値以上になると凹部40を起点に塑性変形するようになっている。
図1に示される如く、フードクッション16の螺子溝34の底部34Aと孔30の内周部30Aとの間には、隙間35が形成されており、この隙間35内を塑性変形した螺子山36が通過可能となっている。
従って、図2に示される如く、フード20に衝突体が車体上方から下方へ向かって衝突し、フードクッション16に車体上方から下方へ向かって、フード20の所定値以上の閉止方向力Kが作用した場合には、エプロンアッパメンバ12の孔30の周縁部に当接する車体上方側の螺子山36が、凹部40を起点に上方へ塑性変形し、エプロンアッパメンバ12の孔30に対して、フードクッション16が下方(図2の矢印A)へ移動するようになっている。
即ち、フードクッション16にフード20の所定値以上の閉止方向力Kが作用した場合には、エプロンアッパメンバ12の孔30と螺子山36との螺合位置を変えることで、エプロンアッパメンバ12へのフードクッション16の支持位置が変わり、突出部の高さH1が徐々に短くなる。また、螺子山36が塑性変形することで、フード20に衝突体が衝突した際の衝突エネルギを吸収するようになっている。
次に、本実施形態の作用を説明する。
本実施形態では、フード20を閉めた際に、フードクッション16におけるエプロンアッパメンバ12から突出した突出部(高さH1の部位)がフード20の閉止方向力によって弾性変形する。この結果、図5に示される如く、フード20のストロークSと、フードクッション16からフード20が受ける力Fとの関係は、(0〜S1、0〜F1)に示される如く、ストロークSの増加に対して力Fは緩やかに上昇する。このため、通常フード20を閉める際のストロークSに対して力Fが小さいので、フード20を容易に閉めることができる。
また、フード20が強閉された場合には、フードクッション16の突出部が大きく弾性変形する。この結果、図5の(0〜S2、0〜F2)に示される如く、ストロークSの増加に対して力Fは緩やかに上昇した後、急激に上昇する。このため、フード20を強閉した際の力Fに対してストロークSが小さくなるので、フード20がフード20の下方に取付けられた他部品に干渉するのを防止できる。
また、衝突体がフード20に車体上方向から車体下方へ向かって当接した場合には、フード20の閉止方向力によって、フードクッション16の突出部が更に大きく弾性変形する。この結果、図5の(0〜S3、0〜F3)に示される如く、ストロークSの増加に対して力Fは緩やかに上昇した後、急激に上昇するので、フード20に歩行者等の衝突体が当接した際のフードクッション16のエネルギ吸収量を増加できる。
また、衝突体の衝突によって、フードクッション16にフード20の所定値以上の閉止方向力Kが作用した場合には、エプロンアッパメンバ12の孔30の周縁部に当接するフードクッション16の車体上方側の螺子山36が、下方側から上方側に向かって順番に凹部40を起点に上方へ塑性変形し、孔30内を通過する。この結果、エプロンアッパメンバ12の孔30に対して、フードクッション16が下方(図2の矢印A)へ次々に移動する。
この結果、図5の(S3〜S4)に示される如く、ストロークSの増加に対して力Fが僅かな上下動を繰り返すが大きく上昇しない。このため、フード20に衝突体が当接した際の力Fが略一定でストロークSが大きくなるので、衝突体が衝突した際のエネルギ吸収量を増加することができる。
即ち、図5に二点鎖線で示すように、フードクッション16の底付き(弾性変形の限界)によって、ストロークS5が短くなり、衝突体が受ける力F5が大きくなるのを防止できる。このため、フード20とエプロンアッパメンバ12との間の隙間H1を有効に利用して、衝突エネルギの吸収性能を向上できる。
また、本実施形態では、螺子山36の根元部36Aに、凹部40を形成し脆弱部としたため、フードクッション16にフード20の所定値以上の閉止方向力Kが作用した場合に、螺子山36の根元部36Aが凹部40を起点に確実に変形することで、衝突エネルギを確実に吸収することができる。
また、本実施形態では、フードクッション16の螺子溝34と螺子山36とをエプロンアッパメンバ12の孔30に螺合することで、フードクッション16をエプロンアッパメンバ12に容易に取付けることができる。
次に、本発明における開閉扉用クッションの第2実施形態を図6〜図8に従って説明する。
なお、第1実施形態と同一部材は、同一符号を付してその説明を省略する。
図6に示される如く、本実施形態では、フード20とエプロンアッパメンバ12との隙間H2が第1実施形態に比べて大きくなっている。
また、フードクッション16が縦弾性係数の異なる2つの材料で構成されている。即ち、フードクッション16の軸部50を構成する材料の縦弾性係数が、フードクッション16の螺子部52を構成する材料の縦弾性係数に比べて高く、変形し難くなっている。
フードクッション16の軸部50は円柱形状となっており、螺子部52は、軸部50の上下方向中央部の外周に筒状に一体成形や接着等により固定されている。また、螺子部52の外周部52Aには、第1実施形態と同様に、螺子溝34と螺子山36が形成されており、エプロンアッパメンバ12の孔30にフードクッション16の螺子溝34が螺合している。
軸部50の下端50Aは円錐形状となっており、下端50Aの近くの外周部には、軸回りに環状に形成された溝54が軸方向に所定の間隔を隔てて複数(本実施形態では2個)形成されている。また、溝54の深さ方向は、軸部50の外周側から軸部50の軸心側に向って、上方から下方へ斜めとされており、これによって隣接する溝54の間の軸部50は羽部56となっている。
エプロンアッパメンバ12の下面12Bには、受け部ブラケット60が取付けられている。この受け部ブラケット60は下方が次第に小径となった逆円錐形状となっており、下方先端部に円孔62が形成されている。受け部ブラケット60の上端部には、外方へ向ってフランジ60Aが形成されており、フランジ60Aがエプロンアッパメンバ12の下面12Bに溶着されている。
なお、孔62の大きさは、フードクッション16における軸部50の羽部56の直径より小さくなっており、フードクッション16が下方へ移動した場合には、孔62の周縁部60Bに、フードクッション16の軸部50の羽部56が当たるようになっている。
図7に示される如く、衝突体がフード20に当接し、フードクッション16に車体上方から下方へ向かって、フード20の所定値以上の閉止方向力Kが作用した場合には、第1実施形態と同様に、螺子山36の塑性変形によって螺子部52の外径が小さくなるので、螺子部52がエプロンアッパメンバ12の孔30内を通過し、エプロンアッパメンバ12の孔30とフードクッション16の螺子溝36との係合位置がずれる。また、螺子山36が塑性変形することによって、フード20に衝突体が衝突した際の衝突エネルギを吸収するようになっている。
また、エプロンアッパメンバ12の孔30とフードクッション16の螺子溝36との係合が外れると、受け部ブラケット60の孔62の周縁部60Bに、フードクッション16の軸部50の羽部56が当たるようになっており、更に大きな閉止方向力Kが作用すると、フードクッション16の軸部50の羽部56が、下方から順番に塑性変形または弾性変形し、受け部ブラケット60の孔62を通過する。また、羽部56が塑性変形または弾性変形することで、フード20に衝突体が衝突した際の衝突エネルギを吸収するようになっている。
即ち、フード20に衝突体が衝突し、フードクッション16にフード20の所定値以上の閉止方向力Kが作用した場合には、螺子山36が塑性変形した後、フードクッション16の軸部50の羽部56が受け部ブラケット60の孔62に当たり変形することで、多くの衝突エネルギを吸収できるようになっている。
次に、本実施形態の作用を説明する。
本実施形態では、フード20とエプロンアッパメンバ12との隙間H2が第1実施形態に比べて大きくなっている。このため、フードクッション16の縦弾性係数を第1実施形態と同じにすると、図8に2点鎖線で示される如く、フード20のストロークSと、フードクッション16からフード20が受ける力Fとの関係は、ストロークSに対する力Fの立ち上がりが遅くなり、エネルギ吸収量が低下する。
このため、本実施形態では、フードクッション16を縦弾性係数の異なる2つの材料で構成し、フードクッション16の軸部50を構成する材料の縦弾性係数が、フードクッション16の螺子部52を構成する材料の縦弾性係数に比べて高くなっている。即ち、フードクッション16の軸部50を構成する材料の縦弾性係数が、第1実施形態におけるフードクッション16の縦弾性係数より高くなっている。この結果、図8に実線で示される如く、ストロークSに対する力Fの立ち上がりが早くなり、フード20とエプロンアッパメンバ12との隙間H2が第1実施形態に比べて大きくなっていても、エネルギ吸収量が増加する。
また、フードクッション16が下方(図7の矢印A)へ移動し、エプロンアッパメンバ12の孔30と全てのフードクッション16の螺子溝36との係合が外れると、受け部ブラケット60の孔62の周縁部60Bに、フードクッション16の軸部50の羽部56が当たり、フードクッション16の軸部50の羽部56が、下方から順番に変形し、受け部ブラケット60の孔62を通過する。この際、羽部56が変形することで、フード20に衝突体が衝突した際の衝突エネルギを吸収する。
この結果、図8の(S4〜S5)に示される如く、ストロークSがストロークS4以上になっても力Fが急激に低下することが無く、衝突体が衝突した際のエネルギ吸収量を更に増加することができる。このため、フード20とエプロンアッパメンバ12との間の隙間H2を有効に利用して、エネルギ吸収量を更に増加することができる。
次に、本発明における開閉扉用クッションの第3実施形態を図9及び図10に従って説明する。
なお、第2実施形態と同一部材は、同一符号を付してその説明を省略する。
図9に示される如く、本実施形態では、クッション16の軸部50の下部50Aが円柱形状となっており、下部50Aの外周部には、軸回りに環状とされた溝64が上下方向に所定の間隔を隔てて複数形成されている。また、溝64の深さ方向は、軸部50の軸方向に対して垂直とされており、これによって、隣接する溝64の間は羽部66とされている。
エプロンアッパメンバ12の下面12Bには、受け部ブラケット70が取付けられている。この受け部ブラケット70は、有底の筒状とされており、底部70Aの中央部に円孔72が形成されている。また、受け部ブラケット70の上端部には、外方へ向ってフランジ70Aが形成されており、フランジ70Aがエプロンアッパメンバ12の下面12Bに溶着されている。
なお、孔72の大きさは、フードクッション16における軸部50の羽部66の直径より小さくなっており、フードクッション16が下方へ移動した場合には、孔72の周縁部70Bに、フードクッション16の軸部50の羽部66が当たるようになっている。
図10に示される如く、衝突体がフード20に当接し、フードクッション16に車体上方から下方へ向かって、フード20の所定値以上の閉止方向力Kが作用した場合には、第2実施形態と同様に、螺子山36の塑性変形によって螺子部52の外径が小さくなるので、螺子部52がエプロンアッパメンバ12の孔30内を通過し、エプロンアッパメンバ12の孔30とフードクッション16の螺子溝36との係合位置がずれる。また、螺子山36が塑性変形することで、フード20に衝突体が衝突した際の衝突エネルギを吸収するようになっている。
また、エプロンアッパメンバ12の孔30とフードクッション16の螺子溝36との係合が外れると、受け部ブラケット70の孔72の周縁部70Bに、フードクッション16の軸部50の羽部66が当たるようになっている。また、フードクッション16の軸部50の羽部66が、下方から順番に塑性変形または弾性変形し、受け部ブラケット70の孔72を通過する。また、羽部66が塑性変形または弾性変形することで、フード20に衝突体が衝突した際の衝突エネルギを吸収するようになっている。
なお、溝64の深さ方向を軸部50の軸方向に対して垂直にしたため、前記第2実施形態と比べて、軸部50の羽部66が受け部ブラケット70の孔72を通過する際の抵抗を大きくできるので、前記第2実施形態と比べて、エネルギの吸収量が増加する。
その他の構成作用は前記第2実施形態と同様である。
次に、本発明における開閉扉用クッションの第4実施形態を図11〜図16に従って説明する。
なお、第1実施形態と同一部材は、同一符号を付してその説明を省略する。
図11に示される如く、本実施形態では、フードクッション76が円筒形状の筒部78と、筒部78に挿入された軸部80とを備えている。また、軸部80を構成する材料の縦弾性係数が、筒部78を構成する材料の縦弾性係数に比べて高く、弾性圧縮変形し難くなっている。
軸部80は上端部80Aが拡径された円柱形状となっており、下端部80Bの外周部には、リング状の溝82が形成されている。
筒部78の外周の下部78Aには螺子溝84が軸方向に所定のピッチで刻まれており、螺子溝84の間は螺子山86となっている。
フードクッション76は螺子溝84と螺子山86とがエプロンアッパメンバ12の孔30に螺合することでエプロンアッパメンバ12に取付けられている。
また、螺子山86は方形断面の角螺子で構成されており、螺子山86の根元部86Aには、凹部87が螺子山86に沿って周方向へ連続して形成されている。この凹部87の深さ方向は、螺子山86の下端部側から上端部側に向かって、フードクッション76の軸線に並行とされており、凹部87は螺子山86の根元部86Aの断面積を小さくすることで、根元部86Aを螺子山86の他の部位に比べて容易に折れ、破断等の塑性変形する脆弱部としている。
このため、螺子山86は、フードクッション76に車体上方から下方へ向かって作用するフード20の閉止方向力が所定値までは塑性変形せず、フード20の閉止方向力が所定値以上になると凹部87を起点に塑性変形するようになっている。
また、フードクッション16の螺子溝84の底部84Aと孔30の内周部30Aとの間には、隙間35が形成されており、この隙間35内を塑性変形した螺子山36が通過可能となっている。
図14に示される如く、フード20への衝突体の衝突によって、フードクッション16にフード20の所定値以上の閉止方向力Kが作用した場合には、エプロンアッパメンバ12の孔30の周縁部に当接する車体上方側の螺子山86が、凹部87を起点に上方へ塑性変形し、エプロンアッパメンバ12の孔30に対して、フードクッション76が下方(図14の矢印A)へ移動する。また、螺子山86が塑性変形することで、フード20に衝突体が衝突した際の衝突エネルギを吸収するようになっている。
また、フードクッション76における筒部78の上部78Bは、下方から上方に沿って次々に拡径されており、上端部78Cでは大きく拡径されている。
図12に示される如く、フードクッション76における筒部78の上部78Bには、放射状に複数本(図12では4本)のスリット88が周方向に沿って等間隔で形成されており、上部78Bはスリット88によって複数個に分割されている。
従って、フード20がフードクッション76に当接した際には、スリット88によって分割されたフードクッション76における筒部78の上部78Bが、それぞれ拡径する放射方向(図12の矢印B方向)へ弾性変形するようになっている。
図11に示される如く、フードクッション76における筒部78の下部78Aの上端内周部には、内側に向かってリング状の凸部90が形成されており、この凸部90が、軸部80の下端部80Bの溝82に係合している。また、軸部80の上端部80Aは、筒部78の上端部78Cの下方であって、上端部78Cの近傍に当接または接近している。
フードクッション76における筒部78の下部78Aの内周面には、先端が内側下方に向かった凸部92が周方向に沿って環状に形成されている。また、凸部92は、上下方向に沿って所定の間隔を隔てて複数形成されており、凸部92の根元部には、凸部92の根元部を脆弱部とするための凹部94が上方から下方へ向かって形成されている。
従って、図13に示される如く、フード20に車体上方から下方へ向かって、閉止方向力が作用した場合には、フード20が筒部78の上部78Bを拡径する放射方向(図12の矢印B方向)へ弾性変形させた後に、フード20が軸部80に当接し、軸部80が軸圧縮方向へ弾性変形するようになっている。
また、衝突体の衝突によって、フードクッション16にフード20の所定値以上の閉止方向力Kが作用した場合には、図14及び図15に示される如く、凸部90と軸部80の下端部80Bの溝82との係合が外れ、軸部80が下方(図14の矢印A方向)へ移動する。この際、凸部90が変形することで、フード20に衝突体が衝突した際の衝突エネルギを吸収するようになっている。
また、更に大きな閉止方向Kが作用した場合には、軸部80の下端部80Bの周囲が凸部92に当接し、上方側の凸部92から順番に、凸部92が凹部94を起点に下方へ塑性変形するようになっており、フードクッション76の筒部78に対して、軸部80が更に下方へ移動する。また、凸部92が塑性変形することで、フード20に衝突体が衝突した際の衝突エネルギを吸収するようになっている。
図15に示される如く、軸部80は、上端部80Aが、放射方向(図15の矢印B方向)へ弾性変形した筒部上部78Bの内周下部78Dに当たると停止するようになっている。
次に、本実施形態の作用を説明する。
フード20を閉めた際に、フードクッション76に車体上方から下方へ向かって作用するフード20の閉止方向力によって、筒部78の上部78Bが拡径する放射方向(図12の矢印B方向)へ弾性変形する。
この結果、図16に示される如く、フード20のストロークSと、フードクッション16からフード20が受ける力Fとの関係は、(0〜S1、0〜F1)に示される如く、ストロークSに増加に対して力Fが緩やかに上昇する。このため、通常フード20を閉める際のストロークSに対して力Fが小さいので、フード20を容易に閉めることができる。
なお、ストロークS1は、軸部80の上端部80Aとフードインナパネル26との隙間Lを大きくすることで、長くできる。
また、フード20が強閉された場合には、図13に示される如く、フードクッション76における筒部78の上部78Bが拡径する放射方向(図13の矢印B方向)へ弾性変形すると共にフード20が軸部80の上端部80Aに当接するため、軸部80が軸圧縮方向へ弾性変形する。この結果、図16の(0〜S2、0〜F2)に示される如く、ストロークSの増加に対して力Fは緩やかに上昇した後、急激に上昇する。このため、フード20を強閉した際の力Fに対してストロークSが小さくなるので、フード20がフード20の下方に取付けられた他部品に干渉するのを防止できる。
また、衝突体がフード20に車体上方向から車体下方へ向かって当接し、フードクッション76に車体上方から下方へ向かって、フード20の所定値以上の閉止方向力Kが作用した場合には、図14に示される如く、フード20が軸部80に当り、凸部90と溝82との係合が外れる。このため、軸部80が下方へ移動し、軸部80の下端部80Bが凸部92に当接し、凸部92が凹部94を起点に下方へ塑性変形することで、フード20に衝突体が衝突した際の衝突エネルギを吸収する。また、図15に示される如く、螺子山86が、凹部87を起点に上方へ塑性変形し、エプロンアッパメンバ12の孔30に対して、フードクッション76が下方(図15の矢印A)へ移動する。また、螺子山86が塑性変形することで、フード20に衝突体が衝突した際の衝突エネルギを吸収する。
この結果、図16の(0−S3)に示される如く、ストロークSの増加に対して力Fは、緩やかに上昇した後、急激に上昇すると共に、ストロークSがストロークS2以上になっても力Fが急激に低下することが無く、衝突体が衝突した際のエネルギ吸収量を増加することができる。このため、フード20とエプロンアッパメンバ12との間の隙間H3を有効に利用して、衝突エネルギの吸収性能を向上できる。
なお、上記実施形態では、凸部92に続いて螺子山86を変形させたが、各部材の弾性の選定や要求する吸収荷重のパターンにより、螺子山86に続いて凸部92が変形する構成としても良い。
次に、本発明における開閉扉用クッションの第6実施形態を図17〜図23に従って説明する。
なお、第1実施形態と同一部材は、同一符号を付してその説明を省略する。
図17に示される如く、本実施形態のフードクッション100は円柱状のゴム、樹脂等の弾性部材で構成されている。フードクッション100の外周部の下部100Aには、所定のピッチで螺子溝102が刻まれており、螺子溝102の間は螺子山104となっている。また、エプロンアッパメンバ12の孔30にフードクッション100の螺子溝102が螺合している。
フードクッション100は螺子溝102と螺子山104とがエプロンアッパメンバ12の孔30に螺合することでエプロンアッパメンバ12に取付けられている。また、フードクッション100の上面100Bは、フード20が閉止状態にある時にフードインナパネル26の下面26Bに当接して、フードクッション100は軸方向へ弾性圧縮変形するようになっている。
フードクッション100のエプロンアッパメンバ12からの突出高さH4は、フードクッション100の下部100Aのエプロンアッパメンバ12への捩じ込み量によって調整できる。
また、螺子山104は方形断面の角螺子で構成されており、螺子山104の根元部104Aには、凹部105が螺子山104に沿って周方向へ連続して形成されている。この凹部105の深さ方向は、螺子山104の下端部側から上端部側に向かって、フードクッション100の軸線に並行とされており、凹部105は螺子山104の根元部104Aの断面積を小さくすることで、根元部104Aを螺子山104の他の部位に比べて容易に折れ、破断等の塑性変形する脆弱部としている。
このため、螺子山104は、フードクッション100に車体上方から下方へ向かって作用するフード20の閉止方向力が所定値までは塑性変形せず、フード20の閉止方向力が所定値以上になると凹部105を起点に塑性変形するようになっている。
また、フードクッション100の螺子溝102の底部102Aと孔30の内周部30Aとの間には、隙間103が形成されており、この隙間103内を塑性変形した螺子山104が通過可能となっている。
従って、図21に示される如く、フード20に衝突体が車体上方から下方へ向かって衝突し、フードクッション100に車体上方から下方へ向かって、フード20の所定値以上の閉止方向力Kが作用した場合には、エプロンアッパメンバ12の孔30の周縁部に当接する車体上方側の螺子山104が、凹部105を起点に上方へ塑性変形する。また、この変形で、エプロンアッパメンバ12の孔30に対して、フードクッション100が下方(図21の矢印A)へ移動する。また、螺子山104が塑性変形することで、フード20に衝突体が衝突した際の衝突エネルギを吸収するようになっている。
即ち、フードクッション100にフード20の所定値以上の閉止方向力Kが作用した場合には、エプロンアッパメンバ12の孔30と螺子山104との螺合位置が変わることで、フードクッション100のエプロンアッパメンバ12への支持位置が変わり、これによって、フードクッション100の突出部の高さH4が変わる。
図19及び図20に示される如く、フードクッション100は、フード20の所定値以上の閉止方向力でフード20の閉止方向となる軸方向へ弾性圧縮変形すると共に、更に大きな閉止方向力で破断する筒部100Fと、筒部100F内に配置されて筒部100Fの軸方向両端が固定された軸部100Eと、を有しており、フードクッション100の軸方向の中央部100Dが二重構造となっている。また、軸部100Eもフード20の所定値以上の閉止方向力でフード20の閉止方向へ弾性圧縮変形するようになっている。
図19に示される如く、筒部100Fには上下方向に沿って延びるスリット108が、周方向に沿って所定の間隔で複数形成されている。
図17に示される如く、スリット108の上下方向中央部からは、周方向両側に向かってスリット状の切込108Aが、スリット108の幅寸法を部分的に拡大して形成されている。
また、エプロンアッパメンバ12の下面12Bには、受け部ブラケット110が取付けられている。この受け部ブラケット110は、皿状とされており、底部110Aが、フードクッション100の下面100Gに対向している。受け部ブラケット110の上端部には、外方へ向ってフランジ110Bが形成されており、フランジ110Bがエプロンアッパメンバ12の下面12Bに溶着されている。
従って、衝突体の衝突によって、フードクッション100に車体上方から下方へ向かって、フード20の所定値以上の閉止方向力Kが作用した場合には、フードクッション100は、螺子溝102とエプロンアッパメンバ12の孔30との螺合位置がずれ、下方(図21の矢印A方向)へ次々に移動する。また、螺子山104が塑性変形することで、フード20に衝突体が衝突した際の衝突エネルギを吸収する。また、更に大きな閉止方向力Kが作用した場合には、図21に示される如く、フードクッション100は、螺子溝102とエプロンアッパメンバ12の孔30との螺合が外れ、フードクッション100の下面100Gが受け部ブラケット110に当接するようになっている。
また、図18に示される如く、フードクッション100の上部100Cは徐々に縮径されており、上面100Bの直径D1は、他の部位の直径D2に比べ小さくなっている(D1<D2)。このため、フード20からフードクッション100に作用する下方への荷重が、荷重を伝達する柱状部分である軸部100Eに無駄なく伝わり易いようになっている。
図22に示される如く、更に大きな閉止方向力Kがフードクッション100に作用した場合には、軸部100Eと筒部100Fとがフード20の閉止方向へ弾性圧縮変形すると共に、筒部100Fが座屈や曲げにより、スリット108の切込108Aを起点とし破断することで、フード20に衝突体が衝突した際の衝突エネルギを吸収するようになっている。
次に、本実施形態の作用を説明する。
本実施形態では、フード20を閉めた際に、フードクッション100におけるエプロンアッパメンバ12から突出した突出部(H4)が弾性変形する。この結果、図23に示される如く、フード20のストロークSと、フードクッション100からフード20が受ける力Fとの関係は、(0〜S1、0〜F1)に示される如く、緩やかに上昇する。このため、通常フード20を閉める際のストロークSに対して力Fが小さいので、フード20を容易に閉めることができる。
また、フード20が強閉された場合には、フードクッション100の突出部が大きく弾性変形する。この結果、図23の(0〜S2、0〜F2)に示される如く、ストロークSの増加に対して力Fは緩やかに上昇した後、急激に上昇するため、フード20を強閉した際の力Fに対してストロークSが小さくなるので、フード20がフード20の下方に取付けられた他部品に干渉するのを防止できる。
また、衝突体がフード20に当接した場合には、フードクッション100の突出部が更に大きく弾性変形する。この結果、図23の(0〜S3、0〜F3)に示される如く、ストロークSの増加に対して力Fは、緩やかに上昇した後急激に上昇するため、フード20に衝突体が当接した際のフードクッション100のエネルギ吸収量を増加できる。
また、衝突体がフード20に車体上方向から車体下方へ向かって当接し、フードクッション100に車体上方から下方へ向かって、フード20の所定値以上の閉止方向力Kが作用すると、エプロンアッパメンバ12の孔30の周縁部に当接するフードクッション100の車体上方側の螺子山104が、下方側から上方側に向かって順番に凹部105を起点に上方へ塑性変形する。この結果、エプロンアッパメンバ12の孔30に対して、フードクッション100が下方(図21の矢印A)へ移動する。この際、螺子山104が塑性変形することで、フード20に衝突体が衝突した際の衝突エネルギを吸収する。このため、図23の(S3〜S4)に示される如く、ストロークSの増加に対して力Fは僅かな上下動を繰り返すが上昇しない。
また、図21に示される如く、フードクッション100は、螺子溝102とエプロンアッパメンバ12の孔30との螺合が全て外れると、下面100Gが受け部ブラケット110に当接する。更に大きな閉止方向力Kが作用すると、図22に示される如く、フードクッション100の軸部100Eと筒部100Fとがフード20の閉止方向へ弾性圧縮変形すると共に、筒部100Fが座屈や曲げにより、スリット108の切込108Aを起点とし破断することで、フード20に衝突体が衝突した際の衝突エネルギを吸収する。よって、図23の(S4〜S5)に示される如く、力Fは殆ど上昇せず、ストロークSが更に増加する。
従って、フードクッション100の底付き(弾性変形の限界)によって、フード20及び衝突体が受ける力が大きくなるのを防止できると共に、衝突体が衝突した際のエネルギ吸収量を増加することができる。このため、フード20とエプロンアッパメンバ12との間の隙間H4を有効に利用して、衝突エネルギの吸収性能を向上できる。
以上に於いては、本発明を特定の実施形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内にて他の種々の実施形態が可能であることは当業者にとって明らかである。例えば、上記第1〜第5実施形態の構成の何れかの構成を他の構成と組み合わせた構成としても良い。
また、螺子山36、86、104の根元部36A、86A、104Aを螺子山36、86、104の他の部位に比べて容易に塑性変形する脆弱部とする構成は、凹部40、87、105に限定されず、フード20の閉止方向力が所定値までは塑性変形せずに所定値以上の場合に、塑性変形させる構成であれば、孔の形成、低強度部材の配置等の他の構成としても良い。
また、凹部40、87、105の深さを変える等によって螺子山36、86、104の根元部36A、86A、104Aの塑性変形強度を変えることで、衝突エネルギの吸収量を調整できる。
また、根元部36A、86A、104Aの塑性変形強度をフードクッション16、76、100の軸方向に沿って変えることで、フードクッションが軸方向へ移動するのに応じてフードクッションからフードが受ける力Fを調整でき、衝突体がフードから受ける力を調整できる。
また、本発明の開閉扉用クッションは、図4に示される如く、ラジエータサポートアッパ14の車幅方向両端上部に取付けられた強閉対策用のフードクッション18にも適用可能である。
また、本発明の開閉扉用クッションは、フード20に限定されず、ラゲージドア、バックドア、スライドドア等の他の開閉蓋に適用可能であり、自動車以外の車体の開閉扉や車体以外の開閉蓋にも適用可能である。
なお、上記各実施形態における、フード20の所定値以上の閉止方向力Kは、同一とは限らない。