JP2006159717A - 画像形成装置 - Google Patents

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哲也 金子
Masamune Kusunoki
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Abstract

【課題】 クリーニングなどの維持回復動作を行なうことなどで吸引キャップ内に付着残存した記録液が、ヘッドのノズルから水分を奪い、吐出不良を生じるという現象が生じる。
【解決手段】 所定状態にある記録ヘッド34がキャップ82aによりキャッピングされていない状態の経過時間であるデキャップ累積時間tdcを読み込み、デキャップ累積時間tdcが予め定めた時間閾値Tdc以上である(tdc≧Tdc)か否かを判別し、tdc≧Tdcであれば、直前の吐出動作からキャップ82aによるキャッピング状態の経過時間である吐出後キャップ時間tcを読み込み、吐出後キャップ時間tcが予め定めた時間閾値Tc以上である(tc≧Tc)か否かを判別し、tc≧Tcであれば、維持回復機構82による回復動作を行う。
【選択図】 図12

Description

本発明は画像形成装置に関し、特に記録液を吐出して画像を形成する画像形成装置に関する。
プリンタ、ファクシミリ、複写装置、これらの複合機等の画像形成装置として、例えばインクジェット記録装置が知られている。インクジェット記録装置は、記録ヘッドから記録紙等の被記録媒体(以下「用紙」と称するが、材質を紙に限定するものではなく、記録媒体、転写紙、転写材、被記録材などとも称される。)に記録液の液滴であるインク滴を吐出して記録(画像形成、印写、印字、印刷なども同義語である。)を行うものであり、高精細な画像を高速で記録することができ、ランニングコストが安く、騒音が少なく、しかも、多色のインクを使用してカラー画像を記録するのが容易であるなどの利点を有している。
一般に、インクジェット記録用記録液(インク)に要求される特性としては、高画質を達成するための色調、画像濃度、滲みなど、信頼性を達成するためのインク中の着色剤の溶解または分散安定性・保存安定性・吐出安定性など、記録画像の保存性を確保するための耐水性、耐光性など、また、高速化を達成するためのインクの速乾性などが挙げられ、これらの要求を満たすように従来から様々な試みがなされてきている。例えば、インクの着色剤としては、その発色性の良さや信頼性の高さ等の点から、当初は染料インクが主流であったが、近年に至り、記録画像に耐光性や耐水性を持たせるためにカーボンブラック等の顔料を用いたインキ組成物が使用されつつある。
一方、印字品質の高画質化及び高速印字を達成するために、最近ではインクを小滴化する傾向にあり、そのためにノズル径も小径化される方向にある。
そのため、着色剤として顔料を使用し、かつノズル径の小径化された記録ヘッドを用いた場合に吐出安定性を確保することはかなり難しく、インクの他の特性と両立させる試みがこれまで多々なされているが、充分な対応はなされていないのが現状である。
これまでの記録液は、画像形成装置の信頼性向上のために、粘度の上昇を極力押さえる方向が検討されている。例えば、特許文献1にはインクの2倍濃縮時の粘度変化を10倍以内、かつ粒径変化を3倍以内にすることが、特許文献2にはインク中の揮発成分が蒸発した後の残留分が液体であり、かつその粘度が初期粘度の10倍以内であるインクが、特許文献3には60℃環境下での水分蒸発させたときの、インク粘度が蒸発前の粘度の600倍以下であるインクが、特許文献4には粘度の高いインク(5〜15mPa・s)が高画質を確保するためには必要であるとして、信頼性確保のために初期の蒸発速度を調整し、かつ粘度を調整するための粘度調整剤として特定の化合物を添加することが、それぞれ記載されている。
特開2002−337449号公報 特開2000−095983号公報 特開平9−111166号公報 特開2001−262025号公報
しかしながら、特許文献1のインクでは普通紙上での高画質画像の形成が困難であり、特許文献2のインクは染料インクであり、信頼性は高いものの、やはり普通紙での画質が十分でなく、特許文献3のインクもやはり染料インクであり、水溶性高分子を添加することで、インクの信頼性と画像品質の耐久性とのバランスをとっているが、耐水性に問題が残り、特許文献4のインクでは用いる顔料の粒径の安定性についてはなんら開示されていないため、24時間放置後の信頼性があるとしているものの、吐出させるヘッドの構成とノズル径の大きさによっては更に長期放置された場合など、信頼性に劣るインク処方となる。
このように、従前、高速で高品位な印字品質を確保するためには高粘度のインクを使用する必要があるが、粘度の高いインクは信頼性を確保するのが難しく、使いこなせていないのが実状である。
そこで、本出願人は、少なくとも水に分散する着色剤、湿潤剤を含み、水分蒸発率が初期重量比30〜45%の間に急激に増粘し(粘度上昇率(mPa・s/%)が50を越える)、かつ、粘度上昇時の顔料粒径変化が初期の5倍以下でかつ0.8μm以下となるように記録液を処方することで、長期放置でもノズル目詰まりを起こさず、普通紙上での高画質化及び高速印字を達成できるようにした。この記録液は、仮に、ノズル内の記録液が乾燥し増粘することによりノズルから吐出できなくなったとしても、顔料などが粗大粒子化してノズル詰まりを発生するわけではないため、簡単な維持回復動作により容易に回復できるという利点を有している。
一方、インクジェット記録装置においては、記録ヘッドの信頼性を維持回復するための維持回復機構が不可欠である。この維持回復機構では、ヘッドのノズル外面に増粘あるいは乾燥したインクやほこり、ごみなどの異物が付着することによって、ノズルに目詰まりを起こしたり、ノズルの内部では気泡の発生などによりエアーダンパー現象が発生するなどして、正常な吐出ができなくなることを防止するため、記録ヘッドのノズル面を密閉するキャップ(キャップ部材)を備えている。さらに、適宜、キャップ内に連通する吸引ポンプなどの吸引手段により、ノズルからヘッド内に充填されているインクを吸引する動作(ヘッド吸引又はノズル吸引)、ゴムなどの弾性部材を用いたワイパーブレードによるヘッド表面のワイピング動作、および、画像形成に寄与しないようにインクを吐出しノズル孔内部及び入り口付近にある増粘インクや混色インクを排出する空吐出動作、などを組み合わせて、液室内の気泡や増粘インク、付着したごみなどを取り除き、安定した液滴吐出を行なえる状態に保持する動作を行なう。
このような維持回復機構による維持回復動作については、特許文献5に記載されているように、頻繁に電源オン/オフが繰り返されることでその度に維持回復動作を行なったのではランニングコストが高くなることから、記録ヘッドのインク吐出に影響を及ぼす当該インクジェット記録装置における複数の状態がそれぞれ継続する時間、例えば記録ヘッドが最後に吐出してからの時間、吸引手段により最後に吸引が行われてからの時間、キャップ手段によりインク吐出口が配設された部位が覆われてからの時間、を計時する計時手段と、該計時手段が計時する複数の状態が継続するそれぞれの時間の組合せに応じて吐出回復手段による吐出回復処理を制御するようにし、記録ヘッドのインク吐出に影響を及ぼさないときには電源オンに伴う維持回復動作を行なわないようにしたインクジェット記録装置がある。
特許第2877971号公報
ところで、上述したように、少なくとも水に分散する着色剤、湿潤剤を含み、水分蒸発率が初期重量比30〜45%の間に急激に増粘し(粘度上昇率(mPa・s/%)が50を越える)、かつ、粘度上昇時の顔料粒径変化が初期の5倍以下でかつ0.8μm以下となるように処方された記録液を使用した場合、染料析出物や分散不安定となった顔料固形分などがノズルに詰まってしまい発生するノズル抜けに関しては、顕著な改善効果が確認されたものの、その蒸発率−粘度特性ゆえに、従前の記録液では起こり得ないと考えられる新たな課題が明らかになった。
すなわち、クリーニングなどの維持回復動作を行なうことなどで吸引キャップ内に付着残存した記録液が、ヘッドのノズルから水分を奪い、吐出不良を生じるという現象が顕在化してきたのである。
具体的に説明すると、一般的な維持回復機構としては、キャップは全て吸引及び保湿の両方を機能させる方が、部品数削減によるコスト低減、省スペースの観点から好ましいとされている。このように吸引専用のキャップを有しない維持回復機構によって維持回復動作を行なった後、長時間印刷を続けると、維持回復動作によって吸引キャップ内に排出されて残存している記録液がインクジェット記録装置の設置環境に応じて乾燥することになり、このような状態にあるキャップで記録ヘッドをキャッピングしたとき、乾燥状態にある記録液が逆にノズル内の記録液から水分を奪い、記録ヘッドのノズル内の記録液は水分を奪われることで、急激な粘度上昇を引き起こし、その結果ノズル内の記録液が増粘して目詰まりを生じ、吐出不良を引き起こすのである。
この場合の吐出不良は維持回復動作を行なうことによって容易に回復できるものの、キャップ内の残留記録液によるノズル内記録液の水分吸収という課題が生じていない従来のインクジェット記録装置における自動的な維持回復動作では、適切なタイミングで維持回復動作を行なうことができなかった。
特に、特許文献5に記載されているように電源オン時に経過時間が所要時間経過していない場合には維持回復動作を行なわないような構成にしたのでは、上述したキャップ内の残留記録液によるノズル内記録液の水分吸収による吐出不良という課題にはまったく対応することができない。
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、キャップ内の残留記録液によるノズル内記録液の水分吸収による吐出不良を効果的に防止する画像形成装置を提供することを目的とする。
上記の課題を解決するため、本発明に係る画像形成装置は、所定状態にある記録ヘッドがキャップ部材によりキャッピングされていない状態の非キャッピング累積時間tdcと、直前の吐出動作からキャップ部材によるキャッピングがされた後の吐出後キャッピング時間tcとに基づいて、維持回復機構による維持回復動作を行なわせる手段を備えた構成としたものである。
ここで、非キャッピング累積時間tdcは前記キャッピング手段で記録ヘッドのノズル面をキャッピングした状態でノズルからの吸引を行なうノズル吸引動作が行われたときにリセットされることが好ましい。また、吐出後キャッピング時間tcは直前の吐出動作から次の記録命令を受けるまで又は記録動作を開始する直前までの時間であることが好ましい。
また、非キャッピング累積時間tdcが所定時間閾値Tdc以上、かつ、吐出後キャッピング時間tcが所定時間閾値Tc以上の条件になったときに、維持回復動作が行なわれることが好ましい。
この場合、環境湿度の検出結果に基づいて時間閾値Tdc及び時間閾値Tcの少なくともいずれか一方を変更することが好ましく、特に、環境湿度が高い場合の時間閾値をTHHとし、環境湿度が低い場合の時間閾値をTLHとするとき、時間閾値THHと時間閾値TLHとの間に、THH≧TLH の関係が成り立つことが好ましい。また、時間閾値Tdc及び時間閾値Tcの少なくともいずれか一方が、少なくとも相対的に大きな閾値TLと小さな閾値TLとを取り、大きな閾値TLに基づいて行なわれる維持回復動作に対して、小さな閾値TSとに基づいて行なわれる維持回復動作の方が動作所要時間が短いことが好ましく、更に、時間閾値のうちの最小閾値以上で行なわれる維持回復動作が液滴吐出動作であることが好ましい。
また、記録液が、少なくとも水に分散する着色剤、湿潤剤、浸透性向上剤を含み、水分蒸発に伴う粘度上昇率(mPa・s/%)が記録液全重量に対する水分蒸発率30%までは1.0以下であり、かつ、水分蒸発率30〜45%の間に粘度上昇率が50を越える点を持つように構成された記録液であることが好ましい。この場合、記録液が、粘度上昇率が50を越える点での、記録液中の着色剤の平均粒子径が、初期平均粒子径の5倍以下であり、かつ0.8μm以下となるように処方された記録液であることが好ましい。
さらに、維持回復機構は複数のキャップ部材を備え、この複数のキャップ部材のうちの少なくとも1つのキャップ部材は吸引手段に連結されていないことが好ましい。さらにまた、吸引手段が連結されたキャップ部材の内部には保湿部材が設けられていることが好ましい。
また、非キャッピング累積時間tdcと吐出後キャッピング時間tcとが所定条件を満たすときに吸引手段が連結されたキャップ部材に対応する記録ヘッドの維持回復動作をすることが好ましい。さらに、記録ヘッドの数とキャップ部材の数が同じであることが好ましい。
本発明に係る画像形成装置によれば、所定状態にある記録ヘッドがキャップ部材によりキャッピングされていない状態の非キャッピング累積時間tdcと、直前の吐出動作からキャップ部材によるキャッピングがされた後の吐出後キャッピング時間tcとに基づいて、維持回復機構による維持回復動作を行なわせる手段を備えているので、非キャッピング状態にあるキャップ部材内での記録液の乾燥度合いと、当該キャップ部材内の乾燥記録液に記録ヘッドが晒されている時間からノズル内部の記録液の増粘の程度に基づいて回復動作を行なって吐出不良発生リスクを低減することができる。
以下、本発明の実施形態について添付図面を参照して説明する。図1は本発明に係る画像形成装置の一例を示す同画像形成装置を前方側から見た斜視説明図である。
この画像形成装置は、装置本体1と、装置本体1に装着された用紙を装填するための給紙トレイ2と、装置本体1に着脱自在に装着されて画像が記録(形成)された用紙をストックするための排紙トレイ3とを備えている。さらに、装置本体1の前面の一端部側(給排紙トレイ部の側方)には、前面から装置本体1の前方側に突き出し、上面よりも低くなったインクカートリッジを装填するためのカートリッジ装填部4を有し、このカートリッジ装填部4の上面は操作ボタンや表示器などを設ける操作/表示部5としている。
このカートリッジ装填部4には、色の異なる記録液(インク)、例えば黒(K)インク、シアン(C)インク、マゼンタ(M)インク、イエロー(Y)インクをそれぞれ収容した複数の記録液カートリッジであるインクカートリッジ10k、10c、10m、10y(色を区別しないときは「インクカートリッジ10」という。)を、装置本体1の前面側から後方側に向って挿入して装填可能とし、このカートリッジ装填部4の前面側には、インクカートリッジ10を着脱するときに開く前カバー(カートリッジカバー)6を開閉可能に設けている。また、インクカートリッジ10k、10c、10m、10yは縦置き状態で横方向に並べて装填する構成としている。
この前カバー6は、全体が、この前カバー6を閉じた状態で、カートリッジ装填部4内に装填されている複数のインクカートリッジ10k、10c、10m、10yを外部から視認することができる透明又は半透明の部材で形成されている。なお、インクカートリッジ10k、10c、10m、10yを外部から視認することができれば一部が透明又は半透明の部材で形成されている構成とすることもできる。
また、操作/表示部5には、各色のインクカートリッジ10k、10c、10m、10yの装着位置(配置位置)に対応する配置位置で、各色のインクカートリッジ10k、10c、10m、10yの残量がニアーエンド及びエンドになったことを表示するための各色の残量表示部11k、11c、11m、11y(色を区別しないときは「残量表示部11」という。)を配置している。さらに、この操作/表示部5には、電源ボタン12、用紙送り/印刷再開ボタン13、キャンセルボタン14も配置している。
次に、この画像形成装置の機構部について図2及び図3を参照して説明する。なお、図2は同機構部の全体構成を説明する概略構成図、図3は同機構部の要部平面説明図である。
フレーム21を構成する左右の側板21A、21Bに横架したガイド部材であるガイドロッド31とステー32とでキャリッジ33を主走査方向に摺動自在に保持し、図示しない主走査モータによって図3で矢示方向(キャリッジ主走査方向)に移動走査する。
このキャリッジ33には、前述したようにイエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)、ブラック(Bk)の各色のインク滴を吐出する4個の液滴吐出ヘッドからなる記録ヘッド34を複数のインク吐出口(ノズル)を形成したノズル面34aを主走査方向と交叉する方向に配列し、インク吐出方向を下方に向けて装着している。
記録ヘッド34を構成するインクジェットヘッドとしては、圧電素子などの圧電アクチュエータ、発熱抵抗体などの電気熱変換素子を用いて液体の膜沸騰による相変化を利用するサーマルアクチュエータ、温度変化による金属相変化を用いる形状記憶合金アクチュエータ、静電力を用いる静電アクチュエータなどを、液滴を吐出するための圧力を発生する圧力発生手段として備えたものなどを使用できる。
この記録ヘッド34にはドライバICを搭載し、図示しない制御部との間でハーネス(フレキシブルプリントケーブル)22を介して接続している。
また、キャリッジ33には、記録ヘッド34に各色のインクを供給するための各色のサブタンク35を搭載している。この各色のサブタンク35には各色のインク供給チューブ36を介して、前述したように、カートリッジ装填部4に装着された各色のインクカートリッジ10から各色のインクが補充供給される。なお、このカートリッジ装填4にはインクカートリッジ10内のインクを送液するための供給ポンプユニット24が設けられ、また、インク供給チューブ36は這い回しの途中でフレーム21を構成する後板21Cに係止部材25にて保持されている。
一方、給紙トレイ2の用紙積載部(圧板)41上に積載した用紙42を給紙するための給紙部として、用紙積載部41から用紙42を1枚ずつ分離給送する半月コロ(給紙コロ)43及び給紙コロ43に対向し、摩擦係数の大きな材質からなる分離パッド44を備え、この分離パッド44は給紙コロ43側に付勢されている。
そして、この給紙部から給紙された用紙42を記録ヘッド34の下方側に送り込むために、用紙42を案内するガイド部材45と、カウンタローラ46と、搬送ガイド部材47と、先端加圧コロ49を有する押さえ部材48とを備えるとともに、給送された用紙42を静電吸着して記録ヘッド34に対向する位置で搬送するための搬送手段である搬送ベルト51を備えている。
この搬送ベルト51は、無端状ベルトであり、搬送ローラ52とテンションローラ53との間に掛け渡されて、ベルト搬送方向(副走査方向)に周回するように構成し、周回移動しながら帯電ローラ56によって帯電(電荷付与)される。
この搬送ベルト51としては、1層構造のベルトでも良く、又は複層(2層以上の)構造のベルトでもよい。1層構造の搬送ベルト51の場合には、用紙42や帯電ロー56に接触するので、層全体を絶縁材料で形成している。また、複層構造の搬送ベルト51の場合には、用紙42や帯電ローラ56に接触する側は絶縁層で形成し、用紙42や帯電ローラ56と接触しない側は導電層で形成することが好ましい。
1層構造の搬送ベルト51を形成する絶縁材料や複層構造の搬送ベルト51の絶縁層を形成する絶縁材料としては、例えばPET、PEI、PVDF、PC、ETFE、PTFEなどの樹脂又はエラストマーで導電制御材を含まない材料であることが好ましく、体積抵抗率は1012Ωcm以上、好ましくは1015Ωcmなるように形成する。また、複層構造の搬送ベルト51の導電層を形成する材料としては、上記樹脂やエラストマーにカーボンを含有させて体積抵抗率が10〜10Ωcmとなるように形成することが好ましい。
帯電ローラ56は、搬送ベルト51の表層をなす絶縁層(複層構造のベルトの場合)に接触し、搬送ベルト51の回動に従動して回転するように配置され、軸の両端に加圧力をかけている。この帯電ローラ26は、体積抵抗率が10〜10Ω/□の導電性部材で形成している。この帯電ローラ26には、後述するように、ACバイアス供給部(高圧電源)315から例えば2kVの正負極のACバイアス(高電圧)が印加される。このACバイアスは、正弦波や三角波でもよいが、方形波の方がより好ましい。
また、搬送ベルト51の裏側には、記録ヘッド34による印写領域に対応してガイド部材57を配置している。このガイド部材57は、上面が搬送ベルト51を支持する2つのローラ(搬送ローラ52とテンションローラ53)の接線よりも記録ヘッド35側に突出させることで搬送ベルト51の高精度な平面性を維持するようにしている。
この搬送ベルト51は、図示しない副走査モータによって駆動ベルトを介して搬送ローラ52が回転駆動されることによって図3のベルト搬送方向に周回移動する。
さらに、記録ヘッド34で記録された用紙42を排紙するための排紙部として、搬送ベルト51から用紙42を分離するための分離爪61と、排紙ローラ62及び排紙コロ63とを備え、排紙ローラ62の下方に排紙トレイ3を備えている。ここで、排紙ローラ62と排紙コロ63との間から排紙トレイ3までの高さは排紙トレイ3にストックできる量を多くするためにある程度高くしている。
また、装置本体1の背面部には両面ユニット71が着脱自在に装着されている。この両面ユニット71は搬送ベルト51の逆方向回転で戻される用紙42を取り込んで反転させて再度カウンタローラ46と搬送ベルト51との間に給紙する。また、この両面ユニット71の上面は手差しトレイ72としている。
さらに、図3に示すように、キャリッジ33の走査方向一方側の非印字領域には、記録ヘッド34のノズルの状態を維持し、回復するための維持回復機構81を配置している。
この維持回復機構81には、記録ヘッド34の各ノズル面をキャピングするための各キャップ部材(以下「キャップ」という。)82a〜82d(区別しないときは「キャップ82」という。)と、ノズル面をワイピングするためのブレード部材であるワイパーブレード83と、増粘した記録液を排出するために記録に寄与しない液滴を吐出させる空吐出を行うときの液滴を受ける空吐出受け84などを備えている。ここでは、キャップ82aを吸引及び保湿用キャップとし、他のキャップ82b〜82dは保湿用キャップとしている。
そして、この維持回復機構81による維持回復動作で生じる記録液の廃液、キャップ82に排出されたインク、あるいはワイパーブレード83に付着してワイパークリーナ85で除去されたインク、空吐出受け94に空吐出されたインクは図2の廃液タンク100に排出されて収容される。
また、図3に示すように、キャリッジ33の走査方向他方側の非印字領域には、記録中などに増粘した記録液を排出するために記録に寄与しない液滴を吐出させる空吐出を行うときの液滴を受ける空吐出受け88を配置し、この空吐出受け88には記録ヘッド34のノズル列方向に沿った開口89などを備えている。
次に、この画像形成装置における記録ヘッドを構成する液滴吐出ヘッドの一例について図4及び図5を参照して説明する。なお、図4は同ヘッドの液室長手方向に沿う断面説明図、図5は同ヘッドの液室短手方向(ノズルの並び方向)の断面説明図である。
この液滴吐出ヘッドは、例えば単結晶シリコン基板を異方性エッチングして形成した流路板101と、この流路板101の下面に接合した例えばニッケル電鋳で形成した振動板102と、流路板101の上面に接合したノズル板103とを接合して積層し、これらによって液滴(インク滴)を吐出するノズル104が連通する流路であるノズル連通路105及び液室106、液室106にインクを供給するための共通液室108に連通するインク供給口109などを形成している。
また、振動板102を変形させて液室106内のインクを加圧するための圧力発生手段(アクチュエータ手段)である電気機械変換素子としての2列(図6では1列のみ図示)の積層型圧電素子121と、この圧電素子121を接合固定するベース基板122とを備えている。なお、圧電素子121の間には支柱部123を設けている。この支柱部123は圧電素子部材を分割加工することで圧電素子121と同時に形成した部分であるが、駆動電圧を印加しないので単なる支柱となる。
また、圧電素子121には図示しない駆動回路(駆動IC)に接続するためのFPCケーブル22を接続している。
そして、振動板102の周縁部をフレーム部材130に接合し、このフレーム部材130には、圧電素子121及びベース基板122などで構成されるアクチュエータユニットを収納する貫通部131及び共通液室108となる凹部、この共通液室108に外部からインクを供給するためのインク供給穴132を形成している。このフレーム部材130は、例えばエポキシ系樹脂などの熱硬化性樹脂或いはポリフェニレンサルファイトで射出成形により形成している。
ここで、流路板101は、例えば結晶面方位(110)の単結晶シリコン基板を水酸化カリウム水溶液(KOH)などのアルカリ性エッチング液を用いて異方性エッチングすることで、ノズル連通路105、液室106となる凹部や穴部を形成したものであるが、単結晶シリコン基板に限られるものではなく、その他のステンレス基板や感光性樹脂などを用いることもできる。
振動板102は、ニッケルの金属プレートから形成したもので、例えばエレクトロフォーミング法(電鋳法)で作製しているが、この他、金属板や金属と樹脂板との接合部材などを用いることもできる。この振動板102に圧電素子121及び支柱部123を接着剤接合し、更にフレーム部材130を接着剤接合している。
ノズル板103は各液室106に対応して直径10〜30μmのノズル104を形成し、流路板101に接着剤接合している。このノズル板103は、金属部材からなるノズル形成部材の表面に所要の層を介して最表面に撥水層を形成したものである。なお、このノズル板103の表面が前述したノズル面34aとなる。
圧電素子121は、圧電材料151と内部電極152とを交互に積層した積層型圧電素子(ここではPZT)である。この圧電素子121の交互に異なる端面に引き出された各内部電極152には個別電極153及び共通電極154が接続されている。なお、この実施形態では、圧電素子121の圧電方向としてd33方向の変位を用いて液室106内インクを加圧する構成としているが、圧電素子121の圧電方向としてd31方向の変位を用いて加圧液室106内インクを加圧する構成とすることもできる。また、1つの基板122に1列の圧電素子121が設けられる構造とすることもできる。
このように構成した液滴吐出ヘッドヘッドにおいては、例えば圧電素子121に印加する電圧を基準電位から下げることによって圧電素子121が収縮し、振動板102が下降して液室106の容積が膨張することで、液室106内にインクが流入し、その後圧電素子121に印加する電圧を上げて圧電素子121を積層方向に伸長させ、振動板102をノズル104方向に変形させて液室106の容積/体積を収縮させることにより、液室106内の記録液が加圧され、ノズル104から記録液の滴が吐出(噴射)される。
そして、圧電素子121に印加する電圧を基準電位に戻すことによって振動板102が初期位置に復元し、液室106が膨張して負圧が発生するので、このとき、共通液室108から液室106内に記録液が充填される。そこで、ノズル104のメニスカス面の振動が減衰して安定した後、次の液滴吐出のための動作に移行する。
なお、このヘッドの駆動方法については上記の例(引き−押し打ち)に限るものではなく、駆動波形の与えた方によって引き打ちや押し打ちなどを行うこともできる。
次に、維持回復機構81の概要について図6を参照して説明する。なお、同図は同維持回復機構を一部展開した状態で示す模式的説明図である。
この維持回復機構81には、前述したように、吸引及び保湿用キャップ82aと保湿用キャップ82bを保持する保持機構を含むキャップホルダ201Aと、保湿用キャップ82cと保湿用キャップ82dを保持する保持機構を含むキャップホルダ201Bと、記録ヘッド34のノズル面34aを清浄化する(拭き取る)ための弾性体からなるブレードであるワイパーブレード83を保持するブレードホルダ203と、記録ヘッド34から印字に寄与しない液滴を吐出する空吐出動作(予備吐出動作)を行うための空吐出受け84が配置されている。
ここで、印字領域に最も近い側の吸引用及び保湿用キャップ82aには可撓性チューブ210を介して吸引手段であるチュービングポンプ(吸引ポンプ)211を接続している。したがって、記録ヘッド34の維持回復動作を行うときには、回復動作を行う記録ヘッド34をキャップ82aによってキャッピング可能な位置に選択的に移動させる。なお、この吸引用及び保湿用キャップ82aには図示しないが内部に保湿部材を設けて、保湿をすることにより本発明に係る維持回復動作を行なうときの後述する閾値を大きくして維持回復動作回数を低減でき、記録液の無駄な消費や回復動作にともなう印刷待機時間を短縮することができる。
また、これらのキャップホルダ201A、201Bの下方にはフレーム212に回転自在に支持したカム軸213を配置し、このカム軸213には、キャップホルダ201A、201Bを昇降させるためのキャップカム214A、214Bと、ブレードホルダ203を昇降させるためのワイパーカム215をそれぞれ設けている。
そして、チュービングポンプ211及びカム軸213を回転駆動するために、モータ221の回転をモータ軸221aに設けたモータギヤ222に、チュービングポンプ211のポンプ軸211aに設けたポンプギヤ223を噛み合わせ、更にこのポンプギヤ223と一体の中間ギヤ224に中間ギヤ225を介して一方向クラッチ227付きの中間ギヤ226を噛み合わせ、この中間ギヤ226と同軸の中間ギヤ228に中間ギヤ229を介してカム軸213に固定したカムギヤ230を噛み合わせている。
この維持回復機構81においては、モータ221が正転することによってモータギヤ222、中間ギヤ224、ポンプギヤ223、中間ギヤ225、226までが回転し、チュービングポンプ211の軸211aが回転することでチュービングポンプ211が作動して、吸引用キャップ82a内を吸引する(この動作を「キャップ内吸引」又は「ヘッド吸引」という。)。その他のギヤ228以降は一方向クラッチ227によって回転が遮断されるので回転(作動)しない。
また、モータ221が逆転することによって、一方向クラッチ227が連結されるので、モータ221の回転が、モータギヤ222、中間ギヤ224、ポンプギヤ223、中間ギヤ225、226、228、229を経てカムギヤ230に伝達され、カム軸213が回転する。このとき、チュービングポンプ211はポンプ軸211aの逆転では作動しない構造となっている。このカム軸213の回転によってキャップカム214A、214B及びワイパーカム215がそれぞれ所定のタイミングで上昇、下降する。
なお、記録ヘッド34のノズル面34aを清掃するときにはワイパーブレード83を上昇させた状態にして、記録ヘッド34をワイパーブレード83に相対的に移動させることによってノズル面34aをワイピングする。
この維持回復機構のように複数のキャップを備えて、複数のキャップのうちの少なくとも1つは吸引手段に連結(連通)されない保湿キャップとすることによって、本発明に係る維持回復動作回数を低減することができ、無駄な記録液の消費や回復動作にかかる時間を短くすることができる。
また、吸引キャップに対する記録ヘッドのみ維持回復動作を行なうようにすることで過不足のない回復動作を行なうことができる。さらに、記録ヘッドの数とキャップの数を同じにすることによって維持回復機構のサイズを大きくすることがなく、部品点数の削減、装置の小型化を図れる。
このように構成したこの画像形成装置においては、給紙トレイ2から用紙42が1枚ずつ分離給紙され、略鉛直上方に給紙された用紙42はガイド45で案内され、搬送ベルト51とカウンタローラ46との間に挟まれて搬送され、更に先端を搬送ガイド37で案内されて先端加圧コロ49で搬送ベルト51に押し付けられ、略90°搬送方向を転換される。
このとき、後述する制御部のACバイアス供給部315から帯電ローラ56に対してプラス出力とマイナス出力とが交互に繰り返すように、つまり交番する電圧が印加され、搬送ベルト51が交番する帯電電圧パターン、すなわち、周回方向である副走査方向に、プラスとマイナスが所定の幅で帯状に交互に帯電されたパターンが形成される。このプラス、マイナス交互に帯電した搬送ベルト51上に用紙42が給送されると、用紙42が搬送ベルト51に吸着され、搬送ベルト51の周回移動によって用紙42が副走査方向に搬送される。
そこで、キャリッジ33を移動させながら画像信号に応じて記録ヘッド34を駆動することにより、停止している用紙42にインク滴を吐出して1行分を記録し、用紙42を所定量搬送後、次の行の記録を行う。記録終了信号又は用紙42の後端が記録領域に到達した信号を受けることにより、記録動作を終了して、用紙42を排紙トレイ3に排紙する。
また、印字(記録)待機中にはキャリッジ33は維持回復機構81側に移動されて、キャップ82で記録ヘッド34がキャッピングされて、ノズルを湿潤状態に保つことによりインク乾燥による吐出不良を防止する。また、キャップ82で記録ヘッド34をキャッピングした状態で図示しない吸引ポンプによってノズルから記録液を吸引し(「ノズル吸引」又は「ヘッド吸引」という。)し、増粘した記録液や気泡を排出する回復動作を行う。また、記録開始前、記録途中などに記録と関係しないインクを吐出する空吐出動作を行う。これによって、記録ヘッド34の安定した吐出性能を維持する。なお、後述するように、この画像形成装置では、予め保持しているノズル面汚染許容閾値とインク吐出回数(液滴吐出回数)のカウント値に基づいて、ワイパーブレード83によって記録ヘッド34のノズル面34aを清掃する動作も行う。
次に、この画像形成装置で使用しているインク(記録液、以下「本インク」という。)の調整例について説明する。なお、これに限定されるものではない。
<製造例1インク>
(ブラックインク)
KM−9036(東洋インキ)(自己分散型顔料) 50重量%
グリセリン 10重量%
1,3−ブタンジオール 15重量%
2−エチル−1、3−ヘキサンジオール 2重量%
2−ピロリドン 2重量%
界面活性剤(1−9) 1重量%
シリコーン消泡剤KS508(信越化学) 0.1重量%
イオン交換水 残量
上記処方のインク組成物を作製し、室温にて充分に攪拌した後、平均孔径1.2μmのメンブレンフィルターにて濾過を行ない、製造例1インクを得た。
<製造例2インク>
(ポリマー溶液Aの調整)
機械式攪拌機、温度計、窒素ガス導入管、還流管及び滴下ロートを備えた1Lのフラスコ内を充分に窒素ガス置換した後、スチレン11.2g、アクリル酸2.8g、ラウリルメタクリレート12.0g、ポリエチレングリコールメタクリレート4.0g、スチレンマクロマー4.0g及びメルカプトエタノール0.4gを混合し、65℃に昇温した。次にスチレン100.8g、アクリル酸25.2g、ラウリルメタクリレート108.0g、ポリエチレングリコールメタクリレート36.0g、ヒドロキシルエチルメタクリレート60.0g、スチレンマクロマー36.0g、メルカプトエタノール3.6g、アゾビスメチルバレロニトリル2.4g及びメチルエチルケトン18gの混合溶液を2.5時間かけて、フラスコ内に滴下した。滴下後、アゾビスメチルバレロニトリル0.8g及びメチルエチルケトン18gの混合溶液を0.5時間かけて、フラスコ内に滴下した。65℃で1時間熟成した後、アゾビスメチルバレロニトリル0.8gを添加し、更に1時間熟成した。反応終了後、フラスコ内にメチルエチルケトン364gを添加し、濃度が50%のポリマー溶液800gを得た。このポリマー溶液の一部を乾燥し、ゲルパーミエイションクロマトグラフィー(標準:ポリスチレン、溶媒:テトラヒドロフラン)で測定したところ、重量平均分子量は15000であった。
(顔料含有ポリマー微粒子水分散体の調整)
ポリマー溶液A28gとC.I.ピグメントイエロー97を26g、1mol/Lの水酸化カリウム水溶液13.6g、メチルエチルケトン20g及びイオン交換水13.6gを充分に攪拌した後、ロールミルを用いて混練した。得られたペーストをイオン交換水200gに投入し、充分に攪拌した後、エバポレータ用いてメチルエチルケトン及び水を留去し、イエローポリマー微粒子の水分散体を得た。
(イエローインク)
イエローポリマー微粒子分散体 40重量%
グリセリン 8重量%
1、3−ブタンジオール 20重量%
2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール 2重量%
界面活性剤(1−8) 1.5重量%
シリコーン消泡剤KS508(信越化学社製) 0.1重量%
イオン交換水 残量
上記処方のインク組成物を作製し、室温にて充分に攪拌した後、平均孔径1.2μmのメンブレンフィルターにて濾過を行ない、製造例2インクを得た。
<製造例3インク>
(顔料含有ポリマー微粒子水分散体の調整)
顔料種をC.I.ピグメントレッド122に変えた他は同様にして、マゼンタポリマー微粒子の水分散体を得た。
(マゼンタインク)
マゼンタポリマー微粒子の分散体 50重量%
グリセリン 10重量%
1、3−ブタンジオール 18重量%
2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール 2重量%
界面活性剤(1−8) 1.5重量%
シリコーン消泡剤KS508(信越化学社製) 0.1重量%
イオン交換水 残量
上記処方のインク組成物を作製し、室温にて充分に攪拌した後、平均孔径1.2μmのメンブレンフィルターにて濾過を行ない、製造例3インクを得た。
<製造例4インク>
(顔料含有ポリマー微粒子水分散体の調整)
顔料種をC.I.ピグメントブルー15:3に変えた他は同様にして、シアンポリマー微粒子の水分散体を得た。
(シアンインク)
シアンポリマー微粒子分散体 40重量%
グリセリン 8重量%
1、3−ブタンジオール 20重量%
2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール 2重量%
界面活性剤(1−8) 1.5重量%
シリコーン消泡剤KS508(信越化学社製) 0.1重量%
イオン交換水 残量
上記処方のインク組成物を作製し、室温にて充分に攪拌した後、平均孔径1.2μmのメンブレンフィルターにて濾過を行ない、製造例4インクを得た。
上記製造例の各インクは、水分蒸発に伴う粘度上昇率(mPa・s/%)がインク全重量に対する水分蒸発率30%までは1.0以下であり、かつ、水分蒸発率30〜45%の間に粘度上昇率が50を越える点を持つこと、粘度上昇率が50を越える点での、インク中の着色剤の平均粒子径が、初期平均粒子径の5倍以下であり、かつ0.8μm以下となることが確認された。
このような記録液を使用することによって、前述したように、長期放置でもノズル目詰まりを起こさず、普通紙上での高画質化及び高速印字を達成できる。しかも、この記録液は、仮に、ノズル内の記録液が乾燥し増粘することによりノズルから吐出できなくなったとしても、顔料などが粗大粒子化してノズル詰まりを発生するわけではないため、簡単な維持回復動作により容易に回復できるという利点を有している。
次に、この画像形成装置の制御部の概要について図7を参照して説明する。なお、同図は同制御部の全体ブロック説明図である。
この制御部300は、装置全体の制御を司るCPU301と、CPU301が実行するプログラム、本発明において使用する所定インク吐出に対するノズル面汚染度合の値及びノズル面汚染許容閾値、駆動波形データ、その他の固定データを格納するROM302と、画像データ等を一時格納するRAM303と、装置の電源が遮断されている間もデータを保持するための不揮発性メモリ(NVRAM)304と、画像データに対する各種信号処理、並び替え等を行う画像処理やその他装置全体を制御するための入出力信号を処理するASIC305とを備えている。
また、この制御部300は、ホスト側とのデータ、信号の送受を行うためのI/F306と、記録ヘッド34の圧力発生手段を駆動制御するための駆動波形を生成する駆動波形生成部307と、ヘッドドライバ308と、主走査モータ310を駆動するための主走査モータ駆動部311と、副走査モータ312を駆動するための副走査モータ駆動部313と、帯電ローラ56にACバイアスを供給するACバイアス供給部315と、維持回復機構81のモータ221を駆動するための維持回復機構駆動部317と、搬送ベルト51の移動量及び移動速度に応じた検知信号を出力するエンコーダ321、環境温度及び環境湿度(環境湿度だけでも良い。)を検出する環境センサ322からの検知信号、図示しない各種センサからの検知信号を入力するためのI/O318などを備えている。この制御部300には、この装置に必要な情報の入力及び表示を行なうための操作/表示部5が接続されている。
制御部300は、パーソナルコンピュータ等の情報処理装置、イメージスキャナなどの画像読み取り装置、デジタルカメラなどの撮像装置などのホスト側からの印刷データ等をケーブル或いはネットを介してI/F316で受信する。
そして、CPU301は、I/F306に含まれる受信バッファ内の印刷データを読み出して解析し、ASIC305にて必要な画像処理、データの並び替え処理等を行い、記録ヘッド34の1行分に相当する画像データ(ドットパターンデータ)を、クロック信号に同期して、ヘッドドライバ308にシリアルデータで送出し、また所定のタイミングでラッチ信号や制御信号をヘッドドライバ308に送出する。
そして、CPU301は、I/F306に含まれる受信バッファ内の印刷データを読み出して解析し、ASIC305にて必要な画像処理、データの並び替え処理等を行ってヘッドドライバ308に画像データを転送する。なお、画像出力するためのドットパターンデータの生成は、例えばROM302にフォントデータを格納して行っても良いし、ホスト側のプリンタドライバで画像データをビットマップデータに展開してこの装置に転送するようにしても良い。
駆動波形生成部307は、駆動波形のパターンデータをD/A変換するD/A変換器等で構成され、1の駆動パルス(駆動信号)又は複数の駆動パルス(駆動信号)で構成される駆動波形をヘッドドライバ308に対して出力する。
ヘッドドライバ308は、シリアルに入力される記録ヘッド34の1行分に相当する画像データ(ドットパターンデータ)に基づいて駆動波形生成部307から与えられる駆動波形を構成する駆動パルスを選択的に記録ヘッド34の圧力発生手段に印加して記録ヘッド34を駆動する。
さらに、制御部300は、帯電ローラ56に対してACバイアス供給部315から供給するACバイアスのON/OFF制御を行うことで、搬送ベルト51上の帯電パターン(付与電荷量)を制御する。
次に、この画像形成装置における記録ヘッド34を駆動するための駆動波形について図8及び図9を参照して説明する。
ここでは、図8に示すように、駆動波形生成部307から例えば1駆動周期内で4個の駆動パルスP1ないしP4を含む駆動波形を生成して出力する。この駆動波形は、小滴吐出用及び大滴吐出用の駆動パルスP1と、中滴吐出用及び大滴吐出用の駆動パルスP2と、大滴吐出時にだけ使用する駆動パルスP3、P4で構成され、吐出する滴の大きさに応じて使用する駆動パルスを選択するようにしている。
小滴用駆動パルスP1は、図9(a)に示すように、基準電位Vrefから電圧Vaまで立ち下がる波形要素S1、波形要素S1に続いて電圧Vaを保持する波形要素S2、波形要素S2に続いて電圧Vaから基準電位Vrefよりも低い電圧Vbまで立ち上がる波形要素S3、波形要素S3に続いて、段階的に(滴吐出が生じないように)所要の保持時間を経て基準電位Vrefまで立ち上がり、更に所要時間保持した後基準電位Vrefより高い電圧Vcまで立ち上がる波形要素S4、波形要素S4に続いて所要時間保持する波形要素S5、波形要素S5に続いて電圧Vcから基準電位Vrefまで立ち下がる波形要素S6とを含んでいる。
この駆動パルスP1を記録ヘッド34の圧電素子121に与えると、波形要素S1で圧電素子121が収縮して振動板102が下降して液室106の容積が膨張し、波形要素S2で膨張状態に保持され、波形要素S3で圧電素子121が伸張して振動板102が押し上げられて液室106の容積が収縮し、これによってノズル104から液滴(主滴)が吐出されるが、このとき、基準電位Vrefまで立ち上げないので、吐出される液滴は小さな滴(小滴)となる。
そして、この主滴吐出後、波形要素S4で振動板102を徐々に基準位置よりも押し込んで滴吐出に伴ってメニスカスが振動板側に向うときに液室容積を収縮させ、波形要素S5でその状態に保持することで液室の固有振動に伴うメニスカス振動を抑制し、所要時間が経過した後、波形要素S6により電圧Vcから基準電位Vrefに立ち下げて振動板102を基準位置に復元する。
また、中滴及び大滴用駆動パルスP2及び大滴用駆動パルスP4は、図9(b)に示すように、基準電位Vrefから電圧Vaまで立ち下がる波形要素S1、波形要素S1に続いて電圧Vaを保持する波形要素S2、波形要素S2に続いて電圧Vaから基準電位Vrefよりも高い電圧Vcまで立ち上がる波形要素S7、波形要素S7に続いて、液室の固有振動周期Tcに対してTc・1/2〜Tc・2/3の範囲内の保持時間Twの間、電圧Vcに保持する波形要素S8、波形要素S8に続いて電圧Vcから基準電位Vrefまで立ち下がる波形要素S9とを含んでいる。
この駆動パルスP2、P4を記録ヘッド34の圧電素子121に与えると、波形要素S1で圧電素子121が収縮して振動板102が下降して液室106の容積が膨張し、波形要素S2で膨張状態に保持され、波形要素S7で圧電素子121が伸張して振動板102が基準位置よりも押し込まれて液室106の容積が収縮し、これによってノズル104から液滴(主滴)が吐出され、このときは電圧Vcまで立ち上げるので、駆動パルスP1の場合よりも大きな滴(中滴)が吐出される。
そして、この主滴吐出後、波形要素S8で振動板102をその位置に保持することで液室容積を収縮状態に保持し、液室の固有振動周期Tcに対してTc・1/2〜Tc・2/3の範囲内の保持時間Twが経過した後、波形要素S9により電圧Vcから基準電位Vrefに立ち下げて振動板102を基準位置に復元する。
この場合、液室の固有振動周期Tcに対してTc・1/2〜Tc・2/3の範囲内の保持時間Twだけ電圧Vdに保持した後立ち下げることによって、主滴吐出に伴ってメニスカスが液室の固有振動に応じて下がる方向に移動するときに、振動板102を液室106容積が拡大する方向に下げるので、液室106の固有振動に液室容積の拡大が重畳されてメニスカス振動が加振されるが、保持時間がTc・1/2以上であることから液室の固有振動による振れが小さくなり、その結果メニスカス速度が速くなるとともに、主滴に後の固有振動によって圧力がノズル側に向うときに吐出されるサテライト滴が主滴にならず、しかも、サテライト滴の滴速度は速くなって、主滴とサテライト滴との間のミストが少なくなる。この駆動波形(駆動パルス)を加制振駆動波形という。
大滴用駆動パルスP3は、図9(c)に示すように、基準電位Vrefから電圧Vaまで立ち下がる波形要素S1、波形要素S1に続いて電圧Vaを保持する波形要素S2、波形要素S2に続いて電圧Vaから基準電位Vrefよりも高い電圧Vcまで立ち上がる波形要素S7、波形要素S7に続いて所定時間電圧Vcに保持する波形要素S10、波形要素S10に続いて電圧Vcから更に電圧Vdまで立ち上げた後所要時間保持する波形要素S11、波形要素S11に続いて基準電位Vrefまで立ち下がる波形要素S12とを含んでいる。
この駆動パルスP3を記録ヘッド34の圧電素子121に与えた場合、上述した駆動パルスP2、P4と同様にして滴吐出が行なわれた後、波形要素S11によって、主滴吐出に伴ってメニスカスが液室の固有振動に応じて下がる方向に移動するのに対して振動板102を液室106側にさらに押し込むことで振動が抑制される(制振される)。この駆動パルスP3を制振駆動波形という。
そして、大滴を吐出させるときには図8に示すように駆動パルスP1ないしP4を印加して4個の液滴を吐出させ、飛翔中に合体させて大きな1滴を形成し、中滴を吐出させるときには駆動パルスP2を選択して印加し、小滴を吐出させるときには駆動パルスP1を選択して印加することで、滴不吐出を含めて4階調のドットを形成することができる。
次に、このように構成したこの画像形成装置(インクジェット記録装置)における回復動作に関する制御について図10以降をも参照して説明する。
まず、所定状態にある記録ヘッドがキャップ82aによってキャッピングされていない状態の累積時間である非キャッピング累積時間(デキャップ累積時間、非覆蓋累積時間)tdcを計測するデキャップ累積時間計測処理について図10を参照して説明する。
このデキャップ累積時間計測処理では、リセット条件として維持回復機構81によるヘッド吸引(ノズル吸引)動作が行なわれたか否かを判別し、ヘッド吸引動作が行われたときに、デキャップ累積時間tdcを計測するタイマ(カウンタ)をリセットし、スタートする。
つまり、キャップが記録ヘッドをキャッピングしていないデキャップ時間(非キャッピング時間)を計測することによって、キャップ内インクの乾燥程度を把握することができる。また、デキャップ時間の累積(デキャップ累積時間)を計測することによって、キャップ内インクの乾燥程度に影響を与えないようなキャッピングを排除することができる。つまり、一回のデキャップ動作で経過した時間としないで累積時間としているのは、キャッピングして、印字して、キャッピングして、というような細切れの動作であってもデキャップ時間として累積して計測するためである。このような細切れの動作では、キャッピング時にノズル内から水分を奪うものの、キャップ内残存インクの乾燥度合いが改善される程度のものではなく、これによってデキャップ時間をリセットしたのでは適切にキャップ内インクの乾燥程度を正確に把握できなくなるからである。
また、デキャップ累積時間tdcは、キャップ内インクの乾燥程度をキャップ内がインクで濡れて乾燥状態が改善されることで行われるのが合理的であるので、インク吸引動作(ヘッド吸引動作)を伴う維持回復動作が行なわれたときには、デキャップ累積時間tdcをリセットする。これによって、無駄なタイミングで自動回復動作を行なうことを防止することができる。
この場合、全ての吸引動作でなくてもよい。例えば、クリーニングのように少量のインクしか排出されない場合は、濡らす効果も小さいため、デキャップ累積時間tdcをリセットしないようにすることもできる。また、インク吸引(ヘッド吸引)による排出インクが所定量よりも多い場合、或いは、クリーニング2回以上、もしくは、大気開放充填(サブタンク35を大気開放状態にしてインクカートリッジ10からインクを補充供給する動作)やリフレッシングの場合というように限定したリセット条件でリセットするようにすることもできる。
次に、直前の吐出動作からキャップ82aによって記録ヘッド34がキャッピングされた状態が継続した吐出後キャップ時間(吐出後キャッピング時間、吐出後覆蓋時間)tcを計測するキャップ時間計測処理について図11を参照して説明する。
このキャップ時間計測処理では、吐出動作が行なわれたか否かを判別し、吐出動作が行なわれたときにはその時の時刻(当該時刻)tcpを記憶し、次いで記録命令を受けたか否かを判別し、記録命令を受けたときにはその時の時刻(現在時刻)tcnを読み出して、(現在時刻tcn―当該時刻tcp)を演算して吐出後キャップ時間tcを計測する。
つまり、吐出後キャッピング時間(吐出後キャップ時間)tcを計測することによって、キャップ内に残存する乾燥インクに記録ヘッドのノズル面が晒されている時間を把握することができる。これによって、ノズル内部のインクの増粘の程度、即ち、吐出不良発生リスクを把握することができる。
この場合、直前の吐出動作から次に記録命令を受けるまで、例えば、ホスト側のパソコンからの印字命令を受けたとき、インクジェット方式の複合機(MFP)などではコピースタート指令を受けたとき、FAX受信に伴う印字指令が出されたときまでの時間(あるいは当該記録命令に基づいて記録動作を開始する直前までの時間)を直前の吐出動作から経過した時間として計測している。これらは、上述したように、直前の吐出動作及びそれに類する時刻を記憶領域に保持し、記録命令を受けた時刻或いはそれに類する時刻から記憶領域に記憶している直前の吐出動作及びそれに類する時刻を減算することで得られる。
次に、自動回復処理の第1例について図12を参照して説明する。なお、自動回復処理はキャップ82aによって記録ヘッド34がキャッピングされた時に実行する。
この自動回復処理では、デキャップ累積時間tdcを読み込み、デキャップ累積時間tdcが予め定めた時間閾値Tdc以上である(tdc≧Tdc)か否かを判別し、tdc≧Tdcであれば、吐出後キャップ時間tcを読み込み、吐出後キャップ時間tcが予め定めた時間閾値Tc以上である(tc≧Tc)か否かを判別し、tc≧Tcであれば、維持回復機構82による回復動作を行い、tdc≧Tdc又はtc≧Tcでないとき(tdc<Tdc又はtc<Tcであるとき)には回復動作を行なわないでこの処理を抜ける。
つまり、ここでは、所定状態にある記録ヘッド34がキャップ82aによりキャッピングされていない状態の非キャッピング累積時間(デキャップ時間)tdcと、直前の吐出動作からキャップ82aによるキャッピングがされた後の吐出後キャッピング時間(キャップ時間)tcとに基づいて維持回復機構による維持回復動作を行なうようにしている。
前述したように、デキャップ累積時間によりキャップ内インクの乾燥程度を把握し、キャップ時間により、その乾燥インクにヘッドが晒されている時間を把握することで、キャップ内残留インクによるノズル内部のインクの増粘の程度、即ち、吐出不良発生リスクを把握して、吐出不良発生リスクが高まったときには自動的に回復動作を行なって記録ヘッドのノズルを元の状態に戻すことによって、吐出不良に伴う画像品質の低下を低減することができる。
ここで、デキャップ累積時間tdcが長くなることはキャップ82aが開放状態にある時間が長くなることであり、キャップ時間tcが長くなることはキャップ82a内の残留インクに記録ヘッド34のノズルが晒されている時間が長くなる、つまり、ノズル内のインクから水分が残留インクに吸収されて増粘する程度が高くなるということである。
そこで、これらのデキャップ累積時間tdcが予め定めた時間閾値Tdc以上になったときで、しかも、吐出後キャップ時間tcが予め定めた所定時間閾値Tc以上になったときには、記録ヘッドのノズル内インクが増粘したものとして回復動作を行なうのである。
したがって、デキャップ累積時間tdcに対する時間閾値Tdc、及び、吐出後キャップ時間tcに対する時間閾値Tcは、上述したようなキャップ内インクの乾燥程度及び当該乾燥インクにヘッドが晒されていることでノズル内インクが増加する程度に応じて定めることになる。
次に、自動回復処理の第2例について図13を参照して説明する。
この処理では、予め環境湿度に応じて複数の時間閾値Tdc、TcをROM302などの記憶手段(格納手段)に記憶しておく。
そして、この自動回復処理では、デキャップ累積時間tdcを読み込み、環境センサ322の検知結果に基づいて得られた環境湿度に対応する時間閾値Tdcを読み込み、デキャップ累積時間tdcが予め定めた時間閾値Tdc以上である(tdc≧Tdc)か否かを判別し、tdc≧Tdcであれば、吐出後キャップ時間tcを読み込み、環境センサ322の検知結果に基づいて得られた環境湿度に対応する時間閾値Tcを読み込み、吐出後キャップ時間tcが予め定めた時間閾値Tc以上である(tc≧Tc)か否かを判別し、tc≧Tcであれば、維持回復機構82による回復動作を行い、tdc≧Tdc又はtc≧Tcでないとき(tdc<Tdc又はtc<Tcであるとき)には回復動作を行なわないでこの処理を抜ける。
このように、環境湿度の検出結果に基づいて時間閾値Tdc及び時間閾値Tcの少なくともいずれか一方(上記の例では両者)を変更することによって、環境湿度に応じて過不足のない回復動作を行なうことができる。
すなわち、インクの増粘の程度は環境湿度によって影響を受け、湿度が相対的に低いほど乾燥増粘しやすく、湿度が相対的に高いほど乾燥増粘しにくい傾向にある。したがって、時間閾値Tdc、Tcを一定値とした場合、環境によっては自動回復動作が多すぎて無駄なインク消費や印刷待機時間が長くなり、逆に、自動回復動作が少なすぎて吐出不良を生じやすくなる。そこで、時間閾値Tdc、Tcを環境湿度の検出結果に応じて変更することによって適切なタイミングで回復動作を行なうことができる。
したがって、また、時間閾値Tdc、Tcのいずれにおいても、環境湿度が高い場合の時間閾値をTHHとし、環境湿度が低い場合の時間閾値をTLHとするとき、時間閾値THHと時間閾値TLHとの間に、THH≧TLH の関係、即ち、環境湿度が高い方が乾燥の程度が小さいので環境湿度が低いときよりも時間閾値を長くする関係に設定することが好ましい。
次に、自動回復処理の第3例について図14を参照して説明する。
この処理では、ROM302などの記憶手段(格納手段)に記憶しておく時間閾値Tdc、Tcを一定値とし、環境湿度の検出結果に応じた補正係数を乗じた値を、比較のための時間閾値Tdc、Tcとする。
つまり、この自動回復処理では、デキャップ累積時間tdcを読み込み、環境センサ322の検知結果に基づいて得られた環境湿度に対応する補正係数を時間閾値Tdcに乗じて時間閾値Tdcとし、デキャップ累積時間tdcが予め定めた時間閾値Tdc以上である(tdc≧Tdc)か否かを判別し、tdc≧Tdcであれば、吐出後キャップ時間tcを読み込み、環境センサ322の検知結果に基づいて得られた環境湿度に対応する補正係数を時間閾値Tcに乗じて時間閾値Tcとし、吐出後キャップ時間tcが予め定めた時間閾値Tc以上である(tc≧Tc)か否かを判別し、tc≧Tcであれば、維持回復機構82による回復動作を行い、tdc≧Tdc又はtc≧Tcでないとき(tdc<Tdc又はtc<Tcであるとき)には回復動作を行なわないでこの処理を抜ける。
この場合でも、環境湿度の検出結果に基づいて時間閾値Tdc及び時間閾値Tcの少なくともいずれか一方(上記の例では両者)を変更するので、環境湿度に応じて過不足のない回復動作を行なうことができる。
なお、環境湿度によって閾値を変更する例としては、環境湿度を常にモニタリングしてそれにより時間計測値に重み付けを行うこともできる。ただし、この場合には、実際には複雑な制御になるので、キャッピング動作のたびに湿度を計測し、その検出湿度で判断する方が簡単であり、キャッピング時の湿度計測値であれば、少なくとも最終のデキャップ時の湿度を反映しているから処理としても問題はない。
次に、自動回復処理の第4例について図15を参照して説明する。
この処理では、ROM302などの記憶手段(格納手段)に記憶しておく時間閾値Tdc、Tcとして複数の時間閾値を設定している。ここでは、デキャップ累積時間tdc用の時間閾値Tdcとして、2つの時間閾値TdcLとTdcS(TdcL>TdcS)を設定している。
そして、この自動回復処理では、デキャップ累積時間tdcを読み込み、デキャップ累積時間tdcが予め定めた時間閾値TdcL以上である(tdc≧TdcL)か否かを判別し、tdc≧TdcLであれば、吐出後キャップ時間tcを読み込み、吐出後キャップ時間tcが予め定めた時間閾値Tc以上である(tc≧Tc)か否かを判別し、tc≧Tcであれば、維持回復機構82による回復動作Aを行い、tc≧Tcでないとき(tc<Tcであるとき)には回復動作を行なわないでこの処理を抜ける。
また、デキャップ累積時間tdcが予め定めた時間閾値TdcL以上でない(tdc<TdcL)であるときには、次に、デキャップ累積時間tdcが予め定めた時間閾値TdcS以上である(tdc≧TdcS)か否かを判別し、tdc≧TdcSであれば、吐出後キャップ時間tcを読み込み、吐出後キャップ時間tcが予め定めた時間閾値Tc以上である(tc≧Tc)か否かを判別し、tc≧Tcであれば、維持回復機構82による回復動作Bを行い、tc≧Tcでないとき(tc<Tcであるとき)には回復動作を行なわないでこの処理を抜ける。
さらに、デキャップ累積時間tdcが予め定めた時間閾値TdcS以上でもない(tdc<TdcS)ときには、そのままこの処理を抜ける。
つまり、ここでは時間閾値Tdcを複数設定して、計測したデキャップ累積時間Tdcがいずれの時間閾値以上であるかを判別して、各時間閾値に応じた内容の回復動作(A又はB)を実行するようにしている。これによって、事細かに維持回復動作を行なう条件を設定することができ、より無駄な回復動作を行なわないで済むようになる。例えば、これにより比較的軽度の吐出不良状態が予測されれば、短時間でインク排出量の少ない維持回復動作でよく、比較的重度の吐出不良状態が予測されれば、吸引動作を含む時間や排出インク量の多い維持回復動作を実施することができ、回復に要する時間やインクの無駄な消費をより一層低減することができる。
この場合、最も軽度の場合(上記の例では最小の時間閾値TdcSの場合)には、例えば、空吐出動作のみで対応することができ、重度になる前に空吐出させることによりインク消費量を低減することもできる。
次に、自動回復処理の第5例について図16を参照して説明する。
この処理でも、ROM302などの記憶手段(格納手段)に記憶しておく時間閾値Tdc、Tcとして複数の時間閾値を設定している。ここでは、キャップ時間tc用の時間閾値Tcとして、2つの時間閾値TcLとTcS(TcL>TcS)を設定している。
そして、この自動回復処理では、デキャップ累積時間tdcを読み込み、デキャップ累積時間tdcが予め定めた時間閾値Tdc以上である(tdc≧Tdc)か否かを判別し、tdc≧Tdcであれば、吐出後キャップ時間tcを読み込み、吐出後キャップ時間tcが予め定めた時間閾値TcL以上である(tc≧TcL)か否かを判別し、tc≧TcLであれば、維持回復機構82による回復動作Aを行う。
これに対して、tc≧TcLでないとき(tc<TcLであるとき)には、吐出後キャップ時間tcが予め定めた時間閾値TcS以上である(tc≧TcS)か否かを判別し、tc≧TcSであれば、維持回復機構82による回復動作Bを行う。
また、デキャップ累積時間tdcが予め定めた時間閾値Tdc以上でない(tdc<Tdc)とき、キャップ時間tcが予め定めた時間閾値TcS以上でない(tc<TcS)ときには、回復動作を行なわないでこの処理を抜ける。
つまり、ここでは時間閾値Tcを複数設定して、計測したキャップ時間Tcがいずれの時間閾値以上であるかを判別して、各時間閾値に応じた内容の回復動作(A又はB)を実行するようにしている。これによって、前述したように、事細かに維持回復動作を行なう条件を設定することができ、より無駄な回復動作を行なわないで済むようになる。例えば、これにより比較的軽度の吐出不良状態が予測されれば、短時間でインク排出量の少ない維持回復動作でよく、比較的重度の吐出不良状態が予測されれば、吸引動作を含む時間や排出インク量の多い維持回復動作を実施することができ、回復に要する時間やインクの無駄な消費をより一層低減することができる。
この場合、最も軽度の場合(上記の例では最小の時間閾値TcSの場合)には、例えば、空吐出動作のみで対応することができ、重度になる前に空吐出させることによりインク消費量を低減することもできる。
なお、これらの第4例及び第5例では、時間閾値Tdc又は時間閾値Tcを2つ設定した例で説明しているが、3つ以上の閾値を設定することもでき、また、時間閾値Tdc及び時間閾値Tcのいずれも2つ以上設定した構成とすることもできる。
これをまとめると、時間閾値Tdc及び時間閾値Tcの少なくともいずれか一方は、複数の閾値を有し、相対的に大きな閾値TLで行なう維持回復動作と相対的に小さな閾値TSで行なう維持回復動作とを異ならせて、少なくとも小さな閾値TSで行なう維持回復動作の方が動作所要時間が短くなるようにすることで、回復動作による時間及び無駄なインク消費を低減することができる。そして、この場合、複数の時間閾値のうち最小閾値で行なう維持回復動作は記録液吐出動作(空吐出動作)とすることで、より一層で無駄なインク消費を低減する。
以上のような処理を行なうことによって、特に、少なくとも水に分散する着色剤、湿潤剤、浸透性向上剤を含み、水分蒸発に伴う粘度上昇率(mPa・s/%)が記録液全重量に対する水分蒸発率30%までは1.0以下であり、かつ、水分蒸発率30〜45%の間に粘度上昇率が50を越える点を持つように構成された記録液を用いた場合でも、キャップ内残留記録液がノズル内の水分を吸収して吐出不良を生じさせることを適切に防止して、画像品質の低下を抑制することができる。
この場合の記録液が、粘度上昇率が50を越える点での、記録液中の着色剤の平均粒子径が、初期平均粒子径の5倍以下であり、かつ0.8μm以下となるように処方された記録液であっても同様の効果が得られ、しかもこのような記録液を用いることで普通紙に対する高速高画質記録を行うことができるようになる。
なお、上記各実施形態では本発明に係る画像形成装置としてプリンタ構成で説明したが、これに限るものではなく、例えば、プリンタ/ファックス/コピア複合機などの画像形成装置に適用することができる。また、インク以外の液体である記録液や定着処理液などを用いる画像形成装置にも適用することができる。
本発明に係る画像形成装置の一例を示す前方側から見た斜視説明図である。 同画像形成装置の機構部の概略を示す構成図である。 同機構部の要部平面説明図である。 同画像形成装置の記録ヘッドを構成する液滴吐出ヘッドの一例を示す液室長手方向に沿う断面説明図である。 同ヘッドの液室短手方向に沿う断面説明図である。 同画像形成装置の維持回復機構の展開模式的説明図である。 同画像形成装置の制御部の概要を説明するブロック説明図である。 同制御部が記録ヘッドに与える駆動波形の一例を説明する説明図である。 同駆動波形の各駆動パルスの説明に供する説明図である 同制御部が行うデキャップ時間計測処理の一例を示すフロー図である。 同制御部が行うキャップ時間計測処理の一例を示すフロー図である。 同制御部が行う自動回復処理の第1例を示すフロー図である。 同制御部が行う自動回復処理の第2例を示すフロー図である。 同制御部が行う自動回復処理の第3例を示すフロー図である。 同制御部が行う自動回復処理の第4例を示すフロー図である。 同制御部が行う自動回復処理の第5例を示すフロー図である。
符号の説明
10…インクカートリッジ
33…キャリッジ
34…記録ヘッド
35…サブタンク
51…搬送ベルト
52…搬送ローラ
53…従動ローラ
56…帯電ローラ
81…維持回復機構
82a…吸引及び保湿用キャップ
82b〜82d…保湿用キャップ
83…ワイパーブレード
84…空吐出受け
300…制御部
315…ACバイアス供給部
317…維持回復機構駆動部
322…環境センサ

Claims (14)

  1. 記録液の液滴を吐出するノズルを有する記録ヘッドと、この記録ヘッドのノズル面をキャッピングするキャップ部材及びこのキャップ部材の連結された吸引手段を含む維持回復機構とを備え、前記記録ヘッドのノズルから液滴を吐出して被記録媒体上に画像を形成する画像形成装置において、
    所定状態にある前記記録ヘッドが前記キャップ部材によりキャッピングされていない状態の非キャッピング累積時間tdcと、直前の吐出動作から前記キャップ部材によるキャッピングがされた後の吐出後キャッピング時間tcとに基づいて、前記維持回復機構による維持回復動作を行なわせる手段を備えていることを特徴とする画像形成装置。
  2. 請求項1に記載の画像形成装置において、前記非キャッピング累積時間tdcは前記キャッピング手段で前記記録ヘッドのノズル面をキャッピングした状態で前記ノズルからの吸引を行なうノズル吸引動作が行われたときにリセットされることを特徴とする画像形成装置。
  3. 請求項1又は2に記載の画像形成装置において、前記吐出後キャッピング時間tcは直前に吐出動作から次の記録命令を受けるまで又は記録開始直前までの時間であることを特徴とする画像形成装置。
  4. 請求項1ないし3のいずれかに記載の画像形成装置において、前記非キャッピング累積時間tdcが所定時間閾値Tdc以上、かつ、前記吐出後キャッピング時間tcが所定時間閾値Tc以上の条件になったときに、維持回復動作が行なわれることを特徴とする画像形成装置。
  5. 請求項4に記載の画像形成装置において、環境湿度の検出結果に基づいて前記時間閾値Tdc及び時間閾値Tcの少なくともいずれか一方を変更することを特徴とする画像形成装置。
  6. 請求項5に記載の画像形成装置において、環境湿度が高い場合の時間閾値をTHHとし、環境湿度が低い場合の時間閾値をTLHとするとき、時間閾値THHと時間閾値TLHとの間に、THH≧TLH の関係が成り立つことを特徴とする画像形成装置。
  7. 請求項4ないし6のいずれかに記載の画像形成装置において、前記時間閾値Tdc及び時間閾値Tcの少なくともいずれか一方が、少なくとも相対的に大きな閾値TLと小さな閾値TLとを取り、大きな閾値TLに基づいて行なわれる維持回復動作に対して、小さな閾値TSとに基づいて行なわれる維持回復動作の方が動作所要時間が短いことを特徴とする画像形成装置。
  8. 請求項7に記載の画像形成装置において、前記時間閾値のうちの最小閾値以上で行なわれる維持回復動作が液滴吐出動作であることを特徴とする画像形成装置。
  9. 請求項1ないし8のいずれかに記載の画像形成装置において、前記記録液が、少なくとも水に分散する着色剤、湿潤剤、浸透性向上剤を含み、水分蒸発に伴う粘度上昇率(mPa・s/%)が記録液全重量に対する水分蒸発率30%までは1.0以下であり、かつ、水分蒸発率30〜45%の間に粘度上昇率が50を越える点を持つように構成された記録液であることを特徴とする画像形成装置。
  10. 請求項9に記載の画像形成装置において、前記記録液が、粘度上昇率が50を越える点での、記録液中の着色剤の平均粒子径が、初期平均粒子径の5倍以下であり、かつ0.8μm以下となるように処方された記録液であることを特徴とする画像形成装置。
  11. 請求項1ないし10のいずれかに記載の画像形成装置において、前記維持回復機構は複数のキャップ部材を備え、この複数のキャップ部材のうちの少なくとも1つのキャップ部材は前記吸引手段に連結されていないことを特徴とする画像形成装置。
  12. 請求項1ないし11のいずれかに記載の画像形成装置において、前記吸引手段が連結されたキャップ部材の内部には保湿部材が設けられていることを特徴とする画像形成装置。
  13. 請求項1ないし12のいずれかに記載の画像形成装置において、前記非キャッピング累積時間tdcと吐出後キャッピング時間tcとが所定条件を満たすときに前記吸引手段が連結されたキャップ部材に対応する記録ヘッドの維持回復動作をすることを特徴とする画像形成装置。
  14. 請求項1ないし13のいずれかに記載の画像形成装置において、前記記録ヘッドの数とキャップ部材の数が同じであることを特徴とする画像形成装置。
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