以下、本発明の実施形態について添付図面を参照して説明する。図1は本発明に係る画像形成装置の一例を示す同画像形成装置を前方側から見た斜視説明図である。
この画像形成装置は、装置本体1と、装置本体1に装着された用紙を装填するための給紙トレイ2と、装置本体1に着脱自在に装着されて画像が記録(形成)された用紙をストックするための排紙トレイ3とを備えている。さらに、装置本体1の前面の一端部側(給排紙トレイ部の側方)には、前面から装置本体1の前方側に突き出し、上面よりも低くなったインクカートリッジを装填するためのカートリッジ装填部4を有し、このカートリッジ装填部4の上面は操作ボタンや表示器などを設ける操作/表示部5としている。
このカートリッジ装填部4には、色の異なる記録液(インク)、例えば黒(K)インク、シアン(C)インク、マゼンタ(M)インク、イエロー(Y)インクをそれぞれ収容した複数の記録液カートリッジであるインクカートリッジ10k、10c、10m、10y(色を区別しないときは「インクカートリッジ10」という。)を、装置本体1の前面側から後方側に向って挿入して装填可能とし、このカートリッジ装填部4の前面側には、インクカートリッジ10を着脱するときに開く前カバー(カートリッジカバー)6を開閉可能に設けている。
また、操作/表示部5には、各色のインクカートリッジ10k、10c、10m、10yの装着位置(配置位置)に対応する配置位置で、各色のインクカートリッジ10k、10c、10m、10yの残量がニアーエンド及びエンドになったことを表示するための各色の残量表示部11k、11c、11m、11yを配置している。さらに、この操作/表示部5には、電源ボタン12、用紙送り/印刷再開ボタン13、キャンセルボタン14も配置している。
次に、この画像形成装置の機構部について図2及び図3を参照して説明する。なお、図2は同機構部の全体構成を説明する概略構成図、図3は同機構部の要部平面説明図である。
図示しない左右の側板間に横架したガイド部材であるガイドロッド21とステー22とでキャリッジ23を主走査方向に摺動自在に保持し、主走査モータ24によって駆動プーリ25と従動プーリ26間に架け渡したタイミングベルト27を介して図3で矢示方向(キャリッジ走査方向:主走査方向)に移動走査する。
このキャリッジ23には、イエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)、ブラック(Bk)の各色のインク滴を吐出する液滴吐出ヘッドからなる記録ヘッド31k、31c、31m、31y(区別しないときは「記録ヘッド31」という。)を複数のインク吐出口を主走査方向と交叉する方向に配列し、インク滴吐出方向を下方に向けて装着している。
記録ヘッド31を構成するインクジェットヘッドとしては、圧電素子などの圧電アクチュエータ、発熱抵抗体などの電気熱変換素子を用いて液体の膜沸騰による相変化を利用するサーマルアクチュエータ、温度変化による金属相変化を用いる形状記憶合金アクチュエータ、静電力を用いる静電アクチュエータなどを、液滴を吐出するための圧力を発生する圧力発生手段として備えたものなどを使用できる。
また、キャリッジ23には、記録ヘッド31に各色のインクを供給するための各色のサブタンク32を搭載している。この各色のサブタンク32には各色のインク供給チューブを介して、カートリッジ装填部4に装着された各色のインクカートリッジ10から各色のインクが補充供給される。
一方、給紙トレイ2の用紙積載部(圧板)41上に積載した用紙42を給紙するための給送手段である給紙部として、用紙積載部41から用紙42を1枚ずつ分離給送する半月コロ(給紙コロ)43及び給紙コロ43に対向し、摩擦係数の大きな材質からなる分離パッド44を備え、この分離パッド44は給紙コロ43側に付勢されている。
そして、この給紙部から給紙された用紙42を記録ヘッド31の下方側に送り込むために、用紙42を案内するガイド部材45と、カウンタローラ46と、搬送ガイド部材47と、先端加圧コロ49を有する押さえ部材48とを備えるとともに、給送された用紙42を静電吸着して記録ヘッド31に対向する位置で搬送するための搬送手段である搬送ベルト51を備えている。
この搬送ベルト51は、無端状ベルトであり、搬送ローラ52とテンションローラ53との間に掛け渡されて、ベルト搬送方向(副走査方向)に周回するように構成している。この搬送ベルト51は、例えば、抵抗制御を行っていない純粋な厚さ40μm程度の樹脂材、例えばETFEピュア材で形成した用紙吸着面となる表層と、この表層と同材質でカーボンによる抵抗制御を行った裏層(中抵抗層、アース層)とを有している。
そして、この搬送ベルト51の表面を帯電させるための帯電手段である帯電ローラ56を備えている。この帯電ローラ56は、搬送ベルト51の表層に接触し、搬送ベルト51の回動に従動して回転するように配置され、加圧力として軸の両端に所定の押圧力をかけている。なお、搬送ローラ52はアースローラの役目も担っており、搬送ベルト51の中抵抗層(裏層)と接触配置され接地している。
また、搬送ベルト51の裏側には、記録ヘッド31による印写領域に対応してガイド部材57を配置している。このガイド部材57は、上面が搬送ベルト51を支持する2つのローラ(搬送ローラ52とテンションローラ53)の接線よりも記録ヘッド35側に突出させることで搬送ベルト51の高精度な平面性を維持するようにしている。
この搬送ベルト51は、副走査モータ58によって駆動ベルト59及びプーリ60を介して搬送ローラ52が回転駆動されることによって図3のベルト搬送方向(副走査方向)に周回移動する。
さらに、記録ヘッド31で記録された用紙42を排紙するための排紙部として、搬送ベルト51から用紙42を分離するための分離爪61と、排紙ローラ62及び排紙コロ63とを備え、排紙ローラ62の下方に排紙トレイ3を備えている。
また、装置本体1の背面部には両面ユニット71が着脱自在に装着されている。この両面ユニット71は搬送ベルト51の逆方向回転で戻される用紙42を取り込んで反転させて再度カウンタローラ46と搬送ベルト51との間に給紙する。また、この両面ユニット71の上面は手差しトレイ72としている。
さらに、図3に示すように、キャリッジ23の走査方向一方側の非印字領域には、記録ヘッド31のノズルの状態を維持し、回復するための回復手段を含む維持回復機構81を配置している。
この維持回復機構81には、記録ヘッド31の各ノズル面をキャピングするための各キャップ部材(以下「キャップ」という。)82a〜82d(区別しないときは「キャップ82」という。)と、ノズル面をワイピングするためのブレード部材であるワイパーブレード83と、増粘した記録液を排出するために記録に寄与しない液滴を吐出させる空吐出を行うときの液滴を受ける空吐出受け84などを備えている。ここでは、キャップ82aを吸引及び保湿用キャップとし、他のキャップ82b〜82dは保湿用キャップとしている。
また、キャリッジ23の走査方向他方側の非印字領域には、記録中などに増粘した記録液を排出するために記録に寄与しない液滴を吐出させる空吐出を行うときの液滴を受ける空吐出受け88を配置し、この空吐出受け88には記録ヘッド31のノズル列方向に沿った開口89a〜89dを設けている。
このように構成したインクジェット記録装置においては、給紙トレイ2から用紙42が1枚ずつ分離給紙され、略鉛直上方に給紙された用紙42はガイド45で案内され、搬送ベルト51とカウンタローラ46との間に挟まれて搬送され、更に先端を搬送ガイド37で案内されて先端加圧コロ49で搬送ベルト51に押し付けられ、略90°搬送方向を転換される。
このとき、図示しない制御部によってACバイアス供給部から帯電ローラ56に対してプラス出力とマイナス出力とが交互に繰り返すように、つまり交番する電圧が印加され、搬送ベルト51が交番する帯電電圧パターン、すなわち、周回方向である副走査方向に、プラスとマイナスが所定の幅で帯状に交互に帯電されたものとなる。このプラス、マイナス交互に帯電した搬送ベルト51上に用紙42が給送されると、用紙42が搬送ベルト51に吸着され、搬送ベルト51の周回移動によって用紙42が副走査方向に搬送される。
そこで、キャリッジ23を移動させながら画像信号に応じて記録ヘッド31を駆動することにより、停止している用紙42にインク滴を吐出して1行分を記録し、用紙42を所定量搬送後、次の行の記録を行う。記録終了信号又は用紙42の後端が記録領域に到達した信号を受けることにより、記録動作を終了して、用紙42を排紙トレイ3に排紙する。
また、印字(記録)待機中にはキャリッジ23は維持回復機構81側に移動されて、キャップ82で記録ヘッド31がキャッピングされて、ノズルを湿潤状態に保つことによりインク乾燥による吐出不良を防止する。また、キャップ82で記録ヘッド31をキャッピングした状態で図示しない吸引ポンプによってノズルから記録液を吸引し(「ノズル吸引」又は「ヘッド吸引」という。)し、増粘した記録液や気泡を排出する回復動作を行う。また、記録開始前、記録途中などに記録と関係しないインクを吐出する空吐出動作を行う。これによって、記録ヘッド31の安定した吐出性能を維持する。
次に、この画像形成装置における記録ヘッドを構成する液滴吐出ヘッドの一例について図4及び図5を参照して説明する。なお、図4は同ヘッドの液室長手方向に沿う断面説明図、図5は同ヘッドの液室短手方向(ノズルの並び方向)の断面説明図である。
この液滴吐出ヘッドは、例えば単結晶シリコン基板を異方性エッチングして形成した流路板101と、この流路板101の下面に接合した例えばニッケル電鋳で形成した振動板102と、流路板101の上面に接合したノズル板103とを接合して積層し、これらによって液滴(インク滴)を吐出するノズル104が連通する流路であるノズル連通路105及び液室106、液室106にインクを供給するための共通液室108に連通するインク供給口109などを形成している。
また、振動板102を変形させて液室106内のインクを加圧するための圧力発生手段(アクチュエータ手段)である電気機械変換素子としての2列(図6では1列のみ図示)の積層型圧電素子121と、この圧電素子121を接合固定するベース基板122とを備えている。なお、圧電素子121の間には支柱部123を設けている。この支柱部123は圧電素子部材を分割加工することで圧電素子121と同時に形成した部分であるが、駆動電圧を印加しないので単なる支柱となる。
また、圧電素子121には図示しない駆動回路(駆動IC)に接続するためのFPCケーブル126を接続している。
そして、振動板102の周縁部をフレーム部材130に接合し、このフレーム部材130には、圧電素子121及びベース基板122などで構成されるアクチュエータユニットを収納する貫通部131及び共通液室108となる凹部、この共通液室108に外部からインクを供給するためのインク供給穴132を形成している。このフレーム部材130は、例えばエポキシ系樹脂などの熱硬化性樹脂或いはポリフェニレンサルファイトで射出成形により形成している。
ここで、流路板101は、例えば結晶面方位(110)の単結晶シリコン基板を水酸化カリウム水溶液(KOH)などのアルカリ性エッチング液を用いて異方性エッチングすることで、ノズル連通路105、液室106となる凹部や穴部を形成したものであるが、単結晶シリコン基板に限られるものではなく、その他のステンレス基板や感光性樹脂などを用いることもできる。
振動板102は、ニッケルの金属プレートから形成したもので、例えばエレクトロフォーミング法(電鋳法)で作製しているが、この他、金属板や金属と樹脂板との接合部材などを用いることもできる。この振動板102に圧電素子121及び支柱部123を接着剤接合し、更にフレーム部材130を接着剤接合している。
ノズル板103は各液室106に対応して直径10〜30μmのノズル104を形成し、流路板101に接着剤接合している。このノズル板103は、金属部材からなるノズル形成部材の表面に所要の層を介して最表面に撥水層を形成したものである。なお、このノズル板103の表面が前述したノズル面31aとなる。
圧電素子121は、圧電材料151と内部電極152とを交互に積層した積層型圧電素子(ここではPZT)である。この圧電素子121の交互に異なる端面に引き出された各内部電極152には個別電極153及び共通電極154が接続されている。なお、この実施形態では、圧電素子121の圧電方向としてd33方向の変位を用いて液室106内インクを加圧する構成としているが、圧電素子121の圧電方向としてd31方向の変位を用いて加圧液室106内インクを加圧する構成とすることもできる。また、1つの基板122に1列の圧電素子121が設けられる構造とすることもできる。
このように構成した液滴吐出ヘッドヘッドにおいては、例えば圧電素子121に印加する電圧を基準電位から下げることによって圧電素子121が収縮し、振動板102が下降して液室106の容積が膨張することで、液室106内にインクが流入し、その後圧電素子121に印加する電圧を上げて圧電素子121を積層方向に伸長させ、振動板102をノズル104方向に変形させて液室106の容積/体積を収縮させることにより、液室106内の記録液が加圧され、ノズル104から記録液の滴が吐出(噴射)される。
そして、圧電素子121に印加する電圧を基準電位に戻すことによって振動板102が初期位置に復元し、液室106が膨張して負圧が発生するので、このとき、共通液室108から液室106内に記録液が充填される。そこで、ノズル104のメニスカス面の振動が減衰して安定した後、次の液滴吐出のための動作に移行する。
なお、このヘッドの駆動方法については上記の例(引き−押し打ち)に限るものではなく、駆動波形の与えた方によって引き打ちや押し打ちなどを行うこともできる。
次に、維持回復機構81の概要について図6を参照して説明する。なお、同図は同維持回復機構を一部展開した状態で示す模式的説明図である。
この維持回復機構81には、前述したように、吸引及び保湿用キャップ82aと保湿用キャップ82bを保持する保持機構を含むキャップホルダ201Aと、保湿用キャップ82cと保湿用キャップ82dを保持する保持機構を含むキャップホルダ201Bと、記録ヘッド31のノズル面31aを清浄化する(拭き取る)ための弾性体からなるブレードであるワイパーブレード83を保持するブレードホルダ203と、記録ヘッド31から印字に寄与しない液滴を吐出する空吐出動作(予備吐出動作)を行うための空吐出受け84が配置されている。
ここで、印字領域に最も近い側の吸引用及び保湿用キャップ82aには可撓性チューブ210を介して吸引手段であるチュービングポンプ(吸引ポンプ)211を接続している。したがって、記録ヘッド31の維持回復動作を行うときには、回復動作を行う記録ヘッド31をキャップ82aによってキャッピング可能な位置に選択的に移動させる。なお、この吸引用及び保湿用キャップ82aには図示しないが内部に保湿部材を設けて、保湿をすることにより本発明に係る維持回復動作を行なうときの後述する閾値を大きくして維持回復動作回数を低減でき、記録液の無駄な消費や回復動作にともなう印刷待機時間を短縮することができる。
また、これらのキャップホルダ201A、201Bの下方にはフレーム212に回転自在に支持したカム軸213を配置し、このカム軸213には、キャップホルダ201A、201Bを昇降させるためのキャップカム214A、214Bと、ブレードホルダ203を昇降させるためのワイパーカム215をそれぞれ設けている。
そして、チュービングポンプ211及びカム軸213を回転駆動するために、モータ221の回転をモータ軸221aに設けたモータギヤ222に、チュービングポンプ211のポンプ軸211aに設けたポンプギヤ223を噛み合わせ、更にこのポンプギヤ223と一体の中間ギヤ224に中間ギヤ225を介して一方向クラッチ227付きの中間ギヤ226を噛み合わせ、この中間ギヤ226と同軸の中間ギヤ228に中間ギヤ229を介してカム軸213に固定したカムギヤ230を噛み合わせている。
この維持回復機構81においては、モータ221が正転することによってモータギヤ222、中間ギヤ224、ポンプギヤ223、中間ギヤ225、226までが回転し、チュービングポンプ211の軸211aが回転することでチュービングポンプ211が作動して、吸引用キャップ82a内を吸引する(この動作を「キャップ内吸引」又は「ヘッド吸引」という。)。その他のギヤ228以降は一方向クラッチ227によって回転が遮断されるので回転(作動)しない。
また、モータ221が逆転することによって、一方向クラッチ227が連結されるので、モータ221の回転が、モータギヤ222、中間ギヤ224、ポンプギヤ223、中間ギヤ225、226、228、229を経てカムギヤ230に伝達され、カム軸213が回転する。このとき、チュービングポンプ211はポンプ軸211aの逆転では作動しない構造となっている。このカム軸213の回転によってキャップカム214A、214B及びワイパーカム215がそれぞれ所定のタイミングで上昇、下降する。
なお、記録ヘッド31のノズル面31aを清掃するときにはワイパーブレード83を上昇させた状態にして、記録ヘッド31をワイパーブレード83に相対的に移動させることによってノズル面31aをワイピングする。
この維持回復機構のように複数のキャップを備えて、複数のキャップのうちの少なくとも1つは吸引手段に連結(連通)されない保湿キャップとすることによって、本発明に係る維持回復動作回数を低減することができ、無駄な記録液の消費や回復動作にかかる時間を短くすることができる。
また、吸引キャップに対する記録ヘッドのみ維持回復動作を行なうようにすることで過不足のない回復動作を行なうことができる。さらに、記録ヘッドの数とキャップの数を同じにすることによって維持回復機構のサイズを大きくすることがなく、部品点数の削減、装置の小型化を図れる。
次に、この画像形成装置で使用しているインク(記録液、以下「本インク」という。)の調整例について説明する。なお、これに限定されるものではない。
<製造例1インク>
(ブラックインク)
KM−9036(東洋インキ)(自己分散型顔料) 50重量%
グリセリン 10重量%
1,3−ブタンジオール 15重量%
2−エチル−1、3−ヘキサンジオール 2重量%
2−ピロリドン 2重量%
界面活性剤(1−9) 1重量%
シリコーン消泡剤KS508(信越化学) 0.1重量%
イオン交換水 残量
上記処方のインク組成物を作製し、室温にて充分に攪拌した後、平均孔径1.2μmのメンブレンフィルターにて濾過を行ない、製造例1インクを得た。
<製造例2インク>
(ポリマー溶液Aの調整)
機械式攪拌機、温度計、窒素ガス導入管、還流管及び滴下ロートを備えた1Lのフラスコ内を充分に窒素ガス置換した後、スチレン11.2g、アクリル酸2.8g、ラウリルメタクリレート12.0g、ポリエチレングリコールメタクリレート4.0g、スチレンマクロマー4.0g及びメルカプトエタノール0.4gを混合し、65℃に昇温した。次にスチレン100.8g、アクリル酸25.2g、ラウリルメタクリレート108.0g、ポリエチレングリコールメタクリレート36.0g、ヒドロキシルエチルメタクリレート60.0g、スチレンマクロマー36.0g、メルカプトエタノール3.6g、アゾビスメチルバレロニトリル2.4g及びメチルエチルケトン18gの混合溶液を2.5時間かけて、フラスコ内に滴下した。滴下後、アゾビスメチルバレロニトリル0.8g及びメチルエチルケトン18gの混合溶液を0.5時間かけて、フラスコ内に滴下した。65℃で1時間熟成した後、アゾビスメチルバレロニトリル0.8gを添加し、更に1時間熟成した。反応終了後、フラスコ内にメチルエチルケトン364gを添加し、濃度が50%のポリマー溶液800gを得た。このポリマー溶液の一部を乾燥し、ゲルパーミエイションクロマトグラフィー(標準:ポリスチレン、溶媒:テトラヒドロフラン)で測定したところ、重量平均分子量は15000であった。
(顔料含有ポリマー微粒子水分散体の調整)
ポリマー溶液A28gとC.I.ピグメントイエロー97を26g、1mol/Lの水酸化カリウム水溶液13.6g、メチルエチルケトン20g及びイオン交換水13.6gを充分に攪拌した後、ロールミルを用いて混練した。得られたペーストをイオン交換水200gに投入し、充分に攪拌した後、エバポレータ用いてメチルエチルケトン及び水を留去し、イエローポリマー微粒子の水分散体を得た。
(イエローインク)
イエローポリマー微粒子分散体 40重量%
グリセリン 8重量%
1、3−ブタンジオール 20重量%
2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール 2重量%
界面活性剤(1−8) 1.5重量%
シリコーン消泡剤KS508(信越化学社製) 0.1重量%
イオン交換水 残量
上記処方のインク組成物を作製し、室温にて充分に攪拌した後、平均孔径1.2μmのメンブレンフィルターにて濾過を行ない、製造例2インクを得た。
<製造例3インク>
(顔料含有ポリマー微粒子水分散体の調整)
顔料種をC.I.ピグメントレッド122に変えた他は同様にして、マゼンタポリマー微粒子の水分散体を得た。
(マゼンタインク)
マゼンタポリマー微粒子の分散体 50重量%
グリセリン 10重量%
1、3−ブタンジオール 18重量%
2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール 2重量%
界面活性剤(1−8) 1.5重量%
シリコーン消泡剤KS508(信越化学社製) 0.1重量%
イオン交換水 残量
上記処方のインク組成物を作製し、室温にて充分に攪拌した後、平均孔径1.2μmのメンブレンフィルターにて濾過を行ない、製造例3インクを得た。
<製造例4インク>
(顔料含有ポリマー微粒子水分散体の調整)
顔料種をC.I.ピグメントブルー15:3に変えた他は同様にして、シアンポリマー微粒子の水分散体を得た。
(シアンインク)
シアンポリマー微粒子分散体 40重量%
グリセリン 8重量%
1、3−ブタンジオール 20重量%
2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール 2重量%
界面活性剤(1−8) 1.5重量%
シリコーン消泡剤KS508(信越化学社製) 0.1重量%
イオン交換水 残量
上記処方のインク組成物を作製し、室温にて充分に攪拌した後、平均孔径1.2μmのメンブレンフィルターにて濾過を行ない、製造例4インクを得た。
上記製造例の各インクは、水分蒸発に伴う粘度上昇率(mPa・s/%)がインク全重量に対する水分蒸発率30%までは1.0以下であり、かつ、水分蒸発率30〜45%の間に粘度上昇率が50を越える点を持つこと、粘度上昇率が50を越える点での、インク中の着色剤の平均粒子径が、初期平均粒子径の5倍以下であり、かつ0.8μm以下となることが確認された。
このような記録液を使用することによって、前述したように、長期放置でもノズル目詰まりを起こさず、普通紙上での高画質化及び高速印字を達成できる。しかも、この記録液は、仮に、ノズル内の記録液が乾燥し増粘することによりノズルから吐出できなくなったとしても、顔料などが粗大粒子化してノズル詰まりを発生するわけではないため、簡単な維持回復動作により容易に回復できるという利点を有している。
次に、この画像形成装置の制御部の概要について図7を参照して説明する。なお、同図は同制御部の全体ブロック説明図である。
この制御部は、この画像形成装置全体の制御を司る、本発明に係る初期動作に関する制御をする手段などを兼ねたマイクロコンピュータで構成した主制御部301及び印刷制御を司るマイクロコンピュータで構成した印刷制御部302とを備えている。
そして、主制御部301は、通信回路300から入力される印刷処理の情報に基づいて用紙42に画像を形成するために、前述したように、主走査モータ24や副走査モータ58を主走査モータ駆動回路303及び副走査モータ304を介して駆動制御するとともに、印刷制御部302に対して印刷用データを送出するなどの制御を行う。
また、主制御部301には、キャリッジ23の位置を検出するキャリッジ位置検出回路305からの検出信号が入力され、主制御部301はこの検出信号に基づいてキャリッジ23の移動位置及び移動速度を制御する。キャリッジ位置検出回路305は、例えばキャリッジ23の走査方向に配置されたエンコーダシートのスリット数を、キャリッジ23に搭載されたフォトセンサで読み取って計数することで、キャリッジ23の位置を検出する。主走査モータ駆動回路303は、主制御部301から入力されるキャリッジ移動量に応じて主走査モータ24を回転駆動させて、キャリッジ23を所定の位置に所定の速度で移動させる。
また、主制御部301には搬送ベルト51の移動量を検出する搬送量検出回路306からの検出信号が入力され、主制御部301はこの検出信号に基づいて搬送ベルト51の移動量及び移動速度を制御する。搬送量検出回路306は、例えば搬送ローラ52の回転軸に取り付けられた回転エンコーダシートのスリット数を、フォトセンサで読み取って計数することで搬送量を検出する。副走査モータ駆動回路304は、主制御部301から入力される搬送量に応じて副走査モータ58を回転駆動させて、搬送ローラ52を回転駆動して搬送ベルト51を所定の位置に所定の速度で移動させる。
主制御部301は、給紙コロ駆動回路307に給紙コロ駆動指令を与えることによって給紙コロ43を一回転させる。主制御部301は、維持回復機構駆動用モータ駆動回路308を介して維持回復機構81のモータ221を回転駆動することにより、前述したようにキャップ82の昇降、ワイパーブレード83の昇降、吸引ポンプ211の駆動などを行わせる。
主制御部301は、インク供給モータ駆動回路311を介して供給ユニットのポンプを駆動するためのインク供給モータを駆動制御し、カートリッジ装填部4に装填されたインクカートリッジ10からサブタンク32に対してインクを補充供給する。このとき、主制御部301には、サブタンク32が満タン状態にあることを検知するサブタンク満タンセンサ312からの検知信号に基づいて補充供給を制御する。
また、主制御部301は、カートリッジ通信回路314を通じて、カートリッジ装填部4に装着された各インクカートリッジ10に設けられる記憶手段である不揮発性メモリ316に記憶されている情報を取り込んで、所要の処理を行って、本体記憶手段である不揮発性メモリ(例えばEEPROM)315に格納保持する。
また、主制御部301には、環境温度、環境湿度を検知する環境センサ313からの検知信号が入力される。
印刷制御部302は、主制御部301からの信号とキャリッジ位置検出回路305及び搬送量検出回路306などからのキャリッジ位置や搬送量に基づいて、記録ヘッド31の液滴を吐出させるための圧力発生手段を駆動するためのデータを生成して、上述した画像データをシリアルデータでヘッド駆動回路310に転送するとともに、この画像データの転送及び転送の確定などに必要な転送クロックやラッチ信号、滴制御信号(マスク信号)などをヘッド駆動回路310に出力する以外にも、ROMに格納されている駆動信号のパターンデータをD/A変換するD/A変換器及び電圧増幅器、電流増幅器等で構成される駆動波形生成部及びヘッドドライバに与える駆動波形選択手段を含み、1の駆動パルス(駆動信号)或いは複数の駆動パルス(駆動信号)で構成される駆動波形を生成してヘッド駆動回路310に対して出力する。
ヘッド駆動回路310は、シリアルに入力される記録ヘッド31の1行分に相当する画像データに基づいて印刷制御部302から与えられる駆動波形を構成する駆動信号を選択的に記録ヘッド31の液滴を吐出させるエネルギーを発生する駆動素子(例えば前述したような圧電素子)に対して印加することで記録ヘッド31を駆動する。このとき、駆動波形を構成する駆動パルスを選択することによって、例えば、大滴(大ドット)、中滴(中ドット)、小滴(小ドット)など、大きさの異なるドットを打ち分けることができる。
次に、印刷制御部302及びヘッド駆動回路(ヘッドドライバ)310の一例について図8を参照して説明する。
印刷制御部302は、上述したように、1印刷周期内に複数の駆動パルス(駆動信号)で構成される駆動波形(共通駆動波形)を生成して出力する駆動波形生成部401と、印刷画像に応じた2ビットの画像データ(階調信号0、1)と、クロック信号、ラッチ信号(LAT)、滴制御信号M0〜M3を出力するデータ転送部402とを備えている。
なお、滴制御信号M0〜M3は、ヘッド駆動回路310の後述するスイッチ手段であるアナログスイッチ415の開閉を滴毎に指示する2ビットの信号であり、共通駆動波形の印刷周期に合わせて選択すべき波形でHレベル(ON)に状態遷移し、非選択時にはLレベル(OFF)に状態遷移する。
ヘッドド駆動回路310は、データ転送部402からの転送クロック(シフトクロック)及びシリアル画像データ(階調データ:2ビット/CH)を入力するシフトレジスタ411と、シフトレジスタ411の各レジスト値をラッチ信号によってラッチするためのラッチ回路412と、階調データと制御信号M0〜M3をデコードして結果を出力するデコーダ413と、デコーダ413のロジックレベル電圧信号をアナログスイッチ415が動作可能なレベルへとレベル変換するレベルシフタ414と、レベルシフタ414を介して与えられるデコーダ413の出力でオン/オフ(開閉)されるアナログスイッチ415とを備えている。
このアナログスイッチ415は、各圧電素子121の選択電極(個別電極)154に接続され、駆動波形生成部401からの共通駆動波形が入力されている。したがって、シリアル転送された画像データ(階調データ)と制御信号M0〜M3をデコーダ413でデコードした結果に応じてアナログスイッチ415がオンにすることにより、共通駆動波形を構成する所要の駆動信号が通過して(選択されて)圧電素子121に印加される。
次に、上述したようなインクを使用する場合に好ましい駆動波形の一例について図9及び図10を参照して説明する。
駆動波形生成部401からは1印刷周期(1駆動周期)内に、図8に示すように、基準電位Veから立ち下がる波形要素と、立下り後の状態から立ち上がる波形要素などで公正される、8個の駆動パルスP1ないしP8からなる駆動信号(駆動波形)を生成して出力する。一方、データ転送部402からの滴制御信号M0〜M3によって使用する駆動パルスを選択する。
ここで、駆動パルスの電位Vが基準電位Veから立ち下がる波形要素は、これによって圧電素子121が収縮して加圧液室106の容積が膨張する引き込み波形要素である。また、立下り後の状態から立ち上がる波形要素は、これによって圧電素子121が伸長して加圧液室106の容積が収縮する加圧波形要素である。
そして、データ転送部402からの滴制御信号M0〜M3によって、小滴(小ドット)を形成するときには図10(a)に示すように駆動パルスP1を選択し、中滴(中ドット)を形成するときには同図(b)に示すように駆動パルスP4ないしP6を選択し、大滴(大ドット)を形成するときには同図(c)に示すように駆動パルスP2ないしP8を選択し、微駆動の(滴吐出を伴わないでメニスカスを振動させる)ときには同図(d)に示すように微駆動パルスP2を選択して、それぞれ記録ヘッド31の圧電素子121に印加させるようにする。
中滴を形成する場合、駆動パルスP4にて1滴目、駆動パルスP5にて2滴目、駆動パルスP6にて3滴目を吐出させ、飛翔中に合体させて一滴として着弾させる。このとき、圧力室(液室106)の固有振動周期をTcとすると、駆動パルスP4とP5の吐出タイミングの間隔は2Tc±0.5μsが好ましい。駆動パルスP4とP5は、単純引き打ち波形要素で構成されているため、駆動パルスP6も同様の単純引き打ち波形要素にするとインク滴速度が大きくなりすぎてしまい、他の滴種の着弾位置からずれてしまうおそれがある。そこで、駆動パルスP6は、引き込み電圧を小さくする(立下りの電位を少なくする)ことでメニスカスの引き込みを小さくし、3滴目のインク滴速度を抑えている。ただし、必要なインク滴体積をかせぐために立ち上げ電圧は小さくしない。
つまり、複数の駆動パルスのうちの最終駆動パルスの引き込み波形要素では引き込み電圧を相対的に小さくすることによって、当該最終駆動パルスによる滴吐出速度を相対的に小さくして、着弾位置を他の滴種と極力合わせるようにすることができる。
また、微駆動パルスP2とは、ノズルのメニスカスの乾燥を防ぐため、インク滴を吐出させずにメニスカスを振動させる駆動波形である。非印字領域ではこの微駆動パルスP2が記録ヘッド7に印加される。また、この微駆動波形である駆動パルスP2を、大滴を構成する駆動パルスの一つとして利用することにより、駆動周期の短縮化(高速化)を達成することができる。
さらに、微駆動パルスP2と駆動パルスP3の吐出タイミングの間隔を、固有振動周期Tc±0.5μsの範囲内に設定することにより、駆動パルスP3によって吐出するインク滴の体積をかせぐことができる。つまり、微駆動パルスP2によって生じた振動周期によって加圧液室106の圧力振動に駆動パルスP3による加圧液室6の膨張を重畳させることによって駆動パルスP3で吐出できる滴の滴体積を駆動パルスP3単独で印加する場合よりも大きくすることができる。
なお、インクの粘度によって必要な駆動波形が異なることから、この画像形成装置においては、図11に示すように、インク粘度が5mPa・sのときの駆動波形、同じく粘度が10mPa・sのときの駆動波形、同じく20mPa・sのときの駆動波形をそれぞれ用意し、温度センサからの検出温度からインク粘度を判定して、使用する駆動波形を選択するようにしている。
つまり、インク粘度が小さいときは駆動パルスの電圧を相対的に小さく、インク粘度が大きいときは駆動パルスの電圧を相対的に大きくすることにより、インク粘度(温度)によらずインク滴の速度及び体積を略一定に吐出させることができる。また、駆動パルス2は、インク粘度に合わせて波高値を選択することにより、インク滴を吐出させることなくメニスカスを振動させることができる。
このような駆動パルスから構成される駆動波形を使用することによって、大中小の各滴が用紙に着弾するまでの時間を制御することができ、吐出開始の時間が大中小の各滴で異なっても、各滴をほぼ同じ位置に着弾させることが可能となる。
次に、キャップ内残存インクによる吸湿作用について図12を参照して説明する。
維持回復機構81によるヘッド回復動作時には、前述したように、記録ヘッド31のノズル面31aをキャップ82aでキャッピングしてノズル104からインクを吸引排出させた後、ノズル面31a表面の汚れを排出したインクとともにワイパーブレード83によってワイピングして掻き落として清浄化する。
この回復動作によってキャップ82a内に名移出されたインクは吸引ポンプ211による吸引によって排出されるものの、全てのインクをキャップ82aから除去することができず、このため、少量のインクがキャップ82a内に残存するが、このような動作を繰り返すことでキャップ82a内の残存インクは徐々に増加する。
その結果、図12(a)に示すように、キャップ82a内の残存インク500は徐々に乾燥した状態になり、同図(b)に示すように、この乾燥した残存インク500が付着しているキャップ82aによって記録ヘッド31のノズル面31aをキャッピングした状態で放置すると、乾燥した残存インク500が記録ヘッド31のノズル104内にインクから水分を吸収する吸湿作用が生じて、ノズル104内のインクが吸湿されて増粘する。
このようにして記録ヘッド31のノズル104内に増粘したインクが生じると、液滴吐出時に吐出方向が曲がったり、吐出不能になったりして、印字品質の劣化を招くことになる。
次に、このように構成したこの画像形成装置(インクジェット記録装置)における吸引キャップに対する記録液供給動作に関する制御について図13以降をも参照して説明する。
まず、所定状態にある記録ヘッド31がキャップ82aによってキャッピングされていない状態の累積時間である非キャッピング累積時間(累積デキャップ時間)tdcを計測する累積デキャップ時間計測処理について図13を参照して説明する。
この累積デキャップ時間計測処理では、リセット条件として維持回復機構81によるヘッド吸引(ノズル吸引)動作が行なわれたか否かを判別し、ヘッド吸引動作が行われたときに、累積デキャップ時間tdcを計測するタイマ(カウンタ)をリセットし、スタートする。
つまり、キャップ82が記録ヘッド31をキャッピングしていないデキャップ時間(非キャッピング時間)を計測することによって、キャップ内インクの乾燥程度を把握することができる。また、デキャップ時間の累積(累積デキャップ時間)を計測することによって、キャップ82内の残留インクが記録ヘッド31のノズル内のインクの乾燥に影響を与えないようなキャッピングを排除することができる。
ここで、一回のデキャップ動作で経過した時間としないで累積時間としているのは、キャッピングして、印字して、キャッピングして、というような細切れの動作であってもデキャップ時間として累積して計測するためである。このような細切れの動作では、キャッピング時にノズル内から水分を奪うものの、キャップ内残存インクの乾燥度合いが改善される程度のものではなく、これによってデキャップ時間をリセットしたのでは適切にキャップ内インクの乾燥程度を正確に把握できなくなるからである。
また、累積デキャップ時間tdcは、キャップ内インクの乾燥程度をキャップ82a内がインクで濡れて乾燥状態が改善されることで行われるのが合理的であるので、インク吸引動作(ヘッド吸引動作)を伴う維持回復動作が行なわれたときには、累積デキャップ時間tdcをリセットする。これによって、無駄なタイミングでキャップ内へのインク供給動作を行なうことを防止することができる。
この場合、全ての吸引動作でなくてもよい。例えば、クリーニングのように少量のインクしか排出されない場合は、濡らす効果も小さいため、累積デキャップ時間tdcをリセットしないようにすることもできる。また、インク吸引(ヘッド吸引)による排出インクが所定量よりも多い場合、或いは、クリーニング2回以上、もしくは、大気開放充填(サブタンク42を大気開放状態にしてインクカートリッジ10からインクを補充供給する動作)やリフレッシングの場合というように限定したリセット条件でリセットするようにすることもできる。
次に、キャップ内記録液供給処理の一例について図14を参照して説明する。
まず、この画像形成装置では、環境条件を高温低湿HL、常温常湿MM、低温低湿LLに分け、キャップ82a内に記録液(インク)を供給するタイミングを決定するための閾値Tdcを、それぞれの環境条件に応じて予め設定し、内部メモリ(ROMなど)に格納している。
そこで、このキャップ内記録液供給処理では、累積デキャップ時間tdcを読み込み、次いで、環境センサ313の検知信号に基づいて環境温度及び環境湿度(環境条件)を検出し、検出した環境条件に対応する閾値Tdcを読み込む。そして、累積デキャップ時間tdcが予め定めた時間閾値Tdc以上である(tdc≧Tdc)か否かを判別し、tdc≧Tdcであれば、維持回復機構81を作動してキャップ82aで記録ヘッド31のノズル面31aをキャッピングして吸引ポンプ211を作動させてノズル吸引を行なうことによってキャップ82a内にインクを供給する記録液供給動作を行なう。
このように、累積デキャップ時間に基づいてキャップ内に記録液を供給することによって、キャップ内の残留インクの乾燥を抑制し、これによってキャッピング時の除湿作用を抑えることができて、記録ヘッドのノズル内のインクが増粘して滴吐出方向が曲がったり、吐出不能になったりして、印字品質の劣化が生じることを防止できる。
次に、キャップ内記録液供給処理の他の例について図15を参照して説明する。
ここでは、累積デキャップ時間tdcを読み込み、次いで、環境センサ313の検知信号に基づいて環境温度及び環境湿度(環境条件)を検出し、検出した環境条件に対応する閾値Tdcを読み込む。そして、累積デキャップ時間tdcが予め定めた時間閾値Tdc以上である(tdc≧Tdc)か否かを判別する。
そして、tdc≧Tdcであれば、次に維持回復動作を行う記録ヘッド31を判別(検出)し、当該記録ヘッド31に対して前述した維持回復機構81による維持回復動作を行うことによって、キャップ82a内にインクを供給する記録液供給動作を含む維持回復動作を行なう。
このように、記録液供給動作として、通常の維持回復動作と同様の動作、ノズル吸引、ワイピングなどを行うようにすれば、別途維持回復動作を行う必要がなくなり、ヘッド回復動作の総時間を短縮することができる。そして、この場合、上述したように複数の記録ヘッドで1(又は複数)の吸引用キャップを共用するときには、維持回復機構による維持回復動作が最も早く到来する記録ヘッドから記録液を供給する(維持回復動作を行う)ようにすることで、更にヘッド回復動作の総時間を短縮することができる。
以下、具体的な実施例について説明する。
〔実施例1〕
上記で説明したキャップ内残存インクによる吸湿を防止するため、累積デキャップ時間に応じてインクをキャップ内に排出、吸引し、キャップ内の残存インク量を増加させないようにした。初期のキャップ内残存インク量を0.1gとして、次の3種類の環境下で累積デキャップ時間と安定吐出するキャッピングされた状態での放置時間(以下、「安定放置時間」という。)の評価を行なった。
<評価環境>
高温低湿(HL):10℃ 15%
常温常湿(MM):23℃ 50%
低温低湿(LL):32℃ 30%
この評価結果を図16に示している。この結果から、高温低湿(HL)環境では、累積デキャップ時間が10minでキャップ内インク供給を実施することで安定放置時間60h以上となることが確認された。常温常湿(MM)環境では、累積デキャップ時間が20minでキャップ内インク供給を実施することで安定放置時間60h以上となることが確認された。低温低湿(LL)環境では、累積デキャップ時間が10minでもキャップ内インク供給を実施することで安定放置時間1hであった。
上記評価結果から各環境でのキャップ内へインクを供給する累積デキャップ時間と安定放置時間を、次の表1のようにした。
そして、プリンタ動作中は上記累積デキャップ時間に応じてキャップ内へのインク供給を実施し、プリンタ停止中は上記安定放置時間を超えた場合に次の印字前にヘッド回復動作を実施するようにしたところ、長期間プリンタ停止後の印字時の噴射曲がりや不吐出の発生はなくなった。
〔実施例2〕
上記で説明したキャップ内残存インクによる吸湿を防止するため、累積デキャップ時間に応じてインクをキャップ内に排出、吸引し、キャップ内の残存インク量を増加させないようにした。初期のキャップ内残存インク量を0.2gとして、次の3種類の環境下で累積デキャップ時間と安定放置時間の評価を行なった。
<評価環境>
高温低湿(HL):10℃ 15%
常温常湿(MM):23℃ 50%
低温低湿(LL):32℃ 30%
この評価結果を図17に示している。この結果から、高温低湿(HL)環境では、累積デキャップ時間が10minでキャップ内インク供給を実施することで安定放置時間60h以上となることが確認された。常温常湿(MM)環境では、累積デキャップ時間が10minでキャップ内インク供給を実施することで安定放置時間12h以上となることが確認された。低温低湿(LL)環境では、累積デキャップ時間が10minでもキャップ内インク供給を実施することで安定放置時間1hであった。
上記評価結果から各環境でのキャップ内へインクを供給する累積デキャップ時間と安定放置時間を、次の表2のようにした。
そして、プリンタ動作中は上記累積デキャップ時間に応じてキャップ内へのインク供給を実施し、プリンタ停止中は上記安定放置時間を超えた場合に次の印字前にヘッド回復動作を実施するようにしたところ、長期間プリンタ停止後の印字時の噴射曲がりや不吐出の発生はなくなった。
これらの実施例1、2の結果から、キャップ内インク残存量が多いと噴射曲がりや不吐出に対して不利となる結果となった。本発明の累積デキャップ時間に応じてキャップ内へインク供給する動作を、プリンタが稼動する初期より行うことによってキャップ内インク残存量は常に0.1g以下となることが確認されており、実際に使用する制御条件は実施例1の条件で充分である。
〔実施例3〕
上記で説明したキャップ内残存インクによる吸湿を防止するため、累積デキャップ時間に応じてインクをキャップ内に排出、吸引しキャップ内の残存インク量を増加させないようにした。キャップ内には吸収体を入れ、次の3種類の環境下で累積デキャップ時間と安定放置時間の評価を行なった。
<評価環境>
高温低湿(HL):10℃ 15%
常温常湿(MM):23℃ 50%
低温低湿(LL):32℃ 30%
この評価結果を図18に示している。この結果から、高温低湿(HL)環境では、累積デキャップ時間が10minでキャップ内インク供給を実施することで安定放置時間60h以上となることが確認された。常温常湿(MM)環境では、累積デキャップ時間が60minでキャップ内インク供給を実施することで安定放置時間60h以上となることが確認された。低温低湿(LL)環境では、累積デキャップ時間が10minでもキャップ内インク供給を実施することで安定放置時間60hであった。
上記評価結果から各環境でのキャップ内へインクを供給する累積デキャップ時間と安定放置時間を、次の表3のようにした。
そして、プリンタ動作中は上記累積デキャップ時間に応じてキャップ内へのインク供給を実施し、プリンタ停止中は上記安定放置時間を超えた場合に次の印字前にヘッド回復動作を実施するようにしたところ、長期間プリンタ停止後の印字時の噴射曲がりや不吐出の発生はなくなった。
この結果からは、キャップ内に吸収体を入れることにより、キャップ内残存インクの乾燥速度が遅くなり、吸収体なしのときに比べ、累積デキャップ時間を長くしても噴射曲がりや不吐出は発生せず、良好な結果となることが分かる。
なお、上記各実施形態では本発明に係る画像形成装置としてプリンタ構成で説明したが、これに限るものではなく、例えば、プリンタ/ファックス/コピア複合機などの画像形成装置に適用することができる。また、インク以外の液体である記録液や定着処理液などを用いる画像形成装置にも適用することができる。