JP2006156893A - 磁気メモリ - Google Patents
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Abstract
【課題】 誤書き込みを防止し、且つ小型化が可能な磁気メモリを提供する。
【解決手段】 磁気メモリ1が備える複数の記憶領域3のそれぞれは、外部磁界Φ1、Φ2によって磁化方向Aが変化する第1磁性層41を含むTMR素子4と、第1磁性層41に沿って延びる配線部分31aを有し、配線部分31aを流れる書き込み電流Iw1、Iw2によって第1磁性層41に外部磁界Φ1、Φ2を提供するとともに、配線部分31aがTMR素子4の一端と電気的に接続されており、配線部分31aからTMR素子4へ読み出し電流Irを流す領域内配線31と、領域内配線31の一端に電気的に接続されており、領域内配線31における書き込み電流Iw1、Iw2及び読み出し電流Irの導通を制御する読み書き兼用トランジスタ32とを有する。
【選択図】 図1
【解決手段】 磁気メモリ1が備える複数の記憶領域3のそれぞれは、外部磁界Φ1、Φ2によって磁化方向Aが変化する第1磁性層41を含むTMR素子4と、第1磁性層41に沿って延びる配線部分31aを有し、配線部分31aを流れる書き込み電流Iw1、Iw2によって第1磁性層41に外部磁界Φ1、Φ2を提供するとともに、配線部分31aがTMR素子4の一端と電気的に接続されており、配線部分31aからTMR素子4へ読み出し電流Irを流す領域内配線31と、領域内配線31の一端に電気的に接続されており、領域内配線31における書き込み電流Iw1、Iw2及び読み出し電流Irの導通を制御する読み書き兼用トランジスタ32とを有する。
【選択図】 図1
Description
本発明は、磁気抵抗効果素子にデータを記憶する磁気メモリに関するものである。
近年、コンピュータや通信機器等の情報処理装置に用いられる記憶デバイスとして、MRAM(Magnetic Random Access Memory)が注目されている。MRAMは、磁気によってデータを記憶するので、揮発性メモリであるDRAM(Dynamic Random Access Memory)やSRAM(Static RAM)のように電源断によって情報が失われるといった不都合がない。また、従来のフラッシュEEPROMやハードディスク装置のような不揮発性記憶手段と比較して、アクセス速度、信頼性、消費電力等において非常に優れている。従って、MRAMは、DRAMやSRAMなどの揮発性メモリの機能、及びフラッシュEEPROMやハードディスク装置などの不揮発性記憶手段の機能をすべて代替できる可能性を有している。現在、いつ、どこにいても情報処理を行うことができる、いわゆるユビキタスコンピューティングを目指した情報機器の開発が急速に進められているが、MRAMは、このような情報機器におけるキーデバイスとしての役割が期待されている。
このようなMRAMの一例として、例えば特許文献1に記載された磁気メモリがある。この磁気メモリは、各記憶領域(メモリセル)毎に、トンネル磁気抵抗効果(TMR:Tunneling Magneto-Resistive)素子と、TMR素子に書き込み電流を流す配線(セルビット線)と、セルビット線に接続されたトランジスタとを備える。ここで、TMR素子とは、外部磁界によって磁化方向が変化する第1磁性層(感磁層)と、磁化方向が固定された第2磁性層と、第1磁性層と第2磁性層との間に挟まれた非磁性絶縁層とを備え、第1磁性層の磁化方向が第2磁性層の磁化方向に対して平行または反平行に制御されることにより二値データを記憶する素子である。特許文献1に記載された磁気メモリでは、書き込み対象ではない記憶領域への誤書き込みを防ぐために、ビット線から各記憶領域毎に枝分かれした配線(セルビット線)に沿ってTMR素子を配置し、このセルビット線に書き込み電流を選択的に流す構成としている。そして、この構成により、TMR素子のいわゆる半選択(half selection)状態を無くし、選択されていない記憶領域への誤書き込みを防止している。また、TMR素子の一端がセルビット線に接するようにTMR素子を配置することにより、セルビット線を介してTMR素子に読み出し電流を供給している。
近年、情報処理装置における処理量の増大や情報処理装置の小型化に伴い、メモリ等の記憶手段にはより一層の高集積化が求められている。しかしながら、特許文献1に開示された磁気メモリは、セルビット線を流れる書き込み電流を制御するための書き込み選択トランジスタ、及びTMR素子を流れる読み出し電流を制御するための読み出し選択トランジスタという2つのトランジスタを各記憶領域毎に備えている。このように、各記憶領域毎に読み出し選択用及び書き込み選択用といった2つのトランジスタを配置すると、各記憶領域に広いスペースが必要となり、MRAMの小型化を妨げる一因となる。
また、特許文献1には、TMR素子に読み出し電流を選択的に流すための構成として、選択された記憶領域を通る列方向の配線(ビット線)と行方向の配線(ワード線)との間に読み出し電流を流す、いわゆるクロスポイント型の構成も開示されている。しかしながら、このようなクロスポイント型の構成であっても、ビット線を選択するためのトランジスタ、及びワード線を選択するためのトランジスタがそれぞれ各列毎及び各行毎に必要となり、MRAMの小型化を妨げることとなる。
本発明は、上記した問題点を鑑みてなされたものであり、誤書き込みを防止し、且つ小型化が可能な磁気メモリを提供することを目的とする。
上記した課題を解決するために、本発明による磁気メモリは、複数の記憶領域を備え、複数の記憶領域のそれぞれは、外部磁界によって磁化方向が変化する感磁層を含む磁気抵抗効果素子と、感磁層に沿って延びる配線部分を有し、配線部分を流れる書き込み電流によって感磁層に外部磁界を提供する領域内配線と、領域内配線の一端及び磁気抵抗効果素子の一端に電気的に接続されており、領域内配線における書き込み電流の導通、及び磁気抵抗効果素子への読み出し電流の導通を制御するスイッチ手段とを有することを特徴とする。
上記した磁気メモリにおいて、或る記憶領域にデータを書き込む際には、当該記憶領域のスイッチ手段を導通状態とし、領域内配線の両端間を流れるように書き込み電流を供給するとよい。これにより、磁気抵抗効果素子の感磁層に沿って延びる配線部分に書き込み電流が流れ、感磁層に外部磁界が提供されてデータが書き込まれる。このとき、磁気抵抗効果素子が領域内配線よりも高抵抗であるので、書き込み電流は磁気抵抗効果素子へは分岐しない。また、或る記憶領域からデータを読み出す際には、当該記憶領域のスイッチ手段を導通状態とし、例えば領域内配線の他端側を高抵抗状態とするなどして、電流がスイッチ手段から磁気抵抗効果素子へ流れるようにし、読み出し電流を供給するとよい。そして、読み出し電流の大きさ又は磁気抵抗効果素子の両端間電圧を検出することにより、データを読み出すことができる。
上記した磁気メモリによれば、1つのスイッチ手段によって書き込み電流及び読み出し電流を制御しているので、1つの記憶領域に2つのトランジスタが必要な従来のMRAMや、或いは各列毎及び各行毎に読み出し用のトランジスタが必要なクロスポイント型のMRAMと比較して、記憶領域のスペースをより小さくすることができる。従って、MRAMの更なる小型化が可能となる。
また、上記した磁気メモリでは、各記憶領域毎に領域内配線が設けられ、各記憶領域に設けられたスイッチ手段によって該領域内配線を流れる書き込み電流を制御できるので、磁気抵抗効果素子には半選択状態が無く、書き込み対象ではない記憶領域への誤書き込みを防ぐことができる。
また、磁気メモリは、領域内配線が、配線部分において磁気抵抗効果素子の一端と電気的に接続されており、読み出し電流をスイッチ手段から磁気抵抗効果素子へ流すことが好ましい。
また、磁気メモリは、複数の記憶領域が、m行n列(m、nは2以上の整数)からなる2次元状に配列されており、複数の記憶領域の各列に対応して設けられ、対応する列の記憶領域それぞれにおいて、スイッチ手段を介して領域内配線の一端及び磁気抵抗効果素子の一端に電気的に接続された第1の配線と、複数の記憶領域の各列に対応して設けられ、対応する列の記憶領域それぞれにおいて、領域内配線の他端に電気的に接続された第2の配線と、複数の記憶領域の各行に対応して設けられ、対応する行の記憶領域それぞれにおいて、スイッチ手段の制御端子に接続された第3の配線と、複数の記憶領域の各行に対応して設けられ、対応する行の記憶領域それぞれにおいて、磁気抵抗効果素子の他端と電気的に接続された第4の配線とをさらに備えることを特徴としてもよい。
上記した磁気メモリでは、書き込み対象の記憶領域を含む列に対応する第1の配線と第2の配線との間に書き込み電流を供給し、且つ、当該記憶領域を含む行に対応する第3の配線に対し、スイッチ手段を導通状態に制御するための制御電圧を印加することにより、当該記憶領域の領域内配線に書き込み電流を好適に流すことができる。また、読み出し対象の記憶領域を含む列に対応する第1の配線と当該記憶領域を含む行に対応する第4の配線との間に読み出し電流を供給し、且つ、当該記憶領域を含む行に対応する第3の配線に対し、スイッチ手段を導通状態に制御するための制御電圧を印加することにより、当該記憶領域の磁気抵抗効果素子に読み出し電流を好適に流すことができる。
また、磁気メモリは、第1及び第4の配線に電気的に接続されており、磁気抵抗効果素子へ読み出し電流を供給する読み出し電流供給手段をさらに備えることが好ましい。
また、磁気メモリは、第1及び第2の配線に電気的に接続されており、領域内配線へ書き込み電流を供給する書き込み電流供給手段をさらに備えることが好ましい。
また、磁気メモリは、複数の記憶領域のそれぞれが、領域内配線の配線部分を連続して囲むように設けられた磁気ヨークを更に有し、磁気抵抗効果素子の感磁層は、磁気ヨークの一部によって構成されていることを特徴としてもよい。このように、感磁層に沿った配線部分が磁気ヨークに囲まれることによって、感磁層から逸れた方向へ放出される磁界を低減できる。また、配線部分を囲む磁気ヨークの一部によって感磁層が構成されるので、外部磁界を感磁層へ効率よく提供できる。このように、上記した磁気メモリによれば、書き込み電流による外部磁界を磁気抵抗効果素子の感磁層へ効率よく提供できるので、感磁層の磁化方向を小さな書き込み電流でもって反転させることができる。
また、磁気メモリは、複数の記憶領域のそれぞれは、所定の長さの空隙を介して対向する少なくとも一対の開放端部を含み領域内配線の配線部分を囲むように設けられた磁気ヨークを更に有し、磁気抵抗効果素子は、該磁気抵抗効果素子の一対の側面が磁気ヨークの一対の開放端部とそれぞれ対向または接するように配置されていることを特徴としてもよい。このように、感磁層に沿った配線部分が磁気ヨークに囲まれることによって、感磁層から逸れた方向へ放出される磁界を低減することができる。また、磁気抵抗効果素子の一対の側面のそれぞれに対向または接する一対の開放端部を磁気ヨークが有することによって、配線部分の外周方向に閉じた経路を構成する磁気ヨーク内部の磁界(磁気抵抗効果素子からみれば外部磁界)を、磁気抵抗効果素子の感磁層へ効率よく提供することができる。このように、上記した磁気メモリによれば、書き込み電流による外部磁界を磁気抵抗効果素子の感磁層へ効率よく提供できるので、感磁層の磁化方向を小さな書き込み電流でもって反転させることができる。
本発明による磁気メモリによれば、誤書き込みを防止し、且つ小型化が可能となる。
以下、添付図面を参照しながら本発明による磁気メモリの実施の形態を詳細に説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
まず、本発明による磁気メモリの一実施形態の構成について説明する。図1は、本実施形態による磁気メモリ1の全体構成を示す概念図である。磁気メモリ1は、記憶部2、ビット選択回路11、ワード選択回路12、ビット配線13及び14、並びにワード配線15及び19を備える。記憶部2は、複数の記憶領域3からなる。複数の記憶領域3は、m行n列(m、nは2以上の整数)からなる二次元状に配列されている。複数の記憶領域3のそれぞれは、TMR素子4、領域内配線31、読み書き兼用トランジスタ32、及び読み出し配線35を有する。これらのうち、TMR素子4、領域内配線31、及び読み出し配線35は、記憶部2の磁性材料層8(後述)に形成されている。
TMR素子4は、外部磁界によって磁化方向が変化する感磁層を含む磁気抵抗効果素子である。具体的には、TMR素子4は、感磁層である第1磁性層と、磁化方向が固定された第2磁性層と、第1磁性層及び第2磁性層に挟まれた非磁性絶縁層とを含んで構成される。TMR素子4は、領域内配線31を流れる書き込み電流により発生する外部磁界を受けて第1磁性層の磁化方向が変化するように、領域内配線31の一配線部分に沿って配置される。そして、書き込み電流によって第1磁性層の磁化方向が変化すると、第1磁性層の磁化方向と第2磁性層の磁化方向との関係に応じて第1磁性層と第2磁性層との間の抵抗値が変化する。こうして、TMR素子4に二値データが書き込まれる。
また、TMR素子4の第1磁性層側或いは第2磁性層側の一端は、領域内配線31の一配線部分と電気的に接続されることにより、読み書き兼用トランジスタ32と電気的に接続されている。そして、読み出し電流が、後述するビット配線13から読み書き兼用トランジスタ32及び領域内配線31を介してTMR素子4に供給されると、第1磁性層と第2磁性層との間の抵抗値に応じてTMR素子4の両端間の電圧値或いは電流値が変化する。この両端間電圧値または電流値が測定されることにより、TMR素子4に書き込まれた二値データが読み出される。なお、TMR素子4の第1磁性層側(第2磁性層側)とは、非磁性絶縁層に対して第1磁性層の側か或いは第2磁性層の側かを意味し、第1磁性層(第2磁性層)上に別の層が介在する場合を含む意味である。
領域内配線31は、該領域内配線31を流れる書き込み電流によってTMR素子4の第1磁性層に外部磁界を提供するとともに、TMR素子4に読み出し電流を供給する配線である。領域内配線31の一端は、読み書き兼用トランジスタ32を介してビット配線13に電気的に接続されている。領域内配線31の他端は、ビット配線14に電気的に接続されている。読み書き兼用トランジスタ32は、領域内配線31における書き込み電流及び読み出し電流の導通を制御するためのスイッチ手段である。読み書き兼用トランジスタ32は、ドレイン及びソースの一方が領域内配線31及びTMR素子4の一端に電気的に接続されており、他方がビット配線13に電気的に接続されている。読み書き兼用トランジスタ32のゲートは、ワード配線15に電気的に接続されている。
読み出し配線35は、TMR素子4に読み出し電流を供給するために、TMR素子4とワード配線19とを接続する配線である。具体的には、読み出し配線35の一端はTMR素子4の他端に電気的に接続されており、読み出し配線35の他端はワード配線19に電気的に接続されている。
ビット配線13及び14は、記憶領域3の各列に対応して配設されている。ビット配線13は、本実施形態における第1の配線である。すなわち、ビット配線13は、対応する列の記憶領域3それぞれが有する領域内配線31の一端に、読み書き兼用トランジスタ32を介して電気的に接続されている。ビット配線13は、領域内配線31へ正の書き込み電流を供給するとともに、領域内配線31を介してTMR素子4へ読み出し電流を供給する。また、ビット配線14は、本実施形態における第2の配線である。ビット配線14は、対応する列の記憶領域3それぞれが有する領域内配線31の他端に電気的に接続されている。ビット配線14は、領域内配線31に負の書き込み電流を供給する。
また、ワード配線15は、本実施形態における第3の配線である。ワード配線15は、記憶領域3の各行に対応して配設されており、対応する行の記憶領域3それぞれが有する読み書き兼用トランジスタ32の制御端子であるゲートに電気的に接続されている。また、ワード配線19は、本実施形態における第4の配線である。ワード配線19は、記憶領域3の各行に対応して配設されており、対応する行の記憶領域3それぞれが有するTMR素子4の他端に、読み出し配線35を介して電気的に接続されている。
本実施形態における書き込み電流供給手段は、ビット選択回路11によって構成される。すなわち、ビット選択回路11は、各記憶領域3の領域内配線31に正または負の書き込み電流を提供する機能を備える。具体的には、ビット選択回路11は、ビット配線13及び14と電気的に接続されており、磁気メモリ1の内部または外部からデータ書込時に指示されたアドレスに応じて該アドレスに該当する列を選択するアドレスデコーダ回路と、選択した列に対応するビット配線13とビット配線14との間に正または負の書き込み電流を供給するカレントドライブ回路とを含んで構成されている。
本実施形態における読み出し電流供給手段は、ビット選択回路11及びワード選択回路12によって構成されている。すなわち、ビット選択回路11及びワード選択回路12は、各記憶領域3のTMR素子4に領域内配線31を介して読み出し電流を提供する機能を備える。具体的には、ビット選択回路11は、磁気メモリ1の内部または外部からデータ読出時に指示されたアドレスに応じて、該アドレスに該当する列を選択するアドレスデコーダ回路を含んで構成されている。また、ワード選択回路12は、ワード配線19と電気的に接続されるとともに、指示されたアドレスに応じて該アドレスに該当する行を選択するアドレスデコーダ回路を含んで構成されている。そして、ビット選択回路11及びワード選択回路12のうち少なくとも一方には、選択した列に対応するビット配線13と、選択した行に対応するワード配線19との間に、読み出し電流を供給するカレントドライブ回路が含まれている。
また、ワード選択回路12は、ワード配線15と電気的に接続されている。ワード選択回路12は、データ書込時或いはデータ読出時において、選択した行に対応するワード配線15に対し、読み書き兼用トランジスタ32を導通状態にするための制御電圧を印加する。
以上の構成を備える磁気メモリ1は、次のように動作する。すなわち、磁気メモリ1の内部または外部からデータ書込みを行うアドレス(i行j列/1≦i≦m、1≦j≦n)が指定されると、ビット選択回路11及びワード選択回路12がそれぞれ該当するj列及びi行を選択する。ワード選択回路12に選択されたi行に含まれる記憶領域3の読み書き兼用トランジスタ32においては、ワード配線15を介して制御電圧がゲートに印加され、書き込み電流が導通可能な状態となる。また、ビット選択回路11に選択されたj列に含まれる記憶領域3においては、ビット配線13とビット配線14との間に、データに応じた正または負の電圧が印加される。そして、ビット選択回路11に選択されたj列及びワード選択回路12に選択されたi行の双方に含まれる記憶領域3においては、読み書き兼用トランジスタ32を介して領域内配線31に書き込み電流が生じ、この書き込み電流による磁界によってTMR素子4の第1磁性層の磁化方向が反転する。こうして、指示されたアドレス(i行j列)の記憶領域3に二値データが書き込まれる。
また、磁気メモリ1の内部または外部からデータ読み出しを行うアドレス(k行l列/1≦k≦m、1≦l≦n)が指定されると、ビット選択回路11及びワード選択回路12がそれぞれ該当するl列及びk行を選択する。ワード選択回路12に選択されたk行に含まれる記憶領域3の読み書き兼用トランジスタ32においては、ワード配線15を介して制御電圧がゲートに印加され、読み出し電流が導通可能な状態となる。また、ビット選択回路11に選択されたl列に対応するビット配線13と、ワード選択回路12に選択されたk行に対応するワード配線19との間には、ビット選択回路11またはワード選択回路12から読み出し電流が供給される。そして、ビット選択回路11に選択されたl列及びワード選択回路12に選択されたk行の双方に含まれる記憶領域3においては、読み出し電流がTMR素子4を流れる。そして、例えばTMR素子4における電圧降下量が判別されることにより、指示されたアドレス(k行l列)の記憶領域3に記憶された二値データが読み出される。
ここで、本実施形態における記憶部2の具体的な構成について詳細に説明する。図2は、記憶部2を列方向に沿って切断したときの断面構成を示す拡大断面図である。図3は、記憶部2を図2におけるI−I線で切断したときの拡大断面図である。図4は、記憶部2を図2におけるII−II線で切断したときの拡大断面図である。
図2〜図4を参照すると、記憶部2は、半導体層6、配線層7、及び磁性材料層8を備える。半導体層6は、半導体基板21を含み記憶部2全体の機械的強度を維持するとともに、トランジスタ等の半導体デバイスが形成される層である。磁性材料層8は、TMR素子4や、TMR素子4に磁界を効率的に与えるための磁気ヨーク5といった磁性材料による構成物が形成される層である。配線層7は、半導体層6と磁性材料層8との間に設けられる。配線層7は、磁性材料層8に形成されたTMR素子4などの磁性体デバイスと、半導体層6に形成されたトランジスタなどの半導体デバイスと、ビット配線13及び14並びにワード配線15及び19といった各記憶領域3を貫く配線とを、互いに電気的に接続するための配線が形成される層である。
まず、半導体層6について説明する。半導体層6は、半導体基板21と、絶縁領域22と、読み書き兼用トランジスタ32とを有する。半導体基板21は、例えばSi基板からなり、p型またはn型の不純物がドープされている。絶縁領域22は、半導体基板21上において読み書き兼用トランジスタ32以外の領域に形成されており、各記憶領域3の読み書き兼用トランジスタ32を互いに電気的に分離している。絶縁領域22は、例えばSiO2といった絶縁性材料からなる。
図2を参照すると、読み書き兼用トランジスタ32は、半導体基板21とは反対導電型のドレイン領域32a及びソース領域32c、制御端子であるゲート電極32b、並びに半導体基板21の一部によって構成されている。ドレイン領域32a及びソース領域32cは、例えばSi基板の表面近傍に、半導体基板21とは反対導電型の不純物がドープされて形成されている。ドレイン領域32aとソース領域32cとの間には半導体基板21が介在しており、その半導体基板21上にゲート電極32bが配置されている。このような構成により、読み書き兼用トランジスタ32では、ゲート電極32bに電圧が印加されると、ドレイン領域32a及びソース領域32cが互いに導通する。
次に、磁性材料層8について説明する。磁性材料層8は、TMR素子4と、磁気ヨーク5と、絶縁領域24と、領域内配線31と、読み出し配線35とを有する。なお、磁性材料層8においては、以下に説明する構成(TMR素子4、磁気ヨーク5、領域内配線31、及び読み出し配線35)及び他の配線以外の領域は、絶縁領域24によって占められている。ここで、図5は、TMR素子4の拡大断面図である。なお、図5は、記憶領域3の行方向に沿った断面を示している。図5を参照すると、TMR素子4は、第1磁性層41、非磁性絶縁層42、第2磁性層43、及び反強磁性層44が順に積層されてなる。第1磁性層41は本実施形態における感磁層であり、領域内配線31からの外部磁界によって磁化方向が変化し、二値データを記録することができる。本実施形態では、第1磁性層41は後述する磁気ヨーク5の一部(ビームヨーク5b)によって構成されている。第1磁性層41の材料としては、例えばCo、CoFe、NiFe、NiFeCo、CoPtなどの強磁性材料を用いることができる。
また、第2磁性層43では、反強磁性層44によって磁化方向が固定されている。すなわち、反強磁性層44と第2磁性層43との接合面における交換結合によって、第2磁性層43の磁化方向が安定化されている。第2磁性層43の磁化容易軸方向は、第1磁性層41の磁化容易軸方向に沿うように設定される。第2磁性層43の材料としては、例えばCo、CoFe、NiFe、NiFeCo、CoPtなどの強磁性材料を用いることができる。また、反強磁性層44の材料としては、IrMn、PtMn、FeMn、PtPdMn、NiO、またはこれらのうち任意の組み合わせの材料を用いることができる。
非磁性絶縁層42は、非磁性且つ絶縁性の材料からなる層である。第1磁性層41と第2磁性層43との間に非磁性絶縁層42が介在することにより、第1磁性層41と第2磁性層43との間には、トンネル磁気抵抗効果(TMR)が生じる。すなわち、第1磁性層41と第2磁性層43との間には、第1磁性層41の磁化方向と第2磁性層43の磁化方向との相対関係(平行または反平行)に応じた電気抵抗が生じる。非磁性絶縁層42の材料としては、例えばAl、Zn、Mgといった金属の酸化物または窒化物が好適である。
なお、第2磁性層43の磁化方向を安定化させる層として、反強磁性層44に代えて、非磁性金属層またはシンセティックAF(反強磁性)層を介して第3磁性層を設けても良い。この第3磁性層が第2磁性層43と反強磁性結合を形成することにより、第2磁性層43の磁化方向をさらに安定化させることができる。また、第2磁性層43から第1磁性層41への静磁界の影響を防止できるので、第1磁性層41の磁化反転を容易にすることができる。このような第3磁性層の材料としては特に制限はないが、例えばCo、CoFe、NiFe、NiFeCo、CoPtなどの強磁性材料を単独で、或いは複合させて用いることが好ましい。また、第2磁性層43と第3磁性層との間に設けられる非磁性金属層の材料としては、Ru、Rh、Ir、Cu、Agなどが好適である。なお、非磁性金属層の厚さは、第2磁性層43と第3磁性層との間に強い反強磁性結合を得るために2nm以下であることが好ましい。
再び図2〜図4を参照すると、領域内配線31は導電性の金属からなり、記憶領域3の列方向に延びている。領域内配線31の一端は、垂直配線16aを介して電極17aに電気的に接続されている(図2参照)。また、領域内配線31の他端は、図示しない配線によってビット配線14(図3、図4参照)に電気的に接続されている。領域内配線31の配線部分31aは、TMR素子4の第1磁性層41に沿って延びている。そして、領域内配線31に書き込み電流が流れることにより、配線部分31aからTMR素子4の第1磁性層41へ外部磁界が提供される。なお、TMR素子4の第1磁性層41の磁化容易軸方向は、領域内配線31の長手方向と交差する方向(すなわち、書き込み電流の方向と交差する方向)に沿うように設定される。
TMR素子4の第1磁性層41は、読み出し配線35上に設けられている。読み出し配線35は導電性の金属からなり、記憶領域3の列方向に延びている。読み出し配線35の一端は、第1磁性層41に電気的に接続されている。読み出し配線35の他端は、配線層7内部の配線(後述)を介してワード配線19(図2参照)に電気的に接続されている。また、TMR素子4の反強磁性層44は、領域内配線31の配線部分31aと電気的に接続されている。この構成により、読み出し電流を領域内配線31からTMR素子4へ(或いは読み出し配線35からTMR素子4へ)好適に流すことができる。
磁気ヨーク5は、領域内配線31の周囲を覆い、書き込み電流によって発生する磁界を効率よくTMR素子4へ提供するための強磁性部材である。ここで、図6は、磁気ヨーク5の拡大断面図である。なお、図6は、記憶領域3の行方向に沿った断面である。図6を参照すると、磁気ヨーク5は、第1のビームヨーク5b、一対のピラーヨーク5c、及び第2のビームヨーク5dを含んで構成されている。このうち、第1のビームヨーク5bは、TMR素子4の第1磁性層41を兼ねるように読み出し配線35と非磁性絶縁層42との間に配置されている。そして、第1のビームヨーク5bの一端は一対のピラーヨーク5cの一方と繋がっており、第1のビームヨーク5bの他端は一対のピラーヨーク5cの他方と繋がっている。また、第2のビームヨーク5dは、領域内配線31におけるTMR素子4とは反対側の面に沿って設けられている。一対のピラーヨーク5cは、領域内配線31の側面に沿って設けられており、第1のビームヨーク5bの両端と第2のビームヨーク5dの両端とを繋いでいる。以上の構成によって、第1のビームヨーク5b、一対のピラーヨーク5c、及び第2のビームヨーク5dは、領域内配線31の延在方向の一部(TMR素子4上の配線部分31a)において領域内配線31の外周を完全に(連続して)囲んでいる。また、TMR素子4の第1磁性層41は、磁気ヨーク5の一部(第1のビームヨーク5b)によって構成されることとなる。
磁気ヨーク5を構成する材料としては、例えばNi、Fe、Coのうち少なくとも一つの元素を含む金属が好適である。また、磁気ヨーク5は、その磁化容易軸方向がTMR素子4の第1磁性層41の磁化容易軸方向に沿うように形成されることが好ましい。
なお、絶縁領域24の材料としては、半導体層6の絶縁領域22と同様に、SiO2といった絶縁性材料を用いることができる。
次に、配線層7について説明する。配線層7は、絶縁領域23と、ビット配線13及び14と、ワード配線15及び19と、複数の垂直配線及び水平配線とを有する。なお、配線層7においては、各配線以外の領域は、すべて絶縁領域23によって占められている。絶縁領域23の材料としては、半導体層6の絶縁領域22と同様に、SiO2といった絶縁性材料を用いることができる。また、垂直配線の材料としては例えばWを、水平配線の材料としては例えばAlを、それぞれ用いることができる。
図2〜図4を参照すると、磁性材料層8の領域内配線31の一端が接続された電極17aは、垂直配線16b〜16d及び水平配線18a、18bに電気的に接続されており、垂直配線16dは読み書き兼用トランジスタ32のドレイン領域32aとオーミック接合されている。また、水平配線18cは垂直配線16eに電気的に接続されており、垂直配線16eは読み書き兼用トランジスタ32のソース領域32cとオーミック接合されている。水平配線18cは、垂直配線16hを介してビット配線13に電気的に接続されている。磁性材料層8の読み出し配線35は、配線層7の垂直配線16f、16g、及び水平配線18dに電気的に接続されており、垂直配線16gはワード配線19に電気的に接続されている。なお、ビット配線14は、領域内配線31における電極17aが設けられた側とは反対側の端部に、図示しない配線によって電気的に接続されている。
ゲート電極32bは、記憶領域3の行方向に延びるワード配線15の一部によって構成されている。このような構成によって、ワード配線15は、読み書き兼用トランジスタ32の制御端子(ゲート電極32b)に電気的に接続されている。
ここで、図7及び図8を参照して、本実施形態の記憶領域3におけるTMR素子4周辺の動作について説明する。図7(a)に示すように、領域内配線31に負の書き込み電流Iw1が流れると、領域内配線31の配線部分31aの周囲には該配線部分31aの周方向に磁界Φ1が発生する。磁界Φ1は、配線部分31aの周囲に設けられた磁気ヨーク5の内部を周回する閉じた経路を形成する。
配線部分31aの周囲に磁界Φ1が生じると、磁気ヨーク5の磁界閉じ込め作用によってTMR素子4の第1磁性層41(第1のビームヨーク5b)に磁界Φ1(外部磁界)が効率よく提供される。この磁界Φ1によって、第1磁性層41の磁化方向Aは磁界Φ1と同じ周方向を向く。ここで、第2磁性層43の磁化方向Bが、反強磁性層44との交換結合によって予め磁界Φ1と同じ周方向を向いている場合には、第1磁性層41の磁化方向Aと第2磁性層43の磁化方向Bとが互いに同じ向き、すなわち平行状態となる。こうして、TMR素子4に二値データの一方(例えば0)が書き込まれる。
TMR素子4に書き込まれた二値データを読み出す際には、図7(b)に示すように、配線部分31aと読み出し配線35との間に読み出し電流Irを流し、その電流値の変化または配線部分31aと読み出し配線35との間の電位差の変化を検出する。これにより、TMR素子4が二値データのうちいずれを記録しているか(すなわち、第1磁性層41の磁化方向Aが第2磁性層43の磁化方向Bと平行か反平行か)が判別できる。例えば、第1磁性層41の磁化方向Aが第2磁性層43の磁化方向Bと平行である場合、非磁性絶縁層42におけるトンネル磁気抵抗効果(TMR)によって、第1磁性層41と第2磁性層43との間の抵抗値が比較的小さくなる。従って、例えば読み出し電流Irを一定とした場合には配線部分31aと読み出し配線35との間の電位差が比較的小さくなることから、TMR素子4に二値データとして0が書き込まれていることがわかる。
また、図8(a)に示すように、領域内配線31に正の書き込み電流Iw2が流れると、領域内配線31の配線部分31aの周囲には磁界Φ1とは逆回りの磁界Φ2が発生する。磁界Φ2は、磁気ヨーク5の内部を周回する閉じた経路を形成する。
配線部分31aの周囲に磁界Φ2が生じると、磁気ヨーク5の磁界閉じ込め作用によってTMR素子4の第1磁性層41(第1のビームヨーク5b)に磁界Φ2(外部磁界)が効率よく提供される。この磁界Φ2によって、第1磁性層41の磁化方向Aは磁界Φ2と同じ周方向を向く。ここで、第2磁性層43の磁化方向Bが磁界Φ2とは逆の周方向を向いている場合には、第1磁性層41の磁化方向Aと第2磁性層43の磁化方向Bとが互いに逆向き、すなわち反平行状態となる。こうして、TMR素子4に二値データの他方(例えば1)が書き込まれる。
第1磁性層41の磁化方向Aが第2磁性層43の磁化方向Bと反平行である場合、非磁性絶縁層42におけるトンネル磁気抵抗効果(TMR)によって、第1磁性層41と第2磁性層43との間の抵抗値が比較的大きくなる。従って、例えば図8(b)に示すように配線部分31aと読み出し配線35との間に一定の読み出し電流Irを流すと、配線部分31aと読み出し配線35との間の電位差が比較的大きくなる。このことから、TMR素子4に二値データとして1が書き込まれていることがわかる。
以上に説明した、本実施形態による磁気メモリ1が有する効果について説明する。本実施形態による磁気メモリ1では、1つのスイッチ手段(読み書き兼用トランジスタ32)によって書き込み電流Iw1、Iw2及び読み出し電流Irを制御している。書き込み電流や読み出し電流を制御するためのトランジスタは、図2〜4に示したとおり、記憶領域の大きさを規定する程のスペースが必要となる。従って、1つの記憶領域につき2つのトランジスタが必要な従来の磁気メモリや、或いは各列毎及び各行毎に読み出し用トランジスタが必要なクロスポイント型の磁気メモリでは、記憶部が大型化してしまい、好ましくなかった。これに対し、本実施形態による磁気メモリ1では、書き込み電流Iw1、Iw2及び読み出し電流Irの双方を制御できる読み書き兼用トランジスタ32を設けることによって、各記憶領域3に1つのトランジスタを設けるだけで済み、記憶領域3のスペースをより小さくすることができる。従って、磁気メモリ1(記憶部2)の小型化が可能となる。
また、本実施形態による磁気メモリ1では、各記憶領域3毎に領域内配線31が設けられ、各記憶領域3に設けられた読み書き兼用トランジスタ32によって領域内配線31を流れる書き込み電流Iw1、Iw2を制御できるので、TMR素子4の半選択状態を無くし、書き込み対象ではない記憶領域3への誤書き込みを防ぐことができる。
また、本実施形態による磁気メモリ1では、前述したように、書き込み対象の記憶領域3を含む列に対応するビット配線13とビット配線14との間に書き込み電流Iw1、Iw2を供給し、且つ、当該記憶領域3を含む行に対応するワード配線15に対し、読み書き兼用トランジスタ32を導通状態に制御するための制御電圧を印加することにより、当該記憶領域3の領域内配線31に書き込み電流Iw1、Iw2を好適に流すことができる。また、読み出し対象の記憶領域3を含む列に対応するビット配線13と当該記憶領域3を含む行に対応するワード配線19との間に読み出し電流Irを供給し、且つ、当該記憶領域3を含む行に対応するワード配線15に対し、読み書き兼用トランジスタ32を導通状態に制御するための制御電圧を印加することにより、当該記憶領域3のTMR素子4に読み出し電流を好適に流すことができる。
また、本実施形態のように、磁気メモリ1は、ワード配線15及び19に電気的に接続されておりTMR素子4へ読み出し電流Irを供給する読み出し電流供給手段(ビット選択回路11及びワード選択回路12)を備えることが好ましい。これにより、読み出し対象である記憶領域3のTMR素子4へ読み出し電流Irを好適に供給できる。
また、本実施形態のように、磁気メモリ1は、ビット配線13及び14に電気的に接続されており領域内配線31へ書き込み電流Iw1、Iw2を供給する書き込み電流供給手段(ビット選択回路11)を備えることが好ましい。これにより、書き込み対象である記憶領域3の領域内配線31へ書き込み電流Iw1、Iw2を好適に供給できる。
また、本実施形態のように、複数の記憶領域3のそれぞれは、領域内配線31の配線部分31aを連続して囲むように設けられた磁気ヨーク5を有することが好ましい。そして、TMR素子4の第1磁性層41は、磁気ヨーク5の一部(第1のビームヨーク5b)によって構成されていることが好ましい。このように、第1磁性層41に沿った配線部分31aが磁気ヨーク5に囲まれることによって、第1磁性層41から逸れた方向へ放出される磁界を低減できる。また、配線部分31aを囲む磁気ヨーク5の一部(第1のビームヨーク5b)によって第1磁性層41が構成されるので、外部磁界Φ1、Φ2を第1磁性層41へ効率よく提供できる。このように、本実施形態の構成によれば、書き込み電流Iw1、Iw2による外部磁界Φ1、Φ2をTMR素子4の第1磁性層41へ効率よく提供できるので、第1磁性層41の磁化方向Aを小さな書き込み電流Iw1、Iw2でもって反転させることができる。
また、各記憶領域3がこのような磁気ヨーク5を有することによって、第1磁性層41の磁化方向Aを小さな書き込み電流Iw1、Iw2でもって反転できるので、書き込み電流Iw1、Iw2の導通を制御する読み書き兼用トランジスタ32を小さくできる。従って、各記憶領域3の大きさを更に小さくできるので、磁気メモリ1(記憶部2)を更に小型化できる。
ここで、本実施形態による磁気メモリ1の製造方法のうち、磁性材料層8の製造方法について図9〜図16を参照しながら説明する。
図9(a)は、磁気メモリ1の製造工程の一部を示す平面図であり、図9(b)は、図9(a)に示すIII−III線に沿った側面断面図である。まず、図9(a)及び図9(b)に示すように、配線層7上に読み出し配線35を形成する。このとき、読み出し配線35の一端が配線層7の垂直配線16fと接するように読み出し配線35を形成する。なお、図中に示された垂直配線16iは、配線層7においてビット配線14(図3及び図4参照)に電気的に接続された垂直配線である。
続いて、TMR素子4を形成する。図10(a)は、磁気メモリ1の製造工程の一部を示す平面図であり、図10(b)は、図10(a)に示すIV−IV線に沿った側面断面図である。図10(a)及び図10(b)に示すように、まず、高真空(UHV)DCスパッタ装置により、Ta層下地層、NiFe層、及びCoFe層からなる層61を成膜する。この層61は、第1のビームヨーク(第1磁性層)となる層である。次に、層61上にAl層を成膜し、酸素プラズマによりAl層の酸化を行い、非磁性絶縁層となるトンネル絶縁層62を形成する。そして、トンネル絶縁層62上に、第2磁性層となるCoFe層63、反強磁性層となるIrMn層64、及びTa保護層(不図示)を順次成膜する。
図11(a)は、磁気メモリ1の製造工程の一部を示す平面図であり、図11(b)は、図11(a)に示すV−V線に沿った側面断面図である。続いて、第1のビームヨークの平面形状を有する第1のレジストマスクをTa保護層上に形成した後、層61、トンネル絶縁層62、CoFe層63、及びIrMn層64をイオンミリングにより成形し、第1のビームヨーク5b(第1磁性層41)を形成する。そして、TMR素子の平面形状を有する第2のレジストマスクを第1のビームヨーク5bの略中心部分の上に形成した後、トンネル絶縁層62、CoFe層63、及びIrMn層64をイオンミリングにより成形し、非磁性絶縁層42、第2磁性層43、及び反強磁性層44を含むTMR素子4を形成する。TMR素子4を形成した後、CVD装置を用いて、例えばSi(OC2H5)4により、TMR素子4上を除く全域にSiO2絶縁層24aを形成する。この後、第2のレジストマスクを除去する。
続いて、領域内配線31を形成する。図12(a)は、磁気メモリ1の製造工程の一部を示す平面図であり、図12(b)は、図12(a)に示すVI−VI線に沿った側面断面図である。まず、領域内配線31の平面形状に応じた開口を有する第3のレジストマスクをSiO2絶縁層24a上に形成する。このとき、第3のレジストマスクの開口が、垂直配線16b、TMR素子4、及び垂直配線16iにわたって連続するように第3のレジストマスクを形成する。そして、スパッタによりTi層、Cu層を順次成膜した後、第3のレジストマスクを除去する。こうして、領域内配線31がTMR素子4上に形成される。また、この領域内配線31は、その一端が垂直配線16bに、他端が垂直配線16iに、それぞれ接続される。
続いて、図13に示すように、領域内配線31を覆うSiO2絶縁層24bを形成する。すなわち、領域内配線31の上面及び側面、並びに既に形成したSiO2絶縁層24a上を覆うようにSiO2絶縁層24bを形成する。このとき、CVD装置を用いて、例えばSi(OC2H5)4によりSiO2絶縁層24bを形成するとよい。
続いて、図14に示すように、SiO2絶縁層24a及び24bのうち不要な部分を除去し、第1のビームヨーク5bの両端を露出させる。まず、領域内配線31上に形成されたSiO2絶縁層24bの上に、図示しない第4のレジストマスクを形成する。そして、SiO2絶縁層24a及び24bのうち第4のレジストマスクで覆われていない部分(すなわち、領域内配線31の周囲を除く部分)を、反応性イオンエッチング装置により例えばC4F8ガスを用いて除去する。
続いて、磁気ヨーク5のうち残りのピラーヨーク5c及び第2のビームヨーク5dを形成する。図15(a)は、磁気メモリ1の製造工程の一部を示す平面図であり、図15(b)は、図15(a)に示すVII−VII線に沿った側面断面図である。まず、磁気ヨーク5の平面形状に応じた開口を有する図示しない第5のレジストマスクを形成する。このとき、第5のレジストマスクの開口を、SiO2絶縁層24b及び第1のビームヨーク5bが露出するように形成する。そして、スパッタによりNiFe層を形成する。このとき、NiFe層がSiO2絶縁層24bを完全に覆うようにNiFe層を形成する。そして、第5のレジストマスクを除去する。こうして、第1のビームヨーク5b、一対のピラーヨーク5c、及び第2のビームヨーク5dを有し、領域内配線31を囲む磁気ヨーク5が形成される。
最後に、第5のレジストマスクを除去し、図16に示すように、SiO2絶縁層24aと同じ材料からなるSiO2絶縁層24cを、磁気ヨーク5上を含む配線層7上の全面にわたってCVD法により形成する。こうして、SiO2絶縁層24a〜24cからなる絶縁領域24が形成され、磁性材料層8が完成する。
(変形例)
ここで、本実施形態による磁気メモリ1の変形例について説明する。図17及び図18は、それぞれ本変形例に係る磁気ヨーク51及び52の形状を示す断面図である。上記実施形態の磁気ヨーク5に代えて本変形例に係る磁気ヨーク51または52を設けることによって、上記実施形態の磁気メモリ1と同等の効果を得ることができる。
ここで、本実施形態による磁気メモリ1の変形例について説明する。図17及び図18は、それぞれ本変形例に係る磁気ヨーク51及び52の形状を示す断面図である。上記実施形態の磁気ヨーク5に代えて本変形例に係る磁気ヨーク51または52を設けることによって、上記実施形態の磁気メモリ1と同等の効果を得ることができる。
まず、図17を参照すると、磁気ヨーク51は、所定の長さの空隙を介して対向する少なくとも一対の開放端部を有する略環状体からなり、領域内配線31の一配線部分31aの外周を囲むように配設されている。具体的には、本変形例の磁気ヨーク51は、一対の対向ヨーク51bと、一対のピラーヨーク51cと、ビームヨーク51dとによって構成されている。このうち、一対の対向ヨーク51bは、一対の開放端部として一対の端面51aを有する。この一対の端面51aは、TMR素子4aの第1磁性層45の磁化容易軸方向に沿って、所定の長さの空隙を介して互いに対向している。
本変形例のTMR素子4aは、上記実施形態のTMR素子4とは異なり、第1磁性層45が磁気ヨーク51の一部を兼ねてはおらず、他の層(非磁性絶縁層46、第2磁性層47、及び反強磁性層48)と同様の平面形状に形成されている。そして、TMR素子4aは、第1磁性層45が領域内配線31の配線部分31aと電気的に接続され、反強磁性層48が読み出し配線35と電気的に接続されるように、上記実施形態のTMR素子4とは上下逆に形成されている。
また、TMR素子4a及び磁気ヨーク51は、TMR素子4aの一対の側面4bがそれぞれ磁気ヨーク51の一対の端面51aに対向するように、且つ第1磁性層45の磁化容易軸方向が一対の端面51aの並ぶ方向に沿うように、それぞれ配置される。また、磁気ヨーク51のビームヨーク51dは、領域内配線31におけるTMR素子4aとは反対側の面に沿って設けられている。一対のピラーヨーク51cは、領域内配線31の側面に沿って設けられており、一対の対向ヨーク51bそれぞれにおける端面51aとは異なる側の一端と、ビームヨーク51dの両端とを繋いでいる。
以上の構成によって、対向ヨーク51b、ピラーヨーク51c、及びビームヨーク51dは、領域内配線31のうちTMR素子4aに沿った一部分(配線部分31a)の外周を囲んでいる。
このように、磁気ヨーク51は、TMR素子4aの一対の側面4bのそれぞれに対向する一対の端面51aを有するような形状でもよい。これにより、書き込み電流により生じる磁気ヨーク51内部の磁界が、領域内配線31の配線部分31aの外周方向に閉じた経路を構成できる。そして、一対の端面51aの間に配置されたTMR素子4aの第1磁性層45へ効率よく外部磁界を提供することができる。
なお、本変形例において、磁気ヨーク51における周方向と直交する断面の面積は、一対の端面51aにおいて最も小さいことが好ましい。これにより、磁気ヨーク51内部の磁界を、TMR素子4aの第1磁性層45へ更に効率よく与えることができる。
次に、図18を参照すると、本変形例による磁気ヨーク52は、一対の対向ヨーク52b、一対のピラーヨーク52c、及びビームヨーク52dを含んで構成されている。このうち、一対のピラーヨーク52c及びビームヨーク52dの構成及び形状は、既述した磁気ヨーク51の一対のピラーヨーク51c及びビームヨーク51dの構成及び形状(図17参照)と同様である。一対の対向ヨーク52bは、その端面52aがTMR素子4aの側面4bのうち第1磁性層45の側面と接している。磁気ヨーク52はこのような形状であってもよく、書き込み電流によって磁気ヨーク52内部に生成される磁界を第1磁性層45へ更に効率よく提供することができる。なお、この変形例において、磁気ヨーク52が導電性を有する場合には、第1磁性層45と第2磁性層47との間に流れる読み出し電流を非磁性絶縁層46を介して好適に流すために、磁気ヨーク52の一対の端面52aは非磁性絶縁層46には接していないことが好ましく、第2磁性層47には接していてはならない。
本発明による磁気メモリは、上記した実施形態に限られるものではなく、他に様々な変形が可能である。例えば、上記実施形態では磁気抵抗効果素子としてTMR素子を用いているが、巨大磁気抵抗(GMR:Giant magneto-Resistive)効果を利用したGMR素子を用いてもよい。GMR効果とは、非磁性層を挟んだ2つの強磁性層の磁化方向のなす角度により、積層方向と直交する方向における強磁性層の抵抗値が変化する現象である。すなわち、GMR素子においては、2つの強磁性層の磁化方向が互いに平行である場合に強磁性層の抵抗値が最小となり、2つの強磁性層の磁化方向が互いに反平行である場合に強磁性層の抵抗値が最大となる。なお、TMR素子やGMR素子には、2つの強磁性層の保磁力の差を利用して書き込み/読み出しを行う疑似スピンバルブ型と、一方の強磁性層の磁化方向を反強磁性層との交換結合により固定するスピンバルブ型とがある。また、GMR素子におけるデータ読み出しは、積層方向と直交する方向における強磁性層の抵抗値の変化を検出することにより行われる。また、GMR素子におけるデータ書き込みは、書き込み電流により生じる磁界によって一方の強磁性層の磁化方向を反転させることにより行われる。
また、上記実施形態では、書き込み電流及び読み出し電流を制御するためのスイッチ手段としてトランジスタ(読み書き兼用トランジスタ)を用いているが、このスイッチ手段としては、必要に応じて電流を遮断/導通させる機能を有する様々な手段を適用することができる。
また、上記実施形態では、領域内配線の配線部分と磁気抵抗効果素子の一端とが接続されることにより、スイッチ手段と磁気抵抗効果素子とが互いに電気的に接続されている。スイッチ手段と磁気抵抗効果素子とは、これ以外にも、例えば領域内配線とは別の配線によって互いに接続されていてもよい。
1…磁気メモリ、2…記憶部、3…記憶領域、4…TMR素子、5…磁気ヨーク、5b…第1のビームヨーク、5c…ピラーヨーク、5d…第2のビームヨーク、6…半導体層、7…配線層、8…磁性材料層、11…ビット選択回路、12…ワード選択回路、13…ビット配線、14…ビット配線、15…ワード配線、16a〜16i…垂直配線、17a…電極、18a〜18d…水平配線、19…ワード配線、21…半導体基板、22,23,24…絶縁領域、31…領域内配線、31a…配線部分、32…読み書き兼用トランジスタ、32a…ドレイン領域、32b…ゲート電極、32c…ソース領域、35…読み出し配線、41…第1磁性層、42…非磁性絶縁層、43…第2磁性層、44…反強磁性層。
Claims (7)
- 複数の記憶領域を備え、前記複数の記憶領域のそれぞれは、
外部磁界によって磁化方向が変化する感磁層を含む磁気抵抗効果素子と、
前記感磁層に沿って延びる配線部分を有し、前記配線部分を流れる書き込み電流によって前記感磁層に前記外部磁界を提供する領域内配線と、
前記領域内配線の一端及び前記磁気抵抗効果素子の一端に電気的に接続されており、前記領域内配線における前記書き込み電流の導通、及び前記磁気抵抗効果素子への読み出し電流の導通を制御するスイッチ手段と
を有することを特徴とする、磁気メモリ。 - 前記領域内配線が、前記配線部分において前記磁気抵抗効果素子の前記一端と電気的に接続されており、前記読み出し電流を前記スイッチ手段から前記磁気抵抗効果素子へ流すことを特徴とする、請求項1に記載の磁気メモリ。
- 前記複数の記憶領域が、m行n列(m、nは2以上の整数)からなる2次元状に配列されており、
前記複数の記憶領域の各列に対応して設けられ、対応する列の前記記憶領域それぞれにおいて、前記スイッチ手段を介して前記領域内配線の前記一端及び前記磁気抵抗効果素子の前記一端に電気的に接続された第1の配線と、
前記複数の記憶領域の各列に対応して設けられ、対応する列の前記記憶領域それぞれにおいて、前記領域内配線の他端に電気的に接続された第2の配線と、
前記複数の記憶領域の各行に対応して設けられ、対応する行の前記記憶領域それぞれにおいて、前記スイッチ手段の制御端子に接続された第3の配線と、
前記複数の記憶領域の各行に対応して設けられ、対応する行の前記記憶領域それぞれにおいて、前記磁気抵抗効果素子の他端と電気的に接続された第4の配線と
をさらに備えることを特徴とする、請求項1または2に記載の磁気メモリ。 - 前記第1及び第4の配線に電気的に接続されており、前記磁気抵抗効果素子へ前記読み出し電流を供給する読み出し電流供給手段をさらに備えることを特徴とする、請求項3に記載の磁気メモリ。
- 前記第1及び第2の配線に電気的に接続されており、前記領域内配線へ前記書き込み電流を供給する書き込み電流供給手段をさらに備えることを特徴とする、請求項3または4に記載の磁気メモリ。
- 前記複数の記憶領域のそれぞれは、前記領域内配線の前記配線部分を連続して囲むように設けられた磁気ヨークを更に有し、
前記磁気抵抗効果素子の前記感磁層は、前記磁気ヨークの一部によって構成されていることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載の磁気メモリ。 - 前記複数の記憶領域のそれぞれは、所定の長さの空隙を介して対向する少なくとも一対の開放端部を含み前記領域内配線の前記配線部分を囲むように設けられた磁気ヨークを更に有し、
前記磁気抵抗効果素子は、該磁気抵抗効果素子の一対の側面が前記磁気ヨークの前記一対の開放端部とそれぞれ対向または接するように配置されていることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載の磁気メモリ。
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