JP2006156303A - 耐熱絶縁被覆 - Google Patents
耐熱絶縁被覆Info
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Abstract
【課題】 ガラス系絶縁材料を用いる絶縁被覆であって、変形や振動によってもクラックや剥離が発生しにくく、かつ環境温度が変化してもクラック等が発生しにくい耐熱絶縁被覆を提供する。
【解決手段】 導体の絶縁被覆であって、導体側に設けられ、P2O5系のガラスからなり、変形性のあるガラス層1と、ガラス層1を被覆する無機ポリマー焼成層と、無機ポリマー焼成層を被覆し、高い熱膨張率及び前記P2O5系のガラスよりも高い融点を有するガラスからなるガラス層2を有することを特徴とする耐熱絶縁被覆。
【選択図】 図1
【解決手段】 導体の絶縁被覆であって、導体側に設けられ、P2O5系のガラスからなり、変形性のあるガラス層1と、ガラス層1を被覆する無機ポリマー焼成層と、無機ポリマー焼成層を被覆し、高い熱膨張率及び前記P2O5系のガラスよりも高い融点を有するガラスからなるガラス層2を有することを特徴とする耐熱絶縁被覆。
【選択図】 図1
Description
本発明は、無機系材料の層を有する導体の絶縁被覆であって、高い耐熱性を有するとともに、割れやクラック等が生じにくい耐熱絶縁被覆に関するものである。
電気機器の小型、高出力化の目的で、電気製品内や電気製品間を繋ぐ導線への大電流化(導線の電流密度の上昇)が求められる場合が多くなっている。大電流化に伴い、導線を構成する導体の発熱も大きくなるので、これらを被覆する絶縁材には高い耐熱性が求められる。耐熱性の高い絶縁材としては、ポリイミド樹脂が知られているが、現在さらに高い耐熱性が望まれており、この要望を満たすものとして、無機ガラス系絶縁材料やセラミック系絶縁材料が期待されている。
しかし、ガラス系絶縁材料やセラミック系絶縁材料は脆く、外部圧力、例えば、電気機器製造の際の導体加工時に伴う変形や、使用時の振動や衝撃により、割れやクラック等の破断が生じやすい。割れやクラック等が生じると、場合により絶縁被覆の剥離によりショートが発生する。又、従来のガラス系絶縁材料やセラミック系絶縁被覆は、その熱膨張係数が導体とは異なるので、通電に伴う環境温度の変化によりクラック等が発生しやすいとの問題もあった。
そこで、高い耐熱性を有するガラス系等の無機系材料からなる絶縁被覆であって、変形や振動によってもクラックや剥離が発生しにくく、かつ環境温度が変化してもクラック等が発生しにくい耐熱絶縁被覆の開発が望まれていた。
本発明は、ガラス系絶縁材料を用いる絶縁被覆であって、変形や振動によってもクラックや剥離が発生しにくく、かつ環境温度が変化してもクラック等が発生しにくい耐熱絶縁被覆を提供することを課題とする。
この課題は、導体の絶縁被覆であって、導体側に設けられ、P2O5系のガラスからなり、変形性のあるガラス層1と、ガラス層1を被覆する無機ポリマー焼成層と、無機ポリマー焼成層を被覆し、高い熱膨張率及び前記P2O5系のガラスよりも高い融点を有するガラスからなるガラス層2、を有することを特徴とする耐熱絶縁被覆(請求項1)により達成される。
本発明者は検討の結果、絶縁被覆を、2層のガラス層とその間を強固に密着させる無機ポリマー焼成層を有する構造とし、導体側に設けられるガラス層に、変形性、可撓性のあるガラスを用い、外側のガラス層に、前記ガラスよりは融点が高くかつ高い熱膨張率を有するガラスを用いるよりことにより、変形や振動によってもクラックや剥離が発生しにくく、かつ環境温度が変化してもクラック等が発生しにくい耐熱絶縁被覆が得られることを見出し、本発明を完成したのである。
導体側に設けられるガラス層1は、変形性、可撓性のあるガラスからなる。その結果、導体が外力により変形しても、それに応じて変形するので、クラック等の発生を防ぐことができる。又、導体の変形や振動を、自らの変形により吸収するので、ガラス層2に加わる変形や振動を緩和し、ガラス層2のクラック等の発生も低減することができる。
ここで、変形性のあるガラスとしては、好ましくは、室温において100kgf/cm2の荷重を加えたときの伸びが2.0%以上のガラスが用いられる。このようなガラスとしては、2次元鎖状構造をとるガラスが挙げられる。2次元鎖状構造をとるガラスは、3次元的な結合をしていないので、通常用いられる3次元網目構造をとるガラスに比べて変形性、可撓性を有する。
P2O5系のガラスとは、P2O5及び金属酸化物を主成分として含有するガラスである。金属酸化物としては、CaO、MgOや、Li2O、Na2O、K2O等のアルカリ土類金属、アルカリ金属の酸化物等が例示される。アルカリ金属は、イオン伝導性が大きいので、アルカリ金属の酸化物を用いた場合はガラスの絶縁性を低下させる。しかし、2種類以上のアルカリ金属をガラス中に含有させることにより、ガラスの絶縁性の低下を防ぐことができる。
P2O5系のガラスは、2次元鎖状構造を取りやすく、従って変形性を得やすい。しかし、P2O5系のガラス中のアルカリ金属酸化物等の量が多いと、3次元的な結合を生じる傾向があるので、この観点からは、アルカリ金属酸化物は少ない方が好ましい。
又、P2O5系のガラスは、本発明の課題を達成するための変形性、可撓性を損なわない限り、P2O5と金属酸化物以外の成分を含有してもよい。例えば耐水性を向上させるためB2O3を含有できるが、その量は、P2O5の1モルに対し、0.8モル以下である。0.8モルを越えると、変形性のあるガラスは得られない。以上述べたような理由から、2次元鎖状構造を得るために、P2O5系のガラス中のP2O5の含有量は40モル%以上が好ましく、より好ましくは50モル%以上である。
なお、ガラス中には、P2O5や金属酸化物が、それぞれ独立した分子としては存在しない。そこで「含有する。」とは、P2O5と金属酸化物が、それぞれ独立した分子として存在していると仮定した場合と同じ組成を、前記のガラスが有することを意味する。又、ガラス化のしやすさの観点からは、P2O5と金属酸化物の含有比率は、P2O5の1モルに対し、金属酸化物は1.2モル未満が好ましい。
P2O5系のガラスは、前記のように他のガラスに比べて変形性があるが、基材との熱膨張係数の差が大きければ、クラックや剥離が生じやすくなる。そこで、熱膨張係数が、導体のそれに近いP2O5系のガラスが好ましく、このようなガラスとして、P2O5−Li2O−K2O系ガラスが挙げられる。請求項2はこの好ましい態様に該当する。P2O5−Li2O−K2O系ガラスとして、より具体的には、50P2O5−25Li2O−25K2Oガラスが例示される。
ガラス層1は、さらに無機フィラーを含有し、それをP2O5系のガラス中に分散されることが好ましい。請求項3はこの好ましい態様に該当する。前記のP2O5系のガラスは、変形性を有するものであるが、その軟化点は400℃程度以下と低い。一方、ガラス層2の形成には、400℃より高い温度での熱処理が必要であるので、その熱処理の際、ガラス層1は400℃以上に加熱されて溶融し流れ出し、絶縁層を維持できない場合がある。P2O5系のガラス中に無機フィラーを分散させることにより、この溶出を防ぐことができる。
無機フィラーとしては、酸化アルミニウム(Al2O3)、酸化マグネシウム(MgO)、酸化チタン(TiO2)等のフィラーが挙げられ、粒径10〜50μm程度のものが好ましく用いられる。無機フィラーの添加量としては、P2O5系のガラス100重量部に対し5〜30重量部の範囲が好ましい。5重量部未満では溶出を防ぐ効果が充分でなく、一方30重量部を越えると、ガラス層1形成のために塗布される液の粘度が増大し、均一な厚みの塗布が困難になるので好ましくない。
ガラス層1とガラス層2は、異なったガラス成分からなり、両者の密着は通常困難である。そこで、両者を密着させるために、両者間に無機ポリマー焼成層が設けられる。又、この無機ポリマー焼成層により、ガラス層1とガラス層2との間の熱膨張率の差違より生じるガラス層2のクラック等の発生を低減することができる。
無機ポリマー焼成層を形成する無機ポリマーとしては、市販されている無機ポリマーを用いることができ、塗料状のものが好ましい。中でも、有機物含有量が小さく、体積収縮率が小さい無機ポリマーが好ましく用いられる。請求項4は、この好ましい態様に該当する。体積収縮率が小さいことにより、クラックが発生しにくくなり、緻密な膜が得られるので好ましい。有機物含有量が大きいと、体積収縮率が大きくなりクラックが発生しやすくなるので好ましくない。
体積収縮率としては、40%以下が好ましい。ここで、体積収縮率とは、熱処理により有機物が除去されることによる体積の減少率である。このような無機ポリマーとしては、ポリシラザン、ポリカルボシランが例示される。
ガラス層2を形成するガラスは、高い熱膨張率を有し、かつガラス層1を形成するP2O5系のガラスよりも高い融点を有する。高い熱膨張率を有するので、導体との間の熱膨張率の差が小さくなり、環境温度の変化によるクラックや剥離の発生を低減できる。
又、ガラス層2を形成するガラスは、ガラス層1のガラスよりも高い融点を有する。前記のように、ガラス層1を形成するP2O5系のガラスは、その融点が400℃程度以下と低く、ガラス層1のみでは高い耐熱性が得られない。そこで、ガラス層1のガラスよりも高い融点を有するガラスからなるガラス層2で被覆することにより、絶縁被覆全体としては、高い耐熱性が得られるのである。又、ガラス層1を形成するP2O5系のガラスは、通常、耐水性も低いが、耐水性を有するガラス層2で被覆することにより、絶縁被覆全体としては、高い耐水性が得られる。
ガラス層2を形成するガラスは、ガラス層1より高い融点を有するが、一方、加工のしやすさ、絶縁被覆の形成のしやすさのために、シリカ系のガラス等よりは低い融点を有することが好ましい。融点が、400℃以上であり、800℃程度以下のものが好ましく用いられる。
ガラス層2を形成するガラスの好ましい例としては、(1)P酸化物及びB酸化物、並びに(2)2種類以上のアルカリ金属酸化物を主成分として含有し、ガラス転移点における熱膨張率が8〜23×10−6/℃のガラスが挙げられる。請求項5は、この好ましい態様に該当する。なお、「含有する」とは、前記のP2O5系のガラスの場合と同じ意味である。
前記範囲内の熱膨張率を有する結果、室温からガラス転移点の範囲の温度で、該ガラス層2は、銅(熱膨張率:17×10−6/℃)、銀(熱膨張率:19×10−6/℃)、金(熱膨張率:14×10−6/℃)等の導体や、導体めっきとして使用されるニッケル(熱膨張率:13×10−6/℃)に近い熱膨張率を有することになり、通電等に伴う環境温度の変化によるクラックの発生を防ぐことができる。
又、ガラスが、P酸化物、B酸化物及び2種類以上のアルカリ金属酸化物を主成分として含有することにより、この範囲の熱膨張率及び400〜800℃の範囲内の融点とともに、結晶化しにくく安定したガラス状態を有し、かつ熱劣化や放電劣化しにくいとのすぐれた特徴を有するガラス層2を容易に得ることができる。
熱膨張率は、P酸化物とB酸化物の比率や、アルカリ金属酸化物の含有量により変動する。そこで、これらを調整することにより、前記範囲の熱膨張率を得ることができる。(1)P酸化物及びB酸化物と、(2)2種類以上のアルカリ金属酸化物の比率は、好ましくは、モル比で1:0.1〜1:1.2の範囲である。(2)の含有量が(1)の1モルに対し0.1モル未満になると熱膨張率が低下し、8〜23×10−6/℃の範囲とすることが困難になる。一方、1.2モルを越えるとガラス化しにくくなる。より高い耐熱性、絶縁抵抗を得るためには、(1)と(2)の比率は、モル比で1:0.1〜1:0.6の範囲がより好ましい。
(1)P酸化物及びB酸化物としては、それぞれ、P2O5及びB2O3が例示される。P2O5及びB2O3を用いる場合、両者の比率はモル比で、1:0.9〜1:3.5の範囲が好ましい。より好ましくは、1:1〜1:3の範囲である。P2O5の比率が上記の範囲より大きくなると、ガラスの耐水性が低下する場合があり、吸湿による絶縁性の低下により劣化しやすくなる。一方、B2O3の比率が上記の範囲より大きくなると、ガラスの熱膨張率が低下し、8〜23×10−6/℃の範囲とすることが困難になる。又ガラスが硬く脆くなる傾向がある。
アルカリ金属は、イオン伝導性が大きいので、ガラスの絶縁性を低下させる。しかし、前記のように、2種類以上のアルカリ金属をガラス中に含有させることにより、ガラスの絶縁性の低下を防ぐことができる。2種類以上のアルカリ金属酸化物としては、その入手しやすさ等から、Li2O、Na2O又はK2Oから選ばれることが好ましく、特にLi2O及びK2Oの組合せが、絶縁性の低下を防ぐ点から好ましい。又、2種類以上のアルカリ金属酸化物間の比率は等モルに近い程絶縁性の低下を防ぐ効果が大きい。
ガラス層2を構成するガラスは、さらに好ましくは、前記の(1)及び(2)に加えて、(3)P酸化物及びB酸化物より融点の高い酸化物を含有する。(3)の含有により、ガラスの耐水性を向上させることができる。(3)はいわゆる無機修飾酸化物であり、ガラスを形成するものではないが、ガラスを形成する原子間の隙間に入り、ガラスの物性を変える効果を有するものである。
P酸化物及びB酸化物より融点の高い酸化物の含有量としては、(1)P酸化物及びB酸化物の合計1モルに対して、(3)P酸化物及びB酸化物より融点の高い酸化物の合計含有量が、0.0015〜0.15モルとなる範囲が好ましい。(3)の含有量が、(1)の1モルに対して0.0015モル未満となると、耐水性向上の効果が充分に得られない場合がある。一方、0.15モルを越えると、熱膨張率が低下し、8〜23×10−6/℃の範囲とすることが困難になる場合がある。
(3)P酸化物及びB酸化物より融点の高い酸化物としては、Al2O3及びSiO2が好ましく例示される。なお、前記の(1)及び(2)の場合と同様に、(3)を含有するとは、(3)を必ずしも独立した分子として含有するものではないが、(3)を分子として含有したと仮定した場合と同じ組成をガラスが有することを意味する。
本発明の耐熱絶縁被覆により被覆される導体の材質や形状は、特に限定されないが、銅、銀又はこれらを主成分とする合金からなる線状のものが例示される。銅、銀等にニッケル等のめっきがされたものも例示される。又、銅等に表面処理をほどこし金属酸化膜を形成したものも好ましく用いられる。金属酸化膜を形成することにより、絶縁被覆との密着性を向上させることができる。
本発明の耐熱絶縁被覆は、例えば、P2O5系のガラスの溶融液に、絶縁被覆される導体を浸漬して引上げ、冷却して固化してガラス層1を形成した後、無機ポリマーの溶液を塗布し、乾燥し熱処理して無機ポリマー焼成層を形成し、その後、ガラス層2を構成するガラスの溶融液に浸漬して引上げ、冷却して固化してガラス層2を形成する方法が挙げられる。ガラス層2を構成するガラスの溶融液は、P2O5系のガラスの融点より高い温度であるが、無機ポリマー焼成層が形成されているので、ガラス層1の溶出を防ぐことができる。特に、ガラス層1がフィラーを含有する場合は、溶出防止の効果が大きい。
ガラス層1やガラス層2を形成する方法として、前記のガラスの溶融液に浸漬する方法の代りに、ガラス粉末の分散液に浸漬して、ガラス粉末を導体等の表面に付着させた後、加熱してガラス粉末を溶融し、冷却、固化する方法等も採用することができる。
ガラス層1のガラス粉末の分散液に浸漬した後、加熱、溶融を行わず、無機ポリマー層の形成を行い、さらにガラス層2のガラス粉末の分散液に浸漬した後、加熱、溶融を行って、ガラス層1、ガラス層2及び無機ポリマー焼成層を同時に形成する方法も採用できる。加熱、溶融は、ガラス層2のガラスの融点以上の温度で行われるが、無機ポリマー層が形成されているので、ガラス層1の溶出を防ぐことができる。
ガラス粉末の分散液を使用する場合、ガラス粉末を分散する溶剤としては、150℃以上の高沸点を有するものが好ましく、ポリエチレングリコールやα−テルピネオールが例示される。さらに、粘度を下げるため、好ましくは1−メチル−2−ピロリドン等が該溶剤に添加される。
本発明の耐熱絶縁被覆は、ポリイミド樹脂よりはるかに高い耐熱性を有し、絶縁性に優れ、導体の腐食防止等に優れるとともに、変形や振動によってもクラックや剥離が発生しにくく、かつ環境温度が変化してもクラック等が発生しにくいとの優れた特徴を有する。そこで、この耐熱絶縁被覆により被覆された導体を用いることにより、高い電流密度を達成することができるので、小型、高出力の電気機器等に好適に用いられる。
次に発明を実施するための最良の形態を実施例により説明する。実施例は、本発明の範囲を限定するものではない。
[ガラス層1用のP2O5系のガラスの製造]
Li2PO3の25重量部及びK2PO3の25重量部を混合して得られたガラスバッチを、高純度アルミナルツボを用いて電気炉(900℃、大気中)で、0.5〜1時間溶融する。その後、炉から取り出し、ステンレス鋳型またはグラファイト板にキャストしてガラスを得た。
Li2PO3の25重量部及びK2PO3の25重量部を混合して得られたガラスバッチを、高純度アルミナルツボを用いて電気炉(900℃、大気中)で、0.5〜1時間溶融する。その後、炉から取り出し、ステンレス鋳型またはグラファイト板にキャストしてガラスを得た。
このようにして得られたガラスを粉砕した後、篩を用いて特定の粒径のガラス粉末を得た。得られたガラス粉末50重量部に、分散溶剤のα−テルピネオール50重量部を加えて、ガラス粉末の分散液を作成した。
[ガラス層1のガラスの塗布]
銅からなり、平角状の導体を、空気内で加熱しその表面に酸化銅の被膜を形成した。その後、前記のガラス粉末の分散液に1分間浸漬した後引上げ、乾燥した。この浸漬及び乾燥の工程を繰り返すことにより、厚み50μmのガラス層1で被覆された被覆導体1が得られた。
銅からなり、平角状の導体を、空気内で加熱しその表面に酸化銅の被膜を形成した。その後、前記のガラス粉末の分散液に1分間浸漬した後引上げ、乾燥した。この浸漬及び乾燥の工程を繰り返すことにより、厚み50μmのガラス層1で被覆された被覆導体1が得られた。
[無機ポリマー焼成層の形成]
市販のポリシラザン(クラリアントジャパン株式会社製、SOD Signiflow200)に、被覆導体1を浸漬した後引上げ、その後乾燥した。この浸漬及び乾燥の工程を繰り返すことにより、所定の厚みの無機ポリマー層を形成した後450℃で焼成し、無機ポリマー焼成層が形成された被覆導体2が得られた。
市販のポリシラザン(クラリアントジャパン株式会社製、SOD Signiflow200)に、被覆導体1を浸漬した後引上げ、その後乾燥した。この浸漬及び乾燥の工程を繰り返すことにより、所定の厚みの無機ポリマー層を形成した後450℃で焼成し、無機ポリマー焼成層が形成された被覆導体2が得られた。
[ガラス層2用のガラスの製造]
原料として、B2O3(添川理化学株式会社製、純度99.9%)、Li2PO3(白辰化学研究所製、純度3N)、K2PO3(白辰化学研究所製、純度3N)、及びAl2O3(片山化学工業株式会社製、純度98%以上)を用いた。各原料の配合量は次のとおりである。
B2O3 :12.728重量部 Li2PO3:15.702重量部
K2PO3:21.567重量部 Al2O3 :0.771重量部
原料として、B2O3(添川理化学株式会社製、純度99.9%)、Li2PO3(白辰化学研究所製、純度3N)、K2PO3(白辰化学研究所製、純度3N)、及びAl2O3(片山化学工業株式会社製、純度98%以上)を用いた。各原料の配合量は次のとおりである。
B2O3 :12.728重量部 Li2PO3:15.702重量部
K2PO3:21.567重量部 Al2O3 :0.771重量部
各原料を十分に混合し、ガラスバッチを作製した。次に、得られたガラスバッチを、高純度アルミナルツボを用いて、電気炉(1100〜1300℃、大気中)で0.5〜1時間溶融した。その後、炉から取り出し、ステンレス鋳型またはグラファイト板にキャストしてガラスを得た。その結果、P2O5:B2O3:Li2O:K2O:Al2O3を、33:33:16.5:16.5:2の組成で含有するガラスが50重量部作製された。このガラスの軟化点は471℃であった。又ガラス転移温度における熱膨張率は13.7×10−6/℃であった。なお、軟化点及び熱膨張率は、昇温速度10℃/分で測定したDTA曲線及びTMA曲線から得られた値である。
[ガラス分散液の作成]
このようにして得られたガラスを粉砕した後、篩を用いて特定の粒径のガラス粉末を得た。得られたガラス粉末50重量部に、分散溶剤のα−テルピネオール50重量部を加えて、ガラス粉末の分散液を作成した。
このようにして得られたガラスを粉砕した後、篩を用いて特定の粒径のガラス粉末を得た。得られたガラス粉末50重量部に、分散溶剤のα−テルピネオール50重量部を加えて、ガラス粉末の分散液を作成した。
[浸漬、熱処理工程]
このガラス粉末の分散液に、前記の無機ポリマー層が形成された被覆導体2を、1分間浸漬した後引上げた。その後、570℃のオーブン中に10分間保持して熱処理した後冷却すると、本発明の絶縁被覆で被覆された導体が得られた。その断面図を図1に示す。なお、ガラス層2の厚みは、50μmであった。
このガラス粉末の分散液に、前記の無機ポリマー層が形成された被覆導体2を、1分間浸漬した後引上げた。その後、570℃のオーブン中に10分間保持して熱処理した後冷却すると、本発明の絶縁被覆で被覆された導体が得られた。その断面図を図1に示す。なお、ガラス層2の厚みは、50μmであった。
図1に示されるように、この例の導体は銅からなり、平角状の断面形状を有し、酸化銅の被膜が形成されている。酸化銅の被膜の外周は、P2O5系のガラスからなり変形性のあるガラス層1で覆われ、その外周が無機ポリマー焼成層で覆われ、さらにその外周が、P2O5:B2O3:Li2O:K2O:Al2O3を含有する融点471℃のガラスで形成されるガラス層2で覆われている。
Claims (5)
- 導体の絶縁被覆であって、導体側に設けられ、P2O5系のガラスからなり、変形性のあるガラス層1と、ガラス層1を被覆する無機ポリマー焼成層と、無機ポリマー焼成層を被覆し、高い熱膨張率及び前記P2O5系のガラスよりも高い融点を有するガラスからなるガラス層2、を有することを特徴とする耐熱絶縁被覆。
- P2O5系のガラスが、P2O5−Li2O−K2O系ガラスであることを特徴とする請求項1に記載の耐熱絶縁被覆。
- ガラス層1が、さらにP2O5系のガラス中に分散された無機フィラーを含有することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の耐熱絶縁被覆。
- 無機ポリマー焼成層が、体積収縮率が40%以下である無機ポリマーから形成されることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の耐熱絶縁被覆。
- ガラス層2が、(1)P酸化物及びB酸化物、並びに(2)2種類以上のアルカリ金属酸化物を主成分として含有し、ガラス転移点における熱膨張率が8〜23×10−6/℃のガラスからなることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の耐熱絶縁被覆。
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