JP2006278094A - 耐熱絶縁被覆材 - Google Patents

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Abstract

【課題】 導体を絶縁被覆する被覆材であって、高い耐熱性を有するとともに、割れやクラック等による絶縁被覆の欠陥が生じにくい耐熱絶縁被覆材を提供する。
【解決手段】 無機酸化物からなり、軟化温度が400℃以上で800℃未満のガラス層、特にガラス転移点における熱膨張率が8〜23×10−6/℃であるガラス層と、該ガラス層を保護し、無機酸化物からなり、該ガラス層より高い軟化温度を有する保護シート層、特に多孔質材料からなる保護シート層を有する耐熱絶縁被覆材。
【選択図】 図1

Description

本発明は、導体を絶縁被覆する被覆材であって、高い耐熱性を有するとともに、割れやクラック等の絶縁被覆の欠陥が生じにくい耐熱絶縁被覆材に関するものである。
近年、電気機器の小型、高出力化の目的で、電気製品の大電流化(導線の電流密度の上昇)が求められる場合が多くなっている。大電流化に伴い、電気製品内や電気製品間を繋ぐ導線等の導体の発熱も大きくなるので、これらを被覆する絶縁材には高い耐熱性が求められる。
耐熱性の高い絶縁材としては、ポリイミド樹脂が知られており、ポリイミド樹脂により絶縁被覆されたポリイミド線は、耐熱寿命250℃を達成する。しかし、現在さらに高い耐熱性が望まれており、この要望を満たすものとして、無機ガラス系絶縁材料やセラミックス系絶縁材料が期待されている。
しかし、ガラス系絶縁材料やセラミックス系絶縁材料は脆く、電気機器製造の際の導体加工時に伴う曲げ等の変形や使用時の振動や衝撃により、割れやクラック等の破断が生じやすく、場合により絶縁被覆の脱離によりショートが発生する場合がある。又、従来のガラス系絶縁材料やセラミックス系絶縁被覆は、その熱膨張係数が導体とは異なるので、温度差が大きい成膜時や、通電に伴う環境温度の変化によりクラック等が発生しやすいという問題もあった。
割れやクラック等の破断が生じにくい絶縁材料として、絶縁シートを用い、これらを導体周囲に巻く方法が挙げられる。例えば、特開2003−217351号公報には、耐熱温度が200℃以上の耐熱性短繊維と、バインダー成分とを主成分とする電気絶縁紙(請求項1)が、耐クラック性等に優れるもの(段落0001)として開示されており、この電気絶縁紙を導体周囲に巻くことにより、割れやクラック等の破断が生じにくい絶縁材料が得られると考えられる。
しかし、従来の絶縁シートや電気絶縁紙は、前記の例のように有機バインダーを用いており、従って、有機樹脂の熱劣化が生じるのでポリイミド樹脂を越えるような高い耐熱性は得ることができない。そこで、高い耐熱性を有しながら、割れやクラック等による絶縁被覆の欠陥がより生じにくい絶縁被覆材が望まれていた。
特開2003−217351号公報
本発明は、導体を絶縁被覆する被覆材であって、高い耐熱性を有するとともに、割れやクラック等による絶縁被覆の欠陥が生じにくい耐熱絶縁被覆材を提供することを課題とする。
この課題は、無機酸化物からなり、軟化温度が400℃以上で800℃未満のガラス層と、該ガラス層を保護し、無機酸化物からなり、該ガラス層より高い軟化温度を有する保護シート層を有する耐熱絶縁被覆材(請求項1)により達成される。
本発明者は検討の結果、
1)無機酸化物からなり、軟化温度が400℃以上で800℃未満のガラス層により導体を被覆すれば、ポリイミド樹脂をはるかに越える高い耐熱性を有し、絶縁性にも優れた絶縁層が形成されること、及び
2)前記ガラス層を、無機酸化物からなり、該ガラス層より高い軟化温度を有する保護シート層で保護することにより、ガラス層の割れ、クラック、被覆の脱離等の欠陥の発生を低減できること、さらにガラス層に生じたクラック等をアニールにより修復できること
を見出し、前記の発明を完成した。
本発明の耐熱絶縁被覆材は、無機酸化物からなるガラス層を有するが、該ガラス層は絶縁被覆材の導体側に設けられ、導体を被覆する。この被覆が、ガラス化した緻密な分子構造を有することにより、優れた絶縁性が得られ、又導体の酸化防止、腐食防止に優れた効果を発揮する。
ガラス層としては、ガラス転移点において、8〜23×10−6/℃の範囲内の熱膨張率を有するものが、好ましい。請求項2は、この好ましい態様に該当する。
前記範囲内の熱膨張率を有する結果、室温からガラス転移点の範囲の温度で、該ガラス層は、銅(熱膨張率:17×10−6/℃)、銀(熱膨張率:19×10−6/℃)、金(熱膨張率:14×10−6/℃)等の導体や、導体めっきとして使用されるニッケル(熱膨張率:13×10−6/℃)に近い熱膨張率を有することになり、温度差が大きい成膜時や、通電等に伴う環境温度の変化によるクラックの発生を防ぐことができる。
前記範囲内の熱膨張率は、ガラス層を構成する無機酸化物として、P酸化物、B酸化物及び2種類以上のアルカリ金属酸化物を用いることにより得ることができる。P酸化物、B酸化物及び2種類以上のアルカリ金属酸化物からなるガラス層は、この熱膨張率が得られるとの特徴の他にも、結晶化しにくく安定したガラス状態が得られる、軟化温度を400〜800℃の範囲内にしやすい、熱劣化や放電劣化しにくく良好な高温絶縁性が達成される等の優れた特徴を有し、又人体に有害な鉛系等の物質を含まないので、本発明の耐熱絶縁被覆材のガラス層として好ましい。請求項3はこの好ましい態様に該当し、前記の耐熱絶縁被覆材であって、ガラス層が、(1)P酸化物及びB酸化物、並びに(2)2種類以上のアルカリ金属酸化物を主成分として含有することを特徴とする耐熱絶縁被覆材を提供するものである。
熱膨張率は、P酸化物とB酸化物の比率や、アルカリ金属酸化物の含有量により変動する。そこでこれらを、後述する範囲内で調整することにより、前記範囲の熱膨張率を得ることができる。なお、ガラス中には、P酸化物、B酸化物、アルカリ金属酸化物が、それぞれ独立した分子としては存在しない。そこで「(1)並びに(2)を含有する。」とは、P酸化物、B酸化物及び2種類以上のアルカリ金属酸化物が、それぞれ独立した分子として存在していると仮定した場合と同じ組成を、前記のガラスが有することを意味する。
(1)P酸化物及びB酸化物と、(2)2種類以上のアルカリ金属酸化物の比率は、好ましくは、(1):(2)のモル比で1:0.1〜1:1.2の範囲である。(2)の含有量が(1)の1モルに対し0.1モル未満になると熱膨張率が低下し、8〜23×10−6/℃の範囲とすることが困難になる。一方、1.2モルを越えるとガラス化しにくくなる。より高い耐熱性、絶縁抵抗を得るためには、(1):(2)のモル比は、1:0.1〜1:0.6の範囲がより好ましい。
(1)P酸化物及びB酸化物としては、それぞれ、P及びBが例示される。請求項4は、この態様に該当する。P及びBを用いる場合、P:Bのモル比は、1:0.9〜1:3.5の範囲が好ましい。より好ましくは、1:1〜1:3の範囲である。
の比率が上記の範囲より大きくなると、ガラスの耐水性が低下する場合があり、吸湿による絶縁性の低下により劣化しやすくなる。一方、Bの比率が上記の範囲より大きくなると、ガラスの熱膨張率が低下し、8〜23×10−6/℃の範囲とすることが困難になる。又ガラスが硬く脆くなる傾向がある。
アルカリ金属は、イオン伝導性が大きいので、ガラスの絶縁性を低下させる。しかし、前記の好ましい態様のように、2種類以上のアルカリ金属をガラス中に含有させることにより、ガラスの絶縁性の低下を防ぐことができる。
2種類以上のアルカリ金属酸化物としては、その入手しやすさ等から、LiO、NaO又はKOが好ましい。又、2種類以上のアルカリ金属酸化物間の比率は等モルに近い程絶縁性の低下を防ぐ効果が大きい。従って、それらの組成は、その中の1種類のアルカリ金属酸化物の含有量1モルに対し、他のアルカリ金属酸化物の含有量が0.8〜1.2モルであることが好ましい。LiO、NaO及びKOから選ばれる組合せの中でも、LiO及びKOの組合せが、絶縁性の低下を防ぐ点から、特に好ましい。
ガラス層を構成するガラスは、さらに好ましくは、前記の(1)及び(2)に加えて、(3)P酸化物及びB酸化物より融点の高い酸化物を含有する。請求項5は、この好ましい態様に該当する。(3)の含有により、ガラスの耐水性を向上させることができる。特に、P酸化物のB酸化物に対する比率が大きい場合は、耐水性が低下する傾向があるので、(3)の含有が好ましい。(3)はいわゆる無機修飾酸化物であり、ガラスを形成するものではないが、ガラスを形成する原子間の隙間に入り、ガラスの物性を変える効果を有するものである。
P酸化物及びB酸化物より融点の高い酸化物の含有量としては、(1)P酸化物及びB酸化物の合計1モルに対して、(3)P酸化物及びB酸化物より融点の高い酸化物の合計含有量が、0.0015〜0.15モルとなる範囲が好ましい。(3)の含有量が、(1)の1モルに対して0.0015モル未満となると、耐水性向上の効果が充分に得られない場合がある。一方、0.15モルを越えると、熱膨張率が低下し、8〜23×10−6/℃の範囲とすることが困難になる場合がある。
(3)P酸化物及びB酸化物より融点の高い酸化物としては、Al及びSiOが好ましく例示される。請求項6はこの好ましい態様、すなわち(3)P酸化物及びB酸化物より融点の高い酸化物が、Al及びSiOから選ばれる少なくとも1種である態様に該当する。なお、前記の(1)及び(2)の場合と同様に、(3)を含有するとは、(3)を必ずしも独立した分子として含有するものではないが、(3)を分子として含有したと仮定した場合と同じ組成をガラスが有することを意味する。
本発明の耐熱絶縁被覆材を構成するガラス層は、その軟化温度が400℃以上で800℃未満の範囲であることを特徴とする。ここで軟化温度とは、TMA法により、荷重10g、昇温10℃/分の条件で測定したときの変曲点の温度を言う。ポリイミド樹脂をはるかに越える高い耐熱性を得るためには、軟化温度を400℃以上とする必要がある。
一方、800℃未満の軟化温度は、一般のシリカ系ガラス(軟化温度:1000℃以上)等に比べて低い。400℃以上かつ800℃未満の温度範囲で、ガラス層の粘度は10ポイズ以下となり、この範囲の温度でのアニールにより、幅50μm程度までの微細クラックは容易に消失するので、ガラス層を修復することができる。ガラス層の軟化温度が800℃以上の場合は、アニールによるガラス層のクラック等の修復が困難になり、又、保護シート層の材料の選択が困難になる。前記のように、P酸化物、B酸化物を含有するガラスによれば、この範囲内の軟化温度を容易に得ることができる。
ガラス層は、例えば、それを構成する無機酸化物の溶融液に、絶縁被覆される導体を浸漬して引上げ、冷却して固化する方法や、ガラス粉末の分散液に導体を浸漬した後、加熱してガラス粉末を溶融し、冷却、固化する方法等により形成することができる。
ガラス粉末の分散液を使用する場合、ガラス粉末を分散する溶剤としては、150℃以上の高沸点を有するものが好ましく、ポリエチレングリコールやα−テルピネオールが例示される。さらに、粘度を下げるため、好ましくは1−メチル−2−ピロリドン等が該溶剤に添加される。
なお、ガラス層により絶縁被覆される導体の材質や形状は特に限定されないが、銅、銀又はこれらを主成分とする合金からなる線状のものが例示される。銅、銀等にニッケル等のめっきがされたものも例示される。
本発明の耐熱絶縁被覆材を構成する保護シート層は、前記のガラス層を保護するように配置される。ここで、保護するように配置されるとは、該ガラス層の外周を覆うように設けられることを意味するが、外周の中でも、他のガラス層と接触してアニール時には一体となる部分やその他の層により被覆されている部分等は、該ガラス層が、他のガラス層やその他の層により保護されているので、保護シート層を設ける必要はない。
保護シート層は、無機酸化物からなるものであるが、振動や衝撃によりクラック等が発生しにくい材質、例えばクッション性を有するものが好ましく用いられる。この観点から、気孔率が10容量%以上で90容量%未満の多孔質材料が、保護シート層の材質として好ましく用いられる。請求項7は、この好ましい態様に該当する。ここで、気孔率とは、多孔質材料の全体積に対する気孔の体積の比率であり、ガラス層上への組付けの際圧縮される場合等、保護シート層がコイル製造工程で圧縮等の加工を受ける場合は、その加工後の値(気孔の体積の比率)を意味する。
気孔率が10容量%以上の多孔質材料を用いることにより、保護シート層はクッション性を有するようになり、振動や衝撃によるクラック等をガラス層に発生しにくくする。例えば、モータ用コイルの絶縁被覆に用いられる場合は、ガラス層と外部との直接接触をなくすとともに、コイル製造工程中のコイルの内径側に磁性体心を入れる際のこすれや、モータ使用時の磁気振動等により、ガラス層に加わる衝撃を緩和する。
一方気孔率が90容量%以上となると、保護シート層の強度が低下し、加工等の際に破損しやすくなる。又モータ使用時に気孔内の空間で部分放電が発生する、導電性の異物が入り込む等により絶縁性能が低下する場合がある。気孔率が10容量%以上で90容量%未満の多孔質材料としては、絶縁性の無機系繊維が例示される。
又、多孔質材料を用いることにより、保護シート層形成後、気孔にセラミックス等の無機材料の分散液を投入することが可能になり、例えば、保護シート層の断熱性、すなわち外部への放熱性を調整することもできる。気孔率は、より好ましくは、40容量%以上で60容量%未満の範囲である。
保護シート層は、その軟化温度が、前記ガラス層の軟化温度より高いことを特徴とする。軟化温度を、前記ガラス層の軟化温度より高くすることにより、前記ガラス層の軟化温度より高い温度でのアニールが可能になり、このアニールによりガラス層に生じたクラックを修復することができる。このアニールをより容易に行うためには、保護シート層の軟化温度は、前記ガラス層の軟化温度より100℃以上高いことが好ましい。
保護シート層を構成する無機酸化物としては、AlやSiOが例示される。AlやSiOの融点は1000℃をはるかに越えるので、これらを主成分とすることにより、前記ガラス層の軟化温度より100℃以上高い軟化温度が容易に達成される。そこで、保護シート層としては、Al及びSiOから選ばれる少なくとも1種を主成分とする、気孔率が10容量%以上で90容量%未満の多孔質材料からなるものが好ましい。請求項8は、この好ましい態様に該当する。
気孔率が10容量%以上で90容量%未満の多孔質材料としては、アルミナファイバーやSiO系ガラス繊維、これらの織布、不織布等が挙げられる。保護シート層の形成に有機バインダーを用いると、有機樹脂が熱劣化するので300℃以上の高温での使用は困難であったが、有機材料のバインダーを用いない保護シート層にはこのような問題がない。そこで、保護シート層は、好ましくは、有機バインダーを用いずに形成される。織布や不織布を用いることにより、有機材料のバインダーを使用せずに容易に保護シート層の形成が可能であるので好ましい。請求項9は、この好ましい態様に該当し、前記の耐熱絶縁被覆材であって、保護シート層が、織布又は不織布であることを特徴とする耐熱絶縁被覆材を提供するものである。
保護シート層は、ガラス層形成後、ガラス層により被覆されたコイル上へ、貼り付けや巻付け等の方法により組付けられて形成することができる。例えば、保護シート層が無機系繊維からなる場合は、ガラス層により被覆されたコイルの外周に、巻付ける方法により形成することができる。ガラス層上への固着をより確実に行い、保護シート層が多孔性材料の場合は所定の気孔率を得るために、貼り付けや巻付けの際又は貼り付けや巻付け後等に、保護シート層の圧縮を行ってもよい。
本発明の耐熱絶縁被覆材は、ポリイミド樹脂よりはるかに高い耐熱性を有するとともに、次に示す優れた特徴を有する。
1.導体側に、緻密な分子構造を有するガラス層が設けられているので、絶縁性に優れ、導体の腐食防止等に優れる。
2.ガラス層が、保護シート層により保護されているので、割れやクラック等の絶縁被覆の欠陥が生じにくく、又ガラス層に生じたクラック等もアニールにより修復可能である。
3.特に、ガラス層の熱膨張率が所定の範囲内にある場合は、割れやクラック等の発生がさらに少ない。
4.保護シート層が、多孔性の材質からなりクッション性等を有する場合は、割れやクラック等の発生をさらに抑えることができる。
次に発明を実施するための最良の形態を実施例により説明する。実施例は、本発明の範囲を限定するものではない。
[ガラスの製造]
原料として、B(添川理化学株式会社製、純度99.9%)、LiPO(白辰化学研究所製、純度3N)、KPO(白辰化学研究所製、純度3N)、及びAl(片山化学工業株式会社製、純度98%以上)を用いた。各原料の配合量は次のとおりである。
:12.7重量部 LiPO:15.7重量部
PO:21.6重量部 Al :0.771重量部
各原料を十分に混合し、ガラスバッチを作製した。次に、得られたガラスバッチを、高純度アルミナルツボを用いて、電気炉(1100〜1300℃、大気中)で0.5〜1時間溶融した。その後、炉から取り出し、ステンレス鋳型またはグラファイト板にキャストしてガラスを得た。その結果、P:B:LiO:KO:Alを、33:33:16.5:16.5:2の組成で含有するガラスが50重量部作製された。このガラスの融点(軟化点)は471℃であった。又熱膨張率は13.7×10−6/℃であった。
[分散液の作成]
このようにして得られたガラスを粉砕した後、篩を用いて特定の粒径のガラス粉末を得た。得られたガラス粉末50重量部に、分散溶剤のα−テルピネオール50重量部を加えて、ガラス粉末の分散液(絶縁塗料)を作成した。
[浸漬工程]
銅からなり、断面が1×4mmの平角状の導体を、図2に示す形状(コイルの軸方向に見た平面形状)、大きさのコイルに加工し、その後前記の分散液に1分間浸漬した後引上げた。
[熱処理工程]
その後、コイルを、570℃のオーブン中に10分間保持して熱処理した後冷却すると、導体外周に約100μm厚のガラス層を有するコイルが得られた。その後、コイルの導体を被覆するガラス層が互いに接触するように、コイルをその長さ方向に圧縮した。
[保護シート]
前記のようにして得られたコイルの外周に、材料組成がAl−SiO系であって径1〜10μm、長さ0.5〜5mmの短繊維からなる不織状シート(絶縁シート:日本無機株式会社製MCペーパー、軟化温度1500℃)を、厚さが約0.5mmになるように巻付け、不織布紙形状で気孔率が70容量%の保護シート層を形成した。同様に、コイルの内周側にも、同じ不織状シートを貼り付け保護シート層を形成した。このようにして、保護シート層が形成されたコイルの斜視図を図3に示す。
さらに、内周側に磁性体心となるコア材を挿入し、周囲から約2ton/cmで加圧したところ、保護シート層の気孔率は40〜60容量%の範囲内となった。約2ton/cmの加圧によりガラス層にはクラックが発生したが、その後670℃で10分間加熱することにより、そのクラックは修復した。
又このコイルを、コイルの長さ方向と平行な面で切ったときの部分断面図を図1に示す。図1に示されるように、各導体は、ガラス層で覆われ、ガラス層の外側には保護シート層があり、ガラス層を保護しており、このガラス層と保護シート層により本発明の耐熱絶縁被覆材が構成されている。なお、導体間にあるガラス層は互いに接触しているので、この部分には保護シート層を有しない。
なお、絶縁シートで保護シート層を形成する(例えば前記の例)代りに、含浸、モールド処理により保護シート層を形成してもよい。又、モータの製造において、コイルの内周側には磁性体心(鉄心等)が挿入されるが、磁性体心が挿入しやすいように、内周側保護シート層上にワックスを塗ってもよい。
内周側保護シート層形成後、保護シート層の断熱性を調整するため、又保護シート層の強度を補強し又機械的耐久性を向上させるため、セラミックスやポリシラザン等の無機含浸材や、ポリイミドや不飽和ポリエステル等の有機含浸材を、保護シート層の気孔内に含浸処理により充填してもよい。この含浸処理をすれば、保護シート層の気孔内の空間が無機含浸材や有機含浸材により埋められるので、鉄心(磁性体心)の防錆効果も得られる。なお、無機含浸材のポリシラザンとしては、クラリアントジャパン製のNN310等が例示される。又、有機含浸材のポリイミドとしては、IST社製のスカイボンド705等が、不飽和ポリエステルとしては、日立化成社製のWP−2780等がそれぞれ例示される。
本発明の耐熱絶縁被覆材及び被覆された導体の一例を示す部分断面図である。 実施例で使用されたコイルの平面図である。 実施例で作製された耐熱絶縁被覆材で被覆されたコイルの斜視図である。

Claims (9)

  1. 無機酸化物からなり、軟化温度が400℃以上で800℃未満のガラス層と、該ガラス層を保護し、無機酸化物からなり、該ガラス層より高い軟化温度を有する保護シート層を有する耐熱絶縁被覆材。
  2. ガラス層の、ガラス転移点における熱膨張率が、8〜23×10−6/℃であることを特徴とする請求項1に記載の耐熱絶縁被覆材。
  3. ガラス層が、(1)P酸化物及びB酸化物、並びに(2)2種類以上のアルカリ金属酸化物を主成分として含有することを特徴とする請求項2に記載の耐熱絶縁被覆材。
  4. (1)P酸化物及びB酸化物が、それぞれ、P及びBであることを特徴とする請求項3に記載の耐熱絶縁被覆材。
  5. ガラス層が、さらに(3)P酸化物及びB酸化物より融点の高い酸化物を含有することを特徴とする請求項3又は請求項4に記載の耐熱絶縁被覆材。
  6. (3)P酸化物及びB酸化物より融点の高い酸化物が、Al及びSiOから選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項5に記載の耐熱絶縁被覆材。
  7. 保護シート層が、気孔率が10容量%以上で90容量%未満の多孔質材料からなることを特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれかに記載の耐熱絶縁被覆材。
  8. 保護シート層が、Al及びSiOから選ばれる少なくとも1種を主成分とするものであることを特徴とする請求項7に記載の耐熱絶縁被覆材。
  9. 保護シート層が、織布又は不織布であることを特徴とする請求項7又は請求項8に記載の耐熱絶縁被覆材。
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