JP2006147457A - 酸化銀粉末、その製造方法及び導体ペースト - Google Patents
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Abstract
【解決手段】電子顕微鏡観察による平均一次粒子径が0.1〜0.3μm、レーザ回折散乱式粒度分布測定により算出された平均凝集粒子径(D50値)が1.0〜2.5μmであり、かつ粒子表面にポリエーテルが被着した酸化銀粒子からなる酸化銀粉末は、大気中で加熱処理を行ったとき、400〜460℃の温度範囲において酸化銀の主たる熱分解反応を生じる。
【選択図】図1
Description
通常、銀系導体ペーストをセラミック基板やセラミックコンデンサ、セラミックインダクタ等のセラミック電子部品素体に焼き付ける場合、600〜900℃程度の高い温度で焼成される。しかし、ソーダライムガラス基板等に焼き付けて各種表示管の電極を形成する場合や、シリコン太陽電池の電極を形成する場合、また半導体チップのダイボンディングに用いられる場合、ガラス基板やシリコン半導体は耐熱性が低いため、熱により基板を損傷しないよう、比較的低温、例えば500℃以下の温度で、短時間で焼成する必要がある。
大気中で加熱処理を行ったとき、400〜460℃の温度範囲において酸化銀の主たる熱分解反応が生ずることを特徴とする。
ポリエーテルがポリエチレングリコール及び/又はポリプロピレングリコールであることを特徴とする。
ポリエーテルが数平均分子量300〜1000のポリエーテルであることを特徴とする。
銀系導電性粉末を含むことを特徴とする。
さらに、酸化銀の主たる熱分解が生じる際、酸素を放出して分解するため、有機ビヒクルの樹脂成分の酸化分解が促進される効果もある。またポリエーテルは熱分解性が極めて優れており、焼成後にカーボンや炭素質の有機物残渣が残留しにくい。
さらに、市販の粒径の大きい酸化銀粉末に比べると活性が高く、低温で速やかに分解するにもかかわらず、常温ないし150℃以下の低温では熱的に極めて安定で凝集や分解を起こすことがない。また耐湿性も優れており、粉末やペーストの状態でも長期保存が可能である。
また、本発明の酸化銀粉末は、水溶性銀塩溶液と塩基溶液とを、ポリエーテルの存在下で5〜80℃に保持した状態で反応させることにより容易に製造することができ、かつ反応条件により熱分解挙動の制御も容易に行うことができる。このような方法で製造された酸化銀粉末は、前記のような適切な粒子構造と熱分解性を有するほか、酸化銀粒子表面にポリエーテルが強固に付着しており、常温での安定性が高く、かつ焼成時の反応性が高い利点がある。
また、本発明の酸化銀粉末を低融点ガラスフリット、有機ビヒクル及び所望により他の銀系導電性粉末と混合して製造される導体ペーストは、比較的低温、例えば最高温度が400〜500℃程度でかつ短時間で焼成した場合にも、導電性、接着性の極めて優れた高性能の導体膜を形成することができる。従って耐熱性の低いガラス基板やシリコン半導体に厚膜導体や電極を形成したり、ダイボンディング用ペーストとして半導体チップを基板に実装したりするのに適している。
(酸化銀粉末)
本発明の酸化銀粉末は、電子顕微鏡観察による平均粒径が0.1〜0.3μmで、かつ粒子表面にポリエーテルが被着した一次粒子から構成される。この一次粒子は凝集して二次粒子を形成しており、この凝集粒子の平均粒子径が、レーザ回折散乱式粒度分布測定によるD50値、即ちレーザ式粒度分布測定装置を用いて測定した粒度分布の重量基準の積算分率50%値(以下単に「D50」という)で1.0〜2.5μmのものである。前記二次粒子は、図1のSEM(走査型電子顕微鏡)写真に示されるような多孔質凝集構造となっていることが望ましい。また、大気中で加熱処理を行ったとき、400〜460℃の温度範囲において銀への主たる熱分解反応が生ずるものである。「主たる熱分解反応が生ずる」とは、具体的には、例えば25〜900℃において酸化銀粉末のTG−DTA測定を行ったとき、温度上昇に伴い、酸化銀の熱分解によって生じる総重量減少分のうち60%以上、望ましくは80%以上の減少が起こることを意味する。
なお、本発明の酸化銀粉末をペースト中に配合した場合には、有機物の存在により、酸化銀の主たる熱分解反応が、酸化銀単独の場合よりも低温側にシフトする傾向がある。しかし本発明においては、「酸化銀の主たる熱分解反応が生じる温度」とは、酸化銀粉末を単独で加熱した場合の温度を言う。
酸化銀は、一般的には、硝酸銀水溶液に塩基の溶液を加え、生じる沈澱を回収することにより製造されているが、本発明の酸化銀粉末は、水溶性銀塩溶液と塩基溶液との反応を、ポリエーテルの存在下でかつ5〜80℃に保持した状態で行うことを特徴とする。このときポリエーテルは、反応開始以前に硝酸銀溶液と塩基溶液のいずれか一方に添加するか、あるいは両方に添加してもよく、また反応終了後にさらに添加してもよい。反応時にポリエーテルが存在していることにより、前記のような多孔質構造で、大きさの揃った酸化銀粒子が生成し、しかもポリエーテルが微粒子状となって酸化銀粒子の表面に強固に被着する。
本発明の導体ペーストは、少なくとも前記酸化銀粉末と、低融点ガラスフリットと、有機ビヒクルとを含むものである。酸化銀粉末を単独で導電性成分として用いてもよいが、さらに他の導電性粉末を添加してもよい。また、他の導電性粉末を主たる導電性成分とし、本発明の酸化銀粉末を導電性向上剤として補助的に用いることもできる。
他の導電性粉末としては特に制限はなく、例えば銀、金、パラジウム、白金等の貴金属や銅、ニッケル等の卑金属の金属の粉末やこれらの金属を含む合金粉末、複合粉末、またこれらの混合粉末などが使用できる。特に高導電性の導体を比較的低温で形成する目的からは、銀系の導電性粉末を用いることが望ましい。銀粉末と酸化銀粉末とを併用する場合、その重量比が10:90〜95:5の範囲であるものが特に好ましい。
導体ペーストには、このほか必要に応じて他の無機結合剤や、添加剤として通常添加されることのある金属酸化物、セラミック、酸化剤、金属有機化合物などを配合してもよい。
(酸化銀粉末の製造)
[製造例1]
硝酸銀溶液として、硝酸銀160.0g及び数平均分子量が600のポリエチレングリコール16.0gを純水に溶解して全量を2000.0gとし、50℃に保温した。
一方、塩基溶液として、水酸化ナトリウム37.6gを純水に溶解して、全量を2000.0gとし、50℃に保温した。
硝酸銀溶液を300rpmの攪拌速度で攪拌しながら、塩基溶液を1.5mL/sの速度で滴下した後、50℃に保温しながら1時間攪拌を続けた。得られた沈殿をろ過、洗浄した後40℃で3時間乾燥して、粉末Aを得た。
X線回折装置(理学電機株式会社製)を用いて、得られた粉末のX線回折パターンを観察したところ、酸化銀と同一のパターンが得られたことから、酸化銀粉末が得られたことを確認した。また得られた粉末をSEM(株式会社日立製作所製)で観察し、平均粒子径約0.26μmの微細な一次粒子が凝集して多孔質構造の粒子を形成していることを確認した。図1にSEM写真を示す。レーザ回折散乱式粒度分布測定装置(株式会社堀場製作所製)を用いて、得られた粉末の粒度分布を調べたところ、D50値は約1.5μmであり、またSD値が1.3の、粒度の揃った粉末であることを確認した。ポリエチレングリコールの被着量は酸化銀重量に対して約0.9%であった。DTA−TG熱分析装置(株式会社リガク製)を用いて、得られた粉末のTG−DTA測定を行った。DTA−TGプロファイルを図2に示す。DTA−TGプロファイルとX線回折による解析から、169℃に発熱ピークが観察され、ここでポリエチレングリコールの分解・脱離が生じ、その際酸化銀と反応して、ポリエーテルとの界面近傍に存在していた酸化銀の一部が銀に熱分解されることが確認された。このときの重量減少は約1.0%であり、酸化銀自身の分解による総重量減少はほぼ0.1%と計算される。また、453℃において鋭い吸熱ピークが観察されるが、ここで酸化銀の大部分が熱分解することが確認された。このときの重量減少は約6.8%であった。
反応前と反応時の溶液の温度を26℃にした以外は、製造例1と同様に酸化銀粉末Bを製造した。得られた酸化銀粉末は、SEM観察によると平均粒子径約0.21μmの一次粒子が凝集して多孔質構造の粒子を形成していた。ポリエチレングリコールの被着量は酸化銀重量に対して約4.9%であった。酸化銀粉末の平均一次粒子径、D50値、SD値、有機物の被着量及びTG−DTA測定の結果を表1に示した。なお、表中の「有機物の被着量」は、酸化銀に付着した有機物の、酸化銀に対する重量割合であり、ほぼポリエチレングリコールの被着量に等しい。またT1は発熱ピークの位置であり、比較的低温域で有機物の脱離と、場合よっては酸化銀の分解が生じる温度である。T2はT1より高温に現れる、酸化銀の分解による吸熱ピークの位置である。
ポリエチレングリコールの量を8gにした以外は、製造例2と同様にして酸化銀粉末Cを製造した。得られた酸化銀粉末は、製造例1と同様の微細な一次粒子が集合した多孔質構造の凝集粒子であった。酸化銀粉末の平均一次粒子径、D50値、SD値、有機物の被着量及びTG−DTA測定の結果を表1に示した。
ポリエチレングリコールとして数平均分子量300のものを用いた以外は、製造例2と同様に酸化銀粉末Dを製造した。得られた酸化銀粉末は、製造例1と同様の微細な一次粒子が集合した多孔質構造の凝集粒子であった。酸化銀粉末の平均一次粒子径、D50値、SD値、有機物の被着量及びTG−DTA測定の結果を表1に示した。
ポリエチレングリコールを添加しない以外は、製造例2と同様にして、酸化銀粉末Eを製造した。得られた酸化銀粉末は平均粒径0.35μmの一次粒子が密に凝集して二次粒子を形成しているものであった。その平均一次粒子径、D50値、SD値、TG−DTA測定結果を表1に示した。TG−DTAプロファイルからは、この粉末はT1は観測されず、448℃において酸化銀の分解が生じることがわかった。
ポリエチレングリコールに代えてコハク酸イミド8gを添加する以外は、製造例2と同様にして酸化銀粉末Fを製造した。得られた酸化銀粉末の平均一次粒子径、D50値、SD値、有機物の被着量、TG−DTA測定結果を表1に示す。TG−DTAプロファイルからは、この粉末は161℃において発熱的分解反応が生じ、この温度でほぼ全ての酸化銀が銀に還元されることがわかった。
ポリエチレングリコールに代えてオレイン酸ナトリウム8gを添加する以外は、製造例2と同様にして酸化銀粉末Gを製造した。得られた酸化銀粉末は、平均一次粒子径0.2μmのほぼ単分散状のものであった。平均一次粒子径、D50値、SD値、有機物の被着量、TG−DTA測定結果を表1に示した。
ポリエチレングリコールに代えてアクリルアミド8gを添加する以外は、製造例2と同様にして酸化銀粉末Hを製造した。得られた酸化銀粉末の平均一次粒子径、D50値、SD値、有機物の被着量、TG−DTA測定結果を表1に示した。
市販の平均粒径約3.5μmの酸化銀粉末I(和光純薬工業株式会社製)、及び酸化銀粉末Iをポリエチレングリコールで処理して得た酸化銀粉末Jについて、同様にTG−DTA測定を行い、結果を表1に示した。DTA−TGプロファイルからは、酸化銀粉末IはT1は観測されず、約423℃において酸化銀の分解が生じた。また酸化銀粉末Jは170℃において発熱的に分解し、この温度でほぼ全ての酸化銀が銀に還元されることがわかった。
酸化銀粉末として、製造例1〜8で得られた酸化銀粉末A〜Hと、酸化銀粉末I、Jをそれぞれ用いて下記の組成の導体ペーストを製造し、試料1〜10とした。
平均粒径1.0μmの銀粉末 40重量部
酸化銀粉末 60重量部
軟化点380℃の硼珪酸鉛系ガラスフリット 1重量部
エチルセルロース 1.8重量部
ロジンアルコール 1重量部
テルピネオール 10.2重量部
試料1〜10を、5mm×5mmの正方形パターンで、焼成膜厚が20μmとなるように、シリコン基板上にそれぞれ印刷し、最高温度450℃で3分間焼成し、銀導体膜を作製した。それぞれについて四端子法で比抵抗を測定した。また銀導体膜にリード線をはんだ付けし、基板に対して垂直方向に引っ張ることにより接着強度を測定した。結果を表2に示す。
Claims (6)
- 電子顕微鏡観察による平均一次粒子径が0.1〜0.3μm、レーザ回折散乱式粒度分布測定により算出された平均凝集粒子径(D50値)が1.0〜2.5μmであり、かつ粒子表面にポリエーテルが被着した酸化銀粒子からなる酸化銀粉末であって、
大気中で加熱処理を行ったとき、400〜460℃の温度範囲において酸化銀の主たる熱分解反応が生ずることを特徴とする酸化銀粉末。 - ポリエーテルがポリエチレングリコール及び/又はポリプロピレングリコールであることを特徴とする請求項1に記載の酸化銀粉末。
- ポリエーテルが数平均分子量300〜1000のポリエーテルであることを特徴とする請求項1又は2に記載の酸化銀粉末。
- 水溶性銀塩溶液と塩基溶液とを、ポリエーテルの存在下で5〜80℃に保持した状態で反応させることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の酸化銀粉末の製造方法。
- 請求項1〜3のいずれか一項に記載の酸化銀粉末と、低融点ガラスフリットと、有機ビヒクルとを含有することを特徴とする導体ペースト。
- 銀系導電性粉末を含むことを特徴とする請求項5に記載の導体ペースト。
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