JP2012067001A - 酸化銀組成物、酸化銀含有導電性組成物、導電性被膜を具備する積層体およびその製造方法 - Google Patents

酸化銀組成物、酸化銀含有導電性組成物、導電性被膜を具備する積層体およびその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 本発明は、還元剤を共存させない場合でも、大気中にて従来よりも低い温度で還元し銀を生成し得る酸化銀を提供し、前記酸化銀を用いて抵抗値の低い導電性組成物を提供することを目的とする。
【解決手段】 Ag2Oを含有する酸化銀組成物(1)と有機系保護剤とを含有する酸化銀組成物(2)であって、前記酸化銀組成物(2)の一次粒子径が10〜150nmであり、
大気中での熱分解試験による熱分解開始温度が115℃以上150℃以下であり、150℃までに0.5重量%以上4重量%未満の無機物が重量減少し得る、酸化銀組成物(2)。
【選択図】 なし

Description

本発明は、導電性被膜を形成し得る酸化銀含有導電性組成物に関する。本発明は、前記導電性組成物に好適に使用し得る酸化銀組成物に関する。
さらに本発明は、前記導電性組成物を用いてなる導電性被膜を具備する積層体、及びその製造方法に関する。
従来から、プリント配線板等の基材上に電極や導電回路パターンを形成するため、導電性ペーストが広く用いられてきた。これは、導電性粉末や金属粒子を樹脂成分や有機溶媒等に分散したものである。
しかし、近年、導電性ペーストを塗布する基材として、耐熱性に乏しい、高分子フィルムが用いられるようになり、これまでのように高温での熱処理が出来なくなってきている。それに伴い、より低温での加熱処理で、導電回路を形成することができる導電性ペーストが要求されている。このような導電性ペーストの開発は多岐に渡るが、酸化銀は、貴金属の中で最も低温で熱還元し、銀を生成することから、研究も盛んに行われてきた。
酸化銀は、銀塩とアルカリを反応させることで生成する。生成時に、保護剤を共存させることで、粒子径のより小さな酸化銀微粒子を作製することが可能ではある。
例えば、特許文献1には、銀化合物と塩基性物質を分散剤の存在下に反応させて、酸化銀微粒子の表面が分散剤で被覆されなる平均粒径が0.01〜10μmの酸化銀微粒子の製造方法が開示されている。
そして、前記酸化銀微粒子を含有する導電性組成物のうち、前記酸化銀微粒子の粒子径が1μm以下の場合、還元剤を用いなくても、180℃程度の加熱で導電性被膜を形成できる旨記載されている。さらに、還元剤を利用することによって、より低い温度、例えば150℃程度で還元でき、導電性被膜を形成できる旨記載されている。また、粒子径が小さいほど、低温で還元反応が生じ得る点も開示されている。
また、還元剤が導電性被膜中に残存すると抵抗値が高くなる原因になるので、還元剤としては、揮発性に富むものが好適であるが、揮発性に富むものは還元性にも富む。従って、還元剤を含有する導電性組成物は、貯蔵安定性の点で難があり、対象物に塗布・印刷する直前に、還元剤を添加すべき旨記載されている。
しかし、特許文献1には、還元剤を用いずに180℃程度の加熱でどの程度の導電性被膜を形成できるかは検証されていない。
また、特許文献2には、一次粒子の小さな酸化銀微粒子を析出させた後、高分子有機物により被覆処理した酸化銀粉末が開示されている。そして、前記酸化銀粉末を大気中で80℃〜150℃に加熱すると、前記温度域で高分子有機化合物が燃焼し、その際の発熱エネルギーを利用することによって、還元剤を共存させない場合でも、低温での酸化銀の還元が可能になった旨、特許文献2は開示する。しかし、特許文献2には、得られた酸化銀粉末を用いて導電性被膜とした場合の性能については検証されていないが、高分子量有機物を被覆剤として用いると、燃焼後に導電性塗膜中に、有機物が残存し、抵抗値の悪化を引き起こす問題が存在する。また、燃焼時の発熱の影響が基材にまで及び、熱に弱い基材には結局適用できなかった。しかも、この特許で、酸化銀から銀への変化が確認されているのは、実施例においては、146℃、143℃であり、より低温での還元・導電性発現は確認されていない。
特開2003−308730号公報 特開2009−269783号公報
本発明の課題は、還元剤を共存させない場合でも、大気中にて還元し銀を生成し得る酸化銀を提供し、前記酸化銀を用いて抵抗値の低い導電性被膜を形成し得る導電性組成物を提供することである。
すなわち、本発明は、Ag2Oを含有する酸化銀組成物(1)と有機系保護剤とを含有する酸化銀組成物(2)であって、前記酸化銀組成物(2)の一次粒子径が10〜150nmであり、大気中での熱分解試験による熱分解開始温度が115℃以上150℃以下であり、150℃までに0.5重量%以上4重量%未満の無機物が重量減少し得る、酸化銀組成物(2)に関する。
前記発明の酸化銀組成物(2)は、Ag2Oの含有率は70重量%以上であることが好ましい。
また、前記発明の酸化銀組成物(2)は、大気中での熱分解試験による熱分解開始温度が200℃以上の有機系保護剤を0.1重量%以上1.0重量%未満含有し、大気中での熱分解試験において、150℃までに有機系保護剤が0.1重量%未満まで減少し得ることが好ましい。
また、本発明は、樹脂もしくは有機溶剤の少なくともいずれか一方と、前記発明のいずれかに記載の酸化銀組成物(2)とを含有する、酸化銀含有導電性組成物に関する。
さらにまた本発明は、基材と該基材上に設けられた導電性被膜とを具備する積層体であって、前記導電性被膜が、前記基材上で前記本発明の導電性組成物が150℃以上の温度で加熱され、酸化銀が還元されてなる、導電性被膜を具備する積層体に関する。
さらに本発明は、基材上に導電性被膜を具備する積層体の製造方法であって、前記基材に、前記本発明の導電性組成物を塗工し、150℃以上の温度で加熱し、酸化銀を還元する、導電性被膜を具備する積層体の製造方法に関する。
本発明により、貯蔵安定性を悪化させる還元剤を共存させなくても、大気中にて還元し銀を生成し得る酸化銀を提供することができるようになった。前記酸化銀を用いた導電性組成物は、抵抗値の低い導電性被膜を形成し得る。
以下、本発明について、実施の形態について更に詳しく説明するが、本発明の技術的思想を逸脱しない限り、本発明はこれらの実施の形態に限定されるものではない。
本発明の酸化銀組成物(2)について説明する。
本発明の酸化銀組成物(2)は、Ag2Oを含有する酸化銀組成物(1)と有機系保護剤とを含み、一次粒子径は10〜150nmであり、30〜100nmであることが好ましい。そして、本発明の酸化銀組成物(2)は、大気中での熱分解試験による熱分解開始温度が115℃以上150℃以下であり、150℃までに0.5重量%以上4重量%未満の無機物が重量減少し得る。
酸化銀組成物(2)に含まれる酸化銀組成物(1)は、Ag2Oを必須とし、AgO、Ag、Ag23のうち少なくとも1種以上を含有するものであり、酸化銀組成物(2)を低温で還元し得るように、AgOを含むことが好ましい。一次粒子径が上記範囲にあることによって、Ag2O、AgO、Ag23等を含む粒子の表面エネルギーが増大し、低温還元が可能となり、低温還元時に生成しつつあるAg粒子同士の融着が生じ、導電性を効果的に発現すると考察される。
抵抗値の観点から、本発明の酸化銀組成物(2)は、Ag2Oの含有量が70重量%以上であることが好ましく、70〜90重量%であることがより好ましく、80〜90重量%であることがさらに好ましい。
上記範囲のようにAg2Oの含有量が多い場合は、より低温還元に寄与するAgOの含有率が必然的に少なくなるため、低温では還元しにくいので、130℃程度の加熱では7×10-5Ω・cmレベルの抵抗値しか発現できない。しかし、より高温、例えば180℃で加熱すれば、8×10-6Ω・cmレベルの低抵抗を発現できる。
一方、低温還元の点からは、酸化銀組成物(2)に含まれるAg2Oは、70重量%未満であることが好ましい。しかし、上記範囲のようにAg2Oの含有量が少ないものは、130℃程度の加熱で2×10-5Ω・cmレベルの抵抗値を発現できる反面、180℃で加熱しても、同程度の低抵抗しか発現しない。
なお、本発明において、Ag2Oの含有率は、例えば、酸化銀組成物(2)をX線回折装置(PANalytical社製 X線回折装置 X'pert PRO−MPD)を用い測定し、得られたX線回折パターンにおいて、ピーク強度を元にした準定量法により求められる。
本発明の酸化銀組成物(2)は、150℃までに0.5重量%以上4重量%未満の無機物由来の重量減少量が観察され、0.5重量%以上2重量%以下の重量減少が観察されるものが好ましい。
本発明において、重量減少し得る無機物とは、酸化銀組成物(1)であり、その重量減少量は、酸化銀組成物(1)中の、Ag2O、AgO、Ag、Ag23の組成比を反映する。
150℃までの無機物由来の重量減少量が多い場合、即ち理論上AgOの割合が大きくなるため、酸化銀組成物(2)の安定性が悪くなり、大気中に放置しておくだけで還元が起き始めるので、一定の抵抗値の導電性被膜を再現性良く得ることができない。一方、無機物由来の重量減少量が少ない場合、即ち理論上Ag2O、AgO、Ag23よりもAgの割合が多くなり、導電性被膜中に有機系保護剤が多く残存することになる。
酸化銀組成物(2)に含まれる有機系保護剤の役割は、合成時に酸化銀組成物(1)の粒子径が大きくなるのを防ぐことにある。
有機系保護剤のうちアミノ基を有するものが、Ag2O、AgO、Ag23、Ag等への吸着力が強く、より好ましい。また、有機系保護剤は分子量の小さいものが好ましく、ポリスチレン換算ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定におけるMwが1000以下であることがより好ましい。
このような有機系保護剤の含有率は、酸化銀組成物(2)100重量%中、0.1重量%以上、1.0重量%未満であることが好ましく、0.3重量%以上、0.6重量%以下であることがより好ましい。含有率が少な過ぎる場合、一次粒子を小さい状態で維持することが難しく、多過ぎる場合、加熱後残存し、導電性被膜の抵抗値に悪影響を及ぼす懸念がある。
有機系保護剤としては、特に限定されず、一般に、界面活性剤や顔料分散剤として市販されているものを使用することができる。
例えば、ライオン株式会社製のアーカードシリーズ、エソカードシリーズ、エソデュオミンシリーズ、エナジコールシリーズ、エソマイドシリーズ、サンノールシリーズ、日本ルーブリゾール株式会社製のソルスパース3000、ソルスパース9000、ソルスパース17000、ソルスパース24000、ソルスパース28000、ソルスパース32000、ソルスパース35100、ソルスパース36000、ソルスパース41000、エフカアディティブズ社製のEFKA4009、EFKA4046、EFKA4047、EFKA4080、EFKA4010、EFKA4015、EFKA4050、EFKA4055、EFKA4060、EFKA4330、EFKA4300、EFKA7462、味の素ファインテクノ株式会社製のアジスパーPB821、アジスパーPB711、アジスパーPB822、アジスパーPN411、アジスパーPA111、コグニスジャパン株式会社製のTEXAPHORUV20、TEXAPHORUV21、TEXAPHORP61、ビッグケミー・ジャパン株式会社製のDisperbyk−101、Disperbyk−103、Disperbyk−106、Disperbyk−110、Disperbyk−111、Disperbyk−161、Disperbyk−162、Disperbyk−163、Disperbyk−164、Disperbyk−166、Disperbyk−167、Disperbyk−168、Disperbyk−170、Disperbyk−171、Disperbyk−174、Disperbyk−180、Disperbyk−182、Disperbyk−187、Disperbyk−190等が挙げられるがこれらに限定されるものではない。これらの有機系保護剤は、1種類を単独で使用しても、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
このような有機系保護剤は、大気中での熱分解試験による熱分解開始温度が200℃以上であるものが多い。しかし、それ自体の熱分解開始温度に依らず、後述するように、粒子の生成と分散とを一体として行って得た本発明の酸化銀組成物(2)は、加熱により酸化銀組成物(1)が銀へ還元される際、その熱で酸化銀組成物(1)を被覆していた有機系保護剤のほとんどが分解・除去され、導電性被膜中には残らないものと考えられる。従って、本発明の酸化銀組成物(2)を用いた場合、低抵抗値の導電性被膜を効果的に形成できる。
本発明の酸化銀組成物(2)の作製方法に関して説明する。
従来の塩基性化合物と銀塩とを有機系保護剤存在下で反応させる製造方法を基本とし、そこに、分散工程を加え、さらに塩基性化合物と銀塩との反応バランス等を適宜変更することにより得ることができる。
例えば、有機系保護剤含有水溶液と銀塩含有水溶液と塩基性化合物との混合物を分散処理し、過量の有機系保護剤、銀塩を構成していたアニオン成分、塩基性化合物を構成していたカチオン成分等を除去することにより、一次粒子径が10〜150nmの酸化銀組成物(2)を得ることができる。本発明の酸化銀組成物(2)を作製する際、有機系保護剤含有水溶液、銀塩含有水溶液、塩基性化合物の添加順は影響しない。しかし、有機系保護剤含有水溶液と銀塩含有水溶液とを混合した後、塩基性化合物を添加することがより好ましい。
酸化銀組成物(2)の製造に用いられる銀塩含有水溶液としては、特に限定されないが、硝酸銀、過塩素酸銀、炭酸銀、酢酸銀などの銀塩の水溶液が挙げられ、硝酸銀水溶液が好ましい。
酸化銀組成物(2)の製造に用いられる塩基性化合物としては、特に限定されないが、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウムなどが挙げられる。
酸化銀組成物(2)の製造に用いられる有機系保護剤としては、前記したものを挙げることができる。
酸化銀組成物(2)を得る際、銀塩1モルに対して、塩基性化合物は1モル未満使用することが好ましく、0.1〜0.9モル使用することがより好ましく、0.3〜0.7モル使用することがさらに好ましい。また、有機系保護剤は、銀塩に含まれる銀100重量部に対して、有効成分で0.1〜100重量部使用することが好ましく、0.5〜50重量部使用することがより好ましく、30〜50重量部使用することがさらに好ましい。
酸化銀組成物(2)を製造する際の分散工程は、有機系保護剤含有水溶液、銀塩含有水溶液、塩基性化合物の混合液を得た直後に行うことが重要である。このようにすることによって、一次粒子径が10〜150nmであって、大気中での熱分解試験による熱分解開始温度が115℃以上150℃以下であり、150℃までに1重量%以上4重量%未満の無機物が重量減少し得る酸化銀組成物(2)を製造することができる。
例えば、有機系保護剤含有水溶液、銀塩含有水溶液、塩基性化合物の混合液を得た後、銀塩と塩基性化合物とを十分反応させ、銀塩の大部分から酸化銀粒子を生成し、固液分離した後、得られた酸化銀粒子に分散剤を添加し、その後、単に粒子を物理的・機械的に分散処理した場合、本発明の酸化銀組成物(2)とは、一次粒子径、熱分解開始温度等の点で異なるものとなる。
本発明で用いられる分散方法としては、ペイントコンディショナー(レッドデビル社製)、ボールミル、サンドミル(シンマルエンタープライゼス社製「ダイノーミル」等)、アトライター、パールミル(アイリッヒ社製「DCPミル」等)、コボールミル、ホモミキサー、ホモジナイザー(エム・テクニック社製「クレアミックス」等)、湿式ジェットミル(ジーナス社製「ジーナスPY」、ナノマイザー社製「ナノマイザー」)、微小ビーズミル(寿工業社製「スーパーアペックミル」、「ウルトラアペックミル」)等の分散機が使用できる。分散機にメディアを使う場合には、ガラスビーズ、ジルコニアビーズ、アルミナビーズ、磁性ビーズ、スチレンビーズ等を用いることが好ましい。分散に関しては、二種類以上の分散機、または大きさの異なる二種類以上のメディアをそれぞれ用い、段階的に使用しても差し支えない。
そのビーズの直径としては、0.03mm以上3.00mm以下が好ましく、それより小さいと分散時にエネルギーが得られず、活性面が十分に現れず、また、それより大きいと、生成する酸化銀の粒子径が大きくなる。
本発明において、熱分解試験とは、例えば、示差熱分析測定装置(Seiko Instruments Inc.社製EXSTAR6000 TG/DTA6300)において、大気中600℃まで、毎分5℃の昇温速度で測定する試験とする。
本発明において、熱分解開始温度とは、例えば、示差熱分析測定装置(Seiko Instruments Inc.社製EXSTAR6000 TG/DTA6300)において、大気中600℃まで、毎分5℃の昇温速度で測定したときの、発熱ピークを伴い起こる最初の重量減少温度であり、より詳細には、重量減少前のTG曲線と重量減少中のTG曲線、それぞれの接線の交点の温度とする。
本発明において、酸化銀組成物(2)中の有機系保護剤の量は、CHN元素分析により炭素量を求め、用いた有機系保護剤の分子量から算出することが出来る。
また、酸化銀組成物(2)を150℃まで加熱した後の有機系保護剤の残存量は、酸化銀組成物(2)を熱分解試験と同様に150℃まで昇温したものを冷却し、その残渣についてCHN元素分析により炭素量を求め、用いた有機系保護剤の分子量から算出することが出来る。
次に、本発明の酸化銀含有導電性組成物、導電性被膜を具備する積層体とその製造方法について説明する。
本発明の酸化銀含有導電性組成物は、樹脂もしくは有機溶剤の少なくとも一方と、前記の酸化銀組成物(2)とを含有する。
樹脂種、溶剤種は特に限定されない。
後述する導電性被膜は、酸化銀組成物(2)以外の成分はできるだけ含まない方が好ましいが、本発明の概念を損なわない範囲で、酸化銀含有導電性組成物には、一般的なインキに用いられるような添加剤も添加できる。
本発明の酸化銀含有導電性組成物を、基材上に塗工し、加熱し、酸化銀組成物(1)中の酸化銀を還元し、銀を生成し、導電性被膜を形成し、導電性被膜を具備する積層体を製造することができる。加熱処理は、150℃以上であることが好ましく、200℃以下であることがより好ましい。150℃未満の温度では、酸化銀の還元が不十分であり、また、200℃より高い温度では、使用できる基材が限られる。導電性被膜の膜厚は、0.1〜50μmであることが好ましい。
上記導電性被膜の形態については、特に限定されないが、通常の印刷法で形成可能なパターンなどを挙げることができる。例えば、細線状、膜状、格子状、回路状などの形態が挙げられる。これらの用途として、微細導電回路、電磁波シールド、電極、アンテナ回路、めっき代替、印刷エレクトロニクス用導電材料、フレキシブル基板回路等が挙げられるがこれらに限定されるものではない。
本発明の導電性被膜は、使用用途に応じて紙、プラスチック、ガラス等の基材の片面または両面上に、フレキソ印刷、グラビア印刷、グラビアオフセット印刷、インキジェット印刷、オフセット印刷、ロータリースクリーン印刷、シルクスクリーン印刷、レタープレス、スプレーコート、スピンコート、ダイコート、リップコート、ナイフコート、ディップコート、カーテンコート、ロールコート、バーコート等、従来公知の方法を用いて本発明の導電性インキを印刷・塗布することで形成することができる。
紙基材としては、コート紙、非コート紙の他、合成紙、ポリエチレンコート紙、含浸紙、耐水加工紙、絶縁加工紙、伸縮加工紙等の各種加工紙が使用できる。
プラスチック基材としては、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、セロハン、塩化ビニル、塩化ビニリデン、ポリスチレン、ポリビニルアルコール、エチレン−ビニルアルコール共重合体、ナイロン、ポリイミド、ポリカーボネート等の通常のプラスチック基材を使用することができる。プラスチックフィルムやガラス基材の表面には、密着性を高める目的で、必要に応じて、コロナ放電処理やプラズマ処理を施したり、またはポリウレタン、ポリイソシアネート、有機チタネート、ポリエチレンイミン、ポリブタジエン等のアンカーコート剤を塗布したりすることができる。
本発明において、加熱処理は、その方法を特に限定するものではなく、例えば、熱風乾燥オーブン、熱ロールまたは熱プレスロール等を使用することが出来る。
以下、実施例、比較例に基づき本発明をさらに詳しく説明する。実施例、比較例中、部および%は、重量部および重量%をそれぞれ表す。
(実施例1)
20%エソデュオミンT/13(ライオン(株)製、アミノ基を有する分子量458の有機系保護剤、熱分解開始温度:239℃)水溶液9.5部に、30%硝酸銀水溶液50部を攪拌しながら滴下し、さらに6%水酸化ナトリウム水溶液29.5部を加え、これらを10分間攪拌後、ペイントシェーカーにて1時間分散処理し、酸化銀組成物の懸濁液を得た。前記の分散には、直径1mmのガラスビーズを用いた。
この懸濁液に、この懸濁液と同量のアセトンを加え、析出する沈殿物をろ過し、酸化銀組成物を回収した。さらにこの酸化銀組成物をアセトンで洗浄し、不純物を除去した。再分散性向上のため、溶媒は完全には除去しなかった。こうして、本発明の酸化銀組成物(2)を得た。この酸化銀組成物を電界放出走査電子顕微鏡(日立S−4300)で観察したところ、その一次粒子径は50nmから100nmの範囲であった。
次いで、この酸化銀組成物5.0部に、ジヒドロターピネオール(日本テンペル化学(株)製)2.5部、テルソルブMTPH(日本テンペル化学(株)製)2.5部を加え、マーラーで混練することで、酸化銀含有導電性組成物を得た。
この酸化銀含有導電性組成物を用い、75μm厚のコロナ処理PETフィルム(ユニチカ(株)製エリーテル)に、スクリーン印刷法により、塗工し、130℃で30分間加熱し、膜厚1.5μmの導電性被膜(A)を形成した。
上記PETフィルムの代わりに50μm厚ポリイミドフィルム(藤森工業(株)製カプトン)を用い、150℃で30分間、又は180℃で30分間で加熱し、導電性被膜(A)を形成した。
(実施例2)
20%エソデュオミンT/13の代わりに、20%BYK−190(ビックケミー(株)製アミノ基を有さない分子量約2500の有機系保護剤、熱分解開始温度:280℃))水溶液を24.0部用いた以外は実施例1と同様にして、一次粒子径が50nmから100nmの酸化銀組成物を得、酸化銀含有導電性組成物を得、同様にして導電性被膜(B)を形成した。
(比較例1)
20%エソデュオミンT/13(ライオン(株)製)水溶液24.0部に、30%硝酸銀水溶液50部を攪拌しながら滴下し、さらに12%水酸化ナトリウム水溶液29.5部を加えた以外は実施例1と同様にして、一次粒子径が50nmから100nmの酸化銀組成物を得、酸化銀含有導電性組成物を得、同様にして導電性被膜(C)を形成した。
(比較例2)
20%エソデュオミンT/13(ライオン(株)製)水溶液9.5部に、30%硝酸銀水溶液50部を攪拌しながら滴下し、さらに6%水酸化ナトリウム水溶液29.5部を加え、これらを4時間攪拌することで、酸化銀組成物の懸濁液を調整した。
この懸濁液に、この懸濁液と同量のアセトンを加え、析出する沈殿物をろ過し、酸化銀組成物を回収した。さらにこの酸化銀組成物をアセトンで洗浄し、不純物を除去した。再分散性向上のため、溶媒は完全には除去しなかった。こうして、酸化銀組成物を得た。この酸化銀組成物を電界放出走査電子顕微鏡(日立S−4300)で観察したところ、その一次粒子径100nmから150nmであった。
以下実施例1と同様にして、酸化銀含有導電性組成物を得、導電性被膜(D)を形成した。
(比較例3)
20%BYK−190水溶液(ビックケミー(株)製、アミノ基を有さない分子量約2500の有機系保護剤、熱分解開始温度:280℃))9.5部に、30%硝酸銀水溶液50部を攪拌しながら滴下し、さらに6%水酸化ナトリウム水溶液29.5部を加え、これらを4時間攪拌することで、酸化銀組成物の懸濁液を調整した。
以下比較例2と同様にして一次粒子径が50nmから100nmの酸化銀組成物を得、導電性被膜(E)を形成した。
[酸化銀組成物、導電性被膜の評価]
上記で作製した酸化銀組成物について、熱分解開始温度、150℃までの無機物由来の重量減少量、Ag2O含有率、加熱処理後の有機系保護剤残存量を、導電性被膜について、体積抵抗値を、下記の方法で評価した。その結果を表1に示す。
Figure 2012067001
(評価方法)
(1)熱分解開始温度
酸化銀組成物を、示差熱分析測定装置(Seiko Instruments Inc.社製EXSTAR6000 TG/DTA6300)を用いて、大気中600℃まで、毎分5℃の昇温速度で測定したときの、酸化銀からの酸素の解離による重量減少開始温度とする。
(2)150℃までの無機物由来の重量減少量
酸化銀組成物を、示差熱分析測定装置(Seiko Instruments Inc.社製EXSTAR6000 TG/DTA6300)を用いて、大気中600℃まで、毎分5℃の昇温速度で測定したときの、150℃までの重量減少量から、該酸化銀組成物中の炭素量を、例えば、CHN元素分析装置((株)パーキンエルマー社製 2400CHN Elemental Analyzer)を用い求めた値を差し引いた値とする。
(3)Ag2O含有率
酸化銀組成物を、X線回折装置(PANalytical社製 X線回折装置 X'pert PRO−MPD)を用い測定し、得られたX線回折パターンにおいて、ピーク強度を元にした準定量法により求められる。
(4)酸化銀組成物中の有機系保護剤量
酸化銀組成物中の炭素量を、CHN元素分析装置((株)パーキンエルマー社製 2400CHN Elemental Analyzer)を用い求め、その結果と有機系保護剤の分子量とから、有機系保護剤の含有量を算出する。
(5)加熱処理後の有機系保護剤残存量
酸化銀組成物を、熱分解試験にて150℃まで加熱し、冷却した後の試料中の炭素量を、上記と同様にして求め、有機系保護剤の残存量を算出する。
(6)体積抵抗値
導電性被膜の抵抗値を、四探針抵抗値測定器(三和電気計器(株)製 DR−1000CU)で測定した。又、膜厚を膜厚計((株)ニコン製 MH−15M)で測定し、得られた抵抗値と膜厚から体積抵抗値を算出した。
表1の結果より、実施例の通り、本発明の酸化銀組成物は、低温で銀へと還元し、また加熱処理後の有機系保護剤の残存量も少なく、該酸化銀含有導電性組成物を用いた導電性被膜は、180度の加熱で従来よりも良好な導電性を有している。

Claims (6)

  1. Ag2Oを含有する酸化銀組成物(1)と有機系保護剤とを含有する酸化銀組成物(2)であって、
    前記酸化銀組成物(2)の一次粒子径が10〜150nmであり、
    大気中での熱分解試験による熱分解開始温度が115℃以上150℃以下であり、150℃までに0.5重量%以上4重量%未満の無機物が重量減少し得る、
    酸化銀組成物(2)。
  2. Ag2Oの含有率が70重量%以上である、請求項1記載の酸化銀組成物(2)。
  3. 大気中での熱分解試験による熱分解開始温度が200℃以上の有機系保護剤を0.1重量%以上1.0重量%未満含有し、大気中での熱分解試験において、150℃までに有機系保護剤が0.1重量%未満まで減少し得る、請求項1又は2記載の酸化銀組成物(2)。
  4. 樹脂もしくは有機溶剤の少なくともいずれか一方と、請求項1〜3いずれか1項記載の酸化銀組成物(2)とを含有する、酸化銀含有導電性組成物。
  5. 基材と該基材上に設けられた導電性被膜とを具備する積層体であって、
    前記導電性被膜が、前記基材上で請求項4記載の導電性組成物が150℃以上の温度で加熱され、酸化銀が還元されてなる、導電性被膜を具備する積層体。
  6. 基材上に導電性被膜を具備する積層体の製造方法であって、
    前記基材に、請求項4記載の導電性組成物を塗工し、150℃以上の温度で加熱し、酸化銀を還元する、導電性被膜を具備する積層体の製造方法。
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