JP2006141104A - 車両のモータトラクション制御装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】駆動スリップが開始したのと同時に前後力に横力を加味して路面摩擦係数を精度良く推定することで、路面摩擦係数情報を用いた精度の高いスリップ制御を実現できる車両のモータトラクション制御装置を提供する。
【解決手段】駆動輪を駆動する動力源に装備された少なくとも1つのモータを備えた車両のモータトラクション制御装置において、前記モータトラクション制御手段は、スリップ開始判定時のスリップ開始トルク相当値を検出するスリップ開始トルク相当値検出手段(ステップS12〜ステップS14)と、スリップ開始判定時のスリップ開始旋回相当値を検出するスリップ開始旋回相当値検出手段(ステップS15)と、前記スリップ開始トルク相当値による前後力とスリップ開始旋回相当値による横力に応じて路面摩擦係数を推定する路面摩擦係数推定手段(ステップS16〜ステップS18)と、を有する手段とした。
【選択図】図11

Description

本発明は、ハイブリッド車や電気自動車等に適用され、駆動輪を駆動する動力源に少なくとも1つのモータが装備された車両のモータトラクション制御装置に関する。
路面摩擦係数の推定は、車輪の制動ロックを防止するためにブレーキ液圧を制御するアンチスキスキッド制御装置や、車輪の駆動スリップ(ホイールスピン)を防止するために車輪駆動力を低減するトラクションコントロール装置や、左右輪を個別に制動して車両のヨーレート等の挙動を目標値に接近させる車両挙動制御装置等に必要であるが、その一例として、従来における路面摩擦係数の推定技術を説明する。
(1) 特定車輪を軽く制動してその時における制動力とスリップとの関係からスリップ率に対する路面摩擦係数の変化特性を予想し、路面摩擦係数を推定する(例えば、特許文献1参照)。
(2) 路面摩擦係数との相関関係が強い車載センサ値と、路面摩擦係数との関係をニューラルネットワークを用いて学習しておき、車両走行中の上記車載センサ値から路面摩擦係数を推定する(例えば、特許文献2参照)。
(3) 差動制限式ディファレンシャルギヤ装置の差動制限トルクから左右輪駆動トルク差を求め、これと左右駆動輪の回転数差からスリップ率に対する路面摩擦係数の変化特性を予想し、路面摩擦係数を推定する(例えば、特許文献3参照)。
特開平7−132787号公報 特開平6−286630号公報 特開平7−101258号公報
しかしながら、上記従来の路面摩擦係数推定の技術には、下記に列挙するような問題がある。
(1)の従来技術は、車輪のうち、どこかの車輪が制動されている状態でのみ路面摩擦係数をを予想することができ、トラクション制御等のように、駆動力を発生している状態では路面摩擦係数の推定は困難である。
(2)の従来技術は、ニューラルネットワークを用いた学習に時間がかかるし、加えて、ニューラルネットワーク構造の設計が困難である等の問題を生じる。
(3)の従来技術は、基本的に差動制限式ディファレンシャルギヤ装置の差動制限トルクを用いていることから、差動制限式ディファレンシャルギヤ装置を搭載している車両でのみ有効な技術であり、応用範囲を制限されることと、車両走行中の荷重移動が考慮されていないことから、推定精度が粗くなってしまうという問題を生じる。
そして、例えば、部品保護のために駆動輪の角加速度により角加速度トルク制限値を演算する角加速度制御を実行する場合、スリップ開始時の迅速な路面μの推定が要求されるのに対し、上記従来の路面μ推定手法では、いずれも迅速、かつ、精度の良い路面μ推定要求に応えることができない、という問題がある。
本発明は、上記問題に着目してなされたもので、駆動スリップが開始したのと同時に前後力に横力を加味して路面摩擦係数を精度良く推定することで、路面摩擦係数情報を用いた精度の高いスリップ制御を実現できる車両のモータトラクション制御装置を提供することを目的とする。
上記目的を達成するため、本発明における車両のモータトラクション制御装置では、駆動輪を駆動する動力源に装備された少なくとも1つのモータと、駆動輪の駆動スリップを検出し、モータトルクダウン制御により駆動輪のグリップを回復させるモータトラクション制御手段と、を備えた車両のモータトラクション制御装置において、
前記モータトラクション制御手段は、
スリップ開始判定時のスリップ開始トルク相当値を検出するスリップ開始トルク相当値検出手段と、
スリップ開始判定時のスリップ開始旋回相当値を検出するスリップ開始旋回相当値検出手段と、
前記スリップ開始トルク相当値による前後力とスリップ開始旋回相当値による横力に応じて路面摩擦係数を推定する路面摩擦係数推定手段と、
を有することを特徴とする。
よって、本発明の車両のモータトラクション制御装置にあっては、スリップ開始トルク相当値検出手段において、スリップ開始判定時のスリップ開始トルク相当値が検出され、スリップ開始旋回相当値検出手段において、スリップ開始判定時のスリップ開始旋回相当値が検出され、路面摩擦係数推定手段において、スリップ開始トルク相当値による前後力とスリップ開始旋回相当値による横力に応じて路面摩擦係数が推定される。すなわち、路面の摩擦係数が高いほどタイヤのフリクションサークルが大きくなるというように、路面摩擦係数に応じてタイヤのフリクションサークルの大きさが定まり、スリップはタイヤに加わる前後力と横力の合力がフリクションサークルの範囲を超えた場合に発生する。したがって、前後力と横力に応じて路面摩擦係数を推定すると、例えば、前後力のみで路面摩擦係数を推定する場合に比べ、路面摩擦係数の推定精度が高くなる。しかも、スリップ開始判定時のトルク相当値と旋回相当値を路面摩擦係数の推定情報とするため、スリップ開始時の迅速な路面摩擦係数の推定要求にも応えることができる。このように、駆動スリップが開始したのと同時に前後力に横力を加味して路面摩擦係数を精度良く推定することで、路面摩擦係数情報を用いた精度の高いスリップ制御を実現できる。
以下、本発明の車両のモータトラクション制御装置を実現する最良の形態を、図面に示す実施例1〜実施例3に基づいて説明する。
まず、ハイブリッド車の駆動系構成を説明する。
図1は実施例1のモータトラクション制御装置が適用されたハイブリッド車の駆動系を示す全体システム図である。実施例1におけるハイブリッド車の駆動系は、図1に示すように、エンジンEと、第1モータジェネレータMG1と、第2モータジェネレータMG2(モータ)と、出力スプロケットOS、動力分割機構TMと、を有する。
前記エンジンEは、ガソリンエンジンやディーゼルエンジンであり、後述するエンジンコントローラ1からの制御指令に基づいて、スロットルバルブのバルブ開度等が制御される。
前記第1モータジェネレータMG1と第2モータジェネレータMG2は、ロータに永久磁石を埋設しステータにステータコイルが巻き付けられた同期型モータジェネレータであり、後述するモータコントローラ2からの制御指令に基づいて、パワーコントロールユニット3により作り出された三相交流を印加することによりそれぞれ独立に制御される。
前記両モータジェネレータMG1,MG2は、バッテリ4からの電力の供給を受けて回転駆動する電動機として動作することもできるし(以下、この状態を「力行」と呼ぶ)、ロータが外力により回転している場合には、ステータコイルの両端に起電力を生じさせる発電機として機能してバッテリ4を充電することもできる(以下、この状態を「回生」と呼ぶ)。
前記動力分割機構TMは、サンギヤSと、ピニオンPと、リングギヤRと、ピニオンキャリアPCと、を有する単純遊星歯車により構成されている。そして、単純遊星歯車の3つの回転要素(サンギヤS、リングギヤR、ピニオンキャリアPC)に対する入出力部材の連結関係について説明する。前記サンギヤSには、第1モータジェネレータMG1が連結されている。前記リングギヤRには、第2モータジェネレータMG2と出力スプロケットOSとが連結されている。前記ピニオンキャリアPCには、エンジンダンパEDを介してエンジンEが連結されている。なお、前記出力スプロケットOSは、チェーンベルトCBや図外のディファレンシャルやドライブシャフトを介して左右前輪に連結されている。
上記連結関係により、図4に示す共線図上において、第1モータジェネレータMG1(サンギヤS)、エンジンE(プラネットキャリアPC)、第2モータジェネレータMG2及び出力スプロケットOS(リングギヤR)の順に配列され、単純遊星歯車の動的な動作を簡易的に表せる剛体レバーモデル(3つの回転数が必ず直線で結ばれる関係)を導入することができる。
ここで、「共線図」とは、差動歯車のギヤ比を考える場合、式により求める方法に代え、より簡単で分かりやすい作図により求める方法で用いられる速度線図であり、縦軸に各回転要素の回転数(回転速度)をとり、横軸に各回転要素をとり、各回転要素の間隔をサンギヤSとリングギヤRの歯数比λに基づき、(S〜PC):(PC〜R)の長さの比を1:λになるように配置したものである。
次に、ハイブリッド車の制御系を説明する。
実施例1におけるハイブリッド車の制御系は、図1に示すように、エンジンコントローラ1と、モータコントローラ2と、パワーコントロールユニット3(強電ユニット)と、バッテリ4(二次電池)と、ブレーキコントローラ5と、統合コントローラ6と、を有して構成されている。
前記統合コントローラ6には、アクセル開度センサ7と、車速センサ8と、エンジン回転数センサ9と、第1モータジェネレータ回転数センサ10と、第2モータジェネレータ回転数センサ11と、第2モータジェネレータトルクセンサ27と、から入力情報がもたらされる。なお、車速センサ8と第2モータジェネレータ回転数センサ11は、同じ動力分割機構TMの出力回転数を検出するもであるため、車速センサ8を省略し、第2モータジェネレータ回転数センサ11からのセンサ信号を車速信号として用いても良い。
前記ブレーキコントローラ5には、前左車輪速センサ12と、前右車輪速センサ13と、後左車輪速センサ14と、後右車輪速センサ15と、操舵角センサ16と、マスタシリンダ圧センサ17と、ブレーキストロークセンサ18と、横加速度センサ28と、から入力情報がもたらされる。
前記エンジンコントローラ1は、アクセル開度センサ7からのアクセル開度APとエンジン回転数センサ9からのエンジン回転数Neを入力する統合コントローラ6からの目標エンジントルク指令等に応じ、エンジン動作点(Ne,Te)を制御する指令を、例えば、図外のスロットルバルブアクチュエータへ出力する。
前記モータコントローラ2は、レゾルバによる両モータジェネレータ回転数センサ10,11からのモータジェネレータ回転数N1,N2を入力する統合コントローラ6からの目標モータジェネレータトルク指令等に応じ、第1モータジェネレータMG1のモータ動作点(N1,T1)と、第2モータジェネレータMG2のモータ動作点(N2,T2)と、をそれぞれ独立に制御する指令をパワーコントロールユニット3へ出力する。なお、このモータコントローラ2は、バッテリ4の充電状態をあらわすバッテリS.O.Cの情報を用いる。
前記パワーコントロールユニット3は、より少ない電流で両モータジェネレータMG1,MG2への電力供給が可能な電源系高電圧による強電ユニットを構成するもので、図5に示すように、ジョイントボックス3aと、昇圧コンバータ3bと、駆動モータ用インバータ3cと、発電ジェネレータ用インバータ3dと、コンデンサ3eと、を有する。前記第2モータジェネレータMG2のステータコイルには、駆動モータ用インバータ3cが接続される。前記第1モータジェネレータMG1のステータコイルには、発電ジェネレータ用インバータ3dが接続される。また、前記ジョイントボックス3aには、力行時に放電し回生時に充電するバッテリ4が接続される。
前記ブレーキコントローラ5は、低μ路制動時や急制動時等において、4輪のブレーキ液圧を独立に制御するブレーキ液圧ユニット19への制御指令によりABS制御を行い、また、エンジンブレーキやフットブレーキによる制動時、統合コントローラ6への制御指令とブレーキ液圧ユニット19への制御指令を出すことで回生ブレーキ協調制御を行う。このブレーキコントローラ5には、各車輪速センサ12,13,14,15からの車輪速情報や、操舵角センサ16からの操舵角情報や、マスタシリンダ圧センサ17やブレーキストロークセンサ18からの制動操作量情報が入力される。そして、これらの入力情報に基づいて、所定の演算処理を実行し、その処理結果による制御指令を統合コントローラ6とブレーキ液圧ユニット19へ出力する。なお、前記ブレーキ液圧ユニット19には、前左車輪ホイールシリンダ20と、前右車輪ホイールシリンダ21と、後左車輪ホイールシリンダ22と、後右車輪ホイールシリンダ23と、が接続されている。
前記統合コントローラ6は、車両全体の消費エネルギを管理し、最高効率で車両を走らせるための機能を担うもので、加速走行時等において、エンジンコントローラ1への制御指令によりエンジン動作点制御を行い、また、停止時や走行時や制動時等において、モータコントローラ2への制御指令によりモータジェネレータ動作点制御を行う。この統合コントローラ6には、各センサ7,8,9,10,11からのアクセル開度APと車速VSPとエンジン回転数Neと第1モータジェネレータ回転数N1と第2モータジェネレータ回転数N2とが入力される。そして、これらの入力情報に基づいて、所定の演算処理を実行し、その処理結果による制御指令をエンジンコントローラ1とモータコントローラ2へ出力する。なお、統合コントローラ6とエンジンコントローラ1、統合コントローラ6とモータコントローラ2、統合コントローラ6とブレーキコントローラ5は、情報交換のためにそれぞれ双方向通信線24,25,26により接続されている。
次に、駆動力性能について説明する。
実施例1のハイブリッド車の駆動力は、図2(b)に示すように、エンジン直接駆動力(エンジン総駆動力から発電機駆動分を差し引いた駆動力)とモータ駆動力(両モータジェネレータMG1,MG2の総和による駆動力)との合計で示される。その最大駆動力の構成は、図2(a)に示すように、低い車速ほどモータ駆動力が多くを占める。このように、変速機を持たず、エンジンEの直接駆動力と電気変換したモータ駆動力を加えて走行させることから、低速から高速まで、定常運転のパワーの少ない状態からアクセルペダル全開のフルパワーまで、ドライバの要求駆動力に対しシームレスに応答良く駆動力をコントロールすることができる(トルク・オン・デマンド)。
そして、実施例1のハイブリッド車では、動力分割機構TMを介し、エンジンEと両モータジェネレータMG1,MG2と左右前輪(駆動輪)とがクラッチ無しで繋がっている。また、上記のように、エンジンパワーの大部分を発電機で電気エネルギに変換し、高出力かつ高応答のモータで車両を走らせている。このため、例えば、アイスバーン等の滑りやすい路面での走行時において、駆動輪のスリップやブレーキ時の駆動輪のロック等で車両の駆動力が急変する場合、過剰電流からのパワーコントロールユニット3の部品保護、あるいは、動力分割機構TMのピニオン過回転からの部品保護を行う必要がある。これに対し、高出力・高応答のモータ特性を活かし、部品保護の機能から発展させて、駆動輪の駆動スリップを瞬時に検出し、そのグリップを回復させ、車両を安全に走らせるためのモータトラクション制御を採用している。
次に、制動力性能について説明する。
実施例1のハイブリッド車では、エンジンブレーキやフットブレーキによる制動時には、モータとして作動している第2モータジェネレータMG2を、ジェネレータ(発電機)として作動させることにより、車両の運動エネルギを電気エネルギに変換してバッテリ4に回収し、再利用する回生ブレーキシステムを採用している。
この回生ブレーキシステムでの一般的な回生ブレーキ協調制御は、図3(a)に示すように、ブレーキペダル踏み込み量に対し要求制動力を算出し、要求制動力に大きさにかかわらず、算出された要求制動力を回生分と油圧分とで分担することで行われる。
これに対し、実施例1のハイブリッド車で採用している回生ブレーキ協調制御は、図3(b)に示すように、ブレーキペダル踏み込み量に対し要求制動力を算出し、算出された要求制動力に対し回生ブレーキを優先し、回生分で賄える限りは油圧分を用いることなく、最大限まで回生分の領域を拡大している。これにより、特に加減速を繰り返す走行パターンにおいて、エネルギ回収効率が高く、より低い車速まで回生制動によるエネルギの回収を実現している。
次に、車両モードについて説明する。
実施例1のハイブリッド車での車両モードとしては、図4の共線図に示すように、「停車モード」、「発進モード」、「エンジン始動モード」、「定常走行モード」、「加速モード」を有する。
「停車モード」では、図4(1)に示すように、エンジンEと発電機MG1とモータMG2は止まっている。「発進モード」では、図4(2)に示すように、モータMG2のみの駆動で発進する。「エンジン始動モード」では、図4(3)に示すように、エンジンスタータとしての機能を持つ発電機MG1によって、サンギヤSが回ってエンジンEを始動する。「定常走行モード」では、図4(4)に示すように、主にエンジンEにて走行し、効率を高めるために発電を最小にする。「加速モード」では、図4(5)に示すように、エンジンEの回転数を上げると共に、発電機MG1による発電を開始し、その電力とバッテリ4の電力を使ってモータMG2の駆動力を加え、加速する。
なお、後退走行は、図4(4)に示す「定常走行モード」において、エンジンEの回転数上昇を抑えたままで、発電機MG1の回転数を上げると、モータMG2の回転数が負側に移行し、後退走行を達成することができる。
始動時は、イグニッションキーを回すとエンジンEが始動し、エンジンEを暖機した後、直ぐにエンジンEは停止する。発進時や軽負荷時は、発進時やごく低速で走行する緩やかな坂を下るときなどは、エンジン効率の悪い領域は燃料をカットし、エンジンは停止してモータMG2により走行する。通常走行時は、エンジンEの駆動力は、動力分割機構TMにより一方は車輪を直接駆動し、他方は発電機MG1を駆動し、モータMG2をアシストする。全開加速時は、バッテリ4からパワーが供給され、さらに、駆動力を追加する。減速時や制動時には、車輪がモータMG2を駆動し、発電機として作用することで回生発電を行う。回収した電気エネルギはバッテリ4に蓄えられる。バッテリ4の充電量が少なくなると、発電機MG1をエンジンEにより駆動し、充電を開始する。車両停止時には、エアコン使用時やバッテリ充電時等を除き、エンジンEを自動的に停止する。
次に、作用を説明する。
[モータトラクション制御処理]
図6は実施例1の統合コントローラ6にて実行されるモータトラクション制御処理の流れを示すフローチャートで、以下、各ステップについて説明する(モータトラクション制御手段)。
ステップS1では、各車輪速センサ12,13,14,15からのセンサ信号に基づき、駆動輪である左右前輪の車輪速と従動輪である左右後輪の車輪速を演算し、ステップS2へ移行する。
ステップS2では、ステップS1での車輪速演算に続き、左右前輪の車輪速の平均値である駆動輪車輪速と、左右後輪の車輪速の平均値である従動輪車輪速とを求め、
スリップ量S=駆動輪車輪速−従動輪車輪速
または、
スリップ量S={(駆動輪車輪速−従動輪車輪速)/従動輪車輪速}×100[%]
の式により、スリップ量Sを演算し、ステップS3へ移行する。
ステップS3では、ステップS2でのスリップ量Sの演算に続き、演算されたスリップ量Sに基づいてスリップ量トルク制限値TSlimを演算し、ステップS4へ移行する。
ここで、「スリップ量トルク制限値TSlim」は、図7に示すように、スリップ量Sに対するトルク制限値TSlimの関係をマップあるいは演算式により設定しておき、スリップ量Sがスリップ量設定値S1まではトルク制限値TSlimを一定値とし、スリップ量Sがスリップ量設定値S1を超えるとスリップ量Sが大きな値になるほど比例的にトルク制限値TSlimを小さな値とする。なお、ステップS1〜ステップS3は、スリップ量制御部に相当する。
ステップS4では、ステップS3でのスリップ量トルク制限値TSlimを演算に続き、タイヤの概念を組み込んでトラクション路面μを推定し、ステップS5へ移行する。
ここで、「トラクション路面μ」の推定は、例えば、各車輪の車輪速VW1〜VW4および単位荷重当たりの制駆動力F1〜F4を求め、これらの車輪速VW1〜VW4および単位荷重当たりの制駆動力F1〜F4の組み合わせを表す車輪毎の点を、2次元座標上に表記し、これらの点を代表する直線を求め、その勾配に基づき路面摩擦係数μを推定する(図10参照)。なお、詳しくは後述する。
ステップS5では、ステップS4でのトラクション路面μを推定に続き、第2モータジェネレータ回転数センサ11からのセンサ信号に基づき、前輪(=第2モータジェネレータMG2)の角加速度ω’を演算し、ステップS6へ移行する。
ここで、「角加速度ω’」の演算は、角速度(=第2モータジェネレータ回転数)を時間微分することで演算することができる。微分演算の手法としては、例えば、サンプリングタイムが10msecの場合、現在の第2モータジェネレータ回転数計測値と10msec前の第2モータジェネレータ回転数計測値の偏差をとることで、微分値を算出することができる。
ステップS6では、ステップS5での角加速度ω’の演算に続き、角加速度トルク制限値Tω'limを演算し、ステップS7へ移行する。
ここで、「角加速度トルク制限値Tω'lim」は、図8に示すように、角加速度ω’に対するトルク制限値Tω'limの関係をマップあるいは演算式により設定しておき、角加速度ω’が角加速度設定値ω'1まではトルク制限値Tω'1limを一定値とし、角加速度ω’が角加速度設定値ω'1を超えると角加速度ω’が大きな値になるほど比例的にトルク制限値Tω'limを小さな値とする。なお、ステップS5及びステップS6は、角加速度制御部に相当する。
ステップS7では、ステップS5での角加速度トルク制限値Tω'limの演算に続き、駆動スリップ開始判定時のスリップ開始トルクに基づいて部品保護路面μを推定し、ステップS8へ移行する。
ここで、「部品保護路面μ」の推定は、角加速度ω’が設定角加速度ωo'以上となったとき(スリップ開始判定時)の第2モータジェネレータトルクセンサ27からのモータトルク値と横加速度センサ28からの横加速度検出値を保持しておき、モータトルク値が大きいほど高い前後力を与え、横加速度検出値が大きいほど高い横力を与え、前後力と横力との加算により路面μを推定する。なお、詳しくは、後述する(図11参照)。
ステップS8では、ステップS7での部品保護路面μを推定に続き、ステップS4にて推定されたトラクション路面μとステップS7にて推定された部品保護路面μとのセレクトローにより路面μを決定し、ステップS9へ移行する。
ステップS9では、ステップS8での路面μの決定に続き、スリップ量トルク制限値TSlimと角加速度トルク制限値Tω'limとのセレクトローによりモータトルク制限値を選択し、ステップS10へ移行する。つまり、「スリップ量制御」と「角加速度制御」のうち、一方の制御を選択する。
ステップS10では、ステップS9でのモータトルク制限値の選択に続き、推定路面摩擦係数の大きさに応じて制御ゲインKを設定し、ステップS11へ移行する。
ここで、「制御ゲインK」は、図9に示すように、推定した路面μが第1設定値μ1以下の低μ領域では、低い値の一定値による制御ゲインKを設定し、推定した路面μが第1設定値μ1から第2設定値μ2までの領域では、推定した路面μが大きくなるほど制御ゲインが比例的に大きくなる制御ゲインKに設定し、推定した路面μが第2設定値μ2以上の高μ領域では、高い値の一定値による制御ゲインK(例えば、k=1.0)を設定する。つまり、低μ路であると推定されるほどトルク制限値がさらに絞られて低い値とされる。
ステップS11では、ステップS10での制御ゲインKの設定に続き、ステップS9において選択したモータトルク制限値と、ステップS10において設定した制御ゲインKとによりモータトルク指令値を決め、この指令値をモータコントローラ2へ出力し、リターンへ移行する。
[トラクション路面μの推定]
上記図6のステップS4におけるトラクション路面μの推定は、以下の方法で行う。
車輪スリップ率Sに対する路面摩擦係数μ(換言すれば、車輪の制駆動力)の変化特性は、高μ路では、例えば、図10(a)に実線で示すようになり、低μ路では、図10(a)に1点鎖線で示すようになることが知られている。何れの場合も、路面摩擦係数の最高値μmaxは異なるが、ほぼ同じような傾向を持った特性を呈する。上記の関係は、車輪スリップ率Sが図10(a)に示すように加速時におけるS≦Soの領域だけでなく、制動時におけるS≧−Soの領域においても、同様に成立することは周知の事実である。
そして、車輪スリップ率Sに対する路面摩擦係数μの変化特性がほぼ線形とみなせる車輪スリップ率So以下の領域の領域においては、車輪速と単位荷重当たりの制駆動力とで表記される図10(b)の2次元座標上に各車輪1〜4の車輪速VW1〜VW4と、単位荷重当たりの制駆動力F1〜F4との組み合わせを車輪毎にプロットすると、該プロットにより発生した4点は、図10(b)に実線で示すように、ほぼ同じ直線上の位置に配置される。そして、当該直線と上記2次元座標の車輪速(VW)軸とが交差する点における車輪速値が車体速Vxそのものであり、また、車輪速(VW)軸に対する上記直線の勾配が、図10(a)の横軸(車輪スリップ率S)に対する路面摩擦係数μの立ち上がり勾配に対応した車両のドライビングスティフネスkである。
ここで、図10(a)に示す実線特性および1点鎖線特性の比較から明らかなように、ドライビングスティフネスkと、路面摩擦係数の最高値μmaxとの間には、例えば、図10(c)に例示するような関係が成立し、そして、最高摩擦係数μmaxが路面の絶対的な滑り難さ(本明細書では、この絶対的な滑り難さも一般的な呼称であることから、路面摩擦係数μと称する。)を表すことから、図10(b)の車輪速(VW)軸に対する上記直線の勾配(ドライビングスティフネスk)から、路面の絶対的な滑り難さである路面摩擦係数μを推定することができる。
よって、実施例1においては、大きくスリップしておらず、前記線形領域にある車輪に関して、各車輪の車輪速VW1〜VW4および単位荷重当たりの制駆動力F1〜F4を求めると共に、これらの車輪速VW1〜VW4および単位荷重当たりの制駆動力F1〜F4の組み合わせを表す車輪毎の点を、図10(b)のごとき2次元座標上に表記し、これらの点を代表する直線を求め、上記の要領で車体速Vxおよび路面摩擦係数μを推定する。
[部品保護路面μの推定]
図11は実施例1の統合コントローラ6にて実行される部品保護路面μの推定処理の流れを示すフローチャートで、以下、各ステップについて説明する。
ステップS12では、第2モータジェネレータトルクセンサ27からのモータトルクを読み込み、ステップS13へ移行する。
ステップS13では、ステップS12でのモータトルクの読み込みに続き、第2モータジェネレータMG2(=駆動輪)の角加速度ω’が設定角加速度ωo'以上か否かが判断され、YESの場合はステップS14へ移行し、NOの場合はステップS12へ戻る。
ステップS14では、ステップS13での角加速度判断に続き、角加速度ω’が設定角加速度ωo'以上と判断された最初のモータトルク(ステップS13にてYESと判断された制御周期にて読み込まれたモータトルク)を、スリップ開始トルクとし、RAM上に一旦保持しておき、ステップS15へ移行する。なお、ステップS12〜ステップS14は、スリップ開始トルク相当値検出手段に相当する。
ステップS15では、ステップS14でのスリップ開始トルクの保持に続き、角加速度ω’が設定角加速度ωo'以上と判断された最初の横加速度検出値(ステップS13にてYESと判断された制御周期にて読み込まれた横加速度センサ28からの横加速度検出値)を、スリップ開始横加速度とし、RAM上に一旦保持しておき、ステップS16へ移行する(スリップ開始旋回相当値検出手段)。
ステップS16では、ステップS15でのスリップ開始横加速度の保持に続き、RAM上から読み取ったスリップ開始横加速度に基づき横力を推定し、ステップS17へ移行する(横力推定部)。
ここで、「横力」は、ステップS16の枠内に記載した横力特性に示すように、スリップ開始横加速度が高いほど比例的に高くなる値にて与える。
ステップS17では、ステップS16での横力の推定に続き、RAM上から読み取ったスリップ開始トルクに基づき前後力を推定し、ステップS18へ移行する(前後力推定部)。
ここで、「前後力」の推定は、ステップS17の枠内に記載した前後力特性に示すように、スリップ開始トルクが第1設定トルクTS1以下のときは実路面での摩擦係数最小値に基づく低前後力とし、スリップ開始トルクが第1設定トルクTS1から第2設定トルクTS2までの間はスリップ開始トルクが高いほど前後力を高くし、スリップ開始トルクが第2設定トルクTS2以上のときは実路面での摩擦係数最大値に基づく高前後力とする。
ステップS18では、ステップS17での前後力の推定に続き、前後力と横力との和により路面摩擦係数を推定し、エンドへ移行する。なお、ステップS16〜ステップS18は、路面摩擦係数推定手段に相当する。
[トラクション制御の背景技術について]
例えば、特開平10−304514号公報には、スリップ初期にトルクダウン応答性を向上させる技術(角加速度制御)が開示されている。この手法は、主にハイブリッド車や電気自動車や燃料電池車等のように、駆動力を発生させるユニットとしてモータを用いた車両に適用されるケースが多い。この技術の基本は、駆動輪の回転角速度の変化率(角加速度)が所定値以上のときに駆動スリップが発生すると予測し、モータトルクを低下させる構成となっている。この構成とすることにより、モータトルクの増加に伴って生じる駆動スリップを防止することができる。
ここで、駆動力を発生させるユニットとしてモータを用いたハイブリッド車において、駆動スリップの発生初期に高応答性にてスリップを抑制する「角加速度制御」が必要な理由について説明する。
仮にモータトラクション制御装置が無くて駆動スリップした場合には、エンジンの発電が追いつかず、モータはバッテリからどんどん電流を持ち出す。よって、モータ駆動回路に過電流が発生し、回路上の素子等にダメージを与えることになる。例えば、実施例1のパワーコントロールユニット3において、図5の矢印に示すように、コンデンサ3eを介して過電流が流れると、ジョイントボックス3aのヒューズや昇圧コンバータ3bのスイッチング回路がダメージを受けてしまう場合がある。しかも、ハイブリッド車や燃料電池車では、二次電池に対してモータ出力(モータ出力比)が大きければ大きいほど過電流が流れやすい。また、二次電池に対してエンジン、燃料電池の出力(エンジン出力比)が大きければ大きいほど過電圧、過電流が流れやすい。という関係がある。したがって、確実に部品保護を図るためには、滑ったらトルク制限をかけるという「角加速度制御」により駆動スリップを応答良く収束させるモータトラクション制御が必要となる。
しかしながら、従来の「角加速度制御」にあっては、駆動スリップが生じやすい低μ路における部品保護を優先し、駆動スリップの発生が予測されると大きなモータトルクダウン量を与える構成としていた。このため、駆動スリップの発生により駆動輪車輪速が増大するとモータトルクが低減し、モータトルクの低減に伴って駆動輪車輪速も低下する。この駆動輪車輪速の低下は、最適スリップ量範囲を超えるものとなり、車体速レベルまで低下する。そして、駆動輪車輪速が車体速レベルまで低下するとモータトルクの増加が許容され、駆動輪車輪速は再び増大する再スリップ状況となり、駆動輪車輪速変動幅の大きなスリップ発生とスリップ収束の動作が繰り返される。
つまり、「角加速度制御」の場合、スリップ開始を早期に検知しトルクダウン制御に入ることで過電流の発生は防止できるものの、コーナリングパワーの高い最適スリップ量範囲に対し実制御範囲はスリップ量が低い領域まで拡大しているため、駆動輪のポテンシャルを最大限まで使い切れていない。このため、「角加速度制御」の場合、部品保護は達成できるものの、駆動トルクの出力低下が大き過ぎて駆動輪車輪速が車両速度(車体速)に張り付くような場合、もたつきによる加速不良(スタンブル)が発生してしまう。また、「角加速度制御」の場合、駆動輪においてスリップ発生(スリップ量大)とスリップ収束(スリップ量小)とが繰り返されるハンチングが発生してしまう。
[モータトラクション制御作用]
実施例1では、従来の「角加速度制御」のみによるスタンブル発生の問題に対し、「角加速度制御」に、駆動輪のスリップ量をコーナリングパワーの高い最適スリップ量範囲に収束させる「スリップ量制御」を組み合わせることで、モータトラクション制御時、確実にスタンブルの発生を防止し、車両の加速性を確保するようにした。
例えば、発進時におけるモータトラクション制御では、ファーストスリップの発生に対しては「角加速度制御」による角加速度トルク制限値Tω'limが効き、駆動スリップが早期に抑制される。そして、角加速度の変化が小さくて車輪速が収束してゆくと、「スリップ量制御」によるスリップ量トルク制限値TSlimが効き、その後は、駆動輪車輪速が最適スリップ量範囲内に収まるように車輪速が制御される。
このように、モータトラクション制御として、「角加速度制御」と「スリップ量制御」とを組み合わせた制御を採用することで、ファーストスリップ後においてスタンブルが改善されて発進時や中間加速時において加速性が確保される。
しかしながら、「スリップ量制御」での路面μの推定と、「角加速度制御」での路面μの推定とは、それぞれ目的に応じた異なる推定手法を実施している。例えば、「スリップ量制御」での路面μの推定は、タイヤが路面に伝える力(トラクション)を引き出すための制御であるため、タイヤの概念を組み込んでいる。一方、「角加速度制御」での路面μの推定は、部品保護のための制御を実施しているため、スリップ開始時の迅速な路面μの推定が要求される。
これに対し、実施例1では、スリップ開始トルクによる前後力と、スリップ開始横加速度による横力と、に応じて部品保護路面μを推定することにより、「角加速度制御」におけるスリップ開始時の迅速、かつ、精度の良い路面μの推定要求に応えるようにした。
すなわち、角加速度ω’が設定角加速度ωo'以上になると、図11のフローチャートにおいて、ステップS12→ステップS13→ステップS14→ステップS15→ステップS16→ステップS17→ステップS18へと進む流れとなり、ステップS18において、スリップ開始トルクによる前後力と、スリップ開始横加速度による横力と、の和により部品保護路面μが推定される。
すなわち、低摩擦係数路ではタイヤのフリクションサークルは小さく、路面の摩擦係数が高いほどタイヤのフリクションサークルが大きくなるというように、路面摩擦係数に応じてタイヤのフリクションサークルの大きさが定まり、スリップはタイヤに加わる前後力と横力の合力がフリクションサークルの範囲を超えた場合に発生する。したがって、前後力と横力に応じて部品保護路面μを推定すると、例えば、旋回時において、前後力のみで部品保護路面μを推定する場合に比べ、横力を加味した分、部品保護路面μの推定精度が高くなる。
また、実施例1では、「角加速度制御」の開始条件と部品保護路面μを推定するスリップ開始判定条件を、同じく角加速度ω’が設定角加速度ωo'以上という条件に設定することで、「角加速度制御」の開始時点で、スリップ開始トルクとスリップ開始横加速度に基づき、スリップ発生路面での部品保護路面μを応答良く推定することができる。
そして、図6に示すモータトラクション制御処理では、ステップS9において選択された角加速度トルク制限値Tω'limを、ステップS10において設定された部品保護路面μに応じた制御ゲインKにて補正することで、ハンチングを防止する最適なモータトルク制限値の設定を行うことができる。
さらに、実施例1では、前後力の推定において、スリップ開始トルク対する前後力特性を、ステップS17の枠内に記載のように、スリップ開始トルクが第1設定トルクTS1以下のときは実路面での摩擦係数最小値に基づく低前後力とした。これによって、スリップ開始トルクが極端に低いときの部品保護路面μの誤推定を防止することができると共に、モータトラクション制御での加速不良を防止することができる。すなわち、図6に示すモータトラクション制御処理では、路面μが低ければ制御ゲインKをK<1.0とし、モータトルクを低く抑える傾向にあり、モータトルクを低く抑え過ぎると加速不良が発生してしまうことによる。
また、前後力の推定において、スリップ開始トルク対する前後力特性を、ステップS17の枠内に記載のように、スリップ開始トルクが第2設定トルクTS2以上のときは実路面での摩擦係数最大値に基づく高前後力とした。これによって、スリップ開始トルクが極端に高いときの部品保護路面μの誤推定を防止することができると共に、モータトラクション制御での加速過多を防止することができる。すなわち、図6に示すモータトラクション制御処理では、路面μが高ければ制御ゲインKをK=1.0とし、モータトルクを抑えない傾向(=ドライバのアクセル開度どおりのトルク)にあり、モータトルクを抑えないと加速過多が発生してしまうことによる。
次に、効果を説明する。
実施例1の車両のモータトラクション制御装置にあっては、下記に列挙する効果を得ることができる。
(1) 駆動輪を駆動する動力源に装備された少なくとも1つのモータと、駆動輪の駆動スリップを検出し、モータトルクダウン制御により駆動輪のグリップを回復させるモータトラクション制御手段と、を備えた車両のモータトラクション制御装置において、モータトラクション制御手段は、スリップ開始判定時のスリップ開始トルク相当値を検出するスリップ開始トルク相当値検出手段(ステップS12〜ステップS14)と、スリップ開始判定時のスリップ開始旋回相当値を検出するスリップ開始旋回相当値検出手段(ステップS15)と、前記スリップ開始トルク相当値による前後力とスリップ開始旋回相当値による横力に応じて路面摩擦係数を推定する路面摩擦係数推定手段(ステップS16〜ステップS18)と、を有するため、駆動スリップが開始したのと同時に前後力に横力を加味して路面摩擦係数を精度良く推定することで、路面摩擦係数情報を用いた精度の高いスリップ制御を実現できる。
(2) 前記スリップ開始トルク相当値検出手段は、前記モータや駆動輪の角加速度ω’が設定角加速度ωo'を上回ったらスリップ開始であると判定するため、駆動輪のスリップ発生開始時点で応答良くスリップ開始判定を行うことができる。
(3) 前記スリップ開始トルク相当値検出手段は、スリップ開始判定時において検出したモータトルク検出値をスリップ開始トルク相当値とするため、読み込んだモータトルク検出値を置き換え演算処理を行うことなく、高応答にてスリップ開始トルク情報を得ることができる。
(4) 前記スリップ開始旋回相当値検出手段は、スリップ開始判定時において検出したスリップ開始横加速度をスリップ開始旋回相当値とするため、横加速度センサ28から読み込んだ横加速度検出値をそのまま用い、高応答にてスリップ開始旋回情報を得ることができる。
(5) 前記路面摩擦係数推定手段は、スリップ開始トルク相当値により算出される前後力と、スリップ開始旋回相当値により算出される横力と、の和により路面摩擦係数を推定するため、前後力と横力との分担を明確にし、精度良く路面摩擦係数を推定算出することができる。
(6) 前記路面摩擦係数推定手段は、スリップ開始横加速度が高いほど横力を高くする横力推定部(ステップS16)と、スリップ開始トルクが第1設定トルクTS1以下のときは実路面での摩擦係数最小値に基づく低前後力とし、スリップ開始トルクが第1設定トルクTS1から第2設定トルクTS2までの間はスリップ開始トルクが高いほど前後力を高くし、スリップ開始トルクが第2設定トルクTS2以上のときは実路面での摩擦係数最大値に基づく高前後力とする前後力推定部(ステップS17)と、を有するため、スリップ開始トルクの誤推定を防止することができると共に、モータトラクション制御での加速不良や加速過多を確実に防止することができる。
(7) 前記モータトラクション制御手段は、トラクションの観点で駆動輪のスリップ量Sによりスリップ量トルク制限値TSlimを演算するスリップ量制御部(ステップS1〜ステップS3)と、部品保護の観点で駆動輪の角加速度ω’により角加速度トルク制限値Tω'limを演算する角加速度制御部(ステップS5及びステップS6)と、を有し、前記路面摩擦係数相当値推定手段(ステップS7)は、モータトラクション制御として「角加速度制御」が選択されたとき、「角加速度制御」の開始時に部品保護路面μを推定するため、モータトラクション制御時、確実にスタンブルの発生を防止し、車両の加速性を確保することができると共に、「角加速度制御」におけるスリップ開始時の迅速、かつ、精度の良い部品保護路面μの推定要求に応えることができる。
実施例2は、スリップ開始判定を強電ユニットにて流れる電流で行い、スリップ開始操舵角をスリップ開始旋回相当値とし、電流値と駆動軸回転数とに基づいて算出したモータトルク算出値をスリップ開始トルク相当値とする例である。なお、構成的には、実施例1と同様であるので、図示並びに説明を省略する。
次に、作用を説明する。
[部品保護路面μの推定]
図12は実施例2の統合コントローラ6にて実行される部品保護路面μの推定処理の流れを示すフローチャートで、以下、各ステップについて説明する。
ステップS21では、パワーコントロールユニット3を流れる電流値(ユニット電流)を読み込み、ステップS22へ移行する。
ステップS22では、ステップS21でのユニット電流の読み込みに続き、ユニット電流が設定値以上か否かが判断され、YESの場合はステップS23へ移行し、NOの場合はステップS21へ戻る。
ステップS23では、ステップS22でのユニット電流判断に続き、ユニット電流が設定値以上と判断された最初の電流値(ステップS22にてYESと判断された制御周期にて読み込まれたユニット電流)と、ユニット電流が設定値以上と判断された時点での第2モータジェネレータ回転数とを読み込み、ステップS24へ移行する。
ステップS24では、ステップS23での電流値と第2モータジェネレータ回転数の読み込みに続き、電流値と第2モータジェネレータ回転数とに基づき、スリップ開始トルクを算出し、このスリップ開始トルクをRAM上に保持し、ステップS25へ移行する。
ここで、モータ出力を、モータトルクTmと第2モータジェネレータ回転数N2とであらわすと、
モータ出力=Tm×N2 …(1)
となり、モータ出力を、パワーコントロールユニット3を流れる電流値Iと電圧値Vであらわすと、
モータ出力=I×V …(2)
よって、(1),(2)式により、
Tm=I×V/N2 …(3)
となり、電圧値Vを一定値とすると、モータトルクTmは、電流値Iと第2モータジェネレータ回転数N2により算出できる。
なお、ステップS21〜ステップS24は、スリップ開始トルク相当値検出手段に相当する。
ステップS25では、ステップS24でのスリップ開始トルクの算出に続き、ユニット電流が設定値以上と判断された最初の操舵角検出値(ステップS22にてYESと判断された制御周期にて読み込まれた操舵角センサ16からの操舵角検出値)を、スリップ開始操舵角とし、RAM上に一旦保持しておき、ステップS26へ移行する(スリップ開始旋回相当値検出手段)。
ステップS26では、ステップS25でのスリップ開始操舵角の保持に続き、RAM上から読み取ったスリップ開始操舵角に基づき横力を推定し、ステップS27へ移行する(横力推定部)。
ここで、「横力」は、ステップS26の枠内に記載した横力特性に示すように、スリップ開始操舵角が高いほど比例的に高くなる値にて与える。
ステップS27では、ステップS26での横力の推定に続き、RAM上から読み取ったスリップ開始トルクに基づき、実施例1と同様に、ステップS27の枠内に記載した前後力特性に基づき、前後力を推定し、ステップS28へ移行する(前後力推定部)。
ステップS28では、ステップS27での前後力の推定に続き、前後力と横力との和により路面摩擦係数を推定し、エンドへ移行する。なお、ステップS26〜ステップS28は、路面摩擦係数推定手段に相当する。
[モータトラクション制御作用]
「角加速度制御」での路面μの推定は、部品保護のための制御を実施しているため、スリップ開始時の迅速、かつ、精度の良い路面μの推定が要求されるのに対し、実施例2では、パワーコントロールユニット3を流れる電流値と第2モータジェネレータ回転数とに基づき算出されるスリップ開始トルクに応じた前後力と、スリップ開始操舵角に応じた横力と、の和により部品保護路面μを推定することにより、「角加速度制御」におけるスリップ開始時の迅速な路面μの推定が要求に応えることができる。
すなわち、ユニット電流が設定値以上になると、図12のフローチャートにおいて、ステップS21→ステップS22→ステップS23→ステップS24→ステップS25→ステップS26→ステップS27→ステップS28へと進む流れとなり、ステップS28において、スリップ開始トルクによる前後力と、スリップ開始操舵角による横力と、の和により、実施例1と同様に、精度良く部品保護路面μが推定される。
また、実施例2では、「角加速度制御」の開始条件に合わせて、部品保護路面μを推定するスリップ開始判定のユニット電流条件を設定することで、「角加速度制御」の開始時点で、スリップ発生した路面での部品保護路面μを応答良く推定することができる。なお、他の作用は、実施例1と同様であるので説明を省略する。
次に、効果を説明する。
実施例2の車両のモータトラクション制御装置にあっては、実施例1の(1),(5),(6),(7)の効果に加え、下記に列挙する効果を得ることができる。
(8) 前記スリップ開始トルク相当値検出手段は、前記第2モータジェネレータMG2に接続されるパワーコントロールユニット3を流れる電流が所定値を上回ったらスリップ開始であると判定するため、トルクセンサの付加を要することなく、部品保護に関連する電流値情報を用い、適切なスリップ開始判定を行うことができる。
(9) 前記スリップ開始トルク相当値検出手段は、スリップ開始判定時にパワーコントロールユニット3に流れる電流値と、スリップ開始判定時の第2モータジェネレータ回転数と、に基づいて算出したモータトルク算出値をスリップ開始トルクとするため、トルクセンサの付加を要することなく、前後力の推定情報であるスリップ開始トルクを容易に得ることができる。
(10) 前記旋回相当値検出手段は、スリップ開始判定時において検出したスリップ開始操舵角を旋回相当値とするため、車両に既存の操舵角センサ16を用い、横力の推定情報であるスリップ開始操舵角を容易に得ることができる。
実施例3は、スリップ開始判定を強電ユニットにて消費する電力で行い、スリップ開始車輪速差をスリップ開始旋回相当値とし、にて行い、電力値と駆動軸回転数とに基づいて算出したモータトルク算出値をスリップ開始トルク相当値とする例である。なお、構成的には、実施例1と同様であるので、図示並びに説明を省略する。
次に、作用を説明する。
[部品保護路面μの推定]
図13は実施例3の統合コントローラ6にて実行される部品保護路面μの推定処理の流れを示すフローチャートで、以下、各ステップについて説明する。
ステップS31では、パワーコントロールユニット3にて消費される消費電力を読み込み、ステップS32へ移行する。
ステップS32では、ステップS31でのユニット消費電力の読み込みに続き、ユニット消費電力が設定値以上か否かが判断され、YESの場合はステップS33へ移行し、NOの場合はステップS31へ戻る。
ステップS33では、ステップS32でのユニット消費電力判断に続き、ユニット消費電力が設定値以上と判断された最初の消費電力(ステップS32にてYESと判断された制御周期にて読み込まれたユニット消費電力)と、ユニット消費電力が設定値以上と判断された時点での第2モータジェネレータ回転数とを読み込み、ステップS34へ移行する。
ステップS34では、ステップS33での消費電力と第2モータジェネレータ回転数の読み込みに続き、消費電力と第2モータジェネレータ回転数とに基づき、スリップ開始トルクを算出し、このスリップ開始トルクをRAM上に保持し、ステップS35へ移行する。
ここで、モータ出力を、モータトルクTmと第2モータジェネレータ回転数N2とであらわすと、
モータ出力=Tm×N2 …(1)
となり、モータ出力を、パワーコントロールユニット3にて消費される消費電力Eであらわすと、
モータ出力=E(=I×V) …(2')
よって、(1),(2')式により、
Tm=E/N2 …(3')
となり、モータトルクTmは、消費電力Eと第2モータジェネレータ回転数N2により算出できる。
なお、ステップS31〜ステップS34は、スリップ開始トルク相当値検出手段に相当する。
ステップS35では、ステップS34でのスリップ開始トルクの算出に続き、ユニット電流が設定値以上と判断された最初の左右前輪の車輪速差(ステップS32にてYESと判断された制御周期にて読み込まれた前左車輪速センサ12と前右車輪速センサ13からの車輪速検出値差の絶対値)を、スリップ開始車輪速差とし、RAM上に一旦保持しておき、ステップS36へ移行する(スリップ開始旋回相当値検出手段)。
ステップS36では、ステップS35でのスリップ開始車輪速差の保持に続き、RAM上から読み取ったスリップ開始車輪速差に基づき横力を推定し、ステップS37へ移行する(横力推定部)。
ここで、「横力」は、ステップS36の枠内に記載した横力特性に示すように、スリップ開始操舵角が高いほど比例的に高くなる値にて与える。
ステップS37では、ステップS36での横力の推定に続き、RAM上から読み取ったスリップ開始トルクに基づき、実施例1と同様に、ステップS37の枠内に記載した前後力特性に基づき、前後力を推定し、ステップS38へ移行する(前後力推定部)。
ステップS38では、ステップS37での前後力の推定に続き、前後力と横力との和により路面摩擦係数を推定し、エンドへ移行する。なお、ステップS36〜ステップS38は、路面摩擦係数推定手段に相当する。
[モータトラクション制御作用]
「角加速度制御」での路面μの推定は、部品保護のための制御を実施しているため、スリップ開始時の迅速、かつ、精度の良い路面μの推定が要求されるのに対し、実施例3では、パワーコントロールユニット3にて消費される消費電力と第2モータジェネレータ回転数とに基づき算出されるスリップ開始トルクに応じた前後力と、スリップ開始車輪速差に応じた横力と、の和により部品保護路面μを推定することにより、「角加速度制御」におけるスリップ開始時の迅速な路面μの推定が要求に応えることができる。
すなわち、ユニット電流が設定値以上になると、図13のフローチャートにおいて、ステップS31→ステップS32→ステップS33→ステップS34→ステップS35→ステップS36→ステップS37→ステップS38へと進む流れとなり、ステップS38において、スリップ開始トルクによる前後力と、スリップ開始車輪速差による横力と、の和により、実施例1と同様に、精度良く部品保護路面μが推定される。
また、実施例3では、「角加速度制御」の開始条件に合わせて、部品保護路面μを推定するスリップ開始判定のユニット電力条件を設定することで、「角加速度制御」の開始時点で、スリップ発生した路面での部品保護路面μを応答良く推定することができる。なお、他の作用は、実施例1と同様であるので説明を省略する。
次に、効果を説明する。
実施例3の車両のモータトラクション制御装置にあっては、実施例1の(1),(5),(6),(7)の効果に加え、下記に列挙する効果を得ることができる。
(11) 前記スリップ開始トルク相当値検出手段は、前記第2モータジェネレータMG2に接続されるパワーコントロールユニット3で消費する消費電力が所定値を上回ったらスリップ開始であると判定するため、トルクセンサの付加を要することなく、部品保護に関連する消費電力情報を用い、適切なスリップ開始判定を行うことができる。
(12) 前記スリップ開始トルク相当値検出手段は、スリップ開始判定時にパワーコントロールユニット3の消費電力と、スリップ開始判定時の第2モータジェネレータ回転数と、に基づいて算出したモータトルク算出値をスリップ開始トルクとするため、トルクセンサの付加を要することなく、部品保護路面μの推定情報であるスリップ開始トルクを容易に得ることができる。
(13) 前記旋回相当値検出手段は、スリップ開始判定時において検出したスリップ開始車輪速差を旋回相当値とするため、車両に既存の前左車輪速センサ12と前右車輪速センサ13を用い、横力の推定情報であるスリップ開始車輪速差を容易に得ることができる。
以上、本発明の車両のモータトラクション制御装置を実施例1〜実施例3に基づき説明してきたが、具体的な構成については、これらの実施例に限られるものではなく、特許請求の範囲の各請求項に係る発明の要旨を逸脱しない限り、設計の変更や追加等は許容される。
実施例1〜3では、モータトルク制限値をスリップ量や角加速度によりそのまま算出する例を示したが、モータトルク要求値からスリップ量や角加速度により算出されるモータトルクダウン量を差し引いてモータトルク制限値を算出するようにしても良い。
実施例1〜3では、推定された路面μに基づき制御ゲインを決める例を示したが、モータトルク制限値に対するモータトルク指令値の位相遅れ時定数を決めたり、モータトルク制限値の補正値を決める等、モータトルク制限値を路面μに応じて適切なモータトルク指令値に置き換えるものであれば良い。
実施例1〜3では、モータトラクション制御として、「スリップ量制御」と「角加速度制御」とを組み合わせた例を示したが、例えば、「角加速度制御」のみを実行するモータトラクション制御装置にも適用できる。
実施例1では、スリップ量制御として、図7に示すマップを用いてスリップ量トルク制限値TSlimを演算する例を示したが、スリップ量Sと車両規範モデルを用いて、フィードフォワード的にスリップ量トルク制限値TSlimを演算するようにしても良い。この場合、車両規範モデルとしては、例えば、モータの動特性、プロペラシャフトやディファレンシャルギヤのバックラッシュを考慮した伝達関数が考えられる。まず、アクセル開度に応じて発生する車両トルクの応答性や伝達ゲインを実験(システム同定)や設計的に算出する。その結果を、例えば、
G(s)=(As+B)/(Cs+D) 但し、sはラプラス演算子
によりあらわす。もし、モデリングの精度を高めたければ、上式の次数を高めることが考えられる。
実施例1〜3では、1つのエンジンと2つのモータジェネレータと動力分割機構を備えたハイブリッド車への適用例を示したが、本発明のモータトラクション制御装置は、他のパワーユニット構造を備えたハイブリッド車や電気自動車や燃料電池車やモータ4WD車等、要するに、駆動輪を駆動する動力源に少なくとも1つのモータが装備された車両であれば適用することができる。
実施例1のモータトラクション制御装置が適用されたハイブリッド車を示す全体システム図である。 実施例1のモータトラクション制御装置が適用されたハイブリッド車における駆動力性能特性図と駆動力概念図である。 実施例1のモータトラクション制御装置が適用されたハイブリッド車における回生協調による制動力性能をあらわす対比特性図である。 実施例1のモータトラクション制御装置が適用されたハイブリッド車における各車両モードを示す共線図である。 実施例1のハイブリッド車の強電ユニット(バッテリ・パワーコントロールユニット・第1モータジェネレータ・第2モータジェネレータ)を示すブロック図である。 実施例1の統合コントローラにて実行されるモータトラクション制御処理の流れを示すフローチャートである。 実施例1でのモータトラクション制御で演算されるスリップ量トルク制限値の特性の一例を示す図である。 実施例1でのモータトラクション制御で演算される角加速度トルク制限値の特性の一例を示す図である。 実施例1でのモータトラクション制御で設定される路面μに対する制御ゲイン特性の一例を示す図である。 実施例1の路面摩擦係数の推定方法を説明するための路面摩擦係数特性・単位車輪荷重当たりの制駆動力特性・最高摩擦係数特性を示す図である。 実施例1の統合コントローラにて実行される部品保護路面μの推定処理の流れを示すフローチャートである。 実施例2の統合コントローラにて実行される部品保護路面μの推定処理の流れを示すフローチャートである。 実施例3の統合コントローラにて実行される部品保護路面μの推定処理の流れを示すフローチャートである。
符号の説明
E エンジン
MG1 第1モータジェネレータ
MG2 第2モータジェネレータ(モータ)
OS 出力スプロケット
TM 動力分割機構
1 エンジンコントローラ
2 モータコントローラ
3 パワーコントロールユニット
4 バッテリ
5 ブレーキコントローラ
6 統合コントローラ
7 アクセル開度センサ
8 車速センサ
9 エンジン回転数センサ
10 第1モータジェネレータ回転数センサ
11 第2モータジェネレータ回転数センサ
12 前左車輪速センサ
13 前右車輪速センサ
14 後左車輪速センサ
15 後右車輪速センサ
16 操舵角センサ
17 マスタシリンダ圧センサ
18 ブレーキストロークセンサ
19 ブレーキ液圧ユニット
20 前左車輪ホイールシリンダ
21 前右車輪ホイールシリンダ
22 後左車輪ホイールシリンダ
23 後右車輪ホイールシリンダ
27 第2モータジェネレータトルクセンサ
28 横加速度センサ

Claims (13)

  1. 駆動輪を駆動する動力源に装備された少なくとも1つのモータと、駆動輪の駆動スリップを検出し、モータトルクダウン制御により駆動輪のグリップを回復させるモータトラクション制御手段と、を備えた車両のモータトラクション制御装置において、
    前記モータトラクション制御手段は、
    スリップ開始判定時のスリップ開始トルク相当値を検出するスリップ開始トルク相当値検出手段と、
    スリップ開始判定時のスリップ開始旋回相当値を検出するスリップ開始旋回相当値検出手段と、
    前記スリップ開始トルク相当値による前後力とスリップ開始旋回相当値による横力に応じて路面摩擦係数を推定する路面摩擦係数推定手段と、
    を有することを特徴とする車両のモータトラクション制御装置。
  2. 請求項1に記載された車両のモータトラクション制御装置において、
    前記スリップ開始トルク相当値検出手段及び前記スリップ開始旋回相当値検出手段は、前記モータや駆動輪の角加速度が所定値を上回ったらスリップ開始であると判定することを特徴とする車両のモータトラクション制御装置。
  3. 請求項1に記載された車両のモータトラクション制御装置において、
    前記スリップ開始トルク相当値検出手段は、前記モータに接続される強電ユニットを流れる電流が所定値を上回ったらスリップ開始であると判定することを特徴とする車両のモータトラクション制御装置。
  4. 請求項1に記載された車両のモータトラクション制御装置において、
    前記スリップ開始トルク相当値検出手段は、前記モータに接続される強電ユニットで消費される電力が所定値を上回ったらスリップ開始であると判定することを特徴とする車両のモータトラクション制御装置。
  5. 請求項1乃至4の何れか1項に記載された車両のモータトラクション制御装置において、
    前記スリップ開始トルク相当値検出手段は、スリップ開始判定時において検出したモータトルク検出値をスリップ開始トルク相当値とすることを特徴とする車両のモータトラクション制御装置。
  6. 請求項1乃至4の何れか1項に記載された車両のモータトラクション制御装置において、
    前記スリップ開始トルク相当値検出手段は、スリップ開始判定時に強電ユニットに流れる電流値と、スリップ開始判定時の駆動軸回転数と、に基づいて算出したモータトルク算出値をスリップ開始トルク相当値とすることを特徴とする車両のモータトラクション制御装置。
  7. 請求項1乃至4の何れか1項に記載された車両のモータトラクション制御装置において、
    前記スリップ開始トルク相当値検出手段は、スリップ開始判定時に強電ユニットで消費する電力と、スリップ開始判定時の駆動軸回転数と、に基づいて算出したモータトルク算出値をスリップ開始トルク相当値とすることを特徴とする車両のモータトラクション制御装置。
  8. 請求項1乃至7の何れか1項に記載された車両のモータトラクション制御装置において、
    前記スリップ開始旋回相当値検出手段は、スリップ開始判定時において検出したスリップ開始横加速度をスリップ開始旋回相当値とすることを特徴とする車両のモータトラクション制御装置。
  9. 請求項1乃至7の何れか1項に記載された車両のモータトラクション制御装置において、
    前記スリップ開始旋回相当値検出手段は、スリップ開始判定時において検出したスリップ開始操舵角をスリップ開始旋回相当値とすることを特徴とする車両のモータトラクション制御装置。
  10. 請求項1乃至7の何れか1項に記載された車両のモータトラクション制御装置において、
    前記スリップ開始旋回相当値検出手段は、スリップ開始判定時において検出した左右操舵輪のスリップ開始車輪速差をスリップ開始旋回相当値とすることを特徴とする車両のモータトラクション制御装置。
  11. 請求項1乃至10の何れか1項に記載された車両のモータトラクション制御装置において、
    前記路面摩擦係数推定手段は、スリップ開始トルク相当値により算出される前後力と、スリップ開始旋回相当値により算出される横力と、の和により路面摩擦係数を推定することを特徴とする車両のモータトラクション制御装置。
  12. 請求項11に記載された車両のモータトラクション制御装置において、
    前記路面摩擦係数推定手段は、
    スリップ開始旋回相当値が高いほど横力を高くする横力推定部と、
    スリップ開始トルク相当値が第1設定トルク以下のときは実路面での摩擦係数最小値に基づく低前後力とし、スリップ開始トルク相当値が第1設定トルクから第2設定トルクまでの間はスリップ開始トルク相当値が高いほど前後力を高くし、スリップ開始トルク相当値が第2設定トルク以上のときは実路面での摩擦係数最大値に基づく高前後力とする前後力推定部と、
    を有することを特徴とする車両のモータトラクション制御装置。
  13. 請求項1乃至12の何れか1項に記載された車両のモータトラクション制御装置において、
    前記モータトラクション制御手段は、トラクションの観点で駆動輪のスリップ量によりスリップ量トルク制限値を演算するスリップ量制御部と、部品保護の観点で駆動輪の角加速度により角加速度トルク制限値を演算する角加速度制御部と、を有し、
    前記路面摩擦係数相当値推定手段は、モータトラクション制御として角加速度制御が選択されたとき、角加速度制御開始時に部品保護路面摩擦係数を推定することを特徴とする車両のモータトラクション制御装置。
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