JP2006140634A - フィルタ装置、デュプレクサ装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】小型化を図りつつ所望のフィルタ特性をもつフィルタ装置を得ること。
【解決手段】このフィルタ装置は、誘電体部材の第1および第2の端面間に互いに平行で、かつ同一平面上に位置しないように形成された少なくとも3つの貫通孔(111-113)と、第1または第2の端面のいずれか一方に、貫通孔(111-113)とそれぞれ重なりかつ外縁間の間隔を各貫通孔の外縁間の間隔より接近するように形成した座ぐり孔(121-123)とを有している。
【選択図】図6
【解決手段】このフィルタ装置は、誘電体部材の第1および第2の端面間に互いに平行で、かつ同一平面上に位置しないように形成された少なくとも3つの貫通孔(111-113)と、第1または第2の端面のいずれか一方に、貫通孔(111-113)とそれぞれ重なりかつ外縁間の間隔を各貫通孔の外縁間の間隔より接近するように形成した座ぐり孔(121-123)とを有している。
【選択図】図6
Description
本発明は、例えば誘電体材料に共振器を形成してなるフィルタ装置、デュプレクサ装置に関する。
通信装置の小型化と利用周波数の高周波数化に伴い、フィルタ装置の小型化に関する技術開発が進められている。このようなフィルタ装置として、誘電体材料に貫通孔を形成し当該貫通孔内面に導体層を形成した共振器を複数構成してなる誘電体フィルタが知られている。こうした誘電体フィルタをさらに小型にする方法として、共振孔をジグザグに配設したり(例えば特許文献1)、少なくとも二つの線上に配置すること(例えば特許文献2)が提案されている。
ところで、無線装置のフロントエンド部などでは、送受信フィルタ装置を組み合わせたデュプレクサ装置が使用されている。デュプレクサ装置を構成するフィルタは、一方のフィルタを通過する信号が他方のフィルタに混入しないように分離特性を向上させるため、それぞれのフィルタの通過帯域のエッジ部分の減衰特性が急峻であることが望ましい。エッジ部分の減衰特性を急峻にするには、当該エッジ部分に明確なヌル点(減衰極)を生じさせ、かつヌル点での減衰量を大きくすればよい。
しかし、従来の誘電体フィルタでは、小型にすればするほど減衰特性への影響が大きくなり、フィルタの小型化と良好な減衰特性を得ることの両立が非常に困難であった。すなわち、誘電体部材に共振器を形成してなるフィルタ装置においては、フィルタ装置の小型化によりフィルタ特性も変化するため、小型化を図りつつ所望のフィルタ特性をもつフィルタ装置を得ることが困難であった。
特開昭63−283210号公報
特開平7−326904号公報
このように従来のフィルタ装置、デュプレクサ装置では、小型化を図りつつ所望のフィルタ特性をもつフィルタ装置を得ることが困難であるという問題がある。
本発明はこのような課題を解決するためになされたもので、フィルタ装置の小型化を図りつつ所望のフィルタ特性を得ることのできるフィルタ装置、デュプレクサ装置を提供することを目的としている。
上記した目的を達成するために、本発明の第1の発明に係るフィルタ装置は、誘電体部材の第1および第2の端面間に互いに平行で、かつ同一平面上に位置しないように形成された少なくとも3つの貫通孔と、第1または第2の端面のいずれか一方に、貫通孔とそれぞれ重なりかつ外縁間の間隔を各貫通孔の外縁間の間隔より接近するように形成した座ぐり孔とを有することを特徴としている。
第2の発明に係るフィルタ装置は、第1の発明に係るフィルタ装置において、誘電体部材の各貫通孔と平行する第3の端面に入出力電極をさらに備え、各貫通孔および該各貫通孔に対応する各座ぐり孔は、それぞれ内壁面に導体層が形成された共振器を構成し、入出力電極は、各共振器のうち最も接近した共振器と結合したことを特徴としている。
第3の発明に係るフィルタ装置は、第2の発明に係るフィルタ装置において、入出力電極は、各共振器のうち最も接近した共振器を含む二つの共振器と結合したことを特徴としている。
第4の発明に係るフィルタ装置は、誘電体部材の第1および第2の端面間に互いに平行に形成された貫通孔と、第1または第2の端面のいずれか一方に貫通孔とそれぞれ重なるように形成した座ぐり孔とを備える共振器を少なくとも3つ有するフィルタ装置において、貫通孔は、それぞれ同一平面上に位置しないように形成され、座ぐり孔は、各共振器が互いに容量性結合するように、その外縁間の間隔が前記各貫通孔の外縁間の間隔より接近させて形成したことを特徴としている。
第5の発明に係るフィルタ装置は、第4の発明に係るフィルタ装置において、誘電体部材の各貫通孔と平行する第3の端面に入出力電極をさらに備え、入出力電極は、各共振器のうち最も接近した共振器と結合したことを特徴としている。
第6の発明に係るフィルタ装置は、第5の発明に係るフィルタ装置において、入出力電極は、各共振器のうち最も接近した共振器を含む二つの共振器と結合したことを特徴としている。
第7の発明に係るデュプレクサ装置は、第1ないし第6の発明のいずれかに係るフィルタ装置を具備したことを特徴としている。
本発明によれば、フィルタ装置の小型化を図りつつ所望のフィルタ特性を得ることができる。
以下、本発明の1実施形態を図面を参照して詳細に説明する。図1は、本発明に係る一つの実施形態のデュプレクサ装置の原理的回路構成を示す図である。図1に示すように、この実施形態のデュプレクサ装置1は、共振器L1ないしL3からなる第1のフィルタF1と、共振器L4ないしL6からなる第2のフィルタF2と、励振用の共振器L7とを有している。第1のフィルタF1および第2のフィルタF2は、それぞれ異なる周波数帯を通過させるバンドパスフィルタである。
第1のフィルタF1は、一端(a点)が入出力容量C1を介して端子T1と接続され、他端(b点)が互いに並列接続された等価的な結合インダクタL31および結合容量C31を介して共振器L7の一端と接続されている。同様に、第2のフィルタF2は、一端(d点)が端子T2と接続され、他端(c点)が互いに並列接続された等価的な結合インダクタL32および結合容量C32を介して共振器L7の一端と接続されている。そして、共振器L7の当該一端は端子T3と接続され、他端が接地されている。
このように、このデュプレクサ装置1では、端子T1−T3間は第1のフィルタF1が挿入され、端子T2−T3間は第2のフィルタF2が挿入されている。
次に第1のフィルタF1の回路構成を説明する。共振器L1は、一端が入出力容量C1を介して端子T1と接続され、他端が接地された共振体である。共振器L1の一端は、互いに並列接続された等価的な結合インダクタL11および結合容量C11ならびに結合インダクタL13および結合容量C13を介して共振器L2およびL3のそれぞれ一端とも接続されている。共振器L1は、誘電体材料に貫通孔を形成し、当該貫通孔内壁面に導体層を形成して管状導体をなすことにより構成される。共振器L1は、第1のフィルタF1の通過周波数およびその帯域に応じた大きさに形成され、目標周波数の波長の略四分の一の長さの共振長を有している。
共振器L2は、一端が互いに並列接続された等価的な結合インダクタL11および結合容量C11ならびに結合インダクタL12および結合容量C12を介して共振器L1およびL3と接続され、他端が接地された共振体である。共振器L2は、共振器L1と同様に誘電体材料に貫通孔を形成し、その内壁面に導体層を形成して管状導体をなすことにより構成される。共振器L2は、第1のフィルタF1の通過周波数およびその帯域に応じた大きさに形成され、目標周波数の波長の略四分の一の長さの共振長を有している。
共振器L3は、一端が互いに並列接続された等価的な結合インダクタL12および結合容量C12ならびに結合インダクタL13および結合容量C13を介して共振器L2およびL1と接続され、他端が接地された共振体である。共振器L3は、並列接続された等価的な結合インダクタL31および結合容量C31を介して共振器L7の一端および端子T3の接続点とも接続されている。共振器L3は、共振器L1や共振器L2と同様に、第1のフィルタF1の通過周波数およびその帯域に応じた大きさに形成され、目標周波数の波長の略四分の一の長さの共振長を有している。
このように、この実施形態に係るデュプレクサ装置1の第1のフィルタF1は、それぞれ並列接続され等価的な結合インダクタL11ないしL13および結合容量C11ないしC13を介して、共振器L1ないしL3を並列接続してなる。すなわち、この第1のフィルタF1は、三段構成の共振器からなり、その回路構成は対称構造となっている。そして、共振器L1ないしL3を互いに結合する並列接続された等価的な結合インダクタL11ないしL13および結合容量C11ないしC13は、結合容量C11ないしC13が支配的な状態とされ、共振器L1ないしL3が互いに容量性結合をなすように構成される。したがって、通過周波数帯の低周波側に大きな減衰極を有するフィルタとして機能する。
続いて、第2のフィルタF2の回路構成を説明する。共振器L6は、一端が端子T2と接続され、他端が接地された共振体である。共振器L6の一端は、互いに並列接続された等価的な結合インダクタL22および結合容量C22ならびに結合インダクタL23および結合容量C23を介して共振器L5およびL4のそれぞれ一端とも接続されている。共振器L6は、誘電体材料に貫通孔を形成し、当該貫通孔内壁面に導体層を形成して管状導体をなすことにより構成される。共振器L6は、第2のフィルタF2の通過周波数およびその帯域に応じた大きさに形成され、目標周波数の波長の略四分の一の長さの共振長を有している。
共振器L5は、一端が互いに並列接続された等価的な結合インダクタL22および結合容量C22ならびに結合インダクタL21および結合容量C21を介して共振器L6およびL4と接続され、他端が接地された共振体である。共振器L5は、共振器L6と同様に誘電体材料に貫通孔を形成し、その内壁面に導体層を形成して管状導体をなすことにより構成される。共振器L5は、第2のフィルタF2の通過周波数およびその帯域に応じた大きさに形成され、目標周波数の波長の略四分の一の長さの共振長を有している。
共振器L4は、一端が互いに並列接続された等価的な結合インダクタL21および結合容量C21ならびに結合インダクタL23および結合容量C23を介して共振器L5およびL6と接続され、他端が接地された共振体である。共振器L4は、並列接続された等価的な結合インダクタL32および結合容量C32を介して共振器L7の一端および端子T3の接続点とも接続されている。共振器L4は、共振器L5や共振器L6と同様に、第2のフィルタF2の通過周波数およびその帯域に応じた大きさに形成され、目標周波数の波長の略四分の一の長さの共振長を有している。
このように、この実施形態に係るデュプレクサ装置1の第2のフィルタF2は、それぞれ並列接続され等価的な結合インダクタL21ないしL23および結合容量C21ないしC23を介して、共振器L4ないしL6を並列接続してなる。すなわち、この第2のフィルタF2は、三段構成の共振器からなり、その回路構成は対称構造となっている。そして、共振器L4ないしL6を互いに結合する並列接続された等価的な結合インダクタL21ないしL23および結合容量C21ないしC23は、結合インダクタL21ないしL23が支配的な状態とされ、共振器L4ないしL6が互いに磁界性結合をなすように構成される。したがって、通過周波数帯の高周波側に大きな減衰極を有するフィルタとして機能する。
続いて、図2ないし図5を参照して、この実施形態に係るデュプレクサ装置の構成を詳細に説明する。図2は、この実施形態に係るデュプレクサ装置1の外観を示す斜視図であり、図3は、図2と逆の視点からみた斜視図であり、図4は、図2の矢視ABから底面13方向の断面を示す断面図であり、図5は、同じく矢視CDから底面13方向の断面を示す断面図である。
図2および図3に示すように、このデュプレクサ装置1は、例えばセラミックなどの誘電体材料を直方体形状に形成した誘電体部材10からなり、正面11、平面12、底面13、背面14、側面15および16を有している。正面11には、貫通孔111ないし117(一部図示せず)と、座ぐり孔121ないし126と、接地導体131とが形成されている。平面12には、電極141ないし143と、接地導体132とが形成されている。底面13には、接地導体133が略全面に形成されている。背面14には、貫通孔111ないし117と、接地導体134と、電極142が形成されている。側面15には、接地導体135が略全面に形成されている。側面16には、接地導体136と、電極143と、結合孔144とが形成されている。
貫通孔111ないし117は、正面11から背面14へ向けてそれぞれ同一方向に貫通した貫通孔であり、略円形断面を有している。貫通孔111および113は、正面11の長手方向の略中心から側面15方向の領域で、正面11の短手方向の中心線から平面12形成方向の領域に、貫通孔112を間に挟むように間隔を空けてそれぞれ形成されている。貫通孔112は、正面11の長手方向の略中心から側面15方向の領域で、貫通孔111および113の形成領域以外の領域に、貫通孔111および113に挟まれる位置に形成されている。貫通孔114ないし116は、正面11の短手方向の略中心位置で正面11の長手方向の略中心から側面16に向けて略一列に形成されている。貫通孔117は、正面11の略中央位置に形成されている。
座ぐり孔121ないし126は、正面11から背面14へ向けて形成された凹型領域(盲穴)である。座ぐり孔121ないし126は、それぞれ貫通孔111ないし116の正面11における開放端を取り込むように、貫通孔111ないし116と一体的に形成されている。
座ぐり孔121は、正面11における平面12および側面15のそれぞれと接する辺部に寄せた位置に形成され、角部が面取りされた三角形状の断面を有する凹部領域である。座ぐり孔122は、正面11において貫通孔112が形成された領域に、長軸が正面11の長辺と平行する長円形状の断面を有する凹部領域である。座ぐり孔123は、正面11において貫通孔113が形成された領域に、長軸が正面11の長辺と平行する長円形状の断面を有する凹部領域である。座ぐり孔121ないし123の平面11における断面は、座ぐり孔121ないし123相互に接近する方向に偏心して(寄せて)形成されている。
座ぐり孔124ないし126は、長軸が正面11の短辺と平行となるような長円の断面を有する凹部領域である。座ぐり孔125の正面11における断面の中心軸は、貫通孔115の同じく断面の中心軸と略同一位置に形成されるが、座ぐり孔124および126の正面11における断面の中心軸は、それぞれ貫通孔114および116の同じく断面の中心軸と正面11の長手方向に離間する方向に偏心して形成されている。
座ぐり孔121ないし126の断面は、貫通孔111ないし116の断面とそれぞれ正面11の平行方向に重複して形成されている。したがって、座ぐり孔121ないし126は、貫通孔111および116とその断面が重複する部分において背面14へ向けて貫通している。
また、図4および図5に示すように、座ぐり孔121ないし126は、それぞれ貫通孔111ないし116と段部を介して一体的に形成されている。そして、座ぐり孔121ないし126ならびに貫通孔111ないし116の内壁面は、接地導体134と一体的に形成された導体層により管状導体171ないし176を構成している。貫通孔117は、共振孔111ないし116と同様に、その内壁面に接地導体134と一体的に形成された導体層を有しており、管状導体177を構成している。
座ぐり孔121ないし126と貫通孔111ないし116は、前述のとおりそれぞれ段部を介して一体的に形成され、それぞれ大径部と小径部とからなる管状導体171ないし176を構成する。そして、管状導体171ないし176は、その小断面側において接地導体134と一体的に形成され、それぞれ図1に示す共振器L1ないしL6を構成する。共振器L1ないしL6は、誘電体部材10による仮想的な結合インダクタL11ないしL13とL21ないしL23、および結合容量C11ないしC13とC21ないしC23を介してそれぞれ互いに結合している。共振器L1ないしL6は、例えば銀などの導体材料を誘電体部材10の壁面に塗布して焼成することで形成される。
座ぐり孔121ないし123の平面11における断面は、貫通孔111ないし113の平面11における断面から互いに接近する方向に偏心して形成されているから、結合インダクタよりも結合容量が支配的となり、共振器L1ないしL3は、互いに容量性結合している。また、座ぐり孔124および126の正面11における断面の中心軸は、それぞれ貫通孔114および116の同じく断面の中心軸と正面11の長手方向に離間する方向に偏心して形成されているから、結合容量よりも結合インダクタの方が支配的となり、共振器L4ないしL6は、互いに磁界性結合している。
貫通孔117は、平面11において座ぐり孔を有しておらず、共振器L7を構成する。そして、共振器L7は、管状導体173がなす共振器L3および管状導体174がなす共振器L4の双方と結合している。
接地導体131ないし136は、デュプレクサ装置1が実装されたときに接地されるグラウンド電極であり、互いに一体的に形成されている。接地導体131ないし136は、例えば銀などの導体材料を誘電体部材10の壁面に塗布して焼成することで形成される。
接地導体131は、正面11において座ぐり孔124ないし126が形成された領域に形成された小片状の導体層である。接地導体131は、貫通孔114ないし116の列と平行する正面11の二つの長辺上で、それぞれ座ぐり孔124および125ならびに座ぐり孔125および126の長辺方向(貫通孔配列方向)の略中間位置に、平面12に形成された接地導体132および底面13に形成された接地導体133とそれぞれ跨るように一体的に形成されている。なお、接地導体131は、正面11の面上に限られず、正面11の長辺上の所定位置に切り欠き部を形成して該切り欠き部内壁面に導体層を形成してもよい。接地導体131は、座ぐり孔124および125、座ぐり孔125および126のそれぞれの開口端の間に接地電位領域を形成して、共振器L4ないしL6のそれぞれの間の結合が、磁界性結合(容量性結合よりも磁界性結合が支配的な状態)となるよう調整する作用をする。
接地導体132は、貫通孔111ないし117の列がなす面と平行する平面12上に形成された導体層であり、例えば銀厚膜などである。接地導体132には、誘電体部材10を露出させて接地導体132から分離された電極141ないし143が形成されている。
接地導体133は、接地導体132と対向する底面13のほぼ全面に形成された導体層である。接地導体134は、座ぐり孔121ないし126が形成された正面11と対向する背面14の略全面に形成された導体層である。接地導体135および136は、貫通孔111および116の列方向に対向する側面15および16に形成された導体層である。側面16には、電極143が平面12と跨るように形成されるとともに、電極143の略中心位置に結合孔144が形成されている。
電極141は、平面12において正面11および側面15が接する縁部近傍に形成された矩形の面状導体領域であり、このデュプレクサ装置1の入出力端子T1に対応する。電極141は、平面12の平行方向での共振器L1(管状導体171)の位置および大きさに対応し、共振器L1との間で入出力容量C1を形成している。電極141は、例えばスクリーン印刷などにより形成される。
電極142は、平面12において長辺方向の略中央位置で背面14と接する位置に形成された矩形の面状導体領域であり、このデュプレクサ装置1の入出力端子T3に対応する。電極142は、平面12および背面14の両面に跨るように形成され、背面14において貫通孔117の開放端面を取り囲むような略円形形状をなしている。そして、電極142は、貫通孔117の内壁面に形成された管状導体177と当該開放端において一体的に接続されている。
電極143は、平面12において貫通孔116の形成位置と対応して、平面12および側面16に跨るように形成された矩形の面状導体領域であり、このデュプレクサ装置1の入出力端子T2に対応する。電極143は、平面12、側面16および底面13に誘電体部材10の露出部を設けることにより形成され、側面16上において結合孔144を有している。
この実施形態のデュプレクサ装置1では、正面11から背面14に向けて形成された貫通孔111ないし116および座ぐり孔121ないし126からなる共振器L1ないしL6が構成されている。そして、電極141は、共振器L1ないしL6の列がなす平面と平行する平面12上に形成され、共振器L1との間で入出力容量C1を構成している。また電極143は、平面12および側面16に跨るように形成され、共振器L6との間で結合孔144を通して結合されている。電極142は、平面12および背面14に跨るように形成され、貫通孔117からなる管状導体177と接続されている。
図4および図5に示すように、管状導体171ないし176は、正面11における開口部が背面14における開口部よりも大きい断面を有している。管状導体177は、どちらの開放端面も同一の断面を有する。管状導体171ないし176は、正面11側から貫通孔111ないし116の長さの略30%ほどの位置において段部を有しており、貫通孔111ないし116と、これらより大径の座ぐり孔121ないし126とを結合している。管状導体171ないし173については、断面の大きい座ぐり孔121および123の領域が互いに接近する方向に寄せられている。一方、管状導体174ないし176については、断面の大きい座ぐり孔124および126の領域が、貫通孔114および116の領域から互いに離間する方向にそれぞれ寄せられている。ただし、管状導体172は、大径部の中心軸と小径部の中心軸とが略同一である。
このデュプレクサ装置1では、平面12の電極142に入力された高周波信号は、背面14の電極142を通じて共振器L7(管状導体177)に入力される。共振器L7は、隣接する共振器L3(管状導体173)と結合しているので、共振器L7に入力された高周波信号は共振器L3に励起される。共振器L1ないしL3(管状導体171ないし173)相互間は、互いに並列接続された等価的な結合インダクタL11ないしL13および結合容量C11ないしC13を介して高周波的に結合している。そのため、共振器L3に励起された高周波信号は、共振器L1ないしL3において共振する。共振器L1に高周波信号が励起すると、等価的なキャパシタである入出力容量C1を介して電極141に出力される。
一方、電極143に入力された高周波信号は、結合孔144を介して共振器L6(管状導体176)に入力される。共振器L6、L5およびL4(管状導体176、175および174)相互間は、等価的に互いに並列接続された結合インダクタL21ないしL23および結合容量C21ないしC23を介して高周波的に結合している。そのため、共振器L6に入力された高周波信号は、共振器L4ないしL6において共振する。共振器L4に高周波信号が励起すると、隣接して形成され共振器L4とも結合する共振器L7(管状導体177)に高周波信号が励起される。励起された高周波信号は背面14の電極142を通じて平面12の電極142に出力される。
ここで、第1のフィルタF1を構成する共振器L1ないしL3と、第2のフィルタF2を構成する共振器L4ないしL6とは、各々異なる周波数帯域を通過するように設計され、それぞれ容量性結合・磁界性結合をなしている。したがって、第1のフィルタF1の通過周波数の信号は、入出力端子T1とT3との間を通過し、T2へは流れない。同様に、第2のフィルタF2の通過周波数の信号は、入出力端子T2とT3との間を通過し、T1へは流れない。このように、このデュプレクサ装置1では、入出力端子T3を基点として第1のフィルタF1および第2のフィルタF2それぞれの通過周波数の信号を、入出力端子T1およびT2それぞれに分離して入出力することができる。特に、第1のフィルタF1および第2のフィルタF2のそれぞれの通過周波数帯について、前者を高い周波数帯、後者を低い周波数帯とする場合、それぞれのフィルタの減衰極が他方のフィルタの通過周波数帯に近い側のエッジに発生するので、デュプレクサとしての分離度をより高めることができる。
続いて、図6を参照して、この実施形態に係るデュプレクサ装置1における第1のフィルタF1の構造と作用との関係について詳細に説明する。図6は、この実施形態に係るデュプレクサ装置1について、共振器L1ないしL3を構成する座ぐり孔121ないし123近傍を示す正面図である。
図6に示すように、このデュプレクサ装置1における第1のフィルタF1では、共振器L1ないしL3が、座ぐり孔121ないし123ならびに貫通孔111ないし113からなる管状導体171ないし173により構成されている。また、貫通孔111ないし113は、それぞれ正面11の短辺方向(側面15の平行方向)の位置を互い違いにずらして形成されている。すなわち、貫通孔111ないし113は、正面11の長辺方向に一列(同一平面上)ではなく、二列以上(その中心軸が2軸以上)となるように形成されている。具体的には、貫通孔111および113は、正面11の短辺方向の中心線から平面12側に寄せられ、それぞれ電極141および接地電極132と接近させて形成されている。そして、座ぐり孔121ないし123は、それぞれが互いに接近するように長孔形状、角部が面取りされた三角形状に形成されている。これにより、貫通孔111ないし113相互間の距離よりも、座ぐり孔121ないし123相互間の距離の方が短くなるように形成される。
貫通孔111ないし113それぞれの中心軸を2軸となるように形成することで、言い換えれば、共振器L1ないしL3が同一平面上に形成されないように構成することで、座ぐり孔121および122間の距離a、座ぐり孔122および123間の距離b、および座ぐり孔123および121間の距離cをより接近させることが可能となり、共振器L1ないしL3間の容量性結合をより強めることが可能となる。容量性結合が強くなると、第1のフィルタF1の通過周波数帯の低周波側に減衰極を発生させることができる。したがって、第1のフィルタF1の通過周波数帯を第2のフィルタF2の通過周波数帯よりも高く設定した場合に、フィルタ間の漏れ信号を抑えることが可能になる。
また、貫通孔111ないし113それぞれの中心軸を2軸となるように形成した結果、座ぐり孔123および121間の距離cを短くすると、共振器L1およびL3間の結合(飛び越し結合)を強くすることができる。この飛び越し結合は、通常の減衰極よりもフィルタの通過周波数帯により近い位置に強い減衰極を発生させることが知られている。そのため、デュプレクサのように通過周波数帯近傍に強い減衰極を必要とするフィルタ装置に好適なフィルタを得ることが可能になる。
このように、この実施形態に係るデュプレクサ装置では、第1のフィルタF1において共振器L1ないしL3を同一平面上に形成されないように構成して、共振器L1ないしL3間の容量性結合を強くしたので、通過周波数帯域の低周波側に強い減衰極を発生させることができる。特に、この実施形態に係るデュプレクサ装置では、共振器L1ないしL3を同一平面上に形成されないようにしたので、共振器L1およびL3間に飛び越し結合を発生させることができ、通過周波数帯域の低周波側に新たにより強い減衰極を得ることができる。
続いて、図2、図3、図7および図8を参照して、この実施形態に係るデュプレクサ装置1の実施例について説明する。図7および図8は、この実施形態に係るデュプレクサタ装置の1実施例の通過特性(減衰特性)を示す図である。
図2に示す誘電体部材10として比誘電率45のセラミックを用い、図2および図3に示すパターン構造で、幅6.58mm、高さ1.64mm、奥行(長さ)4.50mmのデュプレクサ装置1を作成して通過特性(減衰特性)を調べた。
このデュプレクサ装置1の特性例を図7および図8に示す。図7は、デュプレクサ装置1のうち第1のフィルタF1の通過特性(減衰特性)であり、図8は、同じく第2のフィルタF2の通過特性(減衰特性)である。図7に示すように、第1のフィルタF1では、通過周波数帯域の低周波側の減衰特性(減衰カーブ)が急峻であり、1.91GHz付近および1.97GHz付近に二つの減衰極が得られた。このうち、1.97GHz付近の極が、前述した飛び越し結合により発生した減衰極と考えられる。また、図8に示すように、第2のフィルタF2では、2.12GHz付近に減衰極が得られた。
このように、この実施形態に係るデュプレクサ装置では、共振器L1ないしL3を同一平面上に形成されないように構成したので、デュプレクサ装置全体の大きさを小さくすることができる。また、この実施形態に係るデュプレクサ装置では、容量性結合をなす第1のフィルタF1と磁界性結合をなす第2のフィルタF2とを組み合わせたので、それぞれの減衰極を組み合わせることで、それぞれのフィルタの分離度を向上させることができる。
さらに、この実施形態に係るデュプレクサ装置では、第1のフィルタF1について、飛び越し結合による減衰極を発生させたので、第2のフィルタF2の通過周波数帯の信号が第1のフィルタF1に漏れるのを抑えることができ、分離度をさらに向上させることができる。加えて、この実施形態に係るデュプレクサ装置では、第1のフィルタF1について、通常の減衰極に加えて飛び越し結合による減衰極を発生させたので、通常の減衰極と飛び越し結合による減衰極とに挟まれた減衰帯域を第2のフィルタF2の通過周波数帯(前述の実施例ではおよそ1.85GHzないし2.04GHz)に対応させることで、分離特性をより向上させることができる。
続いて、この実施形態に係るデュプレクサ装置の変形例について説明する。図9は、この実施形態に係るデュプレクサ装置の変形例について、共振器L1ないしL3を構成する座ぐり孔近傍を示す正面図である。なお、図2および図3と同一の構成部分については同一の符号を付して示し、重複する説明は省略する。
第1の実施形態に係るデュプレクサ装置では、共振器L1およびL3の飛び越し結合により強い極を発生させて第1のフィルタF1の減衰特性を急峻なものとしていたが、この変形例では、共振器L1と結合している電極141を、さらに共振器L3とも結合させている。具体的には、図9に示すように、電極141の幅を大きくして共振器L1だけでなく共振器L3にも接近するように形成して、図中d1の結合および図中d2の結合をなしたものである。
以下、電極141の幅wを変化させて第1のフィルタF1の特性の変化を調べた。図2および図3に示すデュプレクサ装置1において、電極141の幅wのみを0.6mm、0.7mm、0.8mm、1.0mmおよび1.2mmとして、それぞれの場合の減衰特性を調べた。その結果、図10ないし図14に示す減衰特性が得られた。図10ないし図14は、それぞれ電極141の幅wを0.6mm、0.7mm、0.8mm、1.0mmおよび1.2mmとした場合の第1のフィルタF1の減衰特性(実線)および第2のフィルタF2の減衰特性(破線)を示す図である。
図10ないし図12に示すように、電極141の幅wが0.6mmないし0.8mmの場合、1.97GHz付近に共振器L1およびL3の飛び越し結合による減衰極が得られた。一方、共振器L1・L2間、および共振器L2・L3間の結合による通常の減衰極は、電極141の幅wが0.6mmの場合1.75GHz付近、0.7mmの場合1.82GHz付近、0.8mmの場合1.91GHz付近となり、図9における距離d2が短くなるほど通過帯域のエッジに接近し、二つの極が近づく傾向が得られた。なお、図13および図14に示すように、電極141の幅wが1.0mm以上となった場合には、二つの減衰極が消滅した。すなわち、第1のフィルタF1の本来の特性をなす結合関係が崩れたものと考えられる。この結果から、共振器L1およびL3間の飛び越し結合を調整することで、通過帯域近傍の減衰極の位置および大きさを決定することができ、電極141と共振器L3との間の結合を調整することで、第1のフィルタF1固有の減衰極の位置および大きさを調整できることがわかる。
このように、この変形例では、共振器L1と共振器L3との間、および電極141と共振器L1との間に加えて、電極141と共振器L3との間を結合させたので、二つの減衰極を得ることができるとともに、減衰極間の周波数帯域幅を任意に調整することができる。
なお、本発明は上記実施形態のみに限定されるものではない。
上記実施形態では、デュプレクサ装置の誘電体部材を直方体としているが、これには限定されない。すなわち、貫通孔および座ぐり孔からなる共振器が同一方向に併設されるものであれば、同様の効果を得ることができる。
上記実施形態では、デュプレクサ装置の誘電体部材を直方体としているが、これには限定されない。すなわち、貫通孔および座ぐり孔からなる共振器が同一方向に併設されるものであれば、同様の効果を得ることができる。
また、上記実施形態では、誘電体部材をセラミックにより構成しているが、これにも限定されない。すなわち、フィルタ装置を構成するのに適した比誘電率を有する誘電体材料であれば、同様に適用することができる。
なお、上記実施形態では第1のフィルタF1および第2のフィルタF2からなるデュプレクサ装置として説明したが、これには限定されない。すなわち、第1のフィルタF1の構造を有するフィルタ装置を単体で構成しても同様の効果を得ることができる。
本発明は、電気通信機器製造業等に適用することができる。
1…デュプレクサ装置、10…誘電体部材、11…正面、12…平面、13…底面、14…背面、15・16…側面、111ないし117…貫通孔、121ないし126…座ぐり孔、131ないし136…接地導体、141ないし143…電極、144…結合孔、171ないし177…管状導体、F1…第1のフィルタ、F2…第2のフィルタ、L1ないしL6…共振器。
Claims (7)
- 誘電体部材の第1および第2の端面間に互いに平行で、かつ同一平面上に位置しないように形成された少なくとも3つの貫通孔と、
前記第1または第2の端面のいずれか一方に、前記貫通孔とそれぞれ重なりかつ外縁間の間隔を前記各貫通孔の外縁間の間隔より接近するように形成した座ぐり孔と
を有することを特徴とするフィルタ装置。 - 前記誘電体部材の前記各貫通孔と平行する第3の端面に入出力電極をさらに備え、
前記各貫通孔および該各貫通孔に対応する前記各座ぐり孔は、それぞれ内壁面に導体層が形成された共振器を構成し、
前記入出力電極は、前記各共振器のうち最も接近した共振器と結合したこと
を特徴とする請求項1に記載のフィルタ装置。 - 前記入出力電極は、前記各共振器のうち最も接近した共振器を含む二つの共振器と結合したことを特徴とする請求項2に記載のフィルタ装置。
- 誘電体部材の第1および第2の端面間に互いに平行に形成された貫通孔と、前記第1または第2の端面のいずれか一方に前記貫通孔とそれぞれ重なるように形成した座ぐり孔とを備える共振器を少なくとも3つ有するフィルタ装置において、
前記貫通孔は、それぞれ同一平面上に位置しないように形成され、
前記座ぐり孔は、前記各共振器が互いに容量性結合するように、その外縁間の間隔が前記各貫通孔の外縁間の間隔より接近させて形成したこと
を特徴とするフィルタ装置。 - 前記誘電体部材の前記各貫通孔と平行する第3の端面に入出力電極をさらに備え、
前記入出力電極は、前記各共振器のうち最も接近した共振器と結合したこと
を特徴とする請求項4に記載のフィルタ装置。 - 前記入出力電極は、前記各共振器のうち最も接近した共振器を含む二つの共振器と結合したことを特徴とする請求項5に記載のフィルタ装置。
- 前記請求項1ないし6のいずれか1項に記載のフィルタ装置を備えたデュプレクサ装置。
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WO2010050329A1 (ja) * | 2008-10-29 | 2010-05-06 | 京セラ株式会社 | バンドパスフィルタならびにそれを用いた無線通信モジュールおよび無線通信機器 |
WO2021241104A1 (ja) * | 2020-05-25 | 2021-12-02 | 株式会社村田製作所 | Lcフィルタ、ならびにそれを用いたダイプレクサおよびマルチプレクサ |
-
2004
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