JP2006138235A - サーモスタット弁 - Google Patents

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Abstract

【課題】 作動の信頼性の高いサーモスタット弁の提供。
【解決手段】 弁ケース1に、ラジエータからの冷却水を流入する第1流入口2と、エンジンからの冷却水を流入する第2流入口3と、冷却水をエンジン側に回帰させる流出口4とを設けて、弁ケース内部に該各流入口と流出口を繋ぐ連通路5を画成する一方、該連通路内に、第1流入口側の弁座6を開閉する第1弁10と第2流入口側の弁座7を開閉する第2弁11を有する弁体8を配すると共に、該弁体に通電加熱される形状記憶合金ばね12とバイアスばね13とを装着して、第1弁で第1流入口側の弁座を閉塞した時には、第2弁で第2流入口側の弁座を開放し、第1弁で第1流入口側の弁座を開放した時には、第2弁で第2流入口側の弁座を閉塞するサーモスタット弁であって、形状記憶合金ばねの外周に断熱性・防水性及び弾性を有する皮膜18をコーティングしたことを特徴とする。
【選択図】 図1

Description

本発明は、自動車のエンジン冷却回路に使用されるサーモスタット弁に関するものである。
従来のこの種サーモスタット弁は、具体的には図示しないが、上記エンジン冷却回路内に設置される弁ケース内に弁座を形成して、該弁座を弁ケース内に移動可能に設けられた弁体で開閉する一方、弁体の上流側に弁体を閉じ方向に付勢するバイアスばねを装着し、弁体の下流側に弁体を開き方向に付勢する形状記憶合金ばねを装着し、且つ、当該形状記憶合金ばねを通電により強制的に加熱できる構成となっている(例えば、特許文献1参照)。
そして、エンジン冷却回路内を流動する冷却水が低温の場合には、形状記憶合金ばねが伸長せずに収縮したそのままの形状を維持しているので、弁体はバイアスばねのばね圧で上記弁座を閉塞して回路を遮断し、逆に、冷却水が高温の場合には、今度は、この温度を感知して、形状記憶合金ばねが伸長し、弁体をバイアスばねのばね圧に抗して押し上げ、弁座を開放して冷却水の流動を可能とする。
又、この場合に、例えば、エンジンに急負荷が加わり、エンジン側の冷却水の温度が急激に上昇したような時には、冷却水の温度による弁体の開閉とは別に、通電により、形状記憶合金ばねを強制的に加熱して、弁座を早めに開放することができるので、エンジン側へ回帰する冷却水の温度を一定に維持して、燃費の向上にも寄与することが可能となる。
特開平7−27251号公報
然し乍ら、従来のサーモスタット弁にあっては、感温素子たる形状記憶合金ばねを裸線のまま弁ケース内に装着する関係で、特に、通電加熱して作動させる場合には、ジュール熱が弁ケース内を流動する冷却水に奪われて中々昇温しないので、作動の信頼性に欠ける嫌いがあった。この為、実際の使用に際しては、例えば、実公平7−43573号公報に示すように、形状記憶合金ばねとバイアスばねをシール部材により冷却水から隔離させる構成を付与しなければならなくなるので、これに伴い、自ずと、サーモスタット弁自体が大型化する新たな問題点も招来させることとなる。
本発明は、斯かる従来のサーモスタット弁が抱える課題を有効に解決するために開発されたもので、請求項1記載の発明は、弁ケースに、ラジエータからの冷却水を流入する第1流入口と、エンジンからの冷却水を流入する第2流入口と、冷却水をエンジン側に回帰させる流出口とを設けて、弁ケース内部に該各流入口と流出口を繋ぐ連通路を画成する一方、該連通路内に、上記第1流入口側の弁座を開閉する第1弁と第2流入口側の弁座を開閉する第2弁を有する弁体を移動可能に配すると共に、該弁体に通電加熱される形状記憶合金ばねとバイアスばねとを逆方向から装着して、第1弁で第1流入口側の弁座を閉塞した時には、第2弁で第2流入口側の弁座を開放し、第1弁で第1流入口側の弁座を開放した時には、第2弁で第2流入口側の弁座を閉塞するサーモスタット弁であって、上記形状記憶合金ばねのコイル状外周に断熱性・防水性及び弾性を有する皮膜をコーティングしたことを特徴とする。
請求項2記載の発明は、請求項1を前提として、弁ケースと弁体は合成樹脂製で、バイアスばねはステンレス製であることを特徴とする。
依って、請求項1記載の発明にあっては、感温素子たる形状記憶合金ばねに対して、断熱性・防水性及び弾性を有する皮膜をコーティングしたので、特に、通電加熱して作動させる場合には、ジュール熱が弁ケース内を流動する冷却水に奪われることがないので、作動の信頼性が向上すると共に、小さな通電力で作動させることが可能となる。従って、従来の如く、形状記憶合金ばねとバイアスばねをシール部材により冷却水から隔離させる必要がなくなるので、サーモスタット弁自体の小型化にも大きく貢献できることとなる。
請求項2記載の発明にあっては、弁ケースと弁体が合成樹脂製であるので、サーモスタット弁自体の軽量化・小型化が更に可能となると共に、バイアスばねがステンレス製であるので、防錆処理も不要となる。
本発明は、自動車のエンジン冷却回路に使用されるサーモスタット弁において、形状記憶合金ばねのコイル状外周に断熱性・防水性及び弾性を有する皮膜をコーティングすることにより、特に、通電加熱して使用する場合には、作動の信頼性が向上すると共に、小さな通電力で作動させることを可能とするものである。
以下、本発明を図示する好適な実施例に基づいて詳述すれば、該実施例に係るサーモスタット弁は、図1・図2に示す如く、エンジン冷却回路内に設置される弁ケース1に対して、ラジェータからの冷却水を流入する第1流入口2と、エンジンからの冷却水を流入する第2流入口3と、冷却水をエンジン側に回帰させる1個の流出口4とを設けて、内部に該各流入口2・3と流出口4を繋ぐ連通路5を画成する一方、該連通路5の中間部に第1流入口2側の第1弁座6を形成し、第2流入口3と連通路5の境に第2流入口3側の第2弁座7を形成して、該各弁座6・7を後述する弁体8で開閉する構成となっている。
上記各弁座6・7を開閉する弁体8は、弁ケース1の連通路5内にガイド筒9を介して移動可能に配されるもので、その中間部側に上記第1弁座6を開閉する円盤状の第1弁10を一体に設け、下部側に上記第2弁座7を開閉するテーパー状の第2弁11を一体に設けて、円盤状の第1弁10に形状記憶合金ばね12とバイアスばね13とを逆方向から装着して、当該両ばね12・13のばね圧の差により、第1弁10で第1流入口2側の第1弁座6を閉塞した時には、第2弁11で第2流入口3側の第2弁座7を開放し、逆に、第1弁10で第1流入口2側の第1弁座6を開放した時には、第2弁11で第2流入口3側の第2弁座7を閉塞する構成となっている。
又、上記第1弁10と対向する弁ケース1の壁部に一方の電極14を固定し、第1弁10自体上に他方の電極15を固定して、当該両電極14・15とコントローラ16とを導電線17を介して接続することにより、上記形状記憶合金ばね12を強制的に通電加熱できる構成となっている。従って、形状記憶合金ばね12が強制的に通電された場合には、形状記憶合金ばね12がバイアスばね13のばね圧に打ち勝って伸長して、上記第1流入口2側の第1弁座6を開放し、形状記憶合金ばね12が通電されない場合には、今度は、逆に、形状記憶合金ばね12が収縮して、バイアスばね13が形状記憶合金ばね12のばね圧に打ち勝つので、上記第2流入口3側の第2弁座7を開放することとなる。
そして、本実施例にあっては、斯かる構成に加えて、上記形状記憶合金ばね12のコイル状外周に、断熱性・防水性及び弾性を有するシリコンゴムの皮膜18をコーティングして、特に、形状記憶合金ばね12を通電加熱して作動させる場合には、ジュール熱が弁ケース1内を流動する冷却水に奪われることを防止する構成が積極的に採用されている。尚、上記皮膜18の厚さは、0.1〜1ミリ程度とする。
尚、本実施例の下では、上記した弁ケース1と弁体8を耐熱性を有する合成樹脂で成形して、サーモスタット弁自体の軽量化・小型化を可能とすると共に、バイアスばね13をステンレス線材で成形して、防錆処理を不要となしている。
依って、実際の使用に際して、エンジン始動時など、冷却水の温度が形状記憶合金ばね12の作動温度以下の場合には、形状記憶合金ばね12が伸長することがないので、図1に示す如く、弁体8がバイアスばね13のばね圧で図中上方へ押し上げられて、第1弁座6は弁体8の第1弁10で閉塞され、第2弁座7は弁体8の第2弁11で開放されるので、冷却水は、エンジンからバイパス通路を経て、第2流入口3を通って弁ケース1の連通路5内に流動し、そこから流出口4を通ってエンジン側へ回帰させられることとなる。
逆に、エンジンが温まり、冷却水の温度が形状記憶合金ばね12の作動温度以上となった場合には、今度は、形状記憶合金ばね12がバイアスばね13に抗して伸長するので、図2に示す如く、弁体8が形状記憶合金ばね12のばね圧で図中下方へ押し下げられて、第1弁座6は弁体8の第1弁10で開放され、第2弁座7は弁体8の第2弁11で閉塞されるので、冷却水は、エンジンからラジェータを経て、第1流入口2を通って弁ケース1の連通路5内に流動し、そこから流出口4を通ってエンジン側へ回帰させられることとなる。
又、エンジンに急負荷が加わり、エンジン側の冷却水の温度が急激に上昇したような場合には、上記した冷却水の温度による弁体8の開閉とは別に、コントローラ16を駆動させて、通電により、形状記憶合金ばね12を強制的に発熱して、図2に示す如く、早めに、第1弁座6を開放し、第2弁座7を閉塞すれば、エンジン側へ回帰する冷却水の温度を一定に維持して、燃費の向上にも寄与することが可能となる。
特に、この場合には、本実施例にあっては、既述した如く、形状記憶合金ばね12は、そのコイル状外周に断熱性・防水性及び弾性を有するシリコンゴムの皮膜18をコーティングしている関係で、ジュール熱が弁ケース1内を流動する冷却水に奪われることがないので、作動の信頼性が向上すると共に、小さな通電力で作動させることが可能となる。従って、従来の如く、形状記憶合金ばね12とバイアスばね13をシール部材を介して冷却水から隔離させる必要もなくなるので、これによっても、サーモスタット弁の小型化に貢献できることとなる。
更に、コーティングなしの形状記憶合金ばねとシリコンゴムのコーティングを施した形状記憶合金ばね12を通電加熱させて、その通電量と作動までの時間を測定したところ、下記の表と通りの結果が得られた。尚、この場合には、コーティング皮膜18の厚さを0.5ミリ、形状記憶合金ばね12の線径をΦ0.75ミリ、水温を24℃、形状記憶合金ばね12の作動温度を60℃に設定した。
Figure 2006138235
これにより、ジュール熱が弁ケース1内を流動する冷却水に奪われないことが明らかになることは言うまでもないが、これに伴い、小さな通電量で形状記憶合金ばね12を作動させることが可能となるので、省電力にも大きく貢献できることとなる。
又、本実施例でも、形状記憶合金ばね12を直接通電加熱させる構成に立脚しているので、ワックスタイプのものと比較すると、別置きのヒーターがいらなくなるし、ワックス全体が温まるよりも、形状記憶合金ばね12が直接発熱するので、応答性が速いなどの利点がある。
本発明に係るサーモスタット弁は、ジュール熱が弁ケース内を流動する冷却水に奪われることがないので、特に、自動車のエンジン冷却回路に使用されるサーモスタット弁としては、頗る好都合なものとなる。
本発明に係るサーモスタット弁を第1弁座が閉塞され第2弁座が開放された状態をもって示す断面図である。 本発明に係るサーモスタット弁を第1弁座が開放され第2弁座が閉塞された状態をもって示す断面図である。
符号の説明
1 弁ケース
2 第1流入口
3 第2流入口
4 流出口
5 連通路
6 第1弁座
7 第2弁座
8 弁体
9 ガイド筒
10 第1弁
11 第2弁
12 形状記憶合金ばね
13 バイアスばね
14 電極
15 電極
16 コントローラ
17 導電線
18 シリコンゴムの皮膜

Claims (2)

  1. 弁ケースに、ラジエータからの冷却水を流入する第1流入口と、エンジンからの冷却水を流入する第2流入口と、冷却水をエンジン側に回帰させる流出口とを設けて、弁ケース内部に該各流入口と流出口を繋ぐ連通路を画成する一方、該連通路内に、上記第1流入口側の弁座を開閉する第1弁と第2流入口側の弁座を開閉する第2弁を有する弁体を移動可能に配すると共に、該弁体に通電加熱される形状記憶合金ばねとバイアスばねとを逆方向から装着して、第1弁で第1流入口側の弁座を閉塞した時には、第2弁で第2流入口側の弁座を開放し、第1弁で第1流入口側の弁座を開放した時には、第2弁で第2流入口側の弁座を閉塞するサーモスタット弁であって、上記形状記憶合金ばねのコイル状外周に断熱性・防水性及び弾性を有する皮膜をコーティングしたことを特徴とするサーモスタット弁。
  2. 弁ケースと弁体は合成樹脂製で、バイアスばねはステンレス製であることを特徴とする請求項1記載のサーモスタット弁。
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