以下、本発明に係る基礎補強構造の実施の形態について、添付図面を参照して説明する。なお、従来技術と実質的に同一の部品等については同一の符号を付してその説明を省略する。
(第1実施形態)
図1は、本実施形態に係る基礎補強構造を示した全体斜視図及び平面図である。同図でわかるように、本実施形態に係る基礎補強構造1は、無筋コンクリートからなる布基礎2の各側面のうち、直交方向からの取合いがない側面、本実施形態では屋外側側面3aに所望の水平長さ範囲で繊維シートであるアラミド繊維シート4aを接着してあるとともに、直交方向からの取合いがある側面、本実施形態では屋内側側面3b,3bに直交布基礎部5の両側にて繊維シートであるアラミド繊維シート4b,4bをそれぞれ接着し、該2つのアラミド繊維シート4b,4bを直交布基礎部5に形成された挿通孔6に貫通配置された繊維ロープ7を介して相互に接合してある。
アラミド繊維シート4a,アラミド繊維シート4b,4bは、布基礎2の立ち上がり部から天端まで接着してあり、図1(a)では、屋外の地盤面を施工時の掘下げ状態として一点鎖線で示し、屋内側の地盤面(土間コンクリート面)については省略してある。
なお、図示していないが、無筋コンクリートからなる布基礎2は、底版であるフーチングと一体のコンクリート構造として該フーチングに立設される場合と、フーチングはなく割栗石の上に直接設置されている場合とがある。
ここで、取合い箇所に位置する入隅部には、楔状をなすコーナー部8を形成してあり、上述した挿通孔6は、コーナー部8と直交布基礎部5との境界近傍に穿孔してある。
一方、繊維ロープ7は、アラミド繊維ストランドを中間部分で束ね、両端では扇状に拡がるように構成してあり、該扇状のストランドをアラミド繊維シート4b,4bにそれぞれ重ね貼りできるようになっている。
本実施形態に係る基礎補強構造1を施工するには、まず、屋外側の地盤を掘り下げて布基礎2の屋外側側面3aを露出させる。
次に、屋外側側面3aを清掃し、コンクリート表面の不陸調整などの下地処理を必要に応じて行った後、プライマー、下塗り用接着剤を順次塗布する。
次に、アラミド繊維シート4aを接着した後、再度、その上から上塗り用接着剤を塗布し、必要に応じて塗装等で仕上げを行う。
一方、屋内側、すなわち一階床下でも同様な作業を行う。すなわち、床下の地盤(土間コンクリート)を掘り下げて布基礎2の屋内側側面3bを露出させる。
次に、取合い箇所に位置する2つの入隅部に楔状をなすコーナー部8,8を例えば樹脂モルタルで形成するとともに、該コーナー部と直交布基礎部5との境界近傍に挿通孔6を穿孔する。
かかるコーナー部8,8の形成及び挿通孔6の穿孔作業と相前後して、布基礎2の屋内側側面3b,3bを清掃し、コンクリート表面の不陸調整などの下地処理を必要に応じて行った後、プライマー、下塗り用接着剤を順次塗布する。
次に、アラミド繊維シート4b,4bを布基礎2の屋内側側面3b,3bに接着した後、再度、その上から上塗り用接着剤を塗布する。
次に、繊維ロープ7を直交布基礎部5の挿通孔6に通した上、その両端を扇状に拡げ、拡げられた扇状のストランドをアラミド繊維シート4b,4bにそれぞれ重ね貼りする。
アラミド繊維シート4a,アラミド繊維シート4b,4b及び繊維ロープ7を施工した後は、掘り下げた地盤を埋め戻し、補強工事を完了する。なお、接着剤の種類やアラミド繊維シート4a、アラミド繊維シート4b,4bの詳細な接着方法については、公知の手段から適宜選択すればよい。
以上説明したように、本実施形態に係る基礎補強構造1によれば、無筋コンクリートの布基礎2に生じる引張応力をアラミド繊維シート4a及びアラミド繊維4a,4bが負担するため、布基礎2にひび割れ、特に面内曲げモーメントによって基礎天端又は立ち上がり部に曲げひび割れが入るのを未然に防止することができる。
図2(a)は、アラミド繊維シート4a,4bを施工しない場合、地耐力不足の地盤反力と柱からの鉛直荷重により、又は不同沈下による強制変形を受けることによって布基礎2に生じる面内曲げモーメントを示した曲げモーメント図、同図(b)は同図(a)の中央の柱近傍において布基礎2に生じる曲げひび割れの様子を示した側面図、同図(c)は同図(a)の両端の柱近傍において布基礎2に生じる曲げひび割れの様子を示した側面図である。
また、本実施形態に係る基礎補強構造1によれば、布基礎2の両側面にアラミド繊維シート4aとアラミド繊維4a,4bとをそれぞれ接着するため、引張力が釣り合って面外方向、すなわち屋外側か又は室内側のいずれかに撓んで側面にひび割れが生じるといった懸念もない。
図3は、布基礎2の屋外側側面3aだけにアラミド繊維シート4aを施工した場合、面外方向の撓みによって布基礎2に生じる曲げひび割れの様子を示した水平断面図である。
また、本実施形態に係る基礎補強構造1によれば、直交方向からの取合いがある布基礎2の屋内側側面3b,3bに直交布基礎部5の両側にてアラミド繊維シート4b,4bをそれぞれ接着し、該2つのアラミド繊維シート4b,4bを直交布基礎部5に形成された挿通孔6に貫通配置された繊維ロープ7を介して相互に接合するようにしたので、アラミド繊維シート4b,4bによる布基礎2の引張補強を、直交布基礎部5によって途切れることなく連続させることが可能となる。
また、本実施形態に係る基礎補強構造1によれば、取合い箇所に位置する入隅部に楔状をなすコーナー部8を形成し、該コーナー部と直交布基礎部5との境界近傍に挿通孔6を形成したので、繊維ロープ7をコーナー部8の表面に沿う形で安定配置することが可能となり、挿通孔6近傍での局部的裂傷や不安定な状態に起因する耐久性の劣化あるいは信頼性の低下を回避することができる。
本実施形態では、無筋コンクリートからなる布基礎2に適用する場合について説明したが、RC構造からなる布基礎についても同様に適用することができることはいうまでもない。
また、本実施形態では、布基礎のうち、T字状をなす箇所において本発明を適用する場合を説明したが、これに代えて十字状をなす箇所にも本発明を適用することができる。
すなわち、かかる状況においては、本実施形態とは異なり、直交布基礎部5と同様の直交布基礎部が反対側にも取り合っていることになるので、直交布基礎部5側と同様に反対側でもアラミド繊維シート4b,4bを接着して繊維ロープ7で相互に接合するようにすればよい。
本発明に係る基礎補強構造の作用効果を実証するため、曲げ加力試験を行った。
まず、長さ3,000mm、高さ400mm、幅約120mmの無筋コンクリートを試験体とし、かかる試験体を両端支持した状態で中央近傍に鉛直荷重を加える曲げ加力試験を行った結果、18kNで破壊した。
次に、同じ形状の無筋コンクリートの片面にアラミド繊維シートを全面に接着した試験体に対し同様に曲げ加力試験を行った結果、約25kNまで耐力が伸び、アラミド繊維シートを両面に接着した試験体(一方の面には全面接着し、他方の面には中央近傍のみ接着)では、62kNの耐荷重性を示した。
ちなみに、現行基準のRC基礎を想定した同形状の試験体では42kNで破壊しており、アラミド繊維シートを両面に接着することでRC基礎よりも曲げに強い構造になることができることが実証できた。
図4に上述した曲げ加力試験の結果を示す。
(第2実施形態)
次に、第2実施形態について説明する。なお、上述の実施形態と実質的に同一の部品等については同一の符号を付してその説明を省略する。
図5は、本実施形態に係る基礎補強構造を示した全体斜視図及び平面図である。同図でわかるように、本実施形態に係る基礎補強構造11は、布基礎2の各側面のうち、直交方向からの取合いがない屋外側側面3aに所望の水平長さ範囲でアラミド繊維シート4aを接着してあるとともに、直交方向からの取合いがある屋内側側面3b,3bに直交布基礎部5の両側にてアラミド繊維シート4b,4bをそれぞれ接着し、該2つのアラミド繊維シート4b,4bを二段配置した連結部材12,12を介して相互に接合してある。
連結部材12は、アラミド繊維シート4b,4bにそれぞれ接着される引寄せ部材13,13、引寄せボルト14及びナット17とからなり、引寄せボルト14を引寄せ部材13の台座15に形成されたボルト孔に差し込んで直交布基礎部5に形成された挿通孔16に挿通し、さらに直交布基礎部5の反対側にて引寄せ部材13の台座15に形成されたボルト孔に通した上、先端をナット17で締結することにより、アラミド繊維シート4b,4bを引張力が伝達できる状態で相互に接合することができるようになっている。
布基礎2やアラミド繊維シート4a及びアラミド繊維シート4b,4bの設置状況については第1実施形態と同様であるので、ここではその説明を省略する。
本実施形態に係る基礎補強構造11を施工するには、まず、屋外側の地盤を掘り下げて布基礎2の屋外側側面3aを露出させる。
次に、屋外側側面3aを清掃し、コンクリート表面の不陸調整などの下地処理を必要に応じて行った後、プライマー、下塗り用接着剤を順次塗布する。
次に、アラミド繊維シート4aを接着した後、再度、その上から上塗り用接着剤を塗布し、必要に応じて塗装等で仕上げを行う。
一方、屋内側、すなわち一階床下でも同様な作業を行う。すなわち、床下の地盤(土間コンクリート)を掘り下げて布基礎2の屋内側側面3bを露出させるとともに、直交布基礎部5に挿通孔16を穿孔する。
かかる挿通孔16の穿孔作業と相前後して、布基礎2の屋内側側面3b,3bを清掃し、コンクリート表面の不陸調整などの下地処理を必要に応じて行った後、プライマー、下塗り用接着剤を順次塗布する。
アラミド繊維シート4b,4bを布基礎2の屋内側側面3b,3bに接着した後、再度、その上から上塗り用接着剤を塗布する。
次に、連結部材12を構成する引寄せ部材13,13をアラミド繊維シート4b,4bにそれぞれ接着し、次いで、引寄せボルト14を引寄せ部材13の台座15に形成されたボルト孔に差し込んで直交布基礎部5に形成された挿通孔16に挿通し、さらに直交布基礎部5の反対側にて引寄せ部材13の台座15に形成されたボルト孔に通した上、先端をナット17で締結する。
このようにすれば、アラミド繊維シート4b,4bは、引張力が伝達できる状態で相互に接合されることとなる。
アラミド繊維シート4a,アラミド繊維シート4b,4bの接着及び相互の接合が終わった後は、掘り下げた地盤を埋め戻し、補強工事を完了する。なお、接着剤の種類やアラミド繊維シート4a、アラミド繊維シート4b,4bの詳細な接着方法については、公知の手段から適宜選択すればよい。
以上説明したように、本実施形態に係る基礎補強構造11によれば、無筋コンクリートの布基礎2に生じる引張応力をアラミド繊維シート4a及びアラミド繊維4b,4bが負担するため、布基礎2にひび割れ、特に面内曲げモーメントによって基礎天端又は立ち上がり部に曲げひび割れが入るのを未然に防止することができる。
また、本実施形態に係る基礎補強構造11によれば、布基礎2の両側面にアラミド繊維シート4aとアラミド繊維4b,4bとをそれぞれ接着するため、引張力が釣り合って面外方向、すなわち屋外側か又は室内側のいずれかに撓んで側面にひび割れが生じるといった懸念もない。
また、本実施形態に係る基礎補強構造11によれば、直交方向からの取合いがある布基礎2の屋内側側面3b,3bに直交布基礎部5の両側にてアラミド繊維シート4b,4bをそれぞれ接着し、該2つのアラミド繊維シート4b,4bを連結部材12を介して相互に接合するようにしたので、アラミド繊維シート4b,4bによる布基礎2の引張補強を、直交布基礎部5によって途切れることなく連続させることが可能となる。
本実施形態では、無筋コンクリートからなる布基礎2に適用する場合について説明したが、RC構造からなる布基礎についても同様に適用することができることはいうまでもない。
また、本実施形態では、布基礎のうち、T字状をなす箇所において本発明を適用する場合を説明したが、これに代えて十字状をなす箇所にも本発明を適用することができる。
すなわち、かかる状況においては、本実施形態とは異なり、直交布基礎部5と同様の直交布基礎部が反対側にも取り合っていることになるので、直交布基礎部5側の構成と同じになるように反対側でも構成すればよい。
(第3実施形態)
次に、第3実施形態について説明する。なお、上述の実施形態と実質的に同一の部品等については同一の符号を付してその説明を省略する。
図6は、本実施形態に係る基礎補強構造を示した全体斜視図及び平面図である。同図でわかるように、本実施形態に係る基礎補強構造21は、布基礎2の各側面のうち、直交方向からの取合いがない屋外側側面3aに所望の水平長さ範囲でアラミド繊維シート4aを接着してあるとともに、直交方向からの取合いがある屋内側側面3b,3bに直交布基礎部5の両側にてアラミド繊維シート4b,4bをそれぞれ接着してある。
ここで、2つのアラミド繊維シート4b,4bは、取合い箇所に位置する2つの入隅部22,22でそれぞれ先端部を折り曲げ、その先端部を直交布基礎部5の両側面23,23にそれぞれ接着してあるとともに、折り曲げた先端部にL型断面をなす押さえ部材24,24を重ねて当接した上、該一対の押さえ部材を、直交布基礎部5に形成された挿通孔27に挿通されたボルト25とそれに螺合されるナット26によって相互にボルト締結してある。
したがって、2つのアラミド繊維シート4b,4bは、ボルト25及びナット26によって引張力が伝達可能な状態で相互に接合されることとなる。なお、押さえ部材24,24のうち、屋内側側面3b,3bにはコンクリートアンカー29を用いて布基礎2に定着させておく。
布基礎2やアラミド繊維シート4a及びアラミド繊維シート4b,4bの設置状況については第1実施形態、第2実施形態と同様であるので、ここではその説明を省略する。
本実施形態に係る基礎補強構造21を施工するには、まず、屋外側の地盤を掘り下げて布基礎2の屋外側側面3aを露出させる。
次に、屋外側側面3aを清掃し、コンクリート表面の不陸調整などの下地処理を必要に応じて行った後、プライマー、下塗り用接着剤を順次塗布する。
次に、アラミド繊維シート4aを接着した後、再度、その上から上塗り用接着剤を塗布し、必要に応じて塗装等で仕上げを行う。
一方、屋内側、すなわち一階床下でも同様な作業を行う。すなわち、床下の地盤(土間コンクリート)を掘り下げて布基礎2の屋内側側面3bを露出させる。
次に、布基礎2の屋内側側面3b,3bを清掃し、コンクリート表面の不陸調整などの下地処理を必要に応じて行った後、プライマー、下塗り用接着剤を順次塗布する。
アラミド繊維シート4b,4bを布基礎2の屋内側側面3b,3bに接着した後、再度、その上から上塗り用接着剤を塗布する。
ここで、2つのアラミド繊維シート4b,4bについては、取合い箇所に位置する2つの入隅部22,22でそれぞれ折り曲げ、折り曲げられた先端部を直交布基礎部5の両側面23,23にそれぞれ接着する。
次に、入隅部22,22のアラミド繊維シート4b,4bにL型断面をなす押さえ部材24,24をあてがって当接し、かかる状態で押さえ部材24に形成されたボルト孔28及び直交布基礎部5に形成された挿通孔27にボルト25を順次挿通し、次いで、該直交布基礎部の反対側に取り付けられている押さえ部材24のボルト孔28に通して、その先端にナット26を螺合して締結する。
一方、屋内側側面3b,3bについては、コンクリートアンカー29を用いて押さえ部材24,24を布基礎2に定着させておく。
このようにすれば、アラミド繊維シート4b,4bは、引張力が伝達できる状態で相互に接合されることとなる。
アラミド繊維シート4a,アラミド繊維シート4b,4bの接着及び相互の接合が終わった後は、掘り下げた地盤を埋め戻し、補強工事を完了する。なお、接着剤の種類やアラミド繊維シート4a、アラミド繊維シート4b,4bの詳細な接着方法については、公知の手段から適宜選択すればよい。
以上説明したように、本実施形態に係る基礎補強構造21によれば、無筋コンクリートの布基礎2に生じる引張応力をアラミド繊維シート4a及びアラミド繊維4b,4bが負担するため、布基礎2にひび割れ、特に面内曲げモーメントによって基礎天端又は立ち上がり部に曲げひび割れが入るのを未然に防止することができる。
また、本実施形態に係る基礎補強構造21によれば、布基礎2の両側面にアラミド繊維シート4aとアラミド繊維4b,4bとをそれぞれ接着するため、引張力が釣り合って面外方向、すなわち屋外側か又は室内側のいずれかに撓んで側面にひび割れが生じるといった懸念もない。
また、本実施形態に係る基礎補強構造21によれば、L型断面をなす押さえ部材24,24を入隅部22,22においてアラミド繊維シート4b,4bの上から重ねた上、直交布基礎部5に形成された挿通孔27に通されたボルト25で互いに連結するようにしたので、アラミド繊維シート4b,4bによる布基礎2の引張補強を、直交布基礎部5によって途切れることなく連続させることが可能となる。
本実施形態では、無筋コンクリートからなる布基礎2に適用する場合について説明したが、RC構造からなる布基礎についても同様に適用することができることはいうまでもない。
また、本実施形態では、布基礎のうち、T字状をなす箇所において本発明を適用する場合を説明したが、これに代えて十字状をなす箇所にも本発明を適用することができる。
すなわち、かかる状況においては、本実施形態とは異なり、直交布基礎部5と同様の直交布基礎部が反対側にも取り合っていることになるので、直交布基礎部5側の構成と同じになるように反対側でも構成すればよい。
(第4実施形態)
次に、第4実施形態について説明する。なお、上述の実施形態と実質的に同一の部品等については同一の符号を付してその説明を省略する。
図7は、本実施形態に係る基礎補強構造を示した全体斜視図及び平面図である。同図でわかるように、本実施形態に係る基礎補強構造31は、布基礎2の各側面のうち、直交方向からの取合いがない側面、本実施形態では布基礎2の屋外側側面3aに立ち上がり部近傍と天端近傍の上下二段となるようにアラミド繊維シート31a,31aを接着してあるとともに、直交方向からの取合いがある屋内側側面3b,3bに直交布基礎部5の両側にてアラミド繊維シート34b,34bをそれぞれ接着し、該2つのアラミド繊維シート34b,34bを直交布基礎部5に形成された挿通孔6に貫通配置された繊維ロープ7を介して相互に接合してある。なお、図7(a)では、屋外の地盤面を施工時の掘下げ状態として一点鎖線で示してある。
アラミド繊維シート34b,34bは、アラミド繊維シート31a,31aの中間高さであってかつ地盤面以上の高さが接着位置となるように接着してあり、アラミド繊維シート31a,31aの中間高さは、例えばそれらの幅の中心間の範囲とし、その範囲内でアラミド繊維シート34b,34bの幅中心がくるようにそれらの接着位置を決定するようにすればよい。
なお、本実施形態では、屋内側の地盤を掘り下げないため、アラミド繊維シート34b,34bの下縁が地盤面以上となるようにする。
ここで、取合い箇所に位置する入隅部には、楔状をなすコーナー部8を形成してあり、上述した挿通孔6は、コーナー部8と直交布基礎部5との境界近傍に穿孔してある。
一方、繊維ロープ7は、アラミド繊維ストランドを中間部分で束ね、両端では扇状に拡がるように構成してあり、該扇状のストランドをアラミド繊維シート34b,34bにそれぞれ重ね貼りできるようになっている。
本実施形態に係る基礎補強構造31を施工するには、まず、屋外側の地盤を掘り下げて布基礎2の屋外側側面3aを露出させる。
次に、屋外側側面3aを清掃し、コンクリート表面の不陸調整などの下地処理を必要に応じて行った後、プライマー、下塗り用接着剤を順次塗布する。
次に、アラミド繊維シート31a,31aを接着した後、再度、その上から上塗り用接着剤を塗布し、必要に応じて塗装等で仕上げを行う。
一方、屋内側においては、まず、取合い箇所に位置する2つの入隅部に楔状をなすコーナー部8,8を例えば樹脂モルタルで形成するとともに、該コーナー部と直交布基礎部5との境界近傍に挿通孔6を穿孔する。
かかるコーナー部8,8の形成及び挿通孔6の穿孔作業と相前後して、布基礎2の屋内側側面3b,3bを清掃し、コンクリート表面の不陸調整などの下地処理を必要に応じて行った後、プライマー、下塗り用接着剤を順次塗布する。
次に、アラミド繊維シート34b,34bを布基礎2の屋内側側面3b,3bに接着した後、再度、その上から上塗り用接着剤を塗布する。
次に、繊維ロープ7を直交布基礎部5の挿通孔6に通した上、その両端を扇状に拡げ、拡げられた扇状のストランドをアラミド繊維シート34b,34bにそれぞれ重ね貼りする。
次に、掘り下げた屋外側の地盤を埋め戻し、補強工事を完了する。なお、接着剤の種類やアラミド繊維シート4a、アラミド繊維シート4b,4bの詳細な接着方法については、公知の手段から適宜選択すればよい。
以上説明したように、本実施形態に係る基礎補強構造31によれば、無筋コンクリートの布基礎2に生じる引張応力をアラミド繊維シート31a,31a及びアラミド繊維シート34b,34bが負担するため、布基礎2にひび割れ、特に面内曲げモーメントによって基礎天端又は立ち上がり部に曲げひび割れが入るのを未然に防止することができる。
また、本実施形態に係る基礎補強構造31によれば、布基礎2の両側面にアラミド繊維シート31a,31aとアラミド繊維シート34b,34bとをそれぞれ接着するため、引張力が釣り合って面外方向、すなわち屋外側か又は室内側のいずれかに撓んで側面にひび割れが生じるといった懸念もない。
また、本実施形態に係る基礎補強構造31によれば、直交方向からの取合いがある布基礎2の側面に直交布基礎部5の両側にてアラミド繊維シート34b,34bをそれぞれ接着し、該2つのアラミド繊維シート34b,34bを直交布基礎部5に形成された挿通孔6に貫通配置された繊維ロープ7を介して相互に接合するようにしたので、アラミド繊維シート34b,34bによる布基礎2の引張補強を、直交布基礎部5によって途切れることなく連続させることが可能となる。
また、本実施形態に係る基礎補強構造31によれば、取合い箇所に位置する入隅部に楔状をなすコーナー部8を形成し、該コーナー部と直交布基礎部5との境界近傍に挿通孔6を形成したので、繊維ロープ7をコーナー部8の表面に沿う形で安定配置することが可能となり、挿通孔6近傍での局部的裂傷や不安定な状態に起因する耐久性の劣化あるいは信頼性の低下を回避することができる。
本実施形態では、無筋コンクリートからなる布基礎2に適用する場合について説明したが、RC構造からなる布基礎についても同様に適用することができることはいうまでもない。
また、本実施形態では、布基礎のうち、T字状をなす箇所において本発明を適用する場合を説明したが、これに代えて十字状をなす箇所にも本発明を適用することができる。
すなわち、かかる状況においては、本実施形態とは異なり、直交布基礎部5と同様の直交布基礎部が反対側にも取り合っていることになるので、直交布基礎部5側の構成と同じになるように反対側でも構成すればよい。
(第5実施形態)
次に、第5実施形態について説明する。なお、上述の実施形態と実質的に同一の部品等については同一の符号を付してその説明を省略する。
図8は、本実施形態に係る基礎補強構造を示した全体斜視図及び平面図である。同図でわかるように、本実施形態に係る基礎補強構造41は、布基礎2の各側面のうち、直交方向からの取合いがない側面、本実施形態では布基礎2の屋外側側面3aに立ち上がり部近傍と天端近傍の上下二段となるようにアラミド繊維シート31a,31aを接着してあるとともに、直交方向からの取合いがある屋内側側面3b,3bに直交布基礎部5の両側にてアラミド繊維シート34b,34bをそれぞれ接着し、該2つのアラミド繊維シート34b,34bを連結部材12を介して相互に接合してある。
連結部材12は、アラミド繊維シート34b,34bにそれぞれ接着される引寄せ部材13,13、引寄せボルト14及びナット17とからなり、引寄せボルト14を引寄せ部材13の台座15に形成されたボルト孔に差し込んで直交布基礎部5に形成された挿通孔16に挿通し、さらに直交布基礎部5の反対側にて引寄せ部材13の台座15に形成されたボルト孔に通した上、先端をナット17で締結することにより、アラミド繊維シート34b,34bを引張力が伝達できる状態で相互に接合することができるようになっている。
布基礎2やアラミド繊維シート31a,31a及びアラミド繊維シート34b,34bの設置状況については第4実施形態と同様であるので、ここではその説明を省略する。
本実施形態に係る基礎補強構造41を施工するには、まず、屋外側の地盤を掘り下げて布基礎2の屋外側側面3aを露出させる。
次に、屋外側側面3aを清掃し、コンクリート表面の不陸調整などの下地処理を必要に応じて行った後、プライマー、下塗り用接着剤を順次塗布する。
次に、アラミド繊維シート31a,31aを接着した後、再度、その上から上塗り用接着剤を塗布し、必要に応じて塗装等で仕上げを行う。
一方、屋内側においては、まず、直交布基礎部5に挿通孔16を穿孔するとともに、かかる挿通孔16の穿孔作業と相前後して、布基礎2の屋内側側面3b,3bを清掃し、コンクリート表面の不陸調整などの下地処理を必要に応じて行った後、プライマー、下塗り用接着剤を順次塗布する。
次に、アラミド繊維シート34b,34bを布基礎2の屋内側側面3b,3bに接着した後、再度、その上から上塗り用接着剤を塗布する。
次に、連結部材12を構成する引寄せ部材13,13をアラミド繊維シート34b,34bにそれぞれ接着し、次いで、引寄せボルト14を引寄せ部材13の台座15に形成されたボルト孔に差し込んで直交布基礎部5に形成された挿通孔16に挿通し、さらに直交布基礎部5の反対側にて引寄せ部材13の台座15に形成されたボルト孔に通した上、先端をナット17で締結する。
このようにすれば、アラミド繊維シート34b,34bは、引張力が伝達できる状態で相互に接合されることとなる。
アラミド繊維シート31a,31aの接着と、アラミド繊維シート34b,34bの接着及び相互の接合が終わった後は、屋外側で掘り下げた地盤を埋め戻し、補強工事を完了する。なお、接着剤の種類やアラミド繊維シート31a,31aあるいはアラミド繊維シート34b,34bの詳細な接着方法については、公知の手段から適宜選択すればよい。
以上説明したように、本実施形態に係る基礎補強構造41によれば、無筋コンクリートの布基礎2に生じる引張応力をアラミド繊維シート31a,31a及びアラミド繊維シート34b,34bが負担するため、布基礎2にひび割れ、特に面内曲げモーメントによって基礎天端又は立ち上がり部に曲げひび割れが入るのを未然に防止することができる。
また、本実施形態に係る基礎補強構造41によれば、布基礎2の両側面にアラミド繊維シート31a,31aとアラミド繊維シート34b,34bとをそれぞれ接着するため、引張力が釣り合って面外方向、すなわち屋外側か又は室内側のいずれかに撓んで側面にひび割れが生じるといった懸念もない。
また、本実施形態に係る基礎補強構造41によれば、直交方向からの取合いがある布基礎2の側面に直交布基礎部5の両側にてアラミド繊維シート34b,34bをそれぞれ接着し、該2つのアラミド繊維シート34b,34bを連結部材12を介して相互に接合するようにしたので、アラミド繊維シート34b,34bによる布基礎2の引張補強を、直交布基礎部5によって途切れることなく連続させることが可能となる。
本実施形態では、無筋コンクリートからなる布基礎2に適用する場合について説明したが、RC構造からなる布基礎についても同様に適用することができることはいうまでもない。
また、本実施形態では、布基礎のうち、T字状をなす箇所において本発明を適用する場合を説明したが、これに代えて十字状をなす箇所にも本発明を適用することができる。
すなわち、かかる状況においては、本実施形態とは異なり、直交布基礎部5と同様の直交布基礎部が反対側にも取り合っていることになるので、直交布基礎部5側の構成と同じになるように反対側でも構成すればよい。
(第6実施形態)
次に、第6実施形態について説明する。なお、上述の実施形態と実質的に同一の部品等については同一の符号を付してその説明を省略する。
図9は、本実施形態に係る基礎補強構造を示した全体斜視図及び平面図である。同図でわかるように、本実施形態に係る基礎補強構造51は、布基礎2の各側面のうち、直交方向からの取合いがない側面、本実施形態では布基礎2の屋外側側面3aに立ち上がり部近傍と天端近傍の上下二段となるようにアラミド繊維シート31a,31aを接着してあるとともに、直交方向からの取合いがある屋内側側面3b,3bに直交布基礎部5の両側にてアラミド繊維シート34b,34bをそれぞれ接着してある。
ここで、アラミド繊維シート34b,34bは、取合い箇所に位置する2つの入隅部22,22でそれぞれ先端部を折り曲げ、その先端部を直交布基礎部5の両側面23,23にそれぞれ接着してあるとともに、折り曲げた先端部にL型断面をなす押さえ部材24,24を重ねて当接した上、該一対の押さえ部材を、直交布基礎部5に形成された挿通孔27に挿通されたボルト25とそれに螺合されるナット26によって相互にボルト締結してある。
したがって、2つのアラミド繊維シート34b,34bは、ボルト25及びナット26によって引張力が伝達可能な状態で相互に接合されることとなる。なお、押さえ部材24,24のうち、屋内側側面3b,3bにはコンクリートアンカー29を用いて布基礎2に定着させておく。
布基礎2やアラミド繊維シート31a,31a及びアラミド繊維シート34b,34bの設置状況については上述した実施形態と同様であるので、ここではその説明を省略する。
本実施形態に係る基礎補強構造51を施工するには、まず、屋外側の地盤を掘り下げて布基礎2の屋外側側面3aを露出させる。
次に、屋外側側面3aを清掃し、コンクリート表面の不陸調整などの下地処理を必要に応じて行った後、プライマー、下塗り用接着剤を順次塗布する。
次に、アラミド繊維シート31a,31aを接着した後、再度、その上から上塗り用接着剤を塗布し、必要に応じて塗装等で仕上げを行う。
一方、屋内側においては、まず、直交布基礎部5に挿通孔27を穿孔するとともに、かかる挿通孔27の穿孔作業と相前後して、布基礎2の屋内側側面3b,3b及び直交布基礎部5の両側面23,23を清掃し、コンクリート表面の不陸調整などの下地処理を必要に応じて行った後、プライマー、下塗り用接着剤を順次塗布する。
次に、アラミド繊維シート34b,34bを布基礎2の屋内側側面3b,3bに接着した後、再度、その上から上塗り用接着剤を塗布する。
ここで、2つのアラミド繊維シート34b,34bについては、取合い箇所に位置する2つの入隅部22,22でそれぞれ折り曲げ、折り曲げられた先端部を直交布基礎部5の両側面23,23にそれぞれ接着する。
次に、入隅部22,22のアラミド繊維シート34b,34bにL型断面をなす押さえ部材24,24をあてがって当接し、かかる状態で押さえ部材24に形成されたボルト孔28及び直交布基礎部5に形成された挿通孔27にボルト25を順次挿通し、次いで、該直交布基礎部の反対側に取り付けられている押さえ部材24のボルト孔28に通して、その先端にナット26を螺合して締結する。
一方、屋内側側面3b,3bについては、コンクリートアンカー29を用いて押さえ部材24,24を布基礎2に定着させておく。
このようにすれば、アラミド繊維シート34b,34bは、引張力が伝達できる状態で相互に接合されることとなる。
アラミド繊維シート31a,31aの接着と、アラミド繊維シート34b,34bの接着及び相互の接合が終わった後は、屋外側で掘り下げた地盤を埋め戻し、補強工事を完了する。なお、接着剤の種類やアラミド繊維シート31a,31aあるいはアラミド繊維シート34b,34bの詳細な接着方法については、公知の手段から適宜選択すればよい。
以上説明したように、本実施形態に係る基礎補強構造51によれば、無筋コンクリートの布基礎2に生じる引張応力をアラミド繊維シート31a,31a及びアラミド繊維シート34b,34bが負担するため、布基礎2にひび割れ、特に面内曲げモーメントによって基礎天端又は立ち上がり部に曲げひび割れが入るのを未然に防止することができる。
また、本実施形態に係る基礎補強構造51によれば、布基礎2の両側面にアラミド繊維シート31a,31aとアラミド繊維シート34b,34bとをそれぞれ接着するため、引張力が釣り合って面外方向、すなわち屋外側か又は室内側のいずれかに撓んで側面にひび割れが生じるといった懸念もない。
また、本実施形態に係る基礎補強構造51によれば、L型断面をなす押さえ部材24,24を入隅部22,22においてアラミド繊維シート4b,4bの上から重ねた上、直交布基礎部5に形成された挿通孔27に通されたボルト25で互いに連結するようにしたので、アラミド繊維シート34b,34bによる布基礎2の引張補強を、直交布基礎部5によって途切れることなく連続させることが可能となる。
本実施形態では、無筋コンクリートからなる布基礎2に適用する場合について説明したが、RC構造からなる布基礎についても同様に適用することができることはいうまでもない。
また、本実施形態では、布基礎のうち、T字状をなす箇所において本発明を適用する場合を説明したが、これに代えて十字状をなす箇所にも本発明を適用することができる。
すなわち、かかる状況においては、本実施形態とは異なり、直交布基礎部5と同様の直交布基礎部が反対側にも取り合っていることになるので、直交布基礎部5側の構成と同じになるように反対側でも構成すればよい。