JP2006132049A - カップおよびカップ付き女性用衣類 - Google Patents

Abstract

【課題】硬くてボリュームの移動が困難な乳房に対し、快適な着心地を維持しつつ、乳房下部から乳房上部への乳房のボリューム移動が確実に行えるカップおよびカップ付き女性用衣類を提供すること。
【解決手段】着用状態で、乳房トップ近傍から乳房下部に続く帯状領域を覆う第１カップ部１２ａと、第１カップ部１２ａの前中心側に位置する第２カップ部１２ｂと、第１カップ部１２ａの脇側に位置する第３カップ部１２ｃと、を備え、着用状態で、乳房に対する押圧作用が、第２カップ部１２ｂおよび第３カップ部１２ｃよりも第１カップ部１２ａの方が大きく、かつ、第１カップ部１２ａのうち、乳房トップを覆う上側領域１３ｂの方が乳房下部を覆う下側領域１３ａよりも大きい。
【選択図】図２

Description

本発明は、カップおよびカップ付き女性用衣類に関する。

特許文献１，２には、カップ肌側における脇側下部の厚みを厚くし、この厚みによって、乳房下部のうち乳房トップ（乳房の乳頭）の直下より脇側に位置する下部領域（以下、単に、乳房の脇側下部、という）を押圧して乳房下部のボリュームを寄せ上げるようにして移動させ、乳房のボリューム感をアップさせるように乳房形状を整える機能を有するものが開示されている。
特開平９−７８３１１号公報 特開平９−１３２８０１号公報

しかし、皮膚が硬くハリがあって肉質も硬く、さらに左右が互いに離隔している乳房に対し、乳房形状を整形して、乳房上部の前中心側に位置する左右乳房間（以下、単に、左右乳房間、という）に対し深くて大きいハッキリとしたボリューム感のある谷間を形成しようとした場合、上記従来型のカップのように、単に乳房の脇側下部を押圧しただけの寄せ上げでは、左右乳房間へのボリュームの移動が乏しく、左右乳房間に豊かなボリューム感を有する深くて大きな谷間が形成されるまでには至らない場合が多い。

一方、上記従来型のカップを用いて、乳房の脇側下部に対する押圧をさらに強め、これにより、左右乳房間へのボリューム移動を大きくすることも考えられるが、このような場合、乳房の脇側下部に対する強い押圧によって装着感が低下することとなる。

本発明の課題は、硬くてボリュームの移動が困難な乳房に対し、快適な着心地を維持しつつ、乳房下部から乳房上部への乳房のボリューム移動が確実に行えるカップおよびカップ付き女性用衣類を提供することである。

本発明のカップは、乳房を覆うためのカップであって、着用状態で、乳房トップ近傍から乳房下部に続く帯状領域を覆う第１カップ部と、上記第１カップ部の前中心側に位置する第２カップ部と、上記第１カップ部の脇側に位置する第３カップ部と、を備え、着用状態で、乳房に対する押圧作用は、上記第１カップ部の方が上記第２カップ部および前記第３カップ部よりも大きく、かつ、上記第１カップ部のうち、乳房トップを覆うトップ側部分の方が乳房下部を覆う下側部分よりも大きい、ことを特徴とする。

ここで、「押圧」とは、乳房を覆うカップ肌側の表面が乳房表面を押し当てる（圧迫する）ことを意味し、「押圧作用」とは、この「押圧」の際に、カップ肌側の表面が乳房表面に対して加える作用を意味する。そして、この「押圧作用」の大小は、乳房表面に「押圧作用」を加えるカップ肌側の表面（所定領域の表面）の表面積の値に対して、カップの肌側が乳房に対して加える圧力（単位表面積当たりの力）の値を乗じて得られる値によって判定される。なお、この「押圧」および「押圧作用」の意味内容は以下の説明において同様である。

本発明によれば、着用状態で、第２カップ部と第３カップ部とが上記帯状領域の両脇を押圧して押さえつつ、第１カップ部の下側部分が、この第２カップ部と第３カップ部とが乳房に加える押圧作用よりも大きな押圧作用で、上記帯状領域の乳房下部を押圧する。これにより、第１カップ部の下側部分による押圧により押し出される乳房のボリュームは、第２カップ部および第３カップ部の側（上記帯状領域の両脇）にほとんど分散することなく、乳房下部から乳房トップ側にまとまって移動することとなる。そして、第１カップ部のトップ側部分が、第１カップ部の下側部分よりも大きな押圧作用で乳房トップ近傍を押圧するとともに、第２カップ部および第３カップ部が上述のようにして上記帯状領域の両脇を押圧して押さえ付ける。これにより、第１カップ部の下側部分による押圧によって乳房下部から乳房トップ近傍に移動した乳房ボリュームは、第１カップ部のトップ側部分によるさらに大きな押圧によって、第２カップ部および第３カップ部の側（上記帯状領域の両脇）にほとんど分散することなく、上記帯状領域が延びる向きに沿って乳房トップの上側に向けてさらに繰り出されることとなる。このような乳房下部と乳房トップ近傍とに対する二段階の押圧作用により、硬くてボリュームの移動が困難な乳房に対しても、乳房下部から乳房トップ側へのボリューム移動が確実に行えることとなる。さらに、上述のように二段階にわたって乳房を押圧するため、一段階のみの押圧だけで乳房形状を整形するような従来型カップの場合に比べて押圧作用が分散化されるので、押圧作用により引き起こされる不快感（例えば圧迫感）が軽減化されて快適な装着感が実現できる。

さらに、本発明では、上記第１カップ部、上記第２カップ部および上記第３カップ部の上側に位置するとともに、着用状態で、これらカップ部が覆う乳房表面の上側に位置する領域を覆う第４カップ部をさらに備え、乳房に対する押圧作用は、上記第２カップ部および上記第３カップ部の方が上記第４カップ部よりも大きいと良い。したがって、上記第２カップ部および上記第３カップ部の方が上記第４カップ部よりも押圧作用が大きいため、第１カップ部だけでなく、第２および第３カップ部による押圧によっても、乳房ボリュームが第４カップの側に移動することとなる。そして、この移動された乳房ボリュームが、第４カップ部によって、第１、第２および第３カップ部が覆う各乳房領域の上側にある乳房上部のより広い範囲にわたってさらに移動することとなる。このため、乳房上部のより広い範囲で豊かなボリューム感を持たせることが可能となる。特に、第１カップ部が覆う領域が乳房トップの直下より脇側に位置するようなカップの場合には、左右乳房間において長く延びる大きな谷間が確実に形成可能となる。

本発明のカップは、乳房を覆うためのカップであって、着用状態で、乳房トップ近傍から乳房下部に続く帯状領域を覆う第１カップ部と、上記第１カップ部の前中心側に位置する第２カップ部と、上記第１カップ部の脇側に位置する第３カップ部と、を備え、上記第１カップ部の方が上記第２カップ部および上記第３カップ部よりも肌側に厚く、かつ、上記第１カップ部のうち、乳房トップを覆うトップ側部分の方が乳房下部を覆う下側部分よりも肌側に厚い、ことを特徴とする。

本発明によれば、肌側の厚みの違いを利用して、乳房下部と乳房トップ近傍とを二段階にわたって押圧することにより、硬くてボリュームの移動が困難な乳房に対しても、乳房下部から乳房トップ側へのボリューム移動が確実に行えることとなる。そして、乳房ボリュームを一段階だけ押圧して乳房形状を整形するような従来型カップの場合に比べて乳房に対する圧迫感が二段階に分散化されるので、不快感が軽減されて快適な装着感が実現できる。

本発明のカップは、乳房を覆うためのカップであって、着用状態で、乳房トップ近傍から乳房下部に続く帯状領域を覆う第１カップ部と、上記第１カップ部の前中心側に位置する第２カップ部と、上記第１カップ部の脇側に位置する第３カップ部と、を備え、上記第１カップ部の方が上記第２カップ部および上記第３カップ部よりも肌側に厚く、かつ、上記第１カップ部のうち、乳房トップを覆うトップ側部分の方が乳房下部を覆う下側部分よりも大きな表面積を有している、ことを特徴とする。

本発明によれば、乳房を覆う表面積の違いを利用して、乳房下部と乳房トップ近傍とを二段階にわたって押圧することにより、硬くてボリュームの移動が困難な乳房に対しても、乳房下部から乳房トップ側へのボリューム移動が確実に行えることとなる。そして、乳房ボリュームを一段階だけ押圧して乳房形状を整形するような従来型カップの場合に比べて乳房に対する圧迫感が二段階に分散化されるので、不快感が軽減されて快適な装着感が実現できる。

さらに、本発明では、上記第１カップ部、上記第２カップ部および上記第３カップ部の上側に位置する第４カップ部をさらに備え、上記第２カップ部および上記第３カップ部の方が上記第４カップ部よりも肌側に厚いのが好ましい。したがって、上記第２カップ部および上記第３カップ部の方が上記第４カップ部よりも肌側に厚いため、第１カップ部だけでなく、第２および第３カップ部による押圧によっても、乳房ボリュームが第４カップの側に移動することとなる。そして、この移動された乳房ボリュームが、第４カップ部によって、第１、第２および第３カップ部が覆う各乳房領域の上側にある乳房上部のより広い範囲にわたってさらに移動することとなる。このため、乳房上部のより広い範囲で豊かなボリューム感を持たせることが可能となる。特に、第１カップ部が覆う領域が乳房トップの直下より脇側に位置するようなカップの場合には、左右乳房間において長く延びる大きな谷間が確実に形成可能となる。

本発明のカップは、乳房を覆うためのカップであって、着用状態で、乳房トップ近傍から乳房下部に続く帯状領域を覆う第１カップ部と、上記第１カップ部の前中心側に位置する第２カップ部と、上記第１カップ部の脇側に位置する第３カップ部と、を備え、上記第１カップ部の方が、上記第２カップ部および上記第３カップ部よりも肌側の構成素材が大きく圧縮されており、かつ、上記第１カップ部のうち、乳房トップを覆うトップ側部分の方が、乳房下部を覆う下側部分よりも肌側の構成素材が大きく圧縮されている、ことを特徴とする。

本発明によれば、肌側の構成素材の圧縮の程度の違いを利用して、乳房下部と乳房トップ近傍とを二段階にわたって押圧することにより、硬くてボリュームの移動が困難な乳房に対しても、乳房下部から乳房トップ側へのボリューム移動が確実に行えることとなる。そして、乳房ボリュームを一段階だけ押圧して乳房形状を整形するような従来型カップの場合に比べて乳房に対する圧迫感が二段階に分散化されるので、不快感が軽減されて快適な装着感が実現できる。

本発明のカップは、乳房を覆うためのカップであって、着用状態で、乳房トップ近傍から乳房下部に続く帯状領域を覆う第１カップ部と、上記第１カップ部の前中心側に位置する第２カップ部と、上記第１カップ部の脇側に位置する第３カップ部と、を備え、上記第１カップ部の方が、上記第２カップ部および上記第３カップ部よりも肌側の構成素材が大きく圧縮されており、かつ、上記第１カップ部のうち、乳房トップを覆うトップ側部分の方が、乳房下部を覆う下側部分よりも大きな表面積を有している、ことを特徴とする。

本発明によれば、乳房を覆う表面積の違いを利用して乳房下部と乳房トップ近傍とを二段階にわたって押圧することにより、硬くてボリュームの移動が困難な乳房に対しても、乳房下部から乳房トップ側へのボリューム移動が確実に行えることとなる。そして、乳房ボリュームを一段階だけ押圧して乳房形状を整形するような従来型カップの場合に比べて乳房に対する圧迫感が二段階に分散化されるので、不快感が軽減されて快適な装着感が実現できる。

さらに、本発明では、上記第１カップ部、上記第２カップ部および上記第３カップ部の上側に位置するとともに、着用状態で、これらカップ部が覆う乳房表面の上側に位置する領域を覆う第４カップ部をさらに備え、上記第２カップ部および上記第３カップ部の方が、上記第４カップ部よりも肌側の構成素材が大きく圧縮されていると良い。したがって、上記第２カップ部および上記第３カップ部の方が上記第４カップ部よりも肌側の構成素材が大きく圧縮されているため、第１カップ部だけでなく、第２および第３カップ部による押圧によっても、乳房ボリュームが第４カップの側に移動することとなる。そして、この移動された乳房ボリュームが、第４カップ部によって、第１、第２および第３カップ部が覆う各乳房領域の上側にある乳房上部のより広い範囲にわたってさらに移動することとなる。このため、乳房上部のより広い範囲で豊かなボリューム感を持たせることが可能となる。特に、第１カップ部が覆う領域が乳房トップの直下より脇側に位置するようなカップの場合には、左右乳房間において長く延びる大きな谷間が確実に形成可能となる。

本発明のカップは、乳房を覆うためのカップであって、着用状態で、乳房トップ近傍から乳房下部に続く帯状領域を覆う第１カップ部と、上記第１カップ部の前中心側に位置する第２カップ部と、上記第１カップ部の脇側に位置する第３カップ部と、を備え、上記第１カップ部は、この第１カップ部と上記第２カップ部とに相当する広がりの前中心寄りパーツと、上記第１カップ部と上記第３カップ部とに相当する広がりの脇寄りパーツとを重ね合わせて形成され、上記第１カップ部の乳房トップを覆うトップ側部分の方が乳房下部を覆う下側部分よりも幅が広い、ことを特徴とする。

本発明によれば、乳房を覆う表面積の違いを利用して乳房下部と乳房トップ近傍とを二段階にわたって押圧することにより、硬くてボリュームの移動が困難な乳房に対しても、乳房下部から乳房トップ側へのボリューム移動が確実に行えることとなる。そして、乳房ボリュームを一段階だけ押圧して乳房形状を整形するような従来型カップの場合に比べて乳房に対する圧迫感が二段階に分散化されるので、不快感が軽減されて快適な装着感が実現できる。さらに、本発明のカップは、第１カップ部と第２カップ部とに相当する広がりの前中心寄りパーツと、第１カップ部と第３カップ部とに相当する広がりの脇寄りパーツとが互いに重ね合わされて形成され、前中心寄りパーツと脇寄りパーツとが重なった部分が第１カップ部となる。このため、前中心寄りパーツと脇寄りパーツとを重ね合わせるだけでカップが形成可能となるため、カップの製造が容易となる。

本発明のカップは、乳房を覆うためのカップであって、着用状態で、乳房トップ近傍から乳房下部に続く帯状領域を覆う第１カップ部と、上記第１カップ部の前中心側に位置する第２カップ部と、上記第１カップ部の脇側に位置する第３カップ部と、を備え、上記第１カップ部は、この第１カップ部に相当する広がりのパーツを、上記第１カップ部、上記第２カップ部および上記第３カップ部に相当する広がりのパーツの肌側に重ね合わせて形成され、上記第１カップ部の乳房トップを覆うトップ側部分の方が乳房下部を覆う下側部分よりも幅が広い、ことを特徴とする。

本発明によれば、乳房を覆う表面積の違いを利用して乳房下部と乳房トップ近傍とを二段階にわたって押圧することにより、硬くてボリュームの移動が困難な乳房に対しても、乳房下部から乳房トップ側へのボリューム移動が確実に行えることとなる。そして、乳房ボリュームを一段階だけ押圧して乳房形状を整形するような従来型カップの場合に比べて乳房に対する圧迫感が二段階に分散化されるので、不快感が軽減されて快適な装着感が実現できる。さらに、本発明のカップは、第１カップ部に相当する広がりのパーツが、上記第１カップ部、上記第２カップ部および上記第３カップ部に相当する広がりのパーツの肌側（第１カップ部に対応する箇所の肌側）に重ね合わされて形成される。このため、これら二つのパーツを重ね合わせるだけでカップが形成可能となるため、カップの製造が容易となる。

さらに、本発明では、上記第１カップ部の上記下側部分は、着用状態で、乳房トップの直下より前中心側に位置する領域を覆うものであってもよい。この場合、乳房トップの直下より前中心側に位置する領域から乳房トップ近傍に向かう方向（すなわち乳房の脇側に向かう方向）に乳房のボリュームが確実に移動可能となる。このため、特に脇胸（乳房上部の脇側）に対し豊かなボリューム感を持たせることが可能となる。

さらに、本発明では、上記第１カップ部の上記下側部分は、着用状態で、乳房トップの直下に位置する領域を覆うものであってもよい。この場合、乳房トップの直下に位置する領域から乳房トップ近傍に向かう方向（乳房トップの直上に向かう方向）に乳房のボリュームが確実に移動可能となる。このため、特に乳房トップの直上の領域に対し豊かなボリューム感を持たせることが可能となる。

さらに、本発明では、上記第１カップ部の上記下側部分は、着用状態で、乳房トップの直下より脇側に位置する領域を覆うものであってもよい。この場合、乳房トップの直下より脇側に位置する領域から乳房トップ近傍に向かう方向（すなわち前中心側にある左右乳房間に向かう方向）に乳房のボリュームが確実に移動可能となる。このため、特に左右乳房間に対し豊かなボリューム感を持たせることが可能となり、左右乳房間に深く大きな谷間が形成可能となる。

また、本発明のカップ付き女性用衣類は、上記のカップと、ワイヤー部と、肩ストラップ部と、を各々一対ずつ備え、上記一対のワイヤー部の各々は、上記一対のカップの各々の脇側から下側に延びる基底線に沿って取り付けられ、上記一対の肩ストラップ部の各々は、上記一対のカップの各々の上端に取り付けられている、ことを特徴とする。

本発明によれば、硬くてボリュームの移動が困難な乳房に対し、快適な着心地を維持しつつ、乳房下部から乳房上部への乳房のボリューム移動が確実に行えるカップおよびカップ付き女性用衣類が提供できる。

本発明に係るカップおよびカップ付き女性用衣類の詳細な構成や機能を、ブラジャーの実施形態により説明する。なお、図表面の説明において、同一要素には同一符号を付し、重複説明は省略する。

＜本実施形態の狙いとコンセプト＞
女性の乳房は、一般に、年代に応じて形や硬さが大きく異なる。乳房の形状を整えて美しいプロポーションを創り出すためには、各年代の女性が好むバストプロポーションを反映させつつ、各年代の女性に特有の乳房の形や硬さに応じて乳房形状を整形するのが効果的である。ところで、２０歳前後、特に１７歳〜２４歳ごろの女性の多くは、左右乳房間に大きくハッキリとしたボリューム感のある深く大きな谷間を好むことが知られている。また、この年代の女性の乳房の主な特徴としては、皮膚が硬くハリがあって肉質も硬く、左右の乳房が互いに離隔している、ことなどが知られている。しかし、１７歳〜２４歳ころの女性が好む上述のようなバストプロポーションを実現しようとしても、従来型カップのように、単に乳房の脇側下部を押圧するだけの寄せ上げ作用では、左右乳房間へのボリュームの移動が乏しく、左右乳房間に豊かなボリューム感のある深く大きな谷間が形成されるまでには至らない場合が多い。一方、上記従来型カップを用いて乳房の脇側下部に対する押圧をさらに強め、これにより、左右乳房間へのボリューム移動を大きくすることも考えられる。しかし、このような場合には、乳房の脇側下部が強く押圧されることより装着感の低下を招くこととなる。

そこで、本実施形態に係るブラジャーの「狙い」とすることろは、上記のような２０歳前後、特に１７歳〜２４歳ごろの女性に特有な、皮膚が硬くハリがあって肉質も硬く、左右が互いに離隔しているような乳房に対し、装着感を損なうことなく、左右乳房間にボリューム感のある深く大きな谷間を確実に形成して美しいバストプロポーションを創り出すことである。

そして、本実施形態に係るブラジャーの「コンセプト」は、上記「狙い」とすることろのプロポーションを創り出すため、乳房の脇側下部を押圧してこの脇側下部から乳房トップ側にボリュームを集め、さらに、この乳房トップ側に集めたボリュームを乳房トップ近傍を強く押圧することにより左右乳房間側に向けて強力に押し出す、というものである。

上記「コンセプト」は、上記「狙い」とすることろのプロポーションを創り出すために本発明者らが鋭意検討した結果得られたものであり、以下、図１を参照してこれを説明する。図１は、本実施形態に係るブラジャーのコンセプトを説明するための図であり、女性の左側乳房を表している。ここでは、左側乳房に対し四つの乳房領域Ａ１〜Ａ４を割り当てて説明する。乳房領域Ａ１は乳房の脇側下部に位置し、乳房領域Ａ２は乳房トップ近傍に位置し、乳房領域Ａ３は乳房領域Ａ１，Ａ２の前中心側に位置し、乳房領域Ａ４は乳房領域Ａ１，Ａ２の脇側に位置する。

まず、乳房領域Ａ１を比較的強く押圧するとともに、この押圧よりも弱く乳房領域Ａ３，Ａ４を押圧して押さえ付ける。これにより、この乳房領域Ａ１に対する押圧によって押し出される乳房のボリュームは、両脇にある乳房領域Ａ３，Ａ４が押さえ付けられているために、この乳房領域Ａ３，Ａ４の側にほとんど分散することなく乳房の脇側下部から乳房トップに向かう方向Ｂ１に集められ、方向Ｂ１に沿って乳房領域Ａ１に隣接する乳房トップ近傍の乳房領域Ａ２に移動する。そして、この乳房領域Ａ１に対する押圧よりもさらに強く乳房領域Ａ２を強力に押圧するとともに、上述のようにして乳房領域Ａ３，Ａ４を押圧して押さえ付ける。これにより、乳房領域Ａ１から方向Ｂ１に沿って乳房領域Ａ２に移動した乳房のボリュームは、この乳房領域Ａ２に対する押圧によって乳房トップから乳房上部の左右乳房間に向かう方向Ｂ２に繰り出されることとなる。このため、皮膚が硬くハリがあって肉質も硬いためにボリュームが移動しにくく、さらに、左右が互いに離隔しているため寄せが困難な乳房であっても、このような乳房領域Ａ１と乳房領域Ａ２とに対する二段階にわたる押圧によって、左右乳房間にボリューム感のある深くて大きな谷間が十分に形成可能となり、上記「狙い」とすることろのバストプロポーションが創出可能となる。

＜本実施形態の構成と機能＞
図２に示すように、本実施形態に係るブラジャー１０は、左右乳房の各々を覆う左右一対のカップ部１１と、各カップ部１１の脇側から下側に延びる湾曲線（基底線）に取り付けられた土台部１４と、この土台部１４の左右両端部にそれぞれ取り付けられた左右一対のバック部１５と、左右それぞれのカップ部１１およびバック部１５に取り付けられて左右それぞれの側でカップ部１１とバック部１５とをかけ渡す左右一対の肩ストラップ部１６と、を備える。以下、ブラジャー１０は左右対称な形状となっているため、左側のみについて説明する。

カップ部１１は、上カップ部１１ａ（第４カップ部）と、この上カップ部１１ａの下側に縫着などによって取り付けられた下カップ部１１ｂとを有する。この上カップ部１１ａと下カップ部１１ｂとは布材（不織布を含む）によって構成されているものとする。そして、上カップ部１１ａは、着用状態で、乳房上部の脇側から乳房下部の前中心側に向かって延びる領域を覆い、下カップ部１１ｂは、着用状態で、上カップ部１１ａが覆う領域の下側に位置する乳房領域Ａ１〜Ａ４（図１参照）を覆う。この下カップ部１１ｂは、乳房領域Ａ１と乳房領域Ａ２とを覆う第１カップ部１２ａと、乳房領域Ａ１，Ａ２の前中心側に位置する乳房領域Ａ３を覆う第２カップ部１２ｂと、乳房領域Ａ１，Ａ２の脇側に位置する乳房領域Ａ４を覆う第３カップ部１２ｃと、を有する。

第１カップ部１２ａの肌側には凸形状部１３が設けられている。そして、図３に示すように、凸形状部１３は、下側領域（第１カップ部の下側部分）１３ａと上側領域（第１カップ部のトップ側部分）１３ｂとを含み、着用状態で、乳房の脇側下部に位置する乳房領域Ａ１を覆う下側領域１３ａよりも乳房トップ近傍に位置する乳房領域Ａ２を覆う上側領域１３ｂの方が大きな凸形状を成している。換言すれば、凸形状部１３は、下側領域１３ａよりも上側領域１３ｂの方が厚みがある。このため、着用状態で乳房表面の単位表面積（例えば１ｃｍ^２）当たりに加える圧力は、下側領域１３ａよりも上側領域１３ｂの方が強い。さらに、第１カップ部１２ａの形状は、図４に示すように、下側領域１３ａの下辺側の幅Ｄ１よりも、上側領域１３ｂの上辺側の幅Ｄ２の方が幅広く、幅Ｄ２が幅Ｄ１の１．２〜２．０倍程度となっている。また、下側領域１３ａの下辺側から上辺側に向かう方向に沿った長さＤ３は、この方向に沿った上側領域１３ｂにおける長さＤ４より長く、長さＤ３が長さＤ４の１．１〜１．７倍程度となっている。すなわち、下側領域１３ａよりも上側領域１３ｂの方が大きな表面積を有する。

このように、着用状態で乳房表面の単位表面積当たりに加える圧力が強いほど押圧作用は大きく、さらに、乳房を覆う表面積が大きいほど押圧作用は大きい。このため、各乳房領域Ａ１〜Ａ４に対する押圧作用の値は、圧力計により乳房領域Ａ１〜Ａ４毎に計測される圧力（単位表面積当たりに加える力）に対し、各乳房領域Ａ１〜Ａ４の表面積、換言すれば、着用状態で、乳房領域Ａ１を覆う下側領域１３ａ、乳房領域Ａ２を覆う上側領域１３ｂ、乳房領域Ａ３を覆う第２カップ部１２ｂおよび乳房領域Ａ４を覆う第３カップ部１２ｃの各表面積、をそれぞれ乗じた値として計測（算出）される。

そこで、本実施形態に係るブラジャー１０では、第１カップ部１２ａによる押圧作用の値は、第２カップ部１２ｂおよび第３カップ部１２ｃが乳房領域Ａ３，Ａ４の各々に対して加える押圧作用の値の１．２〜２倍程度となっている。したがって、着用状態で乳房に加える押圧作用の値は、第２カップ部１２ｂおよび第３カップ部１２ｃよりも第１カップ部１２ａの方が大きいものとなっている。さらに、第１カップ部１２ａのなかでも上側領域１３ｂの方が下側領域１３ａよりも大きい。なお、上カップ部１１ａの押圧作用の値は、第１カップ部１２ａ、第２カップ部１２ｂおよび第３カップ部１２ｃの押圧作用の何れの値よりも小さく、第２カップ部１２ｂおよび第３カップ部１２ｃが乳房領域Ａ３，Ａ４の各々に対して加える押圧作用の値（或いは、何れか小さい方の値）の０．１〜０．５倍程度となっている。

そして、下カップ部１１ｂは、図５に示すように、第１下カップ部（前中心寄りパーツ）１２ｄと第２下カップ部（脇寄りパーツ）１２ｅとが縫着などによって取り付けられて成る。ここで、第１下カップ部１２ｄは、第２カップ部１２ｂと第１貼り合わせ部１２ｆとを有し、第２下カップ部１２ｅは、第３カップ部１２ｃと第２貼り合わせ部１２ｇとを有する。この第１貼り合わせ部１２ｆと第２貼り合わせ部１２ｇとが重なり合った状態で、第１下カップ部１２ｄと第２下カップ部１２ｅとが縫着などによって取り付けられている。そして、第１貼り合わせ部１２ｆと第２貼り合わせ部１２ｇとが重なり合うことによって第１カップ部１２ａが設けられるとともに、この第１カップ部１２ａの肌側の凸形状部１３が設けられる。したがって、図５に示すように、第１貼り合わせ部１２ｆに対して第２貼り合わせ部１２ｇを重ね合わせて第１下カップ部１２ｄと第２下カップ部１２ｅとを貼り合わせることによって下カップ部１１ｂを形成すれば、カップ１０の製造が容易となる。

なお、カップ部１１の肌側の構成素材が大きく圧縮されているほど、クッション性が低下して硬くなり、着用状態で乳房表面の単位表面積当たりに加える圧力が強くなって、乳房に対する押圧作用も大きくなる。このため、カップ部１１としては、第２カップ部１２ｂおよび第３カップ部１２ｃの方が上カップ部１１ａよりも肌側の構成素材が大きく圧縮され、第１カップ部１２ａの方が第２カップ部１２ｂおよび第３カップ部１２ｃよりも肌側の構成素材が大きく圧縮され、さらに、第１カップ部１２ａのうち、上側領域１３ｂの方が下側領域１３ａよりも肌側の構成素材が大きく圧縮されたものでも良い。この場合、上カップ部１１ａよりも第２カップ部１２ｂおよび第３カップ部１２ｃの方が押圧作用がさらに大きくなり、第２カップ部１２ｂおよび第３カップ部１２ｃよりも第１カップ部１２ａの方が押圧作用がさらに大きくなり、そして、第１カップ部１２ａのうち、下側領域１３ａよりも上側領域１３ｂの方が押圧作用がさらに大きくなる。

図２に戻って説明を続ける。土台部１４は、伸縮性を有する布材（不織布を含む）によって構成され、下カップ部１１ｂに縫着などによって取り付けられている。バック部１５は、布材（不織布を含む）によって構成され、土台部１４の左右各端部に縫着などによって取り付けられている。この左右一対のバック部１５の各端部には、この各端部同士を互いに連結させてブラジャー１０を身体に装着するための図示しない係合部材（例えば、雄型フックと雌型フック）がそれぞれ取り付けられている。肩ストラップ部１６は、布材（不織布を含む）によって構成され、上カップ部１１ａおよび土台部１４に対し縫着などによって取り付けられている。この肩ストラップ部１６によって、乳房が上方に支持されるため、乳房の寄せ上げが効果的に行われる。このように、本実施形態に係るブラジャー１０は、いわゆる肩ストラップ付きブラジャーに対し特に好適である。

ワイヤー部１７はカップ部１１の脇側から下側に延びる湾曲線に沿うようにカップ部１１に縫い込まれるなどして取り付けられている。したがって、このワイヤー部１７は、着用時には、乳房のバージスラインに沿うようにカップ部１１に設けられている。また、ワイヤー部１７は屈曲自在であるとともにカップ部１１の形状保持に十分な強度を有する素材により構成されている。このワイヤー部１７によって、乳房が下側から脇側にかけて支えられるため、乳房のボリュームが左右乳房間に向けて移動し易くなる。このように、本実施形態に係るブラジャー１０は、いわゆるワイヤーフォームブラジャーに対し特に好適である。

上述のように、本実施形態に係るブラジャー１０は、第２カップ部１２ｂと第３カップ部１２ｃとが乳房領域Ａ３，Ａ４をそれぞれ押さえつつ、第１カップ部１２ａの下側領域１３ａが、第２カップ部１２ｂおよび第３カップ部１２ｃよりも大きな押圧作用で乳房領域Ａ１を押圧する。これにより、この乳房領域Ａ１に対する押圧によって押し出されるボリュームは、乳房領域Ａ３，Ａ４が第２カップ部１２ｂと第３カップ部１２ｃとにより押さえ付けられているために、乳房領域Ａ３，Ａ４の側にほとんど分散することなく乳房の脇側下部（乳房領域Ａ１）から乳房トップ近傍（乳房領域Ａ２）に向かう方向Ｂ１（図１参照）に集められ、この方向Ｂ１に沿って乳房領域Ａ１に隣接する乳房領域Ａ２に移動する。そして、第１カップ部１２ａの上側領域１３ｂが、この乳房領域Ａ１に対する押圧作用よりもさらに大きな押圧作用で乳房領域Ａ２を強力に押圧するとともに、第２カップ部１２ｂと第３カップ部１２ｃとが、上述のようにして乳房領域Ａ３，Ａ４をそれぞれ押圧して押さえ付ける。これにより、乳房領域Ａ１から方向Ｂ１に沿って乳房領域Ａ２に移動したボリュームは、乳房領域Ａ３，Ａ４の側にほとんど分散することなく、この乳房領域Ａ２に対する押圧によって乳房トップ近傍（乳房領域Ａ２）から乳房上部の左右乳房間に向かう方向Ｂ２（図２参照）に繰り出されることとなる。このため、皮膚が硬くハリがあって肉質も硬いためにボリュームが移動しにくく、さらに、左右が互いに離隔しているため寄せが困難な乳房であっても、このような下側領域１３ａと上側領域１３ｂとによる二段階にわたる押圧によって、左右乳房間にボリューム感のある深くて大きな谷間が十分に形成可能となる。そして、本実施形態に係るブラジャー１０では、上述のような下側領域１３ａと上側領域１３ｂとによる二段階の押圧のため、一段階のみの押圧だけで乳房形状を整形する従来型ブラジャーの場合に比べて押圧作用が分散化されるので、押圧作用により引き起こされる不快感が軽減化されて快適な装着感が実現できる。

また、第１カップ部１２ａの形状は、図２に示すように、下辺側よりも上辺側の方が幅広くなっている。このため、第１カップ部１２ａの上辺側の幅が狭いと着用状態で乳房の脇側下部から乳房トップ近傍に集められた乳房のボリュームの多くが第１カップ部１２ａの上辺側では受容しきれずに第１カップ部１２ａの幅方向（乳房領域Ａ３，Ａ４の側）に分散するという現象が生じやすくなるが、本実施形態に係るブラジャー１０では、乳房トップ近傍に集められたボリュームが第１カップ部１２ａの上辺側において十分確実に受容可能となる。

また、上カップ部１１ａよりも第２カップ部１２ｂおよび第３カップ部１２ｃの方が押圧作用が大きいため、第１カップ部１２ａだけでなく、第２カップ部１２ｂおよび第３カップ部１２ｃによる押圧によっても乳房ボリュームが上カップ部１１ａの側に移動することとなる。さらに、この移動されたボリュームが、上カップ部１１ａにより、第１カップ部１２ａ、第２カップ部１２ｂおよび第３カップ部１２ｃにより覆われる各乳房領域Ａ２，Ａ３，Ａ４の上側（乳房上部）にある左右乳房間のより広い範囲にわたってさらに移動することとなる。このため、左右乳房間のより広い範囲で豊かなボリューム感を持たせることが可能となる。

＜変形例＞
下カップ部１１ｂの他の形成方法を図６（ａ），（ｂ）にそれぞれ一例ずつ示す。図６（ａ）に示す下カップ部１１ｂは、布材（不織物を含む）などによって構成され、第１カップ部１２ａの両脇に第２カップ部１２ｂと第３カップ部１２ｃとが縫着などによりそれぞれ取り付けられたものである。そして、図６（ｂ）に示す下カップ部１１ｂは、布材（不織物を含む）などによって構成され、ベース部（第１カップ部、第２カップ部および第３カップ部に相当する広がりのパーツ）１２ｈの肌側に凸形状部（第１カップ部に相当する広がりのパーツ）１３が重ね合わされた状態で縫着などによって取り付けられて成る。ベース部１２ｈは、第２カップ部１２ｂ、第３カップ部１２ｃおよび第３貼り合わせ部１２ｉを含み、この第３貼り合わせ部１２ｉは第２カップ部１２ｂと第３カップ部１２ｃとに挟まれて設けられ、この凸形状部１３は、第３貼り合わせ部１２ｉに重ね合わされる。したがって、図６（ｂ）に示すように、ベース部１２ｈに凸形状部１３を貼り合わせることによって下カップ部１１ｂを形成すれば、カップ１０の製造が容易となる。なお、図６（ｂ）は、下カップ部１１ｂを肌側からみた図である。

さらに、本発明に係るカップ部１１は、上カップ部１１ａと下カップ部１１ｂとが一体的にモールド成形されたものであってもよいし、凸形状部１３を有するパッド部１２ｊが布材で覆われた下カップ部１１ｂを有するものであってもよい。このような２種類のカップ部１１の各断面構造を図７に示す。

図７（ａ），（ｂ）と、図７（ｃ），（ｄ）とにそれぞれ示す下カップ部１１ｂには、何れも、第１カップ部１２ａ、第２カップ部１２ｂおよび第３カップ部１２ｃが設けられ、第１カップ部１２ａの両脇に第２カップ部１２ｂと第３カップ部１２ｃとが配置されている。そして、第１カップ部１２ａの方が、第２カップ部１２ｂおよび第３カップ部１２ｃよりも肌側に厚く、第１カップ部１２ａの方が、第２カップ部１２ｂおよび第３カップ部１２ｃよりも乳房に対する押圧作用が大きい。このため、第２カップ部１２ｂと第３カップ部１２ｃとが乳房領域Ａ３，Ａ４を押さえつつ、第１カップ部１２ａが、第２カップ部１２ｂおよび第３カップ部１２ｃよりも大きな押圧作用で乳房領域Ａ１，Ａ２を押圧する。また、第１カップ部１２ａの肌側には、凸形状部１３が形成されている。この凸形状部１３のうち上側領域１３ｂの方が下側領域１３ａよりも肌側に厚い（換言すれば下側領域１３ｂの凸形状が上側領域１３ａの凸形状よりも大きい）。さらに、第１カップ部１２ａの下辺側の幅（図４に示す下側領域１３ａの下辺側の幅Ｄ１）よりも上辺側の幅（図４に示す上側領域１３ｂの上辺側の幅Ｄ２）の方が長いため、上側領域１３ｂの表面積の方が下側領域１３ａの表面積よりも大きい。このため、下側領域１３ａが乳房領域Ａ１に対して加える押圧作用よりも上側領域１３ｂが乳房領域Ａ２に対して加える押圧作用の方が大きい。また、上カップ部１１ａは、下カップ部１１ｂの上側に連続して設けられている。そして、上カップ部１１ａよりも第２カップ部１２ｂおよび第３カップ部１２ｃの方が押圧作用が大きい。

また、下カップ部１１ｂでは、第２カップ部１２ｂおよび第３カップ部１２ｃの方が上カップ部１１ａよりも肌側の構成素材が大きく圧縮され、第１カップ部１２ａの方が第２カップ部１２ｂおよび第３カップ部１２ｃよりも肌側の構成素材が大きく圧縮され、さらに、第１カップ部１２ａのうち、上側領域１３ｂの方が下側領域１３ａよりも肌側の構成素材が大きく圧縮されたものでも良い。この場合、上カップ部１１ａよりも第２カップ部１２ｂおよび第３カップ部１２ｃの方が押圧作用がさらに大きくなり、第２カップ部１２ｂおよび第３カップ部１２ｃよりも第１カップ部１２ａの方が押圧作用がさらに大きくなり、そして、第１カップ部１２ａのうち、下側領域１３ａよりも上側領域１３ｂの方が押圧作用がさらに大きい。

さらに、上述の本実施形態に係るブラジャー１０は、乳房上部の前中心側（左右乳房間）のボリュームをアップさせるものであるが、本発明はこれに限らず、乳房上部のどの部分をボリュームアップさせるようなものであっても良い。図８に、このような変形例を二例示す。図８（ａ）は、着用状態で、乳房トップの直下に位置する領域（乳房のバージスラインの最下点近傍の領域）から乳房トップ方向に向かって乳房のボリュームを移動させ、乳房上部のうち乳房トップの直上にある領域のボリュームをアップさせるためのブラジャーを示す斜視図であり、同図（ｂ）は、着用状態で、乳房トップの直下より前中心側に位置する領域から乳房トップ方向に向かって乳房のボリュームを移動させ、乳房上部の脇側にある脇胸のボリュームをアップさせるためのブラジャーを示す斜視図である。そして、図９（ａ）は、図８（ａ）に示すブラジャーの機能を説明するための図であり、図９（ｂ）は、図８（ｂ）に示すブラジャーの機能を説明するための図であって、何れも女性の左側乳房を表している。

まず、図８（ａ）に示すブラジャー１０が備えるカップ部１１は、上カップ部１１ａと下カップ部１１ｂとを有する。さらに、下カップ部１１ｂには、第２カップ部１２ｂと第３カップ部１２ｃとが前中心側と脇側とにそれぞれ設けられ、この第２カップ部１２ｂと第３カップ部１２ｃとに挟まれた位置に第１カップ部１２ａが設けられている。この第１カップ部１２ａの肌側には、凸形状を有する（肌側に厚い）下側領域１３ａと上側領域１３ｂとが設けられている。下側領域１３ａは乳房トップの直下に位置する乳房領域Ａ５を覆い、上側領域１３ｂは乳房トップ近傍に位置する乳房領域Ａ６覆う。そして、下側領域１３ａから上側領域１３ｂに続く向きは、乳房領域Ａ５から乳房トップ方向に向かう方向Ｂ３に向いている。そして、第２カップ部１２ｂと第３カップ部１２ｃとが乳房領域Ａ７，Ａ８を覆う。

これにより、乳房領域Ａ７，Ａ８の側にほとんど分散することなく、乳房領域Ａ５のボリュームが下側領域１３ａにより方向Ｂ３に沿って乳房領域Ａ６に移動し、さらに、この乳房領域Ａ６に移動したボリュームが上側領域１３ｂにより方向Ｂ３に沿って乳房トップの直上（乳房上部）にさらに移動することとなる。このため、この乳房領域Ａ５から乳房領域Ａ６への乳房のボリューム移動と、さらに、乳房領域Ａ６から乳房トップの直上（乳房上部）へのボリューム移動とが確実に行えて、乳房上部のうち乳房トップの直上にある領域のボリュームが確実にアップできる。

また、図８（ａ）に示す上カップ部１１ａは、下カップ部１１ｂの上側に連続して設けられている。そして、上カップ部１１ａよりも第２カップ部１２ｂおよび第３カップ部１２ｃの方が押圧作用が大きく、このため、第１カップ部１２ａだけでなく、第２カップ部１２ｂおよび第３カップ部１２ｃによる押圧によっても乳房ボリュームが上カップ部１１ａの側に移動することとなる。さらに、この移動された乳房ボリュームが、第１カップ部１２ａ、第２カップ部１２ｂおよび第３カップ部１２ｃにより覆われる各乳房領域Ａ６，Ａ７，Ａ８の上側（乳房上部）にある乳房トップ直上のより広い範囲にわたってさらに移動することとなる。このため、乳房直上のより広い範囲で豊かなボリューム感を持たせることが可能となる。

次に、図８（ｂ）に示すブラジャー１０が備えるカップ部１１は、上カップ部１１ａと下カップ部１１ｂとを有する。さらに、下カップ部１１ｂには、第２カップ部１２ｂと第３カップ部１２ｃとが前中心側と脇側とにそれぞれ設けられ、この第２カップ部１２ｂと第３カップ部１２ｃとに挟まれた位置に第１カップ部１２ａが設けられている。この第１カップ部１２ａの肌側には、凸形状を有する（肌側に厚い）下側領域１３ａと上側領域１３ｂとが設けられている。下側領域１３ａは乳房トップの直下より前中心側に位置する乳房領域Ａ９を覆い、上側領域１３ｂは乳房トップ近傍に位置する乳房領域Ａ１０を覆う。そして、下側領域１３ａから上側領域１３ｂに続く向きは、着用状態で乳房トップの直下より前中心側に位置する乳房領域Ａ９から乳房トップ方向に向かう方向Ｂ４に向いている。そして、第２カップ部１２ｂと第３カップ部１２ｃとが乳房領域Ａ１１，Ａ１２を覆う。

これにより、乳房領域Ａ１１，Ａ１２の側にほとんど分散することなく、乳房領域Ａ９のボリュームが下側領域１３ａにより方向Ｂ４に沿って乳房領域Ａ１０に移動し、さらに、この乳房領域Ａ１０に移動したボリュームが上側領域１３ｂにより方向Ｂ４に沿って乳房トップの直上より脇側（乳房上部）にさらに移動することとなる。このため、乳房領域Ａ９から乳房領域Ａ１０への乳房のボリューム移動と、さらに、乳房領域Ａ１０から乳房トップの直上より脇側（乳房上部）へのボリューム移動とが確実に行えて、乳房上部の脇側にある脇胸のボリュームが確実にアップできる。

また、図８（ｂ）に示す上カップ部１１ａは、下カップ部１１ｂの上側に連続して設けられている。そして、上カップ部１１ａよりも第２カップ部１２ｂおよび第３カップ部１２ｃの方が押圧作用が大きく、このため、第１カップ部１２ａだけでなく、第２カップ部１２ｂおよび第３カップ部１２ｃによる押圧によっても乳房ボリュームが上カップ部１１ａの側に移動することとなる。さらに、この移動された乳房ボリュームが、第１カップ部１２ａ、第２カップ部１２ｂおよび第３カップ部１２ｃにより覆われる各乳房領域Ａ１０，Ａ１１，Ａ１２の上側（乳房上部）にある脇胸のより広い範囲にわたってさらに移動することとなる。このため、乳房上部の脇側で豊かなボリューム感を持たせることが可能となる。

また、図８（ａ）、（ｂ）に示す下カップ部１１ｂでは、第２カップ部１２ｂおよび第３カップ部１２ｃの方が上カップ部１１ａよりも肌側の構成素材が大きく圧縮され、第１カップ部１２ａの方が第２カップ部１２ｂおよび第３カップ部１２ｃよりも肌側の構成素材が大きく圧縮され、さらに、第１カップ部１２ａのうち、上側領域１３ｂの方が下側領域１３ａよりも肌側の構成素材が大きく圧縮されたものでも良い。この場合、上カップ部１１ａよりも第２カップ部１２ｂおよび第３カップ部１２ｃの方が押圧作用がさらに大きくなり、第２カップ部１２ｂおよび第３カップ部１２ｃよりも第１カップ部１２ａの方が押圧作用がさらに大きくなり、そして、第１カップ部１２ａのうち、下側領域１３ａよりも上側領域１３ｂの方が押圧作用がさらに大きくなる。

また、図８（ａ）、（ｂ）に示すカップ部１１は、布材（不織物を含む）によって構成されるとともに、縫着などによって、図５および図６（ａ），（ｂ）に示す方法によって下カップ部１１ｂが設けられたものであってもよい。また、図７（ａ），（ｂ）に示すように上カップ部１１ａと下カップ部１１ｂとが一体的にモールド成形されたものであってもよいし、また、図７（ｃ），（ｄ）に示すように、凸形状部１３を有するパッド部１２ｊが布材で覆われた下カップ部１１ｂを有するものであってもよい。

このように、下側領域１３ａから上側領域１３ｂに続く向きが、乳房下部から乳房上部のボリュームアップしたい部分に向くように第１カップ部１２ａを形成すれば、乳房上部のどの部分に対しても確実にボリュームアップが可能となる。

また、カップ部１１は、下カップ部１１ｂのみを有する構成であってもよく、この場合、下カップ部１１ｂは乳房トップを十分覆える大きさに成形されている。そして、肩ストラップ部１６は、この下カップ部１１ｂの上端にて縫着などにより取り付けられる。

＜本実施形態のブラジャーに対する評価＞
次に、図１０を参照して、本実施形態に係るブラジャーに対する評価試験の結果について説明する。本評価試験では、複数の女性モニターに、本実施形態に係るブラジャーと、比較例としての従来型ブラジャーとを装着させて、左右乳房間に生じる谷間の深さと、乳房上部へのボリューム移動量と、着用感と、をそれぞれ評価した。

まず、左右乳房間に生じる谷間の深さと、乳房上部へのボリューム移動量とに対する評価結果を図１０に示す。ここで、実施例１のブラジャーに対する評価結果を図中符号Ｃ１に示し、実施例２のブラジャーに対する評価結果を図中符号Ｃ２に示し、比較例のブラジャーに対する評価結果を図中符号Ｃ３１に示す。そして、この比較例とは異なる他の６種類の従来型のブラジャー（図示略）に対する評価結果も図中符号Ｃ３２〜Ｃ３７に示す。この従来型ブラジャーの評価結果Ｃ３１〜Ｃ３７は何れも図中符号Ｃ３に示す領域内に含まれる。図１０に示すように、左右乳房間に生じる谷間の深さは、実施例１，２のブラジャーの方が比較例のブラジャーに比べて格段に深くなっており、乳房上部へのボリューム移動量は、実施例１，２のブラジャーの方が比較例のブラジャーに比べて格段に多くなっているのがわかる。

次に、着用感について、「左右乳房間に谷間ができたと感じるのはどちらか？」、「どちらのブラジャーが好きか？」の問いに対し、多くのモニターが、実施例のブラジャーの方が好きだ、と答えた。そして、上記モニターの中には、実施例のブラジャーに対し、「乳房が中央に寄せられた感じがする」、「乳房上部にボリュームがでた」、「左右乳房間に谷間ができた」、「従来型のブラジャーより軽い感じ」、「乳房がカップに無理なく収まり、かつ、左右乳房間に谷間ができた」、「乳房が丸い形に整形された」、「カップが乳房にピッタリ合う」という感想を持った者もいたが、中には「比較例のブラジャーの方がボリューム感がある」という感想を持った者もいた。

なお、本発明のカップ付き女性用衣類としては、上述の本実施形態に係るブラジャーに限らず、ボディースーツなどの他のファンデーション衣類や、水着、レオタードなどに対しても適用可能である。

実施形態に係るブラジャーのコンセプトを説明するための図である。 実施形態に係るブラジャーの構成を示す斜視図である。 実施形態に係るブラジャーが有する下カップ部の肌側に形成された凸形状を説明するための図であり、（ａ）は凸形状を等高線で表した図であり、（ｂ）は図２のＩ−Ｉ矢視断面図であり、（ｃ）は図２のＩＩ−ＩＩ矢視断面図である。 実施形態に係るブラジャーが有する下カップ部の形状を説明するための図である。 実施形態に係るブラジャーが有する下カップ部の形成方法を説明するための図である。 実施形態に係るブラジャーが有する下カップ部の他の形成方法を説明するための図である。 実施形態に係るブラジャーが有する下カップ部の他の構成例を示す断面図であり、（ａ）および（ｃ）は図２のＩ−Ｉ矢視断面図であり、（ｂ）および（ｄ）は図２のＩＩ−ＩＩ矢視断面図である。。 実施形態に係るブラジャーが有する下カップ部の他の構成例を示す斜視図である。 実施形態に係るブラジャーの他の構成例が有する機能を説明するための図である。 実施形態に係るブラジャーに対する評価結果を示す図である。

符号の説明

１０…ブラジャー、１１…カップ部、１１ａ…上カップ部、１１ｂ…下カップ部、１２ａ…第１カップ部、１２ｂ…第２カップ部、１２ｃ…第３カップ部、１２ｄ…第１下カップ部、１２ｅ…第２下カップ部、１２ｆ…第１貼り合わせ部、１２ｇ…第２貼り合わせ部、１２ｈ…ベース部、１２ｉ…第３貼り合わせ部、１２ｊ…パッド部、１３…凸形状部、１３ａ…下側領域、１３ｂ…上側領域、１４…土台部、１５…バック部、１６…肩ストラップ部、１７…ワイヤー部。

Claims (14)

1. 乳房を覆うためのカップであって、
   着用状態で、乳房トップ近傍から乳房下部に続く帯状領域を覆う第１カップ部と、
   前記第１カップ部の前中心側に位置する第２カップ部と、
   前記第１カップ部の脇側に位置する第３カップ部と、
   を備え、
   着用状態で、乳房に対する押圧作用は、前記第１カップ部の方が前記第２カップ部および前記第３カップ部よりも大きく、かつ、前記第１カップ部のうち、乳房トップを覆うトップ側部分の方が乳房下部を覆う下側部分よりも大きい、ことを特徴とするカップ。
2. 前記第１カップ部、前記第２カップ部および前記第３カップ部の上側に位置するとともに、着用状態で、これらカップ部が覆う乳房表面の上側に位置する領域を覆う第４カップ部をさらに備え、
   乳房に対する押圧作用は、前記第２カップ部および前記第３カップ部の方が前記第４カップ部よりも大きい、ことを特徴とする請求項１に記載のカップ。
3. 乳房を覆うためのカップであって、
   着用状態で、乳房トップ近傍から乳房下部に続く帯状領域を覆う第１カップ部と、
   前記第１カップ部の前中心側に位置する第２カップ部と、
   前記第１カップ部の脇側に位置する第３カップ部と、
   を備え、
   前記第１カップ部の方が前記第２カップ部および前記第３カップ部よりも肌側に厚く、かつ、前記第１カップ部のうち、乳房トップを覆うトップ側部分の方が乳房下部を覆う下側部分よりも肌側に厚い、ことを特徴とするカップ。
4. 乳房を覆うためのカップであって、
   着用状態で、乳房トップ近傍から乳房下部に続く帯状領域を覆う第１カップ部と、
   前記第１カップ部の前中心側に位置する第２カップ部と、
   前記第１カップ部の脇側に位置する第３カップ部と、
   を備え、
   前記第１カップ部の方が前記第２カップ部および前記第３カップ部よりも肌側に厚く、かつ、前記第１カップ部のうち、乳房トップを覆うトップ側部分の方が乳房下部を覆う下側部分よりも大きな表面積を有している、ことを特徴とするカップ。
5. 前記第１カップ部、前記第２カップ部および前記第３カップ部の上側に位置するとともに、着用状態で、これらカップ部が覆う乳房表面の上側に位置する領域を覆う第４カップ部をさらに備え、
   前記第２カップ部および前記第３カップ部の方が前記第４カップ部よりも肌側に厚い、ことを特徴とする請求項３または４に記載のカップ。
6. 乳房を覆うためのカップであって、
   着用状態で、乳房トップ近傍から乳房下部に続く帯状領域を覆う第１カップ部と、
   前記第１カップ部の前中心側に位置する第２カップ部と、
   前記第１カップ部の脇側に位置する第３カップ部と、
   を備え、
   前記第１カップ部の方が、前記第２カップ部および前記第３カップ部よりも肌側の構成素材が大きく圧縮されており、かつ、前記第１カップ部のうち、乳房トップを覆うトップ側部分の方が、乳房下部を覆う下側部分よりも肌側の構成素材が大きく圧縮されている、ことを特徴とするカップ。
7. 乳房を覆うためのカップであって、
   着用状態で、乳房トップ近傍から乳房下部に続く帯状領域を覆う第１カップ部と、
   前記第１カップ部の前中心側に位置する第２カップ部と、
   前記第１カップ部の脇側に位置する第３カップ部と、
   を備え、
   前記第１カップ部の方が、前記第２カップ部および前記第３カップ部よりも肌側の構成素材が大きく圧縮されており、かつ、前記第１カップ部のうち、乳房トップを覆うトップ側部分の方が、乳房下部を覆う下側部分よりも大きな表面積を有している、ことを特徴とするカップ。
8. 前記第１カップ部、前記第２カップ部および前記第３カップ部の上側に位置するとともに、着用状態で、これらカップ部が覆う乳房表面の上側に位置する領域を覆う第４カップ部をさらに備え、
   前記第２カップ部および前記第３カップ部の方が、前記第４カップ部よりも肌側の構成素材が大きく圧縮されている、ことを特徴とする請求項６または７に記載のカップ。
9. 乳房を覆うためのカップであって、
   着用状態で、乳房トップ近傍から乳房下部に続く帯状領域を覆う第１カップ部と、
   前記第１カップ部の前中心側に位置する第２カップ部と、
   前記第１カップ部の脇側に位置する第３カップ部と、
   を備え、
   前記第１カップ部は、当該第１カップ部と前記第２カップ部とに相当する広がりの前中心寄りパーツと、前記第１カップ部と前記第３カップ部とに相当する広がりの脇寄りパーツとを重ね合わせて形成され、
   前記第１カップ部の乳房トップを覆うトップ側部分の方が乳房下部を覆う下側部分よりも幅が広い、
   ことを特徴とするカップ。
10. 乳房を覆うためのカップであって、
    着用状態で、乳房トップ近傍から乳房下部に続く帯状領域を覆う第１カップ部と、
    前記第１カップ部の前中心側に位置する第２カップ部と、
    前記第１カップ部の脇側に位置する第３カップ部と、
    を備え、
    前記第１カップ部は、当該第１カップ部に相当する広がりのパーツを、前記第１カップ部、前記第２カップ部および前記第３カップ部に相当する広がりのパーツの肌側に重ね合わせて形成され、
    前記第１カップ部の乳房トップを覆うトップ側部分の方が乳房下部を覆う下側部分よりも幅が広い、
    ことを特徴とするカップ。
11. 前記第１カップ部の前記下側部分は、着用状態で、乳房トップの直下より前中心側に位置する領域を覆う、ことを特徴とする請求項１〜１０のうち何れか一項に記載のカップ。
12. 前記第１カップ部の前記下側部分は、着用状態で、乳房トップの直下に位置する領域を覆う、ことを特徴とする請求項１〜１０のうち何れか一項に記載のカップ。
13. 前記第１カップ部の前記下側部分は、着用状態で、乳房トップの直下より脇側に位置する領域を覆う、ことを特徴とする請求項１〜１０のうち何れか一項に記載のカップ。
14. 請求項１〜１３のうち何れか一項に記載のカップと、ワイヤー部と、肩ストラップ部と、を各々一対ずつ備え、
    前記一対のワイヤー部の各々は、前記一対のカップの各々の脇側から下側に延びる基底線に沿って取り付けられ、前記一対の肩ストラップ部の各々は、前記一対のカップの各々の上端に取り付けられている、ことを特徴とするカップ付き女性用衣類。

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