JP2006127812A - 燃料電池セパレータ - Google Patents

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Abstract

【課題】優れた機械的強度を得ることができると共に、接触抵抗の低減を図ることができる燃料電池セパレータを提供する。
【解決手段】燃料電池セパレータ4に関する。カーボンペーパ、カーボンクロス、カーボンフェルトのいずれかの基材8、又はこの基材8に樹脂組成物を含浸させることによって得られたプリプレグ10を、樹脂組成物の両外層に配置してアウトサート成形する。
【選択図】図1

Description

本発明は、燃料電池の構成部品である燃料電池セパレータに関するものである。
近年、石油や石炭などの化石燃料の燃焼などによって排出される二酸化炭素が一因とされる地球温暖化が環境問題として取り上げられている。このような中、省エネルギー効果が期待でき、クリーンな発電システムとして燃料電池が注目され、様々な分野において実用化が検討されている。
図2は燃料電池の基本構造を模式的に例示した斜視図であり、この図によれば、電解質1を挟むように燃料極2(マイナスの電極)と空気極3(プラスの電極)が配置され、その両側には、両側面に複数個の凸部5が形成されている燃料電池セパレータ4が配置され、単電池(単位セル)が構成されている。ここで、燃料電池の電極である上記燃料極2と空気極3はいずれもガス拡散層7で構成されている。また、上記凸部5は、隣り合う凸部5同士の間で、燃料である水素と酸素の流路であるガス供給排出用溝6を構成している。このガス供給排出用溝6は、燃料電池内を流れる水素、酸素及び冷却水が混合しないように分離する働きを有すると共に、燃料電池の単位セルで発電した電気エネルギーを外部へ伝達したり単位セルで生じた熱を外部へ放熱するという重要な役割を担っている。
そして、上記の単位セルを数十個〜数百個積み重ねて電池本体(セルスタック)を形成している。この単位セルにおいては、電解質1を介して対向する一対の電極のうち燃料極2に水素を、空気極3に酸素を供給して、水素と酸素の電気化学反応により直接電気エネルギーに変換される。
すなわち、水素は、燃料極2中の触媒の働きにより、電子を切り離して水素イオンになり、この水素イオンは電解質1の中を移動する。水素イオンは、対向する電極である空気極3に供給された酸素と、外部回路を通じて戻ってきた電子と反応して水となる。そして、この外部回路を通じて電子が移動することで電気が発生するものである。
電解質1は、水酸化カリウム、リン酸、高分子膜等の種類があり、その種類によって燃料電池はそれぞれアルカリ型、リン酸型、固体高分子型に分類される。
これらのなかでも、特に固体高分子型燃料電池は、作動温度が常温〜約120℃程度と低く、小型化が可能なので、家庭向けコージェネ、自動車などの用途への適用が期待されている。
このような燃料電池において、燃料電池セパレータ4は、優れた導電性や耐食性と共に、ガスの不透過性や、機械的強度、耐衝撃性を有することが強く求められており、これまでに数々の燃料電池セパレータ4やその製造方法が提案されている。
燃料電池セパレータ4の製造方法としては、微細な空隙部を有する金属材料からなる3次元網目状構造物にフェノール樹脂、エポキシ樹脂等を含浸させてプリプレグを作成し、ついでプレス成形して加熱硬化させる方法が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。また、燃料電池セパレータ4としては、リブ部及び平坦部を有する燃料電池セパレータ4において、平坦部が膨張黒鉛粉と固形樹脂の混合物を含む層及び固形樹脂を含有した絶縁性を有する材料を含む層からなり、かつ膨張黒鉛粉と混合する固形樹脂の融点と絶縁性を有する材料に含有する固形樹脂の融点がほぼ同等である燃料電池セパレータ4(例えば、特許文献2参照。)や、板厚のばらつきが0.15mm以下の燃料電池セパレータ4(例えば、特許文献3参照。)が提案されており、また、炭素質粉末を被覆する樹脂被覆層と、この樹脂被覆層を形成する樹脂よりも高耐熱性の樹脂強化層とで形成された燃料電池セパレータ成形用複合材も提案されている(例えば、特許文献4参照。)。さらには、導電ガス遮断層の両面に導電層を有する燃料電池用セパレータ等も提案されている(例えば、特許文献5参照。)。
しかしながら、これまでに提案された上記のような燃料電池セパレータ4は、家庭用据え置き型コージェネ向け燃料電池セパレータとして使用するには十分な機械的強度を有するものであるが、過酷な条件で使用される車載用燃料電池のセパレータとして用いる場合には、セパレータの端部にクラックが生じたりするなど現状実用化されるまでの機械的強度を有しておらず、また、さらなる接触抵抗の低減も要請されているのが実情である。
特開2000−164226号公報 特開2002−367623号公報 特開2003−197215号公報 特開2003−257446号公報 特開2001−15131号公報
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、優れた機械的強度を得ることができると共に、接触抵抗の低減を図ることができる燃料電池セパレータを提供することを目的とするものである。
本発明の請求項1に係る燃料電池セパレータは、カーボンペーパ、カーボンクロス、カーボンフェルトのいずれかの基材8、又はこの基材8に樹脂組成物9を含浸させることによって得られたプリプレグ10を、樹脂組成物9の両外層に配置してアウトサート成形して成ることを特徴とするものである。
請求項2の発明は、請求項1において、基材8の単重が30〜150g/mであることを特徴とするものである。
請求項3の発明は、請求項1又は2において、基材8が、燃料電池の電極を構成するガス拡散層7として用いられるものであることを特徴とするものである。
本発明の請求項1に係る燃料電池セパレータによれば、硬化樹脂に比べて高強度・高導電性の基材がアウトサート成形で燃料電池セパレータの表面に存在することとなるので、優れた機械的強度を得ることができると共に、接触抵抗の低減を図ることができるものである。
請求項2の発明によれば、燃料電池セパレータの機械的強度を十分確保した上で、電池本体(セルスタック)の軽量化を図ることができるものである。
請求項3の発明によれば、燃料電池の電極を構成するガス拡散層と同種の素材で形成された基材がアウトサート成形で燃料電池セパレータの表面に存在することとなるので、接触抵抗を一層低くすることができるものである。
以下、本発明の実施の形態を説明する。
本発明において基材8としては、カーボンペーパ、カーボンクロス、カーボンフェルトのいずれかのものを用いる。これらは、一般に市販されているものを使用してもよく、また、市販されている炭素繊維などのプリプレグ10を代用してもよい。これらは、強度・弾性が大きく、耐熱性や耐薬品性に優れ、さらに軽量であることから、燃料電池セパレータ4の機械的強度、耐食性といった性能の向上や軽量化を図ることができる。また、上記の基材8は導電性にも優れている。
また、基材8の単重は30〜150g/mであることが好ましい。このような基材8を用いれば、燃料電池セパレータ4の機械的強度を十分確保した上で、電池本体(セルスタック)の軽量化を図ることができるものである。なお、軽量化を図るためには、できるだけ単重の小さい基材8を用いるのが好ましいが、実際上入手可能な基材8の単重の下限は30g/mである。また、基材8の単重が150g/mを超えると、軽量化の要請に十分応えられないおそれがある。
本発明においてプリプレグ10としては、上記の基材8に後述する樹脂組成物9を含浸させ、さらに乾燥させて、導電性基材8中の樹脂組成物9を半硬化(Bステージ状態)させて得られるものを用いる。含浸方法については特に制限されることはなく、例えば樹脂組成物9を有機溶媒に溶解させて樹脂ワニスを調製し、この樹脂ワニスに導電性基材8を浸漬するなどして、導電性基材8に樹脂ワニスを含浸させるようにしてもよい。有機溶媒としては、各種の溶媒を用いることができ、例えばメチルエチルケトン、トルエン、ベンゼン、ケトン、ホルムアミド、アルコールなどを挙げることができる。
上記のように本発明におけるプリプレグ10は、樹脂組成物9を基材8に含浸させて得られるものであるが、この樹脂組成物9は、熱硬化性樹脂及び黒鉛粒子を含有し、上記黒鉛粒子の平均粒径が1〜150μmであり、かつ、プリプレグ10中における熱硬化性樹脂の含有率が40〜70質量%の範囲とすることができる。
黒鉛粒子は、プリプレグ10の電気比抵抗を低減させ、導電性を向上させるために含有されるもので、上記のように平均粒径1〜150μmの範囲のものを用いることができるが、平均粒径が1μm未満の場合にはプリプレグ10を成形して得られる燃料電池セパレータ4の成形性が低下するおそれがあるため好ましくない。150μmを超える場合には燃料電池セパレータ4の表面平滑性が損なわれたり、機械的強度が低下するなどの問題を生じるおそれがあるため好ましくない。
プリプレグ10の製造方法や製造条件は、特に制限されることはなく、既知の方法や条件により製造される。例えば、基材8に樹脂組成物9を含浸させた後は、80〜180℃の温度で、適宜の時間が設定され加熱乾燥される。このとき、加熱乾燥が不十分であるとプリプレグ10内部の有機溶媒が除去されず、プリプレグ10の表層部と内部の樹脂組成物9の濃度差によって歪が生じ、プリプレグ10の表層部には微細なクラックが発生してしまうおそれがある。また、加熱乾燥を過度に行った場合には、プリプレグ10の表層部では筋むらや樹脂垂れが発生するおそれがある。
また、プリプレグ10中における熱硬化性樹脂の含有率は、プリプレグ10全体の質量に対して40〜70質量%となるように含浸させることが好ましく、これによって優れた機械的強度を有すると共に、良好な導電性を有するプリプレグ10を得ることができる。40質量%未満では、ガスの不透過性が低下し、70質量%より大きい場合には、導電性が低下してしまうため好ましくない。
熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ジアリルフタレート樹脂等など各種の樹脂を挙げることができ、これらの樹脂より選ばれる少なくとも一種の樹脂を用いることができるが、樹脂成形に適用可能であれば特に制限されることはない。樹脂粘度や不純物の少なさなどから、これらの熱硬化性樹脂のうち、特にエポキシ樹脂とフェノール樹脂のうち少なくともいずれか一方を含むことが好ましく、更には、イオン性不純物が少ないエポキシ樹脂が好ましい。エポキシ樹脂が含まれる場合には、硬化触媒及び硬化開始剤を含有させることができる。
熱硬化性樹脂としてエポキシ樹脂、フェノール樹脂のうち少なくとも一方を含む場合は、熱硬化性樹脂全量に対して、エポキシ樹脂とフェノール樹脂との合計量が、50〜100質量%の範囲に設定することができる。
また、エポキシ樹脂やフェノール樹脂と共にポリイミド樹脂を使用することで、耐熱性や耐酸性の向上の効果が期待できる。例えば、ビスマレイミド樹脂である4,4−ジアミノジフェニルビスマレイミドを用いてもよい。
エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、環状脂肪族エポキシ樹脂など各種のエポキシ樹脂を例示することができるが、好ましくはクレゾールノボラック型エポキシ樹脂を用いる。
エポキシ樹脂の融点としては、70〜130℃の範囲が好ましい。これにより、エポキシ樹脂を粉砕後、常温での形状が安定し成形時の取り扱い性が向上する。融点が70℃未満の場合には、樹脂が凝集しやすく取り扱い性が低下し、130℃より高い場合には、後工程である樹脂組成物9の混練が困難となる場合があるので好ましくない。
このエポキシ樹脂の含有量は、熱硬化性樹脂全量に対して50〜100質量%の範囲に設定することができる。
また、低粘度のエポキシ樹脂を選択することによって、成形性を維持し、黒鉛粒子を高充填化することができる。
上記のようなエポキシ樹脂を用いる場合には、硬化触媒と硬化開始剤を含有することができるが、通常のエポキシ樹脂に使用されているものであれば特に制限されることはない。硬化触媒としては、アミン系化合物、リン系化合物を例示することができるが、アミン系化合物は燃料電池の触媒を被毒するおそれがあるため、リン系化合物を用いるのが好ましい。リン系化合物を用いることで、燃料電池セパレータ4を実際に使用した場合に、燃料電池セパレータ4からの塩素イオンの溶出を低減させることができる。このようなリン系化合物としては、例えばトリフェニルホスフィンを例示することができる。
このような硬化触媒の含有量は適宜設定されるが、好ましくはエポキシ樹脂100質量部に対して0.5〜3質量部の範囲となるようにするものである。
硬化開始剤としては、アミン系化合物、酸無水物系化合物、フェノール系化合物など各種の化合物が挙げられるが、硬化性、成形性が優れるフェノール系化合物を用いるのが好ましい。アミン系化合物を用いる場合には、燃料電池セパレータ4の電気伝導度を高い状態に維持することが困難となり、また燃料電池の触媒を被毒するおそれもある。酸無水物系化合物は耐酸性の環境下で加水分解して、電気伝導度が低下したり、不純物の溶出が増大してしまうおそれがある。
硬化開始剤の含有量としては、エポキシ樹脂に対する硬化開始剤の化学量論上の当量比が、1.00〜1.15の範囲が好適である。このことで、成形時にエポキシ樹脂の硬化が十分に促進され、高い強度を有する燃料電池セパレータ4を製造することができる。1.00より小さいと、十分な強度を得ることができなくなるおそれがあり、1.15を超えると硬化開始剤が未反応で残り性能が低下すると共に、成形性が低下したり、不純物が溶出したりするおそれがあるため好ましくない。
熱硬化性樹脂としてフェノール樹脂を用いる場合には、フェノール樹脂として開環重合により重合反応が進行するフェノール樹脂を用いるのが好ましい。このようなフェノール樹脂では、成形工程での脱水によるガス発生がないことから、成形品、すなわち燃料電池セパレータ4におけるボイドの発生を防止でき、これにより高い気密性が確保される。このようなフェノール樹脂として、取扱いが容易な、融点が70〜80℃のレゾール型フェノール樹脂を用いるのが好ましい。このようなレゾール型フェノール樹脂としては、例えば核磁気共鳴法(13C−NMR)で、オルト−オルト25〜35%、オルト−パラ60〜70%、パラ−パラ5〜10%の構造を有するレゾール型フェノール樹脂を挙げることができる。
このようなレゾール型フェノール樹脂は、熱硬化性樹脂として単独で使用しても良いし、エポキシ樹脂などと共に使用する場合は10〜70質量%の範囲に設定して使用しても良い。
また、上記の熱硬化性樹脂に対して、カップリング剤、離型剤などの添加剤を含有させてもよい。カップリング剤は黒鉛粒子の表面改質のために用いられ、分散性や熱硬化性樹脂の強度を向上させることができ、離型剤は、燃料電池セパレータ4を成形する際の金型離型性を向上させることができる。
カップリング剤の種類としてはシリコン系、チタネート系、アプミニウム系化合物など各種のカップリング剤を例示することができる。これらの中でも特にシリコン系カップリング剤のエポキシシランを用いるのが好ましい。このようなカップリング剤の添加方法としては、熱硬化性樹脂に直接もしくは有機溶媒などで希釈して添加してもよいし、黒鉛粒子の表面に直接又は有機溶媒などで希釈した溶液を噴射して処理してもよい。カップリング剤の添加量は、黒鉛粒子の比表面積と使用するカップリング剤の単位質量当たりの被覆面積とから適宜設定される。例えば、使用するカップリング剤の被覆面積の総量が、黒鉛粒子の表面積の総量に対して、0.5〜2倍が好ましい範囲である。カップリング剤の添加量が多すぎると、成形時に金型表面を汚染する原因になるおそれがあるため好ましくない。
また、離型剤としては、炭化水素系化合物、アマイド系化合物、脂肪酸系化合物など各種の離型剤を例示することができ、これらを複数種使用してもよい。例えば、天然カルナバワックスやモンタン酸ビスアマイドを用いるのが好ましい。離型剤の含有量は、適宜設定されるが、組成物全量に対して0.1〜4.0質量%の範囲であることが好ましく、この含有量が0.1質量%未満では成形時に十分な金型離型性が得られないおそれがあり、また4.0質量%を超えると、金型表面が汚染したり、成形して得られる燃料電池セパレータ4に必要とされる水との濡れ性が十分に得られなくなる場合がある。
黒鉛粒子の含有量は、樹脂組成物9全量に対して70〜90質量%であることが好ましい。70質量%未満の場合には、プリプレグ10において十分な導電性が得られなくなるおそれがあり、また90質量%を超える場合にはガス不透過性や燃料電池セパレータ4の成形性や機械的強度が低下するおそれがあるため好ましくない。
また、上記黒鉛粒子としては、人造黒鉛、天然黒鉛のいずれかを含むものであってもよいし、双方を含んでいてもよい。人造黒鉛は、石油コークス類を原料とし、これを高温焼成、更に黒鉛化炉で無定形炭素を人工的に転移変成されており、極低灰分で異方性が少ないことから、燃料電池セパレータ4を実際に使用した場合には、燃料電池セパレータ4からの不純物の溶出を抑えることができると共に、優れた導電性を得ることができるため好ましい。天然黒鉛は、結晶が良く発達しており、高い導電性を得ることができる。特に、球状天然黒鉛、葉片状の結晶でその平均粒径が20μm以下の鱗片状天然黒鉛を用いることで、燃料電池セパレータ4の優れた導電性を得ることができるため好ましい。球状天然黒鉛は、例えば、球状化粉砕加工により配向性を抑えたものを挙げることができる。
また、樹脂組成物9全体における水溶性イオンである塩素イオン、ナトリウムイオンの含有量が、それぞれ樹脂組成物9全量に対して5ppm以下であることが好ましい。この値が5ppmを超える場合には燃料電池として電圧などの特性が低下するおそれがあるため好ましくない。塩素イオン、ナトリウムイオンの含有量は、樹脂組成物9を成形して得られる燃料電池セパレータ4から水溶性イオンを抽出し、これをイオンクロマトグラフ法で評価測定したものを、樹脂組成物9の質量に基づいて換算することで導出することができる。
そして、本発明に係る燃料電池セパレータを製造するにあたっては、上述した基材8をプリプレグ10に加工しないでそのまま使用したり、又は、上述した基材8を加工して得たプリプレグ10を使用したりすることができる。具体的には、基材8又はプリプレグ10を樹脂組成物9の両外層に配置してアウトサート成形することによって、燃料電池セパレータ4を製造することができる。ここで、上記樹脂組成物9としては、プリプレグ10を製造するのに使用したものと同一のものを用いることができる。
例えば、図2に示すような複数個の凸部5が形成されている燃料電池セパレータ4を得るためには、図1に示すように上記凸部5に対応する凹部11が設けられた上型12と下型13とからなる金型が用いられる。そして、まず、図1(a)に示すように、下型13のキャビティ14に基材8又はプリプレグ10を載置すると共に、この基材8又はプリプレグ10上に樹脂組成物9を供給し、さらにその上に基材8又はプリプレグ10を載置する。ここで、上下の基材8又はプリプレグ10の間に挟まれる樹脂組成物9としては、あらかじめ成形用シート15として製造されたものを1枚又は複数枚用いることができる。次に、図1(b)に示すように、上型12と下型13とを型締めして加熱圧縮する。このときの成形条件としては、例えば金型温度は150〜300℃、圧力は9.8〜49.3MPa(100〜500kgf/cm)、成形時間は10〜60分の範囲に設定することができる。これらの条件は、基材8やプリプレグ10の種類、熱硬化性樹脂の硬化特性、プレスの性能等により適宜設定されるが、高温で成形することで成形サイクルを短縮することができるため、効率的に生産することができる。
このように上型12と下型13とによって、基材8又はプリプレグ10と樹脂組成物9とが加熱圧縮成形されて、上型12と下型13とに設けられた凹部11が転写され、固化した後、脱型することで、図1(c)に示すような複数個の凸部5を備えた燃料電池セパレータ4を得ることができる。この燃料電池セパレータ4の表面は、アウトサート成形によって、基材8又はプリプレグ10で被覆されることとなる。また、隣り合う凸部5同士の間に、燃料である水素と酸素の流路であるガス供給排出用溝6が構成される。
従来の燃料電池セパレータでは、たとえ高強度の基材が用いられていたとしても、この基材はインサート成形で硬化樹脂の内部に埋入されてしまう。そうすると、硬くて脆い樹脂が燃料電池セパレータの表面に存在することとなって、振動等でクラックが生じやすくなり、十分な機械的強度を得ることができなかった。しかしながら、本発明に係る燃料電池セパレータでは、硬化樹脂に比べて高強度の基材8がアウトサート成形で燃料電池セパレータ4の表面に存在することとなり、硬化樹脂を基材8で保護することができるので、クラックが生ずることはなく、優れた機械的強度を得ることができるものである。また、従来の燃料電池セパレータでは、たとえ導電性の良好な基材が用いられていたとしても、やはりこの基材はインサート成形で硬化樹脂の内部に埋入されてしまう。そうすると、比較的導電性の低い樹脂が燃料電池セパレータの表面に存在することとなって、接触抵抗を十分に低減することができなかった。しかしながら、本発明に係る燃料電池セパレータでは、樹脂に比べて導電性の良好な基材8をアウトサート成形で燃料電池セパレータ4の表面に存在させることができるので、接触抵抗の低減を図ることができるものである。
また、燃料電池セパレータ4の製造に用いられる基材8は、燃料電池の電極を構成するガス拡散層7として用いられるものであることが好ましい。すなわち、ガス拡散層7と同種の素材で形成された基材8を用いて、燃料電池セパレータ4を製造するのが好ましい。このように、本発明に係る燃料電池セパレータでは、燃料電池の電極を構成するガス拡散層7と同種の素材で形成された基材8がアウトサート成形で燃料電池セパレータ4の表面に存在することとなるので、接触抵抗を一層低くすることができるものである。
また、燃料電池セパレータ4の全有機体炭素(TOC:total organic carbon)は100ppm以下となるようにすることが好ましい。このことによって、燃料電池として特性の低下を抑制することができる。TOCが100ppmを超える場合には、燃料電池として特性の低下が発生するおそれがあるため好ましくない。TOCの値は、高純度の原材料を選択したり、熱硬化性樹脂の当量比を調整したり、後硬化処理したりすることによって低減させることができる。
以下、本発明を実施例によって具体的に説明する。
<実施例1〜6>
(基材・プリプレグ)
基材として、カーボンクロス(東邦テナックス(株)製「SYCC25−00173−56」、単重105g/cm、厚み0.27mm)、カーボンフェルト(東邦テナックス(株)製「CNW73X−A2351−56」、単重60g/cm、厚み0.24mm)、カーボンペーパA(SGLカーボン製「SIGRACET GDL 品番:GDL20」、単重60g/cm、厚み0.215mm)、カーボンペーパB(SGLカーボン製「SIGRACET GDL 品番:GDL21」、単重40g/cm、厚み0.20mm)、カーボンペーパC(SGLカーボン製「SIGRACET GDL 品番:GDL30」、単重90g/cm、厚み0.3mm)を用いた。また、プリプレグとして、カーボンクロスプリプレグ(東邦テナックス(株)製「W−3101/Q−112J」、単重150g/cm、樹脂量37質量%)を用いた。
(成形用シートの製造)
[表1]に示す配合量で、加熱した混練機に原料を入れて混練し、成形材料(樹脂組成物)を得た。この成形材料を用いて、圧延ロールを有するシート成形機により、50℃、面圧19.6MPa(200kgf/cm)、成形時間10分の条件で、寸法が200mm×200mm、厚さが5mmの成形用シートを得た。なお、混練機としては、「S2KRCニーダー」(栗本鉄工所(株)製)を使用した。
[表1]中の各成分の詳細は以下の通りである。
樹脂A:クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(日本化薬(株)製「EOCN−1020」)、エポキシ当量199、融点75℃
樹脂B:フェノールノボラック樹脂(硬化開始剤)(群栄化学工業(株)製「PSM6200」)、OH当量105
樹脂C:レゾール型フェノール樹脂(群栄化学工業(株)製「サンプルA」)、融点75℃、核磁気共鳴法(13C−NMR)で、オルト−オルト25〜35%、オルト−パラ60〜70%、パラ−パラ5〜10%の構造である。
硬化剤A:トリフェニルホスフィン(硬化触媒)(北興化学工業(株)製「TPP」)
黒鉛A:人造黒鉛((株)中越黒鉛工業所製「SGS20A」)、平均粒径20μm
黒鉛B:天然黒鉛((株)中越黒鉛工業所製「WF025」)、平均粒径25μm
黒鉛C:天然黒鉛((株)中越黒鉛工業所製「WR15」)、平均粒径15μm
カップリング剤:エポキシシラン(日本ユニカー(株)製「A187」)
ワックスA:天然カルナバワックス(大日化学工業(株)製「H1−100」)、融点83℃
ワックスB:モンタン酸ビスアマイド(大日化学工業(株)製「J−900」)、融点123℃
添加溶媒:MEK(メチルエチルケトン)(このMEKは実施例4において樹脂ワニス調製用の溶媒として用いた。)
(燃料電池セパレータの製造)
まず、図1(a)に示すように、下型のキャビティに基材又はプリプレグを載置すると共に、この基材又はプリプレグ上に成形用シートを載置し、さらにその上に基材又はプリプレグを載置した。次に、図1(b)に示すように、上型と下型とを型締めして加熱圧縮した。このときの成形条件としては、金型温度は180℃、圧力(面圧)は19.6MPa(200kgf/cm)、成形時間は10分に設定した。このように、基材又はプリプレグを成形用シートの両外層に配置してアウトサート成形することによって、図1(c)に示すような複数個の凸部を備えた燃料電池セパレータ(板厚1.5mm)を製造した。
<比較例1>
アウトサート成形せずにインサート成形するようにした以外は、実施例3と同様にして燃料電池セパレータを製造した。具体的には、まず、下型のキャビティに成形用シートを載置すると共に、この成形用シート上に基材を載置し、さらにその上に成形用シートを載置した。次に、上型と下型とを型締めして加熱圧縮した。このときの成形条件としては、金型温度は180℃、圧力(面圧)は19.6MPa(200kgf/cm)、成形時間は10分に設定した。このように、インサート成形することによって、複数個の凸部を備えた燃料電池セパレータ(板厚1.5mm)を製造した。
<比較例2>
アウトサート成形もインサート成形もしないようにした以外は、実施例3と同様にして燃料電池セパレータを製造した。具体的には、まず、下型のキャビティに成形用シートを載置し、次に、上型と下型とを型締めして加熱圧縮した。このときの成形条件としては、金型温度は180℃、圧力(面圧)は19.6MPa(200kgf/cm)、成形時間は10分に設定した。このように成形することによって、複数個の凸部を備えた燃料電池セパレータ(板厚1.5mm)を製造した。
次に、上記のようにして得られた各燃料電池セパレータについて、下記のような評価方法で、成形性、TOC測定、水溶性イオン分析、電気伝導度、曲げ強度、接触抵抗を測定した。これらの結果を[表1]に示す。
(評価方法)
成形性:各実施例、比較例において、30個の燃料電池セパレータを製造し、それらの外観を観察することにより、充填不良の有無を確認し、その発生数で評価した。
TOC測定:JIS K0551−4.3に従い、燃料電池セパレータをイオン交換水にて1分間洗浄した。なお、洗浄にはメタノールとイオン交換水を併用してもよい。次いで、ガラスビン中に燃料電池セパレータとイオン交換水とを、燃料電池セパレータ10gに対してイオン交換水が100mlとなるように入れ、90℃で50時間処理した。処理後のイオン交換水中に燐酸を添加し、pH2以下に調整した後、東レエンジニアリング(株)製「東レアストロTOC自動分析計MODEL1800」にて、湿式−赤外線式TOC測定法でTOCを測定した。
水溶性イオン分析:燃料電池セパレータをイオン交換水にて1分間洗浄した。なお、洗浄にはメタノールとイオン交換水を併用してもよい。次いで、ポリエチレンビン中に燃料電池セパレータとイオン交換水とを、燃料電池セパレータ10gに対してイオン交換水が100mlとなるように入れ、90℃で50時間処理した。処理後のイオン交換水を(株)島津製作所製イオンクロマトグラフィ「CDD−6A」にて測定した。
電気伝導度:燃料電池セパレータをイオン交換水にて1分間洗浄した。なお、洗浄にはメタノールとイオン交換水を併用してもよい。次いで、ポリエチレンビン中に燃料電池セパレータとイオン交換水とを、燃料電池セパレータ10gに対してイオン交換水が100mlとなるように入れ、90℃で50時間処理した。処理後のイオン交換水を導電率計で測定した。
曲げ強度:JIS K6911に従い、燃料電池セパレータの溝のない部分を切り出して、曲げ強度を測定した。
接触抵抗:燃料電池セパレータ4の溝のない部分を切り出して、これを接触抵抗測定用のサンプル21とした。このサンプル21を図3のようにカーボンペーパ22(東レ(株)製「TGP−120−400X400」)で挟み、導電性ブロック23を介してプレス機24で加圧すると共に、導電性ブロック23に接続した定電流装置(図示省略)により一定の電流を流した。そして、カーボンペーパ22に接続した検出器(図示省略)で、サンプル21の接触抵抗を測定した。なお、図3中、25は絶縁体であって、導電性ブロック23とプレス機24との絶縁を確保するためのものであり、26は鰐口クリップであって、検出器からの接続コード27をカーボンペーパ22につなぐためのものである。
Figure 2006127812
[表1]にみられるように、実施例1〜6の燃料電池セパレータは、機械的強度が高く、接触抵抗が低いことが確認される。
本発明の実施の形態の一例を示すものであり、(a)〜(c)は断面図である。 燃料電池の基本構造を模式的に例示した斜視図である。 接触抵抗の測定方法の一例を示す概略断面図である。
符号の説明
7 ガス拡散層
8 基材
9 樹脂組成物
10 プリプレグ

Claims (3)

  1. カーボンペーパ、カーボンクロス、カーボンフェルトのいずれかの基材、又はこの基材に樹脂組成物を含浸させることによって得られたプリプレグを、樹脂組成物の両外層に配置してアウトサート成形して成ることを特徴とする燃料電池セパレータ。
  2. 基材の単重が30〜150g/mであることを特徴とする請求項1に記載の燃料電池セパレータ。
  3. 基材が、燃料電池の電極を構成するガス拡散層として用いられるものであることを特徴とする請求項1又は2に記載の燃料電池セパレータ。
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