本発明は、積層位相差板、およびそれを用いた各種画像表示装置に関する。
従来、各種画像表示装置には、全方位において優れた表示品位を実現するために、屈折率が制御された位相差板が必要とされており、その種類は、例えば、液晶表示装置の表示方式等に応じて選択されている。特に、VA(Vertically Aligned)型、OCB(Optically
Compensated Bend)型等の液晶表示装置では、3つの軸方向(X軸、Y軸、Z軸)における屈折率(nx,ny,nz)が「nx>ny>nz」となる、すなわち光学的に負の二軸性を示す位相差板が必要である。このように「nx>ny>nz」を満足する位相差板としては、例えば、自由端一軸延伸によってnx>ny=nzとした二枚の延伸高分子フィルムを、面内における遅相軸方向が互いに直交するように積層した積層位相差板や、高分子フィルムをテンター横延伸または二軸延伸することによって、「nx>ny>nz」に制御した単層位相差板が知られている。
しかしながら、前者の積層位相差板は、前記延伸フィルムの組み合わせによって得られる位相差値の範囲が広くなるという利点がある反面、一枚が厚型であり、積層によってフィルムがさらに厚型化するという欠点があった。一方、後者の単層位相差板は、単層でありながら「nx>ny>nz」という光学特性を備える利点を有するが、その反面、厚型であり、また得られる位相差値の範囲が狭いという欠点がある。このため、さらに他の位相差フィルムを積層して位相差値の範囲を広げる必要がある。また、この単層位相差板を用いて、その厚み方向の位相差値が面内位相差値よりも著しく大きい位相差値を得るために、前者の積層位相差板と同様、さらに他の位相差フィルムを積層する必要がある。そうすると結果として、さらに厚型化するという欠点が生じる。
また、ポリイミド等の非液晶ポリマーを用いて、薄型であり、かつ、「nx>ny>nz」を満たす単層の位相差フィルムを製造する方法も開示されている(例えば、特許文献1等参照)。しかし、このような単層のポリイミド製位相差フィルムは、厚み方向位相差を大きく設定すると、理由は不明であるが、着色が見られ、表示品位が低下するおそれがあった。
そこで、本発明は、液晶表示装置に使用した際に、視野角特性に優れ、高いコントラストを示す積層型の位相差板であって、厚み位相差値が大きく、かつ、薄型化も図ることができる、着色が防止された積層位相差板の提供である。
前記目的を達成するために、本発明の積層位相差板は、少なくとも2層の光学異方層を含む積層位相差板であって、
少なくとも、ポリマー製の光学異方層(A)と、ポリアミド、ポリイミド、ポリエステル、ポリアリールエーテルケトン、ポリエーテルケトン、ポリアミドイミドおよびポリエステルイミドからなる群から選択された少なくとも一つの非液晶性ポリマー製の光学異方層(B)とを含み、
下記数式で表される面内位相差(Re)が10nm以上であり、
下記式で表される厚み方向位相差(Rth)と前記面内位相差(Re)との差(Rth-Re)が50nm以上であることを特徴とする。
Re=(nx-ny)・d
Rth=(nx-nz)・d
前記式において、nx、nyおよびnzは、それぞれ前記積層位相差板におけるX軸、Y軸およびZ軸方向の屈折率を示し、前記X軸とは、前記積層位相差板の面内において最大の屈折率を示す軸方向であり、Y軸は、前記面内において前記X軸に対して垂直な軸方向であり、Z軸は、前記X軸およびY軸に垂直な厚み方向であって、dは、前記積層位相差板における厚みを示す。
発明者らは、このように前記ポリマー製の光学異方層(A)と、前記ポリイミド等の非液晶性ポリマー製の光学異方層(B)とを積層することによって、面内位相差(Re)が10nm以上であり、厚み方向位相差(Rth)と前記面内位相差(Re)との差(Rth-Re)50nm以上であるという優れた光学特性を示し、かつ、薄型化も実現した積層位相差板が得られることを見出した。さらに、このような積層位相差板であれば、従来のようにポリイミドフィルム単独で大きな厚み方向位相差を実現することによって生じる着色の問題をも防止できる。したがって、本発明の積層位相差板によれば、例えば、液晶表示装置等の各種画像表示装置に適用した際に、広視野角特性等の優れた表示特性を実現できるだけでなく、前記装置自体の薄型化も実現できるため、非常に有用である。
本発明の積層位相差板は、前述のように、少なくとも、ポリマー製の光学異方層(A)と、ポリアミド、ポリイミド、ポリエステル、ポリアリールエーテルケトン、ポリエーテルケトン、ポリアミドイミドおよびポリエステルイミドからなる群から選択された少なくとも一つの非液晶性ポリマー製の光学異方層(B)とを含み、前記面内位相差(Re)が10nm以上であり、前記厚み方向位相差(Rth)と前記面内位相差(Re)との差(Rth-Re)が50nm以上であることを特徴とする。
本発明の積層位相差板は、前記光学異方層(A)と(B)とを積層することによって、全体として、X軸、Y軸およびZ軸における屈折率が「nx>ny>nz」の関係を満たし、さらに、そのRe値が10nm以上であり、RthとReとの差(Rth-Re)が50nm以上であるため、例えば、前述のようなVAモードや、OCBモード等の表示方式である液晶表示装置において、液晶セルの複屈折を十分に補償でき、優れた視野角拡大の効果を奏する。前記Re値が10nm未満、または前記Rth-Reが50nm未満であると、前述のような視野角拡大効果が得られないという問題がある。
前記Re値は、10〜500nmの範囲であることが好ましく、より好ましくは20〜300nmの範囲である。また、前記(Rth-Re)の値は、50〜1,000nmの範囲であることが好ましく、より好ましくは50〜900nmの範囲であり、特に好ましくは50〜800nmの範囲である。
前記Rthは、60nm以上であり、好ましくは60〜1500nmの範囲であり、より好ましくは60〜1400nmの範囲であり、特に好ましくは60〜1300nmの範囲である。また、本発明の積層位相差板のRth/Reは、1以上である。
本発明において、前記光学異方層(A)は、前記光学異方層(B)と組合わせることによって、全体として前述のようなReと(Rth-Re)の条件を満たすことができれば特に制限されないが、例えば、下記式に示す面内位相差[Re(A)]が20〜300nmであり、下記式に示す厚み方向位相差[Rth(A)]と前記面内位相差[Re(A)]との比[Rth(A)/Re(A)]が1.0以上であることが好ましい。これは、前記厚み方向位相差と面内位相差との比[Rth(A)/Re(A)]が1.0未満であると、例えば、液晶表示装置に使用した際に、厚み方向における位相差値を十分に補償することができず、視野角が狭くなるという問題があり、面内位相差が20nm未満もしくは300nmより大きいと、視野角が狭くなるという問題があるためである。また、前記Rth(A)/Re(A)は、より好ましくは1.2以上であり、特に好ましくは1.2〜40である。
Re(A)=(nx(A)-ny(A))・d(A)
Rth(A)=(nx(A)-nz(A))・d(A)
前記式において、nx(A)、ny(A)およびnz(A)は、それぞれ前記光学異方層(A)におけるX軸、Y軸およびZ軸方向の屈折率を示し、前記X軸とは、前記光学異方層(A)の面内において最大の屈折率を示す軸方向であり、Y軸は、前記面内において前記X軸に対して垂直な軸方向であり、Z軸は、前記X軸およびY軸に垂直な厚み方向であって、d(A)は、前記光学異方層(A)の厚みを示す(以下同様)。
一方、前記光学異方層(B)は、前述のような非液晶ポリマー製の光学異方層であれば、その屈折率は特に制限されないが、例えば、X軸、Y軸およびZ軸における屈折率が「nx(B)>ny(B)>nz(B)」の関係を満たしてもよいし、「nx(B)≒ny(B)>nz(B)」を満たしてもよい。
前記式において、nx(B)、ny(B)およびnz(B)は、それぞれ前記光学異方層(B)におけるX軸、Y軸およびZ軸方向の屈折率を示し、前記X軸とは、前記光学異方層(B)の面内において最大の屈折率を示す軸方向であり、Y軸は、前記面内において前記X軸に対して垂直な軸方向であり、Z軸は、前記X軸およびY軸に垂直な厚み方向を示す(以下同様)。
前記光学異方層(B)が「nx(B)>ny(B)>nz(B)」の関係を示す場合、下記式に示す面内位相差[Re(B)]が3nm以上、下記式に示す厚み方向位相差[Rth(B)]と前記面内位相差[Re(B)]との比[Rth(B)/Re(B)]が1.0以上であることが好ましい。前記厚み方向位相差と面内位相差との比[Rth(B)/Re(B)]が1.0未満であると、例えば、液晶表示装置に使用した際に、厚み方向における位相差値を十分に補償することができず、視野角が狭くなるという問題があるからである。また、光学異方層(B)が、「nx(B)≒ny(B)>nz(B)」の関係を示す場合、すなわち面内位相差[Re(B)]がほぼ0nmであっても、例えば、光学異方層(A)の面内位相差[Re(A)]を前記範囲に設定することによって、本発明の積層位相差板におけるReと(Rth-Re)の条件を前記満たすこともできる。前記Re(B)は、より好ましくは3〜800nmであり、特に好ましくは5〜500nmであり、前記Rth(B)/Re(B)は、より好ましくは1.2以上であり、特に好ましくは1.2〜160である。なお、下記式において、d(B)は、前記光学異方層(B)の厚みを示す(以下同様)。
Re(B)=(nx(B)-ny(B))・d(B)
Rth(B)=(nx(B)-nz(B))・d(B)
前記光学異方層(A)と光学異方層(B)との組合わせの具体例としては、例えば、面内位相差[Re(A)]が20〜300nmであり、その厚み方向位相差[Rth(A)]と前記面内位相差[Re(A)]との比[Rth(A)/Re(A)]が1.0以上である光学異方層(A)と、面内位相差[Re(B)]が3nm以上、厚み方向位相差[Rth(B)]と前記面内位相差[Re(B)]との比[Rth(B)/Re(B)]が1.0以上である光学異方層(B)との組合わせ等があげられる。
本発明の積層位相差板の全体厚みは、通常、1mm以下であり、前述のような従来の積層位相差板よりも十分に薄型である。好ましくは1〜500μmの範囲であり、特に好ましくは5〜300μmの範囲である。例えば、前述のように「nx>ny=nzとした二枚の延伸高分子フィルムを、面内における遅相軸方向が互いに直交するように積層した従来の積層位相差板」と比較して、本発明の積層位相差板によれば、その厚みを、例えば、約2分の1程度に薄型化できる。
また、前記光学異方層(A)の厚みは、例えば、1〜800μmであり、好ましくは5〜500μmであり、より好ましくは10〜400μmであり、特に好ましくは50〜400μmである。前記光学異方層(B)の厚みは、例えば、1〜50μmであり、好ましくは2〜30μmであり、特に好ましくは1〜20μmである。このように、光学異方層(B)の厚みを十分に薄型化できるため、本発明の積層位相差板の全体厚みも薄くなり、かつ、光学異方層(A)の積層によって光学特性にも優れたものとなる。
前記光学異方層(A)の形成材料としては、特に制限されないが、例えば、正の複屈折を示すポリマーが好ましい。このようなポリマーを選択することによって、光学異方層(A)の面内位相差および厚み方向位相差を大きくすることができるからである。なお、本発明において、「正の複屈折を示すポリマー」とは、フィルムを延伸した場合に、延伸方向の屈折が最大になる性質を示すポリマーをいうが、前記ポリマーから形成された光学異方層(A)は、延伸フィルムでも未延伸フィルムのいずれであってもよい(以下同様)。
前記ポリマーとしては、前述のように前記光学異方層(A)の形態として延伸フィルムがあげられることから、例えば、延伸処理を施し易い熱可塑性ポリマーが好ましい。前記熱可塑性ポリマーとしては、例えば、ポリオレフィン(ポリエチレン、ポリプロピレン等)、ポリノルボルネン系ポリマー、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、ポリアクリロニトリル、ポリスルホン、ポリアリレート、ポリビニルアルコール、ポリメタクリル酸エステル、ポリアクリル酸エステル、セルロースエステルおよびそれらの共重合体等が使用可能である。これらのポリマーは、例えば、単独で使用してもよいし、二種類以上を併用してもよい。また、特開2001−343529号公報(WO01/37007)に記載のポリマーフィルムも、前記光学異方層(A)として使用できる。このポリマー材料としては、例えば、側鎖に置換または非置換のイミド基を有する熱可塑性樹脂と、側鎖に置換または非置換のフェニル基およびシアノ基を有する熱可塑性樹脂を含有する樹脂組成物が使用でき、例えば、イソブテンとN−メチレンマレイミドからなる交互共重合体と、アクリロニトリル・スチレン共重合体とを有する樹脂組成物があげられる。なお、前記ポリマーフィルムは、例えば、前記樹脂組成物の押出成形物であってもよい。また、透明性に優れることが好ましい。
前記光学異方層(B)の形成材料は、耐熱性、耐薬品性、透明性等に優れる、ポリアミド、ポリイミド、ポリエステル、ポリアリールエーテルケトン、ポリエーテルケトン、ポリアミドイミド、ポリエステルイミド等の非液晶性ポリマーである。このような非液晶性材料は、例えば、液晶性材料とは異なり、基板の配向性に関係なく、それ自身の性質によりnx>nz、ny>nzという光学的一軸性を示す膜を形成する。このため、例えば、前記異方層(B)を形成する際に使用する基板としては、配向基板に限定されることもなく、例えば、未配向基板であってもそのまま使用することができる。
これらのポリマーは、いずれか一種類を単独で使用してもよいし、例えば、ポリアリールエーテルケトンとポリアミドとの混合物のように、異なる官能基を持つ2種以上の混合物として使用してもよい。このようなポリマーの中でも、高透明性、高配向性、高延伸性であることから、ポリイミドが特に好ましい。
前記ポリマーの分子量は、特に制限されないが、例えば、重量平均分子量(Mw)が1,000〜1,000,000の範囲であることが好ましく、より好ましくは2,000〜500,000の範囲である。前記重量平均分子量は、例えば、標準試料としてポリエチレンオキシド、溶媒としてDMF(N,N-ジメチルホルムアミド)を使用して、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフ(GPC)法で測定できる。
前記ポリイミドとしては、例えば、面内配向性が高く、有機溶剤に可溶なポリイミドが好ましい。具体的には、例えば、特表2000-511296号公報に開示された、9,9-ビス(アミノアリール)フルオレンと芳香族テトラカルボン酸二無水物との縮合重合生成物を含み、下記式(1)に示す繰り返し単位を1つ以上含むポリマーが使用できる。
前記式(1)中、R
3〜R
6は、水素、ハロゲン、フェニル基、1〜4個のハロゲン原子またはC
1〜
10アルキル基で置換されたフェニル基、およびC
1〜
10アルキル基からなる群からそれぞれ独立に選択される少なくとも一種類の置換基である。好ましくは、R
3〜R
6は、ハロゲン、フェニル基、1〜4個のハロゲン原子またはC
1〜
10アルキル基で置換されたフェニル基、およびC
1〜
10アルキル基からなる群からそれぞれ独立に選択される少なくとも一種類の置換基である。
前記式(1)中、Zは、例えば、C6〜20の4価芳香族基であり、好ましくは、ピロメリット基、多環式芳香族基、多環式芳香族基の誘導体、または、下記式(2)で表される基である。
前記式(2)中、Z'は、例えば、共有結合、C(R
7)
2基、CO基、O原子、S原子、SO
2基、Si(C
2H
5)
2基、または、NR
8基であり、複数の場合、それぞれ同一であるかまたは異なる。また、wは、1から10までの整数を表す。R
7は、それぞれ独立に、水素またはC(R
9)
3である。R
8は、水素、炭素原子数1〜約20のアルキル基、またはC
6〜
20アリール基であり、複数の場合、それぞれ同一であるかまたは異なる。R
9は、それぞれ独立に、水素、フッ素、または塩素である。
前記多環式芳香族基としては、例えば、ナフタレン、フルオレン、ベンゾフルオレンまたはアントラセンから誘導される4価の基があげられる。また、前記多環式芳香族基の置換誘導体としては、例えば、C1〜10のアルキル基、そのフッ素化誘導体、およびFやCl等のハロゲンからなる群から選択される少なくとも一つの基で置換された前記多環式芳香族基があげられる。
この他にも、例えば、特表平8-511812号公報に記載された、繰り返し単位が下記一般式(3)または(4)で示されるホモポリマーや、繰り返し単位が下記一般式(5)で示されるポリイミド等があげられる。なお、下記式(5)のポリイミドは、下記式(3)のホモポリマーの好ましい形態である。
前記一般式(3)〜(5)中、GおよびG'は、例えば、共有結合、CH2基、C(CH3)2基、C(CF3)2基、C(CX3)2基(ここで、Xは、ハロゲンである。)、CO基、O原子、S原子、SO2基、Si(CH2CH3)2基、および、N(CH3)基からなる群から、それぞれ独立して選択される基を表し、それぞれ同一でも異なってもよい。
前記式(3)および式(5)中、Lは、置換基であり、dおよびeは、その置換数を表す。Lは、例えば、ハロゲン、C1-3アルキル基、C1-3ハロゲン化アルキル基、フェニル基、または、置換フェニル基であり、複数の場合、それぞれ同一であるかまたは異なる。前記置換フェニル基としては、例えば、ハロゲン、C1-3アルキル基、およびC1-3ハロゲン化アルキル基からなる群から選択される少なくとも一種類の置換基を有する置換フェニル基があげられる。また、前記ハロゲンとしては、例えば、フッ素、塩素、臭素またはヨウ素があげられる。dは、0から2までの整数であり、eは、0から3までの整数である。
前記式(3)〜(5)中、Qは置換基であり、fはその置換数を表す。Qとしては、例えば、水素、ハロゲン、アルキル基、置換アルキル基、ニトロ基、シアノ基、チオアルキル基、アルコキシ基、アリール基、置換アリール基、アルキルエステル基、および置換アルキルエステル基からなる群から選択される原子または基であって、Qが複数の場合、それぞれ同一であるかまたは異なる。前記ハロゲンとしては、例えば、フッ素、塩素、臭素およびヨウ素があげられる。前記置換アルキル基としては、例えば、ハロゲン化アルキル基があげられる。また前記置換アリール基としては、例えば、ハロゲン化アリール基があげられる。fは、0から4までの整数であり、gおよびhは、それぞれ0から3および1から3までの整数である。また、gおよびhは、1より大きいことが好ましい。
前記式(4)中、R10およびR11は、水素、ハロゲン、フェニル基、置換フェニル基、アルキル基、および置換アルキル基からなる群から、それぞれ独立に選択される基である。その中でも、R10およびR11は、それぞれ独立に、ハロゲン化アルキル基であることが好ましい。
前記式(5)中、M1およびM2は、同一であるかまたは異なり、例えば、ハロゲン、C1-3アルキル基、C1-3ハロゲン化アルキル基、フェニル基、または、置換フェニル基である。前記ハロゲンとしては、例えば、フッ素、塩素、臭素およびヨウ素があげられる。また、前記置換フェニル基としては、例えば、ハロゲン、C1-3アルキル基、およびC1-3ハロゲン化アルキル基からなる群から選択される少なくとも一種類の置換基を有する置換フェニル基があげられる。
前記式(3)に示すポリイミドの具体例としては、例えば、下記式(6)で表されるもの等があげられる。
さらに、前記ポリイミドとしては、例えば、前述のような骨格(繰り返し単位)以外の酸二無水物やジアミンを、適宜共重合させたコポリマーがあげられる。
前記酸二無水物としては、例えば、芳香族テトラカルボン酸二無水物があげられる。前記芳香族テトラカルボン酸二無水物としては、例えば、ピロメリト酸二無水物、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、複素環式芳香族テトラカルボン酸二無水物、2,2'-置換ビフェニルテトラカルボン酸二無水物等があげられる。
前記ピロメリト酸二無水物としては、例えば、ピロメリト酸二無水物、3,6-ジフェニルピロメリト酸二無水物、3,6-ビス(トリフルオロメチル)ピロメリト酸二無水物、3,6-ジブロモピロメリト酸二無水物、3,6-ジクロロピロメリト酸二無水物等があげられる。前記ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物としては、例えば、3,3',4,4'-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,3,3',4'-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2',3,3'-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物等があげられる。前記ナフタレンテトラカルボン酸二無水物としては、例えば、2,3,6,7-ナフタレン-テトラカルボン酸二無水物、1,2,5,6-ナフタレン-テトラカルボン酸二無水物、2,6-ジクロロ-ナフタレン-1,4,5,8-テトラカルボン酸二無水物等があげられる。前記複素環式芳香族テトラカルボン酸二無水物としては、例えば、チオフェン-2,3,4,5-テトラカルボン酸二無水物、ピラジン-2,3,5,6-テトラカルボン酸二無水物、ピリジン-2,3,5,6-テトラカルボン酸二無水物等があげられる。前記2,2'-置換ビフェニルテトラカルボン酸二無水物としては、例えば、2,2'-ジブロモ-4,4',5,5'-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2'-ジクロロ-4,4',5,5'-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2'-ビス(トリフルオロメチル)-4,4',5,5'-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物等があげられる。
また、前記芳香族テトラカルボン酸二無水物のその他の例としては、3,3',4,4'-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(2,5,6-トリフルオロ-3,4-ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン二無水物、4,4'-(3,4-ジカルボキシフェニル)-2,2-ジフェニルプロパン二無水物、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、4,4'-オキシジフタル酸二無水物、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)スルホン酸二無水物(3,3',4,4'-ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物)、4,4'-[4,4'-イソプロピリデン-ジ(p-フェニレンオキシ)]ビス(フタル酸無水物)、N,N-(3,4-ジカルボキシフェニル)-N-メチルアミン二無水物、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)ジエチルシラン二無水物等があげられる。
これらの中でも、前記芳香族テトラカルボン酸二無水物としては、2,2'-置換ビフェニルテトラカルボン酸二無水物が好ましく、より好ましくは、2,2'-ビス(トリハロメチル)-4,4',5,5'-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物であり、さらに好ましくは、2,2'-ビス(トリフルオロメチル)-4,4',5,5'-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物である。
前記ジアミンとしては、例えば、芳香族ジアミンがあげられ、具体例としては、ベンゼンジアミン、ジアミノベンゾフェノン、ナフタレンジアミン、複素環式芳香族ジアミン、およびその他の芳香族ジアミンがあげられる。
前記ベンゼンジアミンとしては、例えば、o-、m-およびp-フェニレンジアミン、2,4-ジアミノトルエン、1,4-ジアミノ-2-メトキシベンゼン、1,4-ジアミノ-2-フェニルベンゼンおよび1,3-ジアミノ-4-クロロベンゼンのようなベンゼンジアミンから成る群から選択されるジアミン等があげられる。前記ジアミノベンゾフェノンの例としては、2,2'-ジアミノベンゾフェノン、および3,3'-ジアミノベンゾフェノン等があげられる。前記ナフタレンジアミンとしては、例えば、1,8-ジアミノナフタレン、および1,5-ジアミノナフタレン等があげられる。前記複素環式芳香族ジアミンの例としては、2,6-ジアミノピリジン、2,4-ジアミノピリジン、および2,4-ジアミノ-S-トリアジン等があげられる。
また、前記芳香族ジアミンとしては、これらの他に、4,4'-ジアミノビフェニル、4,4'-ジアミノジフェニルメタン、4,4'-(9-フルオレニリデン)-ジアニリン、2,2'-ビス(トリフルオロメチル)-4,4'-ジアミノビフェニル、3,3'-ジクロロ-4,4'-ジアミノジフェニルメタン、2,2'-ジクロロ-4,4'-ジアミノビフェニル、2,2',5,5'-テトラクロロベンジジン、2,2-ビス(4-アミノフェノキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-アミノフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-アミノフェニル)-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン、4,4'-ジアミノジフェニルエーテル、3,4'-ジアミノジフェニルエーテル、1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4'-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル、4,4'-ビス(3-アミノフェノキシ)ビフェニル、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン、4,4'-ジアミノジフェニルチオエーテル、4,4'-ジアミノジフェニルスルホン等があげられる。
前記複屈折層(a)の形成材料である前記ポリエーテルケトンとしては、例えば、特開2001−49110号公報に記載された、下記一般式(7)で表されるポリアリールエーテルケトンがあげられる。
前記式(7)中、Xは、置換基を表し、qは、その置換数を表す。Xは、例えば、ハロゲン原子、低級アルキル基、ハロゲン化アルキル基、低級アルコキシ基、または、ハロゲン化アルコキシ基であり、Xが複数の場合、それぞれ同一であるかまたは異なる。
前記ハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、臭素原子、塩素原子およびヨウ素原子があげられ、これらの中でも、フッ素原子が好ましい。前記低級アルキル基としては、例えば、C1〜6の直鎖または分岐鎖を有する低級アルキル基が好ましく、より好ましくはC1〜4の直鎖または分岐鎖のアルキル基である。具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、および、tert-ブチル基が好ましく、特に好ましくは、メチル基およびエチル基である。前記ハロゲン化アルキル基としては、例えば、トリフルオロメチル基等の前記低級アルキル基のハロゲン化物があげられる。前記低級アルコキシ基としては、例えば、C1〜6の直鎖または分岐鎖のアルコキシ基が好ましく、より好ましくはC1〜4の直鎖または分岐鎖のアルコキシ基である。具体的には、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基、sec-ブトキシ基、および、tert-ブトキシ基が、さらに好ましく、特に好ましくはメトキシ基およびエトキシ基である。前記ハロゲン化アルコキシ基としては、例えば、トリフルオロメトキシ基等の前記低級アルコキシ基のハロゲン化物があげられる。
前記式(7)中、qは、0から4までの整数である。前記式(7)においては、q=0であり、かつ、ベンゼン環の両端に結合したカルボニル基とエーテルの酸素原子とが互いにパラ位に存在することが好ましい。
また、前記式(7)中、R1は、下記式(8)で表される基であり、mは、0または1の整数である。
前記式(8)中、X’は置換基を表し、例えば、前記式(7)におけるXと同様である。前記式(8)において、X'が複数の場合、それぞれ同一であるかまたは異なる。q'は、前記X'の置換数を表し、0から4までの整数であって、q'=0が好ましい。また、pは、0または1の整数である。
前記式(8)中、R2は、2価の芳香族基を表す。この2価の芳香族基としては、例えば、o-、m-もしくはp-フェニレン基、または、ナフタレン、ビフェニル、アントラセン、o-、m-もしくはp-テルフェニル、フェナントレン、ジベンゾフラン、ビフェニルエーテル、もしくは、ビフェニルスルホンから誘導される2価の基等があげられる。これらの2価の芳香族基において、芳香族に直接結合している水素が、ハロゲン原子、低級アルキル基または低級アルコキシ基で置換されてもよい。これらの中でも、前記R2としては、下記式(9)〜(15)からなる群から選択される芳香族基が好ましい。
前記式(7)中、前記R1としては、下記式(16)で表される基が好ましく、下記式(16)において、R2およびpは前記式(8)と同義である。
さらに、前記式(7)中、nは重合度を表し、例えば、2〜5000の範囲であり、好ましくは、5〜500の範囲である。また、その重合は、同じ構造の繰り返し単位からなるものであってもよく、異なる構造の繰り返し単位からなるものであってもよい。後者の場合には、繰り返し単位の重合形態は、ブロック重合であってもよいし、ランダム重合でもよい。
さらに、前記式(7)で示されるポリアリールエーテルケトンの末端は、p-テトラフルオロベンゾイレン基側がフッ素であり、オキシアルキレン基側が水素原子であることが好ましく、このようなポリアリールエーテルケトンは、例えば、下記一般式(17)で表すことができる。なお、下記式において、nは前記式(7)と同様の重合度を表す。
前記式(7)で示されるポリアリールエーテルケトンの具体例としては、下記式(18)〜(21)で表されるもの等があげられ、下記各式において、nは、前記式(7)と同様の重合度を表す。
また、これらの他に、前記複屈折層(a)の形成材料である前記ポリアミドまたはポリエステルとしては、例えば、特表平10−508048号公報に記載されるポリアミドやポリエステルがあげられ、それらの繰り返し単位は、例えば、下記一般式(22)で表すことができる。
前記式(22)中、Yは、OまたはNHである。また、Eは、例えば、共有結合、C
2アルキレン基、ハロゲン化C
2アルキレン基、CH
2基、C(CX
3)
2基(ここで、Xはハロゲンまたは水素である。)、CO基、O原子、S原子、SO
2基、Si(R)
2基、および、N(R)基からなる群から選ばれる少なくとも一種類の基であり、それぞれ同一でもよいし異なってもよい。前記Eにおいて、Rは、C
1-3アルキル基およびC
1-3ハロゲン化アルキル基の少なくとも一種類であり、カルボニル官能基またはY基に対してメタ位またはパラ位にある。
また、前記(22)中、AおよびA'は、置換基であり、tおよびzは、それぞれの置換数を表す。また、pは、0から3までの整数であり、qは、1から3までの整数であり、rは、0から3までの整数である。
前記Aは、例えば、水素、ハロゲン、C1-3アルキル基、C1-3ハロゲン化アルキル基、OR(ここで、Rは、前記定義のものである。)で表されるアルコキシ基、アリール基、ハロゲン化等による置換アリール基、C1-9アルコキシカルボニル基、C1-9アルキルカルボニルオキシ基、C1-12アリールオキシカルボニル基、C1-12アリールカルボニルオキシ基およびその置換誘導体、C1-12アリールカルバモイル基、ならびに、C1-12アリールカルボニルアミノ基およびその置換誘導体からなる群から選択され、複数の場合、それぞれ同一であるかまたは異なる。前記A'は、例えば、ハロゲン、C1-3アルキル基、C1-3ハロゲン化アルキル基、フェニル基および置換フェニル基からなる群から選択され、複数の場合、それぞれ同一であるかまたは異なる。前記置換フェニル基のフェニル環上の置換基としては、例えば、ハロゲン、C1-3アルキル基、C1-3ハロゲン化アルキル基およびこれらの組み合わせがあげられる。前記tは、0から4までの整数であり、前記zは、0から3までの整数である。
前記式(22)で表されるポリアミドまたはポリエステルの繰り返し単位の中でも、下記一般式(23)で表されるものが好ましい。
前記式(23)中、A、A'およびYは、前記式(22)で定義したものであり、vは0から3の整数、好ましくは、0から2の整数である。xおよびyは、それぞれ0または1であるが、共に0であることはない。
つぎに、本発明の積層位相差板は、例えば、以下のようにして製造できる。
まず、前記光学異方層(A)を準備する。この光学異方層(A)は、前述のように、面内位相差[Re(A)]が20〜300nmであり、厚み方向位相差[Rth(A)]と前記面内位相差[Re(A)]との比[Rth(A)/Re(A)]が1.0以上であればよい。このようなポリマー製のフィルムとしては、前述のように未延伸フィルムでも、延伸フィルムであってもよい。前記延伸フィルムとしては、例えば、押し出し成型や流延製膜によって形成したポリマーフィルムを延伸することによって得られる。前記延伸フィルムは、一軸延伸フィルムでも二軸延伸フィルムでもよい。
前記延伸方法も特に制限されず、例えば、ロール法縦延伸等の一軸延伸、テンター横延伸等の二軸延伸等、従来公知の延伸方法があげられる。前記ロール法縦延伸は、例えば、加熱ロールを使用する方法であっても、雰囲気を加熱条件下とする方法のいずれでもよいし、これらを併用してもよい。また、二軸延伸としては、例えば、全テンター方式による同時二軸延伸、ロールテンター法による逐次二軸延伸等があげられる。また、延伸倍率は、特に制限されず、例えば、延伸方法や、形成材料等によって適宜決定できる。前記光学異方層(A)の特性としては、表面平滑性、複屈折の均一性、透明性、耐熱性に優れるものが好ましい。
延伸前のポリマーフィルムの厚みは、通常、10〜800μmであり、好ましくは10〜700μmである。そして、延伸後のポリマーフィルム、すなわち光学異方層(A)の厚みは、前述のとおりである。
一方、前記光学異方層(B)は、前記面内位相差[Re(B)]が3nm以上、前記厚み方向位相差と前記面内位相差との比[Rth(B)/Re(B)]が1.0以上であれば、特に制限されないが、例えば、以下のようにして調製することができる。
前記光学異方層(B)は、例えば、基板上に、前記非液晶性ポリマーを塗工して塗工膜を形成し、前記塗工膜における前記非液晶性ポリマーを固化させることによって、前記基板上に形成できる。ポリイミドのような前記非液晶ポリマーは、その性質上、前記基板の配向の有無に関わらず、nx>nz、ny>nz(nx≒ny>nz)の光学特性を示す。このため、光学的一軸性、つまり、厚み方向にのみ位相差を示す光学異方層が形成できるのである。なお、前記光学異方層(B)は、前記基材から剥離して使用してもよいし、基材上に形成した状態で使用してもよい。
この際に前記基材として、前記光学異方層(A)を使用することが好ましい。この光学異方層(A)を基材として、その上に前記非液晶性ポリマーを直接塗工すれば、光学異方層(A)と(B)とを粘着剤や接着剤等によって積層することが不要となるため、積層数が軽減され、より一層薄型化を図ることができるからである。
また、前述のように、前記非液晶ポリマーは光学的一軸性を示す性質を有することから、基材の配向性を利用する必要がない。このため、前記基材としては、配向性基板、非配向性基板の両方が使用できる。また、例えば、複屈折による位相差を生じるものでもよいし、複屈折による位相差を生じないものでもよい。前記複屈折による位相差を生じる透明基板としては、例えば、延伸フィルム等があげられ、厚み方向の屈折率が制御されたもの等も使用できる。前記屈折率の制御は、例えば、ポリマーフィルムを熱収縮性フィルムと接着し、さらに加熱延伸する方法等によって行うことができる。
前記基材上に、前記非液晶性ポリマーを塗工する方法としては、特に限定されないが、例えば、前述のような非液晶性ポリマーを加熱溶融して塗工する方法や、前記非液晶ポリマーを溶媒に溶解させたポリマー溶液を塗工する方法等があげられる。その中でも、作業性に優れることから、前記ポリマー溶液を塗工する方法が好ましい。
前記ポリマー溶液におけるポリマー濃度は、特に制限されないが、例えば、塗工が容易な粘度となることから、溶媒100重量部に対して、例えば、前記非液晶性ポリマー5〜50重量部であることが好ましく、より好ましくは10〜40重量部である。
前記ポリマー溶液の溶媒としては、前記非液晶性ポリマー等の形成材料を溶解できれば特に制限されず、前記形成材料の種類に応じて適宜決定できる。具体例としては、例えば、クロロホルム、ジクロロメタン、四塩化炭素、ジクロロエタン、テトラクロロエタン、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン、クロロベンゼン、オルソジクロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素類;フェノール、バラクロロフェノール等のフェノール類;ベンゼン、トルエン、キシレン、メトキシベンゼン、1,2-ジメトキシベンゼン等の芳香族炭化水素類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、2-ピロリドン、N-メチル-2-ピロリドン等のケトン系溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶媒;t-ブチルアルコール、グリセリン、エチレングリコール、トリエチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、2-メチル-2,4-ペンタンジオールのようなアルコール系溶媒;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドのようなアミド系溶媒;アセトニトリル、ブチロニトリルのようなニトリル系溶媒;ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、テトラヒドロフランのようなエーテル系溶媒;あるいは二硫化炭素、エチルセルソルブ、ブチルセルソルブ等があげられる。これらの溶媒は、一種類でもよいし、二種類以上を併用してもよい。
前記ポリマー溶液は、例えば、必要に応じて、さらに、安定剤、可塑剤、金属類等の種々の添加剤を配合してもよい。
また、前記ポリマー溶液は、例えば、前記形成材料の配向性等が著しく低下しない範囲で、異なる他の樹脂を含有してもよい。前記他の樹脂としては、例えば、各種汎用樹脂、エンジニアリングプラスチック、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂等があげられる。
前記汎用樹脂としては、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ABS樹脂、およびAS樹脂等があげられる。前記エンジニアリングプラスチックとしては、例えば、ポリアセテート(POM)、ポリカーボネート(PC)、ポリアミド(PA:ナイロン)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、およびポリブチレンテレフタレート(PBT)等があげられる。前記熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリケトン(PK)、ポリイミド(PI)、ポリシクロヘキサンジメタノールテレフタレート(PCT)、ポリアリレート(PAR)、および液晶ポリマー(LCP)等があげられる。前記熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、フェノールノボラック樹脂等があげられる。
このように、前記他の樹脂等を前記ポリマー溶液に配合する場合、その配合量は、例えば、前記ポリマー材料に対して、例えば、0〜50質量%であり、好ましくは、0〜30質量%である。
前記ポリマー溶液の塗工方法としては、例えば、スピンコート法、ロールコート法、フローコート法、プリント法、ディップコート法、流延成膜法、バーコート法、グラビア印刷法等があげられる。また、塗工に際しては、必要に応じて、ポリマー層の重畳方式も採用できる。
前記塗工膜を形成する非液晶性ポリマーの固化は、例えば、前記塗工膜を乾燥することによって行うことができる。前記乾燥の方法としては、特に制限されず、例えば、自然乾燥や加熱乾燥があげられる。その条件も、例えば、前記非液晶性ポリマーの種類や、前記溶媒の種類等に応じて適宜決定できるが、例えば、温度は、通常、40℃〜300℃であり、好ましくは50℃〜250℃であり、さらに好ましくは60℃〜200℃である。なお、塗工膜の乾燥は、一定温度で行っても良いし、段階的に温度を上昇または下降させながら行っても良い。乾燥時間も特に制限されないが、通常、10秒〜30分、好ましくは30秒〜25分、さらに好ましくは1分〜20分以下である。
なお、前記光学異方層(B)中に残存する前記ポリマー溶液の溶媒は、その量に比例して積層位相差板の光学特性を経時的に変化させるおそれがあるため、その残存量は、例えば、5%以下が好ましく、より好ましくは2%以下であり、さらに好ましくは0.2%以下である。
また、前記基材として、面内において一方向に収縮性を示す基材を使用することによって、光学的二軸性、つまりnx>ny>nzを示す光学異方層(B)を調製することもできる。具体的に説明すると、例えば、前述と同様にして、前記収縮性を有する基材上に、直接、前記非液晶性ポリマーを塗工して塗工膜を形成した後、前記基板を収縮させる。前記基材が収縮すれば、これに伴って前記基材上の塗工膜も共に面方向において収縮するため、前記塗工膜は、さらに面内において屈折差が生じ、光学的二軸性(nx>ny>nz)を示すようになるのである。そして、この塗工膜を形成する非液晶性ポリマーを固化することによって、前記二軸性の光学異方層(B)が形成されるのである。
前記基材は、面内において一方向に収縮性を持たせるため、例えば、面内のいずれか一方向において、延伸しておくことが好ましい。このように、予め延伸しておくことによって、前記延伸方向と反対方向に収縮力が発生する。この基材の面内の収縮差を利用して、塗工膜の非液晶性ポリマーに面内の屈折率差を付与するのである。延伸前の前記基材の厚みは、特に制限されないが、例えば、10〜200μmの範囲であり、好ましくは20〜150μmの範囲であり、特に好ましくは30〜100μmの範囲である。そして、延伸倍率に関しては特に限定されない。
前記基材の収縮は、例えば、前述と同様にして前記基材上に塗工膜を形成した後、加熱処理を施すことによって行うことができる。前記加熱処理の条件としては、特に制限されず、例えば、基材の材料の種類等によって適宜決定できるが、例えば、加熱温度は、25〜300℃の範囲であり、好ましくは50〜200℃の範囲であり、特に好ましくは60〜180℃の範囲である。前記収縮の程度は特に制限されないが、収縮前の基材の長さを100%として、例えば、0を越え10%以下の収縮割合があげられる。
一方、前述と同様に基材上に塗工膜を形成し、前記透明基板と前記塗工膜とを共に延伸することによって、光学的二軸性、つまりnx>ny>nzを示す光学異方層(B)を基材上に形成することもできる。この方法によれば、前記基材と前記塗工膜との積層体を、面内の一方向に共に延伸することによって、前記塗工膜は、さらに面内において屈折差を生じ、光学的二軸性(nx>ny>nz)を示すようになるのである。
前記基材と塗工膜との積層体の延伸方法は、特に制限されないが、例えば、長手方向に一軸延伸する自由端縦延伸、フィルムの長手方向を固定した状態で、幅方向に一軸延伸する固定端横延伸、長手方向および幅方向の両方に延伸を行う逐次または同時二軸延伸等の方法があげられる。
そして、前記積層体の延伸は、例えば、前記基材と前記塗工膜との両方を共に引っ張ることによって行ってもよいが、例えば、以下の理由から、前記基材のみを延伸することが好ましい。前記基材のみを延伸した場合、この延伸により前記基材に発生する張力によって、前記基材上の前記塗工膜が間接的に延伸される。そして、積層体を延伸するよりも、単層体を延伸する方が、通常、均一な延伸となるため、前述のように透明基板のみを均一に延伸すれば、これに伴って、前記基材上の前記塗工膜も均一に延伸できるためである。
延伸の条件としては、特に制限されず、例えば、基材や前記非液晶性ポリマーの種類等に応じて適宜決定できる。また、延伸時の加熱温度は、例えば、前記基材や非液晶性ポリマーの種類、それらのガラス転移点(Tg)、添加物の種類等に応じて適宜決定できるが、例えば、80〜250℃であり、好ましくは120〜220℃、特に好ましくは140〜200℃である。特に前記基材の材料のTg付近またはそれ以上の温度であることが好ましい。
以上のようにして得られた光学異方層(A)と光学異方層(B)を、例えば、粘着剤や接着剤を介して積層することによって、本発明の積層位相差板を形成することができる。また、基材(第1の基材)上に形成した前記光学異方層(B)を、前記光学異方層(A)に粘着剤等を介して接着し、その後、前記第1の基材を剥離してもよい。
前記接着剤または粘着剤としては、特に制限されず、例えば、アクリル系、シリコーン系、ポリエステル系、ポリウレタン系、ポリエーテル系、ゴム系等の透明な感圧接着剤や粘着剤等、従来公知のものが使用できる。これらの中でも、積層位相差体の光学特性の変化を防止する点から、硬化や乾燥の際に高温のプロセスを要しないものが好ましく、具体的には、長時間の硬化処理や乾燥時間を要しないアクリル系粘着剤が望ましい。
また、このような接着方法には限られず、例えば、前述のように、光学異方層(B)を形成するための基材として光学異方層(A)を使用し、この上に直接光学異方層(B)を形成することによって、前記両者を直接積層し、本発明の積層位相差板を形成してもよい。このような形態であれば、例えば、粘着剤層や接着剤層が不要になるため積層数を軽減でき、より一層の薄型化が実現できるからである。また、光学異方層(A)を基材として、前述のように光学異方層(B)を直接積層し、この積層体を、前述と同様にさらに延伸したり、前記光学異方層(A)を収縮させて、この収縮によって前記光学異方層(B)を収縮させてもよい。
本発明の積層位相差板は、さらに、その最外層に、粘着剤層または接着剤層を有することが好ましい。これによって、本発明の積層位相差板と、他の光学層や液晶セル等の他部材との接着が容易になるとともに、本発明の積層位相差板の剥離を防止することができるからである。なお、前記粘着剤は、積層位相差板の一方の最外層でもよいし、両方の最外層に積層されてもよい。
前記粘着層の材料としては、特に制限されず、アクリル系ポリマー等の従来公知の材料が使用でき、特に、吸湿による発泡や剥離の防止、熱膨張差等による光学特性の低下や、液晶セルに使用した際の液晶セルの反り防止、ひいては高品質で耐久性に優れる液晶表示装置の形成性等の点より、例えば、吸湿率が低くて耐熱性に優れる粘着層となることが好ましい。また、微粒子を含有して光拡散性を示す粘着層等でもよい。前記積層位相差板表面への前記粘着剤層の形成は、例えば、各種粘着材料の溶液または溶融液を、流延や塗工等の展開方式により、前記偏光板の所定の面に直接添加して層を形成する方式や、同様にして後述するライナー上に粘着剤層を形成させて、それを前記積層位相差板の所定面に移着する方式等によって行うことができる。
このように積層位相差板に設けた粘着剤層等の表面が露出する場合は、前記粘着層を実用に供するまでの間、汚染防止等を目的として、ライナーによって前記表面をカバーすることが好ましい。このライナーは、透明フィルム等のような適当なフィルムに、必要に応じて、シリコーン系、長鎖アルキル系、フッ素系、硫化モリブデン等の剥離剤による剥離コートを一層以上設ける方法等によって形成できる。
前記粘着剤層等は、例えば、単層体でもよいし、積層体でもよい。前記積層体としては、例えば、異なる組成や異なる種類の単層を組合せた積層体を使用することもできる。また、前記積層位相差板の両面に配置する場合は、例えば、それぞれ同じ粘着剤層でもよいし、異なる組成や異なる種類の粘着剤層であってもよい。
前記粘着剤層の厚みは、例えば、偏光板の構成等に応じて適宜に決定でき、一般には、1〜500μmである。
前記粘着剤層を形成する粘着剤としては、例えば、光学的透明性に優れ、適度な濡れ性、凝集性や接着性の粘着特性を示すものが好ましい。具体的な例としては、アクリル系ポリマーやシリコーン系ポリマー、ポリエステル、ポリウレタン、ポリエーテル、合成ゴム等のポリマーを適宜ベースポリマーとして調製された粘着剤等があげられる。
前記粘着剤層の粘着特性の制御は、例えば、前記粘着剤層を形成するベースポリマーの組成や分子量、架橋方式、架橋性官能基の含有割合、架橋剤の配合割合等によって、その架橋度や分子量を調節するというような、従来公知の方法によって適宜行うことができる。
本発明の積層位相差板は、前述のように、単独で使用してもよいし、必要に応じて他の光学部材と組合せて積層体として、各種光学用途に供することができる。具体的には、光学補償用部材として有用である。前記他の光学部材としては、特に制限されないが、例えば、以下に示す偏光子等があげられる。
本発明の積層位相差板は、例えば、光学フィルムと偏光子とを含む積層偏光板において、前記光学フィルムとして使用することができる。
このような偏光板の構成は、前記本発明の積層位相差板を有していれば、特に制限されないが、例えば、以下に示すようなものが例示できる。なお、前記積層偏光板は、本発明の積層位相差板と偏光子とを有していれば、以下の構成に限定されるものではなく、さらに他の光学部材等を含んでいてもよいし、他の構成要件が省略されてもよい。
前記積層偏光板の一例としては、例えば、前記本発明の積層位相差板、偏光子および二つの透明保護層を有しており、前記偏光子の両面に透明保護層が、接着層を介してそれぞれ積層されており、一方の透明保護層に、接着層を介して、さらに前記積層位相差板が積層されている形態があげられる。なお、積層位相差板は、前述のように光学異方層(A)と光学異方層(B)との積層体であるが、いずれの表面が透明保護層に面してもよい。
なお、透明保護層は、前述のように偏光子の両側に積層してもよいし、いずれか一方の面のみに積層してもよい。また、両面に積層する場合には、例えば、同じ種類の透明保護層を使用しても、異なる種類の透明保護層を使用してもよい。また、各層の接着方法は、特に制限されず、接着層として、粘着剤や接着剤を使用してもよいし、直接積層が可能な場合は、前記接着層を介さなくてもよい。
また、積層偏光板のその他の例としては、前記本発明の積層位相差板、偏光子および透明保護層を有し、偏光子の一方の面に接着層を介して透明保護層が積層され、前記偏光子の他方の面に接着層を介して、前記積層位相差板が積層されている。
そして、積層位相差板は、光学異方層(A)と光学異方層(B)とが接着層を介して積層した積層体であるため、いずれの表面が偏光子に面してもよいが、例えば、以下のような理由から、積層位相差板の光学異方層(A)側が、偏光子に面するように配置されることが好ましい。このような構成であれば、積層位相差板の光学異方層(A)を、積層偏光板における透明保護層として兼用できるからである。すなわち、偏光子の両面に透明保護層を積層する代わりに、前記偏光子の一方の面には透明保護層を積層し、他方の面には、光学異方層(A)が面するように積層位相差板を積層することによって、前記光学異方層(A)が、偏光子の他方の透明保護層の役割も果たすのである。このため、より一層薄型化された偏光板を得ることができる。
前記偏光子としては、特に制限されず、例えば、従来公知の方法により、各種フィルムに、ヨウ素や二色性染料等の二色性物質を吸着させて染色し、架橋、延伸、乾燥することによって調製したもの等が使用できる。この中でも、自然光を入射させると直線偏光を透過するフィルムが好ましく、光透過率や偏光度に優れるものが好ましい。前記二色性物質を吸着させる各種フィルムとしては、例えば、ポリビニルアルコール(PVA)系フィルム、部分ホルマール化PVA系フィルム、エチレン・酢酸ビニル共重合体系部分ケン化フィルム、セルロース系フィルム等の親水性高分子フィルム等があげられ、これらの他にも、例えば、PVAの脱水処理物やポリ塩化ビニルの脱塩酸処理物等のポリエン配向フィルム等も使用できる。これらの中でも、好ましくはPVA系フィルムである。また、前記偏光フィルムの厚みは、通常、1〜80μmの範囲であるが、これには限定されない。
前記保護層としては、特に制限されず、従来公知の透明フィルムを使用できるが、例えば、透明性、機械的強度、熱安定性、水分遮断性、等方性などに優れるものが好ましい。このような透明保護層の材質の具体例としては、トリアセチルセルロール等のセルロース系樹脂や、ポリエステル系、ポリカーボネート系、ポリアミド系、ポリイミド系、ポリエーテルスルホン系、ポリスルホン系、ポリスチレン系、ポリノルボルネン系、ポリオレフィン系、アクリル系、アセテート系等の透明樹脂等があげられる。また、前記アクリル系、ウレタン系、アクリルウレタン系、エポキシ系、シリコーン系等の熱硬化型樹脂または紫外線硬化型樹脂等もあげられる。この中でも、偏光特性や耐久性の点から、表面をアルカリ等でケン化処理したTACフィルムが好ましい。
また、特開2001-343529号公報(WO01/37007)に記載のポリマーフィルムがあげられる。このポリマー材料としては、例えば、側鎖に置換または非置換のイミド基を有する熱可塑性樹脂と、側鎖に置換または非置換のフェニル基ならびにニトリル基を有す熱可塑性樹脂を含有する樹脂組成物が使用でき、例えば、イソブテンとN-メチレンマレイミドからなる交互共重合体と、アクリロニトリル・スチレン共重合体とを有する樹脂組成物があげられる。なお、前記ポリマーフィルムは、例えば、前記樹脂組成物の押出成形物であってもよい。
また、前記保護層は、例えば、色付きが無いことが好ましい。具体的には、下記式で表されるフィルム厚み方向の位相差値(Rth)が、−90nm〜+75nmの範囲であることが好ましく、より好ましくは−80nm〜+60nmであり、特に好ましくは−70nm〜+45nmの範囲である。前記位相差値が−90nm〜+75nmの範囲であれば、十分に保護フィルムに起因する偏光板の着色(光学的な着色)を解消できる。なお、下記式において、nx,ny,nzは、前述と同様であり、dは、その膜厚を示す。
Rth=[[(nx+ny)/2]-nz]・d
また、前記透明保護層は、さらに光学補償機能を有するものでもよい。このように光学補償機能を有する透明保護層としては、例えば、液晶セルにおける位相差に基づく視認角の変化が原因である、着色等の防止や、良視認の視野角の拡大等を目的とした公知のものが使用できる。具体的には、例えば、前述した透明樹脂を一軸延伸または二軸延伸した各種延伸フィルムや、液晶ポリマー等の配向フィルム、透明基材上に液晶ポリマー等の配向層を配置した積層体等があげられる。これらの中でも、良視認の広い視野角を達成できることから、前記液晶ポリマーの配向フィルムが好ましく、特に、ディスコティック系やネマチック系の液晶ポリマーの傾斜配向層から構成される光学補償層を、前述のトリアセチルセルロースフィルム等で支持した光学補償位相差板が好ましい。このような光学補償位相差板としては、例えば、富士写真フィルム株式会社製「WVフィルム」等の市販品があげられる。なお、前記光学補償位相差板は、前記位相差フィルムやトリアセチルセルロースフィルム等のフィルム支持体を2層以上積層させることによって、位相差等の光学特性を制御したもの等でもよい。
前記透明保護層の厚みは、特に制限されず、例えば、位相差や保護強度等に応じて適宜決定できるが、通常、500μm以下であり、好ましくは5〜300μl、より好ましくは5〜150μmの範囲である
前記透明保護層は、例えば、偏光フィルムに前記各種透明樹脂を塗布する方法、前記偏光フィルムに前記透明樹脂製フィルムや前記光学補償位相差板等を積層する方法等の従来公知の方法によって適宜形成でき、また市販品を使用することもできる。
また、前記透明保護層は、さらに、例えば、ハードコート処理、反射防止処理、スティッキングの防止や拡散、アンチグレア等を目的とした処理等が施されたものでもよい。前記ハードコート処理とは、偏光板表面の傷付き防止等を目的とし、例えば、前記透明保護層の表面に、硬化型樹脂から構成される、硬度や滑り性に優れた硬化被膜を形成する処理である。前記硬化型樹脂としては、例えば、シリコーン系、ウレタン系、アクリル系、エポキシ系等の紫外線硬化型樹脂等が使用でき、前記処理は、従来公知の方法によって行うことができる。スティッキングの防止は、隣接する層との密着防止を目的とする。前記反射防止処理とは、偏光板表面での外光の反射防止を目的とし、従来公知の反射防止層等の形成により行うことができる。
前記アンチグレア処理とは、偏光板表面において外光が反射することによる、偏光板透過光の視認妨害を防止すること等を目的とし、例えば、従来公知の方法によって、前記透明保護層の表面に、微細な凹凸構造を形成することによって行うことができる。このような凹凸構造の形成方法としては、例えば、サンドブラスト法やエンボス加工等による粗面化方式や、前述のような透明樹脂に透明微粒子を配合して前記透明保護層を形成する方式等があげられる。
前記透明微粒子としては、例えば、シリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、酸化錫、酸化インジウム、酸化カドミウム、酸化アンチモン等があげられ、この他にも導電性を有する無機系微粒子や、架橋または未架橋のポリマー粒状物等から構成される有機系微粒子等を使用することもできる。前記透明微粒子の平均粒径は、特に制限されないが、例えば、0.5〜20μmの範囲である。また、前記透明微粒子の配合割合は、特に制限されないが、一般に、前述のような透明樹脂100質量部あたり2〜70質量部の範囲が好ましく、より好ましくは5〜50質量部の範囲である。
前記透明微粒子を配合したアンチグレア層は、例えば、透明保護層そのものとして使用することもでき、また、透明保護層表面に塗工層等として形成されてもよい。さらに、前記アンチグレア層は、偏光板透過光を拡散して視角を拡大するための拡散層(視覚補償機能等)を兼ねるものであってもよい。
なお、前記反射防止層、スティッキング防止層、拡散層、アンチグレア層等は、前記透明保護層とは別個に、例えば、これらの層を設けたシート等から構成される光学層として、偏光板に積層してもよい。
各構成物同士(光学異方層(A)、光学異方層(B)、積層位相差板、偏光子、透明保護層等)の積層方法は、特に制限されず、従来公知の方法によって行うことができる。一般には、前述と同様の粘着剤や接着剤等が使用でき、その種類は、前記各構成物の材質等によって適宜決定できる。前記接着剤としては、例えば、アクリル系、ビニルアルコール系、シリコーン系、ポリエステル系、ポリウレタン系、ポリエーテル系等のポリマー製接着剤や、ゴム系接着剤等があげられる。前述のような粘着剤、接着剤は、例えば、湿度や熱の影響によっても剥がれ難く、光透過率や偏光度にも優れる。具体的には、前記偏光子がPVA系フィルムの場合、例えば、接着処理の安定性等の点から、PVA系接着剤が好ましい。これらの接着剤や粘着剤は、例えば、そのまま偏光子や透明保護層の表面に塗布してもよいし、前記接着剤や粘着剤から構成されたテープやシートのような層を前記表面に配置してもよい。また、例えば、水溶液として調製した場合、必要に応じて、他の添加剤や、酸等の触媒を配合してもよい。なお、前記接着剤を塗布する場合は、例えば、前記接着剤水溶液に、さらに、他の添加剤や、酸等の触媒を配合してもよい。このような接着層の厚みは、特に制限されないが、例えば、1nm〜500nmであり、好ましくは10nm〜300nmであり、より好ましくは20nm〜100nmである。特に限定されず、例えば、アクリル系ポリマーやビニルアルコール系ポリマー等の接着剤等を使用した従来公知の方法が採用できる。また、湿度や熱等によっても剥がれにくく、光透過率や偏光度に優れる偏光板を形成できることから、さらに、グルタルアルデヒド、メラミン、シュウ酸等のPVA系ポリマーの水溶性架橋剤を含む接着剤が好ましい。これらの接着剤は、例えば、その水溶液を前記各構成物表面に塗工し、乾燥すること等によって使用できる。前記水溶液には、例えば、必要に応じて、他の添加剤や、酸等の触媒も配合できる。これらの中でも、前記接着剤としては、PVAフィルムとの接着性に優れる点から、PVA系接着剤が好ましい。
また、本発明の積層位相差板は、前述のような偏光子の他にも、例えば、さらにその他の各種位相差板、拡散制御フィルム、輝度向上フィルム等、従来公知の光学部材と組合せて使用することもできる。前記位相差板としては、例えば、ポリマーフィルムを一軸延伸または二軸延伸したもの、Z軸配向処理したもの、液晶性高分子の塗工膜等があげられる。前記拡散制御フィルムとしては、例えば、拡散、散乱、屈折を利用したフィルムがあげられ、これらは、例えば、視野角の制御や、解像度に関わるギラツキや散乱光の制御等に使用することができる。前記輝度向上フィルムとしては、例えば、コレステリック液晶の選択反射と1/4波長板(λ/4板)とを用いた輝度向上フィルムや、偏光方向による異方性散乱を利用した散乱フィルム等が使用できる。また、前記光学フィルムは、例えば、ワイヤーグリッド型偏光子と組合せることもできる。
前記積層偏光板は、実用に際して、前記本発明の積層位相差板および偏光子の他に、さらに他の光学層を含んでもよい。前記光学層としては、例えば、以下に示すような偏光板、反射板、半透過反射板、輝度向上フィルム等、液晶表示装置等の形成に使用される、従来公知の各種光学層があげられる。これらの光学層は、一種類でもよいし、二種類以上を併用してもよく、また、一層でもよいし、二層以上を積層してもよい。このような光学層をさらに含む積層偏光板は、例えば、光学補償機能を有する一体型偏光板として使用することが好ましく、例えば、液晶セル表面に配置する等、各種画像表示装置への使用に適している。
以下に、このような一体型偏光板について説明する。
まず、反射型偏光板または半透過反射型偏光板の一例について説明する。前記反射型偏光板は、本発明の積層偏光板にさらに反射板が、前記半透過反射型偏光板は、本発明の積層偏光板にさらに半透過反射板が、それぞれ積層されている。
前記反射型偏光板は、通常、液晶セルの裏側に配置され、視認側(表示側)からの入射光を反射させて表示するタイプの液晶表示装置(反射型液晶表示装置)等に使用できる。このような反射型偏光板は、例えば、バックライト等の光源の内蔵を省略できるため、液晶表示装置の薄型化を可能にする等の利点を有する。
前記反射型偏光板は、例えば、前記弾性率を示す偏光板の片面に、金属等から構成される反射板を形成する方法等、従来公知の方法によって作製できる。具体的には、例えば、前記偏光板における透明保護層の片面(露出面)を、必要に応じてマット処理し、前記面に、アルミニウム等の反射性金属からなる金属箔や蒸着膜を反射板として形成した反射型偏光板等があげられる。
また、前述のように各種透明樹脂に微粒子を含有させて表面を微細凹凸構造とした透明保護層の上に、その微細凹凸構造を反映させた反射板を形成した、反射型偏光板等もあげられる。その表面が微細凹凸構造である反射板は、例えば、入射光を乱反射により拡散させ、指向性やギラギラした見栄えを防止し、明暗のムラを抑制できるという利点を有する。このような反射板は、例えば、前記透明保護層の凹凸表面に、真空蒸着方式、イオンプレーティング方式、スパッタリング方式等の蒸着方式やメッキ方式等、従来公知の方法により、直接、前記金属箔や金属蒸着膜として形成することができる。
また、前述のように偏光板の透明保護層に前記反射板を直接形成する方式に代えて、反射板として、前記透明保護フィルムのような適当なフィルムに反射層を設けた反射シート等を使用してもよい。前記反射板における前記反射層は、通常、金属から構成されるため、例えば、酸化による反射率の低下防止、ひいては初期反射率の長期持続や、透明保護層の別途形成を回避する点等から、その使用形態は、前記反射層の反射面が前記フィルムや偏光板等で被覆された状態であることが好ましい。
一方、前記半透過型偏光板は、前記反射型偏光板において、反射板に代えて、半透過型の反射板を有するものである。前記半透過型反射板としては、例えば、反射層で光を反射し、かつ、光を透過するハーフミラー等があげられる。
前記半透過型偏光板は、通常、液晶セルの裏側に設けられ、液晶表示装置等を比較的明るい雰囲気で使用する場合には、視認側(表示側)からの入射光を反射して画像を表示し、比較的暗い雰囲気においては、半透過型偏光板のバックサイドに内蔵されているバックライト等の内蔵光源を使用して画像を表示するタイプの液晶表示装置等に使用できる。すなわち、前記半透過型偏光板は、明るい雰囲気下では、バックライト等の光源使用のエネルギーを節約でき、一方、比較的暗い雰囲気下においても、前記内蔵光源を用いて使用できるタイプの液晶表示装置等の形成に有用である。
つぎに、前記積層偏光板に、さらに輝度向上フィルムが積層された偏光板の一例を説明する。
前記輝度向上フィルムとしては、特に限定されず、例えば、誘電体の多層薄膜や、屈折率異方性が相違する薄膜フィルムの多層積層体のような、所定偏光軸の直線偏光を透過して、他の光は反射する特性を示すもの等が使用できる。このような輝度向上フィルムとしては、例えば、3M社製の商品名「D-BEF」等があげられる。また、コレステリック液晶層、特にコレステリック液晶ポリマーの配向フィルムや、その配向液晶層をフィルム基材上に支持したもの等が使用できる。これらは、左右一方の円偏光を反射して、他の光は透過する特性を示すものであり、例えば、日東電工社製の商品名「PCF350」、Merck社製の商品名「Transmax」等があげられる。
以上のような各種積層偏光板は、例えば、さらに他の光学層が積層された光学部材であってもよい。
このように2層以上の光学層を積層した光学部材は、例えば、液晶表示装置等の製造過程において、順次別個に積層する方式によっても形成できるが、予め積層した光学部材として使用すれば、例えば、品質の安定性や組立作業性等に優れ、液晶表示装置等の製造効率を向上できるという利点がある。なお、積層には、前述と同様に、粘着層等の各種接着手段を用いることができる。
前述のような各種偏光板は、例えば、液晶セル等の他の部材への積層が容易になることから、さらに粘着剤層や接着剤層を有していることが好ましく、これらは、前記偏光板の片面または両面に配置することができる。前記粘着層の材料としては、特に制限されず、アクリル系ポリマー等の従来公知の材料が使用でき、特に、吸湿による発泡や剥離の防止、熱膨張差等による光学特性の低下や液晶セルの反り防止、ひいては高品質で耐久性に優れる液晶表示装置の形成性等の点より、例えば、吸湿率が低くて耐熱性に優れる粘着層となることが好ましい。また、微粒子を含有して光拡散性を示す粘着層等でもよい。前記偏光板表面への前記粘着剤層の形成は、例えば、各種粘着材料の溶液または溶融液を、流延や塗工等の展開方式により、前記偏光板の所定の面に直接添加して層を形成する方式や、同様にして後述するセパレータ上に粘着剤層を形成させて、それを前記偏光板の所定面に移着する方式等によって行うことができる。なお、このような層は、偏光板のいずれの表面に形成してもよく、例えば、偏光板における前記位相差板の露出面に形成してもよい。
このように偏光板に設けた粘着剤層等の表面が露出する場合は、前記粘着層を実用に供するまでの間、汚染防止等を目的として、セパレータによって前記表面をカバーすることが好ましい。このセパレータは、前記透明保護フィルム等のような適当なフィルムに、必要に応じて、シリコーン系、長鎖アルキル系、フッ素系、硫化モリブデン等の剥離剤による剥離コートを一層以上設ける方法等によって形成できる。
前記粘着剤層等は、例えば、単層体でもよいし、積層体でもよい。前記積層体としては、例えば、異なる組成や異なる種類の単層を組合せた積層体を使用することもできる。また、前記偏光板の両面に配置する場合は、例えば、それぞれ同じ粘着剤層でもよいし、異なる組成や異なる種類の粘着剤層であってもよい。
前記粘着剤層の厚みは、例えば、偏光板の構成等に応じて適宜に決定でき、一般には、1〜500μmである。
前記粘着剤層を形成する粘着剤としては、例えば、光学的透明性に優れ、適度な濡れ性、凝集性や接着性の粘着特性を示すものが好ましい。具体的な例としては、アクリル系ポリマーやシリコーン系ポリマー、ポリエステル、ポリウレタン、ポリエーテル、合成ゴム等のポリマーを適宜ベースポリマーとして調製された粘着剤等があげられる。
前記粘着剤層の粘着特性の制御は、例えば、前記粘着剤層を形成するベースポリマーの組成や分子量、架橋方式、架橋性官能基の含有割合、架橋剤の配合割合等によって、その架橋度や分子量を調節するというような、従来公知の方法によって適宜行うことができる。
以上のような本発明の積層位相差板や偏光板、各種光学部材(光学層を積層した各種偏光板)を形成する偏光フィルム、透明保護層、光学層、粘着剤層等の各層は、例えば、サリチル酸エステル系化合物、ベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、シアノアクリレート系化合物、ニッケル錯塩系化合物等の紫外線吸収剤で適宜処理することによって、紫外線吸収能を持たせたものでもよい。
本発明の積層位相差板や、これを備える前記積層偏光板は、前述のように、液晶表示装置等の各種装置の形成に使用することが好ましく、例えば、本発明の積層位相差板や前記積層偏光板を液晶セルの片側または両側に配置して液晶パネルとし、反射型や半透過型、あるいは透過・反射両用型等の液晶表示装置に用いることができる。
液晶表示装置を形成する前記液晶セルの種類は、任意で選択でき、例えば、薄膜トランジスタ型に代表されるアクティブマトリクス駆動型のもの、ツイストネマチック型やスーパーツイストネマチック型に代表される単純マトリクス駆動型のもの等、種々のタイプの液晶セルが使用できる。これらの中でも、本発明の光学フィルムや偏光板は、特にVA(垂直配向;Vertical Aligned)セルの光学補償に非常に優れているので、VAモードの液晶表示装置用の視角補償フィルムとして非常に有用である。
また、前記液晶セルは、通常、対向する液晶セル基板の間隙に液晶が注入された構造であって、前記液晶セル基板としては、特に制限されず、例えば、ガラス基板やプラスチック基板が使用できる。なお、前記プラスチック基板の材質としては、特に制限されず、従来公知の材料があげられる。
また、液晶セルの両面に偏光板や光学部材を設ける場合、少なくとも一方の面に本発明の積層位相差板や積層偏光板を配置すればよく、それらは同じ種類のものでもよいし、異なっていてもよい。さらに、液晶表示装置の形成に際しては、例えば、プリズムアレイシートやレンズアレイシート、光拡散板やバックライト等の適当な部品を、適当な位置に1層または2層以上配置することができる。
さらに、本発明の液晶表示装置は、液晶パネルを含み、前記液晶パネルとして、本発明の液晶パネルを使用する以外は、特に制限されない。光源を含む場合、特に制限されないが、例えば、光のエネルギーが有効に使用できることから、例えば、偏光を出射する平面光源であることが好ましい。
本発明の液晶パネルの一例としては、例えば、液晶セル、本発明の積層位相差板、偏光子および透明保護層を有しており、液晶セルの一方の面に積層位相差板が積層されており、前記積層位相差板の他方の面に、偏光子および透明保護層が、この順序で積層されている。前記液晶セルは、二枚の液晶セル基板の間に、液晶が保持された構成となっている。また、積層位相差板は、前述のように光学異方層(A)と光学異方層(B)の積層体であり、いずれの面が偏光子に面してもよい。
本発明の液晶表示装置は、視認側の光学フィルム(積層偏光板)の上に、例えば、さらに拡散板、アンチグレア層、反射防止膜、保護層や保護板を配置したり、または液晶パネルにおける液晶セルと偏光板との間に補償用位相差板等を適宜配置することもできる。
なお、本発明の積層位相差板やこれを備える前記積層偏光板は、前述のような液晶表示装置には限定されず、例えば、有機エレクトロルミネッセンス(EL)ディスプレイ、PDP、FED等の自発光型表示装置にも使用できる。自発光型フラットディスプレイに使用する場合は、例えば、本発明の積層位相差板や前記積層偏光板の面内位相差値Δndをλ/4にすることで、円偏光を得ることができるため、反射防止フィルターとして利用できる。
以下に、本発明の積層位相差板や前記積層偏光板を備えるエレクトロルミネッセンス(EL)表示装置について説明する。本発明のEL表示装置は、本発明の積層位相差板またはこれを備える前記積層偏光板を有していればよく、有機ELおよび無機ELのいずれでもよい。
近年、EL表示装置においても、黒状態における電極からの反射防止として、例えば、偏光子や偏光板等の光学フィルムをλ/4板とともに使用することが提案されている。本発明の積層位相差板や積層偏光板は、特に、EL層から、直線偏光、円偏光もしくは楕円偏光のいずれかの偏光が発光されている場合、あるいは、正面方向に自然光を発光していても、斜め方向の出射光が部分偏光している場合等に、非常に有用である。
まずここで、一般的な有機EL表示装置について説明する。前記有機EL表示装置は、一般に、透明基板上に、透明電極、有機発光層および金属電極がこの順序で積層された発光体(有機EL発光体)を有している。前記有機発光層は、種々の有機薄膜の積層体であり、例えば、トリフェニルアミン誘導体等からなる正孔注入層とアントラセン等の蛍光性有機固体からなる発光層との積層体や、このような発光層とペリレン誘導体等からなる電子注入層との積層体や、また、前記正孔注入層と発光層と電子注入層との積層体等、種々の組み合わせがあげられる。
そして、このような有機EL表示装置は、前記陽極と陰極とに電圧を印加することによって、前記有機発光層に正孔と電子とが注入され、前記正孔と電子とが再結合することによって生じるエネルギーが、蛍光物質を励起し、励起された蛍光物質が基底状態に戻るときに光を放射する、という原理で発光する。前記正孔と電子との再結合というメカニズムは、一般のダイオードと同様であり、電流と発光強度とは、印加電圧に対して整流性を伴う強い非線形性を示す。
前記有機EL表示装置においては、前記有機発光層での発光を取り出すために、少なくとも一方の電極が透明であることが必要なため、通常、酸化インジウムスズ(ITO)等の透明導電体で形成された透明電極が陽極として使用される。一方、電子注入を容易にして発光効率を上げるには、陰極に、仕事関数の小さな物質を用いることが重要であり、通常、Mg−Ag、Al−Li等の金属電極が使用される。
このような構成の有機EL表示装置において、前記有機発光層は、例えば、厚み10nm程度の極めて薄い膜で形成されることが好ましい。これは、前記有機発光層においても、透明電極と同様に、光をほぼ完全に透過させるためである。その結果、非発光時に、前記透明基板の表面から入射して、前記透明電極と有機発光層とを透過して前記金属電極で反射した光が、再び前記透明基板の表面側へ出る。このため、外部から視認した際に、有機EL表示装置の表示面が鏡面のように見えるのである。
本発明の有機EL表示装置は、例えば、前記有機発光層の表面側に透明電極を備え、前記有機発光層の裏面側に金属電極を備えた前記有機EL発光体を含む有機EL表示装置において、前記透明電極の表面に、本発明の積層位相差板や前記積層偏光板が配置されることが好ましく、さらにλ/4板を偏光板とEL素子との間に配置することが好ましい。このように、本発明の積層位相差板や積層偏光板を配置することによって、外界の反射を抑え、視認性向上が可能であるという効果を示す有機EL表示装置となる。また、前記透明電極と光学フィルムとの間に、さらに位相差板が配置されることが好ましい。
前記位相差板および偏光板等は、例えば、外部から入射して前記金属電極で反射してきた光を偏光する作用を有するため、その偏光作用によって前記金属電極の鏡面を外部から視認させないという効果がある。特に、位相差板として1/4波長板を使用し、かつ、前記偏光板と前記位相差板との偏光方向のなす角をπ/4に調整すれば、前記金属電極の鏡面を完全に遮蔽することができる。すなわち、この有機EL表示装置に入射する外部光は、前記偏光板によって直線偏光成分のみが透過する。この直線偏光は、前記位相差板によって、一般に楕円偏光となるが、特に前記位相差板が1/4波長板であり、しかも前記角がπ/4の場合には、円偏光となる。
この円偏光は、例えば、透明基板、透明電極、有機薄膜を透過し、金属電極で反射して、再び、有機薄膜、透明電極、透明基板を透過して、前記位相差板で再び直線偏光となる。そして、この直線偏光は、前記偏光板の偏光方向と直交しているため、前記偏光板を透過できず、その結果、前述のように、金属電極の鏡面を完全に遮蔽することができるのである。
以下、実施例及び比較例を用いて本発明を更に具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、光学特性や厚みは、以下の方法で測定した。
(位相差値の測定)
平行ニコル回転法を原理とする位相差計(王子計測機器製商品名KOBRA−21ADH)を用いて測定した(測定波長610nm)。
(膜厚測定)
アンリツ製商品名デジタルマイクロメーターK−351C型を使用して測定した。
(実施例A−1)
厚み100μmのノルボルネンフィルムについて、175℃でテンター横延伸を行った。延伸倍率は、延伸方向における、延伸前の長さに対して、1.4倍として。これによって、厚み69μm、Re(A)=67nm、Rth(A)=136nmの光学異方層Aを得た。一方、2,2'−ビス(3,4−ジカルボキジフェニル)ヘキサフルオロプロパン)および2,2'−ビス(トリフルオロメチル)−4,4'−ジアミノビフェニルから合成されたポリイミド(重量平均分子量59,000)をシクロヘキサノンに溶解し、15重量%のポリイミド溶液を調製した。このポリイミド溶液を、二軸延伸した延伸PETフィルム上に塗工した後、前記塗工膜を乾燥し(温度150℃;時間5分)、前記延伸PETフィルム上に、厚み3μmの光学異方層(B)を形成した。この光学異方層(B)の光学特性は、Re(B)=3nm、Rth(B)=110nm、Rth(B)/Re(B)=32.7であった。そして、前記延伸PETフィルム上の光学異方層(B)と、光学異方層(A)とを、厚み15μmのアクリル系粘着剤を介して接着した後、前記延伸PETフィルムを剥離して、積層位相差板を得た。
(実施例A−2)
厚み70μmのポリエステルフィルムについて、160℃で縦延伸を行った。延伸倍率は、延伸方向における、延伸前の長さに対して、1.1倍として。これによって、厚み64μm、Re(A)=65nm、Rth(A)=70nm、Rth(A)/Re(A)=1.1の光学異方層(A)を得た。次に、この光学異方層(A)の上に、実施例A-1と同様にして調製したポリイミド溶液を直接塗工し、その塗工膜を乾燥させて(温度150℃;時間5分)、前記光学異方層(A)上に光学異方層(B)を形成し、積層位相差板を製造した。前記光学異方層(B)は、厚み5μmであって、その光学特性は、Re(B)=5nm、Rth(B)=180nm、Rth(B)/Re(B)=36.0であった。なお、光学異方層(B)の光学特性は、前記光学異方層(A)から剥離して測定した。
(実施例A−3)
実施例A−1と同様にして調製したポリイミド溶液を、厚み80μmのトリアセチルセルロース(TAC)フィルムに塗工し、温度180℃で時間5分乾燥させながら、テンター横延伸を行った。延伸倍率は、延伸方向において、延伸前の2.0倍とした。この延伸によって、前記延伸TACフィルム(光学異方層(A))上に、ポリイミド製の光学異方層(B)が形成され、積層位相差板が得られた。前記光学異方層(A)は、厚みが67μmであって、その光学特性は、Re(A)=30nm、Rth(A)=55nm、Rth(A)/Re(A)=1.8であった。また、前記光学異方層(B)は、厚みが5μmであって、その光学特性は、Re(B)=40nm、Rth(B)=198nm、Rth(B)/Re(B)=5であった。
(実施例A-4)
4,4'−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)−2,2−ジフェニルプロパン二無水物および2,2'−ジクロロ−4,4−ジアミノビフェニルから合成された重量平均分子量60,000のポリイミドをシクロペンタノンに溶解し、20重量%のポリイミド溶液を調製した。このポリイミド溶液を、厚み80μmのTACフィルムに塗工し、温度180℃で時間5分乾燥させながら、テンター横延伸を行った。延伸倍率は、延伸方向において、延伸前の1.1倍とした。この延伸によって、前記延伸TACフィルム(光学異方層(A))上に、ポリイミド製の光学異方層(B)が形成され、積層位相差板が得られた。前記光学異方層(A)は、厚みが74μmであって、その光学特性は、Re(A)=25nm、Rth(A)=50nm、Rth(A)/Re(A)=2であった。また、前記光学異方層(B)は、厚みが6μmであって、その光学特性は、Re(B)=38nm、Rth(B)=220nm、Rth(B)/Re(B)=44であった。
(比較例A−1)
厚み100μmのノルボルネンフィルムについて、175℃でテンター横延伸を行った。延伸倍率は、延伸方向における、延伸前の長さに対して、1.8倍とした。これによって、厚み88μm、Re(A)=252nm、Rth(A)=252nm、Rth(A)/Re(A)=1.0の光学異方層(A)を得た。一方、同様にして厚み100μmのノルボルネンフィルムを1.5倍に延伸して、厚み95μm、Re(B)=180nm、Rth(B)=181nm、Rth(B)/Re(B)=1.0の光学異方層(B)を得た。そして、前記光学異方層(A)に、厚み15μmのアクリル系粘着剤を塗布し、前記光学異方層(A)と光学異方層(B)のそれぞれの面内遅相軸が互いに直交するように貼り合わせた。これによって積層位相差板(nx>ny>nz)を製造した。
実施例A−1〜A−4、比較例1で得られた積層位相差板について、その厚み、面内位相差値(Re)および厚み方向位相差(Rth)の測定を行った。これらの結果を表1に示す。
前記表1に示すように、光学異方層(B)としてノルボルネンポリマーを使用した比較例A-1の積層位相差板では、実施例と同様の光学特性を得るためには、183μmもの厚みが必要となった。これに対して、光学異方層(B)としてポリイミドを使用した各実施例の積層位相差板によれば、十分な光学特性が得られただけでなく、比較例A-1の2分の1程度の薄型化が実現できた。
(実施例B)
本発明の積層位相差板を製造し、これを用いて、さらに図1〜図8に示す積層偏光板を製造した。なお、これらの図において、同一箇所には同一符号を付している。
(実施例B−1)
この実施例において、図1に示す形態の積層偏光板10を作製した。まず、厚み100μmのノルボルネンフィルムについて、180℃で縦延伸を行った。延伸倍率は、延伸方向における、延伸前の長さに対して、1.2倍として。これによって、厚み90μmの光学異方層(A)11aを得た。一方、2,2'−ビス(3,4−ジカルボキジフェニル)ヘキサフルオロプロパン)および2,2'−ビス(トリフルオロメチル)−4,4'−ジアミノビフェニルから合成されたポリイミド(重量平均分子量59000)をシクロヘキサノンに溶解し、15重量%のポリイミド溶液を調製した。このポリイミド溶液を、二軸延伸した延伸PETフィルム上に塗工した後、前記塗工膜を乾燥し(温度150℃;時間5分)、前記延伸PETフィルム上に、厚み5μmの光学異方層(B)11bを形成した。そして、前記延伸PETフィルム上の光学異方層(B)11bと、光学異方層(A)11aとを、厚み15μmのアクリル系粘着剤14を介して接着した後、前記延伸PETフィルムを剥離して、厚み110μmの積層位相差板11を得た。
さらに、厚み80μmのポリビニルアルコール(PVA)フィルムを、ヨウ素水溶液中で5倍に延伸処理し、その後乾燥することによって偏光層13を得た。そして、厚み15μmのアクリル系粘着剤層14を介して、前記偏光層13の片面に厚み80μmのTACフィルム12を接着し、もう一方の表面に、前記積層位相差板11を前記光学異方層(A)11aが前記偏光層13側になるように接着し、厚み240μmの広視角化積層偏光板10を得た。
(実施例B−2)
この実施例において、図2に示す形態の積層偏光板20を作製した。光学異方層(B)11bが偏光層13側となるように、積層位相差板11を偏光層に接着した以外は、前記実施例B−1と同様にして、厚み240μmの広視角化積層偏光板20を得た。
(実施例B-3)
この実施例において、図3に示す形態の積層偏光板30を作製した。厚み70μmのポリエステルフィルムについて、160℃で、延伸方向において、テンター横延伸を行い(延伸倍率1.2倍)、厚み59μmの光学異方層(A)11aを得た。次に、実施例1と同様にして調整したポリイミド溶液を、前記光学異方層(A)11a上に塗工し、これを乾燥して(温度180℃;時間5分)、厚み3μmの光学異方層(B)11bを形成した。これによって、光学異方層(A)11aと光学異方層(B)11bとの積層体である、厚み62μmの積層位相差板31を得た。つぎに、厚み15μmのアクリル系粘着剤層14を介して、実施例1と同様の偏光層13の片面に、厚み80μmのTACフィルム12を接着し、他方の片面に前記光学異方層(A)11aが前記偏光層13側になるように前記積層位相差板31を接着し、厚み192μmの広視角化積層偏光板30を得た。
(実施例B−4)
この実施例において、図4に示す形態の積層偏光板40を作製した。光学異方層(B)が偏光層13側になるように積層位相差板31を前記偏光層13に接着した以外は、前記実施例B-3と同様にして、厚み192μmの広視角化積層偏光板40を得た。
(実施例B-5)
この実施例において、図5に示す形態の積層偏光板50を作製した。実施例1と同様にして調整したポリイミド溶液を、厚み80μmのTACフィルムに塗布し、温度190℃で5分乾燥しながら、延伸倍率1.3倍となるようにテンター横延伸を行った。これによって、厚み60μmの延伸TACフィルム(光学異方層(A)11a)に、厚み6μmのポリイミドフィルム(光学異方層(B)11b)が積層された、全体厚み66μmの積層位相差板31を得た。そして、厚み5μmのPVA系接着剤層15を介して、実施例1と同様の偏光層13の片面に厚み80μmのTACフィルム12、他方の面に前記積層位相差板31をその光学異方層(A)11aが前記偏光層13側になるように接着し、厚み183μmの広視角化積層偏光板176を得た。
(実施例B-6)
この実施例において、図6に示す形態の積層偏光板60を作製した。光学異方層(B)11bが偏光層13側になるように前記積層位相差板31を前記偏光層13に接着した以外は、前記実施例B−5と同様にして、厚み176μmの広視角化積層偏光板60を得た。
(実施例B-7)
この実施例において、図7に示す形態の積層偏光板70を作製した。TACフィルムを、190℃で、延伸倍率1.4倍となるようにテンター横延伸して、厚み69μmの光学異方層(A)11aを得た。そして、前記実施例B−1と同様の偏光層13の片面に厚み80μmのTACフィルム12を、前記偏光層13の他方の面に前記光学異方層(A)11aを、それぞれ厚み5μmのPVA系接着剤層15を介して接着した。さらに、前記実施例B-1と同様にして得た厚み5μmの光学異方層(B)11bを、厚み15μmのアクリル系粘着剤14を介して、前記光学異方層(A)11aに積層した後、前記延伸PETフィルムを剥離して、厚み199μmの広視角化積層偏光板70を得た。
(実施例B−8)
この実施例において、図8に示す形態の積層偏光板80を作製した。4,4'−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)−2,2−ジフェニルプロパン二無水物および2,2'−ジクロロ−4,4−ジアミノビフェニルから合成された重量平均分子量65,000のポリイミドをシクロペンタノンに溶解し、20重量%のポリイミド溶液を調製した。このポリイミド溶液を、厚み80μmのTACフィルムに塗工し、温度200℃で5分間乾燥させながら、テンター横延伸を行った。延伸倍率は、延伸方向において、延伸前の1.5倍とした。これによって、厚み54μmの延伸TACフィルム(光学異方層(A))上に、厚み6μmのポリイミドフィルム(光学異方層(B))が積層された、全体厚み60μmの積層位相差板が形成された。さらに、前記実施例B-1と同様の偏光層の片面に、前記光学異方層(A)が対向するように、前記積層位相差板をポリビニルアルコール(PVA)系粘着剤層15を介して接着し、さらに、前記偏光層の他方の表面にPVA系接着剤層を介して、厚み80μmのTACフィルム12を接着した。これによって厚み170μmの広視野角化積層偏光板を得た。
(比較例B−1)
厚み80μm、Re(A)0.9nm、Rth(A)59nm、Rth(A)/Re(A)66であるTACフィルムを光学異方層(A)とした。この上に、前記実施例B−1と同じポリイミド溶液を塗工し、130℃で5分間乾燥して、前記光学異方層(A)の上に、光学異方層(B)を形成し、厚み85μm、nx≒ny>nzを示す積層位相差板を作製した。さらに、前記実施例B-1と同様の偏光層の片面に、前記光学異方層(A)が対向するように、前記積層位相差板を厚み5μmのポリビニルアルコール(PVA)系粘着剤層を介して接着し、さらに、前記偏光層の他方の表面にPVA系接着剤層(厚み5μm)を介して、厚み80μmのTACフィルムを接着した。これによって厚み170μmの広視野角化積層偏光板を得た。
(比較例B−2)
実施例B−1と同様のポリイミド溶液を、ポリエステルフィルム上に塗工し、130℃で5分間乾燥し、160℃で1.1倍のテンター横延伸を行った。前記ポリエステルフィルムを除去することによって、ポリイミド製の光学異方層(B)を得た。この光学異方層(B)は、厚み6μm、Re(B)55nm、Rth(B)240nm、Rth(B)/Re(B)4.4であった。さらに、前記実施例B-1と同様の偏光層の片面に、前記光学異方層(A)を厚み5μmのポリビニルアルコール(PVA)系粘着剤層を介して接着し、さらに、前記偏光層の他方の表面にアクリル系粘着剤(厚み15μm)を介して、厚み80μmのTACフィルムを接着した。これによって光学異方層層(A)を含まない広視野角化積層偏光板を得た。
(比較例B−3)
厚み80μmのTACフィルムを、190℃で1.4倍にテンター横延伸することによって、厚み58μm、Re(A)40nm、Rth(A)46nm、Rth(A)/Re(A)1.2の光学異方層(A)を得た。一方、実施例B−1と同様のポリイミド溶液を、ポリエステルフィルム上に塗工し、130℃で5分間乾燥し、160℃で1.2倍の自由端縦延伸を行うことによって、前記ポリエステルフィルム上にポリイミド製の光学異方層(B)を形成した。この光学異方層(B)は、厚み6μm、Re(B)170nm、Rth(B)200nm、Rth(B)/Re(B)1.2であった。前記光学異方層(A)と光学異方層(B)とが対向するように、厚み15μmのアクリル系粘着剤で両者を接着した後、前記ポリエステルフィルムを除去することによって、積層位相差板を得た。この積層位相差板は、厚み64μm、Reが210nm、Rthが246nm、Rth/Reが1.2、(Rth-Re)が36nmであった。前記実施例B-1と同様の偏光層の片面に、前記光学異方層(A)が対向するように、前記積層位相差板を厚み5μmのPVA系粘着剤層を介して接着し、さらに、前記偏光層の他方の表面にPVA系接着剤層(厚み5μm)を介して、厚み80μmのTACフィルムを接着した。これによって厚み189μmの広視野角化積層偏光板を得た。
(比較例B−4)
実施例B−1と同様にして偏光層を得た。
実施例B−1〜B−8および比較例B−1〜B−3で得られた広視角化積層偏光板における、光学異方層(A)、光学異方層(B)および積層位相差板について、それぞれ前述のようにして面内位相差値、厚み方向位相差等を測定した。その結果を下記表2に示す。
実施例B−1〜B−8、比較例B−1〜B−3で得た広視角化積層偏光板、および比較例B−4で得た偏光板について、視野角特性を評価した。偏光板を、VA型液晶セルの両面に互いに透過軸が直交となるように配置して液晶表示装置を作製した。なお、実施例の広視角化積層偏光板は、積層位相差板が液晶セル側になるように配置した。そして、前記液晶表示装置の表示画面におけるCo(コントラスト)が10以上となる視野角を測定した。
コントラストは、以下の方法によって算出した。前記液晶表示装置に、白画像および黒画像を表示させ、商品名Ez
contrast 160D(ELDIM社製)により、表示画面の正面、上下、左右、対角45°−225°、対角135°−315°方向におけるXYZ表示系のY値、x値、y値をそれぞれ測定した。そして、白画像におけるY値(Yw)と、黒画像におけるY値(YB)とから、各視野角におけるコントラスト「Yw/YB」を算出した。一方、比較例B−1として、前記積層偏光板に代えて前記偏光板のみを実装した液晶表示装置についても前記視野角におけるコントラストを確認した。コントラストが10以上を示す視野角の範囲を下記表3に示す。また、前記各液晶表示装置の表示画面を目視で観察して、前記積層位相差板の着色の有無を評価した。これらの結果を下記表3にあわせて示す。
(表3)
視 野 角 (°) 着色
上下 左右 対角(45°-225°) 対角(135°-315°)
実施例B-1 ±80 ±80 ±65 ±65 なし
実施例B-2 ±80 ±80 ±65 ±65 なし
実施例B-3 ±80 ±80 ±60 ±60 なし
実施例B-4 ±80 ±80 ±60 ±60 なし
実施例B-5 ±80 ±80 ±65 ±65 なし
実施例B-6 ±80 ±80 ±65 ±65 なし
実施例B-7 ±80 ±80 ±60 ±60 なし
比較例B-1 ±80 ±80 ±40 ±40 なし
比較例B-2 ±80 ±80 ±55 ±55 あり
比較例B-3 ±80 ±80 ±40 ±40 あり
比較例B-4 ±80 ±80 ±35 ±35 なし
前記表2に示すような本発明の積層位相差板を含む積層偏光板によれば、前記表3に示すように、各比較例に比べて、広視野角の液晶表示装置が得られた。比較例1は、光学異方層(A)によって十分に面内位相差が補われていないため、面内位相差(Re)が10nmより小さく、比較例B−3は、(Rth-Re)が50nmより小さいため、対角における視野角特性が劣り、比較例B−3については、着色も確認された。また、ポリイミド製の光学異方層(B)のみからなる比較例B−2は、実施例のように優れた対角における視野角特性を示さず、光学異方層(B)単独で、厚み方向位相差を大きくしたため、着色も確認された。このことから、本発明による広視角積層偏光板を用いれば、従来と比較し薄型で、かつ、視認性に優れる高品位表示の液晶表示装置を提供できると言える。
以上のように、本発明の積層位相差板は、そのReが10nm以上であり、かつ(Rth−Re)が50nm以上であるため、各種画像表示装置に適用した際に、広視角特性に優れ、かつ、薄型化も実現することができるため、非常に有用である。
本発明の実施例における、積層偏光板の一例を示す断面図である。
本発明のその他の実施例における、積層偏光板の一例を示す断面図である。
本発明のさらにその他の実施例における、積層偏光板の一例を示す断面図である。
本発明のさらにその他の実施例における、積層偏光板の一例を示す断面図である。
本発明のさらにその他の実施例における、積層偏光板の一例を示す断面図である。
本発明のさらにその他の実施例における、積層偏光板の一例を示す断面図である。
本発明のさらにその他の実施例における、積層偏光板の一例を示す断面図である。
本発明のさらにその他の実施例における、積層偏光板の一例を示す断面図である。
符号の説明
10、20、30、40、50、60、70、80 積層偏光板
11 積層位相差板
11a 光学異方層(A)
11b 光学異方層(B)
12 透明保護層
13 偏光層
14 粘着剤層
15 接着剤層
本発明は、積層位相差板、およびそれを用いた液晶表示装置に関する。
従来、各種画像表示装置には、全方位において優れた表示品位を実現するために、屈折率が制御された位相差板が必要とされており、その種類は、例えば、液晶表示装置の表示方式等に応じて選択されている。特に、VA(Vertically Aligned)型、OCB(Optically Compensated Bend)型等の液晶表示装置では、3つの軸方向(X軸、Y軸、Z軸)における屈折率(nx,ny,nz)が「nx>ny>nz」となる、すなわち光学的に負の二軸性を示す位相差板が必要である。このように「nx>ny>nz」を満足する位相差板としては、例えば、自由端一軸延伸によってnx>ny=nzとした二枚の延伸高分子フィルムを、面内における遅相軸方向が互いに直交するように積層した積層位相差板や、高分子フィルムをテンター横延伸または二軸延伸することによって、「nx>ny>nz」に制御した単層位相差板が知られている。
しかしながら、前者の積層位相差板は、前記延伸フィルムの組み合わせによって得られる位相差値の範囲が広くなるという利点がある反面、一枚が厚型であり、積層によってフィルムがさらに厚型化するという欠点があった。一方、後者の単層位相差板は、単層でありながら「nx>ny>nz」という光学特性を備える利点を有するが、その反面、厚型であり、また得られる位相差値の範囲が狭いという欠点がある。このため、さらに他の位相差フィルムを積層して位相差値の範囲を広げる必要がある。また、この単層位相差板を用いて、その厚み方向の位相差値が面内位相差値よりも著しく大きい位相差値を得るために、前者の積層位相差板と同様、さらに他の位相差フィルムを積層する必要がある。そうすると結果として、さらに厚型化するという欠点が生じる。
また、ポリイミド等の非液晶ポリマーを用いて、薄型であり、かつ、「nx>ny>nz」を満たす単層の位相差フィルムを製造する方法も開示されている(例えば、特許文献1等参照)。しかし、このような単層のポリイミド製位相差フィルムは、厚み方向位相差を大きく設定すると、理由は不明であるが、着色が見られ、表示品位が低下するおそれがあった。
そこで、本発明は、液晶表示装置に使用した際に、視野角特性に優れ、高いコントラストを示す積層型の位相差板であって、厚み位相差値が大きく、かつ、薄型化も図ることができる、着色が防止された積層位相差板の提供である。
前記目的を達成するために、本発明の積層位相差板は、
少なくとも2層の光学異方層を含む積層位相差板であって、
ポリマー製の光学異方層(A)と、非液晶性ポリマー製の光学異方層(B)とを含み、
前記ポリマー製の光学異方層(A)の前記ポリマーが、ポリノルボルネン系ポリマーであり、
前記非液晶性ポリマー製の光学異方層(B)の前記非液晶性ポリマーがポリイミドであり、
下記数式で表される面内位相差(Re)が10nm以上であり、
下記式で表される厚み方向位相差(Rth)と前記面内位相差(Re)との差(Rth−Re)が50nm以上であることを特徴とする積層位相差板である。
Re=(nx−ny)・d
Rth=(nx−nz)・d
前記式において、nx、nyおよびnzは、それぞれ前記積層位相差板におけるX軸、Y軸およびZ軸方向の屈折率を示し、前記X軸とは、前記積層位相差板の面内において最大の屈折率を示す軸方向であり、Y軸は、前記面内において前記X軸に対して垂直な軸方向であり、Z軸は、前記X軸およびY軸に垂直な厚み方向であって、dは、前記積層位相差板における厚みを示す。
発明者らは、このように前記ポリノルボルネン系ポリマー製の光学異方層(A)と、前記ポリイミドである非液晶性ポリマー製の光学異方層(B)とを積層することによって、面内位相差(Re)が10nm以上であり、厚み方向位相差(Rth)と前記面内位相差(Re)との差(Rth−Re)50nm以上であるという優れた光学特性を示し、かつ、薄型化も実現した積層位相差板が得られることを見出した。さらに、このような積層位相差板であれば、従来のようにポリイミドフィルム単独で大きな厚み方向位相差を実現することによって生じる着色の問題をも防止できる。したがって、本発明の積層位相差板によれば、例えば、液晶表示装置等の各種画像表示装置に適用した際に、広視野角特性等の優れた表示特性を実現できるだけでなく、前記装置自体の薄型化も実現できるため、非常に有用である。
本発明の積層位相差板は、前述のように、少なくとも、ポリノルボルネ系ポリマー製の光学異方層(A)と、ポリイミドである液晶性ポリマー製の光学異方層(B)とを含み、前記面内位相差(Re)が10nm以上であり、前記厚み方向位相差(Rth)と前記面内位相差(Re)との差(Rth−Re)が50nm以上であることを特徴とする。
本発明の積層位相差板は、前記光学異方層(A)と(B)とを積層することによって、全体として、X軸、Y軸およびZ軸における屈折率が「nx>ny>nz」の関係を満たし、さらに、そのRe値が10nm以上であり、RthとReとの差(Rth−Re)が50nm以上であるため、例えば、前述のようなVAモードや、OCBモード等の表示方式である液晶表示装置において、液晶セルの複屈折を十分に補償でき、優れた視野角拡大の効果を奏する。前記Re値が10nm未満、または前記Rth−Reが50nm未満であると、前述のような視野角拡大効果が得られないという問題がある。
前記Re値は、10〜500nmの範囲であることが好ましく、より好ましくは20〜300nmの範囲である。また、前記(Rth−Re)の値は、50〜1,000nmの範囲であることが好ましく、より好ましくは50〜900nmの範囲であり、特に好ましくは50〜800nmの範囲である。
前記Rthは、60nm以上であり、好ましくは60〜1500nmの範囲であり、より好ましくは60〜1400nmの範囲であり、特に好ましくは60〜1300nmの範囲である。また、本発明の積層位相差板のRth/Reは、1以上である。
本発明において、前記光学異方層(A)は、前記光学異方層(B)と組合わせることによって、全体として前述のようなReと(Rth−Re)の条件を満たすことができれば特に制限されないが、例えば、下記式に示す面内位相差[Re(A)]が20〜300nmであり、下記式に示す厚み方向位相差[Rth(A)]と前記面内位相差[Re(A)]との比[Rth(A)/Re(A)]が1.0以上であることが好ましい。これは、前記厚み方向位相差と面内位相差との比[Rth(A)/Re(A)]が1.0未満であると、例えば、液晶表示装置に使用した際に、厚み方向における位相差値を十分に補償することができず、視野角が狭くなるという問題があり、面内位相差が20nm未満もしくは300nmより大きいと、視野角が狭くなるという問題があるためである。また、前記Rth(A)/Re(A)は、より好ましくは1.2以上であり、特に好ましくは1.2〜40である。
Re(A)=(nx(A)−ny(A))・d(A)
Rth(A)=(nx(A)−nz(A))・d(A)
前記式において、nx(A)、ny(A)およびnz(A)は、それぞれ前記光学異方層(A)におけるX軸、Y軸およびZ軸方向の屈折率を示し、前記X軸とは、前記光学異方層(A)の面内において最大の屈折率を示す軸方向であり、Y軸は、前記面内において前記X軸に対して垂直な軸方向であり、Z軸は、前記X軸およびY軸に垂直な厚み方向であって、d(A)は、前記光学異方層(A)の厚みを示す(以下同様)。
一方、前記光学異方層(B)は、前述のような非液晶ポリマー製の光学異方層であれば、その屈折率は特に制限されないが、例えば、X軸、Y軸およびZ軸における屈折率が「nx(B)>ny(B)>nz(B)」の関係を満たしてもよいし、「nx(B)≒ny(B)>nz(B)」を満たしてもよい。
前記式において、nx(B)、ny(B)およびnz(B)は、それぞれ前記光学異方層(B)におけるX軸、Y軸およびZ軸方向の屈折率を示し、前記X軸とは、前記光学異方層(B)の面内において最大の屈折率を示す軸方向であり、Y軸は、前記面内において前記X軸に対して垂直な軸方向であり、Z軸は、前記X軸およびY軸に垂直な厚み方向を示す(以下同様)。
前記光学異方層(B)が「nx(B)>ny(B)>nz(B)」の関係を示す場合、下記式に示す面内位相差[Re(B)]が3nm以上、下記式に示す厚み方向位相差[Rth(B)]と前記面内位相差[Re(B)]との比[Rth(B)/Re(B)]が1.0以上であることが好ましい。前記厚み方向位相差と面内位相差との比[Rth(B)/Re(B)]が1.0未満であると、例えば、液晶表示装置に使用した際に、厚み方向における位相差値を十分に補償することができず、視野角が狭くなるという問題があるからである。また、光学異方層(B)が、「nx(B)≒ny(B)>nz(B)」の関係を示す場合、すなわち面内位相差[Re(B)]がほぼ0nmであっても、例えば、光学異方層(A)の面内位相差[Re(A)]を前記範囲に設定することによって、本発明の積層位相差板におけるReと(Rth−Re)の条件を前記満たすこともできる。前記Re(B)は、より好ましくは3〜800nmであり、特に好ましくは5〜500nmであり、前記Rth(B)/Re(B)は、より好ましくは1.2以上であり、特に好ましくは1.2〜160である。なお、下記式において、d(B)は、前記光学異方層(B)の厚みを示す(以下同様)。
Re(B)=(nx(B)−ny(B))・d(B)
Rth(B)=(nx(B)−nz(B))・d(B)
前記光学異方層(A)と光学異方層(B)との組合わせの具体例としては、例えば、面内位相差[Re(A)]が20〜300nmであり、その厚み方向位相差[Rth(A)]と前記面内位相差[Re(A)]との比[Rth(A)/Re(A)]が1.0以上である光学異方層(A)と、面内位相差[Re(B)]が3nm以上、厚み方向位相差[Rth(B)]と前記面内位相差[Re(B)]との比[Rth(B)/Re(B)]が1.0以上である光学異方層(B)との組合わせ等があげられる。
本発明の積層位相差板の全体厚みは、通常、1mm以下であり、前述のような従来の積層位相差板よりも十分に薄型である。好ましくは1〜500μmの範囲であり、特に好ましくは5〜300μmの範囲である。例えば、前述のように「nx>ny=nzとした二枚の延伸高分子フィルムを、面内における遅相軸方向が互いに直交するように積層した従来の積層位相差板」と比較して、本発明の積層位相差板によれば、その厚みを、例えば、約2分の1程度に薄型化できる。
また、前記光学異方層(A)の厚みは、例えば、1〜800μmであり、好ましくは5〜500μmであり、より好ましくは10〜400μmであり、特に好ましくは50〜400μmである。前記光学異方層(B)の厚みは、例えば、1〜50μmであり、好ましくは2〜30μmであり、特に好ましくは1〜20μmである。このように、光学異方層(B)の厚みを十分に薄型化できるため、本発明の積層位相差板の全体厚みも薄くなり、かつ、光学異方層(A)の積層によって光学特性にも優れたものとなる。
前記光学異方層(A)の形成材料は、例えば、正の複屈折を示すポリノルボルネン系ポリマーである。なお、本発明において、「正の複屈折を示すポリマー」とは、フィルムを延伸した場合に、延伸方向の屈折が最大になる性質を示すポリマーをいうが、前記ポリマーから形成された光学異方層(A)は、延伸フィルムでも未延伸フィルムのいずれであってもよい(以下同様)。
前記光学異方層(B)の形成材料は、耐熱性、耐薬品性、透明性等に優れるポリイミド非液晶性ポリマーである。このような非液晶性材料は、例えば、液晶性材料とは異なり、基板の配向性に関係なく、それ自身の性質によりnx>nz、ny>nzという光学的一軸性を示す膜を形成する。このため、例えば、前記異方層(B)を形成する際に使用する基板としては、配向基板に限定されることもなく、例えば、未配向基板であってもそのまま使用することができる。
前記ポリマーの分子量は、特に制限されないが、例えば、重量平均分子量(Mw)が1,000〜1,000,000の範囲であることが好ましく、より好ましくは2,000〜500,000の範囲である。前記重量平均分子量は、例えば、標準試料としてポリエチレンオキシド、溶媒としてDMF(N,N−ジメチルホルムアミド)を使用して、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフ(GPC)法で測定できる。
前記ポリイミドとしては、例えば、面内配向性が高く、有機溶剤に可溶なポリイミドが好ましい。具体的には、例えば、特表2000−511296号公報に開示された、9,9−ビス(アミノアリール)フルオレンと芳香族テトラカルボン酸二無水物との縮合重合生成物を含み、下記式(1)に示す繰り返し単位を1つ以上含むポリマーが使用できる。
前記式(1)中、R
3〜R
6は、水素、ハロゲン、フェニル基、1〜4個のハロゲン原子またはC
1〜
10アルキル基で置換されたフェニル基、およびC
1〜
10アルキル基からなる群からそれぞれ独立に選択される少なくとも一種類の置換基である。好ましくは、R
3〜R
6は、ハロゲン、フェニル基、1〜4個のハロゲン原子またはC
1〜
10アルキル基で置換されたフェニル基、およびC
1〜
10アルキル基からなる群からそれぞれ独立に選択される少なくとも一種類の置換基である。
前記式(1)中、Zは、例えば、C6〜20の4価芳香族基であり、好ましくは、ピロメリット基、多環式芳香族基、多環式芳香族基の誘導体、または、下記式(2)で表される基である。
前記式(2)中、Z’は、例えば、共有結合、C(R
7)
2基、CO基、O原子、S原子、SO
2基、Si(C
2H
5)
2基、または、NR
8基であり、複数の場合、それぞれ同一であるかまたは異なる。また、wは、1から10までの整数を表す。R
7は、それぞれ独立に、水素またはC(R
9)
3である。R
8は、水素、炭素原子数1〜約20のアルキル基、またはC
6〜
20アリール基であり、複数の場合、それぞれ同一であるかまたは異なる。R
9は、それぞれ独立に、水素、フッ素、または塩素である。
前記多環式芳香族基としては、例えば、ナフタレン、フルオレン、ベンゾフルオレンまたはアントラセンから誘導される4価の基があげられる。また、前記多環式芳香族基の置換誘導体としては、例えば、C1〜10のアルキル基、そのフッ素化誘導体、およびFやCl等のハロゲンからなる群から選択される少なくとも一つの基で置換された前記多環式芳香族基があげられる。
この他にも、例えば、特表平8−511812号公報に記載された、繰り返し単位が下記一般式(3)または(4)で示されるホモポリマーや、繰り返し単位が下記一般式(5)で示されるポリイミド等があげられる。なお、下記式(5)のポリイミドは、下記式(3)のホモポリマーの好ましい形態である。
前記一般式(3)〜(5)中、GおよびG’は、例えば、共有結合、CH2基、C(CH3)2基、C(CF3)2基、C(CX3)2基(ここで、Xは、ハロゲンである。)、CO基、O原子、S原子、SO2基、Si(CH2CH3)2基、および、N(CH3)基からなる群から、それぞれ独立して選択される基を表し、それぞれ同一でも異なってもよい。
前記式(3)および式(5)中、Lは、置換基であり、dおよびeは、その置換数を表す。Lは、例えば、ハロゲン、C1−3アルキル基、C1−3ハロゲン化アルキル基、フェニル基、または、置換フェニル基であり、複数の場合、それぞれ同一であるかまたは異なる。前記置換フェニル基としては、例えば、ハロゲン、C1−3アルキル基、およびC1−3ハロゲン化アルキル基からなる群から選択される少なくとも一種類の置換基を有する置換フェニル基があげられる。また、前記ハロゲンとしては、例えば、フッ素、塩素、臭素またはヨウ素があげられる。dは、0から2までの整数であり、eは、0から3までの整数である。
前記式(3)〜(5)中、Qは置換基であり、fはその置換数を表す。Qとしては、例えば、水素、ハロゲン、アルキル基、置換アルキル基、ニトロ基、シアノ基、チオアルキル基、アルコキシ基、アリール基、置換アリール基、アルキルエステル基、および置換アルキルエステル基からなる群から選択される原子または基であって、Qが複数の場合、それぞれ同一であるかまたは異なる。前記ハロゲンとしては、例えば、フッ素、塩素、臭素およびヨウ素があげられる。前記置換アルキル基としては、例えば、ハロゲン化アルキル基があげられる。また前記置換アリール基としては、例えば、ハロゲン化アリール基があげられる。fは、0から4までの整数であり、gおよびhは、それぞれ0から3および1から3までの整数である。また、gおよびhは、1より大きいことが好ましい。
前記式(4)中、R10およびR11は、水素、ハロゲン、フェニル基、置換フェニル基、アルキル基、および置換アルキル基からなる群から、それぞれ独立に選択される基である。その中でも、R10およびR11は、それぞれ独立に、ハロゲン化アルキル基であることが好ましい。
前記式(5)中、M1およびM2は、同一であるかまたは異なり、例えば、ハロゲン、C1−3アルキル基、C1−3ハロゲン化アルキル基、フェニル基、または、置換フェニル基である。前記ハロゲンとしては、例えば、フッ素、塩素、臭素およびヨウ素があげられる。また、前記置換フェニル基としては、例えば、ハロゲン、C1−3アルキル基、およびC1−3ハロゲン化アルキル基からなる群から選択される少なくとも一種類の置換基を有する置換フェニル基があげられる。
前記式(3)に示すポリイミドの具体例としては、例えば、下記式(6)で表されるもの等があげられる。
さらに、前記ポリイミドとしては、例えば、前述のような骨格(繰り返し単位)以外の酸二無水物やジアミンを、適宜共重合させたコポリマーがあげられる。
前記酸二無水物としては、例えば、芳香族テトラカルボン酸二無水物があげられる。前記芳香族テトラカルボン酸二無水物としては、例えば、ピロメリト酸二無水物、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、複素環式芳香族テトラカルボン酸二無水物、2,2’−置換ビフェニルテトラカルボン酸二無水物等があげられる。
前記ピロメリト酸二無水物としては、例えば、ピロメリト酸二無水物、3,6−ジフェニルピロメリト酸二無水物、3,6−ビス(トリフルオロメチル)ピロメリト酸二無水物、3,6−ジブロモピロメリト酸二無水物、3,6−ジクロロピロメリト酸二無水物等があげられる。前記ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物としては、例えば、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物等があげられる。前記ナフタレンテトラカルボン酸二無水物としては、例えば、2,3,6,7−ナフタレン−テトラカルボン酸二無水物、1,2,5,6−ナフタレン−テトラカルボン酸二無水物、2,6−ジクロロ−ナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸二無水物等があげられる。前記複素環式芳香族テトラカルボン酸二無水物としては、例えば、チオフェン−2,3,4,5−テトラカルボン酸二無水物、ピラジン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、ピリジン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物等があげられる。前記2,2’−置換ビフェニルテトラカルボン酸二無水物としては、例えば、2,2’−ジブロモ−4,4’,5,5’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’−ジクロロ−4,4’,5,5’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’,5,5’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物等があげられる。
また、前記芳香族テトラカルボン酸二無水物のその他の例としては、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(2,5,6−トリフルオロ−3,4−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン二無水物、4,4’−(3,4−ジカルボキシフェニル)−2,2−ジフェニルプロパン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、4,4’−オキシジフタル酸二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン酸二無水物(3,3’,4,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物)、4,4’−[4,4’−イソプロピリデン−ジ(p−フェニレンオキシ)]ビス(フタル酸無水物)、N,N−(3,4−ジカルボキシフェニル)−N−メチルアミン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ジエチルシラン二無水物等があげられる。
これらの中でも、前記芳香族テトラカルボン酸二無水物としては、2,2’−置換ビフェニルテトラカルボン酸二無水物が好ましく、より好ましくは、2,2’−ビス(トリハロメチル)−4,4’,5,5’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物であり、さらに好ましくは、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’,5,5’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物である。
前記ジアミンとしては、例えば、芳香族ジアミンがあげられ、具体例としては、ベンゼンジアミン、ジアミノベンゾフェノン、ナフタレンジアミン、複素環式芳香族ジアミン、およびその他の芳香族ジアミンがあげられる。
前記ベンゼンジアミンとしては、例えば、o−、m−およびp−フェニレンジアミン、2,4−ジアミノトルエン、1,4−ジアミノ−2−メトキシベンゼン、1,4−ジアミノ−2−フェニルベンゼンおよび1,3−ジアミノ−4−クロロベンゼンのようなベンゼンジアミンから成る群から選択されるジアミン等があげられる。前記ジアミノベンゾフェノンの例としては、2,2’−ジアミノベンゾフェノン、および3,3’−ジアミノベンゾフェノン等があげられる。前記ナフタレンジアミンとしては、例えば、1,8−ジアミノナフタレン、および1,5−ジアミノナフタレン等があげられる。前記複素環式芳香族ジアミンの例としては、2,6−ジアミノピリジン、2,4−ジアミノピリジン、および2,4−ジアミノ−S−トリアジン等があげられる。
また、前記芳香族ジアミンとしては、これらの他に、4,4’−ジアミノビフェニル、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−(9−フルオレニリデン)−ジアニリン、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジクロロ−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、2,2’−ジクロロ−4,4’−ジアミノビフェニル、2,2’,5,5’−テトラクロロベンジジン、2,2−ビス(4−アミノフェノキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、4,4’−ビス(3−アミノフェノキシ)ビフェニル、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、4,4’−ジアミノジフェニルチオエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン等があげられる。
つぎに、本発明の積層位相差板は、例えば、以下のようにして製造できる。
まず、前記光学異方層(A)を準備する。この光学異方層(A)は、前述のように、面内位相差[Re(A)]が20〜300nmであり、厚み方向位相差[Rth(A)]と前記面内位相差[Re(A)]との比[Rth(A)/Re(A)]が1.0以上であればよい。このようなポリマー製のフィルムとしては、前述のように未延伸フィルムでも、延伸フィルムであってもよい。前記延伸フィルムとしては、例えば、押し出し成型や流延製膜によって形成したポリマーフィルムを延伸することによって得られる。前記延伸フィルムは、一軸延伸フィルムでも二軸延伸フィルムでもよい。
前記延伸方法も特に制限されず、例えば、ロール法縦延伸等の一軸延伸、テンター横延伸等の二軸延伸等、従来公知の延伸方法があげられる。前記ロール法縦延伸は、例えば、加熱ロールを使用する方法であっても、雰囲気を加熱条件下とする方法のいずれでもよいし、これらを併用してもよい。また、二軸延伸としては、例えば、全テンター方式による同時二軸延伸、ロールテンター法による逐次二軸延伸等があげられる。また、延伸倍率は、特に制限されず、例えば、延伸方法や、形成材料等によって適宜決定できる。前記光学異方層(A)の特性としては、表面平滑性、複屈折の均一性、透明性、耐熱性に優れるものが好ましい。
延伸前のポリマーフィルムの厚みは、通常、10〜800μmであり、好ましくは10〜700μmである。そして、延伸後のポリマーフィルム、すなわち光学異方層(A)の厚みは、前述のとおりである。
一方、前記光学異方層(B)は、前記面内位相差[Re(B)]が3nm以上、前記厚み方向位相差と前記面内位相差との比[Rth(B)/Re(B)]が1.0以上であれば、特に制限されないが、例えば、以下のようにして調製することができる。
前記光学異方層(B)は、例えば、基板上に、前記非液晶性ポリマーを塗工して塗工膜を形成し、前記塗工膜における前記非液晶性ポリマーを固化させることによって、前記基板上に形成できる。ポリイミドのような前記非液晶ポリマーは、その性質上、前記基板の配向の有無に関わらず、nx>nz、ny>nz(nx≒ny>nz)の光学特性を示す。このため、光学的一軸性、つまり、厚み方向にのみ位相差を示す光学異方層が形成できるのである。なお、前記光学異方層(B)は、前記基材から剥離して使用してもよいし、基材上に形成した状態で使用してもよい。
この際に前記基材として、前記光学異方層(A)を使用することが好ましい。この光学異方層(A)を基材として、その上に前記非液晶性ポリマーを直接塗工すれば、光学異方層(A)と(B)とを粘着剤や接着剤等によって積層することが不要となるため、積層数が軽減され、より一層薄型化を図ることができるからである。
また、前述のように、前記非液晶ポリマーは光学的一軸性を示す性質を有することから、基材の配向性を利用する必要がない。このため、前記基材としては、配向性基板、非配向性基板の両方が使用できる。また、例えば、複屈折による位相差を生じるものでもよいし、複屈折による位相差を生じないものでもよい。前記複屈折による位相差を生じる透明基板としては、例えば、延伸フィルム等があげられ、厚み方向の屈折率が制御されたもの等も使用できる。前記屈折率の制御は、例えば、ポリマーフィルムを熱収縮性フィルムと接着し、さらに加熱延伸する方法等によって行うことができる。
前記基材上に、前記非液晶性ポリマーを塗工する方法としては、特に限定されないが、例えば、前述のような非液晶性ポリマーを加熱溶融して塗工する方法や、前記非液晶ポリマーを溶媒に溶解させたポリマー溶液を塗工する方法等があげられる。その中でも、作業性に優れることから、前記ポリマー溶液を塗工する方法が好ましい。
前記ポリマー溶液におけるポリマー濃度は、特に制限されないが、例えば、塗工が容易な粘度となることから、溶媒100重量部に対して、例えば、前記非液晶性ポリマー5〜50重量部であることが好ましく、より好ましくは10〜40重量部である。
前記ポリマー溶液の溶媒としては、前記非液晶性ポリマー等の形成材料を溶解できれば特に制限されず、前記形成材料の種類に応じて適宜決定できる。具体例としては、例えば、クロロホルム、ジクロロメタン、四塩化炭素、ジクロロエタン、テトラクロロエタン、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン、クロロベンゼン、オルソジクロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素類;フェノール、バラクロロフェノール等のフェノール類;ベンゼン、トルエン、キシレン、メトキシベンゼン、1,2−ジメトキシベンゼン等の芳香族炭化水素類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン等のケトン系溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶媒;t−ブチルアルコール、グリセリン、エチレングリコール、トリエチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、2−メチル−2,4−ペンタンジオールのようなアルコール系溶媒;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドのようなアミド系溶媒;アセトニトリル、ブチロニトリルのようなニトリル系溶媒;ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、テトラヒドロフランのようなエーテル系溶媒;あるいは二硫化炭素、エチルセルソルブ、ブチルセルソルブ等があげられる。これらの溶媒は、一種類でもよいし、二種類以上を併用してもよい。
前記ポリマー溶液は、例えば、必要に応じて、さらに、安定剤、可塑剤、金属類等の種々の添加剤を配合してもよい。
また、前記ポリマー溶液は、例えば、前記形成材料の配向性等が著しく低下しない範囲で、異なる他の樹脂を含有してもよい。前記他の樹脂としては、例えば、各種汎用樹脂、エンジニアリングプラスチック、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂等があげられる。
前記汎用樹脂としては、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ABS樹脂、およびAS樹脂等があげられる。前記エンジニアリングプラスチックとしては、例えば、ポリアセテート(POM)、ポリカーボネート(PC)、ポリアミド(PA:ナイロン)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、およびポリブチレンテレフタレート(PBT)等があげられる。前記熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリケトン(PK)、ポリイミド(PI)、ポリシクロヘキサンジメタノールテレフタレート(PCT)、ポリアリレート(PAR)、および液晶ポリマー(LCP)等があげられる。前記熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、フェノールノボラック樹脂等があげられる。
このように、前記他の樹脂等を前記ポリマー溶液に配合する場合、その配合量は、例えば、前記ポリマー材料に対して、例えば、0〜50質量%であり、好ましくは、0〜30質量%である。
前記ポリマー溶液の塗工方法としては、例えば、スピンコート法、ロールコート法、フローコート法、プリント法、ディップコート法、流延成膜法、バーコート法、グラビア印刷法等があげられる。また、塗工に際しては、必要に応じて、ポリマー層の重畳方式も採用できる。
前記塗工膜を形成する非液晶性ポリマーの固化は、例えば、前記塗工膜を乾燥することによって行うことができる。前記乾燥の方法としては、特に制限されず、例えば、自然乾燥や加熱乾燥があげられる。その条件も、例えば、前記非液晶性ポリマーの種類や、前記溶媒の種類等に応じて適宜決定できるが、例えば、温度は、通常、40℃〜300℃であり、好ましくは50℃〜250℃であり、さらに好ましくは60℃〜200℃である。なお、塗工膜の乾燥は、一定温度で行っても良いし、段階的に温度を上昇または下降させながら行っても良い。乾燥時間も特に制限されないが、通常、10秒〜30分、好ましくは30秒〜25分、さらに好ましくは1分〜20分以下である。
なお、前記光学異方層(B)中に残存する前記ポリマー溶液の溶媒は、その量に比例して積層位相差板の光学特性を経時的に変化させるおそれがあるため、その残存量は、例えば、5%以下が好ましく、より好ましくは2%以下であり、さらに好ましくは0.2%以下である。
また、前記基材として、面内において一方向に収縮性を示す基材を使用することによって、光学的二軸性、つまりnx>ny>nzを示す光学異方層(B)を調製することもできる。具体的に説明すると、例えば、前述と同様にして、前記収縮性を有する基材上に、直接、前記非液晶性ポリマーを塗工して塗工膜を形成した後、前記基板を収縮させる。前記基材が収縮すれば、これに伴って前記基材上の塗工膜も共に面方向において収縮するため、前記塗工膜は、さらに面内において屈折差が生じ、光学的二軸性(nx>ny>nz)を示すようになるのである。そして、この塗工膜を形成する非液晶性ポリマーを固化することによって、前記二軸性の光学異方層(B)が形成されるのである。
前記基材は、面内において一方向に収縮性を持たせるため、例えば、面内のいずれか一方向において、延伸しておくことが好ましい。このように、予め延伸しておくことによって、前記延伸方向と反対方向に収縮力が発生する。この基材の面内の収縮差を利用して、塗工膜の非液晶性ポリマーに面内の屈折率差を付与するのである。延伸前の前記基材の厚みは、特に制限されないが、例えば、10〜200μmの範囲であり、好ましくは20〜150μmの範囲であり、特に好ましくは30〜100μmの範囲である。そして、延伸倍率に関しては特に限定されない。
前記基材の収縮は、例えば、前述と同様にして前記基材上に塗工膜を形成した後、加熱処理を施すことによって行うことができる。前記加熱処理の条件としては、特に制限されず、例えば、基材の材料の種類等によって適宜決定できるが、例えば、加熱温度は、25〜300℃の範囲であり、好ましくは50〜200℃の範囲であり、特に好ましくは60〜180℃の範囲である。前記収縮の程度は特に制限されないが、収縮前の基材の長さを100%として、例えば、0を越え10%以下の収縮割合があげられる。
一方、前述と同様に基材上に塗工膜を形成し、前記透明基板と前記塗工膜とを共に延伸することによって、光学的二軸性、つまりnx>ny>nzを示す光学異方層(B)を基材上に形成することもできる。この方法によれば、前記基材と前記塗工膜との積層体を、面内の一方向に共に延伸することによって、前記塗工膜は、さらに面内において屈折差を生じ、光学的二軸性(nx>ny>nz)を示すようになるのである。
前記基材と塗工膜との積層体の延伸方法は、特に制限されないが、例えば、長手方向に一軸延伸する自由端縦延伸、フィルムの長手方向を固定した状態で、幅方向に一軸延伸する固定端横延伸、長手方向および幅方向の両方に延伸を行う逐次または同時二軸延伸等の方法があげられる。
そして、前記積層体の延伸は、例えば、前記基材と前記塗工膜との両方を共に引っ張ることによって行ってもよいが、例えば、以下の理由から、前記基材のみを延伸することが好ましい。前記基材のみを延伸した場合、この延伸により前記基材に発生する張力によって、前記基材上の前記塗工膜が間接的に延伸される。そして、積層体を延伸するよりも、単層体を延伸する方が、通常、均一な延伸となるため、前述のように透明基板のみを均一に延伸すれば、これに伴って、前記基材上の前記塗工膜も均一に延伸できるためである。
延伸の条件としては、特に制限されず、例えば、基材や前記非液晶性ポリマーの種類等に応じて適宜決定できる。また、延伸時の加熱温度は、例えば、前記基材や非液晶性ポリマーの種類、それらのガラス転移点(Tg)、添加物の種類等に応じて適宜決定できるが、例えば、80〜250℃であり、好ましくは120〜220℃、特に好ましくは140〜200℃である。特に前記基材の材料のTg付近またはそれ以上の温度であることが好ましい。
以上のようにして得られた光学異方層(A)と光学異方層(B)を、例えば、粘着剤や接着剤を介して積層することによって、本発明の積層位相差板を形成することができる。また、基材(第1の基材)上に形成した前記光学異方層(B)を、前記光学異方層(A)に粘着剤等を介して接着し、その後、前記第1の基材を剥離してもよい。
前記接着剤または粘着剤としては、特に制限されず、例えば、アクリル系、シリコーン系、ポリエステル系、ポリウレタン系、ポリエーテル系、ゴム系等の透明な感圧接着剤や粘着剤等、従来公知のものが使用できる。これらの中でも、積層位相差体の光学特性の変化を防止する点から、硬化や乾燥の際に高温のプロセスを要しないものが好ましく、具体的には、長時間の硬化処理や乾燥時間を要しないアクリル系粘着剤が望ましい。
また、このような接着方法には限られず、例えば、前述のように、光学異方層(B)を形成するための基材として光学異方層(A)を使用し、この上に直接光学異方層(B)を形成することによって、前記両者を直接積層し、本発明の積層位相差板を形成してもよい。このような形態であれば、例えば、粘着剤層や接着剤層が不要になるため積層数を軽減でき、より一層の薄型化が実現できるからである。また、光学異方層(A)を基材として、前述のように光学異方層(B)を直接積層し、この積層体を、前述と同様にさらに延伸したり、前記光学異方層(A)を収縮させて、この収縮によって前記光学異方層(B)を収縮させてもよい。
本発明の積層位相差板は、さらに、その最外層に、粘着剤層または接着剤層を有することが好ましい。これによって、本発明の積層位相差板と、他の光学層や液晶セル等の他部材との接着が容易になるとともに、本発明の積層位相差板の剥離を防止することができるからである。なお、前記粘着剤は、積層位相差板の一方の最外層でもよいし、両方の最外層に積層されてもよい。
前記粘着層の材料としては、特に制限されず、アクリル系ポリマー等の従来公知の材料が使用でき、特に、吸湿による発泡や剥離の防止、熱膨張差等による光学特性の低下や、液晶セルに使用した際の液晶セルの反り防止、ひいては高品質で耐久性に優れる液晶表示装置の形成性等の点より、例えば、吸湿率が低くて耐熱性に優れる粘着層となることが好ましい。また、微粒子を含有して光拡散性を示す粘着層等でもよい。前記積層位相差板表面への前記粘着剤層の形成は、例えば、各種粘着材料の溶液または溶融液を、流延や塗工等の展開方式により、前記偏光板の所定の面に直接添加して層を形成する方式や、同様にして後述するライナー上に粘着剤層を形成させて、それを前記積層位相差板の所定面に移着する方式等によって行うことができる。
このように積層位相差板に設けた粘着剤層等の表面が露出する場合は、前記粘着層を実用に供するまでの間、汚染防止等を目的として、ライナーによって前記表面をカバーすることが好ましい。このライナーは、透明フィルム等のような適当なフィルムに、必要に応じて、シリコーン系、長鎖アルキル系、フッ素系、硫化モリブデン等の剥離剤による剥離コートを一層以上設ける方法等によって形成できる。
前記粘着剤層等は、例えば、単層体でもよいし、積層体でもよい。前記積層体としては、例えば、異なる組成や異なる種類の単層を組合せた積層体を使用することもできる。また、前記積層位相差板の両面に配置する場合は、例えば、それぞれ同じ粘着剤層でもよいし、異なる組成や異なる種類の粘着剤層であってもよい。
前記粘着剤層の厚みは、例えば、偏光板の構成等に応じて適宜に決定でき、一般には、1〜500μmである。
前記粘着剤層を形成する粘着剤としては、例えば、光学的透明性に優れ、適度な濡れ性、凝集性や接着性の粘着特性を示すものが好ましい。具体的な例としては、アクリル系ポリマーやシリコーン系ポリマー、ポリエステル、ポリウレタン、ポリエーテル、合成ゴム等のポリマーを適宜ベースポリマーとして調製された粘着剤等があげられる。
前記粘着剤層の粘着特性の制御は、例えば、前記粘着剤層を形成するベースポリマーの組成や分子量、架橋方式、架橋性官能基の含有割合、架橋剤の配合割合等によって、その架橋度や分子量を調節するというような、従来公知の方法によって適宜行うことができる。
本発明の積層位相差板は、前述のように、単独で使用してもよいし、必要に応じて他の光学部材と組合せて積層体として、各種光学用途に供することができる。具体的には、光学補償用部材として有用である。前記他の光学部材としては、特に制限されないが、例えば、以下に示す偏光子等があげられる。
本発明の積層位相差板は、例えば、光学フィルムと偏光子とを含む積層偏光板において、前記光学フィルムとして使用することができる。
このような偏光板の構成は、前記本発明の積層位相差板を有していれば、特に制限されないが、例えば、以下に示すようなものが例示できる。なお、前記積層偏光板は、本発明の積層位相差板と偏光子とを有していれば、以下の構成に限定されるものではなく、さらに他の光学部材等を含んでいてもよいし、他の構成要件が省略されてもよい。
前記積層偏光板の一例としては、例えば、前記本発明の積層位相差板、偏光子および二つの透明保護層を有しており、前記偏光子の両面に透明保護層が、接着層を介してそれぞれ積層されており、一方の透明保護層に、接着層を介して、さらに前記積層位相差板が積層されている形態があげられる。なお、積層位相差板は、前述のように光学異方層(A)と光学異方層(B)との積層体であるが、いずれの表面が透明保護層に面してもよい。
なお、透明保護層は、前述のように偏光子の両側に積層してもよいし、いずれか一方の面のみに積層してもよい。また、両面に積層する場合には、例えば、同じ種類の透明保護層を使用しても、異なる種類の透明保護層を使用してもよい。また、各層の接着方法は、特に制限されず、接着層として、粘着剤や接着剤を使用してもよいし、直接積層が可能な場合は、前記接着層を介さなくてもよい。
また、積層偏光板のその他の例としては、前記本発明の積層位相差板、偏光子および透明保護層を有し、偏光子の一方の面に接着層を介して透明保護層が積層され、前記偏光子の他方の面に接着層を介して、前記積層位相差板が積層されている。
そして、積層位相差板は、光学異方層(A)と光学異方層(B)とが接着層を介して積層した積層体であるため、いずれの表面が偏光子に面してもよいが、例えば、以下のような理由から、積層位相差板の光学異方層(A)側が、偏光子に面するように配置されることが好ましい。このような構成であれば、積層位相差板の光学異方層(A)を、積層偏光板における透明保護層として兼用できるからである。すなわち、偏光子の両面に透明保護層を積層する代わりに、前記偏光子の一方の面には透明保護層を積層し、他方の面には、光学異方層(A)が面するように積層位相差板を積層することによって、前記光学異方層(A)が、偏光子の他方の透明保護層の役割も果たすのである。このため、より一層薄型化された偏光板を得ることができる。
前記偏光子としては、特に制限されず、例えば、従来公知の方法により、各種フィルムに、ヨウ素や二色性染料等の二色性物質を吸着させて染色し、架橋、延伸、乾燥することによって調製したもの等が使用できる。この中でも、自然光を入射させると直線偏光を透過するフィルムが好ましく、光透過率や偏光度に優れるものが好ましい。前記二色性物質を吸着させる各種フィルムとしては、例えば、ポリビニルアルコール(PVA)系フィルム、部分ホルマール化PVA系フィルム、エチレン・酢酸ビニル共重合体系部分ケン化フィルム、セルロース系フィルム等の親水性高分子フィルム等があげられ、これらの他にも、例えば、PVAの脱水処理物やポリ塩化ビニルの脱塩酸処理物等のポリエン配向フィルム等も使用できる。これらの中でも、好ましくはPVA系フィルムである。また、前記偏光フィルムの厚みは、通常、1〜80μmの範囲であるが、これには限定されない。
前記保護層としては、特に制限されず、従来公知の透明フィルムを使用できるが、例えば、透明性、機械的強度、熱安定性、水分遮断性、等方性などに優れるものが好ましい。このような透明保護層の材質の具体例としては、トリアセチルセルロール等のセルロース系樹脂や、ポリエステル系、ポリカーボネート系、ポリアミド系、ポリイミド系、ポリエーテルスルホン系、ポリスルホン系、ポリスチレン系、ポリノルボルネン系、ポリオレフィン系、アクリル系、アセテート系等の透明樹脂等があげられる。また、前記アクリル系、ウレタン系、アクリルウレタン系、エポキシ系、シリコーン系等の熱硬化型樹脂または紫外線硬化型樹脂等もあげられる。この中でも、偏光特性や耐久性の点から、表面をアルカリ等でケン化処理したTACフィルムが好ましい。
また、特開2001−343529号公報(WO01/37007)に記載のポリマーフィルムがあげられる。このポリマー材料としては、例えば、側鎖に置換または非置換のイミド基を有する熱可塑性樹脂と、側鎖に置換または非置換のフェニル基ならびにニトリル基を有す熱可塑性樹脂を含有する樹脂組成物が使用でき、例えば、イソブテンとN−メチレンマレイミドからなる交互共重合体と、アクリロニトリル・スチレン共重合体とを有する樹脂組成物があげられる。なお、前記ポリマーフィルムは、例えば、前記樹脂組成物の押出成形物であってもよい。
また、前記保護層は、例えば、色付きが無いことが好ましい。具体的には、下記式で表されるフィルム厚み方向の位相差値(Rth)が、−90nm〜+75nmの範囲であることが好ましく、より好ましくは−80nm〜+60nmであり、特に好ましくは−70nm〜+45nmの範囲である。前記位相差値が−90nm〜+75nmの範囲であれば、十分に保護フィルムに起因する偏光板の着色(光学的な着色)を解消できる。なお、下記式において、nx,ny,nzは、前述と同様であり、dは、その膜厚を示す。
Rth=[[(nx+ny)/2]−nz]・d
また、前記透明保護層は、さらに光学補償機能を有するものでもよい。このように光学補償機能を有する透明保護層としては、例えば、液晶セルにおける位相差に基づく視認角の変化が原因である、着色等の防止や、良視認の視野角の拡大等を目的とした公知のものが使用できる。具体的には、例えば、前述した透明樹脂を一軸延伸または二軸延伸した各種延伸フィルムや、液晶ポリマー等の配向フィルム、透明基材上に液晶ポリマー等の配向層を配置した積層体等があげられる。これらの中でも、良視認の広い視野角を達成できることから、前記液晶ポリマーの配向フィルムが好ましく、特に、ディスコティック系やネマチック系の液晶ポリマーの傾斜配向層から構成される光学補償層を、前述のトリアセチルセルロースフィルム等で支持した光学補償位相差板が好ましい。このような光学補償位相差板としては、例えば、富士写真フィルム株式会社製「WVフィルム」等の市販品があげられる。なお、前記光学補償位相差板は、前記位相差フィルムやトリアセチルセルロースフィルム等のフィルム支持体を2層以上積層させることによって、位相差等の光学特性を制御したもの等でもよい。
前記透明保護層の厚みは、特に制限されず、例えば、位相差や保護強度等に応じて適宜決定できるが、通常、500μm以下であり、好ましくは5〜300μl、より好ましくは5〜150μmの範囲である
前記透明保護層は、例えば、偏光フィルムに前記各種透明樹脂を塗布する方法、前記偏光フィルムに前記透明樹脂製フィルムや前記光学補償位相差板等を積層する方法等の従来公知の方法によって適宜形成でき、また市販品を使用することもできる。
また、前記透明保護層は、さらに、例えば、ハードコート処理、反射防止処理、スティッキングの防止や拡散、アンチグレア等を目的とした処理等が施されたものでもよい。前記ハードコート処理とは、偏光板表面の傷付き防止等を目的とし、例えば、前記透明保護層の表面に、硬化型樹脂から構成される、硬度や滑り性に優れた硬化被膜を形成する処理である。前記硬化型樹脂としては、例えば、シリコーン系、ウレタン系、アクリル系、エポキシ系等の紫外線硬化型樹脂等が使用でき、前記処理は、従来公知の方法によって行うことができる。スティッキングの防止は、隣接する層との密着防止を目的とする。前記反射防止処理とは、偏光板表面での外光の反射防止を目的とし、従来公知の反射防止層等の形成により行うことができる。
前記アンチグレア処理とは、偏光板表面において外光が反射することによる、偏光板透過光の視認妨害を防止すること等を目的とし、例えば、従来公知の方法によって、前記透明保護層の表面に、微細な凹凸構造を形成することによって行うことができる。このような凹凸構造の形成方法としては、例えば、サンドブラスト法やエンボス加工等による粗面化方式や、前述のような透明樹脂に透明微粒子を配合して前記透明保護層を形成する方式等があげられる。
前記透明微粒子としては、例えば、シリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、酸化錫、酸化インジウム、酸化カドミウム、酸化アンチモン等があげられ、この他にも導電性を有する無機系微粒子や、架橋または未架橋のポリマー粒状物等から構成される有機系微粒子等を使用することもできる。前記透明微粒子の平均粒径は、特に制限されないが、例えば、0.5〜20μmの範囲である。また、前記透明微粒子の配合割合は、特に制限されないが、一般に、前述のような透明樹脂100質量部あたり2〜70質量部の範囲が好ましく、より好ましくは5〜50質量部の範囲である。
前記透明微粒子を配合したアンチグレア層は、例えば、透明保護層そのものとして使用することもでき、また、透明保護層表面に塗工層等として形成されてもよい。さらに、前記アンチグレア層は、偏光板透過光を拡散して視角を拡大するための拡散層(視覚補償機能等)を兼ねるものであってもよい。
なお、前記反射防止層、スティッキング防止層、拡散層、アンチグレア層等は、前記透明保護層とは別個に、例えば、これらの層を設けたシート等から構成される光学層として、偏光板に積層してもよい。
各構成物同士(光学異方層(A)、光学異方層(B)、積層位相差板、偏光子、透明保護層等)の積層方法は、特に制限されず、従来公知の方法によって行うことができる。一般には、前述と同様の粘着剤や接着剤等が使用でき、その種類は、前記各構成物の材質等によって適宜決定できる。前記接着剤としては、例えば、アクリル系、ビニルアルコール系、シリコーン系、ポリエステル系、ポリウレタン系、ポリエーテル系等のポリマー製接着剤や、ゴム系接着剤等があげられる。前述のような粘着剤、接着剤は、例えば、湿度や熱の影響によっても剥がれ難く、光透過率や偏光度にも優れる。具体的には、前記偏光子がPVA系フィルムの場合、例えば、接着処理の安定性等の点から、PVA系接着剤が好ましい。これらの接着剤や粘着剤は、例えば、そのまま偏光子や透明保護層の表面に塗布してもよいし、前記接着剤や粘着剤から構成されたテープやシートのような層を前記表面に配置してもよい。また、例えば、水溶液として調製した場合、必要に応じて、他の添加剤や、酸等の触媒を配合してもよい。なお、前記接着剤を塗布する場合は、例えば、前記接着剤水溶液に、さらに、他の添加剤や、酸等の触媒を配合してもよい。このような接着層の厚みは、特に制限されないが、例えば、1nm〜500nmであり、好ましくは10nm〜300nmであり、より好ましくは20nm〜100nmである。また、湿度や熱等によっても剥がれにくく、光透過率や偏光度に優れる偏光板を形成できることから、さらに、グルタルアルデヒド、メラミン、シュウ酸等のPVA系ポリマーの水溶性架橋剤を含む接着剤が好ましい。これらの接着剤は、例えば、その水溶液を前記各構成物表面に塗工し、乾燥すること等によって使用できる。前記水溶液には、例えば、必要に応じて、他の添加剤や、酸等の触媒も配合できる。これらの中でも、前記接着剤としては、PVAフィルムとの接着性に優れる点から、PVA系接着剤が好ましい。
また、本発明の積層位相差板は、前述のような偏光子の他にも、例えば、さらにその他の各種位相差板、拡散制御フィルム、輝度向上フィルム等、従来公知の光学部材と組合せて使用することもできる。前記位相差板としては、例えば、ポリマーフィルムを一軸延伸または二軸延伸したもの、Z軸配向処理したもの、液晶性高分子の塗工膜等があげられる。前記拡散制御フィルムとしては、例えば、拡散、散乱、屈折を利用したフィルムがあげられ、これらは、例えば、視野角の制御や、解像度に関わるギラツキや散乱光の制御等に使用することができる。前記輝度向上フィルムとしては、例えば、コレステリック液晶の選択反射と1/4波長板(λ/4板)とを用いた輝度向上フィルムや、偏光方向による異方性散乱を利用した散乱フィルム等が使用できる。また、前記光学フィルムは、例えば、ワイヤーグリッド型偏光子と組合せることもできる。
前記積層偏光板は、実用に際して、前記本発明の積層位相差板および偏光子の他に、さらに他の光学層を含んでもよい。前記光学層としては、例えば、以下に示すような偏光板、反射板、半透過反射板、輝度向上フィルム等、液晶表示装置等の形成に使用される、従来公知の各種光学層があげられる。これらの光学層は、一種類でもよいし、二種類以上を併用してもよく、また、一層でもよいし、二層以上を積層してもよい。このような光学層をさらに含む積層偏光板は、例えば、光学補償機能を有する一体型偏光板として使用することが好ましく、例えば、液晶セル表面に配置する等、各種画像表示装置への使用に適している。
以下に、このような一体型偏光板について説明する。
まず、反射型偏光板または半透過反射型偏光板の一例について説明する。前記反射型偏光板は、本発明の積層偏光板にさらに反射板が、前記半透過反射型偏光板は、本発明の積層偏光板にさらに半透過反射板が、それぞれ積層されている。
前記反射型偏光板は、通常、液晶セルの裏側に配置され、視認側(表示側)からの入射光を反射させて表示するタイプの液晶表示装置(反射型液晶表示装置)等に使用できる。このような反射型偏光板は、例えば、バックライト等の光源の内蔵を省略できるため、液晶表示装置の薄型化を可能にする等の利点を有する。
前記反射型偏光板は、例えば、前記弾性率を示す偏光板の片面に、金属等から構成される反射板を形成する方法等、従来公知の方法によって作製できる。具体的には、例えば、前記偏光板における透明保護層の片面(露出面)を、必要に応じてマット処理し、前記面に、アルミニウム等の反射性金属からなる金属箔や蒸着膜を反射板として形成した反射型偏光板等があげられる。
また、前述のように各種透明樹脂に微粒子を含有させて表面を微細凹凸構造とした透明保護層の上に、その微細凹凸構造を反映させた反射板を形成した、反射型偏光板等もあげられる。その表面が微細凹凸構造である反射板は、例えば、入射光を乱反射により拡散させ、指向性やギラギラした見栄えを防止し、明暗のムラを抑制できるという利点を有する。このような反射板は、例えば、前記透明保護層の凹凸表面に、真空蒸着方式、イオンプレーティング方式、スパッタリング方式等の蒸着方式やメッキ方式等、従来公知の方法により、直接、前記金属箔や金属蒸着膜として形成することができる。
また、前述のように偏光板の透明保護層に前記反射板を直接形成する方式に代えて、反射板として、前記透明保護フィルムのような適当なフィルムに反射層を設けた反射シート等を使用してもよい。前記反射板における前記反射層は、通常、金属から構成されるため、例えば、酸化による反射率の低下防止、ひいては初期反射率の長期持続や、透明保護層の別途形成を回避する点等から、その使用形態は、前記反射層の反射面が前記フィルムや偏光板等で被覆された状態であることが好ましい。
一方、前記半透過型偏光板は、前記反射型偏光板において、反射板に代えて、半透過型の反射板を有するものである。前記半透過型反射板としては、例えば、反射層で光を反射し、かつ、光を透過するハーフミラー等があげられる。
前記半透過型偏光板は、通常、液晶セルの裏側に設けられ、液晶表示装置等を比較的明るい雰囲気で使用する場合には、視認側(表示側)からの入射光を反射して画像を表示し、比較的暗い雰囲気においては、半透過型偏光板のバックサイドに内蔵されているバックライト等の内蔵光源を使用して画像を表示するタイプの液晶表示装置等に使用できる。すなわち、前記半透過型偏光板は、明るい雰囲気下では、バックライト等の光源使用のエネルギーを節約でき、一方、比較的暗い雰囲気下においても、前記内蔵光源を用いて使用できるタイプの液晶表示装置等の形成に有用である。
つぎに、前記積層偏光板に、さらに輝度向上フィルムが積層された偏光板の一例を説明する。
前記輝度向上フィルムとしては、特に限定されず、例えば、誘電体の多層薄膜や、屈折率異方性が相違する薄膜フィルムの多層積層体のような、所定偏光軸の直線偏光を透過して、他の光は反射する特性を示すもの等が使用できる。このような輝度向上フィルムとしては、例えば、3M社製の商品名「D−BEF」等があげられる。また、コレステリック液晶層、特にコレステリック液晶ポリマーの配向フィルムや、その配向液晶層をフィルム基材上に支持したもの等が使用できる。これらは、左右一方の円偏光を反射して、他の光は透過する特性を示すものであり、例えば、日東電工社製の商品名「PCF350」、Merck社製の商品名「Transmax」等があげられる。
以上のような各種積層偏光板は、例えば、さらに他の光学層が積層された光学部材であってもよい。
このように2層以上の光学層を積層した光学部材は、例えば、液晶表示装置等の製造過程において、順次別個に積層する方式によっても形成できるが、予め積層した光学部材として使用すれば、例えば、品質の安定性や組立作業性等に優れ、液晶表示装置等の製造効率を向上できるという利点がある。なお、積層には、前述と同様に、粘着層等の各種接着手段を用いることができる。
前述のような各種偏光板は、例えば、液晶セル等の他の部材への積層が容易になることから、さらに粘着剤層や接着剤層を有していることが好ましく、これらは、前記偏光板の片面または両面に配置することができる。前記粘着層の材料としては、特に制限されず、アクリル系ポリマー等の従来公知の材料が使用でき、特に、吸湿による発泡や剥離の防止、熱膨張差等による光学特性の低下や液晶セルの反り防止、ひいては高品質で耐久性に優れる液晶表示装置の形成性等の点より、例えば、吸湿率が低くて耐熱性に優れる粘着層となることが好ましい。また、微粒子を含有して光拡散性を示す粘着層等でもよい。前記偏光板表面への前記粘着剤層の形成は、例えば、各種粘着材料の溶液または溶融液を、流延や塗工等の展開方式により、前記偏光板の所定の面に直接添加して層を形成する方式や、同様にして後述するセパレータ上に粘着剤層を形成させて、それを前記偏光板の所定面に移着する方式等によって行うことができる。なお、このような層は、偏光板のいずれの表面に形成してもよく、例えば、偏光板における前記位相差板の露出面に形成してもよい。
このように偏光板に設けた粘着剤層等の表面が露出する場合は、前記粘着層を実用に供するまでの間、汚染防止等を目的として、セパレータによって前記表面をカバーすることが好ましい。このセパレータは、前記透明保護フィルム等のような適当なフィルムに、必要に応じて、シリコーン系、長鎖アルキル系、フッ素系、硫化モリブデン等の剥離剤による剥離コートを一層以上設ける方法等によって形成できる。
前記粘着剤層等は、例えば、単層体でもよいし、積層体でもよい。前記積層体としては、例えば、異なる組成や異なる種類の単層を組合せた積層体を使用することもできる。また、前記偏光板の両面に配置する場合は、例えば、それぞれ同じ粘着剤層でもよいし、異なる組成や異なる種類の粘着剤層であってもよい。
前記粘着剤層の厚みは、例えば、偏光板の構成等に応じて適宜に決定でき、一般には、1〜500μmである。
前記粘着剤層を形成する粘着剤としては、例えば、光学的透明性に優れ、適度な濡れ性、凝集性や接着性の粘着特性を示すものが好ましい。具体的な例としては、アクリル系ポリマーやシリコーン系ポリマー、ポリエステル、ポリウレタン、ポリエーテル、合成ゴム等のポリマーを適宜ベースポリマーとして調製された粘着剤等があげられる。
前記粘着剤層の粘着特性の制御は、例えば、前記粘着剤層を形成するベースポリマーの組成や分子量、架橋方式、架橋性官能基の含有割合、架橋剤の配合割合等によって、その架橋度や分子量を調節するというような、従来公知の方法によって適宜行うことができる。
以上のような本発明の積層位相差板や偏光板、各種光学部材(光学層を積層した各種偏光板)を形成する偏光フィルム、透明保護層、光学層、粘着剤層等の各層は、例えば、サリチル酸エステル系化合物、ベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、シアノアクリレート系化合物、ニッケル錯塩系化合物等の紫外線吸収剤で適宜処理することによって、紫外線吸収能を持たせたものでもよい。
本発明の積層位相差板や、これを備える前記積層偏光板は、前述のように、液晶表示装置等の各種装置の形成に使用することが好ましく、例えば、本発明の積層位相差板や前記積層偏光板を液晶セルの片側または両側に配置して液晶パネルとし、反射型や半透過型、あるいは透過・反射両用型等の液晶表示装置に用いることができる。
液晶表示装置を形成する前記液晶セルの種類は、任意で選択でき、例えば、薄膜トランジスタ型に代表されるアクティブマトリクス駆動型のもの、ツイストネマチック型やスーパーツイストネマチック型に代表される単純マトリクス駆動型のもの等、種々のタイプの液晶セルが使用できる。これらの中でも、本発明の光学フィルムや偏光板は、特にVA(垂直配向;Vertical Aligned)セルの光学補償に非常に優れているので、VAモードの液晶表示装置用の視角補償フィルムとして非常に有用である。
また、前記液晶セルは、通常、対向する液晶セル基板の間隙に液晶が注入された構造であって、前記液晶セル基板としては、特に制限されず、例えば、ガラス基板やプラスチック基板が使用できる。なお、前記プラスチック基板の材質としては、特に制限されず、従来公知の材料があげられる。
また、液晶セルの両面に偏光板や光学部材を設ける場合、少なくとも一方の面に本発明の積層位相差板や積層偏光板を配置すればよく、それらは同じ種類のものでもよいし、異なっていてもよい。さらに、液晶表示装置の形成に際しては、例えば、プリズムアレイシートやレンズアレイシート、光拡散板やバックライト等の適当な部品を、適当な位置に1層または2層以上配置することができる。
さらに、本発明の液晶表示装置は、液晶パネルを含み、前記液晶パネルとして、本発明の液晶パネルを使用する以外は、特に制限されない。光源を含む場合、特に制限されないが、例えば、光のエネルギーが有効に使用できることから、例えば、偏光を出射する平面光源であることが好ましい。
本発明の液晶パネルの一例としては、例えば、液晶セル、本発明の積層位相差板、偏光子および透明保護層を有しており、液晶セルの一方の面に積層位相差板が積層されており、前記積層位相差板の他方の面に、偏光子および透明保護層が、この順序で積層されている。前記液晶セルは、二枚の液晶セル基板の間に、液晶が保持された構成となっている。また、積層位相差板は、前述のように光学異方層(A)と光学異方層(B)の積層体であり、いずれの面が偏光子に面してもよい。
本発明の液晶表示装置は、視認側の光学フィルム(積層偏光板)の上に、例えば、さらに拡散板、アンチグレア層、反射防止膜、保護層や保護板を配置したり、または液晶パネルにおける液晶セルと偏光板との間に補償用位相差板等を適宜配置することもできる。
なお、本発明の積層位相差板やこれを備える前記積層偏光板は、前述のような液晶表示装置には限定されず、例えば、有機エレクトロルミネッセンス(EL)ディスプレイ、PDP、FED等の自発光型表示装置にも使用できる。自発光型フラットディスプレイに使用する場合は、例えば、本発明の積層位相差板や前記積層偏光板の面内位相差値Δndをλ/4にすることで、円偏光を得ることができるため、反射防止フィルターとして利用できる。
以下に、本発明の積層位相差板や前記積層偏光板を備えるエレクトロルミネッセンス(EL)表示装置について説明する。本発明のEL表示装置は、本発明の積層位相差板またはこれを備える前記積層偏光板を有していればよく、有機ELおよび無機ELのいずれでもよい。
近年、EL表示装置においても、黒状態における電極からの反射防止として、例えば、偏光子や偏光板等の光学フィルムをλ/4板とともに使用することが提案されている。本発明の積層位相差板や積層偏光板は、特に、EL層から、直線偏光、円偏光もしくは楕円偏光のいずれかの偏光が発光されている場合、あるいは、正面方向に自然光を発光していても、斜め方向の出射光が部分偏光している場合等に、非常に有用である。
まずここで、一般的な有機EL表示装置について説明する。前記有機EL表示装置は、一般に、透明基板上に、透明電極、有機発光層および金属電極がこの順序で積層された発光体(有機EL発光体)を有している。前記有機発光層は、種々の有機薄膜の積層体であり、例えば、トリフェニルアミン誘導体等からなる正孔注入層とアントラセン等の蛍光性有機固体からなる発光層との積層体や、このような発光層とペリレン誘導体等からなる電子注入層との積層体や、また、前記正孔注入層と発光層と電子注入層との積層体等、種々の組み合わせがあげられる。
そして、このような有機EL表示装置は、前記陽極と陰極とに電圧を印加することによって、前記有機発光層に正孔と電子とが注入され、前記正孔と電子とが再結合することによって生じるエネルギーが、蛍光物質を励起し、励起された蛍光物質が基底状態に戻るときに光を放射する、という原理で発光する。前記正孔と電子との再結合というメカニズムは、一般のダイオードと同様であり、電流と発光強度とは、印加電圧に対して整流性を伴う強い非線形性を示す。
前記有機EL表示装置においては、前記有機発光層での発光を取り出すために、少なくとも一方の電極が透明であることが必要なため、通常、酸化インジウムスズ(ITO)等の透明導電体で形成された透明電極が陽極として使用される。一方、電子注入を容易にして発光効率を上げるには、陰極に、仕事関数の小さな物質を用いることが重要であり、通常、Mg−Ag、Al−Li等の金属電極が使用される。
このような構成の有機EL表示装置において、前記有機発光層は、例えば、厚み10nm程度の極めて薄い膜で形成されることが好ましい。これは、前記有機発光層においても、透明電極と同様に、光をほぼ完全に透過させるためである。その結果、非発光時に、前記透明基板の表面から入射して、前記透明電極と有機発光層とを透過して前記金属電極で反射した光が、再び前記透明基板の表面側へ出る。このため、外部から視認した際に、有機EL表示装置の表示面が鏡面のように見えるのである。
本発明の有機EL表示装置は、例えば、前記有機発光層の表面側に透明電極を備え、前記有機発光層の裏面側に金属電極を備えた前記有機EL発光体を含む有機EL表示装置において、前記透明電極の表面に、本発明の積層位相差板や前記積層偏光板が配置されることが好ましく、さらにλ/4板を偏光板とEL素子との間に配置することが好ましい。このように、本発明の積層位相差板や積層偏光板を配置することによって、外界の反射を抑え、視認性向上が可能であるという効果を示す有機EL表示装置となる。また、前記透明電極と光学フィルムとの間に、さらに位相差板が配置されることが好ましい。
前記位相差板および偏光板等は、例えば、外部から入射して前記金属電極で反射してきた光を偏光する作用を有するため、その偏光作用によって前記金属電極の鏡面を外部から視認させないという効果がある。特に、位相差板として1/4波長板を使用し、かつ、前記偏光板と前記位相差板との偏光方向のなす角をπ/4に調整すれば、前記金属電極の鏡面を完全に遮蔽することができる。すなわち、この有機EL表示装置に入射する外部光は、前記偏光板によって直線偏光成分のみが透過する。この直線偏光は、前記位相差板によって、一般に楕円偏光となるが、特に前記位相差板が1/4波長板であり、しかも前記角がπ/4の場合には、円偏光となる。
この円偏光は、例えば、透明基板、透明電極、有機薄膜を透過し、金属電極で反射して、再び、有機薄膜、透明電極、透明基板を透過して、前記位相差板で再び直線偏光となる。そして、この直線偏光は、前記偏光板の偏光方向と直交しているため、前記偏光板を透過できず、その結果、前述のように、金属電極の鏡面を完全に遮蔽することができるのである。
以下、実施例及び比較例を用いて本発明を更に具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、光学特性や厚みは、以下の方法で測定した。
(位相差値の測定)
平行ニコル回転法を原理とする位相差計(王子計測機器製商品名KOBRA−21ADH)を用いて測定した(測定波長610nm)。
(膜厚測定)
アンリツ製商品名デジタルマイクロメーターK−351C型を使用して測定した。
厚み100μmのノルボルネンフィルムについて、175℃でテンター横延伸を行った。延伸倍率は、延伸方向における、延伸前の長さに対して、1.4倍とした。これによって、厚み69μm、Re(A)=67nm、Rth(A)=136nmの光学異方層Aを得た。一方、2,2’−ビス(3,4−ジカルボキジフェニル)ヘキサフルオロプロパン)および2,2’−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’−ジアミノビフェニルから合成されたポリイミド(重量平均分子量59,000)をシクロヘキサノンに溶解し、15重量%のポリイミド溶液を調製した。このポリイミド溶液を、二軸延伸した延伸PETフィルム上に塗工した後、前記塗工膜を乾燥し(温度150℃;時間5分)、前記延伸PETフィルム上に、厚み3μmの光学異方層(B)を形成した。この光学異方層(B)の光学特性は、Re(B)=3nm、Rth(B)=110nm、Rth(B)/Re(B)=32.7であった。そして、前記延伸PETフィルム上の光学異方層(B)と、光学異方層(A)とを、厚み15μmのアクリル系粘着剤を介して接着した後、前記延伸PETフィルムを剥離して、積層位相差板を得た。
(比較例1)
厚み100μmのノルボルネンフィルムについて、175℃でテンター横延伸を行った。延伸倍率は、延伸方向における、延伸前の長さに対して、1.8倍とした。これによって、厚み88μm、Re(A)=252nm、Rth(A)=252nm、Rth(A)/Re(A)=1.0の光学異方層(A)を得た。一方、同様にして厚み100μmのノルボルネンフィルムを1.5倍に延伸して、厚み95μm、Re(B)=180nm、Rth(B)=181nm、Rth(B)/Re(B)=1.0の光学異方層(B)を得た。そして、前記光学異方層(A)に、厚み15μmのアクリル系粘着剤を塗布し、前記光学異方層(A)と光学異方層(B)のそれぞれの面内遅相軸が互いに直交するように貼り合わせた。これによって積層位相差板(nx>ny>nz)を製造した。
実施例1、比較例1で得られた積層位相差板について、その厚み、面内位相差値(Re)および厚み方向位相差(Rth)の測定を行った。これらの結果を下記表1に示す。
前記表1に示すように、光学異方層(B)としてノルボルネンポリマーを使用した比較例1の積層位相差板では、実施例と同様の光学特性を得るためには、183μmもの厚みが必要となった。これに対して、光学異方層(B)としてポリイミドを使用した実施例1の積層位相差板によれば、十分な光学特性が得られただけでなく、比較例1の2分の1程度の薄型化が実現できた。
本発明の積層位相差板を製造し、これを用いて、さらに図1および図2に示す積層偏光板を製造した。なお、これらの図において、同一箇所には同一符号を付している。
この実施例において、図1に示す形態の積層偏光板10を作製した。まず、厚み100μmのノルボルネンフィルムについて、180℃で縦延伸を行った。延伸倍率は、延伸方向における、延伸前の長さに対して、1.2倍とした。これによって、厚み90μmの光学異方層(A)11aを得た。一方、2,2’−ビス(3,4−ジカルボキジフェニル)ヘキサフルオロプロパン)および2,2’−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’−ジアミノビフェニルから合成されたポリイミド(重量平均分子量59000)をシクロヘキサノンに溶解し、15重量%のポリイミド溶液を調製した。このポリイミド溶液を、二軸延伸した延伸PETフィルム上に塗工した後、前記塗工膜を乾燥し(温度150℃;時間5分)、前記延伸PETフィルム上に、厚み5μmの光学異方層(B)11bを形成した。そして、前記延伸PETフィルム上の光学異方層(B)11bと、光学異方層(A)11aとを、厚み15μmのアクリル系粘着剤14を介して接着した後、前記延伸PETフィルムを剥離して、厚み110μmの積層位相差板11を得た。
さらに、厚み80μmのポリビニルアルコール(PVA)フィルムを、ヨウ素水溶液中で5倍に延伸処理し、その後乾燥することによって偏光層13を得た。そして、厚み15μmのアクリル系粘着剤層14を介して、前記偏光層13の片面に厚み80μmのTACフィルム12を接着し、もう一方の表面に、前記積層位相差板11を前記光学異方層(A)11aが前記偏光層13側になるように接着し、厚み240μmの広視角化積層偏光板10を得た。
この実施例において、図2に示す形態の積層偏光板20を作製した。光学異方層(B)11bが偏光層13側となるように、積層位相差板11を偏光層に接着した以外は、前記実施例2と同様にして、厚み240μmの広視角化積層偏光板20を得た。
(比較例2)
厚み80μm、Re(A)0.9nm、Rth(A)59nm、Rth(A)/Re(A)66であるTACフィルムを光学異方層(A)とした。この上に、前記実施例2と同じポリイミド溶液を塗工し、130℃で5分間乾燥して、前記光学異方層(A)の上に、光学異方層(B)を形成し、厚み85μm、nx≒ny>nzを示す積層位相差板を作製した。さらに、前記実施例2と同様の偏光層の片面に、前記光学異方層(A)が対向するように、前記積層位相差板を厚み5μmのポリビニルアルコール(PVA)系粘着剤層を介して接着し、さらに、前記偏光層の他方の表面にPVA系接着剤層(厚み5μm)を介して、厚み80μmのTACフィルムを接着した。これによって厚み170μmの広視野角化積層偏光板を得た。
(比較例3)
実施例2と同様のポリイミド溶液を、ポリエステルフィルム上に塗工し、130℃で5分間乾燥し、160℃で1.1倍のテンター横延伸を行った。前記ポリエステルフィルムを除去することによって、ポリイミド製の光学異方層(B)を得た。この光学異方層(B)は、厚み6μm、Re(B)55nm、Rth(B)240nm、Rth(B)/Re(B)4.4であった。さらに、前記実施例2と同様の偏光層の片面に、前記光学異方層(B)を厚み5μmのポリビニルアルコール(PVA)系粘着剤層を介して接着し、さらに、前記偏光層の他方の表面にアクリル系粘着剤(厚み15μm)を介して、厚み80μmのTACフィルムを接着した。これによって光学異方層層(A)を含まない広視野角化積層偏光板を得た。
(比較例4)
厚み80μmのTACフィルムを、190℃で1.4倍にテンター横延伸することによって、厚み58μm、Re(A)40nm、Rth(A)46nm、Rth(A)/Re(A)1.2の光学異方層(A)を得た。一方、実施例2と同様のポリイミド溶液を、ポリエステルフィルム上に塗工し、130℃で5分間乾燥し、160℃で1.2倍の自由端縦延伸を行うことによって、前記ポリエステルフィルム上にポリイミド製の光学異方層(B)を形成した。この光学異方層(B)は、厚み6μm、Re(B)170nm、Rth(B)200nm、Rth(B)/Re(B)1.2であった。前記光学異方層(A)と光学異方層(B)とが対向するように、厚み15μmのアクリル系粘着剤で両者を接着した後、前記ポリエステルフィルムを除去することによって、積層位相差板を得た。この積層位相差板は、厚み64μm、Reが210nm、Rthが246nm、Rth/Reが1.2、(Rth−Re)が36nmであった。前記実施例2と同様の偏光層の片面に、前記光学異方層(A)が対向するように、前記積層位相差板を厚み5μmのPVA系粘着剤層を介して接着し、さらに、前記偏光層の他方の表面にPVA系接着剤層(厚み5μm)を介して、厚み80μmのTACフィルムを接着した。これによって厚み189μmの広視野角化積層偏光板を得た。
(比較例5)
実施例2と同様にして偏光層を得た。
実施例2、3および比較例2〜4で得られた広視角化積層偏光板における、光学異方層(A)、光学異方層(B)および積層位相差板について、それぞれ前述のようにして面内位相差値、厚み方向位相差等を測定した。その結果を下記表2に示す。
実施例2および3、比較例2〜4で得た広視角化積層偏光板、および比較例5で得た偏光板について、視野角特性を評価した。偏光板を、VA型液晶セルの両面に互いに透過軸が直交となるように配置して液晶表示装置を作製した。なお、実施例の広視角化積層偏光板は、積層位相差板が液晶セル側になるように配置した。そして、前記液晶表示装置の表示画面におけるCo(コントラスト)が10以上となる視野角を測定した。
コントラストは、以下の方法によって算出した。前記液晶表示装置に、白画像および黒画像を表示させ、商品名Ez contrast 160D(ELDIM社製)により、表示画面の正面、上下、左右、対角45°−225°、対角135°−315°方向におけるXYZ表示系のY値、x値、y値をそれぞれ測定した。そして、白画像におけるY値(Yw)と、黒画像におけるY値(YB)とから、各視野角におけるコントラスト「Yw/YB」を算出した。一方、比較例5として、前記積層偏光板に代えて前記偏光板のみを実装した液晶表示装置についても前記視野角におけるコントラストを確認した。コントラストが10以上を示す視野角の範囲を下記表3に示す。また、前記各液晶表示装置の表示画面を目視で観察して、前記積層位相差板の着色の有無を評価した。これらの結果を下記表3にあわせて示す。
前記表2に示すような本発明の積層位相差板を含む積層偏光板によれば、前記表3に示すように、各比較例に比べて、広視野角の液晶表示装置が得られた。比較例2は、光学異方層(A)によって十分に面内位相差が補われていないため、面内位相差(Re)が10nmより小さく、比較例4は、(Rth−Re)が50nmより小さいため、対角における視野角特性が劣り、比較例4については、着色も確認された。また、ポリイミド製の光学異方層(B)のみからなる比較例3は、実施例のように優れた対角における視野角特性を示さず、光学異方層(B)単独で、厚み方向位相差を大きくしたため、着色も確認された。このことから、本発明による広視角積層偏光板を用いれば、従来と比較し薄型で、かつ、視認性に優れる高品位表示の液晶表示装置を提供できると言える。
以上のように、本発明の積層位相差板は、そのReが10nm以上であり、かつ(Rth−Re)が50nm以上であるため、各種画像表示装置に適用した際に、広視角特性に優れ、かつ、薄型化も実現することができるため、非常に有用である。
本発明の実施例における、積層偏光板の一例を示す断面図である。
本発明のその他の実施例における、積層偏光板の一例を示す断面図である。
符号の説明
10、20、 積層偏光板
11 積層位相差板
11a 光学異方層(A)
11b 光学異方層(B)
12 透明保護層
13 偏光層
14 粘着剤層
15 接着剤層
前記目的を達成するために、本発明の積層位相差板は、
少なくとも2層の光学異方層を含む積層位相差板であって、
ポリマー製の光学異方層(A)と、非液晶性ポリマー製の光学異方層(B)とを含み、
前記ポリマー製の光学異方層(A)の前記ポリマーが、ポリノルボルネン系ポリマーであり、
前記非液晶性ポリマー製の光学異方層(B)の前記非液晶性ポリマーがポリイミドであり、
下記数式で表される面内位相差(Re)が10nm以上であり、
下記式で表される厚み方向位相差(Rth)と前記面内位相差(Re)との差(Rth−Re)が50nm以上であり、
前記光学異方層(A)において、下記数式で表される面内位相差[Re(A)]が20〜300nmの範囲であり、下記式で表される厚み方向位相差[Rth(A)]が24〜12000nmの範囲であることを特徴とする積層位相差板である。
Re=(nx−ny)・d
Rth=(nx−nz)・d
前記式において、nx、nyおよびnzは、それぞれ前記積層位相差板におけるX軸、Y軸およびZ軸方向の屈折率を示し、前記X軸とは、前記積層位相差板の面内において最大の屈折率を示す軸方向であり、Y軸は、前記面内において前記X軸に対して垂直な軸方向であり、Z軸は、前記X軸およびY軸に垂直な厚み方向であって、dは、前記積層位相差板における厚みを示す。
Re(A)=(nx(A)−ny(A))・d(A)
Rth(A)=(nx(A)−nz(A))・d(A)
前記式において、nx(A)、ny(A)およびnz(A)は、それぞれ前記光学異方層(A)におけるX軸、Y軸およびZ軸方向の屈折率を示し、前記X軸とは、前記光学異方層の面内において最大の屈折率を示す軸方向であり、Y軸は、前記面内において前記X軸に対して垂直な軸方向であり、Z軸は、前記X軸およびY軸に垂直な厚み方向であって、d(A)は、前記光学異方層(A)の厚みを示す(以下同様)。
本発明の積層位相差板は、前述のように、少なくとも、ポリノルボルネン系ポリマー製の光学異方層(A)と、非液晶性ポリマーのポリイミド製の光学異方層(B)とを含み、前記面内位相差(Re)が10nm以上であり、前記厚み方向位相差(Rth)と前記面内位相差(Re)との差(Rth−Re)が50nm以上であり、前記光学異方層(A)において、前記数式で表される面内位相差[Re(A)]が20〜300nmの範囲であり、前記式で表される厚み方向位相差[Rth(A)]が24〜12000nmの範囲であることを特徴とする。
本発明において、前記光学異方層(A)は、前記式に示す面内位相差[Re(A)]が20〜300nmであり、前記式に示す厚み方向位相差[Rth(A)]が24〜12000nmの範囲である。前記厚み方向位相差[Rth(A)]は136〜12000nmの範囲が好ましい。また、前記光学異方層(A)において、前記厚み方向位相差[Rth(A)]と前記面内位相差[Re(A)]との比[Rth(A)/Re(A)]が1.2以上であることが好ましく、特に好ましくは1.2〜40である。これは、前記厚み方向位相差と面内位相差との比[Rth(A)/Re(A)]が1.2未満であると、例えば、液晶表示装置に使用した際に、厚み方向における位相差値を十分に補償することができず、視野角が狭くなるという問題があり、面内位相差が20nm未満もしくは300nmより大きいと、視野角が狭くなるという問題があるためである。
前記光学異方層(A)と光学異方層(B)との組合わせの具体例としては、例えば、前記光学異方層(A)と、面内位相差[Re(B)]が3nm以上、厚み方向位相差[Rth(B)]と前記面内位相差[Re(B)]との比[Rth(B)/Re(B)]が1.0以上である光学異方層(B)との組合わせ等があげられる。
まず、前記光学異方層(A)を準備する。この光学異方層(A)は、前述のように、面内位相差[Re(A)]が20〜300nmであり、厚み方向位相差[Rth(A)]が24〜12000nmであり、前記面内位相差[Re(A)]との比[Rth(A)/Re(A)]が1.2以上であればよい。このようなポリマー製のフィルムとしては、前述のように未延伸フィルムでも、延伸フィルムであってもよい。前記延伸フィルムとしては、例えば、押し出し成型や流延製膜によって形成したポリマーフィルムを延伸することによって得られる。前記延伸フィルムは、一軸延伸フィルムでも二軸延伸フィルムでもよい。