JP4137651B2 - 複屈折層の製造方法、および前記複屈折層を含む光学フィルム - Google Patents

複屈折層の製造方法、および前記複屈折層を含む光学フィルム Download PDF

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【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば、液晶パネル等の光学補償に使用する複屈折層およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、液晶表示装置等の各種表示装置には、光学補償用の位相差フィルムが使用されており、前記位相差フィルムについては、例えば、ポリアミド、ポリイミド、ポリエステル、ポリエーテルケトン、ポリアミドイミド、ポリエステルイミド等のポリマーを、無機化合物製の板(SUSベルト、銅薄板、ガラス、Siウエハ等)の上に塗工することによって負の複屈折層を形成する方法が知られている。また、ポリイミドをSiウエハ上に塗工して、負の複屈折層である位相差フィルムを製造する方法等も開示されている(例えば、特許文献1、特許文献2、特許文献3、特許文献4参照)。
【0003】
さらに、ポリイミド層を、ガラス、光学的等方性ポリマー層、異方性ポリマー層または異方性セラミック層等の支持体に積層した、負の複屈折を示す広視野角化層も開示されている(特許文献5参照)。
【0004】
そして、このようにして作製した位相差板は、例えば、液晶セルと偏光子との間に配置して、液晶表示装置における液晶セルの視角補償のために使用される。
【0005】
【特許文献1】
米国特許第5,344,916号明細書
【特許文献2】
米国特許第5,395,918号明細書
【特許文献3】
米国特許第5,480,964号明細書
【特許文献4】
米国特許第5,580,950号明細書
【特許文献5】
米国特許第6,074,709号明細書
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、以上のような光学フィルム(位相差フィルム)の製造方法は、広く採用されているが、実用に際して以下のような問題がある。例えば、前述のように、無機化合物の基材上にポリイミド等を塗工した場合、光学補償において前記基材は不要であることから、前記基材上に形成された複屈折層のみを、前記基材から前記複屈折層を適用する部材に転写したり、前記基材から前記複屈折層を剥離して巻き取ること等が必要となる。このように、複屈折層を形成した後も、使用に際して数回の工程を経る必要があるため、例えば、量産性には優れていない。また、基材の材料として前記無機化合物を使用すると、コストがかかる等の問題もある。
【0007】
このような問題を解決すべく、近年では、前記無機化合物の基材ではなく、例えば、樹脂フィルムを基材として使用し、この基材上に負の複屈折率を有する複屈折層を形成する方法が提供されている。しかしながら、このような方法を用いて、nx≒ny>nzという負の一軸性である複屈折層を形成する場合であっても、例えば、前記複屈折層を位相差フィルムとして液晶表示装置等に適用した際、光モレが生じ、偏光特性が低下するというような表示特性上の問題が見られた。なお、前記nx、ny、nzとは、前記複屈折層における3つの軸方向(X軸、Y軸、Z軸)における屈折率をそれぞれ示し、前記X軸とは前記複屈折層面内において最大の屈折率を示す軸方向であり、Y軸は、前記面内において前記X軸に対して垂直な軸方向であり、Z軸は、前記X軸およびY軸に垂直な厚み方向を示す。
【0008】
そこで、本発明の目的は、例えば、光モレ等の表示特性上の問題が回避された、優れた光学補償機能を有する複屈折層の製造方法の提供である。
【0009】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成するために、本発明の複屈折層の製造方法は、
基材に複屈折層の形成材料を直接塗工する工程と、
前記塗工した形成材料を乾燥することより、前記基材上に、固化された複屈折層を直接形成する工程とを有する複屈折層の製造方法であって、
前記基材として、前記塗工工程および乾燥工程を施した後の下記式(A)に示す寸法変化量が1%以下となる樹脂製基材を使用し、
前記形成材料の塗工が、前記形成材料を含む溶液の塗工であり、
前記樹脂が、トリアセチルセルロース、ポリエチレンテレフタレートまたはアクリロニトリル−スチレン共重合体であり、
前記樹脂製基材が、前記塗工工程前に、予め、加熱処理を施されており、これによって、前記塗工工程および乾燥工程を施した後の前記寸法変化量が1%以下に調整されていることを特徴とする。
寸法変化量(%)=(|X−Y|/X)×100 ・・・(A)
前記式(A)において、Xは、前記塗工工程前の前記樹脂製基材の長さを示し、Yは、前記塗工工程および乾燥工程後の前記樹脂製基材の長さを示し、前記XおよびYは共に同じ方向の長さである。
【0010】
本発明者らは、前記問題を解決すべく鋭意研究を行った結果、従来の方法により、樹脂フィルムを基材として使用し、nx≒ny>nzの光学特性を示す負の複屈折層を形成しようとした場合、得られた前記複屈折層に、例えば、10nm以上の下記式で表される面内位相差(Δnd)が発生すること、さらに、このような複屈折層を二枚の偏光板で挟み、クロスニコル下で直交透過率を測定した場合、その直交透過率が0.2%以上となることを確認した。なお、前記偏光板のみの場合、直交透過率は、通常、0.1%程度である。そして、前記複屈折層における面内屈折率が、「nx≒ny」ではなく、実際には「nx≠ny」となっているために、前記面内位相差が10nm以上となり、かつ、「nx≒ny>nz」の光学特性を満たすことができないとの知見を得たのである。さらに、このように面内位相差や直交透過率に問題があるために、前述のような光モレとという表示特性上の問題が生じるのだが、その原因が、前記樹脂フィルムへの複屈折層形成材料の塗工工程および前記形成材料の乾燥工程によって、前記樹脂フィルムに生じる収縮にあると推測したのである。そこで、本発明者らは、前述のように、前記基材として、前記塗工工程および乾燥工程を施した後の前記寸法変化量が0.1%以下となる樹脂製基材を使用することによって、前述のような問題を回避できることを見出し、本発明に到達したのである。つまり、本発明の製造方法によれば、前記基材の収縮を防止できるため、面内位相差が抑制(例えば、1nm以下)されて「nx≒ny」を示し、かつ直交透過率も抑制された複屈折層の製造が容易になるのである。なお、前記nx、ny、nzとは、前述と同様に、前記複屈折層における3つの軸方向(X軸、Y軸、Z軸)における屈折率をそれぞれ示す。
【0011】
Δnd=(nx-ny)d
前記式において、「d」は複屈折層の厚みを示す。
【0012】
また、このような製造方法によれば、基材上に複屈折層の形成材料を直接塗工し、乾燥によって前記形成材料を固化するだけで、容易に基板上に複屈折層を形成することができ、かつ、従来のような無機化合物の基材も不要となることから、例えば、低コスト化が可能になり、量産性にも優れるため、製造面においても非常に有用な方法である。
【0013】
つぎに、本発明の光学フィルムは、複屈折層を含む光学フィルムであって、前記複屈折層が、前記本発明の複屈折層の製造方法によって製造された複屈折層であることを特徴とする。このような光学フィルムは、前述のように「nx≒ny<nz」の光学特性を有する負の複屈折層を含むため、例えば、光モレがなく、広視野において良好なコントラストが得られるという効果を奏する。したがって、本発明の光学フィルムは、例えば、光学補償用の位相差フィルムや位相差板として、例えば、液晶パネルや、液晶表示装置等の各種表示装置等にも有用である。
【0014】
【発明の実施の形態】
本発明の複屈折層の製造方法は、前述のように、基材に複屈折層の形成材料を直接塗工する工程と、
前記塗工した形成材料を乾燥することより、前記基材上に、固化された複屈折層を直接形成する工程とを有する複屈折層の製造方法であって、
前記基材として、前記塗工工程および乾燥工程を施した後の下記式(A)に示す寸法変化量が1%以下となる樹脂製基材を使用し、
前記形成材料の塗工が、前記形成材料を含む溶液の塗工であることを特徴とする。
寸法変化量(%)= (|X−Y|/X)×100 ・・・(A)
前記式(A)において、Xは、前記塗工工程前の前記樹脂製基材の長さを示し、Yは、前記塗工工程および乾燥工程後の前記樹脂製基材の長さを示し、前記XおよびYは共に同じ方向の長さである。
【0015】
前記複屈折層の形成材料としては、特に制限されないが、例えば、非液晶性材料、特に非液晶性ポリマーであることが好ましい。このような非液晶性材料を用いれば、例えば、液晶性材料とは異なり、基材の配向性に関係なく、それ自身の性質により光学的に負の一軸性(nx>nz)、(ny>nz)を示す膜が形成できる。
【0016】
前記非液晶性ポリマーとしては、例えば、耐熱性、耐薬品性、透明性に優れ、剛性にも富むことから、ポリアミド、ポリイミド、ポリエステル、ポリエーテルケトン、ポリアミドイミド、ポリエステルイミド等のポリマーが好ましい。これらのポリマーは、いずれか一種類を単独で使用してもよいし、例えば、ポリアリールエーテルケトンとポリアミドとの混合物のように、異なる官能基を持つ2種以上の混合物として使用してもよい。このようなポリマーの中でも、高い複屈折性が得られることから、ポリイミド等が好ましい。
【0017】
前記ポリマーの分子量は、特に制限されないが、例えば、重量平均分子量(Mw)が1,000〜1,000,000の範囲であることが好ましく、より好ましくは2,000〜500,000の範囲である。
【0018】
前記ポリイミドとしては、例えば、面内配向性が高く、有機溶剤に可溶なポリイミドが好ましい。具体的には、例えば、特表2000−511296号公報に開示された、9,9-ビス(アミノアリール)フルオレンと芳香族テトラカルボン酸二無水物との縮合重合生成物、具体的には、下記式(1)に示す繰り返し単位を1つ以上含むポリマーが使用できる。
【0019】
【化1】
Figure 0004137651
前記式(1)中、R3〜R6は、水素、ハロゲン、フェニル基、1〜4個のハロゲン原子またはC110アルキル基で置換されたフェニル基、およびC110アルキル基からなる群からそれぞれ独立に選択される少なくとも一種類の置換基である。好ましくは、R3〜R6は、ハロゲン、フェニル基、1〜4個のハロゲン原子またはC110アルキル基で置換されたフェニル基、およびC110アルキル基からなる群からそれぞれ独立に選択される少なくとも一種類の置換基である。
【0020】
前記式(1)中、Zは、例えば、C620の4価芳香族基であり、好ましくは、ピロメリット基、多環式芳香族基、多環式芳香族基の誘導体、または、下記式(2)で表される基である。
【0021】
【化2】
Figure 0004137651
前記式(2)中、Z’は、例えば、共有結合、C(R7)2基、CO基、O原子、S原子、SO2基、Si(C25)2基、または、NR8基であり、複数の場合、それぞれ同一であるかまたは異なる。また、wは、1から10までの整数を表す。R7は、それぞれ独立に、水素またはC(R93である。R8は、水素、炭素原子数1〜約20のアルキル基、またはC620アリール基であり、複数の場合、それぞれ同一であるかまたは異なる。R9は、それぞれ独立に、水素、フッ素、または塩素である。
【0022】
前記多環式芳香族基としては、例えば、ナフタレン、フルオレン、ベンゾフルオレンまたはアントラセンから誘導される4価の基があげられる。また、前記多環式芳香族基の置換誘導体としては、例えば、C110のアルキル基、そのフッ素化誘導体、およびFやCl等のハロゲンからなる群から選択される少なくとも一つの基で置換された前記多環式芳香族基があげられる。
【0023】
この他にも、例えば、特表平8−511812号公報に記載された、繰り返し単位が下記一般式(3)または(4)で示されるホモポリマーや、繰り返し単位が下記一般式(5)で示されるポリイミド等があげられる。なお、下記式(5)のポリイミドは、下記式(3)のホモポリマーの好ましい形態である。
【0024】
【化3】
Figure 0004137651
【化4】
Figure 0004137651
【化5】
Figure 0004137651
【0025】
前記一般式(3)〜(5)中、GおよびG’は、例えば、共有結合、CH2基、C(CH3)2基、C(CF3)2基、C(CX3)2基(ここで、Xは、ハロゲンである。)、CO基、O原子、S原子、SO2基、Si(CH2CH3)2基、および、N(CH3)基からなる群から、それぞれ独立して選択される基を表し、それぞれ同一でも異なってもよい。
【0026】
前記式(3)および式(5)中、Lは、置換基であり、dおよびeは、その置換数を表す。Lは、例えば、ハロゲン、C1-3アルキル基、C1-3ハロゲン化アルキル基、フェニル基、または、置換フェニル基であり、複数の場合、それぞれ同一であるかまたは異なる。前記置換フェニル基としては、例えば、ハロゲン、C1-3アルキル基、およびC1-3ハロゲン化アルキル基からなる群から選択される少なくとも一種類の置換基を有する置換フェニル基があげられる。また、前記ハロゲンとしては、例えば、フッ素、塩素、臭素またはヨウ素があげられる。dは、0から2までの整数であり、eは、0から3までの整数である。
【0027】
前記式(3)〜(5)中、Qは置換基であり、fはその置換数を表す。Qとしては、例えば、水素、ハロゲン、アルキル基、置換アルキル基、ニトロ基、シアノ基、チオアルキル基、アルコキシ基、アリール基、置換アリール基、アルキルエステル基、および置換アルキルエステル基からなる群から選択される原子または基であって、Qが複数の場合、それぞれ同一であるかまたは異なる。前記ハロゲンとしては、例えば、フッ素、塩素、臭素およびヨウ素があげられる。前記置換アルキル基としては、例えば、ハロゲン化アルキル基があげられる。また前記置換アリール基としては、例えば、ハロゲン化アリール基があげられる。fは、0から4までの整数であり、gおよびhは、それぞれ0から3および1から3までの整数である。また、gおよびhは、1より大きいことが好ましい。
【0028】
前記式(4)中、R10およびR11は、水素、ハロゲン、フェニル基、置換フェニル基、アルキル基、および置換アルキル基からなる群から、それぞれ独立に選択される基である。その中でも、R10およびR11は、それぞれ独立に、ハロゲン化アルキル基であることが好ましい。
【0029】
前記式(5)中、M1およびM2は、同一であるかまたは異なり、例えば、ハロゲン、C1-3アルキル基、C1-3ハロゲン化アルキル基、フェニル基、または、置換フェニル基である。前記ハロゲンとしては、例えば、フッ素、塩素、臭素およびヨウ素があげられる。また、前記置換フェニル基としては、例えば、ハロゲン、C1-3アルキル基、およびC1-3ハロゲン化アルキル基からなる群から選択される少なくとも一種類の置換基を有する置換フェニル基があげられる。
【0030】
前記式(3)に示すポリイミドの具体例としては、例えば、下記式(6)で表されるもの等があげられる。
【化6】
Figure 0004137651
【0031】
さらに、前記ポリイミドとしては、例えば、前述のような骨格(繰り返し単位)以外の酸二無水物やジアミンを、適宜共重合させたコポリマーがあげられる。
【0032】
前記酸二無水物としては、例えば、芳香族テトラカルボン酸二無水物があげられる。前記芳香族テトラカルボン酸二無水物としては、例えば、ピロメリト酸二無水物、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、複素環式芳香族テトラカルボン酸二無水物、2,2′−置換ビフェニルテトラカルボン酸二無水物等があげられる。
【0033】
前記ピロメリト酸二無水物としては、例えば、ピロメリト酸二無水物、3,6−ジフェニルピロメリト酸二無水物、3,6−ビス(トリフルオロメチル)ピロメリト酸二無水物、3,6−ジブロモピロメリト酸二無水物、3,6−ジクロロピロメリト酸二無水物等があげられる。前記ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物としては、例えば、3,3′,4,4′−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,3,3′,4′−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2′,3,3′−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物等があげられる。前記ナフタレンテトラカルボン酸二無水物としては、例えば、2,3,6,7−ナフタレン−テトラカルボン酸二無水物、1,2,5,6−ナフタレン−テトラカルボン酸二無水物、2,6−ジクロロ−ナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸二無水物等があげられる。前記複素環式芳香族テトラカルボン酸二無水物としては、例えば、チオフェン−2,3,4,5−テトラカルボン酸二無水物、ピラジン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、ピリジン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物等があげられる。前記2,2′−置換ビフェニルテトラカルボン酸二無水物としては、例えば、2,2′−ジブロモ−4,4′,5,5′−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2′−ジクロロ−4,4′,5,5′−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2′−ビス(トリフルオロメチル)−4,4′,5,5′−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物等があげられる。
【0034】
また、前記芳香族テトラカルボン酸二無水物のその他の例としては、3,3′,4,4′−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(2,5,6−トリフルオロ−3,4−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン二無水物、4,4′−(3,4−ジカルボキシフェニル)−2,2−ジフェニルプロパン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、4,4′−オキシジフタル酸二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン酸二無水物、(3,3′,4,4′−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物)、4,4′−[4,4′−イソプロピリデン−ジ(p−フェニレンオキシ)]ビス(フタル酸無水物)、N,N−(3,4−ジカルボキシフェニル)−N−メチルアミン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ジエチルシラン二無水物等があげられる。
【0035】
これらの中でも、前記芳香族テトラカルボン酸二無水物としては、2,2′−置換ビフェニルテトラカルボン酸二無水物が好ましく、より好ましくは、2,2′−ビス(トリハロメチル)−4,4′,5,5′−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物であり、さらに好ましくは、2,2′−ビス(トリフルオロメチル)−4,4′,5,5′−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物である。
【0036】
前記ジアミンとしては、例えば、芳香族ジアミンがあげられ、具体例としては、ベンゼンジアミン、ジアミノベンゾフェノン、ナフタレンジアミン、複素環式芳香族ジアミン、およびその他の芳香族ジアミンがあげられる。
【0037】
前記ベンゼンジアミンとしては、例えば、o−、m−およびp−フェニレンジアミン、2,4−ジアミノトルエン、1,4−ジアミノ−2−メトキシベンゼン、1,4−ジアミノ−2−フェニルベンゼンおよび1,3−ジアミノ−4−クロロベンゼンのようなベンゼンジアミンから成る群から選択されるジアミン等があげられる。前記ジアミノベンゾフェノンの例としては、2,2′−ジアミノベンゾフェノン、および3,3′−ジアミノベンゾフェノン等があげられる。前記ナフタレンジアミンとしては、例えば、1,8−ジアミノナフタレン、および1,5−ジアミノナフタレン等があげられる。前記複素環式芳香族ジアミンの例としては、2,6−ジアミノピリジン、2,4−ジアミノピリジン、および2,4−ジアミノ−S−トリアジン等があげられる。
【0038】
また、前記芳香族ジアミンとしては、これらの他に、4,4′−ジアミノビフェニル、4,4′−ジアミノジフェニルメタン、4,4′−(9−フルオレニリデン)-ジアニリン、2,2'−ビス(トリフルオロメチル)−4,4'−ジアミノビフェニル、3,3'−ジクロロ−4,4'−ジアミノジフェニルメタン、2,2'−ジクロロ−4,4'−ジアミノビフェニル、2,2',5,5'−テトラクロロベンジジン、2,2−ビス(4−アミノフェノキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、4,4′−ジアミノジフェニルエーテル、3,4′−ジアミノジフェニルエーテル、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4′−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、4,4′−ビス(3−アミノフェノキシ)ビフェニル、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、4,4′−ジアミノジフェニルチオエーテル、4,4′−ジアミノジフェニルスルホン等があげられる。
【0039】
前記複屈折層の形成材料である前記ポリエーテルケトンとしては、例えば、特開2001−49110号公報に記載された、下記一般式(7)で表されるポリアリールエーテルケトンがあげられる。
【0040】
【化7】
Figure 0004137651
前記式(7)中、Xは、置換基を表し、qは、その置換数を表す。Xは、例えば、ハロゲン原子、低級アルキル基、ハロゲン化アルキル基、低級アルコキシ基、または、ハロゲン化アルコキシ基であり、Xが複数の場合、それぞれ同一であるかまたは異なる。
【0041】
前記ハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、臭素原子、塩素原子およびヨウ素原子があげられ、これらの中でも、フッ素原子が好ましい。前記低級アルキル基としては、例えば、C16の直鎖または分岐鎖を有する低級アルキル基が好ましく、より好ましくはC14の直鎖または分岐鎖のアルキル基である。具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、および、tert-ブチル基が好ましく、特に好ましくは、メチル基およびエチル基である。前記ハロゲン化アルキル基としては、例えば、トリフルオロメチル基等の前記低級アルキル基のハロゲン化物があげられる。前記低級アルコキシ基としては、例えば、C16の直鎖または分岐鎖のアルコキシ基が好ましく、より好ましくはC14の直鎖または分岐鎖のアルコキシ基である。具体的には、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基、sec-ブトキシ基、および、tert-ブトキシ基が、さらに好ましく、特に好ましくはメトキシ基およびエトキシ基である。前記ハロゲン化アルコキシ基としては、例えば、トリフルオロメトキシ基等の前記低級アルコキシ基のハロゲン化物があげられる。
【0042】
前記式(7)中、qは、0から4までの整数である。前記式(7)においては、q=0であり、かつ、ベンゼン環の両端に結合したカルボニル基とエーテルの酸素原子とが互いにパラ位に存在することが好ましい。
【0043】
また、前記式(7)中、R1は、下記式(8)で表される基であり、mは、0または1の整数である。
【0044】
【化8】
Figure 0004137651
前記式(8)中、X’は置換基を表し、例えば、前記式(7)におけるXと同様である。前記式(8)において、X’が複数の場合、それぞれ同一であるかまたは異なる。q’は、前記X’の置換数を表し、0から4までの整数であって、q’=0が好ましい。また、pは、0または1の整数である。
【0045】
前記式(8)中、R2は、2価の芳香族基を表す。この2価の芳香族基としては、例えば、o−、m−もしくはp−フェニレン基、または、ナフタレン、ビフェニル、アントラセン、o−、m−もしくはp−テルフェニル、フェナントレン、ジベンゾフラン、ビフェニルエーテル、もしくは、ビフェニルスルホンから誘導される2価の基等があげられる。これらの2価の芳香族基において、芳香族に直接結合している水素が、ハロゲン原子、低級アルキル基または低級アルコキシ基で置換されてもよい。これらの中でも、前記R2としては、下記式(9)〜(15)からなる群から選択される芳香族基が好ましい。
【0046】
【化9】
Figure 0004137651
【0047】
前記式(7)中、前記R1としては、下記式(16)で表される基が好ましく、下記式(16)において、R2およびpは前記式(8)と同義である。
【0048】
【化10】
Figure 0004137651
【0049】
さらに、前記式(7)中、nは重合度を表し、例えば、2〜5000の範囲であり、好ましくは、5〜500の範囲である。また、その重合は、同じ構造の繰り返し単位からなるものであってもよく、異なる構造の繰り返し単位からなるものであってもよい。後者の場合には、繰り返し単位の重合形態は、ブロック重合であってもよいし、ランダム重合でもよい。
【0050】
さらに、前記式(7)で示されるポリアリールエーテルケトンの末端は、p−テトラフルオロベンゾイレン基側がフッ素であり、オキシアルキレン基側が水素原子であることが好ましく、このようなポリアリールエーテルケトンは、下記一般式(17)で表すことができる。なお、下記式において、nは前記式(7)と同様の重合度を表す。
【0051】
【化11】
Figure 0004137651
【0052】
前記式(7)で示されるポリアリールエーテルケトンの具体例としては、下記式(18)〜(21)で表されるもの等があげられ、下記各式において、nは、前記式(7)と同様の重合度を表す。
【0053】
【化12】
Figure 0004137651
【化13】
Figure 0004137651
化14
Figure 0004137651
化15
Figure 0004137651
【0054】
また、これらの他に、前記複屈折層の形成材料である前記ポリアミドまたはポリエステルとしては、例えば、特表平10−508048号公報に記載されるポリアミドやポリエステルがあげられ、それらの繰り返し単位は、例えば、下記一般式(22)で表すことができる。
【0055】
【化16】
Figure 0004137651
前記式(22)中、Yは、OまたはNHである。また、Eは、例えば、共有結合、C2アルキレン基、ハロゲン化C2アルキレン基、CH2基、C(CX3)2基(ここで、Xはハロゲンまたは水素である。)、CO基、O原子、S原子、SO2基、Si(R)2基、および、N(R)基からなる群から選ばれる少なくとも一種類の基であり、それぞれ同一でもよいし異なってもよい。前記Eにおいて、Rは、C1-3アルキル基およびC1-3ハロゲン化アルキル基の少なくとも一種類であり、カルボニル官能基またはY基に対してメタ位またはパラ位にある。
【0056】
また、前記(22)中、AおよびA’は、置換基であり、tおよびzは、それぞれの置換数を表す。また、pは、0から3までの整数であり、qは、1から3までの整数であり、rは、0から3までの整数である。
【0057】
前記Aは、例えば、水素、ハロゲン、C1-3アルキル基、C1-3ハロゲン化アルキル基、OR(ここで、Rは、前記定義のものである。)で表されるアルコキシ基、アリール基、ハロゲン化等による置換アリール基、C1-9アルコキシカルボニル基、C1-9アルキルカルボニルオキシ基、C1-12アリールオキシカルボニル基、C1-12アリールカルボニルオキシ基およびその置換誘導体、C1-12アリールカルバモイル基、ならびに、C1-12アリールカルボニルアミノ基およびその置換誘導体からなる群から選択され、複数の場合、それぞれ同一であるかまたは異なる。前記A’は、例えば、ハロゲン、C1-3アルキル基、C1-3ハロゲン化アルキル基、フェニル基および置換フェニル基からなる群から選択され、複数の場合、それぞれ同一であるかまたは異なる。前記置換フェニル基のフェニル環上の置換基としては、例えば、ハロゲン、C1-3アルキル基、C1-3ハロゲン化アルキル基およびこれらの組み合わせがあげられる。前記tは、0から4までの整数であり、前記zは、0から3までの整数である。
【0058】
前記式(22)で表されるポリアミドまたはポリエステルの繰り返し単位の中でも、下記一般式(23)で表されるものが好ましい。
【0059】
【化17】
Figure 0004137651
前記式(23)中、A、A’およびYは、前記式(22)で定義したものであり、vは0から3の整数、好ましくは、0から2の整数である。xおよびyは、それぞれ0または1であるが、共に0であることはない。
【0060】
一方、前記樹脂製基材の材質は、トリアセチルセルロース(TAC)等のアセテート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、またはアクリロニトリル・スチレン共重合体である。前記樹脂製基材の材質は、透明性に優れる樹脂等が好ましい。このように透明性に優れる樹脂であれば、例えば、後述するように、前記基材と前記基材上の複屈折層との積層体を本発明の光学フィルムとして使用することもでき、積層構造の光学フィルムの製造がより一層簡便になる。
【0061】
本発明の複屈折層の製造方法は、例えば、以下に示すようにして行うことができる。
【0062】
まず、複屈折層の形成材料を塗工するための基材として、前述のような条件式(A)で表される寸法変化量を満たす基材を準備する。前記基材としては、前述のように前記寸法変化量が前記条件式を満たす樹脂製基材であれば制限されないが、例えば、以下のようなものがあげられる。
【0063】
本発明においては、前記塗工工程前に、前記樹脂製基材に予め加熱処理を施されており、これによって、前記塗工工程および乾燥工程を施した後の前記寸法変化量が1%以下に調整する。基材に予め加熱処理を施せば、例えば、これによって更なる収縮が起り難い状態、つまり、後に再度加熱条件下にさらされても、それ以上収縮し難いレベルにまで収縮させておくことができる。このため、具体的には、複屈折層形成材料を含む塗工液の塗工や乾燥(固化)工程において、基材の寸法変化量が抑制され、その結果、複屈折層の面内位相差を生じ難くすることができるのである。
【0064】
加熱処理の条件は、処理後の基材が前記寸法変化量を満たす条件であれば、特に制限されないが、例えば、基材の材質やその厚み等に応じて適宜決定される。具体的には、例えば、以下に示す方法によって、その条件を決定することができる。
【0065】
任意の加熱温度を設定して、準備した基材に加熱処理を施し、各温度および加熱処理時間における前記基材の寸法変化量を測定する。つぎに、横軸に加熱処理の時間、縦軸に基材の寸法変化量をそれぞれプロットしたグラフを作成する。そして、それ以上加熱処理を施しても、基材の寸法変化量が1%を超えない処理時間を算出し、その加熱温度および算出した処理時間に基づき、前記形成材料の塗工前に、基材に予め加熱処理を施せばよい。このようにすれば、使用する基材の材質や厚み、形成材料の乾燥工程の処理温度等に応じて、基材に必要な加熱処理の条件を決定することができる。
【0066】
加熱条件の具体例としては、例えば、加熱温度が、例えば、25〜300℃、好ましくは50〜200℃、より好ましくは60〜150℃であり、処理時間は、例えば、1〜60分であり、好ましくは2〜30分であり、より好ましくは2〜10分である。また、加熱処理に供する未処理基材の厚みは、例えば、20〜200μm、好ましくは30〜150μm、より好ましくは40〜130μmである。
前記基材の寸法変化率は、1%以下であれば特に制限されないが、例えば、0.8%以下であることが好ましく、より好ましくは0.5%以下である。
【0067】
次に、前述のような寸法変化量を示す樹脂製基板上に、前記複屈折層の形成材料を塗工し、塗工膜を形成する。
【0068】
前記樹脂製基板上に前記形成材料を塗工する方法としては、特に限定されないが、前記形成材料を溶媒に溶解させた溶液を塗工する方法等があげられる。
【0069】
前記溶液における形成材料の濃度は、特に制限されないが、例えば、塗工が容易な粘度となることから、溶媒100重量部に対して、例えば、前記形成材料ー5〜50重量部であることが好ましく、より好ましくは10〜40重量部である。具体的に、前記形成材料が非液晶性ポリマーの場合、前記ポリマーの添加量は、溶媒100重量部に対して、例えば、前記形成材料5〜50重量部であることが好ましく、より好ましくは10〜40重量部である。
【0070】
前記形成材料の溶液の溶媒としては、特に制限されず、例えば、前記非液晶性ポリマー等の形成材料を溶解できればよく、前記形成材料の種類に応じて適宜決定できる。具体例としては、例えば、クロロホルム、ジクロロメタン、四塩化炭素、ジクロロエタン、テトラクロロエタン、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン、クロロベンゼン、オルソジクロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素類;フェノール、バラクロロフェノール等のフェノール類;ベンゼン、トルエン、キシレン、メトキシベンゼン、1,2−ジメトキシベンゼン等の芳香族炭化水素類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン等のケトン系溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶媒;t−ブチルアルコール、グリセリン、エチレングリコール、トリエチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、2−メチル−2,4−ペンタンジオールのようなアルコール系溶媒;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドのようなアミド系溶媒;アセトニトリル、ブチロニトリルのようなニトリル系溶媒;ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、テトラヒドロフランのようなエーテル系溶媒;あるいは二硫化炭素、エチルセルソルブ、ブチルセルソルブ等があげられる。これらの溶媒は、一種類でもよいし、ニ種類以上を併用してもよい。
【0071】
前記ポリマー溶液は、例えば、必要に応じて、さらに安定剤、可塑剤、金属類等の種々の添加剤を配合してもよい。
【0072】
また、前記ポリマー溶液は、例えば、前記形成材料の配向性等が著しく低下しない範囲で、異なる他の樹脂を含有してもよい。前記他の樹脂としては、例えば、各種汎用樹脂、エンジニアリングプラスチック、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂等があげられる。
【0073】
前記汎用樹脂としては、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ABS樹脂、およびAS樹脂等があげられる。前記エンジニアリングプラスチックとしては、例えば、ポリアセテート(POM)、ポリカーボネート(PC)、ポリアミド(PA:ナイロン)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、およびポリブチレンテレフタレート(PBT)等があげられる。前記熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリケトン(PK)、ポリイミド(PI)、ポリシクロヘキサンジメタノールテレフタレート(PCT)、ポリアリレート(PAR)、および液晶ポリマー(LCP)等があげられる。前記熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、フェノールノボラック樹脂等があげられる。
【0074】
このように、前記他の樹脂等を前記ポリマー溶液に配合する場合、その配合量は、例えば、前記ポリマー材料に対して、例えば、0〜50質量%であり、好ましくは、0〜30質量%である。
【0075】
前記ポリマー溶液の塗工方法としては、例えば、スピンコート法、ロールコート法、フローコート法、プリント法、ディップコート法、流延成膜法、バーコート法、グラビア印刷法等があげられる。また、塗工に際しては、必要に応じて、ポリマー層の重畳方式も採用できる。
【0076】
そして、前記樹脂製基板上に形成した塗工膜を乾燥する。この乾燥によって、ポリイミド等の前記形成材料が前記基板上で固化し、複屈折層が形成される。
【0077】
前記乾燥の方法としては、特に制限されず、例えば、自然乾燥や加熱乾燥があげられる。その条件も、例えば、前記複屈折層形成材料の種類や、前記溶媒の種類等に応じて適宜決定できるが、例えば、温度は、通常、40℃〜300℃であり、好ましくは50℃〜250℃であり、さらに好ましくは60℃〜200℃である。なお、塗工膜の乾燥は、一定温度で行っても良いし、段階的に温度を上昇または下降させながら行っても良い。乾燥時間も特に制限されないが、通常、10秒〜30分、好ましくは30秒〜25分、さらに好ましくは1分〜20分以下である。
【0078】
前記樹脂製基材上に形成される複屈折層の厚みは、特に制限されないが、例えば、0.5〜40μmの範囲であり、好ましくは1〜20μmの範囲であり、より好ましくは1〜10μmの範囲である。
【0079】
このようにして、樹脂製基材上に直接形成された複屈折層を得ることができる。本発明の製造方法によれば、前述のように樹脂製基板の寸法変化量を設定しているため、前述のような塗工工程および前記乾燥工程においても、前記基材の収縮が抑制され、さらに前記基材上に形成された複屈折層の収縮も防止される。このような基材の収縮防止とそれに伴う複屈折層の収縮防止によって、複屈折層の屈折率が実質的にnx=ny(nx≒ny)となるため、面内位相差(Δnd)も抑制され、同様に直交透過率も抑制される。このため、例えば、各種表示装置に使用した際に優れた表示特性を示す複屈折層となるのである。
【0080】
なお、前記非液晶性ポリマー材料等の形成材料は、前述のように、その性質上、基材の配向等に関わらず、nx>nz、ny>nzの光学特性を示す。そして、本発明においては、さらに前述のような樹脂製基材を使用するため、面内屈折率が実質的にnx=ny(nx≒ny)を示し、全体として「nx≒ny>nz」の光学的1軸性を示す複屈折層、いわゆるC-Plateが得られる。
【0081】
本発明の製造方法においては、例えば、さらに、前記樹脂製基材から前記複屈折層を剥離する工程を有してもよい。このように前記基材から前記複屈折層を剥離すれば、前記複屈折層単独で、本発明の光学フィルム(例えば、位相差フィルム)として使用することもでき、また、他の部材と積層した積層体を、本発明の光学フィルム(例えば、位相差板)として使用することもできる。
【0082】
また、本発明の製造方法において、前記樹脂製基材(以下、「第1の基材」という)と前記第1の基材上に直接形成された複屈折層との積層体を、さらに他の基材(以下、「第2の基材」)上に、前記複屈折層が対向するように接着し、前記第1の基材のみを剥離する工程を含んでもよい。このように他の第2の基材に前記複屈折層を転写して、前記第1の基材を剥離することによって形成された前記複屈折層と前記第2の基材との積層体を、本発明の光学フィルムとして使用することもできる。
【0083】
以上のような本発明の複屈折層の製造方法によって得られる複屈折層は、例えば、以下のような光学特性を示すことが好ましい。
【0084】
前記複屈折層において、下記式で表される面内位相差(Δnd)は、例えば、1nm以下であり、好ましくは0.8nm以下であり、特に好ましくは0.5nm以下である。前述のような本発明の製造方法によれば、このように小さい面内位相差を実現することが容易となる。このように複屈折層の面内位相差が1nm以下であれば、例えば、各種表示装置に使用した際に、クロスニコル状態での光モレがより一層抑制でき、極めて優れた表示特性を提供できる。さらに、下記式で表される厚み方向位相差(Rth)は、例えば、10〜300nmの範囲が好ましく、より好ましくは30〜280nmであり、特に好ましくは50〜260nmである。なお、下記両式において「d」は、前記複屈折層の厚みを表す。
Δnd=(nx−ny)・d
Rth={[(nx−ny)/2]−nz}・d
【0085】
さらに、前記複屈折層における直交透過率は、0.15%以下であることが好ましく、より好ましくは0.1%以下であり、特に好ましくは0.05%以下である。前記面内位相差と同様に、直交透過率も、前記本発明の製造方法によれば、このように小さい値に抑制することが容易になる。このように直交透過率が0.15%以下であれば、例えば、クロスニコル状態での光モレが抑制でき、偏光特性等に極めて優れた表示特性を提供できる。
【0086】
前記複屈折層は、下記数式(I)および数式(II)で表される条件を満たすことが好ましい。
0.0005 ≦ Δn ≦ 0.5 ・・・(I)
Δn = [(nx+ny)/2]−nz ・・・(II)
前記各数式において、Δnは、前記複屈折層の複屈折率を示し、nx、nyおよびnzは、前記複屈折層における3つの軸方向における屈折率をそれぞれ示す。具体的に、図1の概略図に複屈折層における屈折率(nx, ny, nz)の軸方向を矢印で示す。屈折率nx, ny, nz は、前述のように、それぞれX軸、Y軸およびZ軸方向の屈折率を示し、図示のように、前記X軸とは面内において最大の屈折率を示す軸方向であり、Y軸は、前記面内において前記X軸に対して垂直な軸方向であり、Z軸は、前記X軸およびY軸に垂直な厚み方向を示す。
【0087】
また、前記複屈折層は負の複屈折層であり、前記条件(I)を満たすことが好ましく、生産性の向上や、前記複屈折層を含む光学フィルムの薄型化の点から、より好ましくは0.005≦Δn≦0.2である。
【0088】
つぎに、本発明の光学フィルムは、前述のような本発明の製造方法により製造された複屈折層を含むことを特徴とし、例えば、光学補償用の位相差フィルムや位相差板として有用である。
【0089】
本発明の光学フィルムは、前述のように、本発明の製造方法によって製造された複屈折層を含んでいれば、それ以外の構成は特に制限されないが、例えば、以下に示すような形態が例示できる。本発明の光学フィルムは、例えば、前記第1の基材である前記樹脂性フィルムから剥離した前記複屈折層のみでもよいし、前記第1の基材上に前記複屈折層が直接形成されていた積層体であってもよい。また、前述のように、前記第1の基材から前記複屈折層を剥離して、さらに他の第2の基板に積層した積層体でもよいし、前記第1の基材と前記複屈折層との積層体を、前記第2の基材に、前記複屈折層が対向するように接着した後、前記第1の基材のみを剥離することによって作製した積層体であってもよい。
【0090】
これらの形態の中でも、例えば、前記第1の基材と複屈折層との積層体は、前記基材上に複屈折層を直接形成した後、そのまま使用することが可能であるため、製造工程が簡略化でき、例えば、液晶表示装置等の各種画像表示装置に使用する際に、安価に光学フィルムを提供できるため好ましい。
【0091】
つぎに、本発明の偏光板は、光学フィルムと偏光子とを含む積層偏光板であって、前記光学フィルムが本発明の光学フィルムであることを特徴とする。
【0092】
このような積層偏光板は、前記本発明の製造方法により得られる複屈折層や前記複屈折層と前記樹脂性基材との積層体等の本発明の光学フィルムと、前記偏光子とを有していれば、その構成は特に制限されないが、例えば、図2または図3に示すものが例示できる。
【0093】
図2に示す第1の積層偏光板20は、前記本発明の光学フィルム1、偏光子2および二つの透明保護層3を有し、前記偏光子2の両面に透明保護層3がそれぞれ積層されており、一方の透明保護層3の表面にさらに前記光学フィルム1が積層された形態である。なお、光学フィルム1は、前述のように前記複屈折層と樹脂性基材との積層体の場合、いずれの表面が前記透明保護層3に面してもよい。
【0094】
また、前記透明保護層は、同図に示すように、前記偏光子の両側に積層してもよいし、いずれか一方の面のみに積層してもよい。また、両面に積層する場合には、例えば、同じ種類の透明保護層を使用しても、異なる種類の透明保護層を使用してもよい。
【0095】
一方、図3に示す第2の積層偏光板30は、前記本発明の光学フィルム1、偏光子2および透明保護層3を有し、前記偏光子2の一方の表面に前記光学フィルム1が、前記偏光子2の他方の表面に前記透明保護層3が、それぞれ積層されている形態である。
【0096】
前記光学フィルム1が、前述のような複屈折層と樹脂性基材との積層体の場合は、いずれの表面が前記偏光子に面してもよいが、例えば、以下のような理由から、前記光学フィルム1の前記基材側が偏光子2に面するように配置することが好ましい。このような構成であれば、前記光学フィルム1の前記基材を、積層偏光板における透明保護層として兼用できるからである。すなわち、前記偏光子の両面に透明保護層を積層する代わりに、前記偏光子の一方の面には透明保護層を積層し、他方の面には、前記基材が面するように光学フィルムを積層することによって、前記基材が透明保護層の役割も果たすのである。このため、より一層薄型化された偏光板を得ることができる。
【0097】
前記光学フィルム1が、前述のような複屈折層と樹脂性基材との積層体の場合は、前記樹脂性基材として偏光子を使用してもよい。前記樹脂製基材が偏光子を兼ねることによって、より一層薄型化した偏光板を得ることができる。
【0098】
前記偏光子(偏光フィルム)としては、特に制限されず、例えば、従来公知の方法により、各種フィルムに、ヨウ素や二色性染料等の二色性物質を吸着させて染色し、架橋、延伸、乾燥することによって調製したもの等が使用できる。この中でも、自然光を入射させると直線偏光を透過するフィルムが好ましく、光透過率や偏光度に優れるものが好ましい。前記二色性物質を吸着させる各種フィルムとしては、例えば、ポリビニルアルコール(PVA)系フィルム、部分ホルマール化PVA系フィルム、エチレン・酢酸ビニル共重合体系部分ケン化フィルム、セルロース系フィルム等の親水性高分子フィルム等があげられ、これらの他にも、例えば、PVAの脱水処理物やポリ塩化ビニルの脱塩酸処理物等のポリエン配向フィルム等も使用できる。これらの中でも、好ましくはPVA系フィルムである。また、前記偏光フィルムの厚みは、通常、1〜80μmの範囲であるが、これには限定されない。
【0099】
前記保護層としては、特に制限されず、従来公知の透明保護フィルムを使用できるが、例えば、透明性、機械的強度、熱安定性、水分遮断性、等方性などに優れるものが好ましい。このような透明保護層の材質の具体例としては、トリアセチルセルロール等のセルロース系樹脂や、ポリエステル系、ポリカーボネート系、ポリアミド系、ポリイミド系、ポリエーテルスルホン系、ポリスルホン系、ポリスチレン系、ポリノルボルネン系、ポリオレフィン系、アクリル系、アセテート系等の透明樹脂等があげられる。また、前記アクリル系、ウレタン系、アクリルウレタン系、エポキシ系、シリコーン系等の熱硬化型樹脂または紫外線硬化型樹脂等もあげられる。この中でも、偏光特性や耐久性の点から、表面をアルカリ等でケン化処理したTACフィルムが好ましい。
【0100】
また、特開2001−343529号公報(WO01/37007)に記載のポリマーフィルムがあげられる。このポリマー材料としては、例えば、側鎖に置換または非置換のイミド基を有する熱可塑性樹脂と、側鎖に置換または非置換のフェニル基ならびにニトリル基を有す熱可塑性樹脂を含有する樹脂組成物が使用でき、例えば、イソブテンとN−メチレンマレイミドからなる交互共重合体と、アクリロニトリル・スチレン共重合体とを有する樹脂組成物があげられる。なお、前記ポリマーフィルムは、例えば、前記樹脂組成物の押出成形物であってもよい。
【0101】
また、前記保護層は、例えば、色付きが無いことが好ましい。具体的には、下記式で表されるフィルム厚み方向の位相差値(Rth)が、−90nm〜+75nmの範囲であることが好ましく、より好ましくは−80nm〜+60nmであり、特に好ましくは−70nm〜+45nmの範囲である。前記位相差値が−90nm〜+75nmの範囲であれば、十分に保護フィルムに起因する偏光板の着色(光学的な着色)を解消できる。なお、下記式において、nx,ny,nzは、前述と同様であり、dは、その膜厚を示す。
Rth=[[(nx+ny)/2]-nz]・d
【0102】
また、前記透明保護層は、さらに光学補償機能を有するものでもよい。このように光学補償機能を有する透明保護層としては、例えば、液晶セルにおける位相差に基づく視認角の変化が原因である、着色等の防止や、良視認の視野角の拡大等を目的とした公知のものが使用できる。具体的には、例えば、前述した透明樹脂を一軸延伸または二軸延伸した各種延伸フィルムや、液晶ポリマー等の配向フィルム、透明基材上に液晶ポリマー等の配向層を配置した積層体等があげられる。これらの中でも、良視認の広い視野角を達成できることから、前記液晶ポリマーの配向フィルムが好ましく、特に、ディスコティック系やネマチック系の液晶ポリマーの傾斜配向層から構成される光学補償層を、前述のトリアセチルセルロースフィルム等で支持した光学補償位相差板が好ましい。このような光学補償位相差板としては、例えば、富士写真フィルム株式会社製「WVフィルム」等の市販品があげられる。なお、前記光学補償位相差板は、前記位相差フィルムやトリアセチルセルロースフィルム等のフィルム支持体を2層以上積層させることによって、位相差等の光学特性を制御したもの等でもよい。
【0103】
前記透明保護層の厚みは、特に制限されず、例えば、位相差や保護強度等に応じて適宜決定できるが、通常、500μm以下であり、好ましくは5〜300μm、より好ましくは5〜150μmの範囲である
【0104】
前記透明保護層は、例えば、偏光フィルムに前記各種透明樹脂を塗布する方法、前記偏光フィルムに前記透明樹脂製フィルムや前記光学補償位相差板等を積層する方法等の従来公知の方法によって適宜形成でき、また市販品を使用することもできる。
【0105】
また、前記透明保護層は、さらに、例えば、ハードコート処理、反射防止処理、スティッキングの防止や拡散、アンチグレア等を目的とした処理等が施されたものでもよい。前記ハードコート処理とは、偏光板表面の傷付き防止等を目的とし、例えば、前記透明保護層の表面に、硬化型樹脂から構成される、硬度や滑り性に優れた硬化被膜を形成する処理である。前記硬化型樹脂としては、例えば、シリコーン系、ウレタン系、アクリル系、エポキシ系等の紫外線硬化型樹脂等が使用でき、前記処理は、従来公知の方法によって行うことができる。スティッキングの防止は、隣接する層との密着防止を目的とする。前記反射防止処理とは、偏光板表面での外光の反射防止を目的とし、従来公知の反射防止層等の形成により行うことができる。
【0106】
前記アンチグレア処理とは、偏光板表面において外光が反射することによる、偏光板透過光の視認妨害を防止すること等を目的とし、例えば、従来公知の方法によって、前記透明保護層の表面に、微細な凹凸構造を形成することによって行うことができる。このような凹凸構造の形成方法としては、例えば、サンドブラスト法やエンボス加工等による粗面化方式や、前述のような透明樹脂に透明微粒子を配合して前記透明保護層を形成する方式等があげられる。
【0107】
前記透明微粒子としては、例えば、シリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、酸化錫、酸化インジウム、酸化カドミウム、酸化アンチモン等があげられ、この他にも導電性を有する無機系微粒子や、架橋または未架橋のポリマー粒状物等から構成される有機系微粒子等を使用することもできる。前記透明微粒子の平均粒径は、特に制限されないが、例えば、0.5〜20μmの範囲である。また、前記透明微粒子の配合割合は、特に制限されないが、一般に、前述のような透明樹脂100質量部あたり2〜70質量部の範囲が好ましく、より好ましくは5〜50質量部の範囲である。
【0108】
前記透明微粒子を配合したアンチグレア層は、例えば、透明保護層そのものとして使用することもでき、また、透明保護層表面に塗工層等として形成されてもよい。さらに、前記アンチグレア層は、偏光板透過光を拡散して視角を拡大するための拡散層(視覚補償機能等)を兼ねるものであってもよい。
【0109】
なお、前記反射防止層、スティッキング防止層、拡散層、アンチグレア層等は、前記透明保護層とは別個に、例えば、これらの層を設けたシート等から構成される光学層として、偏光板に積層してもよい。
【0110】
各構成物同士(光学フィルム、偏光子、透明保護層等)の積層方法は、特に制限されず、従来公知の方法によって行うことができる。一般には、前述と同様の粘着剤や接着剤等が使用でき、その種類は、前記各構成物の材質等によって適宜決定できる。前記接着剤としては、例えば、アクリル系、ビニルアルコール系、シリコーン系、ポリエステル系、ポリウレタン系、ポリエーテル系等のポリマー製接着剤や、ゴム系接着剤等があげられる。また、ホウ酸、ホウ砂、グルタルアルデヒド、メラミン、シュウ酸等のビニルアルコール系ポリマーの水溶性架橋剤等から構成される接着剤等も使用できる。前述のような粘着剤、接着剤は、例えば、湿度や熱の影響によっても剥がれ難く、光透過率や偏光度にも優れる。具体的には、前記偏光子がPVA系フィルムの場合、例えば、接着処理の安定性等の点から、PVA系接着剤が好ましい。これらの接着剤や粘着剤は、例えば、そのまま偏光子や透明保護層の表面に塗布してもよいし、前記接着剤や粘着剤から構成されたテープやシートのような層を前記表面に配置してもよい。また、例えば、水溶液として調製した場合、必要に応じて、他の添加剤や、酸等の触媒を配合してもよい。なお、前記接着剤を塗布する場合は、例えば、前記接着剤水溶液に、さらに、他の添加剤や、酸等の触媒を配合してもよい。このような接着層の厚みは、特に制限されないが、例えば、1nm〜500nmであり、好ましくは10nm〜300nmであり、より好ましくは20nm〜100nmである。特に限定されず、例えば、アクリル系ポリマーやビニルアルコール系ポリマー等の接着剤等を使用した従来公知の方法が採用できる。また、湿度や熱等によっても剥がれにくく、光透過率や偏光度に優れる偏光板を形成できることから、さらに、ホウ酸、ホウ砂、グルタルアルデヒド、メラミン、シュウ酸等のPVA系ポリマーの水溶性架橋剤を含む接着剤が好ましい。これらの接着剤は、例えば、その水溶液を前記各構成物表面に塗工し、乾燥すること等によって使用できる。前記水溶液には、例えば、必要に応じて、他の添加剤や、酸等の触媒も配合できる。これらの中でも、前記接着剤としては、PVAフィルムとの接着性に優れる点から、PVA系接着剤が好ましい。
【0111】
また、本発明の偏光板は、例えば、以下のような方法によって製造することもできる。例えば、本発明の複屈折層の製造方法によって調製した、前述のような第1の基材と前記複屈折層との積層体を使用する場合、前記接着剤層等を介して、偏光子や偏光板の透明保護層に、前記積層体の複屈折層が対向するように貼り合わせる方法や、前記積層体の前記複屈折層を前記偏光子や透明保護層に貼り合わせて転写してから、前記第1の基材のみを剥離する方法がある。また、本発明の複屈折層の製造方法により前記第1の基材の一方の面上に複屈折層を形成し、前記第1の基材を偏光板に使用する透明保護層として、前記第1の基材の他面側に、前記接着剤等を介して偏光子を貼り付ける方法もある。このように本発明の複屈折層の製造方法を利用して、本発明の偏光板を製造すれば、例えば、少ない工程数で、安価に偏光板を提供でき、また、前記複屈折層が薄型化されるため、これを含む前記偏光板自体も薄型化が可能になる。
【0112】
さらに、本発明の光学フィルムは、前述のような偏光子の他にも、例えば、各種位相差板、拡散制御フィルム、輝度向上フィルム等、従来公知の光学部材と組合せて使用することもできる。前記位相差板としては、例えば、ポリマーフィルムを一軸延伸または二軸延伸したもの、Z軸配向処理したもの、液晶性高分子の塗工膜等があげられる。前記拡散制御フィルムとしては、例えば、拡散、散乱、屈折を利用したフィルムがあげられ、これらは、例えば、視野角の制御や、解像度に関わるギラツキや散乱光の制御等に使用することができる。前記輝度向上フィルムとしては、例えば、コレステリック液晶の選択反射と1/4波長板(λ/4板)とを用いた輝度向上フィルムや、偏光方向による異方性散乱を利用した散乱フィルム等が使用できる。また、前記光学フィルムは、例えば、ワイヤーグリッド型偏光子と組合せることもできる。
【0113】
本発明の積層偏光板は、実用に際して、前記本発明の光学フィルムの他に、さらに他の光学層を含んでもよい。前記光学層としては、例えば、以下に示すような偏光板、反射板、半透過反射板、輝度向上フィルム等、液晶表示装置等の形成に使用される、従来公知の各種光学層があげられる。これらの光学層は、一種類でもよいし、二種類以上を併用してもよく、また、一層でもよいし、二層以上を積層してもよい。このような光学層をさらに含む積層偏光板は、例えば、光学補償機能を有する一体型偏光板として使用することが好ましく、例えば、液晶セル表面に配置する等、各種画像表示装置への使用に適している。
【0114】
以下に、このような一体型偏光板について説明する。
【0115】
まず、反射型偏光板または半透過反射型偏光板の一例について説明する。前記反射型偏光板は、本発明の積層偏光板にさらに反射板が、前記半透過反射型偏光板は、本発明の積層偏光板にさらに半透過反射板が、それぞれ積層されている。
【0116】
前記反射型偏光板は、通常、液晶セルの裏側に配置され、視認側(表示側)からの入射光を反射させて表示するタイプの液晶表示装置(反射型液晶表示装置)等に使用できる。このような反射型偏光板は、例えば、バックライト等の光源の内蔵を省略できるため、液晶表示装置の薄型化を可能にする等の利点を有する。
【0117】
前記反射型偏光板は、例えば、前記弾性率を示す偏光板の片面に、金属等から構成される反射板を形成する方法等、従来公知の方法によって作製できる。具体的には、例えば、前記偏光板における透明保護層の片面(露出面)を、必要に応じてマット処理し、前記面に、アルミニウム等の反射性金属からなる金属箔や蒸着膜を反射板として形成した反射型偏光板等があげられる。
【0118】
また、前述のように各種透明樹脂に微粒子を含有させて表面を微細凹凸構造とした透明保護層の上に、その微細凹凸構造を反映させた反射板を形成した、反射型偏光板等もあげられる。その表面が微細凹凸構造である反射板は、例えば、入射光を乱反射により拡散させ、指向性やギラギラした見栄えを防止し、明暗のムラを抑制できるという利点を有する。このような反射板は、例えば、前記透明保護層の凹凸表面に、真空蒸着方式、イオンプレーティング方式、スパッタリング方式等の蒸着方式やメッキ方式等、従来公知の方法により、直接、前記金属箔や金属蒸着膜として形成することができる。
【0119】
また、前述のように偏光板の透明保護層に前記反射板を直接形成する方式に代えて、反射板として、前記透明保護フィルムのような適当なフィルムに反射層を設けた反射シート等を使用してもよい。前記反射板における前記反射層は、通常、金属から構成されるため、例えば、酸化による反射率の低下防止、ひいては初期反射率の長期持続や、透明保護層の別途形成を回避する点等から、その使用形態は、前記反射層の反射面が前記フィルムや偏光板等で被覆された状態であることが好ましい。
【0120】
一方、前記半透過型偏光板は、前記反射型偏光板において、反射板に代えて、半透過型の反射板を有するものである。前記半透過型反射板としては、例えば、反射層で光を反射し、かつ、光を透過するハーフミラー等があげられる。
【0121】
前記半透過型偏光板は、通常、液晶セルの裏側に設けられ、液晶表示装置等を比較的明るい雰囲気で使用する場合には、視認側(表示側)からの入射光を反射して画像を表示し、比較的暗い雰囲気においては、半透過型偏光板のバックサイドに内蔵されているバックライト等の内蔵光源を使用して画像を表示するタイプの液晶表示装置等に使用できる。すなわち、前記半透過型偏光板は、明るい雰囲気下では、バックライト等の光源使用のエネルギーを節約でき、一方、比較的暗い雰囲気下においても、前記内蔵光源を用いて使用できるタイプの液晶表示装置等の形成に有用である。
【0122】
つぎに、本発明の積層偏光板に、さらに輝度向上フィルムが積層された偏光板の一例を説明する。
【0123】
前記輝度向上フィルムとしては、特に限定されず、例えば、誘電体の多層薄膜や、屈折率異方性が相違する薄膜フィルムの多層積層体のような、所定偏光軸の直線偏光を透過して、他の光は反射する特性を示すもの等が使用できる。このような輝度向上フィルムとしては、例えば、3M社製の商品名「D-BEF」等があげられる。また、コレステリック液晶層、特にコレステリック液晶ポリマーの配向フィルムや、その配向液晶層をフィルム基材上に支持したもの等が使用できる。これらは、左右一方の円偏光を反射して、他の光は透過する特性を示すものであり、例えば、日東電工社製の商品名「PCF350」、Merck社製の商品名「Transmax」等があげられる。
【0124】
本発明の各種偏光板は、例えば、前述のような複屈折層を含む積層偏光板と、さらに光学層とを積層して、2層以上の光学層を含む光学部材であってもよい。
【0125】
このように2層以上の光学層を積層した光学部材は、例えば、液晶表示装置等の製造過程において、順次別個に積層する方式によっても形成できるが、予め積層した光学部材として使用すれば、例えば、品質の安定性や組立作業性等に優れ、液晶表示装置等の製造効率を向上できるという利点がある。なお、積層には、前述と同様に、粘着層等の各種接着手段を用いることができる。
【0126】
前述のような各種偏光板は、例えば、液晶セル等の他の部材への積層が容易になることから、さらに粘着剤層や接着剤層を有していることが好ましく、これらは、前記偏光板の片面または両面に配置することができる。前記粘着層の材料としては、特に制限されず、アクリル系ポリマー等の従来公知の材料が使用でき、特に、吸湿による発泡や剥離の防止、熱膨張差等による光学特性の低下や液晶セルの反り防止、ひいては高品質で耐久性に優れる液晶表示装置の形成性等の点より、例えば、吸湿率が低くて耐熱性に優れる粘着層となることが好ましい。また、微粒子を含有して光拡散性を示す粘着層等でもよい。前記偏光板表面への前記粘着剤層の形成は、例えば、各種粘着材料の溶液または溶融液を、流延や塗工等の展開方式により、前記偏光板の所定の面に直接添加して層を形成する方式や、同様にして後述するセパレータ上に粘着剤層を形成させて、それを前記偏光板の所定面に移着する方式等によって行うことができる。なお、このような層は、偏光板のいずれの表面に形成してもよく、例えば、偏光板における前記位相差板の露出面に形成してもよい。
【0127】
このように偏光板に設けた粘着剤層等の表面が露出する場合は、前記粘着層を実用に供するまでの間、汚染防止等を目的として、セパレータによって前記表面をカバーすることが好ましい。このセパレータは、前記透明保護フィルム等のような適当なフィルムに、必要に応じて、シリコーン系、長鎖アルキル系、フッ素系、硫化モリブデン等の剥離剤による剥離コートを設ける方法等によって形成できる。
【0128】
前記粘着剤層等は、例えば、単層体でもよいし、積層体でもよい。前記積層体としては、例えば、異なる組成や異なる種類の単層を組合せた積層体を使用することもできる。また、前記偏光板の両面に配置する場合は、例えば、それぞれ同じ粘着剤層でもよいし、異なる組成や異なる種類の粘着剤層であってもよい。
【0129】
前記粘着剤層の厚みは、例えば、偏光板の構成等に応じて適宜に決定でき、一般には、1〜500μmである。
【0130】
前記粘着剤層を形成する粘着剤としては、例えば、光学的透明性に優れ、適度な濡れ性、凝集性や接着性の粘着特性を示すものが好ましい。具体的な例としては、アクリル系ポリマーやシリコーン系ポリマー、ポリエステル、ポリウレタン、ポリエーテル、合成ゴム等のポリマーを適宜ベースポリマーとして調製された粘着剤等があげられる。
【0131】
前記粘着剤層の粘着特性の制御は、例えば、前記粘着剤層を形成するベースポリマーの組成や分子量、架橋方式、架橋性官能基の含有割合、架橋剤の配合割合等によって、その架橋度や分子量を調節するというような、従来公知の方法によって適宜行うことができる。
【0132】
以上のような本発明の光学フィルムや偏光板、各種光学部材(光学層をさらに積層した各種偏光板)を形成する偏光フィルム、透明保護層、光学層、粘着剤層等の各層は、例えば、サリチル酸エステル系化合物、ベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、シアノアクリレート系化合物、ニッケル錯塩系化合物等の紫外線吸収剤で適宜処理することによって、紫外線吸収能を持たせたものでもよい。
【0133】
本発明の光学フィルムや偏光板は、前述のように、液晶表示装置等の各種装置の形成に使用することが好ましく、例えば、偏光板を液晶セルの片側または両側に配置して液晶パネルとし、反射型や半透過型、あるいは透過・反射両用型等の液晶表示装置に用いることができる。
【0134】
液晶表示装置を形成する前記液晶セルの種類は、任意で選択でき、例えば、薄膜トランジスタ型に代表されるアクティブマトリクス駆動型のもの、ツイストネマチック型やスーパーツイストネマチック型に代表される単純マトリクス駆動型のもの等、種々のタイプの液晶セルが使用できる。これらの中でも、本発明の光学フィルムや偏光板は、特にVA(垂直配向;Vertical Alignment)セルの光学補償に非常に優れているので、VAモードの液晶表示装置用の視角補償フィルムとして非常に有用である。
【0135】
また、前記液晶セルは、通常、対向する液晶セル基板の間隙に液晶が注入された構造であって、前記液晶セル基板としては、特に制限されず、例えば、ガラス基板やプラスチック基板が使用できる。なお、前記プラスチック基板の材質としては、特に制限されず、従来公知の材料があげられる。
【0136】
また、液晶セルの両面に偏光板や光学部材を設ける場合、それらは同じ種類のものでもよいし、異なっていてもよい。さらに、液晶表示装置の形成に際しては、例えば、プリズムアレイシートやレンズアレイシート、光拡散板やバックライト等の適当な部品を、適当な位置に1層または2層以上配置することができる。
【0137】
さらに、本発明の液晶表示装置は、液晶パネルおよび光源とを含み、前記液晶パネルとして、本発明の液晶パネルを使用する以外は、特に制限されない。前記光源としては、特に制限されないが、例えば、光のエネルギーが有効に使用できることから、例えば、偏光を出射する平面光源であることが好ましい。
【0138】
本発明の液晶パネルの一例としては、例えば、図4に示すような形態があげられる。同図は、液晶パネルの構成概略を示す断面図である。図示のように、液晶パネル40は、液晶セル21、本発明の光学フィルム1、偏光子2および透明保護層3を有しており、前記液晶セル21の一方の面に前記光学フィルム1が積層されており、前記光学フィルム1の他方の面に、前記偏光子2および前記透明保護層3が、この順序で積層されている。前記液晶セルは、二枚の液晶セル基板の間に、液晶が保持された構成となっている。また、前記光学フィルム1が、前述のように複屈折層と基材との積層体である場合、その配置は特に制限されないが、例えば、前記複屈折層側が前記液晶セルに面しており、前記基材側が前記偏光子に面している形態があげられる。
【0139】
本発明の液晶表示装置においては、視認側の光学フィルムの上に、例えば、さらに拡散板、アンチグレア層、反射防止膜、保護層や保護板を配置したり、または液晶パネルにおける液晶セルと偏光板との間に補償用位相差板等を適宜配置することもできる。
【0140】
なお、本発明の光学フィルムや偏光板は、前述のような液晶表示装置には限定されず、例えば、有機エレクトロルミネッセンス(EL)ディスプレイ、PDP、プラズマディスプレイ(PD)およびFED(電界放出ディスプレイ:Field Emission Display)等の自発光型表示装置にも使用できる。自発光型フラットディスプレイに使用する場合は、例えば、前記本発明の偏光板をΔnd=λ/4にすることで、円偏光を得ることができるため、反射防止フィルターとして利用できる。
【0141】
以下に、本発明の光学フィルムや偏光板を備えるエレクトロルミネッセンス(EL)表示装置について説明する。本発明のEL表示装置は、本発明の光学フィルムまたは偏光板を有する表示装置であり、このEL装置は、有機ELおよび無機ELのいずれでもよい。
【0142】
近年、EL表示装置においても、黒状態における電極からの反射防止として、例えば、偏光子や偏光板等の光学フィルムをλ/4板とともに使用することが提案されている。本発明の光学フィルムや偏光板は、特に、EL層から、直線偏光、円偏光もしくは楕円偏光のいずれかの偏光が発光されている場合、あるいは、正面方向に自然光を発光していても、斜め方向の出射光が部分偏光している場合等に、非常に有用である。
【0143】
まずここで、一般的な有機EL表示装置について説明する。前記有機EL表示装置は、一般に、透明基板上に、透明電極、有機発光層および金属電極がこの順序で積層された発光体(有機EL発光体)を有している。前記有機発光層は、種々の有機薄膜の積層体であり、例えば、トリフェニルアミン誘導体等からなる正孔注入層とアントラセン等の蛍光性有機固体からなる発光層との積層体や、このような発光層とペリレン誘導体等からなる電子注入層との積層体や、また、前記正孔注入層と発光層と電子注入層との積層体等、種々の組み合わせがあげられる。
【0144】
そして、このような有機EL表示装置は、前記陽極と陰極とに電圧を印加することによって、前記有機発光層に正孔と電子とが注入され、前記正孔と電子とが再結合することによって生じるエネルギーが、蛍光物質を励起し、励起された蛍光物質が基底状態に戻るときに光を放射する、という原理で発光する。前記正孔と電子との再結合というメカニズムは、一般のダイオードと同様であり、電流と発光強度とは、印加電圧に対して整流性を伴う強い非線形性を示す。
【0145】
前記有機EL表示装置においては、前記有機発光層での発光を取り出すために、少なくとも一方の電極が透明であることが必要なため、通常、酸化インジウムスズ(ITO)等の透明導電体で形成された透明電極が陽極として使用される。一方、電子注入を容易にして発光効率を上げるには、陰極に、仕事関数の小さな物質を用いることが重要であり、通常、Mg−Ag、Al−Li等の金属電極が使用される。
【0146】
このような構成の有機EL表示装置において、前記有機発光層は、例えば、厚み10nm程度の極めて薄い膜で形成されることが好ましい。これは、前記有機発光層においても、透明電極と同様に、光をほぼ完全に透過させるためである。その結果、非発光時に、前記透明基板の表面から入射して、前記透明電極と有機発光層とを透過して前記金属電極で反射した光が、再び前記透明基板の表面側へ出る。このため、外部から視認した際に、有機EL表示装置の表示面が鏡面のように見えるのである。
【0147】
本発明の有機EL表示装置は、例えば、前記有機発光層の表面側に透明電極を備え、前記有機発光層の裏面側に金属電極を備えた前記有機EL発光体を含む有機EL表示装置において、前記透明電極の表面に、本発明の光学フィルムや偏光板が配置されることが好ましく、さらにλ/4板を偏光板とEL素子との間に配置することが好ましい。このように、本発明の光学フィルムや偏光板を配置することによって、外界の反射を抑え、視認性向上が可能であるという効果を示す有機EL表示装置となる。また、前記透明電極と光学フィルムとの間に、さらに位相差板が配置されることが好ましい。
【0148】
前記位相差板および光学フィルム(偏光板等)は、例えば、外部から入射して前記金属電極で反射してきた光を偏光する作用を有するため、その偏光作用によって前記金属電極の鏡面を外部から視認させないという効果がある。特に、位相差板として1/4波長板を使用し、かつ、前記偏光板と前記位相差板との偏光方向のなす角をπ/4に調整すれば、前記金属電極の鏡面を完全に遮蔽することができる。すなわち、この有機EL表示装置に入射する外部光は、前記偏光板によって直線偏光成分のみが透過する。この直線偏光は、前記位相差板によって、一般に楕円偏光となるが、特に前記位相差板が1/4波長板であり、しかも前記角がπ/4の場合には、円偏光となる。
【0149】
この円偏光は、例えば、透明基板、透明電極、有機薄膜を透過し、金属電極で反射して、再び、有機薄膜、透明電
極、透明基板を透過して、前記位相差板で再び直線偏光となる。そして、この直線偏光は、前記偏光板の偏光方向と直交しているため、前記偏光板を透過できず、その結果、前述のように、金属電極の鏡面を完全に遮蔽することができるのである。
【0150】
【実施例】
以下、実施例および比較例を用いて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0151】
(実施例1)
2,2'-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物(6FDA)と、2,2'-ビス(トリフルオロメチル)-4,4'-ジアミノビフェニルとから合成された重量平均分子量(Mw)の下記式(6)に示すポリイミドを、シクロヘキサノンに溶解して15重量%のポリイミド溶液を調製した。一方、厚み90μm、長さ40cm×幅30cmのトリアセチルセルロース(TAC)フィルムを100℃で10分間熱処理した。この熱処理済TACフィルムを基材として、その表面に前記ポリイミド溶液を塗工し、形成した塗工膜を100℃で10分熱処理した。その結果、前記基材上に、完全に透明で、表面が平滑な、厚み6μmのポリイミドフィルムが形成された積層体の光学フィルムが得られた。ポリイミド溶液塗工前の熱処理済み基材の長さを「X」とし、塗工工程および乾燥工程後の前記基材の長さを「Y」として、下記式に代入した際の前記基材の寸法変化率は、0.1%であった。また、前記ポリイミドフィルムは、負の複屈折率を示す複屈折層であった。
寸法変化量(%)=[|X-Y|/X]×100
【化18】
Figure 0004137651
【0152】
なお、前記複屈折層の複屈折率は、王子計測機器社製の商品名KOBRA21ADHを用いて、590nmにおける屈折率の測定によって求めた。
【0153】
(実施例2)
厚み90μm、長さ40cm×幅30cmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムを150℃で30分間熱処理した。この熱処理済PETフィルムを基材として、その表面に前記実施例1のポリイミド溶液を塗工し、形成した塗工膜を150℃で5分熱処理した。その結果、前記基材上に、完全に透明で、表面が平滑な、厚み6μmのポリイミドフィルムが形成された積層体の光学フィルムが得られた。ポリイミド溶液塗工前の熱処理済み基材の長さを「X」とし、塗工工程および乾燥工程後の前記基材の長さを「Y」として、前記式に代入した際の前記基材の寸法変化率は、0.2%であり、前記ポリイミドフィルムは、負の複屈折率を示す複屈折層であった。
【0154】
(実施例3)
下記式(18)で表されるポリエーテルケトン(株式会社日本触媒製:△n=約0.02)を、メチルイソブチルケトンに溶解し、20重量%のワニスを調製した。一方、厚み90μm、長さ40cm×幅30cmのTACフィルムを100℃で10分間熱処理した。この熱処理済TACフィルムを基材として、その表面に前記ワニスを塗工し、形成した塗工膜を100℃で10分熱処理した。その結果、前記基材上に、完全に透明で、表面が平滑な、厚み6μmのポリエーテルケトンフィルムが形成された積層体の光学フィルムが得られた。前記ワニス塗工前の熱処理済み基材の長さを「X」とし、塗工工程および乾燥工程後の前記基材の長さを「Y」として、前記式に代入した際の前記基材の寸法変化率は、0.1%であり、前記ポリエーテルケトンフィルムは、負の複屈折率を示す複屈折層であった。
【化19】
Figure 0004137651
【0155】
(実施例4)
厚み90μm、長さ40cm×幅30cmのPETフィルムを150℃で30分間熱処理した。この熱処理済PETフィルムを基材として、その表面に前記実施例3のワニスを塗工し、形成した塗工膜を150℃で5分熱処理した。その結果、前記基材上に、完全に透明で、表面が平滑な、厚み6μmのポリイミドフィルムが形成された積層体の光学フィルムが得られた。ポリイミド溶液塗工前の熱処理済み基材の長さを「X」とし、塗工工程および乾燥工程後の前記基材の長さを「Y」として、前記式に代入した際の前記基材の寸法変化率は、0.2%であり、前記ポリイミドフィルムは、負の複屈折率を示す複屈折層であった。
【0156】
(実施例5)
4,4'-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)-2,2'-ジフェニルプロパン二無水物と、2,2'-ジクロロ-4,4'-ジアミノビフェニルとから合成された重量平均分子量(Mw)3万のポリイミドを、シクロヘキサノンに溶解して20重量%のポリイミド溶液を調製した。そして、実施例1と同様に予め熱処理を施したTACフィルムを基材とし、その表面に前記ポリイミド溶液を塗工し、形成した塗工膜を100℃で10分熱処理した。その結果、前記基材上に、完全に透明で、表面が平滑な、厚み6μmのポリイミドフィルムが形成された積層体の光学フィルムが得られた。前記ポリイミド溶液塗工前の熱処理済み基材の長さを「X」とし、塗工工程および乾燥工程後の前記基材の長さを「Y」として、前記式に代入した際の前記基材の寸法変化率は、0.1%であり、前記ポリエーテルケトンフィルムは、負の複屈折率を示す複屈折層であった。
【0157】
(実施例6)
イソブテンおよびN−メチルマレイミドからなる交互共重合体(N-メチルマレイミド含量50モル%)75重量部と、アクリロニトリル−スチレン共重合体(アクリロニトリル含量28重量%)25重量部とを塩化メチレンに溶解し、固形分濃度15重量%のポリマー溶液を得た。このポリマー溶液を、ガラス板上に配置したPETフィルム上に流延し、室温で60分間放置した。そして、形成された透明フィルム(以下、「透明フィルムA」という)を、前記PETフィルムから剥離した。この透明フィルムAの面内位相差(Δnd)は4nm、Rthは4nmであり、その厚みは90μmであった。この透明フィルムA(長さ40cm×幅30cm)を、予め100℃で10分間熱処理し、その表面に前記実施例1のポリイミド溶液を塗工し、形成した塗工膜を115℃で5分熱処理した。その結果、前記基材上に、完全に透明で、表面が平滑な、厚み6μmのポリイミドフィルムが形成された積層体の光学フィルムが得られた。前記ポリイミド溶液塗工前の熱処理済み基材の長さを「X」とし、塗工工程および乾燥工程後の前記基材の長さを「Y」として、前記式に代入した際の前記基材の寸法変化率は、0.5%であり、前記ポリエーテルケトンフィルムは、負の複屈折率を示す複屈折層であった。
【0158】
(比較例1)
ポリイミド溶液の塗工前に加熱処理を行わずに、未処理のTACフィルムを基材として使用した以外は、前記実施例1と同様にして、ポリイミド溶液の塗工、乾燥を行った。前記基材上にポリイミドフィルムを形成した。その結果、前記基材上に、完全に透明で、表面が平滑な、厚み6μmのポリイミドフィルムが形成された積層体の光学フィルムが得られた。ポリイミド溶液塗工前の未加熱処理基材の長さを「X」とし、塗工工程および乾燥工程後の前記基材の長さを「Y」として、前記式に代入した際の前記基材の寸法変化率は、1.5%であり、前記ポリイミドフィルムは、負の複屈折率を示す複屈折層であった。
【0159】
(比較例2)
ポリイミド溶液の塗工前に加熱処理を行わずに、未処理のPETフィルムを基材として使用した以外は、前記実施例2と同様にして、ポリイミド溶液の塗工、乾燥(180℃。10分)を行った。前記基材上にポリイミドフィルムを形成した。その結果、前記基材上に、完全に透明で、表面が平滑な、厚み6μmのポリイミドフィルムが形成された積層体の光学フィルムが得られた。ポリイミド溶液塗工前の未加熱処理基材の長さを「X」とし、塗工工程および乾燥工程後の前記基材の長さを「Y」として、前記式に代入した際の前記基材の寸法変化率は、1.2%であり、前記ポリイミドフィルムは、負の複屈折率を示す複屈折層であった。
【0160】
実施例1〜6および比較例1〜2で得られた光学フィルムから複屈折層をそれぞれ剥離し、各複屈折層について、透過率、色相、直交透過率、偏光度、面内位相差を求めた。これらの測定は、以下の測定方法に準じて行い、これらの結果を下記表1に示す。
【0161】
(1)透過率および色相
積分球式分光透過率測定器(商品名DOT-3C:村上色彩技術研究所製)を用いて、前記複屈折層の透過率および色相を測定した。
(2)直交透過率および偏光度
前記複屈折層を、二枚の偏光度99.95%の偏光板(日東電工社製:商品名HEG1425DU)をクロスニコルに配置した間に挿入し、その時の法線方向の透過率(直交透過率)および偏光度を、前述の積分球式分光透過率測定器によって測定した。なお、前記偏光板のみの直交透過率および偏光度の測定し、下記表1にあわせて示す。
(3)面内位相差(Δnd)
平行ニコル回転方を原理とする位相差計(商品名KOBRA21−ADH:王子計測機器社製)によって、複屈折層の屈折率(nx、ny)を測定し、これらの値から面内位相差(Δnd)を求めた。
【0162】
Figure 0004137651
【0163】
前記表1に示すように、各実施例の光学フィルムは、基材の寸法変化量を1%以下に設定することによって、比較例とは異なり、その複屈折層の面内位相差を1nm以下、クロスニコル下での直交透過率を0.15%以下に抑制することができた。このように前記面内位相差を1nm以下に抑制することによって、面内の屈折率はnx≒nyとなり、光学的に負の一軸性(nx≒ny>nz)を示す複屈折層として使用することができる。このように面内位相差および前記直交透過率が抑制された光学特性の複屈折層であれば、例えば、光モレの抑制という表示特性上の効果が得られることは明らかである。したがって、このような複屈折層を有する光学フィルムを位相差フィルムまたは位相差板として、例えば、液晶表示装置等の各種表示装置に使用すれば、光モレがなく、広視野角で良好なコントラストが得られるという、表示特性に優れた装置が実現できる。
【0164】
【発明の効果】
以上のように、本発明の複屈折層の製造方法によれば、例えば、面内位相差および直交透過率が抑制された複屈折層を得ることができる。このような複屈折層であれば、例えば、光学フィルムとして液晶表示装置等の各種表示装置に適用した際に、光モレがなく、広視野角で良好なコントラストが得られるという、優れた表示特性が発揮できる。また、従来のようにコストのかかる無機化合物基材が不要となるため、複屈折層やこれを含む光学フィルムを安価に量産することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明における軸方向を示す斜視図である。
【図2】 本発明の積層偏光板の一例の断面図である。
【図3】 本発明の積層偏光板のその他の一例の断面図である。
【図4】 本発明の液晶パネルの一例を示す断面図である。
【符号の説明】
1 光学フィルム
2 偏光子
3 保護層
10 複屈折層
20、30 積層偏光板
21 液晶セル
40 液晶パネル

Claims (4)

  1. 基材に複屈折層の形成材料を直接塗工する工程と、
    前記塗工した形成材料を乾燥することより、前記基材上に、固化された複屈折層を直接形成する工程とを有する複屈折層の製造方法であって、
    前記基材として、前記塗工工程および乾燥工程を施した後の下記式(A)に示す寸法変化量が1%以下となる樹脂製基材を使用し、
    前記形成材料の塗工が、前記形成材料を含む溶液の塗工であり、
    前記樹脂が、トリアセチルセルロース、ポリエチレンテレフタレートまたはアクリロニトリル−スチレン共重合体であり、
    前記樹脂製基材が、前記塗工工程前に、予め、加熱処理を施されており、これによって、前記塗工工程および乾燥工程を施した後の前記寸法変化量が1%以下に調整されていることを特徴とする複屈折層の製造方法。
    寸法変化量(%)=(|X−Y|/X)×100 ・・・(A)
    前記式(A)において、Xは、前記塗工工程前の前記樹脂製基材の長さを示し、Yは、前記塗工工程および乾燥工程後の前記樹脂製基材の長さを示し、前記XおよびYは共に同じ方向の長さである。
  2. 前記樹脂製基材が、透明樹脂フィルムである請求項1記載の複屈折層の製造方法。
  3. 前記複屈折層の形成材料が、非液晶性材料である請求項1または2に記載の複屈折層の製造方法。
  4. 前記非液晶性材料が、ポリアミド、ポリイミド、ポリエステル、ポリエーテルケトン、ポリアミドイミドおよびポリエステルイミドからなる群から選択される少なくとも一種のポリマー材料である請求項3に記載の複屈折層の製造方法。
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