JP2006125905A - 金属製密閉容器及びその腐食防止方法 - Google Patents

金属製密閉容器及びその腐食防止方法 Download PDF

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純一 岸本
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Abstract

【課題】キャスク密封境界であるガスケット部を効率よく洗浄することにより、腐食原因を除去できる金属製密閉容器であり、また、キャスクキャビティ(燃料集合体が設置される内部全体)の乾燥前に残存水量を極力少なくし、後工程の乾燥負荷を下げ、乾燥度合いを向上させることができる金属製密閉容器の腐食防止方法を提供することを目的とする。
【解決手段】開口端に蓋取付部1aが形成された容器本体1と、前記蓋取付部1aに締結される上部蓋2と、前記蓋取付部1aと前記上部蓋2との間に介装されるシール部材3とからなる金属製密閉容器において、前記上部蓋2にスペーサボルト5を上下に貫通させて、その下端を前記上部蓋2の下面から突出させて前記蓋取付部1aに当接させることにより、前記蓋取付部1aと前記上部蓋2との間に、前記シール部材3に対して注入される洗浄水の排出用流路となる隙間Gを形成した。
【選択図】 図1

Description

本発明は、金属製密閉容器及びその腐食防止方法に関する。例えば、使用済み燃料中間貯蔵キャスクの腐食防止方法に使用できるものである。
密閉性が極めて高く、長期間にわたって内容物を外界と遮断して貯蔵する金属製密閉容器として代表的なものに、原子力発電所で使用される燃料を輸送・貯蔵するための燃料輸送・貯蔵用キャスク(以下、キャスクと略す)がある。このキャスクは、放射線を外部に対して遮蔽した状態で燃料を輸送することができるように造られており、放射性物質である燃料を輸送・運搬する際に使用され、また、原子力発電で使用した後の使用済燃料を収納するためにも使用されている。
このキャスクは、燃料集合体を格子配列して収納可能に造られた容器本体と、任意の燃料集合体を出し入れできるように開口された容器本体の開口部を覆う一次蓋及び二次蓋を備えている。一次蓋及び二次蓋は、それぞれ容器本体の開口部外周端と一体に設けられた蓋取付部に、それぞれ金属製のシール部材(いわゆるガスケット)を挟んでボルトで取り付けられる。
キャスクの中に燃料集合体と共に封入された純水は、一次蓋に設けられた専用の穴から排水装置を挿入して排水する。また、燃料集合体の表面など狭隘部には若干の水分が残留するため、さらに真空排気することで乾燥させる、いわゆる真空乾燥を行う。さらに、二次蓋を取り付けた後、一次蓋と二次蓋の間を同じく真空乾燥することで、残留水分の除去が行われている。このように残留水分を除去したキャスクは乾式キャスクと呼ばれる。
特開2002−243888 特開2002−277585
原子力プラントでは使用済み燃料は一旦サイト内の燃料貯蔵プールにて保管され、その後、燃料の再処理や中間貯蔵のためにキャスクに装荷され、輸送および貯蔵される。
乾式キャスクの場合、燃料プール中でキャスク内に燃料を収納し、除染ピット内で内部(キャビティおよびガスケット)の水を排水後、真空乾燥操作を実施し、キャスク内の水分を除去する。これは各部の水のよる腐食対策と、貯蔵期間中の内圧の上昇を抑えるためである。
現在の国内規制では、ある残留水分量まで乾燥を実施することになっているが、規定値以内であれば腐食が発生しないとは限らず(水分の残留箇所は多数あり、また温度条件等が異なる)、各部分の状況を考慮し、腐食防止の対策が施されている(特許文献1,2)。
しかしながら、腐食防止の観点からは以下の問題点(1)(2)がある。
(1)キャスクの密封を確保するキャスク上部蓋(一次蓋、二次蓋)のガスケット部の腐食の発生防止は重要であるが、プール水に含まれる各種薬品(ホウ酸水など)の洗浄が不十分となり、酸性となって腐食の可能性が否定できない。しかも洗浄可能な構造となっていない。
(2)キャスクキャビティ(燃料集合体が設置される内部全体)では、排水操作後に多量の水分が残存する可能性がある。乾燥前に残存水量を極力少なくし、後工程の乾燥負荷を下げ、乾燥度合いを向上させる必要がある。
本発明は、上記従来技術に鑑みてなされたものであり、ガスケット部への腐食発生を防止するための各種薬品の洗浄構造、残存水分の排水構造及び方法を提供することを目的とする。
上記課題を解決する本発明の請求項1に係る金属製密閉容器は、開口端に蓋取付部が形成された容器本体と、前記蓋取付部に締結される上部蓋と、前記蓋取付部と前記上部蓋との間に介装されるシール部材とからなる金属製密閉容器において、前記上部蓋にスペーサボルトを上下に貫通させて、その下端を前記上部蓋の下面から突出させて前記蓋取付部に当接させることにより、前記蓋取付部と前記上部蓋との間に、前記シール部材に対して注入される洗浄水の排出用流路としなる隙間を形成したことを特徴とする。
上記課題を解決する本発明の請求項2に係る金属製密閉容器の腐食防止方法は、開口端に蓋取付部が形成された容器本体と、前記蓋取付部に締結される上部蓋と、前記蓋取付部と前記上部蓋との間に介装されるシール部材とからなる金属製密閉容器の腐食を防止する方法において、前記蓋取付部と前記上部蓋との間に、氷を挿入することにより、前記シール部材に対して注入される洗浄水の排出用流路となる隙間を形成したことを特徴とする。
上記課題を解決する本発明の請求項3に係る金属製密閉容器は、開口端に蓋取付部が形成された容器本体と、前記蓋取付部に締結される上部蓋と、前記蓋取付部と前記上部蓋との間に介装されるシール部材とからなる金属製密閉容器において、前記上部蓋に、前記シール部材周辺へ洗浄水を注入する注入流路及び前記シール部材周辺から洗浄水を排出させる排出流路を形成したことを特徴とする。
上記課題を解決する本発明の請求項4に係る金属製密閉容器は、開口端に蓋取付部が形成された容器本体と、前記蓋取付部に締結される上部蓋と、前記蓋取付部と前記上部蓋との間に介装されるシール部材とからなる金属製密閉容器において、前記シール部材周辺に、アルカリ性のゲル材を挿入したことを特徴とする。
上記課題を解決する本発明の請求項5に係る金属製密閉容器の腐食防止方法は、開口端に蓋取付部が形成された容器本体と、前記蓋取付部に締結される上部蓋と、前記蓋取付部と前記上部蓋との間に介装されるシール部材とからなる金属製密閉容器の腐食を防止する方法において、前記金属製密閉容器をプール中に浸漬する際に、前記シール部材周辺へ乾燥ガスを送気し、前記蓋取付部と前記上部蓋との間をバブリングすることにより、前記シール部材周辺から残留水を排除することを特徴とする。
上記課題を解決する本発明の請求項6に係る金属製密閉容器は、請求項3記載の金属製密閉容器において、前記注入流路に絞りを設け、洗浄水の流速を高めたことを特徴とする。
上記課題を解決する本発明の請求項7に係る金属製密閉容器は、金属製密閉容器内に、大口径管内に小口径管を配置してなる二重管を容器底部までまで挿入し、前記小口径管から前記容器内の残留水を排水した後、前記大口径管から乾燥ガスを前記容器内に導入し、容器内を乾燥することを特徴とする。
上記課題を解決する本発明の請求項8に係る金属製密閉容器は、金属製密閉容器内に、大口径管内に小口径管を配置してなる二重管を容器底部まで挿入し、乾燥ガスを前記容器内に導入し、容器内に残留している残留水を押し下げて前記大口径管から排水し、前記大口径管でサイホンブレークが生じた後は、前記小口径管から排水することを特徴とする。
上記課題を解決する本発明の請求項9に係る金属製密閉容器は、容器内周面に溝を上下に形成し、該溝に排水管を設置してなる金属製密閉容器において、容器内に残留する残留水を前記排水管から排出する際は、前記溝を設置した方向に前記金属製密閉容器を傾けることを特徴とする。
本発明は、キャスク密封境界であるガスケット部を効率よく洗浄することにより、腐食原因を除去できる金属製密閉容器であり、また、キャスクキャビティ(燃料集合体が設置される内部全体)の乾燥前に残存水量を極力少なくし、後工程の乾燥負荷を下げ、乾燥度合いを向上させることができる金属製密閉容器の腐食防止方法であるので、ガスケット部への残存水分の移行を防止でき、これにより、ガスケット腐食原因を除去できる。
即ち、請求項1に係る発明では、上部蓋を締結する前にスペーサボルトで上部蓋を浮かし、上部蓋と蓋取付部との間に排水流路となる隙間Gを確保して、洗浄水を注入してガスケット部を洗浄するので、プール水に含まれる各種薬品を十分に洗浄することができ、腐食を防止することができる。
また、請求項2に係る発明では、上部蓋を締結する前に上部蓋と蓋取付部との間に成形氷を挿入して、排水流路となる隙間を確保して、洗浄水を注入してガスケット部を洗浄するので、プール水に含まれる各種薬品を十分に洗浄することができ、腐食を防止することができる。
また、請求項3に係る発明では、上部蓋に洗浄水の流路となる注入孔を形成したので、ガスケット部に残留するプール水に含まれる各種薬品を十分に洗浄することができ、腐食を防止することができる。
また、請求項4に係る発明では、ガスケット部にアルカリ性ゲル材を予め挿入するので、残留水に含まれる酸性のホウ酸と中和して、腐食を防止することができる。
また、請求項5に係る発明では、燃料プールに上部蓋を浸漬する際にガスケット溝へ乾燥ガスを送気し、バブリングしながらセットするので、ガスケット部に水を残留させず、残留水による腐食を防止できる。
また、請求項6に係る発明では、実施例3において、注入孔のノズル先端部に絞りを設け、流速を高めたので、洗浄性を向上させることができる。
また、請求項7に係る発明では、既設の排水ノズルと高温乾燥ガスの供給ノズルをそれぞれ別々に設けるのではなく、抽気・排水二重管として併用するので、空間の少ないキャビティ内の空間を有効的に利用できる。
また、請求項8に係る発明では、大口径管でサイホンブレークが生じたあとに小口径管を通じて排水するので、残留水量を低減することができる。
また、請求項9に係る発明では、排水管を容器内周面に埋め込み、その排水管を埋め込んだ方向に容器を傾けて、排水管の下端に集めて、排水管から残留水を排水するので、残留水量を低減することができる。
本発明を実施するための最良の形態は、以下の実施例1〜9である。
本発明の第1の実施例に係る乾式キャスクの腐食防止対策について図1を参照して説明する。
本実施例は、ガスケット部へのプール水の残留を防止するために、洗浄水による洗浄を実施することができるよう、スペーサボルト5にて洗浄水の流路を確保したものである。
即ち、図1に示すように、キャスク胴(容器本体)1の開口端に形成された蓋取付部1aに、ガスケット(金属製シール部材)3を間に挟んで、一次蓋2が締結されている。更に、図示しない二次蓋を一次蓋2の締結されたキャスク胴1に更に締結して、キャスク(金属製密閉容器)が構成される。
ガスケット3は、ニッケル−クロム−鉄合金よりなる周長の異なる内リング3aと外リング3bを一体にアルミニウム合金製被覆材3cで被覆したものである。
このような内リング3a,外リング3b及びアルミニウム合金製被覆材3cよりなるガスケット3を収容するためのガスケット溝2aが一次蓋2の下面に環状に凹設されている。
このガスケット溝2aの中央部には、一次蓋2の上面からヘリウムリークテストポート4が貫通している。
ヘリウムリークテストポート4は、ガスケット3を介して、キャスク胴1に一次蓋2を締結した際に、ガスケット3によるシール性が健全であるかを、ヘリウムガスを流してテストするために使用されるものである。テスト終了後は、ヘリウムリークテストポート4はプラグを挿入して閉じる。
上述したように、除染ピット内でキャスク内部の水が排水された後、真空乾燥処理されるのであるが、ガスケット3及びこれを収容するガスケット溝2a付近には、プール水が残留する恐れがあり、プール水に含まれる各種薬品(ホウ酸水など)により酸性となって腐食の可能性がある。
そこで、本実施例では、図1に示すように、ヘリウムリークテストポート4を利用して、ガスケット3を収容するガスケット溝2aに洗浄水(例えば、純水)を注入する。
そして、ガスケット溝2aに注入された洗浄水の排出用流路(逃げ道)として、一次蓋2と蓋取付部1aとの間に隙間Gを形成をできるよう、一次蓋2にスペーサボルト5を上下に貫通させて、その下端を一次蓋2の下面から突出させて蓋取付部1aに当接させる。
従って、図1に矢印で示すように、ヘリウムリークテストポート4から洗浄水を注入すると、ガスケット3を収容するガスケット溝2aに残留するプール水を洗浄水で洗い流し、更に、スペーサボルト5により一次蓋2と蓋取付部1aに形成された隙間G内において内周側及び外周側に流れて排出されることになる。
実際の手順としては、以下のように行う。
先ず、キャスク胴1に一次蓋2を締結する前に、スペーサボルト5で一次蓋2を蓋取付部1aから浮かし、一次蓋2と蓋取付部1aとの間に排水流路となる隙間Gを形成し、ヘリウムリークテストポート4から洗浄水を注入する。
次に、洗浄水が残留するプール水と共に一次蓋2と蓋取付部1aとの間の隙間Gを通じて排水された後、ヘリウムリークテストポート4から乾燥ガスをパージし、ガスケット3の周辺を乾燥させる。これにより、残留水は除去される。
その後、一次蓋2からスペーサボルト5を取り外す。
このように説明したように、本実施例は、一次蓋2を締結する前にスペーサボルト5で一次蓋2を浮かし、一次蓋2と蓋取付部1aとの間に排水流路となる隙間Gを確保して、洗浄水を注入してガスケット部を洗浄するので、プール水に含まれる各種薬品を十分に洗浄することができ、腐食を防止することができる。
本発明の第2の実施例に係る乾式キャスクの腐食防止対策について図2を参照して説明する。
本実施例は、ガスケット部へのプール水の残留を防止するために、洗浄水による洗浄を実施することができるよう、成形氷6にて洗浄水の流路を確保したものである。
即ち、図2に示すように、ヘリウムリークテストポート4からガスケット3を収容するガスケット溝2aに洗浄水を注入し、注入された洗浄水の排出用流路(逃げ道)として、一次蓋2と蓋取付部1aとの間に成形氷6を挿入して、隙間Gを形成したものである。その他の構成は、前述した実施例1と同様である。
従って、図2に矢印で示すように、ヘリウムリークテストポート4から洗浄水を注入すると、ガスケット3を収容するガスケット溝2aに残留するプール水を洗浄水で洗い流し、更に、成形氷6で一次蓋2と蓋取付部1aに形成された隙間G内において内周側及び外周側に流れて排出されることになる。
実際の手順としては、以下のように行う。
先ず、キャスク胴1に一次蓋2を締結する前に、一次蓋2と蓋取付部1aとの間に成形氷6を挿入し、一次蓋2と蓋取付部1aとの間に排水流路となる隙間Gを形成し、ヘリウムリークテストポート4から洗浄水を注入する。
次に、洗浄水と共にプール水が一次蓋2と蓋取付部1aとの間の隙間Gを通じて排水された後、ヘリウムリークテストポート4から乾燥ガスをパージし、乾燥させる。これにより、残留水は除去される。
なお、成形氷6は液化して洗浄水と共に排出されるか、乾燥ガスをパージした際に気化して消滅する。
このように説明したように、本実施例は、一次蓋2を締結する前に一次蓋2と蓋取付部1aとの間に成形氷6を挿入して、排水流路となる隙間Gを確保して、洗浄水を注入してガスケット部を洗浄するので、プール水に含まれる各種薬品を十分に洗浄することができ、腐食を防止することができる。
本発明の第3の実施例に係る乾式キャスクの腐食防止対策について図3を参照して説明する。
本実施例は、ガスケット部へのプール水の残留を防止するために、洗浄水による洗浄を実施することができるよう、水平注入孔7及び垂直注入孔8にて洗浄水の流路を確保したものである。
即ち、ガスケット溝2aの中央には、一次蓋2の上面からヘリウムリークテストポート4が貫通しており、更に、ガスケット溝2aの外周部に対しては、一次蓋2の外周部から水平注入孔7を貫通させ、また、ガスケット溝2aの内周部に対しては、一次蓋2の上面から垂直注入孔8を貫通して設けた。その他の構成は、前述した実施例1と同様である。
従って、図3で矢印で示すように、ヘリウムリークテストポート4のみならず、水平注入孔7及び垂直注入孔8から洗浄水をガスケット溝2aに注入することにより、ガスケット部2aの中央部のみならず、ガスケット溝2aの隅部までも完全に洗浄することができる。
注入された洗浄水は、一次蓋2の蓋取付部1aに接する部分に周方向及び胴部に接する部分に上下に設けられたスリット(図中破線で示す)9を通って、外部に流れ排出される。これにより、残留水は除去される。
実際の手順としては、先ず、一次蓋2をキャスク胴1に仮止めした後、ヘリウムリークテストポート4、垂直注入孔8、水平注入孔7より洗浄水を注入してガスケット部を洗浄し、その後、同じ流路にて乾燥ガスをパージし、乾燥させる。
このように説明したように、本実施例は、一次蓋2に洗浄水の流路となる水平注入孔7,垂直注入孔8を形成したので、ガスケット部に残留するプール水に含まれる各種薬品を十分に洗浄することができ、腐食の恐れを排除することができる。
本発明の第4の実施例に係る乾式キャスクの腐食防止対策について図4を参照して説明する。
本実施例は、ガスケット部が酸性になることを予想し、図4に示すように、予めアルカリ性ゲル材10をガスケット3と共にガスケット溝2aに挿入するものである。
即ち、ガスケット部に残留する水にはホウ酸が含まれているため、乾燥操作を行った場合水分のみが除去され、ホウ酸は残留する。そのため、残留水は濃縮され、酸性を示す。
本実施例では、ガスケット溝2aに挿入されたアルカリ性ゲル材10により、ガスケット周辺は中和され腐食環境を回避できる。また、ゲル材10を用いることにより、金属ガスケット3の挙動を阻害しない。
このように説明したように、本実施例によれば、ガスケット部にアルカリ性ゲル材10を予め挿入するので、残留水に含まれる酸性のホウ酸と中和して、腐食を防止することができる。
本発明の第5の実施例に係る乾式キャスクの腐食防止対策について図5を参照して説明する。
本実施例は、燃料プールに一次蓋2をキャスク胴1と共に浸漬する際にHeリークテストポート4よりガスケット溝2aへ乾燥ガスを送気し、バブリングしながらセットする方法である。
これにより、ガスケット溝2a内に水を残留させないので、残留水による腐食を解することができる。
このように説明したように、本実施例では、燃料プールに一次蓋2と共にキャスク胴1を浸漬する際にHeリークテストポート4よりガスケット溝2aへ乾燥ガスを送気し、バブリングしながらセットするので、ガスケット部に水を残留させず、残留水による腐食を防止できる。
なお、乾燥ガスとしては、例えば、ヘリウム、不活性ガス等を使用することができる。
本発明の第6の実施例に係る乾式キャスクの腐食防止対策について図6を参照して説明する。
本実施例は、実施例3の変形例に関する。
即ち、Heリークテストポート4、水平注入孔7、垂直注入孔8のノズル先端部に絞り4a,7a,8aを設け、洗浄水の流速を上げ、洗浄性を向上させる方法である。
また、洗浄水を加温し、温水として注入する。温水のほうが、各種薬品(ホウ酸水など)を溶解しやすいので、洗浄性を向上させることができる。
本実施例において、その他の構造は、実施例3と同様である。
このように説明したように、本実施例では、実施例3において、Heリークテストポート4、水平注入孔7、垂直注入孔8のノズル先端部に絞り4a,7a,8aを設け、また、注入水として温水を用いるので、洗浄性を向上させることができる。
本発明の第7の実施例に係る乾式キャスクの腐食防止対策について図7を参照して説明する。
本実施例は、キャスクキャビティ内の残留水の乾燥操作に関して、高温ガスによる乾燥とした場合、既設の排水ノズルと高温乾燥ガスの供給ノズルとからなる2重管を使用するものである。
即ち、図7に示すように、キャスク11内に、大口径管12b内に小口径管12aを配置してなる抽気・排水二重管12を容器底部まで挿入する。
小口径管12aの上端は、排水系17に接続され、また、大口径管12bの上端は、ガス加熱器13及び加圧ヘリウム(又は窒素ガス)源14と接続され、図中に矢印で示すように、高圧ガスが導入される。また、キャスク11は排気ラインを通じてミストトラップ15、真空排気系16に接続されている。
従って、大口径管12bを通じて高圧ガスがキャスク11内に導入することにより、水面を押し下げて、小口径管12aを通じて残留水を排水することができ、更に、ミストトラップ15を介して真空排気系16より真空引きすることで、キャビティ11内を乾燥させることができる。
このように説明したように、本実施例では、既設の排水ノズルと高温乾燥ガスの供給ノズルをそれぞれ別々に設けるのではなく、抽気・排水二重管12で併用するので、空間の少ないキャビティ内の空間を有効的に利用できる。
なお、乾式キャスクにおいて、下部にドレンを設けない理由は、ドレンを貫通させると密閉性のため二重蓋にしなければならないためである。つまり、貫通孔となる蓋取付部を上部に集中させ、上部を二重蓋とし、底部は単純な構造とするため、ドレンを設けないのである。
本発明の第8の実施例に係る乾式キャスクの腐食防止対策について図8を参照して説明する。
本実施例は、サイホンブレークに対応して、排水二重管13を採用したものである。
即ち、通常キャビティ11内には排水用のノズルが挿入され、キャビティ11の上部空間にガスを注入し、水を押し下げ、ノズルより排水するが、下部ノズル先端部まで水面が低下した場合、サイホンブレークをおこし、排水管全量分の水がキャビティ内の戻ってしまい、乾燥操作前の残留水量が多くなる。
一方、細い排水用ノズルを設置すれば、サイホンブレークを生じた場合に、口径が小さいため、管内の水は表面張力により保持され、その後のガス送気により、排水させることができる。
但し、細い排水用ノズルでは、口径が小さいため、排水に長時間を要することになる。
そこで、本実施例では、大口径管13a内に小口径管13bを配置してなる排水二重管13を容器底部(キャビティ底)11aまで挿入し、大口径管13a、小口径管13bの上端に排水ライン17a,17bを接続したものである。
従って、排水初期には、キャビティ11内に高圧ガスを注入して、大口径管13aから大量に残留水を吸い上げて排水ライン17bから排水すると共に、大口径管17bでサイホンブレークが生じた排水後期には、大口径管17b内部から容器底部11aに戻った水を小口径管17aから吸い上げて排水ライン17aから排水することができる。
このように説明したように、本実施例では、大口径管13aでサイホンブレークが生じたあとに小口径管13bを通じて排水するので、残留水量を低減することができる。
特に、本実施例では、小口径管13bの下端は、容器底部11aに設けた凹部11bに挿入しているので、より一層は残留水量を低減することができる。
なお、本実施例と実施例7は操作時期が異なるものであるが、両者を組み合わせることも一応可能である。
即ち、図8に示すように、排水初期には、キャビティ11内に高圧ガスを注入して、大口径管13aから大量に残留水を吸い上げて排水ライン17bから排水すると共に、大口径管17bでサイホンブレークが生じた排水後期には、大口径管13aを排水ライン17bから図7に示すガス加熱器13及び加圧ヘリウム源14に切り替え、大口径管13aから容器内に高圧ガスを導入する一方、大口径管13a内部から容器底部11aに戻った水を小口径管13bから吸い上げて排水ライン17aから排水することができる
本発明の第9の実施例に係る乾式キャスクの腐食防止対策について図9を参照して説明する。
本実施例は、サイホンブレークに対応して、キャビティ11の内周面に排水パイプ18を埋め込んだ構造としたものである。
即ち、排水ノズルよりキャビティ内の水を排水しても、従来のノズル構造では、ガスによる圧送時にサイホンブレークを生じ、排水管全量分の水がキャビティ内の戻ってしまい、乾燥操作前の残留水量が多くなる。
そこで、本実施例では、図9(a)に示すように、キャビティ11の内周面の周方向1箇所に溝11cを上下に設置し、その溝11cに排水パイプ18を挿入したものである。
従って、通常の排水操作終了後に、図9(b)に示すように、溝11cを設置した方向にキャスク11全体を傾け、溝11cの下部に残留水を集め、その後、ノズル18を介して、負圧による回収あるいは加圧による圧送で残留水を排水させる。
このように説明したように、本実施例は、排水パイプ18をキャビティ11の内周面に埋め込み、その排水パイプ18を埋め込んだ方向にキャビティ11を傾けて、排水パイプ18の下端に集めて、排水パイプ18から残留水を排水するので、残留水量を低減することができる。
なお、上記実施例では、排水パイプ18の全体が隠れるように溝11cに挿入していたが、必ずしも全体が隠れる必要はなく、少なくともその一部隠れるように挿入すればよい。
本発明は、金属製密閉容器及びその腐食防止方法であり、使用済み燃料中間貯蔵キャスクの腐食防止方法に利用して好適なものである。
本発明の第1の実施例に係る乾式キャスクの腐食防止対策の説明図である。 本発明の第2の実施例に係る乾式キャスクの腐食防止対策の説明図である。 本発明の第3の実施例に係る乾式キャスクの腐食防止対策の説明図である。 本発明の第4の実施例に係る乾式キャスクの腐食防止対策の説明図である。 本発明の第5の実施例に係る乾式キャスクの腐食防止対策の説明図である。 本発明の第6の実施例に係る乾式キャスクの腐食防止対策の説明図である。 本発明の第7の実施例に係る乾式キャスクの腐食防止対策の説明図である。 本発明の第8の実施例に係る乾式キャスクの腐食防止対策の説明図である。 本発明の第9の実施例に係る乾式キャスクの腐食防止対策の説明図である。
符号の説明
1 キャスク胴
2 一次蓋
3 ガスケット
4 Heリークテストポート
5 スペーサボルト
6 成形氷
7 水平注入孔
8 垂直注入孔
9 スリット
10 アルカリ性ゲル材

Claims (9)

  1. 開口端に蓋取付部が形成された容器本体と、前記蓋取付部に締結される上部蓋と、前記蓋取付部と前記上部蓋との間に介装されるシール部材とからなる金属製密閉容器において、
    前記上部蓋にスペーサボルトを上下に貫通させて、その下端を前記上部蓋の下面から突出させて前記蓋取付部に当接させることにより、前記蓋取付部と前記上部蓋との間に、前記シール部材に対して注入される洗浄水の排出用流路としなる隙間を形成したことを特徴とする金属製密閉容器。
  2. 開口端に蓋取付部が形成された容器本体と、前記蓋取付部に締結される上部蓋と、前記蓋取付部と前記上部蓋との間に介装されるシール部材とからなる金属製密閉容器の腐食を防止する方法において、
    前記蓋取付部と前記上部蓋との間に、氷を挿入することにより、前記シール部材に対して注入される洗浄水の排出用流路となる隙間を形成したことを特徴とする金属製密閉容器の腐食防止方法。
  3. 開口端に蓋取付部が形成された容器本体と、前記蓋取付部に締結される上部蓋と、前記蓋取付部と前記上部蓋との間に介装されるシール部材とからなる金属製密閉容器において、
    前記上部蓋に、前記シール部材周辺へ洗浄水を注入する注入流路及び前記シール部材周辺から洗浄水を排出させる排出流路を形成したことを特徴とする金属製密閉容器。
  4. 開口端に蓋取付部が形成された容器本体と、前記蓋取付部に締結される上部蓋と、前記蓋取付部と前記上部蓋との間に介装されるシール部材とからなる金属製密閉容器において、
    前記シール部材周辺に、アルカリ性のゲル材を挿入したことを特徴とする金属製密閉容器。
  5. 開口端に蓋取付部が形成された容器本体と、前記蓋取付部に締結される上部蓋と、前記蓋取付部と前記上部蓋との間に介装されるシール部材とからなる金属製密閉容器の腐食を防止する方法において、
    前記金属製密閉容器をプール中に浸漬する際に、前記シール部材周辺へ乾燥ガスを送気し、前記蓋取付部と前記上部蓋との間をバブリングすることにより、前記シール部材周辺から残留水を排除することを特徴とする金属製密閉容器の腐食防止方法。
  6. 請求項3記載の金属製密閉容器において、
    前記注入流路に絞りを設け、洗浄水の流速を高めたことを特徴とする金属製密閉容器。
  7. 金属製密閉容器内に、大口径管内に小口径管を配置してなる二重管を容器底部まで挿入し、前記小口径管から前記容器内の残留水を排水した後、前記大口径管から乾燥ガスを前記容器内に導入し、容器内を乾燥することを特徴とする金属製密閉容器。
  8. 金属製密閉容器内に、大口径管内に小口径管を配置してなる二重管を容器底部まで挿入し、乾燥ガスを前記容器内に導入し、容器内に残留している残留水を押し下げて前記大口径管から排水し、前記大口径管でサイホンブレークが生じた後は、前記小口径管から排水することを特徴とする金属製密閉容器。
  9. 容器内周面に溝を上下に形成し、該溝に排水管を設置してなる金属製密閉容器において、容器内に残留する残留水を前記排水管から排出する際は、前記溝を設置した方向に前記金属製密閉容器を傾けることを特徴とする金属製密閉容器。
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