以下に図面を参照して、本開示の好適な実施形態を詳細に説明する。なお、この実施形態により本開示が限定されるものではなく、また、実施形態が複数ある場合には、各実施形態を組み合わせて構成するものも含むものである。また、実施形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。
[第1実施形態]
図1は、第1実施形態の放射性物質収納容器の乾燥装置を表す概略構成図である。
第1実施形態において、図1に示すように、放射性物質収納容器の乾燥装置10は、排気ライン11と、ドライ真空ポンプ12と、第1不活性ガス供給ライン13と、第2不活性ガス供給ライン14とを備える。
放射性物質収納容器の乾燥装置10は、放射性物質収納容器100の内部を乾燥させるものである。放射性物質収納容器100は、原子力発電プラントの原子炉などで発生した使用済燃料などの放射性廃棄物を収納するものである。
放射性物質収納容器100は、例えば、キャスクであって、胴部101と蓋部102とを有する。胴部101は、上部に開口部が形成され、下部に底部が設けられる円筒形状をなす。胴部101は、γ線遮蔽機能を有する炭素鋼やステンレス鋼により構成され、外側に中性子遮蔽機能を有するボロンやボロン化合物を含有したレジン(中性子遮蔽体)が配置される。蓋部102は、例えば、一次蓋と二次蓋とを有する。一次蓋は、胴部101の開口部に対して着脱可能であり、二次蓋は、一次蓋の外側に対して着脱可能である。一次蓋は、胴部101の内部の負圧を維持して充填されたガスの漏洩を防ぐと共に、内部に収納した放射性物質から出る放射線(γ線)を遮蔽する。また、一次蓋は、二次蓋側にレジン(中性子遮蔽体)が設けられる。二次蓋は、一次蓋との間に大気に対して加圧された圧力監視境界を有する。
原子力発電プラントは、敷地内に原子炉建屋が設置され、原子炉建屋は、内部に原子炉が設けられると共に、冷却水が貯留されて使用済燃料を浸漬可能な燃料プールが設けられる。また、原子炉建屋は、燃料プールに隣接して除染ピット111が設けられると共に、除染ピット111に隣接して燃料プールにおける冷却水の上面より上方に位置して作業フロア112が設けられる。
原子炉建屋は、燃料プールに隣接して燃料装荷を行う処理ピットが設けられる。処理ピットは、冷却水が貯留される。放射性物質収納容器100は、まず、蓋部102が取り外された状態で、胴部101が処理ピットの水中に沈められる。この状態で、クレーンを用いて燃料プールの水中にある使用済燃料を胴部101に収納する。次に、胴部101の開口部に一次蓋を設置した後、クレーンを用いて放射性物質収納容器100を処理ピットから引き上げ、除染ピット111に載置し、胴部101に蓋部102を固定する。そして、放射性物質収納容器100の内部に充填された水を排出した後、真空乾燥する。放射性物質収納容器の乾燥装置10は、放射性物質収納容器100の内部の真空乾燥作業に用いられる。放射性物質収納容器の乾燥装置10は、作業フロア112に設けられる。
放射性物質収納容器100は、蓋部102にベントライン103と、ドレンライン104が設けられる。ベントライン103は、蓋部102を厚さ方向に挿通され、放射性物質収納容器100の外部と内部における胴部101の上端部とを連通する。ドレンライン104は、蓋部102を厚さ方向に挿通され、放射性物質収納容器100の外部と内部における胴部101の下端部とを連通する。
排気ライン11は、一端部が放射性物質収納容器100における蓋部102のベントライン103に連結される。排気ライン11は、真空乾燥ユニット21が設けられる。真空乾燥ユニット21は、コールドトラップ22と、フィルタ23と、ドライ真空ポンプ12とを有する。排気ライン11は、他端部が原子炉建屋の排気処理系に連結される。
コールドトラップ22は、冷媒が供給される冷媒供給ライン24が設けられる。コールドトラップ22は、冷媒供給ライン24から供給される冷媒によって排気ライン11により排気される水蒸気を凝縮し、固体あるいは液体として除去する。フィルタ23は、排気ライン11により排気されるガスから有害物質を除去する。ドライ真空ポンプ12は、排気ライン11を通して放射性物質収納容器100に排気圧(真空圧)を作用させることで、放射性物質収納容器100に残留する空気および水蒸気などのガスを排気する。ここで、ドライ真空ポンプ12とは、潤滑油や液体などをポンプの真空室内に使用しない機械式の真空ポンプである。ドライ真空ポンプ12として、例えば、スクリュー式ドライ真空ポンプやルーツ式ドライ真空ポンプなどが適用される。
そのため、ドライ真空ポンプ12を作動すると、排気圧が排気ライン11を通して放射性物質収納容器100の内部における上部に作用する。すると、放射性物質収納容器100の内部のガスが排気ライン11を通して排気される。このとき、放射性物質収納容器100から排気ライン11に排出されたガスは、コールドトラップ22により水蒸気が凝縮されて固体あるいは液体として除去され、フィルタ23により含有する有害物質が除去される。
第1不活性ガス供給ライン13は、一端部が排気ライン11における真空乾燥ユニット21(コールドトラップ22)より放射性物質収納容器100側に連結される。第1不活性ガス供給ライン13と排気ライン11の連結部には、三方弁25が設けられる。第1不活性ガス供給ライン13は、他端部に第1不活性ガス供給源26が連結される。第1不活性ガスは、例えば、ヘリウムガスであって、第1不活性ガス供給源26は、ヘリウムガスを貯留する。第1不活性ガス供給源26は、例えば、ボンベである。第1不活性ガス供給ライン13は、第1開閉装置27が設けられる。第1開閉装置27は、第1不活性ガス供給源26から第1不活性ガス供給ライン13に流動させるヘリウムガスの供給量を調整可能である。第1開閉装置27は、第1不活性ガス供給ライン13から体積計測部に流れた第1不活性ガスの体積を計測し、予め設定された体積に達すると、流れを遮断するものである。第1開閉装置27は、例えば、弁としての機能と体積計測および演算機能を有するマスフローコントローラである。なお、第1開閉装置27は、止め弁であってもよく、流量調整弁であってもよい。
そのため、第1開閉装置27を開放すると、第1不活性ガス供給源26のヘリウムガスが第1不活性ガス供給ライン13および排気ライン11を通してベントライン103から放射性物質収納容器100の上部に供給される。このとき、第1開閉装置27を開閉制御することで、放射性物質収納容器100に供給するヘリウムガスの供給量を調整することができる。
第2不活性ガス供給ライン14は、一端部が放射性物質収納容器100における蓋部102のドレンライン104に連結される。第2不活性ガス供給ライン14は、他端部に第2不活性ガス供給源31が連結される。第2不活性ガスは、例えば、窒素ガスであって、第2不活性ガス供給源31は、窒素ガスを貯留する。第2不活性ガス供給源31は、例えば、ボンベである。第2不活性ガス供給ライン14は、第2開閉装置32が設けられる。第2開閉装置32は、第2不活性ガス供給源31から第2不活性ガス供給ライン14に流動させる窒素ガスの供給量を調整可能である。第2開閉装置32は、第2不活性ガス供給ライン14から体積計測部に流れた第2不活性ガスの体積を計測し、予め設定された体積に達すると、流れを遮断するものである。第2開閉装置32は、例えば、弁としての機能と体積計測および演算機能を有するマスフローコントローラである。なお、第2開閉装置32は、止め弁であってもよく、流量調整弁であってもよい。
なお、第1不活性ガスをヘリウムガス、第2不活性ガスを窒素ガスとしたが、この組み合わせに限定されるものではない。第2不活性ガスは、第1不活性ガスより分子量が大きいガス(例えば、アルゴン等)であればよい。
そのため、第2開閉装置32を開放すると、第2不活性ガス供給源31の窒素ガスが第2不活性ガス供給ライン14を通してドレンライン104から放射性物質収納容器100の下部に供給される。このとき、第2開閉装置32を開閉制御することで、放射性物質収納容器100に供給する窒素ガスの供給量を調整することができる。
ここで、ドライ真空ポンプ12が作動すると、排気圧が排気ライン11および放射性物質収納容器100の内部に作用する。そのため、本発明のドライ真空ポンプ12の吸込圧が作用する所定領域とは、排気ライン11および放射性物質収納容器100の内部である。第1実施形態では、第2不活性ガス供給ライン14が放射性物質収納容器100に連結されていることから、所定領域は、放射性物質収納容器100の内部である。そして、第2不活性ガス供給ライン14が放射性物質収納容器100のドレンライン104に連結されていることから、所定領域は、放射性物質収納容器100の内部における下部である。
制御装置41は、ドライ真空ポンプ12を作動制御可能であると共に、第1開閉装置27および第2開閉装置32を開閉制御可能である。また、排気ライン11における三方弁25より放射性物質収納容器100側に圧力計42が設けられる。制御装置41は、圧力計42の計測結果が入力される。このとき、排気ライン11における三方弁25より放射性物質収納容器100側の圧力は、放射性物質収納容器100の内部の圧力と同等であることから、圧力計42の計測結果は、放射性物質収納容器100の内部の圧力であると推定される。
制御装置41は、第2不活性ガス供給ライン14から所定領域としての放射性物質収納容器100のへの窒素ガスの供給開始時期を制御する。すなわち、制御装置41は、圧力計42が計測した放射性物質収納容器100の内部の圧力に基づいて第2不活性ガス供給ライン14から放射性物質収納容器100の内部への窒素ガスの供給開始時期を設定する。具体的に、制御装置41は、ドライ真空ポンプ12による放射性物質収納容器100の内部の減圧時に、放射性物質収納容器100の内部の圧力が予め設定された所定圧力まで低下しないと、第2不活性ガス供給ライン14から放射性物質収納容器100の内部への窒素ガスの供給を開始する。なお、制御装置41は、放射性物質収納容器100の内部の圧力低下率が予め設定された所定圧力変化率以下になると、第2不活性ガス供給ライン14から放射性物質収納容器100の内部への窒素ガスの供給を開始するようにしてもよい。さらに、制御装置41は、ドライ真空ポンプ12による放射性物質収納容器100の内部の減圧開始から予め設定された所定時間が経過すると、第2不活性ガス供給ライン14から放射性物質収納容器100の内部への窒素ガスの供給を開始するようにしてもよい。
以下、放射性物質収納容器の乾燥装置10による放射性物質収納容器の乾燥方法について説明する。図2は、放射性物質収納容器の乾燥方法を表すフローチャート、図3は、放射性物質収納容器の乾燥方法を表すタイムチャートである。
放射性物質収納容器の乾燥方法は、放射性物質収納容器100の内部に第1不活性ガスを所定量供給する工程と、ドライ真空ポンプ12により放射性物質収納容器100の内部の第1不活性ガスを含むガスを排気する工程と、ドライ真空ポンプ12の吸込圧が作用する所定領域の圧力または圧力相関値が予め設定された所定範囲にあるときに放射性物質収納容器100の内部に第1不活性ガスより分子量の大きい第2不活性ガスを所定量供給する工程と、放射性物質収納容器100の内部の第1不活性ガスおよび第2不活性ガスを含むガスを排気する工程とを有する。
ここで、圧力相関値とは、圧力、圧力変化率、時間である。すなわち、所定領域の圧力が所定圧力に到達しないとき、または、所定領域の圧力低下率が所定圧力変化率以下になると、または、ドライ真空ポンプ12が作動してから所定時間が経過したら、所定領域への第2不活性ガスの供給を開始する。
具体的に説明すると、図2に示すように、ステップS11にて、放射性物質収納容器100を処理ピットに搬送する。原子炉建屋は、燃料プールに隣接して処理ピットが設けられる。放射性物質収納容器100は、胴部101が処理ピットの冷却水に浸漬される。ステップS12にて、作業者は、クレーンを用いて燃料プールに浸漬されている使用済燃料を処理ピット放射性物質収納容器100の胴部101に収容する。
放射性物質収納容器100に所定量の使用済燃料が収納されると、ステップS13にて、処理ピットの胴部101に蓋部102を設置する。ステップS14にて、クレーンを用いて使用済燃料が収納された放射性物質収納容器100を処理ピットから除染ピットに搬送する。ここで、胴部101に蓋部102を固定する。そして、ステップS15にて、放射性物質収納容器100のドレンライン104に排水ラインを連結し、放射性物質収納容器100の内部に充填された水を排水ラインから排出する。なお、放射性物質収納容器100の排水方法は、この方法に限らず、例えば、放射性物質収納容器100の内部に空気などのガスを供給し、内部の水を排水ラインから押し出して排出するようしてもよい。
放射性物質収納容器100の内部から水が排出されると、図1および図2に示すように、放射性物質収納容器100に排気ライン11と第1不活性ガス供給ライン13と第2不活性ガス供給ライン14を連結する。そして、作業者は、制御装置41に対して放射性物質収納容器100の乾燥作業の操作を行う。まず、制御装置41は、ドライ真空ポンプ12を作動し、排気圧を排気ライン11から放射性物質収納容器100の内部に作用させる。すると、放射性物質収納容器100は、内部に残留する水蒸気が空気と共に外部に吸引されて排気され、内部圧力が低下する。放射性物質収納容器100は、内部の圧力が低下すれば、内部に残留する水の沸点が低下し、常温に近い環境下で蒸発して水蒸気になる。この水蒸気は、ドライ真空ポンプ12の排気により排気ライン11を通じて排気される。このとき、三方弁25は、排気ライン11を連通し、排気ライン11と第1不活性ガス供給ライン13との連通を遮断している。放射性物質収納容器100の内部が所定圧力まで減圧されると、ドライ真空ポンプ12の作動を停止する。
ステップS16にて、制御装置41は、第1開閉装置27を開放制御し、第1不活性ガス供給源26のヘリウムガスを第1不活性ガス供給ライン13および排気ライン11を通してベントライン103から放射性物質収納容器100の上部に供給する。このとき、三方弁25は、排気ライン11の放射性物質収納容器100側と第1不活性ガス供給ライン13とを連通し、排気ライン11の真空乾燥ユニット21側を遮断している。放射性物質収納容器100の内部にヘリウムガスが供給されることで、放射性物質収納容器100の内部が冷却される。放射性物質収納容器100に所定量のヘリウムガスが充填されると、制御装置41は、第1開閉装置27を閉止制御し、放射性物質収納容器100へのヘリウムガスの供給を停止する。放射性物質収納容器100に供給すべくヘリウムガスの供給量は、放射性物質収納容器100の容積により決定される。第1開閉装置27は、放射性物質収納容器100に供給すべくヘリウムガスの量が流れると閉止する。なお、第1開閉装置27が止め弁や流量調整弁であると、第1不活性ガス供給ライン13および排気ライン11の配管径と圧力とにより、予め設計や演算、実験などにより、放射性物質収納容器100へのヘリウムガスの供給量を、止め弁や流量調整弁の開放時間に換算しておいてもよい。
ステップS17にて、制御装置41は、再びドライ真空ポンプ12を作動し、排気圧を排気ライン11から放射性物質収納容器100の内部に作用させる。すると、放射性物質収納容器100は、内部に残留するヘリウムガスおよび水蒸気などが外部に排気され、内部圧力が低下する。ステップS18にて、制御装置41は、圧力計42が計測した放射性物質収納容器100の内部圧力が予め設定された所定圧力まで低下したかどうかを判定する。具体的に、制御装置41は、予め設定された所定時間の間に放射性物質収納容器100の内部圧力が所定圧力まで低下したかどうかを判定する。ここで、放射性物質収納容器100の内部圧力が所定圧力まで低下していないと判定(No)されると、ステップS19にて、ドライ真空ポンプ12の作動を継続したままで、第2開閉装置32を開放し、第2不活性ガス供給源31の窒素ガスを第2不活性ガス供給ライン14を通してドレンライン104から放射性物質収納容器100の下部に供給する。
ステップS20にて、制御装置41は、放射性物質収納容器100に所定量の窒素ガスが充填されたかどうかを判定する。放射性物質収納容器100に供給すべく窒素ガスの供給量は、放射性物質収納容器100の容積により決定される。第2開閉装置32は、放射性物質収納容器100に供給すべく窒素ガスの量が流れると閉止する。なお、第2開閉装置32が止め弁や流量調整弁であると、第2不活性ガス供給ライン14の配管径と圧力とにより、予め設計や演算、実験などにより、放射性物質収納容器100への窒素ガスの供給量を、止め弁や流量調整弁の開放時間に換算しておいてもよい。
そのため、ステップS20にて、制御装置41は、放射性物質収納容器100に所定量の窒素が充填されたかどうか、つまり、所定量の窒素ガスが第2不活性ガス供給ライン14に流れたかどうかを判定する。ここで、所定量の窒素ガスが第2不活性ガス供給ライン14に流れていないと判定(No)されると、この処理を継続する。一方、所定量の窒素ガスが第2不活性ガス供給ライン14流れたと判定(Yes)されると、ステップS21にて、制御装置41は、第2開閉装置32を閉止し、放射性物質収納容器100への窒素ガスの供給を停止する。
放射性物質収納容器100へ窒素ガスを供給するとき、ドライ真空ポンプ12が作動していることから、放射性物質収納容器100の内部にある空気、水蒸気、ヘリウムガス、窒素ガスなどが排気ライン11から外部に排出される。そして、放射性物質収納容器100への窒素ガスの供給が停止されると、放射性物質収納容器100の内部圧力が低下していく。この場合、分子量が小さいヘリウムガスは、分子間力が小さい性質であることから、ドライ真空ポンプ12では十分な排気速度を得ることが難しく、放射性物質収納容器100からヘリウムガスを排出しにくい。一方で、分子量の大きい窒素ガスは、分子間力が大きい性質であることから、ドライ真空ポンプ12での十分な排気速度を得ることが容易である。そのため、放射性物質収納容器100の内部のヘリウムガスに窒素ガスを混合させることで、排出しやすい窒素ガスをキャリアガスとして用い、窒素ガスにより排出しにくいヘリウムガスを一緒に排出することができる。
また、窒素ガスは、ドレンライン104から放射性物質収納容器100の下部に供給される。そのため、ドライ真空ポンプ12の作動により放射性物質収納容器100の下部に窒素ガスが放射性物質収納容器100の上部にあるベントライン103から外部に排出されるとき、放射性物質収納容器100の上部のヘリウムガスを窒素ガスの排出に伴って外部に排出することができる。
ステップS18に戻り、制御装置41は、圧力計42が計測した放射性物質収納容器100の内部圧力が所定圧力まで低下したかどうかを判定する。ここで、放射性物質収納容器100の内部圧力が所定圧力まで低下していないと判定(No)されると、前述したように、ステップS19からステップS21の処理を繰り返す。一方、放射性物質収納容器100の内部圧力が所定圧力まで低下したと判定(Yes)されると、ステップS22にて、ドライ真空ポンプ12の作動を停止する。そして、ステップS23にて、第1開閉装置27を開放制御し、放射性物質収納容器100の内部に所定量のヘリウムガスを供給する。ここで、放射性物質収納容器100の乾燥作業が終了する。
なお、所定圧力は、例えば、700Paであり、放射性物質収納容器100の内部のガス組成における水分量が10重量%以下となる圧力である。日本原子力学会標準では、燃料被覆管の酸化および水素吸着量の計算例として、金属キャスク内のガス組成における水分量を10%(質量)に制限すれば、キャスクの設計に基づいて、燃料被覆管の酸化および水素吸着量がわずかとなり、燃料に影響を与えるものではなくなる、と記載されている。
放射性物質収納容器100の内部にヘリウムガスを供給してからの放射性物質収納容器100の内部圧力の変化について説明する。図1および図3に示すように、ドライ真空ポンプ12の作動により放射性物質収納容器100の内部が所定圧力まで減圧されると、時間t1にて、ドライ真空ポンプ12を停止(OFF)する。ここで、第1開閉装置27を開放制御し、放射性物質収納容器100へのヘリウムガスの供給を開始し、時間t2にて、ヘリウムガスの供給を停止する。すると、放射性物質収納容器100の内部圧力が上昇する。時間t3にて、放射性物質収納容器100の内部圧力が圧力P0(ほぼ大気圧)に到達すると、ドライ真空ポンプ12を作動することで、放射性物質収納容器100の内部に残留するヘリウムガスや水蒸気などが外部に排気され、内部圧力が低下する。
しかし、前述したように、ヘリウムガスは、分子間力が小さい性質であることから、ドライ真空ポンプ12では放射性物質収納容器100から排出しにくいため、放射性物質収納容器100の内部圧力の低下が緩慢となり、放射性物質収納容器100からのガスの排気速度が低下する。時間t4では、放射性物質収納容器100の内部圧力の低下率が0に近くなり、ガスの排気速度も0に近くなる。そのため、この時間t4にて、第2開閉装置32を開放制御して放射性物質収納容器100に窒素ガスを供給する。窒素ガスの供給を開始する時期は、放射性物質収納容器100の内部圧力の低下率が予め設定された所定圧力変化率以下になる時期が好ましい。
但し、放射性物質収納容器100の内部圧力の低下率が所定圧力変化率以下になる時期は、放射性物質収納容器100の容積に応じて決まるものであることから、所定時間内に放射性物質収納容器100の内部圧力が所定圧力まで低下しないとき、窒素ガスの供給を開始するようにしてもよい。また、ドライ真空ポンプ12を作動してから所定時間が経過したら、窒素ガスの供給を開始するようにしてもよい。
時間t4にて、放射性物質収納容器100に窒素ガスを供給すると、ドライ真空ポンプ12が作動しているものの、一時的に放射性物質収納容器100の内部圧力が上昇する。そして、時間t5にて、放射性物質収納容器100への窒素ガスの供給が停止する。このとき、放射性物質収納容器100の内部圧力が圧力P0(ほぼ大気圧)に上昇するまで放射性物質収納容器100へ窒素ガスを供給することが好ましい。窒素ガスの供給が停止すると、放射性物質収納容器100の内部圧力が一気に低下する。このとき、放射性物質収納容器100の内部に残留するヘリウムガスは、キャリアガスとしての窒素ガスと共に外部に排出される。
また、放射性物質収納容器100からヘリウムガスと共にほとんどの窒素ガスが外部に排出されてしまうと、放射性物質収納容器100の内部圧力の低下が緩慢となり、放射性物質収納容器100からのガスの排気速度が低下する。時間t6では、放射性物質収納容器100の内部圧力の低下率が再び0に近くなり、ガスの排気速度も再び0に近くなる。そのため、この時間t6にて、再び第2開閉装置32を開放制御して放射性物質収納容器100に窒素ガスを供給する。この窒素ガスの供給を開始する時期は、前述と同様である。
時間t6にて、放射性物質収納容器100に再び窒素ガスを供給すると、ドライ真空ポンプ12が作動しているものの、一時的に放射性物質収納容器100の内部圧力が上昇する。そして、時間t7にて、放射性物質収納容器100への窒素ガスの供給が停止する。このとき、放射性物質収納容器100の内部圧力が圧力P0(ほぼ大気圧)に上昇するまで放射性物質収納容器100へ窒素ガスを供給することが好ましい。窒素ガスの供給が停止すると、放射性物質収納容器100の内部圧力が一気に低下する。このとき、放射性物質収納容器100の内部に残留するヘリウムガスは、キャリアガスとしての窒素ガスと共に外部に排出される。そして、時間t8にて、放射性物質収納容器100の内部圧力が所定圧力まで低下すると、ドライ真空ポンプ12の作動を停止する。そして、放射性物質収納容器100の内部が乾燥されているかどうかを確認する時間が経過した後、時間t9から時間t10までの間、第1開閉装置27を開放制御し、放射性物質収納容器100の内部に所定量のヘリウムガスを供給し、放射性物質収納容器100の乾燥作業が終了する。この所定圧力は、例えば、700Paであり、放射性物質収納容器100の内部のガス組成における水分量が10重量%以下となる圧力である。
[第2実施形態]
図4は、第2実施形態の放射性物質収納容器の乾燥装置を表す概略構成図である。なお、上述した第1実施形態と同様の機能を有する部材には、同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
第2実施形態において、図4に示すように、放射性物質収納容器の乾燥装置10Aは、排気ライン11と、ドライ真空ポンプ12と、第1不活性ガス供給ライン13と、第2不活性ガス供給ライン14とを備える。
排気ライン11は、一端部が放射性物質収納容器100における蓋部102のベントライン103に連結される。排気ライン11は、真空乾燥ユニット21が設けられる。真空乾燥ユニット21は、コールドトラップ22と、フィルタ23と、ドライ真空ポンプ12とを有する。排気ライン11は、他端部が排気処理系に連結される。
第1不活性ガス供給ライン13は、一端部が排気ライン11における真空乾燥ユニット21(コールドトラップ22)より放射性物質収納容器100側に連結される。第1不活性ガス供給ライン13と排気ライン11の連結部は、三方弁25が設けられる。第1不活性ガス供給ライン13は、他端部に第1不活性ガス供給源26が連結される。第1不活性ガスは、例えば、ヘリウムガスであって、第1不活性ガス供給源26は、ヘリウムガスを貯留する。第1不活性ガス供給ライン13は、第1開閉装置27が設けられる。
第2不活性ガス供給ライン14は、一端部が第1不活性ガス供給ライン13における圧力計42より放射性物質収納容器100側に連結される。第2不活性ガス供給ライン14と排気ライン11の連結部は、三方弁51が設けられる。なお、第2不活性ガス供給ライン14と排気ライン11の連結部に三方弁51を設けずに、常時連通状態としてもよい。第2不活性ガス供給ライン14は、他端部に第2不活性ガス供給源31が連結される。第2不活性ガスは、例えば、窒素ガスであって、第2不活性ガス供給源31は、窒素ガスを貯留する。第2不活性ガス供給ライン14は、第2開閉装置32が設けられる。
そのため、放射性物質収納容器100の内部が排水されると、ドライ真空ポンプ12の作動により所定圧力まで減圧し、ドライ真空ポンプ12の作動を停止する。そして、第1開閉装置27を開放制御し、ヘリウムガスを第1不活性ガス供給ライン13および排気ライン11を通してベントライン103から放射性物質収納容器100に供給する。放射性物質収納容器100に所定量のヘリウムガスが充填されると、第1開閉装置27を閉止制御し、ヘリウムガスの供給を停止する。
ドライ真空ポンプ12を作動すると、排気圧が排気ライン11を通して放射性物質収納容器100の内部における上部に作用する。すると、放射性物質収納容器100の内部のガスが排気ライン11を通して排気される。このとき、第2開閉装置32を開放制御し、第2不活性ガス供給源31の窒素ガスが第2不活性ガス供給ライン14を通して排気ライン11に供給する。
ここで、ドライ真空ポンプ12が作動しており、排気圧が排気ライン11および放射性物質収納容器100の内部に作用する。そのため、本発明のドライ真空ポンプ12の吸込圧が作用する所定領域は、排気ライン11および放射性物質収納容器100の内部である。第2実施形態では、第2不活性ガス供給ライン14が排気ライン11に連結されていることから、所定領域は、排気ライン11である。
ドライ真空ポンプ12が作動している状態で、第2不活性ガス供給ライン14へ窒素ガスを供給するため、第2不活性ガス供給ライン14の窒素ガスが排気ライン11へ流れ、窒素ガスが排気ライン11へ流れる吸引力が放射性物質収納容器100の内部に作用する。そのため、排気ライン11にて、排出しやすい窒素ガスをキャリアガスとして用い、窒素ガスにより排出しにくいヘリウムガスを一緒に排出することが可能となる。
[本実施形態の作用効果]
第1の態様に係る放射性物質収納容器の乾燥装置は、放射性物質収納容器100の内部のガスを排出する排気ライン11と、排気ライン11に設けられるドライ真空ポンプ12と、放射性物質収納容器100の内部に第1不活性ガスを供給する第1不活性ガス供給ライン13と、ドライ真空ポンプ12の吸込圧が作用する所定領域に第1不活性ガスより分子量の大きい第2不活性ガスを供給する第2不活性ガス供給ライン14とを備える。
第1の態様に係る放射性物質収納容器の乾燥装置は、放射性物質収納容器100の内部に第1不活性ガスと第2不活性ガスが供給された状態で、ドライ真空ポンプ12を作動して所定領域に排気圧を作用させる。これにより、排出しやすい第2不活性ガスをキャリアガスとして用い、排出しにくい第1不活性ガスを第2不活性ガスと一緒に排出することが可能となる。その結果、乾燥作業の作業性の向上を図ることができる。
第2の態様に係る放射性物質収納容器の乾燥装置は、所定領域は、放射性物質収納容器100の内部である。これにより、放射性物質収納容器100の内部に排気圧を作用させることとなり、放射性物質収納容器100の内部の第2不活性ガスをキャリアガスとして第1不活性ガスを適正に排出することができる。
第3の態様に係る放射性物質収納容器の乾燥装置は、所定領域は、放射性物質収納容器100の内部における下部である。これにより、放射性物質収納容器100の内部に排気圧を作用させることとなり、放射性物質収納容器100の内部の下部に供給した第2不活性ガスにより第1不活性ガスが押し上げられ、放射性物質収納容器100の内部の下部にある第2不活性ガスをキャリアガスとして上部に押し上げられた第1不活性ガスを適正に排出することができる。
第4の態様に係る放射性物質収納容器の乾燥装置は、所定領域は、排気ライン11である。これにより、排気ライン11に排気圧を作用させることとなり、排気ライン11の第2不活性ガスをキャリアガスとして第1不活性ガスを適正に排出することができる。また、第2不活性ガス供給ライン14を排気ライン11に連結すればよく、構造の簡素化を図ることができる。
第5の態様に係る放射性物質収納容器の乾燥装置は、第2不活性ガス供給ライン14から所定領域への第2不活性ガスの供給を制御する制御装置41を有する。それにより、所定領域に適正量の第2不活性ガスを容易に供給することができる。
第6の態様に係る放射性物質収納容器の乾燥装置は、所定領域の圧力を計測する圧力計42を有し、制御装置41は、圧力計42の計測結果に基づいて第2不活性ガス供給ライン14から所定領域への第2不活性ガスの供給時期を設定する。これにより、適正時期に所定領域への第2不活性ガスの供給を開始することとなり、最適な時期に所定領域へ第2不活性ガスを供給することができる。
第7の態様に係る放射性物質収納容器の乾燥装置は、制御装置41は、所定領域の圧力が予め設定された所定圧力に到達しないときに、第2不活性ガス供給ライン14から所定領域への第2不活性ガスの供給を開始する。これにより、放射性物質収納容器100の内部のガスの排気が困難になると、所定領域の圧力が所定圧力に到達しないため、このときに第2不活性ガスを供給することで、放射性物質収納容器100の内部のガスの排気を促進することができる。
第8の態様に係る放射性物質収納容器の乾燥装置は、制御装置41は、所定領域の圧力低下率が予め設定された所定圧力変化率以下になると、第2不活性ガス供給ライン14から所定領域への第2不活性ガスの供給を開始する。これにより、所定領域のガスの排気が困難になると、放射性物質収納容器100の内部の圧力の圧力低下率が低下するため、このときに第2不活性ガスを供給することで、放射性物質収納容器100の内部のガスの排気を促進することができる。
第9の態様に係る放射性物質収納容器の乾燥装置は、制御装置41は、所定領域の圧力が少なくとも大気圧になるまで所定領域へ第2不活性ガスを供給する。これにより、放射性物質収納容器100の内部のガスの排気を促進することができる。
第10の態様に係る放射性物質収納容器の乾燥装置は、第1不活性ガスは、ヘリウムガスであり、第2不活性ガスは、窒素ガスである。これにより、高価なガスを使用することなく、放射性物質収納容器100の内部の冷却と乾燥を適正に行うことができる。
第11の態様に係る放射性物質収納容器の乾燥装置は、放射性物質収納容器100の内部のガス組成における水分量を10重量%以下とする。これにより、放射性物質収納容器100の内部に収容された放射性物質の健全性を維持することができる。
第12の態様に係る放射性物質収納容器の乾燥方法は、放射性物質収納容器100の内部に第1不活性ガスを所定量供給する工程と、ドライ真空ポンプにより放射性物質収納容器100の内部の第1不活性ガスを含むガスを排気する工程と、ドライ真空ポンプ12の吸込圧が作用する所定領域の圧力または圧力相関値が予め設定された所定範囲にあるときに放射性物質収納容器100の内部に第1不活性ガスより分子量の大きい第2不活性ガスを所定量供給する工程と、放射性物質収納容器100の内部の第1不活性ガスおよび第2不活性ガスを含むガスを排気する工程とを有する。これにより、排出しやすい第2不活性ガスをキャリアガスとして用い、排出しにくい第1不活性ガスを第2不活性ガスと一緒に排出することが可能となる。その結果、乾燥作業の作業性の向上を図ることができる。