JP2006117710A - ポリイミドシリコーン系樹脂組成物 - Google Patents

ポリイミドシリコーン系樹脂組成物 Download PDF

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Nobuhiro Ichiroku
信広 市六
Koji Futatsumori
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Abstract

【課題】 周辺基材、特にACFに対する影響が小さく、その機械的・電気的特性低下の原因とならず、高温高湿・電圧印加という厳しい条件下においても電極表面に腐食を生成させることがない電極保護用途に適したポリイミドシリコーン系樹脂組成物および該組成物からなる電極保護材を提供する。
【解決手段】 (a)ポリアミック酸およびポリイミドシリコーンから成る群より選ばれるポリマー、
(b)沸点が80〜180℃で、SP値が7〜9の溶媒、
(c)反応性シリル基含有ビスイミド化合物、ならびに
(d)無機イオン交換体 (a)成分100質量部に対して0.5〜10質量部
を含有してなるポリイミドシリコーン系樹脂組成物。
【選択図】 なし

Description

本発明は、電子部品の電極保護用途に適したポリイミドシリコーン系樹脂組成物に関する。
従来から、電子部品等の絶縁保護膜用樹脂として、耐熱性および電気的・機械的特性に優れたポリイミド樹脂が利用されている。保護膜形成に際し、一般にポリイミド樹脂は有機溶媒に不溶であるために、その前駆体であるポリアミック酸の溶液を用い、これを基材に塗布した後、加熱して脱水縮合反応により閉環させて目的とするポリイミド樹脂被膜を形成する方法が採用されている。
しかし、このポリアミック酸の溶液を用いる方法においては、ポリアミック酸溶液の粘度が非常に高いため作業性に劣ること、脱水縮合工程において 300℃を超える高温とする必要があること、得られたポリイミド樹脂被膜はニッケル、アルミニウム、シリコン、シリコン酸化膜等の基材に対する接着性に劣ること等の問題があった。
こうした従来のポリイミドの問題点を改善するため、ポリイミドの原料であるジアミン成分の一部をシロキサン構造を含有するジアミンで置き換えて得られたポリイミドシリコーンを用いる方法(特許文献1、特許文献2参照)が知られている。ポリイミドシリコーンは、電子部品用の表面保護膜の形成材料や電子部品およびその他の耐熱部品の層間絶縁材料として、電子・電気工業において広く使用されている。ポリイミドシリコーンはコーティングまたはパターニングにより基材の表面を被覆するのに使われ、ポリイミド構造に由来する高耐熱性とシリコーン構造に由来する低弾性率とを兼ね備えた電子部品用材料である。しかし、ポリイミドシリコーンはポリマーであるので、良好な塗布性能を得るためにはポリイミドシリコーン系樹脂組成物は溶媒を含有していなければならない。
このような溶媒は、ポリイミドシリコーン系樹脂組成物の塗布された周辺に存在する有機物に影響を与えることがある。特に、硬化率の低い異方性導電膜(ACF)にポリイミドシリコーン系樹脂組成物を塗布した場合、このような溶媒は、被着体とACFとの界面の接着力を低下させ、高温高湿度下ではACFの機械的・電気的特性の劣化を生じさせることが明らかとなった。
特公昭43−27439号公報 特公昭59−7213号公報
そこで、本発明の課題は、周辺基材、特にACFに対する影響が小さく、その機械的・電気的特性低下の原因とならず、高温高湿・電圧印加という厳しい条件下においても電極表面に腐食を生成させることがない電極保護用途に適したポリイミドシリコーン系樹脂組成物および該組成物からなる電極保護材を提供することである。
本発明者らは、反応性シリル基含有ビスイミド化合物と、ポリイミドシリコーン系樹脂と、無機イオン交換体と、沸点が80〜180℃で、SP値が7〜9の溶媒とを組み合わせることにより、周辺基材、特にACFの機械的・電気的特性を損なうことがなく、電極表面に腐食を生成させることがないポリイミドシリコーン系樹脂組成物を得ることができることを見出した。本発明者らは、該知見に基づいて鋭意検討した結果、本発明を完成させるに至った。
即ち、本発明は、
(a)芳香族テトラカルボン酸化合物および脂環式テトラカルボン酸化合物から成る群より選ばれるテトラカルボン酸化合物と芳香族ジアミンとジアミノシロキサンとの反応生成物であるポリアミック酸、および、該ポリアミック酸の閉環誘導体であるポリイミドシリコーンから成る群より選ばれるポリマー、
(b)沸点が80〜180℃で、SP値が7〜9の溶媒、
(c)下記構造式(1):
Figure 2006117710
(1)
(式中、R1は2価の有機基であり、R2およびR3は独立に非置換または置換の炭素原子数1〜10の1価炭化水素基であり、nは独立に1〜3の整数である)
で示される反応性シリル基含有ビスイミド化合物、ならびに
(d)Naイオン換算で0.1meq/g以上のカチオン交換能力、および/またはClイオン換算で0.1meq/g以上のアニオン交換能力を有する無機イオン交換体 (a)成分100質量部に対して0.5〜10質量部
を含有してなるポリイミドシリコーン系樹脂組成物を提供する。
本発明のポリイミドシリコーン系樹脂組成物は、適切なSP値の溶媒を用いることにより、ACFの機械的・電気的特性に与える影響が小さく、また、反応性シリル基含有ビスイミド化合物と無機イオン交換体が配合されていることにより、形成される被膜の、基材に対する接着強度が良好であり、高温高湿・電圧印加という厳しい条件下での耐久試験においても電極表面に腐食を生成させることがないので、電極保護用途に適している。
以下、本発明について詳述する。
[(a)ポリマー]
[テトラカルボン酸化合物]
本発明で使用される芳香族テトラカルボン酸化合物および脂環式テトラカルボン酸化合物から成る群より選ばれるテトラカルボン酸化合物には、テトラカルボン酸、およびその一無水物、二無水物、モノエステル、ジエステル等の誘導体が含まれる(以下、「テトラカルボン酸成分」という)。
このテトラカルボン酸成分の好ましい具体例としては、ピロメリット酸二無水物、3,3',4,4'-ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、3,3',4,4'-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,3,3',4'-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3',4,4'-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、1,3-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)-1,1,3,3,-テトラメチルジシロキサン二無水物、3,3',4,4'-ジフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、3,3',4,4'-ジフェニルメタンテトラカルボン酸二無水物、1,1-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、3,3',4,4'-(2,2-ジフェニルプロパン)テトラカルボン酸二無水物、3,3',4,4'-(2,2-ジフェニルヘキサフルオロプロパン)テトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7-ナフタリンテトラカルボン酸二無水物、1,4-ビス(3,4-ジカルボキシフェノキシ)ベンゼン二無水物、ビス[4-(3,4-ジカルボキシフェノキシ)フェニル]メタン二無水物、1,1-ビス[4-(3,4-ジカルボキシフェノキシ)フェニル]エタン二無水物、2,2-ビス[4-(3,4-ジカルボキシフェノキシ)フェニル]プロパン二無水物、2,2-ビス[4-(3,4-ジカルボキシフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン二無水物、シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、ビシクロ[2.2.2]オクト-7-エン-2,3,5,6-テトラカルボン酸二無水物等;および、これらのテトラカルボン酸二無水物に対応するテトラカルボン酸、そのエステル、ジエステル等の反応性誘導体が挙げられる。これらは1種単独でも2種以上を組み合わせても使用することができる。
[芳香族ジアミン]
本発明で使用される芳香族ジアミンの好ましい具体例としては、4,4'-ジアミノジフェニルメタン、o-,m-,p-フェニレンジアミン、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]スルフォン、2,4-ジアミノトルエン、2,5-ジアミノトルエン、2,4-ジアミノキシレン、3,6-ジアミノジュレン、2,2'-ジメチル-4,4'-ジアミノビフェニル、2,2'-ジエチル-4,4'-ジアミノビフェニル、2,2'-ジメトキシ-4,4'-ジアミノビフェニル、2,2'-ジエトキシ-4,4'-ジアミノビフェニル、4,4'-ジアミノジフェニルエーテル、3,4'-ジアミノジフェニルエーテル、4,4'-ジアミノジフェニルスルフォン、3,3'-ジアミノジフェニルスルフォン、4,4'-ジアミノベンゾフェノン、3,3'-ジアミノベンゾフェノン、1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4'-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]スルフォン、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2-ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス[4-(4-アミノ-2-トリフルオロメチルフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス[4-(3-アミノ-5-トリフルオロメチルフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス(4-アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス(3-アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス(3-アミノ-4-メチルフェニル)ヘキサフルオロプロパン、4,4'-ビス(4-アミノフェノキシ)オクタフルオロビフェニル、2,2'-ビス(トリフルオロメチル)-4,4'-ジアミノビフェニル、3,5-ジアミノベンゾトリフルオリド、2,5-ジアミノベンゾトリフルオリド、3,3'-ビス(トリフルオロメチル)-4,4'-ジアミノビフェニル、3,3'-ビス(トリフルオロメチル)-5,5'-ジアミノビフェニル、1,4-ビス(4-アミノテトラフルオロフェノキシ)テトラフルオロベンゼン、4,4'-ビス(4-アミノテトラフルオロフェノキシ)オクタフルオロビフェニル、4,4'-ジアミノビナフチル、4,4'-ジアミノベンズアニリド等が挙げられる。これらは1種単独でも2種以上を組み合わせても使用することができる。
[ジアミノシロキサン]
本発明で使用されるジアミノシロキサンの好ましい具体例としては、1,3-ビス(3-アミノプロピル)-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン、1,3-ビス(4-アミノブチル)-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン、ビス(4-アミノフェノキシ)ジメチルシラン、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン等、および下記一般式(2):
2N-Z-[Si(R)2O]-Si(R)2-Z-NH2 (2)
(式中、Rは、独立に、非置換もしくは置換の炭素原子数1〜10、好ましくは、脂肪族不飽和基を除く炭素原子数1〜8の1価炭化水素基、または炭素原子数1〜8のアルコキシ基、アルケノキシ基もしくはシクロアルコキシ基であり、Zは独立に、非置換もしくは置換の炭素原子数1〜8の、鎖中にエーテル結合を含んでもよい2価炭化水素基であり、mは1〜100、好ましくは3〜60の整数である。)
で表される化合物が挙げられる。これらは1種単独でも2種以上を組み合わせても使用することができる。
上記一般式(2)中、Rが1価炭化水素基である場合、Rとしては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基等のアルキル基;ビニル基、アリル基、プロペニル基、イソプロペニル基、ブテニル基、イソブテニル基、ヘキセニル基等のアルケニル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基;シクロヘキセニル基等のシクロアルケニル基;フェニル基、トリル基、キシリル基等のアリール基;ベンジル基、エチルフェニル基、プロピルフェニル基等のアラルキル基;および、これらの炭化水素基の水素原子の少なくとも1つが、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子、シアノ基等で置換された、例えば、クロロメチル基、3-フルオロプロピル基、3,3,3-トリフルオロプロピル基、4-フルオロフェニル基、2-シアノエチル基等が挙げられる。
また、Rがアルコキシ基、アルケノキシ基もしくはシクロアルキルオキシ基である場合、Rとしては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基、tert-ブトキシ基、ヘキシルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、オクトキシ基、ビニロキシ基、アリロキシ基、プロペニノキシ基、イソプロペニノキシ基等が挙げられる。
上記一般式(2)中、Zで表わされる鎖中にエーテル結合を含んでもよい2価炭化水素基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基(トリメチレン基)、メチルエチレン基(但し、上記一般式(2)に含まれる2個の該基に対して、アミノ基は、2-アミノ-1-メチルエチル基を形成するように結合するか、或いは、上記2個の該基に対して、アミノ基は、2-アミノプロピル基を形成するように結合する)、テトラメチレン基、2-メチルプロピレン基、1-メチルプロピレン基(但し、上記一般式(2)に含まれる2個の該基に対して、アミノ基は、3-アミノ-1-メチルプロピル基を形成するように結合するか、或いは、上記2個の該基に対して、アミノ基は、3-アミノブチル基を形成するように結合する)、エチルエチレン基(但し、上記一般式(2)に含まれる2個の該基に対して、アミノ基は、1-(アミノメチル)プロピル基を形成するように結合するか、或いは、上記2個の該基に対して、アミノ基は、2-アミノブチル基を形成するように結合する)、ヘキサメチレン基、オクタメチレン基等のアルキレン基;o-,m-,p-フェニレン基、トリレン基等のアリーレン基;下式で示されるエーテル結合を含んでもよいアルキレン・アリーレン基等が挙げられる。
Figure 2006117710
Figure 2006117710
Figure 2006117710

(但し、アミノ基は、上記3つの式中のベンゼン環に結合する)
上記一般式(2)で表わされるジアミノシロキサンの具体例としては、下記の化合物が挙げられるが、これに限定されるものではない。
Figure 2006117710
Figure 2006117710
Figure 2006117710
Figure 2006117710
Figure 2006117710

(mは、3〜60の整数)
Figure 2006117710

(mは、3〜60の整数)
Figure 2006117710
Figure 2006117710
Figure 2006117710
Figure 2006117710
ジアミノシロキサンの使用量は、ポリアミック酸またはその閉環誘導体であるポリイミドシリコーン中における前記ジアミノシロキサンに基づく構造(即ち、テトラカルボン酸化合物とジアミノシロキサンとの反応によって生成するポリアミック酸またはそれを閉環したポリイミド単位)が、ポリアミック酸またはポリイミドシリコーンを構成する全繰り返し単位中の1〜60モル%となる量が好ましく、より好ましくは 10〜50モル%となる量である。ジアミノシロキサンに基づく構造が1モル%未満では可撓性の付与効果に乏しく、60モル%を越えると透湿性が上昇して、耐熱性の低下が認められるため好ましくない。このためには、上記芳香族ジアミンと該ジアミノシロキサンとの合計モル数に対して、好ましくは 1〜60モル%、より好ましくは 10〜50モル%のジアミノシロキサンを使用すればよい。
[(b)溶媒]
(b)成分は、沸点が80〜180℃、好ましくは100〜150℃で、SP値が7〜9、好ましくは7.2〜8.8、より好ましくは7.5〜8.5の溶媒であり、ポリイミドシリコーンを溶解するのに用いられる。沸点が80℃未満の溶媒を用いた場合、該溶媒の室温での揮発性は高いので、作製したポリイミド膜が不完全であり、厚みの均一性がとれない。逆に、沸点が180℃を超える溶媒を用いた場合、室温で溶媒が揮発しないので、膜が硬化せず、作業性が非常に悪い。SP値が7未満の溶媒は、ACFを溶解しないが、ポリイミドシリコーンそのものも溶解しないので、ポリイミドシリコーンを溶解するための溶媒としての機能を果たさない。SP値が9より大きい溶媒は、ポリイミドを溶解するが、ACFも溶解してしまう。
(b)成分の好ましい具体例としては、シクロヘキサン、n-ノナン、n-デカン等の炭化水素系溶媒;トルエン、キシレン、エチルベンゼン、n-プロピルベンゼン、イソプロピルベンゼン、スチレン等の芳香族類;パーフルオロベンゼン、パーフルオロトルエン等のパーフルオロ化合物類;四塩化炭素、エチルクロライド、1,1,1-トリクロロエタン、イソブチルクロライド、t-ブチルクロライド、ビニルクロライド、ブロモエチル等のハロゲン化合物類;メチラール、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル等のエーテル類;ジエチルケトン、ジブチルケトン、メチル-n-プロピルケトン、メチルイソブチルケトン、メチル-n−ブチルケトン、メチルイソアミルケトン、メチルヘキシルケトン、ジイソプロピルケトン、ジイソブチルケトン等のケトン類;酢酸-n-プロピル、酢酸イソプロピル、プロピオン酸メチル、ギ酸アミル、プロピオン酸ブチル等のエステル類;ジメチルスルフィド、ジエチルスルフィド等のスルフィド系化合物;酢酸ビニル、メチルアクリレート、エチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート等のビニルモノマー、アクリルモノマー、メタクリルモノマーが挙げられ、メチルイソブチルケトン、ジイソプロピルケトン、ジイソブチルケトンが特に好ましい。これらは1種単独でも2種以上を組み合わせても使用することができる。
(b)成分の使用量は、特に制限されず、ポリイミドシリコーン系樹脂組成物の安定性に影響を及ぼさない範囲の量であればよいが、(a)成分100質量部に対して、好ましくは、50〜1900質量部、より好ましくは 100〜900量部程度である。また、別のファクターとしては、塗布作業性、乾燥性、信頼性を確保するために、本組成物の固形分が10質量%以上(通常、10〜75質量%)、特に15〜70質量%となる範囲が好ましく、さらに20〜60質量%の範囲となることがより好ましい。
[(c)反応性シリル基含有ビスイミド化合物]
本発明で使用される反応性シリル基含有ビスイミド化合物は、下記一般式(1):
Figure 2006117710
(1)
(式中、R1は2価の有機基であり、R2およびR3は独立に非置換または置換の炭素原子数1〜10、好ましくは1〜6、より好ましくは1〜3の1価炭化水素基であり、nは1〜3の整数である。)
で表される化合物であり、下記構造式(3):
Figure 2006117710
(3)
で表されるアリル基含有酸無水物と、下記構造式(4):
2N−R1−NH2 (4)
(式中、R1は上記のとおりである)
で表される2官能性ジアミン化合物とを反応させて、
下記構造式(5):
Figure 2006117710
(5)
で示されるアリル基含有ビスイミド化合物を得て、次いで、下記一般式(6):
Figure 2006117710
(6)
(式中、R2、R3およびnは上記のとおりである)
で表される、ケイ素原子に結合した水素原子を1個有する有機シラン化合物とヒドロシリル化反応により付加させることにより得ることができる。
上記反応性シリル基含有ビスイミド化合物の原料、製法等について、更に詳細に説明する。
<アリル基含有酸無水物>
下記構造式(3):
Figure 2006117710
(3)
で表されるアリル基含有酸無水物において、アリル基は、上記式(3)中のシクロペンテン環骨格の炭素原子に結合した水素原子のいずれと置換されていてもよい。また、該アリル基含有酸無水物は、1種単独でも、前記アリル基の置換位置が異なる2種以上の異性体の組み合わせであっても差し支えない。
<2官能性ジアミン化合物>
下記構造式(4):
2N−R1−NH2 (4)
(式中、R1は2価の有機基である)
で表される2官能性ジアミン化合物において、上記有機基は1種単独でも2種以上の組み合わせでもよい。
1は、好ましくは、芳香環または直鎖状オルガノポリシロキサン構造を有する2価の有機基である。該有機基の具体例を、以下に示すが、これに限定されるものではない。
Figure 2006117710

(式中、pは0〜200の整数である)
Figure 2006117710
Figure 2006117710
Figure 2006117710
Figure 2006117710
また、他のジアミン化合物としては、p-フェニレンジアミン、4,4'-ジアミノジフェニルエ−テル、2,2'-ビス(4-アミノフェニル)プロパン、4,4'-ジアミノジフェニルスルホン、4,4'-ジアミノジフェニルスルフィド、1,4-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4-ビス(p-アミノフェニルスルホニル)ベンゼン、1,4-ビス(m-アミノフェニルスルホニル)ベンゼン、1,4-ビス(p-アミノフェニルチオ)ベンゼン、1,4-ビス(m-アミノフェニルチオ)ベンゼン、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2-ビス[3-メチル-4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2-ビス[3-クロロ-4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、1,1-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]エタン、1,1-ビス[3-メチル-4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]エタン、1,1-ビス[3-クロロ-4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]エタン、1,1-ビス[3,5-ジメチル-4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]エタン、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]メタン、ビス[3-メチル-4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]メタン、ビス[3-クロロ-4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]メタン、ビス[3,5-ジメチル-4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]メタン、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]パ−フルオロプロパン等の芳香環含有ジアミンが挙げられる。これらは1種単独でも2種以上を組み合わせても使用することができる。
また、下記構造式(7)で示されるジアミン化合物も挙げられる。
Figure 2006117710
(7)
ここで、上記式中、R4は、上記構造式(4)中のR1について例示した2価の有機基から選ばれる1種または2種以上の2価の基、或いは、上記「他のジアミン化合物」として例示した芳香環含有ジアミンからアミノ基を除いた芳香環含有有機基から選ばれる1種または2種以上の2価の基であり、qは0〜100の整数であり、Xは芳香族テトラカルボン酸二無水物に由来する芳香環を含む4価の有機基である。なお、前記Xは1種単独でも2種以上の組み合わせでもよい。
前記Xの具体例を、以下に示すが、これに限定されるものではない。
Figure 2006117710

更に、下記に示されるケイ素含有ジアミン類(例えば、ジアミノシロキサン、ジアミノシルエチレン、ジアミノシルフェニレン等)も使用することができる。
Figure 2006117710

なお、これらは1種単独でも2種以上を組み合わせても使用することができる。
上記の中でも、本発明において好適に使用される2官能性ジアミン化合物は、4,4'-ジアミノジフェニルメタンおよび下記ジアミンの1種または2種以上の組み合わせである。
Figure 2006117710
Figure 2006117710
Figure 2006117710
<アリル基含有ビスイミド化合物の調製>
テトラカルボン酸とジアミン化合物からポリアミック酸を調製し、次いで閉環させてポリイミドを得る周知の合成方法と同様にして、上記アリル基含有酸無水物と上記2官能性ジアミン化合物とを有機溶媒中で反応させて、下記構造式:
Figure 2006117710

(式中、R1は上記と同じである)
で表される中間体を得て、引き続き、この中間体を加熱条件下で脱水縮合して閉環させることにより、下記構造式(5):
Figure 2006117710
(5)
で示されるアリル基含有ビスイミド化合物を得ることができる。
<反応性シリル基含有ビスイミド化合物の調製>
上記アリル基含有ビスイミド化合物と、下記一般式(6):
Figure 2006117710
(6)
(式中、R2、R3およびnは上記のとおりである)
で表されるケイ素原子に結合した水素原子を1個有する有機シラン化合物とを、常法により、トルエン、メチルイソブチルケトン、テトラヒドロフラン等の溶媒中において、白金系触媒の存在下に反応させることにより、(アリル基中の)ビニル基(-CH2=CH-)とケイ素原子に結合した水素原子(即ち、SiH基)とがヒドロシリル化反応により付加し、下記一般式(1):
Figure 2006117710
(1)
(式中、R1、R2、R3およびnは上記のとおりである)
で表される、本発明の(c)成分である反応性シリル基含有ビスイミド化合物を得ることができる。
上記一般式(6)で表される有機シラン化合物中の、上記R2およびR3としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等のアルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等のアリール基;ベンジル基、フェネチル基、フェニルプロピル基等のアラルキル基;クロロメチル、3-クロロプロピル基、3-フルオロクロロプロピル基、3,3,3-トリフルオロプロピル基等のハロゲン化アルキル基;ビニル基、アリル基、ブテニル基、プロペニル基、イソプロペニル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基等のアルケニル基等が挙げられ、これらの中でも、脂肪族不飽和結合を有しないものが好ましく、アルキル基がより好ましく、メチル基およびエチル基が特に好ましい。
該有機シラン化合物の具体例としては、例えば、下記化合物が挙げられるが、これに限定されるものではない。
Figure 2006117710

上記の中でも、好適に使用される有機シラン化合物は、トリメトキシシラン:HSi(OCH3)3 である。
なお、上記有機シラン化合物は、1種単独でも2種以上を組み合わせても使用することができる。
上記ヒドロシリル化反応自体は、当該技術分野において周知であり、白金系触媒の使用量、反応条件等についても、通常のとおりで差し支えない。
上記(c)成分の具体例としては、下記化合物が挙げられる。
Figure 2006117710
Figure 2006117710
Figure 2006117710
Figure 2006117710
Figure 2006117710
Figure 2006117710
Figure 2006117710
Figure 2006117710
Figure 2006117710
なお、上記ヒドロシリル化反応において、ケイ素原子に結合した水素原子(即ち、SiH基)は、専ら(アリル基中の)ビニル基(-CH2=CH-)に付加するが、アリル基含有ビスイミド化合物中のシクロペンテン環内の炭素-炭素二重結合(-CH=CH-)に対しても若干付加反応が生じる場合もある。本発明の(c)成分である反応性シリル基含有ビスイミド化合物に、前記環内炭素-炭素二重結合への付加反応生成物が含まれる場合であっても、本発明組成物は、そのまま絶縁保護膜形成剤等として使用することができるので何ら支障はない。
また、本発明の(c)成分は、1種単独でも2種以上を組み合わせても使用することができる。
本発明の(c)成分として、中でも、吸湿後の接着性、電極保護性能および室温硬化性(もしくは、低温硬化性)が良好である点から、好適に使用される化合物は以下のものである。
Figure 2006117710
Figure 2006117710
Figure 2006117710
Figure 2006117710
この(c)成分の使用量は、(a)成分100質量部に対して、好ましくは5〜200質量部、より好ましくは 10〜100質量部程度である。前記使用量がこの範囲内にあると、本発明組成物から得られる被膜は、脆くなることなく、基材に対する接着性を十分に有するので、硬い基材の電極保護材としてのみならず、フレキシブルな基材の電極保護材としても好適に使用することができる。
[(d)無機イオン交換体]
本発明で使用される無機イオン交換体としては、例えば、天然ゼオライト、合成ゼオライト等のアルミノケイ酸塩;酸化アルミニウム、酸化マグネシウム等の金属酸化物;含水酸化チタン、含水酸化ビスマス、含水酸化アンチモン等の水酸化物または含水酸化物;リン酸ジルコニウム、リン酸チタン等の酸性塩;ハイドロタルサイト類等の塩基性塩や複合含水酸化物;モリブドリン酸アンモニウム等のヘテロポリリン酸類;またはヘキサシアノ鉄(III)塩やヘキサシアノ亜鉛等が挙げられる。これらの中でも、耐薬品性が良好で、湿潤条件下での不純物イオントラップ効果が良好であることから、水酸化物または含水酸化物が好ましく、含水酸化チタン、含水酸化ビスマス、含水酸化アンチモン等がより好ましい。
(d)成分の無機イオン交換体は、通常、Naイオン換算で0.1meq/g以上のカチオン交換能力、および/またはClイオン換算で0.1meq/g以上のアニオン交換能力を有する。イオン交換能力が0.1meq/g未満であると大量の添加が必要となるため、本組成物を製膜して得られる膜の機械的強度、可撓性等が低下することから好ましくない。また、イオン交換能力の上限は特に限定されないが、実用上、通常は10meq/g以下でよい。上記各種の無機イオン交換体は1種単独でも2種以上を組み合わせても使用することができる。
この無機イオン交換体は粒状であり、平均粒径が10μm以下(通常、0.1〜10μm)であることが好ましく、さらに0.2〜5μmの範囲がより好ましい。このような平均粒径であると、均一な分散性や沈降防止等の点で有利である。
無機イオン交換体の使用量は、(a)成分のポリマー100質量部に対して、通常、0.5〜10質量部であり、好ましくは1〜10質量部である。前記使用量が少なすぎると不純物イオントラップ効果に乏しく、多すぎると本組成物を製膜して得られる膜の機械的物性が低下してしまう。
[組成物の調製等]
(a)成分のポリアミック酸あるいは該ポリアミック酸の閉環誘導体であるポリイミドシリコーンの合成は、ジアミン成分とテトラカルボン酸成分が実質的に当モル量となるように反応器に仕込み、溶媒中で加熱して反応させることにより行う。好ましくは、反応容器中でジアミン成分を溶媒に分散または溶解させ、テトラカルボン酸成分を溶媒に溶解または分散させて低温で滴下攪拌後に加熱する。
加熱反応温度条件としては、ポリアミック酸を得る場合には、5〜100℃、好ましくは 20〜80℃の範囲内の温度で、ジアミン成分とテトラカルボン酸成分の合計量 100gに対して、1〜24時間程度である。また、実質的に完全にイミド化したポリイミドシリコーンを得る場合は、120〜200℃、好ましくは 140〜180℃の範囲の温度で、ジアミン成分とテトラカルボン酸成分の合計量 100gに対して、1〜24時間程度加熱すればよい。120℃以下では転化速度が遅く、200℃以上であってもよいが特に利益はない。
なお、(b)成分の溶媒と、(c)成分の反応性シリル基含有ビスイミド化合物と、(d)成分の無機イオン交換体とは、上記加熱反応の終了後に、配合される。
好ましい実施態様としては、後記する実施例の具体例の他に、下記一般式(2):
2N-Z-[Si(R)2O]-Si(R)2-Z-NH2 (2)
(式中、Z、Rおよびmは、上記のとおりである。)
で表されるジアミノシロキサン 10〜15モル%およびビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]スルホン 85〜90モル%から成るジアミン成分と、ピロメリット酸二無水物 50〜80モル%およびベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物 20〜50モル%から成るテトラカルボン酸成分とを、実質的に当モル量で、樹脂固形分が30〜45質量%となる量のシクロヘキサノン、γ-ブチロラクトンまたはN-メチルピロリドン溶媒中で反応させ、実質的にイミド化が完結したポリイミドシリコーンを生成させること、そして、前記反応終了後に、(b)成分の溶媒と、(c)成分の反応性シリル基含有ビスイミド化合物と、(d)成分の無機イオン交換体とを配合することである。
[その他の成分]
本発明の組成物に、上記(a)〜(e)成分に加えて、本発明の組成物の特性を損なわない範囲において、更に他の成分を使用することは任意である。
本発明の(c)成分である反応性シリル基含有ビスイミド化合物は、両末端にアルコキシ基、アルケノキシ基等の縮合反応性の基を有していることから、(c)成分同士の縮合反応による硬化を促進させることを目的として、従来から公知の縮合反応触媒を配合することが望ましい。この縮合反応触媒としては、例えば、テトライソプロポキシチタン、テトラブトキシチタン、チタンビスアセチルアセトナ−ト、チタンキレ−ト化合物等のチタン含有有機化合物;テトラメチルグアニジン、テトラメチルグアニジルプロピルトリメトキシシラン等の強塩基類、;オクタン酸亜鉛、2−エチルヘキサン酸鉛、ジブチル錫ジアセテ−ト、ジブチル錫ジラクテ−ト、ジブチル錫ジオクテ−ト、オクタン酸第一錫、ナフテン酸亜鉛、オクタン酸第一鉄等のカルボン酸金属塩が挙げられる。これらは1種単独でも2種以上を組み合わせても使用することができる。この縮合反応触媒を使用する場合、その配合量は、触媒としての有効量であればよく、特に制限されないが、上記(c)成分 100質量部に対して、通常、0.01〜6.0質量部、好ましくは 0.05〜5.0質量部程度である。
[コーティング膜]
本発明のポリイミドシリコーン系樹脂組成物は、基材上にコーティングした後、脱溶媒するのみで製膜、架橋および硬化させることができる。脱溶媒の条件としては、コーティング膜厚により異なるが、空気中または窒素等の不活性雰囲気下で、オーブン、ホットプレート等を用いて、通常、20〜150℃で1〜150分間程度加熱して行う。前記温度条件については、処理時間の全体に亘って一定としてもよく、前記温度範囲内で徐々に昇温させながら行ってもよい。
こうして得られるポリイミドシリコーン系被膜の膜厚は、好ましくは5〜250μm、より好ましくは5〜200μmであり、更により好ましくは 10〜100μmである。
基材としては、特に限定されないが、例えば、ポリイミド、BTレジン等からなる有機基材;アルミニウム、銅、シリコンもしくはこれらの合金またはステンレス鋼等の金属;アルミナ、ガラス、ホウケイ酸ガラス、石英、ジルコニア、ムライト、窒化珪素等のセラミックス;チタン酸バリウム、ニオブ酸リチウム、ニオブ酸タンタル、ガリウム砒素、インジウム燐等の半導体材料等を挙げることができる。また、これらの基材の表面に、更に、ポリイミド、芳香族ポリアミド、ポリフェニレン、ポリキシリレン、ポリフェニレンオキサイド、ポリスルホン、ポリアミドイミド、ポリエステルイミド、ポリベンズイミダゾール、ポリキナゾリンジオン、ポリベンゾオキサジノン等の耐熱性高分子化合物を被覆した基材に対して本発明のポリイミドシリコーン系樹脂組成物をコーティングしてもよい。
[樹脂組成物の粘度]
本発明のポリイミドシリコーン系樹脂組成物の25℃における粘度は、ブルックフィールド粘度測定法によりDVIII粘度計(ブルックフィールド社製)にて、該当する粘度範囲のコーンを用いて測定した場合、好ましくは10〜2000mPa・sであり、特に好ましくは100〜1500mPa・sである。粘度が高すぎると狭ギャップ侵入性が低下し、粘度が低すぎると所要の膜厚さを得ることができず、電極の腐食、断線が生じやすくなる場合がある。
[用途]
本発明のポリイミドシリコーン系樹脂組成物の具体的な応用例としては、LCDや有機EL等のための電極保護材としての使用が最も好適に挙げられるが、これ以外にもシリコンウェハ、ガリウム砒素等からなる基材上のモノリシックIC、例えばDRAM、SRAM、CPU等;セラミック基材、ガラス基材等の上に形成されるハイブリッドIC、サーマルヘッド、イメージセンサー、マルチチップ高密度実装基板等のデバイス;TABテープ、フレキシブル基材、リジッド配線板等の各種配線板等の層間絶縁膜、表面保護膜、α線遮蔽を始め各種の目的を有する保護膜等への適用を挙げることができる。
以下に、合成例、実施例および比較例を示し、本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらに限られるものではない。
〔合成例1〕
熱電対、攪拌装置および還流コンデンサーを具えたガラス製4ツ口セパラブルフラスコに、ジアミン成分とテトラカルボン酸成分が当モル量となるように、3,3',4,4'-ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物(DSDA)19.45g(テトラカルボン酸成分とジアミン成分との各質量部の総計を 100モル%とした場合のモル%:25モル%(以下に記載の「モル%」も同様の意味を有する。))、3,3',4,4'-(2,2-ジフェニルヘキサフルオロプロパン)テトラカルボン酸二無水物(6FDA)24.11g(25モル%)、下記式(8):
H2N-CH2CH2CH2-[Si(CH3)2O]9-Si(CH3)2-CH2CH2CH2-NH2 (8)
で表されるジアミノポリシロキサン(KF-8010(商品名)、信越化学工業社製)36.55g(20モル%)、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン(BAPP)13.37g(15モル%)、および、4,4'-ジアミノジフェニルエーテル(ODA)6.52g(15モル%)を仕込み、300gのシクロヘキサノンを加え 180℃で4時間攪拌して、ポリイミドシリコーンおよび溶媒からなる組成物を得た。表1にジアミン成分およびテトラカルボン酸成分の組成および使用量(単位はgである。かっこ内にモル%を併記した。)を示す。
〔合成例2および3〕
表1に示すように、上記合成例1に記載のジアミン成分およびテトラカルボン酸成分の組成および使用量を変更したこと以外は、合成例1と同様にして、ポリイミドシリコーンおよび溶媒からなる組成物を得た。
Figure 2006117710
〔合成例4〕
(1)撹拌器、温度計および窒素置換装置を具備したフラスコ内に、1,3-ビス(3-アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン 24.85g(0.1モル)、溶媒としてN-メチル-2-ピロリドン 80gおよびシクロヘキサノン 100gを仕込み、攪拌しながら、無水アリルナジック酸(下記構造式:
Figure 2006117710

で表される化合物と、下記構造式:
Figure 2006117710

で表される化合物とを、合計で約80モル%含有する異性体混合物)(商品名:ANAH、丸善石油化学社製)40.8g(0.2モル)を徐々に滴下した。滴下終了後、更に室温で 10時間撹拌し、次に、前記フラスコに水分受容器付き還流冷却器を取り付けた後、キシレン 30gを加え、反応系を 160℃に昇温して、その温度を2時間保持した。更に、温度を 175℃まで昇温させて、その温度を4時間保持した。この反応によって生成した水分の量は 3.5gであった。
上記操作によって得られた赤褐色反応溶液を室温まで冷却後、減圧下でストリップして溶媒を除去した。
次いで、得られた反応生成物にメチルイソブチルケトン 600gを加えて溶解した後、水(600ml)を加えて攪拌して、水洗した。その後、水相を分離して、水相の導電率を測定した。該水洗操作を、水洗後の水相の導電率が 10μS/cm以下になるまで繰り返した。その後、メチルイソブチルケトン溶液から共沸脱水により水分を除去し、得られた反応溶液をメタノール中に投じて、固体生成物を析出させた後、溶媒を除去し、下記構造式を有するビスイミド化合物(BI-1)59gを得た。
Figure 2006117710
ビスイミド化合物(BI-1)の赤外吸収スペクトルを観測したところ、イミド結合に由来する吸収が 1768 cm-1に、また、ビニル基に由来する吸収が 1641 cm-1に、それぞれ観測された。また、NMRスペクトルから、ビニル基に由来するピ−クが 5.0 ppmに観測された。
(2)上記ビスイミド化合物(BI-1)59g(0.095モル)をメチルイソブチルケトン 600gに再度溶解し、昇温させて共沸脱水を行った。この溶液に塩化白金酸 0.2gを加え、還流温度でトリメトキシシラン 26g(0.22モル)を滴下した。還流温度で6時間撹拌を続けた後、得られた反応溶液から過剰のトリメトキシシランを常圧蒸留により除去することにより、反応生成物溶液 164.4g(不揮発分 50%)を得た。これから、溶媒を除去して下記構造式を有するメトキシシリル基含有ビスイミド化合物(BI-1MS)82.2gを得た。
Figure 2006117710
このメトキシシリル基含有ビスイミド化合物(BI-1MS)の赤外吸収スペクトル観測したところ、SiO結合に由来する吸収が 1086 cm-1に観測され、アリル基に由来する吸収( 1641 cm-1)が消失していることが観測された。また、NMRスペクトルからアリル基に由来するピーク( 5.0 ppm)が消失していることも観測された。
〔合成例5〕
(1)合成例4(1)に記載の1,3-ビス(3-アミノプロピル)テトラメチルジシロキサンに代えて、4,4'-ジアミノジフェニルメタン 19.83g(0.1モル)を用いること以外は、合成例4と同様にして、下記構造式を有するビスイミド化合物(BI-2)48.5gを得た。
Figure 2006117710
このビスイミド化合物(BI-2)の赤外線吸収スペクトルおよびNMRスペクトルを観測したところ、合成例4に記載の観測結果と同様であった。
(2)合成例4(2)に記載のビスイミド化合物(BI-1)59g(0.095モル)に代えて、上記ビスイミド化合物(BI-2)48.5g(0.085モル)を用いること、およびトリメトキシシランを 24.9g(0.20モル)用いること以外は、合成例4と同様にして、下記構造式を有するメトキシシリル基含有ビスイミド化合物(BI-2MS)69.2g(0.085モル)を得た。
Figure 2006117710
このメトキシシリル基含有ビスイミド化合物(BI-2MS)の赤外線吸収スペクトルおよびNMRスペクトルを観測したところ、合成例4に記載の観測結果と同様であった。
〔合成例6〕
(1)合成例4(1)に記載の1,3-ビス(3-アミノプロピル)テトラメチルジシロキサンに代えて、下記構造式で示されるジアミン化合物:
Figure 2006117710

31.0g(0.1モル)を用いること以外は、合成例4と同様にして、下記構造式を有するビスイミド化合物(BI-3)56.6gを得た。
Figure 2006117710
ビスイミド化合物(BI-3)の赤外線吸収スペクトルおよびNMRスペクトルを観測したところ、合成例4に記載の観測結果と同様であった。
(2)合成例4(2)に記載のビスイミド化合物(BI-1)59g(0.095モル)に代えて、上記ビスイミド化合物(BI-3)56.6g(0.083モル)を用いること、およびトリメトキシシランを 24g(0.2モル)用いること以外は、合成例4と同様にして、下記構造式を有するメトキシシリル基含有ビスイミド化合物(BI-3MS)76.8g(0.083モル)を得た。
Figure 2006117710
このメトキシシリル基含有ビスイミド化合物(BI-3MS)の赤外線吸収スペクトルおよびNMRスペクトルを観測したところ、合成例4に記載の観測結果と同様であった。
<実施例1〜7>
上記合成例1〜3で得られたポリイミドシリコーンおよび溶媒からなる組成物と、上記合成例4〜6で得られたメトキシシリル基含有ビスイミド化合物(BI-1MS〜BI-3MS)と、無機イオン交換体と、沸点が80〜180℃で、SP値が7〜9の溶媒と、縮合反応触媒としてのテトライソプロピルチタネート:Ti(O-iPr)4とを、表2に記載した組成および使用量(質量部)で混合し、その後十分に攪拌して、本発明のポリイミドシリコーン系樹脂組成物を調製した。
無機イオン交換体として、「IXE633」(商品名、東亜合成(株)製)(含水酸化アンチモン・含水酸化ビスマス混合物、[イオン交換能力]カチオン:1.1meq/g,アニオン:1.4meq/g)、「IXE600」(商品名、東亜合成(株)製)(含水酸化アンチモン・含水酸化ビスマス混合物、[イオン交換能力]カチオン:1.5meq/g,アニオン:2.0meq/g)、または「キョウワード2200」(商品名、共和化学工業(株)製)(酸化マグネシウム・酸化アルミニウム混合物、[イオン交換能力]アニオン:6.7meq/g)(以下、「KW2200」と略記する。)を用いた。
次いで、実施例1〜7の各ポリイミドシリコーン系樹脂組成物について、下記のとおりにして性能評価試験を行った。
[接着強度測定]
ガラス板上に、ポリイミドシリコーン系樹脂組成物を塗布し、23℃および相対湿度 60%の条件で 24時間放置して、溶媒を蒸発させて除去し、10mm×150mmおよび膜厚が平均 50μmのテープ形状のフィルムを作製した。その後、この試験体を85℃および相対湿度85%の高温高湿条件下で168時間吸湿させ以下の接着試験を実施した。
上記フィルムの長手方向の片端部を、ガラス板に対して平行かつ180度の角度の方向に、300mm/分の速度で引っ張って、ピール引き剥がし強度(g/cm)を測定した。測定結果を表2の「接着強度」の欄に表示した。
[定電圧印加ITO電極腐食試験]
15μmの線幅および 15μmの線間で、サイズが 10mm×5mmのITOくし形電極を作製した。この電極表面上に、ポリイミドシリコーン系樹脂組成物を塗布し、23℃および相対湿度 60%の条件で 24時間放置して、平均 50μmの厚さの被膜を形成して被覆した。
得られたITOくし形電極を用いて、温度85℃、相対湿度 85%、および 30Vの定電圧印加という条件下で導通試験を行った。ITO電極の腐食が発生するまでの時間(単位は時間)を顕微鏡観察により測定した。導通試験は最長で168時間行った。測定結果を表2の「電極腐食試験」の欄に表示した。表中、「>168」は、導通試験を168時間行っても腐食が発生しなかったことを表す。
[ACF溶解試験]
ACF(製品名:CP8830IH4、ソニーケミカル社製)を温度60℃および圧力0.3MPaにて10秒間、ガラス板上に貼り付けた。このACFの上に0.1mlのポリイミドシリコーン組成物を滴下し、温度23℃および相対湿度60%の条件で1日乾燥した後に、ACFの端部を観察して、ポリイミド組成物中にACFが溶け出しているかどうかを確認した。測定結果を表2の「ACF溶解試験」の欄に表示した。
Figure 2006117710
〔比較例1〜7〕
沸点が80〜180℃で、SP値が7〜9の溶媒に代えて、沸点およびSP値の一方または両方がこの範囲外にある溶媒を用いた以外は、実施例1〜7と同様にして、ポリイミドシリコーン系樹脂組成物の調製、製膜等および上記性能評価試験を行った。混合組成と結果を表3に示す。電極腐食試験では168時間未満でITO電極が腐食し、断線が発生した。
Figure 2006117710
表4に各々の溶剤の沸点とSP値を示す。
Figure 2006117710
[評価]
・接着強度
実施例の組成物および比較例1〜3の組成物から得られた樹脂被膜は良好な接着強度を示した。一方、比較例4および5の組成物から得られた樹脂被膜は不均一膜のため、非常に低い接着強度しか得られなかった。また、比較例6および7の組成物からは溶媒が揮発せず、乾燥した樹脂被膜が得られなかった。この樹脂被膜は未硬化だったため、接着強度の測定を行うことができなかった。
・電極腐食試験
実施例の組成物および比較例1〜3の組成物で被覆したITO電極は168時間を超えても腐食しなかったのに対し、比較例4〜7の組成物で被覆したITO電極は168時間未満で腐食し、断線してしまった。これは、比較例4および5の組成物から得られた樹脂被膜は不均一膜だったためであり、比較例6および7の組成物からは乾燥した樹脂被膜が得られず、未乾燥・未硬化のまま試験を行ったためである。
・ACF溶解試験
実施例の組成物はACFを溶解しなかったのに対し、比較例4および5の組成物はACFを溶解し、比較例6および7の組成物はACFを若干、溶解した。このことから、ジイソブチルケトン、ジイソプロピルケトン、メチルイソブチルケトンなどの、沸点が80〜180℃で、SP値が7〜9の溶媒はACFに対する影響が小さいのに対し、シクロオクタノン、アセトン、シクロペンタノンなどの、沸点およびSP値の一方または両方がこの範囲外にある溶媒はACFに対する影響が大きいことが分かった。

Claims (2)

  1. (a)芳香族テトラカルボン酸化合物および脂環式テトラカルボン酸化合物から成る群より選ばれるテトラカルボン酸化合物と芳香族ジアミンとジアミノシロキサンとの反応生成物であるポリアミック酸、および、該ポリアミック酸の閉環誘導体であるポリイミドシリコーンから成る群より選ばれるポリマー、
    (b)沸点が80〜180℃で、SP値が7〜9の溶媒、
    (c)下記構造式(1):
    Figure 2006117710
    (1)
    (式中、R1は2価の有機基であり、R2およびR3は独立に非置換または置換の炭素原子数1〜10の1価炭化水素基であり、nは独立に1〜3の整数である)
    で示される反応性シリル基含有ビスイミド化合物、ならびに
    (d)Naイオン換算で0.1meq/g以上のカチオン交換能力、および/またはClイオン換算で0.1meq/g以上のアニオン交換能力を有する無機イオン交換体 (a)成分100質量部に対して0.5〜10質量部
    を含有してなるポリイミドシリコーン系樹脂組成物。
  2. 請求項1に記載のポリイミドシリコーン系樹脂組成物からなる電極保護材。
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