JP2006116692A - Cmpコンディショナ - Google Patents

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哲二 山下
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高志 木村
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Abstract

【課題】 CMP装置の研磨パッドのコンディショニングに用いられるCMPコンディショナにおいて、研磨レートの早期の大幅な低下を防ぐとともに、CMP装置によって研磨される半導体ウェハ等の被研磨面にスクラッチが発生するのを確実に防止して、高品位の被研磨面を形成し得る研磨パッドのコンディショニングを長期に亙って安定して行う。
【解決手段】 CMP装置の研磨パッドと対向して接触するコンディショニング面2に固着されるダイヤモンド砥粒を、その結晶面のうち111面がコンディショニング面2と略平行にこのコンディショニング面2が対向する方向に向けられるように固着する。
【選択図】 図1

Description

本発明は、半導体ウエハ等の研磨を行うCMP(化学機械的研磨)装置の研磨パッドのコンディショニングに用いられるCMPコンディショナに関するものである。
このようなCMPコンディショナとしては、例えば特許文献1に、円盤形またはカップ型台金の台金作用面にダイヤモンド砥粒をニッケルめっきで単層固着したパッドコンディショニングダイヤモンドドレッサーにおいて、固着されたダイヤモンド砥粒のうち70%以上を結晶の稜または頂点が突出端となるようにしたものが提案されている。また、特許文献2においては、母材の表面にダイヤモンド砥粒をろう付けにより固着したCMP加工用ドレッサにおいて、ダイヤモンド砥粒の結晶の{111}面の垂線のドレッサ基体固定面への投影線分がドレッサの研削方向とほぼ平行となるようにしたもの、あるいはこの{111}面が研磨布の研削面に対して15度〜75度傾斜するようにしたものが提案されている。
特開2001−71267号公報 特開2002−273657号公報
ところが、このうちまず特許文献1に記載のように、固着されたダイヤモンド砥粒の多くが、その結晶の稜または頂点、すなわちダイヤモンド砥粒表面の隣接する結晶面同士が交差する尖った部分が突出端となるように、つまりCMP装置の研磨パッドと対向して接触するコンディショニング面からこのコンディショニング面の向く方向突き出すようにして固着されたものでは、コンディショニングの当初は砥粒の切れ味が鋭く、高いパッド研磨レートが得られるものの、上記突出端となる尖った部分は摩耗が速いために早期に砥粒の切れ味が鈍って研磨レートが著しく低下してしまい、結果的にCMPコンディショナの寿命も早期に費えることとなる。また、こうして結晶の稜や特に頂点の部分が突出端となっていると、この部分が上述のように摩耗する前に欠損してしまい、その欠けた破片がCMP装置によって研磨される半導体ウェハ等の被研磨面を引っ掻いて該被研磨面にスクラッチを生じるおそれもある。
一方、特許文献2に記載のCMPコンディショナでは、例えば六・八面体のダイヤモンド砥粒の{001}面を母材の表面つまりコンディショニング面と平行に該コンディショニング面側に向けて各砥粒の突出高さおよび接触面を揃えることにより、各砥粒にかかる負荷を均一にして欠けの発生を防止するとともに、上述のように{111}面の垂線の投影線分が研削方向とほぼ平行となるか、あるいは研削面に対して上記角度で傾斜するように砥粒をろう付けすることにより、高強度を有するこの{111}面を切刃として研磨布(研磨パッド)の砥粒と接触させることで、効果的にドレッシングを行うとともに砥粒の欠けを生じにくくし、被研磨物のスクラッチの発生を防止するようにしている。
しかしながら、CMP装置に用いられるコンディショナは、CMP装置の回転する研磨パッド上に上記コンディショニング面を接触させて載置されて、CMPコンディショナ自体も研磨パッドの回転軸線とは異なる軸線回りに回転させられるとともに該研磨パッド上を揺動させられたりするため、コンディショニング面にろう付けされた砥粒の{111}面の垂線の上記投影線分が常に研削方向と平行となったりするとは限らない。そして、例えば{111}面以外の面が専ら研削方向に向けられた状態でコンディショニングが行われた場合には、この面と砥粒の突出端面となるやはり{111}面以外の面との稜線や頂部に摩耗が生じて研磨レートが早期に著しく低下したり、これらの稜線や頂部に欠損が生じてスクラッチが発生したりすることが避けられない。
本発明は、このような背景の下になされたもので、上述のようなCMP装置の研磨パッドのコンディショニングに用いられるCMPコンディショナにおいて、研磨レートの早期の大幅な低下を防ぐとともに、CMP装置によって研磨される半導体ウェハ等の被研磨面にスクラッチが発生するのを確実に防止して、高品位の被研磨面を形成し得る研磨パッドのコンディショニングを長期に亙って安定して行うことが可能なCMPコンディショナを提供することを目的としている。
上記課題を解決して、このような目的を達成するために、本発明は、CMP装置の研磨パッドと対向して接触するコンディショニング面にダイヤモンド砥粒が固着されたCMPコンディショナであって、上記ダイヤモンド砥粒を、その結晶面のうち111面が上記コンディショニング面と略平行とされて該コンディショニング面が対向する方向に向けられるように固着したことを特徴とするものである。
従って、このようなCMPコンディショナにおいて、その結晶面のうち111面がコンディショニング面と略平行に該コンディショニング面が対向する方向、すなわちCMP装置において研磨パッドと対向する方向に向けられるようにしてコンディショニング面に固着されたダイヤモンド砥粒にあっては、この111面がコンディショニング面からの突端面として研磨パッドに接触するため、ダイヤモンド砥粒の結晶面同士の稜線部や頂部のように尖った部分が研磨パッド側に突き出した突出端となることがない。このため、このような尖った部分が早期に摩耗することによって研磨レートが著しく低下したり、あるいはかかる部分に欠損が生じて、その破片により、研磨パッドによって研磨される半導体ウェハ等の被研磨面にスクラッチが生じたりするのを防ぐことができる。
そして、上記ダイヤモンド砥粒において研磨パッドに切り込まれて切れ刃のエッジとして作用するのは、上記突端面とされる高強度で耐摩耗性の高い111面とその周囲に隣接する他の結晶面との稜線部あるいは頂部であり、しかも突端面とされた111面は研磨パッドに対するダイヤモンド砥粒の研削方向が変動しても常に研磨パッドに対向して接触した状態とされるので、上記切れ刃は良好な切れ味を維持しつつも摩耗することが少なく、欠損などが生じることもない。従って、上記構成のCMPコンディショナによれば、高い研磨レートを長期に亙って安定的に維持することができてコンディショナ寿命の延長を図ることができるとともに、かかるコンディショナによってコンディショニングされた研磨パッドにより研磨される半導体ウェハ等において、スクラッチのない高品位の被研磨面を形成することが可能となる。
ここで、このようにコンディショニング面に固着されたダイヤモンド砥粒のうち、どの程度の砥粒がその111面をコンディショニング面と略平行に該コンディショニング面が対向する方向に向けられているかは、このダイヤモンド砥粒の結晶面のX線回折強度を測定することによって知ることができる。すなわち、111面がコンディショニング面と略平行にその対向方向に向けられて固着されたダイヤモンド砥粒が多ければ、この111面に関して高いX線回折強度が得られ、その分他の結晶面の回折強度は低くなるので、111面も含めた各結晶面のX線回折強度の総和に対する111面のX線回折強度の比率(以下、111面検出率と称する。)が高いほど、より多くのダイヤモンド砥粒がその111面をコンディショニング面と略平行にして該コンディショニング面の対向方向に向け固着されているものと認めることができる。
そこで、このような知見に基づき、本発明のCMPコンディショナにおいては、上記コンディショニング面にあって、該コンディショニング面上の複数の測定箇所において上記ダイヤモンド砥粒の結晶面のX線回折強度を測定した際の上記111面検出率が、上記複数の測定箇所における平均として70%以上とされているのが望ましく、このように高い111面検出率とすることで上述の効果をより確実に奏功することが可能となる。すなわち、この111面検出率が70%未満であると、相対的に他の結晶面を突端面として固着されたダイヤモンド砥粒や結晶面同士の稜線や頂部を突出させて固着されたダイヤモンド砥粒の割合が多くなり、これらの砥粒によって研磨レートが早期に著しく低下したり欠損によりスクラッチが発生する可能性が高くなったりするおそれがある。
また、上記コンディショニング面においては、その全面にダイヤモンド砥粒が固着されていたり、あるいは外周側に所定の幅をもって環状にダイヤモンド砥粒が固着されていたりしてもよいが、このコンディショニング面に複数の突起を形成して、この突起にダイヤモンド砥粒を固着することにより、各砥粒の特にコンディショニング面に平行に上記対向方向に向けられた111面に高い研削圧力を与えることができ、切れ刃のエッジとなる上記稜線部や頂部にさらに鋭い切れ味を確保することが可能となる。勿論、コンディショニング面の外周側に環状にダイヤモンド砥粒を固着するとともに、内周側にはこのような突起を形成してダイヤモンド砥粒を固着してもよく、また突起自体もコンディショニング面(外周側に環状に砥粒が固着された場合はその内周側)の全面に形成されたり、その外周側に環状に配列されるように形成されたりしてもよい。
さらに、特に特許文献1記載のようにダイヤモンド砥粒をニッケル等の金属めっき相によって固着したCMPコンディショナや、特許文献2記載のように金属ろう材によってろう付け固着したCMPコンディショナでは、CMP装置における研磨パッドのコンディショニングの際に腐食性の高いスラリーを用いた場合でも、ダイヤモンド砥粒を固着したこのような金属結合相の腐食による砥粒の脱落によってスクラッチが発生したりするのを防ぐため、上記コンディショニング面に四フッ化有機化合物を被覆するのが望ましい。すなわち、このような四フッ化有機化合物は、腐食性の高いスラリーと反応しやすい−CONH、−CHOH、−COOCH、−COF、−COOH、−CCFH等が存在しないために耐食性が高く、また上記金属結合相の上にも電着塗装等によって確実に被覆することができるので、上述のような金属結合相の腐食による砥粒の脱落やこれに伴うスクラッチの発生を一層効果的に防止することが可能となる。
図1ないし図4は、それぞれ本発明のCMPコンディショナの実施の形態を示すものである。これらの実施形態では、ステンレス等の金属材料よりなる軸線Oを中心とした略円板状の台金1において、その軸線Oに垂直な一方の円形面がコンディショニング面2とされて、このコンディショニング面2にダイヤモンド砥粒が固着された砥粒層3が形成されている。この砥粒層3は、複数(多数)の上記ダイヤモンド砥粒を例えば金属めっき相に分散することによって単層に固着したものであり、こうしてコンディショニング面2に砥粒層3が形成されたCMPコンディショナは、このコンディショニング面2をCMP装置の研磨パッド表面に平行に対向させて接触させられ、該研磨パッドの回転軸線から離れた位置で上記軸線O回りに回転されつつ、台金1自体もパッド表面の内外周に揺動させられたりして、上記研磨パッドのコンディショニングに用いられる。
このうち、図1に示す第1の実施形態および図2に示す第2の実施形態においては、上記コンディショニング面2の外周側に、該コンディショニング面2と平行な円環状の端面4fを有して上記軸線Oを中心とした一定幅の環状に突出するリング部4が形成されるとともに、このリング部4の内周側には、やはりコンディショニング面2と平行でリング部4と等しい突出高さの円形の端面5fを有する略円柱状の複数の突起5が間隔をあけて形成されている。ただし、このうち第1の実施形態では、図1に示すようにリング部4内周のうちでも外周側の部分のみに、軸線Oを中心とした複数(図2では3つ)の同心円をなすようにして、各円ごとに等間隔に、かつ隣接する円同士では千鳥状となるように、複数の突起5が配設されているのに対し、第2の実施形態では、図2に示すように突起5がリング部4の内周全体に軸線Oを中心として略放射状かつ同心円状で概ね等間隔に配列されている。
そして、これら第1、第2の実施形態では、これらのリング部4と突起5とに上記砥粒層3が形成されており、このうちリング部4と突起5の上記端面4f,5fに固着されたダイヤモンド砥粒にあっては、その結晶面のうち111面が、上記コンディショニング面2と略平行とされ、すなわち上記軸線Oに略垂直な平面に沿うようにされて、このコンディショニング面2が対向する方向、すなわち上述のコンディショニング時に研磨パッドの表面側を向く方向に向けられるように固着されている。従って、こうして固着されたダイヤモンド砥粒においては、上記111面がコンディショニング面2から軸線O方向に突出する突端面となる。なお、リング部4の上記端面4fよりも外周側は、外周側に向かうに従い漸次後退するテーパ面4tとされて、このテーパ面4tは軸線Oを中心とする円形の稜線を介して上記端面4fと鈍角に交差させられており、このテーパ面4t上にもダイヤモンド砥粒が固着されている一方、リング部4の端面4fの内周側はコンディショニング面2に垂直に屹立する軸線Oを中心とした円筒面状とされている。
一方、図3に示す第3の実施形態では、上記リング部4や突起5は形成されてはおらず、軸線Oに垂直な平坦面とされたコンディショニング面2の全面に砥粒層3が形成されて、そのダイヤモンド砥粒の111面が該コンディショニング面2と略平行にその対向方向に向けられている。また、図4に示す第4の実施形態では、コンディショニング面2の外周側に、第1、第2の実施形態よりは幅広のリング部4が形成されているだけであって、その内周側に突起5は形成されておらず、このリング部4のコンディショニング面2と平行とされた端面4fに固着されたダイヤモンド砥粒において、その111面がコンディショニング面2と略平行とされてコンディショニング面2の対向する方向に向けられるように固着されている。なお、この第4の実施形態でもリング部4の上記端面4fより外周側の部分は外周側に向かうに従い漸次後退するテーパ面4tとされる一方、端面4fより内周側の部分も内周側に向かうに従い漸次後退するテーパ面4tとされており、これらのテーパ面4t上にもダイヤモンド砥粒が固着されている。また、第3の実施形態ではコンディショニング面2の外周縁に面取り状のテーパ面2tが形成されていて、このテーパ面2tにもダイヤモンド砥粒が固着されている。
ただし、上記第1、第2、第4の実施形態においてリング部4や突起5の端面4f,5fに固着されたダイヤモンド砥粒や、第3の実施形態においてコンディショニング面2に固着されたダイヤモンド砥粒においては、そのすべてが111面を上述のような突端面としてコンディショニング面2と平行かつその対向方向に向けられてなくてもよく、またこの111面が厳密にコンディショニング面2と平行とされていなくてもよい。ここで、これら第1ないし第4の実施形態では、各図に示すようにコンディショニング面2における複数の測定箇所Pにおいて上記ダイヤモンド砥粒の結晶面のX線回折強度を測定した際の111面検出率が、これら複数の測定箇所Pにおける平均として70%以上とされており、言い換えればこのような平均の111面検出率が得られるように、ダイヤモンド砥粒が111面をコンディショニング面2と略平行に上記対向方向に向けて固着されている。また、上記第1、第2、第4の実施形態において上記リング部4内周側のコンディショニング面2の底面(第1、第2の実施形態では突起5間の部分)2fは軸線Oに垂直な平坦面とされてダイヤモンド砥粒は固着されておらず、これらの実施形態では厳密には上記端面4f,5fはこの底面2fに平行とされて、該端面4f,5fに固着されるダイヤモンド砥粒も上述のようにその111面をこの底面2fと略平行として該底面2fの対向する方向に向けるようにされている。
なお、このように111面がコンディショニング面2と略平行とされてその対向方向に向けられるようにダイヤモンド砥粒を固着するには、例えば砥粒を1つ1つ、その111面の向きを揃えてコンディショニング面2上に配列、固定し、上記金属めっき相等によって固着するようにしてもよいが、市販の人造ダイヤモンド砥粒などの中から111面の大きい、いわゆる六・八面体状ないしは八・六面体状の砥粒を選別し、これを台金1が浸漬された金属めっき液中に分散して上記コンディショニング面2に接地させつつ金属めっき相を析出させて電着により固着するようにしてもよい。すなわち、このようなダイヤモンド砥粒は111面がコンディショニング面2側に密着して接地する可能性が高いため、この111面とは反対側の111面を上記突端面としてコンディショニング面2と略平行に該コンディショニング面2が向く方向に向け、上述のような111面検出率が得られるようにダイヤモンド砥粒を固着することができる。
さらに、こうしてダイヤモンド砥粒が固着されたコンディショニング面2の、少なくとも上記砥粒層3の表面には、例えばポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、四フッ化エチレン・六フッ化プロピレン共重合樹脂(FEP)、四フッ化エチレン・パーフロロアルキルビニールエーテル共重合樹脂(PFA)、四フッ化エチレン・エチレン共重合樹脂(ETFE)等の四フッ化有機化合物が被覆されるのが望ましい。なお、このような四フッ化有機化合物は、砥粒層3がコンディショニング面2に形成されたCMPコンディショナの台金1を、例えば上述のような四フッ化有機化合物が分散された液中に浸漬して電着塗装を施したりすることにより被覆される。ここで、この四フッ化有機化合物は、上記第1、第2、第4の実施形態においては砥粒層3が形成されたリング部4の端面4f、テーパ面4tや突起5の端面5fのみに被覆されていてもよく、またこれら第1、第2、第4の実施形態や第3の実施形態も含めて、コンディショニング面2の全面に被覆されていてもよい。
従って、上述のように構成されたCMPコンディショナでは、コンディショニング面2やそのリング部4、突起5の端面4f,5fに固着されたダイヤモンド砥粒において、高強度で耐摩耗性の高い111面がコンディショニング面2と略平行とされて、該コンディショニング面2が対向するCMP装置において研磨パッド側を向く方向に配向させられているので、この111面とこれに隣接する結晶面とが交差した切れ刃のエッジとなる稜線部や頂部には鋭い切れ味を確保しつつも、この切れ刃部分の摩耗を抑えるとともに欠損を防ぐことができる。このため、パッドの研磨レートが早期に著しく低下するのを防いで、長期に亙って安定した、しかも高い研磨レートを維持することができるとともに、欠損した砥粒の破片によって半導体ウェハ等にスクラッチが生じるのも防ぐことができ、これによりスクラッチ数の少ない高品位の研磨を、CMP装置によって研磨される半導体ウェハ等に施すことが可能となる。
また、このように切刃部分の摩耗や欠損を防ぐことが可能な、111面がコンディショニング面2と略平行にその対向方向に向けられたダイヤモンド砥粒が、上記111面検出率が70%以上となるような高い割合で固着されているので、より確実に上述のような安定した高いパッド研磨レートを維持し、かつスクラッチの発生を防止することが可能となる。すなわち、この111面検出率が70%未満であると、他の結晶面や結晶面同士の稜線、頂部が上記対向方向に向けられたダイヤモンド砥粒の割合が多くなり、上述のような効果を十分に奏功することができなくなるおそれがある。なお、このようにダイヤモンド砥粒のX線回折強度を測定して111面検出率を算出するときには、コンディショニング面2において部分的に上記対向方向に向けられた結晶面に偏りが生じるおそれもあるので、複数の測定箇所、望ましくは上記第1ないし第4の実施形態の測定箇所Pのように4箇所以上の測定箇所PでX線回折強度を測定して、その平均をとるのが望ましい。
さらに、上記第1、第2の実施形態のようにコンディショニング面2に突起5を形成して、その上記対向方向を向く端面5fにダイヤモンド砥粒を上述のように固着したCMPコンディショナにおいては、このとき突起5上において砥粒がパッドにベタ当たりせずに高い研削圧力が確保されるため、より鋭い切れ味を上記切れ刃に与えて一層高い研磨レートを得ることができて、このような研磨レートを長期に亙って安定して維持することが可能となるとともに、スクラッチ数もより少なく抑えることができる。さらにまた、これら第1、第2の実施形態ではコンディショニング面2の突起5が形成された部分よりも外周側にリング部4が形成されてその端面4fおよび外周側のテーパ面4tにもダイヤモンド砥粒が固着されているので、研磨パッドの撓みを抑えて一層効果的に上記切れ刃を食い付かせることができるという効果も得られる。ただし、こうして突起5を形成した場合には、リング部4は形成されていなくてもよい。
さらにまた、上述のようにコンディショニング面2において少なくともダイヤモンド砥粒が固着された砥粒層3に四フッ化有機化合物を被覆した場合には、このような四フッ化有機化合物は、腐食性の高い薬品と反応しやすい−CONH、−CHOH、−COOCH、−COF、−COOH、−CCFH等が存在しないため耐食性が高いので、CMP装置の研磨パッドをコンディショニングする際に腐食性の高いスラリー(研削液)を用いたとしても、これによりダイヤモンド砥粒を固着した金属めっき相が腐食されるのを抑えてダイヤモンド砥粒の脱落やこれに伴うスクラッチの発生および研磨レートの低下を防ぐことができる。また、こうして四フッ化有機化合物を被覆することにより、例えば酸化セリウムの微細粒子を分散させた粘着性の高い、いわゆるセリア系スラリーを用いたりしたときでも、このような微細粒子がコンディショニング面2の砥粒層3に凝集して付着するのを防ぐことができ、このように凝集付着した微細粒子によりダイヤモンド砥粒によるパッドへの食い付きが妨げられて研磨レートが悪化したり、凝縮して付着していた粒子が剥がれてスクラッチが生じたりするのを防止できるので、上述したパッド研磨レートの安定化やスクラッチ発生防止といった効果をより確実に奏功することが可能となる。
次に、上記実施形態に基づいた本発明の実施例を挙げてその効果を実証する。本実施例においては、まず第1の実施形態に基づいてダイヤモンド砥粒の粒度を変更した3種類のCMPコンディショナと、第2の実施形態に基づいてダイヤモンド砥粒の粒度を変更した2種類のCMPコンディショナとを製造した。これらを実施例1〜5とする。ただし、実施例1〜3は第1の実施形態に基づくものであって、ダイヤモンド砥粒の粒度は実施例1では#100、実施例2では#200、実施例3では#325であり、実施例4、5は第2の実施形態に基づくものであって、ダイヤモンド砥粒の粒度は実施例4では#100、実施例5では#325であった。また、砥粒集中度は、砥粒層3において単位面積(1mm2)当たりに固着されたダイヤモンド砥粒の数として、粒度が#100のもの(実施例1、4)では平均35ヶ/mm、粒度が#200のもの(実施例2)では平均135ヶ/mm、粒度が#325のもの(実施例3、5)では平均280ヶ/mmであった。
なお、これら実施例1〜5では、ともにコンディショニング面2の外径(台金1の外径)は101.6mm、リング部4の内径は90mm、端面4fの外径は94mm、テーパ面4tも含めたリング部4の外径は97mm、コンディショニング面2の底面2fからのリング部4、突起5の突出高さ(上記端面4f,5fの高さ)は0.3mmで共通である。さらに、第1の実施形態に基づく実施例1〜3では、突起5は、その外径が2mmで、内径67mm、外径85mmの軸線Oを中心とした円環面の範囲に、軸線Oを中心として略等間隔をあけた同心円上に図1に示す通りに配列され、また第2の実施形態に基づく実施例4、5では、突起5は、外径が3mmで、軸線O上と、やはり軸線Oを中心として略等間隔をあけた同心円上に図2に示す通りに配列されている。
また同様に、第3の実施形態に基づいてダイヤモンド砥粒の粒度を#100としたCMPコンディショナと、第4の実施形態に基づいてダイヤモンド砥粒の粒度を#100および#200とした合計3種のCMPコンディショナを製造した。これらを実施例6〜8とする。ただし、これら実施例6〜8においても砥粒集中度は、実施例1〜5と同様に砥粒層3において単位面積(1mm)当たりに固着されたダイヤモンド砥粒の数が、粒度#100のもの(実施例6、7)では平均35ヶ/mm、粒度が#200のもの(実施例8)では平均135ヶ/mmであり、またコンディショニング面2の外径(台金1の外径)も実施例1〜5と同様に101.6mmであった。さらに、第3の実施形態に基づく実施例6では、上記面取り状のテーパ面2tのコンディショニング面2に平行な方向の幅が1.5mmとされ、また第4の実施形態に基づく実施例7、8におけるリング部4は、コンディショニング面2の底面2fからの突出高さが1mm、端面4fの内径が68.7mm、外径が94.1mm、内外周のテーパ面4fも含めたリング部4の内径が61.1mmで外径はコンディショニング面2の外径と等しくされている。
なお、これらの実施例1〜8は、上述のように市販の人造ダイヤモンド砥粒から六・八面体状ないしは八・六面体状のダイヤモンド砥粒を多く含む一群のダイヤモンド砥粒を顕微鏡によって観察して選別し、これを台金1が浸漬されたNiめっき液中に分散して電解めっきにより上記コンディショニング面2の砥粒層3を形成する部分にNiめっき相を析出させつつ固着して製造した。
さらに、このうち実施例1と同様に製造されたCMPコンディショナの台金1を、四フッ化有機化合物として四フッ化エチレン・パーフロロアルキルビニールエーテル共重合樹脂(PFA)、分子式:−(C・(ROCF=CF)が分散された液中に浸漬して電着塗装を施すことにより、そのコンディショニング面2の全体を該四フッ化有機化合物によって被覆したCMPコンディショナを製造した。これを実施例9とする。ただし、この実施例9において、四フッ化有機化合物の被覆厚さは5μm程度であり、ダイヤモンド砥粒の平均粒径の30%程度がこの被覆された四フッ化有機化合物から突き出されるようにされていた。
一方、これら実施例1〜8に対する比較例として、このような砥粒の選別を行わない以外は、実施例1〜8と同様の台金1に同様の粒度のダイヤモンド砥粒を固着した8種のCMPコンディショナを製造した。これらを実施例1〜8に対応させてそれぞれ比較例1〜8とする。また、このうち比較例1と同様に製造されたCMPコンディショナに、実施例9と同様の条件で四フッ化有機化合物(四フッ化エチレン・パーフロロアルキルビニールエーテル共重合樹脂)を被覆したCMPコンディショナを製造した。これを比較例9とする。
これら実施例1〜8および比較例1〜8について、図1ないし図4に示したようにコンディショニング面2の最外周側に位置する底面2fと平行な端面4f,5fを超えない範囲(リング部4が最外周に形成された第1、第2、第4の実施形態に基づく実施例1〜5、実施例7、8では、その端面4fと外周側のテーパ面4tとの円形の稜線を超えない範囲。第3の実施形態に基づく実施例6では、コンディショニング面2と面取り状のテーパ面2tとの円形の稜線を超えない範囲。)で、軸線Oを中心に周方向に90°間隔で等間隔に位置する複数(4つ)の上記稜線に略内接した測定箇所Pにおいて、ダイヤモンド砥粒の111面のX線回折強度とこれ以外の他の結晶面のX線回折強度とを測定し、これに基づいて111面検出率を算出した結果を、4つの測定箇所Pの平均として表1に示す。ただし、このX線回折強度の測定において、測定装置は理学電機株式会社製・型番RINT2000/ULTIMA+、使用管球(ターゲット)はCu(Kα)、電圧40kV、電流40mA、スリット1°−0.3mm−1°、測定範囲2θ=35°〜145°、ステップ幅0.02°、走査速度3°/mm、スポット径は10mmであった。
そして、これら実施例1〜9および比較例1〜9のCMPコンディショナそれぞれによりCMP装置において研磨パッドのコンディショニングを行いつつ、当該CMP装置によってSiウェハの研磨を行い、コンディショニング開始から100時間経過後までのウェハの被研磨面に生じたスクラッチの数と、この間の所定時間(30分、5、10、20、50、100時間)経過後のパッド研磨レートの変化とを測定した。この結果も、表1に合わせて示す。ただし、このうち実施例1〜8および比較例1〜8によるコンディショニングの研磨条件は、パッド回転数80rpm、CMPコンディショナ回転数80rpm、揺動速度3000mm/min、荷重49N、パッド外径360mm、パッド材質はポリウレタンで、スラリーとして水を100ml/min供給した。
Figure 2006116692
この表1の結果より、まず同じ台金1のコンディショニング面2に同じ配置で同じ粒度のダイヤモンド砥粒を固着した実施例1〜8と比較例1〜8同士をそれぞれ比較すると、70%以上の111面検出率とされた実施例1〜8のCMPコンディショナでは、111面検出率が70%未満の比較例1〜8に比べてスクラッチ数が激減しており、特にコンディショニング面2に突起5を形成してダイヤモンド砥粒を固着した実施例1〜5では、スクラッチの発生は皆無であった。
また、パッド研磨レートを比較すると、コンディショニングの当初はいずれも比較例の方がやや研磨レートが高いものの、コンディショニング開始後5〜10時間経過時点で比較例は急激に研磨レートが低下して実施例と略同等、もしくは実施例の方が高い研磨レートが得られているのに対し、実施例では5時間経過後でコンディショニング開始当初と研磨レートが同等もしくは僅かに向上しており、その後は、比較例1〜8では低下傾向が略衰えずに推移したのに対し、実施例1〜8では低下傾向が小さく抑えられて安定し、100時間経過後では実施例の方がいずれも比較例よりも高い研磨レートが得られていた。
さらに、同じ#100の粒度のダイヤモンド砥粒を固着した111面検出率70%以上の実施例1、4、6、7を比較すると、突起5にダイヤモンド砥粒を固着した実施例1、4では、コンディショニング面2の全面にダイヤモンド砥粒を固着した実施例6やリング部4のみをコンディショニング面2に形成してダイヤモンド砥粒を固着した実施例7に比べ、スクラッチ数は少なく、またパッド研磨レートもコンディショニング開始当初から100時間経過後に亙って高い結果が得られていた。
次に、実施例9および比較例9によるコンディショニングでは、研磨条件を、パッド回転数40rpm、CMPコンディショナ回転数40rpm、荷重80N、パッド外径380mmとし、そしてスラリーとして上述したセリア系スラリーを供給した。このときのコンディショニング開始から100時間経過後までのスクラッチの数と、所定時間(30分、5、10、20、50、100時間)経過後のパッド研磨レートの変化とについても、表1に合わせて示す。
このうちパッド研磨レートに関しては、比較例9のCMPコンディショナにおいても比較例1〜8と同様に、コンディショニング開始当初は実施例9のCMPコンディショナより高い研磨レートであるものの時間ごとの低下傾向が大きく、コンディショニング開始後5〜10時間経過時点で実施例9と逆転する結果となった。また、スクラッチについても、比較例1よりは少ないものの発生が認められている。
これに対して、実施例9のCMPコンディショナではスクラッチの発生は認められず、また研磨終了後のコンディショニング面2を観察したところ酸化セリウム粒子の凝集、付着も認められなかった。そして、パッド研磨レートは比較例9に対して低下率が小さく抑えられており、上述のようなセリア系のスラリーを用いた場合でも砥粒層3の腐食が抑えられた上で、安定したコンディショニングが可能であることが認められた。
本発明の第1の実施形態を示す、コンディショニング面2が対向する方向側から見た平面図である。 本発明の第2の実施形態を示す、コンディショニング面2が対向する方向側から見た平面図である。 本発明の第3の実施形態を示す、コンディショニング面2が対向する方向側から見た平面図である。 本発明の第4の実施形態を示す、コンディショニング面2が対向する方向側から見た平面図である。
符号の説明
1 台金
2 コンディショニング面
3 砥粒層
4 リング部
4f リング部4の端面
5 突起
5f 突起5の端面
O 台金1の軸線

Claims (4)

  1. CMP装置の研磨パッドと対向して接触するコンディショニング面にダイヤモンド砥粒が固着されたCMPコンディショナであって、上記ダイヤモンド砥粒は、その結晶面のうち111面が上記コンディショニング面と略平行とされて該コンディショニング面が対向する方向に向けられるように固着されていることを特徴とするCMPコンディショナ。
  2. 上記コンディショニング面にあっては、該コンディショニング面上の複数の測定箇所において上記ダイヤモンド砥粒の結晶面のX線回折強度を測定した際の、測定された各結晶面のX線回折強度の総和に対する上記111面のX線回折強度の比率が、上記複数の測定箇所における平均として70%以上とされていることを特徴とする請求項1に記載のCMPコンディショナ。
  3. 上記コンディショニング面には複数の突起が形成されていて、この突起に上記ダイヤモンド砥粒が固着されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のCMPコンディショナ。
  4. 上記コンディショニング面には、四フッ化有機化合物が被覆されていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載のCMPコンディショナ。
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