JP2006105273A - 転動装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】振動や騒音を十分に低減することのできる転動装置を提供すること。
【解決手段】軸受1は、内輪4および外輪5と、内外輪4,5間に介在する転動体としての複数の玉6と、玉6を保持するための保持器とを備えている。周方向Bに関する隣り合う玉6の配置間隔が、相対的に長い長間隔RLと相対的に短い短間隔RSとを含んでいる。長間隔RLは、短間隔RSよりも、この短間隔RSの1/2n倍だけ長くされている(RL=RS+1/2nRS)。
【選択図】 図2

Description

本発明は、転動装置に関する。
通例、転がり軸受は、回転軸を回転自在に支持するために用いられている。例えば、軸受は、軸に外嵌される内輪と、ハウジング等に保持される外輪と、内外輪間に介在する転動体と、転動体を保持するための保持器とを備えている。
上記の保持器には、転動体保持用のポケットを複数備えるとともに、当該保持器の周方向に関して、少なくとも1つおきのポケット位置が、円周等配位置に対して所定角度ずらされているものがある(例えば、特許文献1参照)。これにより、非同期回転振れ(軸の回転振れのばらつき)の低減を図っている。
また、軸受の周方向に関する転動体の位置を不等配にすることにより、軸受の周方向の重量バランスをアンバランスなものにして、軸受にフレッティングが生じることを防止しているものがある(例えば、特許文献2参照)。
特開平10−267037号公報 特開平9−292008号公報
ところで、転動体を有する軸受には、転動体通過振動が発生することが知られている。転動体通過振動は、例えば、以下のようにして発生する。すなわち、軸受の内輪に軸が嵌め合わされ、この軸から軸受に所定方向のラジアル荷重が付与されると、軸受の内外輪は、上記所定方向に互いに引き寄せられるように押圧され、わずかではあるが、相対的に偏心する。このとき、内外輪間の偏心量は、内外輪の互いに引き寄せられている部分間に転動体が介在しているか否かで異なる。このため、軸受が駆動され、内外輪の互いに引き寄せられている部分間を転動体が周期的に通過すると、内外輪間の偏心量が周期的に変動し、その結果、軸受が振動する。
また、軸受の振動とは別に、軸受に支持されている軸自体が振動する場合があるが、この場合、軸の振動数と転動体通過振動の振動数とが一致すると、共振が発生し、振動や騒音の原因となってしまう。
同様の課題は、転がり軸受以外の他の一般の転動装置にも存在する。
本発明は、かかる背景のもとでなされたもので、振動や騒音を十分に低減することのできる転動装置を提供することを目的とする。
本願発明者は、転動装置において、振動および騒音の低減を達成すべく、鋭意研究を行った。そして、転動体の配置が、振動および騒音の発生に影響を及ぼすとの知見を得、さらなる研究を行った。
その結果得られた本発明は、一対の軌道部材間に複数の転動体を介在させる転動装置において、上記一対の軌道部材の相対運動方向に関する転動体の配置間隔は、相対的に長い長間隔と相対的に短い短間隔とを含み、長間隔RLと短間隔RSとは下記式(1)に示す関係を満たすことを特徴とするものである。
RL/RS=(2n+1)/2n(nは自然数)・・・・・(1)
本発明によれば、例えば、一対の軌道部材間に所定方向のラジアル荷重が作用して互いに引き寄せられている場合において、一対の軌道部材の互いに引き寄せられている部分間を、長間隔に配置された転動体がn回通過すると、長間隔に配置された転動体に起因する転動体通過振動の位相と、短間隔に配置された転動体に起因する転動体通過振動の位相とが、半波長ずれる。これにより、転動体通過振動を互いに打ち消し合うことができる。その結果、転動体通過振動を極めて低減することができるとともに、騒音を十分に低減することができる。しかも、転動装置の振動が十分に低減されているので、例えば、転動装置を軸受に適用した場合において、軸受に支持される軸自身が振動を生じていても、軸受と軸とが共振することを防止でき、振動低減効果をより発揮することができる。
また、上記長間隔の数は1つ以上で且つ長間隔の数および短間隔の数の和の1/3以下であることが好ましい。これにより、より多くの転動体を短間隔に配置でき、転動体通過振動の振幅をより小さくすることができる。
また、上記長間隔を、上記周方向にランダムに配置することが好ましい。これにより、一対の軌道部材の互いに引き寄せられている部分間を転動体が通過する際の、通過音の周波数をより広範囲に分散させて、当該通過音の音圧レベルのピークを下げることができる。その結果、騒音をより低減することができる。
本発明の好ましい実施の形態を添付図面を参照しつつ説明する。
図1は、本発明の一実施の形態にかかる転動装置としての転がり軸受の概略構成を示す断面側面図である。
図1を参照して、転がり軸受1(以下、単に「軸受」という。)は、例えば、自動車のトランスミッションに備えられており、エンジンのクランク軸等の軸2を回転自在に支持しているものである。この軸受1は、例えば、内輪回転型の単列深溝玉軸受からなり、トランスミッションのハウジング3に支持されている。
軸受1は、SUJ2(軸受用鋼)等の高強度耐摩耗材料を含む材料により形成されており、一対の環状の軌道部材としての内輪4および外輪5と、内外輪4,5間に介在する転動体としての複数の玉6と、各玉6を保持するための保持器7とを備えている。
外輪5は、その外周面が、ハウジング3の軸受保持孔8の内周面に嵌め合わされている。外輪5の一端部9は、ハウジング3の環状の段部10に当接しており、軸方向に位置決めされている。外輪5の内周面には、断面円弧状の環状の軌道溝11が形成されている。
内輪4は、その内周面が、軸2の外周面に嵌め合わされている。内輪4の一端部12は、軸2の環状の段部13に当接しており、軸方向に位置決めされている。内輪4の外周面には、断面円弧状の環状の軌道溝14が形成されている。内輪4の軌道溝14と外輪5の軌道溝11とは、互いに向き合っており、これら各軌道溝14,11間に、玉6が転動するための軌道15が区画形成されている。
玉6は、略真円球状に形成されており、軌道15内に配置されている。内輪4(外輪5)の径方向Aに関して、玉6の外周面の一方の頂部16が、外輪5の軌道溝11に受けられており、他方の頂部17が、内輪4の軌道溝14に受けられている。すなわち、玉6の外周面18は、内輪4および外輪5の軌道溝14,11にそれぞれ転がり接触可能に当接しており、内外輪4,5の相対回転に伴い、これらの軌道溝14,11上を転動するようになっている。
保持器7は、内輪4(外輪5)の軸方向の両側方から、各玉6の一部を囲んで保持している。この保持器7は、内輪4(外輪5)の周方向に関して隣り合う玉6同士の相対距離(配置間隔)を一定に維持するようになっている。
図2は、図1のII−II線に沿う軸受1の単品の断面側面図であり、保持器7は省略して示している。図2を参照して、玉6は、例えば16個設けられており、内輪4(外輪5)の周方向Bに沿って並んで配置されている。本実施の形態の特徴とするところは、周方向B(内外輪4,5の相対運動方向)に関する隣り合う玉6同士の配置間隔が、相対的に長い長間隔RLと相対的に短い短間隔RSとを含み、且つ長間隔RLと短間隔RSとが下記式(1)に示す関係を満たしている点にある。
RL/RS=(2n+1)/2n(nは自然数)・・・・・(1)
換言すれば、長間隔RLは、短間隔RSよりも、この短間隔RSの1/2n倍だけ長くされている(RL=RS+1/2nRS)。
なお、周方向Bに関する隣り合う玉6の配置間隔とは、玉6の外周面18と外輪5の軌道溝11との接触部、すなわち玉6の外周面18の一方の頂部16と外輪5の軌道溝11との接触部を基準とした、周方向Bに隣り合う玉6同士の当該周方向Bに沿う間隔として定義することができる。
上記nの値は、例えば、1(n=1)に設定されている。この場合、長間隔RLは、短間隔RSの3/2倍となる(RL=3/2RS)。
また、長間隔RLの数Dは、1つ以上で且つ長間隔RLの数Dおよび短間隔RSの数Eの和F(F=D+E)の1/3以下(1≦D≦F/3)とされている。本実施の形態のように、玉6が16個設けられている場合、長間隔RLの数Dおよび短間隔RSの数Eの和F=16となる。したがって、長間隔RLの数Dの最大値Dmaxは、F/3=16/3≒5.3、すなわち5となる。そこで、本実施の形態では、長間隔RLの数Dを4とし、短間隔RSの数Eを12としている。
そして、長間隔RLと短間隔RSとを、周方向Bにランダムに配置している。なお、「長間隔RLと短間隔RSとを、周方向Bにランダムに配置」とは、長間隔RLおよび短間隔RSの少なくとも一方が、周方向Bの少なくとも一部に不規則に配置されていることを意味するものである。
具体的には、図2の上端に位置する短間隔RSから、周方向Bの一方向(図の時計回り方向)に沿って、順に、長間隔RLが2箇所続けて設けられ、次に短間隔RSが3箇所続けて設けられ、次いで長間隔RLが設けられ、次に短間隔RSが5箇所続いて設けられ、次いで長間隔RLが設けられ、さらに短間隔RSが3箇所続けて設けられている。
上記の概略構成を有する軸受1は、軸2の自重等に起因して、軸2から所定方向G(例えば、図の下方向)にラジアル荷重を受けている。これにより、軸受1の内外輪4,5は、所定方向Gに互いに引き寄せられるように押圧されている。
これにより、内輪4の軸線H1は、わずかではあるが、外輪5の軸線H2に対して、所定方向Gに偏心している。このとき、内外輪4,5間の偏心量は、内外輪4,5の互いに引き寄せられている部分19,20間(図において、内外輪4,5のそれぞれの下端部間)に玉6が介在しているか否かで異なる。
具体的には、図3(A)に示すように、内外輪4,5の互いに引き寄せられている部分19,20間に玉6が介在しているときには、これらの部分19,20間で玉6が突っ張ることにより、内外輪4,5間の偏心量Jは、相対的に小さな値J1になる。
一方、図3(B)に示すように、内外輪4,5の互いに引き寄せられている部分19,20間に玉6が介在していないときには、内外輪4,5間の偏心量Jは、相対的に大きな値J2(J2>J1)になる。
このため、軸の回転に伴い内輪4が回転し、玉6が軌道15内を転動(公転)すると、内外輪4,5の互いに引き寄せられている部分19,20間を、玉6が周期的に通過して、内外輪4,5間の偏心量Jが所定方向Gに沿って周期的に変動し、その結果、軸受1に振動(転動体通過振動)を起こさせるエネルギーが生じる。
しかしながら、本実施の形態によれば、長間隔RLを短間隔RSの(2n+1)/2n倍(例えば、3/2倍)としている。これにより、内外輪4,5の互いに引き寄せられている部分19,20間を、長間隔RLに配置された転動体がn回通過すると、長間隔RLに配置された玉6に起因する転動体通過振動の位相と、短間隔RSに配置された玉6に起因する転動体通過振動の位相とが、半波長ずれる。これにより、転動体通過振動を互いに打ち消し合うことができる。その結果、転動体通過振動を極めて低減することができるとともに、騒音を十分に低減することができる。
しかも、軸受1の振動が十分に低減されているので、例えば、軸2自身が軸受1の振動とは別個に振動を生じていても、軸受1と軸2とが共振することを防止でき、振動低減効果をより発揮することができる。
また、長間隔RLの数Dを、長間隔RLの数Dおよび短間隔RSの数Eの和Fの1/3以下にしていることにより、より多くの玉6を短間隔に配置でき、転動体通過振動の振幅をより小さくすることができる。さらに、軸受1の許容伝達容量をより多くすることができる。
また、長間隔RLを、周方向Bにランダムに配置していることにより、内外輪4,5の互いに引き寄せられている部分19,20間を玉6が通過する際の、通過音の周波数をより広範囲に分散させて、当該通過音の音圧レベルのピークを下げることができる。その結果、騒音をより低減することができる。
なお、本発明は、上記実施の形態に限定されるものではない。例えば、周方向Bに関する長間隔RLと短間隔RSの配置の順番は、図示したものと異なる順番に配置してもよい。この場合、長間隔RLが周方向Bに連続して配置されないようにすることが、より好ましい。これにより、転動体通過振動に伴う騒音の周波数をより広く分散させることができる。また、長間隔RLを周方向Bに規則的に配列してもよいし、短間隔RSを周方向Bに規則的に配列してもよい。
さらに、外輪5を廃止して、玉6をハウジング3の軸受保持孔8の内周面に直接当接させてもよい。この場合、ハウジング3が軌道部材となる。同様に、内輪4を廃止して玉6を軸2の外周面に直接当接させてもよい。この場合、軸2が軌道部材となる。
また、長間隔RLの数Dを、長間隔RLの数Dおよび短間隔RSの数Eの和Fの1/3より多くしてもよい。この場合、少なくとも1つの短間隔RSが設けられる。なお、長間隔RLの数Dの上限は、長間隔RLの数Dおよび短間隔RSの数Eの和Fの1/5以下(D≦F/5)であることがより好ましい。
さらに、長間隔RLの数Dは、上記例示した値より大きくても小さくてもよいし、短間隔RSの数Eは、上記例示した値より多くてもよいし少なくてもよい。同様に、長間隔RLの数Dおよび短間隔RSの数Eの和Fは、記例示した値より大きくても小さくてもよい。
また、自然数nの値は、2以上であってもよい。この場合、n=2とすれば、長間隔RLは、短間隔RSの5/4倍とされる。同様に、n=3,4,5,6・・・とすれば、長間隔RLは、短間隔RSの7/6倍,9/8倍,11/10倍,13/12倍・・・とされる。
さらに、玉6の数は、上記例示した値より多くてもよいし少なくてもよい。また、玉6に代えてころを用いてもよい。さらに、軸受1の材料として、上記例示したもの以外のものを用いてもよい。また、軸受1は外輪回転型の軸受であってもよい。さらに、軸受1を自動車以外の他の一般の装置に適用してもよい。
また、本発明を、ころや玉等の転動体を含む他の転動装置に適用することができる。なお、転動装置とは、玉軸受、円筒ころ軸受、円すいころ軸受、スラスト軸受等の転がり軸受や直動軸受、ボールねじ等、転動体と軌道部材とを備える装置全般を示すものである。
本発明の一実施の形態にかかる転動装置としての転がり軸受の概略構成を示す断面側面図である。 図1のII−II線に沿う軸受の単品の断面側面図であり、保持器は省略して示している。 転動体通過振動について説明するための要部の断面側面図であり、(A)は内外輪間の偏心量が相対的に小さい場合を示しており、(B)は内外輪間の偏心量が相対的に大きい場合を示している。
符号の説明
1 転がり軸受(転動装置)
4 内輪(一対の軌道部材の一方)
5 外輪(一対の軌道部材の他方)
6 玉(転動体)
D 長間隔の数
E 短間隔の数
F 長間隔の数および短間隔の数の和
n 自然数
RL 長間隔
RS 短間隔
B 周方向(相対運動方向)

Claims (3)

  1. 一対の軌道部材間に複数の転動体を介在させる転動装置において、
    上記一対の軌道部材の相対運動方向に関する転動体の配置間隔は、相対的に長い長間隔と相対的に短い短間隔とを含み、
    長間隔RLと短間隔RSとは下記式(1)に示す関係を満たすことを特徴とする転動装置。
    RL/RS=(2n+1)/2n(nは自然数)・・・・・(1)
  2. 請求項1において、上記長間隔の数は1つ以上で且つ長間隔の数および短間隔の数の和の1/3以下であることを特徴とする転動装置。
  3. 請求項1または2において、上記長間隔を、上記周方向にランダムに配置することを特徴とする転動装置。
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