JP2006104897A - 海洋構造物の被覆石および当該被覆石を用いた海洋構造物 - Google Patents

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Abstract

【課題】 海洋構造物の表面に配する自然石の施工性を高め、抜け落ちを確実に防止する。
【解決手段】 自然石10に、適宜の手段で固定したループ状のワイヤロープ14を設ける。海洋構造物の表面に自然石10を配したときにワイヤロープ14が構造物の本体を構成する他の石材21、22の重量によって抑えられる結果、位置ずれや抜け落ちを起こさなくなる。詰石21、22には比較的大きなものもあるし小さな石もあるが、これらがワイヤロープに抱きかかえられ、あるいはワイヤロープの上から圧力(重力加重)を与える。ループ状のワイヤロープを設けた自然石の設置は簡単である。ループを、海洋構造物の表面と反対側に位置させればよいからである。
【選択図】 図2

Description

本発明は、海浜に打ち寄せる波を減衰させる離岸堤(潜堤)や波消ブロック等の海洋構造物の表面に配する自然石の構造、および当該自然石を用いた海洋構造物の構造に関する。
従来、離岸堤(潜堤)や波消ブロック等の海洋構造物は、例えば、図4に示すように構造物本体の本体1の表面に、コンクリートブロック2を積み上げて構築するのが一般である(例えば特開平10−245827号公報)。法面に配するコンクリートブロックは、波のエネルギーを吸収または低減するため人為的な凹凸パターンを表面に形成することが多い(例えば特開平07−173817号公報)。なお、コンクリートブロック2の積み上げは作業クレーン船によって行う。
ところが、近時、自然環境保護の目的や景観の改善等の目的から、コンクリートブロックの使用を出来るだけ避け、自然石を用いて海洋構造物を構築しようとする試みがなされるようになっている。コンクリートブロックを使用した構築物が海浜から見える位置にあると天然の景観を損なうという難点があり、また、コンクリートから海中に流れ出るアルカリ成分によって、生態系に好ましくない影響を与えることが広く知られるようになったからである。例えば、昆布の収量の低下や品質の低下、あるいは魚介類の質的・量的な損失がある。
かかる問題を改善するには、離岸堤や波消ブロック等の海洋構造物の表面に自然石を配すれば良い。自然石を用いれば、景観の問題も生じないし、海藻や魚介類に悪い影響を与えることもないからである。
特開平10−245827号 特開平07−173817号
問題は、断面が台形である海洋構造物の法面(斜面)に自然石を配すると、海水の流動によって自然石が崩れ落ちる点である。法面の傾斜が緩く、波浪が強い時であっても自然石の崩落の心配がない環境に構造物を構築する場合は別としても、台風のように強い波浪エネルギーが直接的に加わる場所では、従来、自然石の利用は困難であるとされた。海洋構造物は、作業の難易度が高くなると施工コストが極度に高くなるし、工期も延びるからである。
そこで、本発明の目的は、海洋構造物の表面に配する自然石の施工性を高めるとともに、その抜け落ちを確実に防止可能とする点にある。
前記目的を達成するため、請求項1に係る海洋構造物の被覆石は、自然石に、適宜の手段で固定したループ状のワイヤロープを設ける。自然石にループ状のワイヤロープを設けると、構造物の表面に自然石を配したときに当該ワイヤロープが海洋構造物の本体を構成する他の石材の重量によって抑えられる結果、位置ずれや抜け落ちを起こさなくなる。海洋構造物の本体を構成する他の石材には比較的大きなものもあるし小さな石もあるが、これらがワイヤロープに抱きかかえられ、あるいはワイヤロープの上から圧力(重力加重)を与えるので、ワイヤロープを備える自然石は波浪によっても動くことが出来ない。
ループ状のワイヤロープを設けた自然石の設置は簡単である。ループを、海洋構造物の表面と反対側に位置させればよいからである。
請求項2は、ワイヤロープを備える自然石を海洋構造物の表面に配するときの技術である。いうまでもなく海洋構造物の表面に配する自然石はすべてワイヤロープを備えていてもよい。しかしながら、経済性や作業性を考慮すれば、ワイヤロープを備える自然石の使用数はすくない方が有利である。
引っ張り等の実験によれば、ループ状のワイヤロープを設けた自然石は、海洋構造物の本体を構成する他の石材の重量によって支えられている場合、引き抜くことも移動変化させることも困難である。上下の石も動かない。このため、上下複数段に積む被覆石は、上下の特定段にぐらつきがない限り、その上または下の段にはループ状のワイヤロープを設けた自然石を配する必要がない。経済性や作業性を考慮する場合には、上下方向に一段おきに請求項1記載の自然石を配しても海洋構造物の表面強度には影響がなく施工コストを低減できる。
請求項1に係る海洋構造物の被覆石は、ループ状のワイヤロープを備えており、海洋構造物の本体を構成する他の石材が被覆石のワイヤロープを抑えるため、表面に露出している自然石(被覆石)の崩落を確実に防止できる。この結果として、従来景観を損ねるという問題があった海洋構造物を自然石を用いて構築することが可能となり、海中の生態系に対するコンクリートの悪影響も防止できる。昆布等の海洋資源を採取しない場所では、自然石以外の石材を利用してもかまわない。
ループ状のワイヤロープを備える被覆石は、クレーン等によって簡単に積み上げることが出来る。このため従来のように組み合わせの整合など、煩雑な位置決め操作の必要もなくなり、施工コストを低減し、工期を短縮することが可能となる。
請求項2に係る海洋構造物によれば、上下方向のすべての段にループ状のワイヤロープを備える被覆石を使用する必要がないため、使用石材のコストを低減できるだけでなく、作業効率が高まり工期をさらに短縮できる利点がある。
図1は、請求項1に係る被覆石を例示するものである。この被覆石10は、石の表面に二つの穴11、12を穿設し、この穴11、12に、ワイヤロープ14の端部をそれぞれ固定して成る。
ワイヤロープ14の端部を穴11、12に固定する手段は限定されない。例えば、接着剤(樹脂アンカー)による固定、いわゆる打込アンカーを介した固定などである。接着剤を利用する方が経済的である。打込アンカーを利用する場合は、難錆の金属材(例えばステンレス)を用いることが望ましい。強度を保証できる場合には樹脂製の打ち込みアンカーを使用してもよい。
穴11、12の穿設位置は、被覆石10に外力がかかったときのバランスを考慮する。例えば、被覆石10の左右の寸法を三等分するよう二つの穴11、12を穿設する等である。
被覆石10の大きさは、例えば2トンクラスの自然石を用いることが多い。この場合、ワイヤロープ14の長さは、例えば3m程度とする。ループ状にしたときの長さが1〜1.5m程度になっていれば、海洋構造物の本体に使用する詰石によってワイヤロープ14には引っ張りに抗する十分な重量付加を与えることが出来る。
ワイヤロープ14の太さは、例えば、2トンクラスの自然石を用いる場合において、直径16mm程度のものを使用することが望ましい。被覆石10の大きさや海の自然環境に応じてワイヤロープ14の太さは適宜増減してかまわない。
接着剤を用いてワイヤロープ14を固定する場合、被覆石10の穴11、12の深さは、2トンクラスの自然石を用いる場合、10cm程度とすることが望ましい。被覆石10が小さな場合や、大きな波浪を受けにくい環境下であれば、穴11、12の深さはもうすこし浅く(例えば7〜8cm)してもよい。
次に、このような被覆石10を用いて海洋構造物を成形する場合を説明する。図2は、離岸堤である。離岸堤は、海岸の侵食を防ぐ目的で沖合100m〜150mの位置に海岸線に平行に設置される。その規模は例えば天端幅が5mで、高さが5m程度である。法勾配は、例えば1:1.33(4/3)である。
構築順序は次の通りである。離岸堤の基礎20は出来ていると仮定し、まず、ワイヤロープ14を固定した被覆石10を予め用意しておき、これを他の石材とともに船に積み込んで現場に運ぶ。
次に、ワイヤロープ(14)をもたない被覆石30をクレーン船で所定の位置に設置し、被覆石30と同じ高さまで詰石21、22を投入する。ワイヤロープ14をもった被覆石10と、ワイヤロープ(14)をもたない被覆石30の大きさは同程度に揃えておくことが望ましい。
詰石21は比較的大きな石材、詰石22は小さな石材(栗石)である。大きな方の詰石21は、自然石でも良いしコンクリートブロックを使用しても良い。その大きさは、被覆石10より大きくても良いし、被覆石10と同程度ないし被覆石10より小さなものでもよい。詰石21、22がループ状のワイヤロープ14に十分な重量付加を与えることが出来ればよいので、詰石21、22そのものの大きさや材質は限定されない。
次に、ワイヤロープ(14)をもたない被覆石30の上にワイヤロープ14をもった被覆石10をおき、被覆石10と同じ高さまで詰石21、22を投入する。このとき、被覆石10のワイヤロープ14は内側(構造物の表面と反対の方向)に向くようにする。ワイヤロープ14の内側に多くの詰石21、22が入り込み、またはワイヤロープ14の上に多くの詰石21、22が乗るようにするためである。
次に、被覆石10の段の上に被覆石30をおき、被覆石30と同じ高さまで詰石21、22を投入する。以後、被覆石10と被覆石30を段ごとに積み、そのたびに詰石21、22を投入して段を形成する。
なお、海洋構造物の上面は他の構造をとり得るので、必ずしもワイヤロープ14をもった被覆石10を配する必要はない。
かかる構造によれば、ワイヤロープ14を備える被覆石10は、ワイヤロープ14が背後の詰石21、22によって支持されるため動くことがない。被覆石10が動かなければ、その上下にある被覆石30も、被覆石10によって拘束されるために動かない。この結果、海洋構造物の法面に自然石(10、30)を配しても、当該海洋構造物は波浪によるダメージを受けることがない。
このように、自然石(10、30)を利用した海洋構造物を、簡単な作業によって構築できるため、従来のコンクリート製の海洋構造物に較べ、はるかに景観性に優れ、自然環境にも好ましい海洋構造物を提供できる。
本発明は、かかる実施形態に限定されない。例えば、被覆石10の大きさは2トンに限定されない。ワイヤロープ14の長さは、被覆石10の大きさに応じて設定する。
またワイヤロープ14をループ状にするためには、必ずしも被覆石10の二箇所に端末を固定する必要はなく、例えば図3に示すように、被覆石10の一箇所に打ち込みアンカー等の固定材17を固定させ、この固定材17にループ状のワイヤロープ18を固定しても良い。19は、固定材17を挿入する穴である。固定材17とワイヤロープ18の連結のさせ方は限定されない。例えば、固定材17の先端部にリング状部材を設けて、当該リング状部材にワイヤロープ18を固定する等である。固定材17は接着によって穴19に固定しても良い。また、被覆石に貫通孔を設けて、環状のワイヤロープを配しても良い。
なお、海洋構造物の本体にコンクリートブロックを使用する場合や大きな詰石を多用する場合は、ワイヤロープが詰石を確実に抱持するよう、ワイヤロープの径を調整可能としても良い。ワイヤロープの円周長を直接的に調整することが難しい場合は、円周長の変更が可能な補助ベルトを利用しても良い。
ワイヤロープは、通常の場合は一本で十分である。ただし、一個の被覆石に複数本のワイヤロープを設けても良い。
本発明に係る被覆石を例示する斜視図である。 本発明に係る海洋構造物を例示する断面図である。 本発明に係る被覆石の他の実施形態を例示する図である。 従来の海洋構造物を例示する断面図である。
符号の説明
10、30 被覆石
11、12、19 穴
14、18 ワイヤロープ
17 固定材
20 離岸堤の基礎
21、22 詰石

Claims (2)

  1. 海洋構造物の表面に配する自然石であって、当該自然石は、適宜の手段で固定したループ状のワイヤロープを備えることを特徴とする海洋構造物の被覆石。
  2. ループ状のワイヤロープを備える請求項1記載の自然石を、上下一段おきに表面に配してなる海洋構造物。
JP2004296634A 2004-10-08 2004-10-08 海洋構造物の被覆石および当該被覆石を用いた海洋構造物 Withdrawn JP2006104897A (ja)

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