JP2006104381A - スルホン酸基含有ナフチレン構造を有するポリアリーレンエーテル系化合物 - Google Patents

スルホン酸基含有ナフチレン構造を有するポリアリーレンエーテル系化合物 Download PDF

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Abstract

【課題】耐熱性、加工性、イオン伝導性にすぐれ、特に寸法安定性に良好な特性を示すイオン伝導膜を提供する新規高分子材料を得ること。
【解決手段】高分子電解質膜として有用なスルホン酸基を導入したポリアリーレンエーテル系化合物として、スルホン酸基を含有するナフタレンジオールをモノマーの少なくとも一成分としてポリマーを合成ことにより、上記目的のものが得られる。
【選択図】なし

Description

本発明は、高分子電解質膜として有用なスルホン酸基含有芳香族ポリアリーレンエーテル系化合物に関するものである。
液体電解質のかわりに高分子固体電解質をイオン伝導体として用いる電気化学的装置の例として、水電解槽や燃料電池を上げることができる。これらに用いられる高分子膜は、カチオン交換膜としてプロトン導電率とともに化学的、熱的、電気化学的および力学的に十分安定なものでなくてはならない。このため、長期にわたり使用できるものとしては、主に米デュポン社製の「ナフィオン(登録商標)」を代表例とするパーフルオロカーボンスルホン酸膜が使用されてきた。しかしながら、ナフィオン膜を100℃以上の条件で運転しようとすると、膜の含水率が急激に落ちるほか、膜の軟化も顕著となる。また、メタノールを燃料とする燃料電池においては、膜内のメタノール透過による性能低下がおこり、十分な性能を発揮することはできない。さらに、現在主に検討されている水素を燃料として80℃付近で運転する燃料電池においても、膜のコストが高すぎることが燃料電池技術の確立の障害として指摘されている。
このような欠点を克服するため、非フッ素系芳香族環含有ポリマーにスルホン酸基を導入した高分子電解質膜が種々検討されている。ポリマー骨格としては、耐熱性や化学的安定性を考慮すると、芳香族ポリアリーレンエーテルケトン類や芳香族ポリアリーレンエーテルスルホン類などの、芳香族ポリアリーレンエーテル化合物を有望な構造としてとらえることができ、ポリアリーレンエーテルスルホンをスルホン化したもの(例えば、非特許文献1参照。)、ポリエーテルエーテルケトンをスルホン化したもの(例えば、特許文献1参照。)等が報告されている。これらは、ポリマーにスルホン化剤を反応させてスルホン酸基を導入するものであるが、スルホン化されたモノマーを用いた重合により直接スルホン化ポリマーを得る方法も報告されている(例えば、特許文献2〜4参照)。しかし、これらの芳香族炭化水素系膜においても、寸法安定性においてはさらに優れた特性を示すものが求められている。
特開平6−93114号公報 米国特許出願公開第2002/0091225号 国際公開第2003/095509号 国際公開第2004/033534号 ジャーナル・オブ・メンブラン・サイエンス(Journal of Membrane Science)、(オランダ)1993年、83巻、P.211−220
本発明の目的は、寸法安定性に優れた特定の構造を持つスルホン酸基含有ポリアリーレンエーテル系化合物により、際立った寸法安定性を有するイオン伝導膜として有用な高分子材料を得ることにある。
本発明者らは鋭意研究を重ねた結果、下記に示すスルホン酸基含有ポリアリーレンエーテル系化合物により、上記目的が達成されることを見いだすに至った。
すなわち、本発明は下記(1)〜(11)により達成される。
(1)分子鎖内に一般式(1)で示される構成成分を有することを特徴とするポリアリーレンエーテル系化合物。
Figure 2006104381
ただし、Xは水素または1価のカチオン種を示し、m、nは0または1であり、m+nは0ではない。
(2)一般式(2)および/または一般式(3)で示される構成成分をさらに含むことを特徴とする第1の発明に記載のポリアリーレンエーテル系化合物。
Figure 2006104381
Figure 2006104381
ただし、Yはスルホン基またはケトン基、XはHまたは1価のカチオン種を示す。Ar’,Ar”は置換基を含んでいても良い2価の芳香族基を示し、上記一般式(1)の構造を与えるスルホン酸基含有ナフチレン構造も含む。
(3)スルホン酸基含有量が、0.3〜3.5meq/gの範囲にあることを特徴とする第1の発明または第2の発明のいずれかに記載のポリアリーレンエーテル系化合物。
(4)第1の発明〜第3の発明のいずれかに記載のポリアリーレンエーテル系化合物を50〜100質量%含むことを特徴とする組成物。
(5)第1の発明〜第3の発明のいずれかに記載の化合物および/または第4の発明に記載の組成物を含有することを特徴とするイオン伝導膜。
(6)第5の発明に記載のイオン伝導膜と電極とを含有することを特徴とする複合体。
(7)第6の発明に記載の複合体を含有することを特徴とする燃料電池。
(8)メタノールを燃料として使用することを特徴とする第7の発明に記載の燃料電池。
(9)第1の発明〜第3の発明のいずれかに記載の化合物を含有することを特徴とする接着剤。
(10)芳香族求核置換反応によりスルホン酸基含有ポリアリーレンエーテル系化合物を重合する際に、一般式(4)で示されるスルホン酸基含有ナフタレンジオールをモノマーの少なくとも1種として使用することを特徴とする第1の発明〜第3の発明のいずれかに記載のポリアリーレンエーテル系化合物の製造方法。
Figure 2006104381
ただし、Xは水素または1価のカチオン種、m、nは0または1であり、m+nは0ではない。
(11)第1の発明〜第3の発明のいずれかに記載の化合物と溶剤を含有する溶液を、キャスト厚が10〜1500μmの範囲となるようにキャストする工程と、キャストした溶液を乾燥させる工程とを含むことを特徴とする第4の発明に記載のイオン伝導膜の製造方法。
本発明のスルホン酸基含有芳香族ポリアリーレンエーテル系化合物により、高温高湿条件下でも優れた寸法安定性を示すとともに、イオン伝導性、耐熱性、加工性に優れた、燃料電池などの高分子電解質として際立った性能を示す材料を提供することができる。また、本発明のスルホン酸基含有ポリアリーレンエーテル系化合物は、メタノール透過性が低いという特徴もあり、ダイレクトメタノール型燃料電池用の高分子電解質膜としても有用である。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明は、芳香環上にスルホン酸基を導入した寸法安定性に優れる特定のポリアリーレンエーテル系化合物により、寸法安定性を高めるとともに、耐熱性、加工性、イオン伝導性にすぐれた、特にイオン伝導膜として有用な高分子材料を提供するものである。すなわち、芳香族求核置換反応によってスルホン酸基含有ポリアリーレンエーテル系化合物を合成する際に、芳香族ジオール系モノマーの少なくとも1成分としてスルホン酸基を含有するナフタレンジオールを用いることにより、本発明に到達したものである。スルホン酸基含有ポリアリーレンエーテルを芳香族求核置換反応により直接合成する手法は、これまで主にジクロロジフェニルスルホンやジフルオロベンゾフェノンなどの電子吸引性モノマーにスルホン酸基を導入することで行われてきた。これは、スルホン酸基が電子吸引性であるために、これらのモノマーの反応性への影響は小さいが、ジオールモノマーの芳香環上へスルホン酸基を導入すると、ジオールモノマーの求核性が低下するため、良質なポリマーが得られないことが影響していたと考えられる。今回、スルホン酸基を含有するナフタレンジオールを用いた芳香族求核置換反応によりポリアリーレンエーテルの合成を検討することにより、これらのモノマーを用いても良好な重合体が得られるとともに、ポリマー特性も高分子電解質膜として優れたものとなることを見いだすに至った。
すなわち、本発明のスルホン酸基含有ポリアリーレンエーテル系化合物は、分子鎖内に下記一般式(1)で示される構成成分を有することを特徴とするポリアリーレンエーテル系化合物である。ポリアリーレンエーテル系化合物とは芳香族系ポリマーにおいてポリマー鎖を構成する芳香環を結合する様式にエーテル結合が含まれている化合物の総称であり、エーテル結合以外の結合が含まれていてもかまわない。本発明においては、各芳香環を連結する結合様式のうちエーテル結合、スルホン結合、スルフィド結合、ケトン結合、直接結合が全体の結合様式の過半を占めるものが好ましいといえる。
Figure 2006104381
上記一般式(1)におけるナフチレン構造は、1,5−ナフチレン、1,6−ナフチレン、1,7−ナフチレン、1,8−ナフチレン、2,6−ナフチレン、2,7−ナフチレンなどの異なるベンゼン環上に結合位置があるものが好ましいが、1,4−ナフチレン、2,3−ナフチレンのように同一のベンゼン環上に結合位置があるものでもかまわない。スルホン酸基が置換している位置は、特に限定されないが、ナフタレン環上に2個まで存在することができ、スルホン酸基が2個存在する場合は、異なるベンゼン環上に1個づつ存在することが好ましい。スルホン酸基は、プロトンがついた酸型の他、ナトリウム、カリウムなどの1価の金属塩やアンモニウム塩などの1価のカチオン種との塩になっていてもかまわない。
本発明のスルホン酸基含有ポリアリーレンエーテル系化合物は、下記一般式(2)または下記一般式(3)で示される構成成分とともにスルホン酸基含有ジオキシナフチレン構造を含む構成成分を含んでいることが好ましい。一般式(2)および一般式(3)の両方の構成成分を含んでいることもさらに好ましい。
Figure 2006104381
Figure 2006104381
ただし、Yはスルホン基またはケトン基、XはHまたは1価のカチオン種を示す。Ar’,Ar”は置換基を含んでいても良い2価の芳香族基を示し、下記一般式(5)で示されるスルホン酸基含有ナフチレン構造であってもかまわない。
Figure 2006104381
上記一般式(3)で示される構成成分は、下記一般式(6)で示される構成成分であることが好ましい。式中のAr’ ’ ’は置換基を含んでいても良い2価の芳香族基を示し、上記一般式(5)で示されるスルホン酸基含有ナフチレン構造であってもかまわない。
Figure 2006104381
また、本発明のスルホン酸基含有ポリアリーレンエーテル系化合物においてスルホン酸基含有ジオキシナフチレン構造の導入量は、ポリアリーレンエーテル化合物全体として必要とされるスルホン酸基量に応じて導入されるので、特にその量が限定されるわけではない。また、例えば上記一般式(2)内で示されるような他のスルホン酸基含有モノマーとの併用も可能であるが、その場合はポリアリーレンエーテル化合物に導入されるスルホン酸基量の20%以上に相当するスルホン酸基をスルホン酸基含有ジオキシナフチレン構造によって導入することで、高分子電解質膜としての特性を特に優れたものとすることができる。ポリアリーレンエーテル化合物に導入されるスルホン酸基量の30%以上に相当するスルホン酸基をスルホン酸基含有ジオキシナフチレン構造によって導入することがより好ましいと言え、40%以上であればさらに好ましいといえる
このほか、本発明のスルホン酸基含有ポリアリーレンエーテル系化合物には、その分子鎖中、すなわちポリマーの主鎖、側鎖、末端基として、熱および/または光により架橋する成分を含有していてもよい。熱架橋性基としては、エチレン基、エチニル基、エチニレン基などの反応性不飽和結合含有成分等が例示されるが、これらに限定されることはなく、熱による反応でポリマー鎖間に新たな結合を形成しうるものであればよい。光架橋性基としては、ベンゾフェノン基、α−ジケトン基、アシロイン基、アシロインエーテル基、ベンジルアルキルケタール基、アセトフェノン基、多核キノン類、チオキサントン基、アシルフォスフィン基、エチレン性不飽和基などを挙げることができる。中でもベンゾフェノン基などの光によりラジカルを発生することのできる基と、メチル基やエチル基などの炭化水素基を有する芳香族基などの、ラジカルと反応することのできる基との組み合わせが好ましい。エチレン性不飽和基を用いる場合には、ベンゾフェノン類、α−ジケトン類、アシロイン類、アシロインエーテル類、ベンジルアルキルケタール類、アセトフェノン類、多核キノン類、チオキサントン類、アシルフォスフィン類などの光重合開始剤を加えておくことが好ましい。
本発明のスルホン酸基含有ポリアリーレンエーテル系化合物としては、スルホン酸基含有量が0.3〜3.5meq/gの範囲にあることが好ましい。0.3meq/gよりも少ない場合には、イオン伝導膜として使用したときに十分なイオン伝導性を示さない傾向があり、3.5meq/gよりも大きくしてもイオン伝導性は頭打ちになる傾向がある。なお、スルホン酸基含有量は、酸性水溶液処理によりスルホン酸基を酸型構造にした後、後に述べる滴定法により決定することができる。ポリマー組成より計算することができる。なお好ましくは1.0〜3.0meq/gである。
本発明のスルホン酸基含有ポリアリーレンエーテル系化合物である上記一般式(1)におけるAr構造を与えるため、下記一般式(7)、一般式(8)で表されるジハロゲン化化合物をモノマーとして含む芳香族求核置換反応を使用することができる。式中、Yはスルホン基またはケトン基、Xは1価のカチオン種、Zは塩素またはフッ素を示す。一般式(7)で表される化合物の具体例としては、3,3’−ジスルホ−4,4’−ジクロロジフェニルスルホン、3,3’−ジスルホ−4,4’−ジフルオロジフェニルスルホン、3,3’−ジスルホ−4,4’−ジクロロジフェニルケトン、3,3’−ジスルホ−4,4’−ジフルオロジフェニルケトン、およびそれらのスルホン酸基が1価カチオン種との塩になったもの等が挙げられる。1価カチオン種としては、ナトリウム、カリウムや他の金属種や各種アミン類等でも良く、これらに制限される訳ではない。一般式(8)で表される化合物としては、2,6−ジクロロベンゾニトリル、2,6−ジフルオロベンゾニトリル、2,4−ジクロロベンゾニトリル、2,4−ジフルオロベンゾニトリル、等を挙げることができる。
Figure 2006104381
Figure 2006104381
上述の芳香族求核置換反応において、上記一般式(7)、(8)以外に使用できる活性化ジフルオロ芳香族化合物やジクロロ芳香族化合物をモノマーとして、4,4’−ジクロロジフェニルスルホン、4,4’−ジフルオロジフェニルスルホン、4,4’−ジフルオロベンゾフェノン、4,4’−ジクロロベンゾフェノン、デカフルオロビフェニル、デカフルオロジフェニルエーテル、デカフルオロベンゾフェノン等が例示されるがこれらに制限されることなく、芳香族求核置換反応に活性のある他の芳香族ジハロゲン化合物、芳香族ジニトロ化合物、芳香族ジシアノ化合物なども使用することができる。また、これらの化合物は単独で使用しても良いが、2種以上の混合物として使用しても良い。これらのうち、一般式(7)および/または一般式(8)で示されるジハロゲン化化合物を用いることが好ましいと言える。
また、上述の一般式(2)で表される構成成分中のAr’および上述の一般式(3)で表される構成成分中のAr”として使用できる芳香族ジオール成分モノマーの例としては、4,4’−ビフェノール、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、3,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)メタン、ビス(4−ヒドロキシ−2,5−ジメチルフェニル)メタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタン、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(3−フェニル−4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、ハイドロキノン、レゾルシン、1,4−ジヒドロキシナフタレン、1,8−ジヒドロキシナフタレン、1,5−ジヒドロキシナフタレン、1,6−ジヒドロキシナフタレン、1,7−ジヒドロキシナフタレン、2,6−ジヒドロキシナフタレン、2,7−ジヒドロキシナフタレン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ケトン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)チオエーテル等があげられるが、この他にも芳香族求核置換反応によるポリアリーレンエーテル系化合物の重合に用いることができる各種芳香族ジオールを使用することもできる。また、これらの芳香族ジオールには、メチル基、ハロゲン、シアノ基、スルホン酸基およびその塩化合物などの置換基が結合していても良い。置換基の種類は特に限定されることはなく、芳香環あたり0〜2個であることが好ましい。これら芳香族ジオールは、単独で使用することができる他、複数の芳香族ジオールを併用することも可能である。
本発明のポリアリーレンエーテル系化合物の重合においては、ハロゲン化芳香族ヒドロキシ化合物を反応性モノマー成分として加えて重合することもできる。この際に用いるハロゲン化芳香族ヒドロキシ化合物も特に制限されることはないが、4−ヒドロキシ−4’−クロロベンゾフェノン、4−ヒドロキシ−4’−フルオロベンゾフェノン、4−ヒドロキシ−4’−クロロジフェニルスルホン、4−ヒドロキシ−4’−フルオロジフェニルスルホン、4−クロロ−4’−(p−ヒドロキシフェニル)ジフェニルスルホン、4−フルオロ−4’−(p−ヒドロキシフェニル)ベンゾフェノン、等を例として挙げることができる。これらは、単独で使用することができるほか、2種以上の混合物として使用することもできる。
また、上述の架橋性末端構造を導入する場合には、本発明のポリアリーレンエーテル系化合物の重合の際に、架橋基含有末端構造を与える一官能性末端封鎖剤を加えることで得ることができる。一官能性末端封鎖剤の例としては、具体的には3−フルオロプロペン、3−フルオロ−1−プロピン、4−フルオロ−1−ブテン、4−フルオロ−1−ブチン、3−フルオロシクロヘキセン、4−フルオロスチレン、3−フルオロスチレン、2−フルオロスチレン、4−フルオロエチニルベンゼン、3−フルオロエチニルベンゼン、α−フルオロ−4−エチニルトルエン、4−フルオロスチルベン、4−(フェニルエチニル)フルオロベンゼン、3−(フェニルエチニル)フルオロベンゼン、3−クロロプロペン、3−クロロ−1−プロピン、4−クロロ−1−ブテン、4−クロロ−1−ブチン、3−クロロシクロヘキセン、4−クロロスチレン、3−クロロスチレン、2−クロロスチレン、4−クロロエチニルベンゼン、3−クロロエチニルベンゼン、α−クロロ−4−エチニルトルエン、4−クロロスチルベン、4−(フェニルエチニル)クロロベンゼン、3−(フェニルエチニル)クロロベンゼン、3−ヒドロキシプロペン、3−ヒドロキシ−1−プロピン、4−ヒドロキシ−1−ブテン、4−ヒドロキシ−1−ブチン、4−ヒドロキシスチレン、3−ヒドロキシスチレン、2−ヒドロキシスチレン、4−ヒドロキシエチニルベンゼン、3−エチニルフェノール、4−エチニルベンジルアルコール、4−ヒドロキシスチルベン、4−(フェニルエチニル)フェノール、3−(フェニルエチニル)フェノール、4−クロロベンゾフェノン、4−フルオロベンゾフェノン、4−ヒドロキシベンゾフェノン、4−メチルフェノール、3−メチルフェノール、2−メチルフェノール、4−エチルフェノール、3−エチルフェノール、4−プロピルフェノール、4−ブチルフェノール、4−ペンチルフェノール,4−ベンジルフェノール等が挙げられる。これらの架橋基含有末端封鎖剤は、単独で使用してもよいが2種以上を混合して使用してもよい。
また、架橋性基を有するモノマーとしての具体例としては、1−ブテン−3,4−ジオール、3,5−ジヒドロキシスチレン、3,5−ジヒドロキシスチルベン、1−ブチン−3,4−ジオール、1−ブテン−3,4−ジオール、2,4−ヘキサジイン−1,6−ジオール、2−エチニルヒドロキノン、2−(フェニルエチニル)ヒドロキノン、5−エチニルレゾルシン、2−ブテン−1,4−ジオール、4,4'−ジヒドロキシスチルベン、1,4−ブチンジオール、1,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)アセチレン、1,2−ビス(3−ヒドロキシフェニル)アセチレン、3,3−ジフルオロプロペン、3,3−ジフルオロプロピン、3,3,3−トリフルオロプロピン、3,4−ジフルオロ−1−ブテン、1,4−ジフルオロ−2−ブテン、3,4−ジフルオロ−1−ブチン、1,4−ジフルオロ−2−ブチン、1,6−ジフルオロ−2,4−ヘキサジイン、3,4−ジフルオロスチレン、2,6−ジフルオロスチレン、2,5−ジフルオロエチニルベンゼン、3,5−ジフルオロエチニルベンゼン、α,α−ジフルオロ−4−エチニルトルエン、α,α,α−トリフルオロ−4−エチニルトルエン、2,4−ジフルオロスチルベン、4,4'−ジフルオロスチルベン、1,2−ビス(4−フルオロフェニル)アセチレン、3,4−ジフルオロ(フェニルエチニル)ベンゼン、3,3−ジクロロプロペン、3,3−ジクロロプロピン、3,3,3−トリクロロプロピン、3,4−ジクロロ−1−ブテン、1,4−ジクロロ−2−ブテン、3,4−ジクロロ−1−ブチン、1,4−ジクロロ−2−ブチン、3,4−ジクロロスチレン、2,6−ジクロロスチレン、2,4−ジフルオロシナミック酸、2,5−ジクロロエチニルベンゼン、3,5−ジクロロエチニルベンゼン、α,α−ジクロロ−4−エチニルトルエン、α,α,α−トリクロロ−4−エチニルトルエン、2,4−ジクロロスチルベン、4,4'−ジクロロスチルベン、1,2−ビス(4−クロロフェニル)アセチレン、3,4−ジクロロ(フェニルエチニル)ベンゼン、4,4‘−ジヒドロキシベンゾフェノン、4,4’−ジクロロベンゾフェノン、4,4‘−ジフルオロベンゾフェノン、4−クロロベンゾフェノン、4−フルオロベンゾフェノン、4−ヒドロキシベンゾフェノン1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、3,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)メタン、ビス(4−ヒドロキシ−2,5−ジメチルフェニル)メタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、4−ベンジルレゾルシン、2,5−ジメチルレゾルシン、4−エチルレゾルシン、等が挙げられる。これらの架橋基モノマーを本発明のポリアリーレンエーテル系化合物の重合の際に加えることで、分子鎖内部に架橋性基を導入することができる。
本発明のスルホン酸基含有ポリアリーレンエーテル系化合物を芳香族求核置換反応により重合する場合、上記一般式(7)、一般式(8)で例示されるような活性化ジフルオロ芳香族化合物及び/またはジクロロ芳香族化合物と芳香族ジオール類を塩基性化合物の存在下で反応させることで重合体を得ることができる。重合は、0〜350℃の温度範囲で行うことができるが、50〜250℃の温度であることが好ましい。0℃より低い場合には、十分に反応が進まない傾向にあり、350℃より高い場合には、ポリマーの分解も起こり始める傾向がある。反応は、無溶媒下で行うこともできるが、溶媒中で行うことが好ましい。使用できる溶媒としては、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ジフェニルスルホン、スルホランなどを挙げることができるが、これらに限定されることはなく、芳香族求核置換反応において安定な溶媒として使用できるものであればよい。これらの有機溶媒は、単独でも2種以上の混合物として使用されても良い。塩基性化合物としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム等があげられるが、芳香族ジオール類を活性なフェノキシド構造にしうるものであれば、これらに限定されず使用することができる。芳香族求核置換反応においては、副生物として水が生成する場合がある。この際は、重合溶媒とは関係なく、トルエンなどを反応系に共存させて共沸物として水を系外に除去することもできる。水を系外に除去する方法としては、モレキュラーシーブなどの吸水材を使用することもできる。芳香族求核置換反応を溶媒中で行う場合、得られるポリマー濃度として5〜50質量%となるようにモノマーを仕込むことが好ましい。5質量%よりも少ない場合は、重合度が上がりにくい傾向がある。一方、50質量%よりも多い場合には、反応系の粘性が高くなりすぎ、反応物の後処理が困難になる傾向がある。重合は、モノマーを反応初期に一括して投入し、ランダム性の高い連鎖分布を持つポリマーにすることが好ましい。重合反応終了後は、反応溶液より蒸発によって溶媒を除去し、必要に応じて残留物を洗浄することによって、所望のポリマーが得られる。また、反応溶液を、ポリマーの溶解度が低い溶媒中に加えることによって、ポリマーを固体として沈殿させ、沈殿物の濾取によりポリマーを得ることもできる。必要に応じて、沈殿生成前に、濾過処理を行っても良い。
また、本発明のスルホン酸基含有ポリアリーレンエーテル系化合物は、後で述べる方法により測定したポリマー対数粘度が0.1以上であることが好ましい。対数粘度が0.1よりも小さいと、イオン伝導膜として成形したときに、膜が脆くなりやすくなる。還元比粘度は、0.3以上であることがさらに好ましい。一方、還元比粘度が5を超えると、ポリマーの溶解が困難になるなど、加工性での問題が出てくるので好ましくない。なお、対数粘度を測定する溶媒としては、一般にN−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミドなどの極性有機溶媒を使用することができるが、これらに溶解性が低い場合には濃硫酸を用いて測定することもできる。
本発明のスルホン酸基含有ポリアリーレンエーテル系化合物は、単体として使用することができるが、他のポリマーとの組み合わせによる樹脂組成物として使用することもできる。これらのポリマーとしては、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステル類、ナイロン6、ナイロン6,6、ナイロン6,10、ナイロン12などのポリアミド類、ポリメチルメタクリレート、ポリメタクリル酸エステル類、ポリメチルアクリレート、ポリアクリル酸エステル類などのアクリレート系樹脂、ポリアクリル酸系樹脂、ポリメタクリル酸系樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレンやジエン系ポリマーを含む各種ポリオレフィン、ポリウレタン系樹脂、酢酸セルロース、エチルセルロースなどのセルロース系樹脂、ポリアリレート、アラミド、ポリカーボネート、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンオキシド、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルイミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリベンズイミダゾール、ポリベンズオキサゾール、ポリベンズチアゾールなどの芳香族系ポリマー、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ノボラック樹脂、ベンゾオキサジン樹脂などの熱硬化性樹脂等、特に制限はない。ポリベンズイミダゾールやポリビニルピリジンなどの塩基性ポリマーとの樹脂組成物は、ポリマー寸法性の向上のために好ましい組み合わせと言える、これらの塩基性ポリマー中に、さらにスルホン酸基、ホスホン酸基等の酸性基を導入しておくと、組成物の加工性がより好ましいものとなる。これら樹脂組成物として使用する場合には、本発明のスルホン酸基含有ポリアリーレンエーテル系化合物は、樹脂組成物全体の50質量%以上100質量%未満含まれていることが好ましい。より好ましくは70質量%以上100質量%未満である。本発明のスルホン酸基含有ポリアリーレンエーテル系化合物の含有量が樹脂組成物全体の50質量%未満の場合には、この樹脂組成物を含むイオン伝導膜のスルホン酸基濃度が低くなり良好なイオン伝導性が得られない傾向にあり、また、スルホン酸基を含有するユニットが非連続相となり伝導するイオンの移動度が低下する傾向にある。なお、本発明の化合物および組成物は、必要に応じて、例えば酸化防止剤、熱安定剤、滑剤、粘着付与剤、可塑剤、架橋剤、粘度調整剤、静電気防止剤、抗菌剤、消泡剤、分散剤、重合禁止剤、などの各種添加剤を含んでいても良い。
上述の酸性基含有塩基性ポリマーとの組成物に使用されるものとしては、下記の式(9)で表される構成成分を含む酸性基含有ポリベンズイミダゾールが好ましい。
Figure 2006104381
式(9)においては、m1は、1から4の整数を表し、R1はイミダゾール環を形成できる4価の芳香族結合ユニットを、R2は2価の芳香族ユニットを表し、R1およびR2はいずれも芳香環の単環であっても複数の芳香環の結合体あるいは縮合環であってもよく、安定な置換基を有していてもよい。Z3は、スルホン酸基および/またはホスホン酸基を表し、その一部が塩構造となっていてもよい。
上記の式(9)で示す構造を含む本発明における酸性基含有ポリベンズイミダゾール系化合物を合成する経路は特には限定されないが、通常は化合物中のイミダゾール環を形成し得る芳香族テトラミン類およびそれらの誘導体よりなる群から選ばれる一種以上の化合物と、芳香族ジカルボン酸およびその誘導体よりなる群から選ばれる一種以上の化合物との反応により合成することができる。その際、使用するジカルボン酸の少なくとも一部としてスルホン酸基やホスホン酸基、またはそれらの塩を含有するジカルボン酸を使用することで、得られるポリベンズイミダゾール中にスルホン酸基やホスホン酸基を導入することができる。スルホン酸基やホスホン酸基を含むジカルボン酸はそれぞれ一種以上組み合わせて使用することが出来るが、スルホン酸基含有ジカルボン酸とホスホン酸基含有ジカルボン酸を同時に使用することも可能である。
ここで、ポリベンズイミダゾール系化合物の構成要素であるベンズイミダゾール系結合ユニットや、スルホン酸基および/またはホスホン酸基を有する芳香族ジカルボン酸結合ユニットや、スルホン酸基もホスホン酸基も有さない芳香族ジカルボン酸結合ユニットや、その他の結合ユニットは、ランダム重合および/または交互的重合により結合していることが好ましい。また、これらの重合形式は一種に限られず、二種以上の重合形式が同一の化合物中で並存していてもよい。
本発明のスルホン酸基含有ポリアリーレンエーテル系化合物およびその樹脂組成物は、押し出し、紡糸、圧延またはキャストなど任意の方法で繊維やフィルムなどの成形体とすることができる。中でも適当な溶媒に溶解した溶液から成形することが好ましい。この溶媒としては、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、N−メチル−2−ピロリドン、ヘキサメチルホスホンアミドなどの非プロトン性極性溶媒や、メタノール、エタノール等のアルコール類から適切なものを選ぶことができるがこれらに限定されるものではない。これらの溶媒は、可能な範囲で複数を混合して使用してもよい。溶液中の化合物濃度は0.1〜50質量%の範囲であることが好ましい。溶液中の化合物濃度が0.1質量%未満であると良好な成形物を得るのが困難となる傾向にあり、50質量%を超えると加工性が悪化する傾向にある。溶液から成形体を得る方法は従来から公知の方法を用いて行うことができる。たとえば、加熱、減圧乾燥、化合物を溶解する溶媒と混和することができる化合物非溶媒への浸漬等によって、溶媒を除去し成形体を得ることができる。溶媒が、有機溶媒の場合には、加熱又は減圧乾燥によって溶媒を留去させることが好ましい。この際、必要に応じて他の化合物と複合された形で繊維状、フィルム状、ペレット状、プレート状、ロッド状、パイプ状、ボール状、ブロック状などの様々な形状に成形することもできる。溶解挙動が類似する化合物と組み合わせた場合には、良好な成形ができる点で好ましい。このようにして得られた成形体中のスルホン酸基はカチオン種との塩の形のものを含んでいても良いが、必要に応じて酸処理することによりフリーのスルホン酸基に変換することもできる。
本発明のスルホン酸基含有ポリアリーレンエーテル系化合物およびその樹脂組成物からイオン伝導膜を作製することもできる。イオン伝導膜を成形する手法として最も好ましいのは、溶液からのキャストであり、キャストした溶液から上記のように溶媒を除去してイオン伝導膜を得ることができる。当該溶液としてはN−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド等の有機溶媒を用いた溶液や、場合によってはアルコール系溶媒等も挙げることができる。溶媒の除去は、乾燥によることがイオン伝導膜の均一性からは好ましい。また、化合物や溶媒の分解や変質を避けるため、減圧下でできるだけ低い温度で乾燥することもできる。また、溶液の粘度が高い場合には、基板や溶液を加熱して高温でキャストすると溶液の粘度が低下して容易にキャストすることができる。キャストする際の溶液の厚みは特に制限されないが、10〜1500μmであることが好ましい。より好ましくは50〜500μmである。溶液の厚みが10μmよりも薄いとイオン伝導膜としての形態を保てなくなる傾向にあり、1500μmよりも厚いと不均一な高分子電解質膜ができやすくなる傾向にある。溶液のキャスト厚を制御する方法は公知の方法を用いることができる。例えば、アプリケーター、ドクターブレードなどを用いて一定の厚みにしたり、ガラスシャーレなどを用いてキャスト面積を一定にして溶液の量や濃度で厚みを制御することができる。キャストした溶液は、溶媒の除去速度を調整することでより均一な膜を得ることができる。例えば、加熱により溶媒除去する場合には最初の段階では低温にして蒸発速度を下げたりすることができる。また、水などの非溶媒に浸漬する場合には、溶液を空気中や不活性ガス中に適当な時間放置しておくなどして化合物の凝固速度や溶媒除去速度を調整することができる。本発明のイオン伝導膜は目的に応じて任意の膜厚にすることができるが、イオン伝導性の面からはできるだけ薄いことが好ましい。具体的には5〜250μmであることが好ましく、5〜100μmであることがさらに好ましく、5〜50μmであることが最も好ましい。イオン伝導膜の厚みが5μmより薄いとイオン伝導膜の取扱が困難となり燃料電池を作製した場合に短絡等が起こる傾向にあり、250μmよりも厚いとイオン伝導膜の電気抵抗値が高くなり燃料電池の発電性能が低下する傾向にある。イオン伝導膜として使用する場合、膜中のスルホン酸基は金属塩になっているものを含んでいても良いが、適当な酸処理によりフリーのスルホン酸に変換することもできる。この場合、硫酸、塩酸、等の水溶液中に加熱下あるいは加熱せずに膜を浸漬処理することで行うことも効果的である。また、イオン伝導膜のイオン伝導率は1.0x10-3S/cm以上であることが好ましい。イオン伝導率が1.0x10-3S/cm以上である場合には、そのイオン伝導膜を用いた燃料電池において良好な出力が得られる傾向にあり、1.0x10-3S/cm未満である場合には燃料電池の出力低下が起こる傾向にある。
本発明のイオン伝導膜は、メタノールを燃料とするダイレクトメタノール型燃料電池にも有用であることが特徴である。平均厚さ50μmの膜を作製し、5Mメタノール水溶液を用いて25℃で測定したメタノール透過速度が7mmol/m2・sec以下の値を示すイオン伝導膜が好ましい。メタノール透過速度は4mmol/m2・sec以下であればさらに好ましく、1mmol/m2・sec以下であればより好ましい。このようなメタノール透過性を示すときに特に優れた発電特性を示すためである。メタノール透過特性は膜厚に依存する場合があるため、メタノール透過性評価は平均厚み50μmの試料を作製して評価しているが、実際に燃料電池用イオン伝導膜として使用する際には、特に膜厚を限定しているわけではない。平均厚み50μmの膜とは、実質上は平均厚み48μmから平均厚み52μmの範囲に入っているものを示すものとする。
本発明のスルホン酸基含有ポリアリーレンエーテル系化合物およびその樹脂組成物からイオン伝導膜において、熱および/または光により架橋する成分を含有している場合は、熱処理および/または光照射処理により架橋構造を導入することによりさらに寸法安定性に優れたものとすることができる。熱架橋させる際の加熱温度は、架橋性ポリアリーレンエーテルの構造、架橋基の種類、架橋基導入量などにより異なるが、通常150〜450℃、好ましくは200〜400℃である。加熱時間は加熱温度や架橋性ポリアリーレンエーテルの構造などにより異なるが、通常0.5〜50時間、好ましくは1〜24時間である。圧力は常圧、減圧、加圧のいずれでもかまわない。ガス雰囲気は空気雰囲気、窒素雰囲気、アルゴン雰囲気のいずれでもかまわない。加熱温度が高い場合には、スルホン酸基は塩の状態にして熱処理することが好ましい。また、光架橋する際に用いる光源としては、特に限定されないが、低圧水銀灯、高圧水銀灯、キセノンランプ、メタルハライド灯等を使用することができる。照射線量はポリマー構造およびその膜厚により異なるが、通常、100〜50000mJ/cm2、好ましくは300〜30000mJ/cm2である。
また、上述した本発明のイオン伝導膜またはフィルム等を電極に接合することによって、本発明のイオン伝導膜またはフィルム等と電極との接合体を得ることができる。この接合体の作製方法としては、従来から公知の方法を用いて行うことができ、例えば、電極表面に接着剤を塗布しイオン伝導膜と電極とを接着する方法またはイオン伝導膜と電極とを加熱加圧する方法等がある。この中でも本発明のスルホン酸基含有ポリアリーレンエーテル系化合物およびその樹脂組成物を主成分とした接着剤を電極表面に塗布して接着する方法が好ましい。イオン伝導膜と電極との接着性が向上し、また、イオン伝導膜のイオン伝導性を損なうことが少なくなると考えられるためである。
上述したイオン伝導膜またはフィルム等と電極との接合体を用いて、燃料電池を作製することもできる。本発明のイオン伝導膜またはフィルム等は、耐熱性、加工性、イオン伝導性および寸法安定性に優れているため、高温での運転にも耐えることができ、作製が容易で、良好な出力を有する燃料電池を提供することができる。また、メタノールを直接燃料とする燃料電池として使用することも好ましい。
以下本発明を実施例を用いて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されることはない。なお、各種測定は次のように行った。
溶液粘度:ポリマー粉末を0.5g/dlの濃度でN−メチルピロリドンに溶解し、30℃の恒温槽中でウベローデ型粘度計を用いて粘度測定を行い、対数粘度ln[ta/tb]/c)で評価した(taは試料溶液の落下秒数、tbは溶媒のみの落下秒数、cはポリマー濃度)。
TGA:島津製作所製熱重量測定計(TGA-50)を用い、アルゴン雰囲気中、昇温速度10℃/minで測定を行った(途中、150℃で30分保持して水分を十分除去する)。
イオン伝導性測定:自作測定用プローブ(テフロン(登録商標)製)上で短冊状膜試料の表面に白金線(直径:0.2mm)を押しあて、80℃95%RHの恒温・恒湿オーブン(株式会社ナガノ科学機械製作所、LH−20−01)中に試料を保持し、白金線間のインピーダンスをSOLARTRON社1250FREQUENCY RESPONSE ANALYSERにより測定した。極間距離を変化させて測定し、極間距離とC−Cプロットから見積もられる抵抗測定値をプロットした勾配から以下の式により膜と白金線間の接触抵抗をキャンセルした導電率を算出した。また、測定プローブを25℃に保った超純水中に浸漬することで同様の測定を行い、水中プロトン導電率も算出した。
導電率[S/cm]=1/膜幅[cm]x膜厚[cm]x抵抗極間勾配[Ω/cm]
スルホン酸基含有量:窒素雰囲気下で一晩乾燥した試料の重量をはかり、水酸化ナトリウム水溶液と撹拌処理した後、塩酸水溶液による逆滴定でイオン交換容量(IEC)を求めた。
メタノール透過速度:25℃に調整した5M(モル/リットル)のメタノール水溶液に24時間浸漬した膜をH型セルに挟み込み、セルの片側に100mlの5Mメタノール水溶液を、他方のセルに100mlの超純水(18MΩ・cm)を注入し、25℃で両側のセルを撹拌しながら、イオン交換膜を通って超純水中に拡散してくるメタノール量をガスクロマトグラフを用いて測定することで算出した(イオン交換膜の面積は、2.0cm2)。
吸水率:減圧乾燥処理した試料の重さを量り取り、80℃の水中に1時間浸漬した。取りだした試料表面の付着水を拭き取った後、重量を測定した。乾燥重量に対する重量増加率を吸水率として求めた。
引張試験:20℃相対湿度65%での引張試験は東洋ボールドウィン製テンシロンUTMIIを、20℃水中での引張試験は東洋ボールドウィン製テンシロンUTMIIIを用いて、大きさを揃えて切り出したフィルム片を用いて測定した。
発電評価:Pt/Ru触媒担持カーボン(田中貴金属工業株式会社TEC61E54)に少量の超純水およびイソプロピルアルコールを加えて湿らせた後、デュポン社製20%ナフィオン(登録商標)溶液(品番:SE−20192)を、Pt/Ru触媒担持カーボンとナフィオンの重量比が2.5:1になるように加えた。次いで撹拌してアノード用触媒ペーストを調製した。この触媒ペーストを、ガス拡散層となる東レ製カーボンペーパーTGPH−060に白金の付着量が2mg/cm2になるようにスクリーン印刷により塗布乾燥して、アノード用電極触媒層付きカーボンペーパーを作製した。また、Pt触媒担持カーボン(田中貴金属工業株式会社TEC10V40E)に少量の超純水およびイソプロピルアルコールを加えて湿らせた後、デュポン社製20%ナフィオン溶液(品番:SE−20192)を、Pt触媒担持カーボンとナフィオンの重量比が2.5:1となるように加え、撹拌してカソード用触媒ペーストを調製した。この触媒ペーストを、撥水加工を施した東レ製カーボンペーパーTGPH−060に白金の付着量が1mg/cm2となるように塗布・乾燥して、カソード用電極触媒層付きカーボンペーパーを作製した。上記2種類の電極触媒層付きカーボンペーパーの間に、膜試料を、電極触媒層が膜試料に接するように挟み、ホットプレス法により130℃、8MPaにて3分間加圧、加熱することにより、膜−電極接合体とした。この接合体をElectrochem社製評価用燃料電池セルFC25−02SPに組み込み、燃料電池発電試験機(株式会社東陽テクニカ製)を用いて発電試験を行った。発電は、セル温度40℃で、アノードおよびカソードにそれぞれ40℃に調整した2mol/lのメタノール水溶液(1.5ml/min)および高純度酸素ガス(80ml/min)を供給しながら行った。
実施例1
3,3’−ジスルホ−4,4’−ジクロロジフェニルスルホン2ナトリウム塩(略号:S−DCDPS)10.4732g(0.021246mole)、2,6−ジクロロベンゾニトリル(略号:DCBN)13.7481g(0.079926mole)、4,4’−ビフェノール15.0714g(0.080938mole)、1,7−ジヒドロキシナフタレン−3−スルホン酸ナトリウム5.3059g(0.0202345mole)、炭酸カリウム16.0804g(0.080938mole)を200ml四つ口フラスコに計り取り、窒素を流した。124mlのN−メチル−2−ピロリドンを入れて、加熱撹拌し、反応温度を195−200℃に上昇させて12時間反応させた。放冷の後、重合液を水中に注いでポリマーをストランド状に沈殿させた。得られたポリマーは、1日新鮮な水に浸漬後、乾燥した。ポリマーの対数粘度は0.67を示した。
ポリマー9gをNMP21mlに溶解し、ホットプレート上ガラス板に約450μm厚にキャストし、フィルム状になるまでNMPを留去した後、水中に一晩以上浸漬した。得られたフィルムは、希硫酸(濃硫酸6ml、水300ml)中で1日浸漬処理して塩をはずした後、純水中に1時間づつ2回浸漬することで酸成分を除去し、乾燥した。本フィルムのイオン伝導性を測定したところ80℃95%RHにおいて0.16S/cm、25℃水中において0.06S/cmの値を示した。本フィルムの熱重量測定による減量開始温度(200℃での試料重量を基準にして測定)は297℃、3%重量減少温度は379℃であった。滴定で求めたIECは1.48を示した。本フィルムを80℃の熱水に1時間浸漬したところ、吸水率は38%を示した。メタノール透過速度は3.7mmol/m2・secを示した。また、本フィルムの引張り試験を行ったところ、20℃、65%RH条件下では弾性率1.47GPa、強度52MPa、20℃水浸漬条件では弾性率0.26GPa、強度32MPa、伸度97%であった。図1に本フィルムのIRスペクトルを示す。
実施例2
S−DCDPS7.9965g(0.016278mole)、DCBN15.8665g(0.09224mole)、4,4’−ビフェノール14.1452g(0.075965mole)、1,7−ジヒドロキシナフタレン−3−スルホン酸ナトリウム8.5368g(0.032556mole)、炭酸カリウム17.2483g(0.12480mole)を200ml四つ口フラスコに計り取り、窒素を流した。130mlのN−メチル−2−ピロリドンを入れて、加熱撹拌し、反応温度を195−200℃に上昇させて15時間反応させた。放冷の後、重合液を水中に注いでポリマーをストランド状に沈殿させた。得られたポリマーは、1日新鮮な水に浸漬後、乾燥した。ポリマーの対数粘度は0.47を示した。
得られたポリマーを実施例1と同様にして製膜してフィルムを得た。本フィルムのイオン伝導性を測定したところ80℃95%RHにおいて0.11S/cm、25℃水中において0.05S/cmの値を示した。本フィルムの熱重量測定による減量開始温度(200℃での試料重量を基準にして測定)は317℃、3%重量減少温度は383℃であった。滴定で求めたIECは1.37を示した。本フィルムを80℃の熱水に1時間浸漬したところ、吸水率は34%を示した。メタノール透過速度は2.8mmol/m2・secを示した。
実施例3
S−DCDPS3.2888g(0.0066948mole)、DCBN10.3640g(0.060252mole)、4,4’−ビフェノール7.6792g(0.041239mole)、1,7−ジヒドロキシナフタレン−3−スルホン酸ナトリウム6.7411g(0.025708mole)、炭酸カリウム10.6407g(0.076989mole)を200ml四つ口フラスコに計り取り、窒素を流した。77mlのN−メチル−2−ピロリドンを入れて、加熱撹拌し、反応温度を195−200℃に上昇させて15時間反応させた。放冷の後、重合液を水中に注いでポリマーをストランド状に沈殿させた。得られたポリマーは、1日新鮮な水に浸漬後、乾燥した。ポリマーの対数粘度は0.37を示した。
得られたポリマーを実施例1と同様にして製膜してフィルムを得た。本フィルムのイオン伝導性を測定したところ80℃95%RHにおいて0.11S/cm、25℃水中において0.04S/cmの値を示した。本フィルムの熱重量測定による減量開始温度(200℃での試料重量を基準にして測定)は309℃、3%重量減少温度は371℃であった。滴定で求めたIECは1.41を示した。本フィルムを80℃の熱水に1時間浸漬したところ、吸水率は30%を示した。メタノール透過速度は2.8mmol/m2・secを示した。
実施例4
DCBN9.2391g(0.05371mole、4,4’−ビフェノール4.5008g(0.02417mole)、1,7−ジヒドロキシナフタレン−3−スルホン酸ナトリウム7.7465g(0.02754mole)、炭酸カリウム8.5371g(0.06177mole)を200ml四つ口フラスコに計り取り、窒素を流した。60mlのN−メチル−2−ピロリドンを入れて、加熱撹拌し、反応温度を195−200℃に上昇させて16時間反応させた。放冷の後、重合液を水中に注いでポリマーをストランド状に沈殿させた。得られたポリマーは、1日新鮮な水に浸漬後、乾燥した。ポリマーの対数粘度は0.24を示した。
実施例5
S−DCDPS9.4855g(0.019309mole)、DCBN13.2853g(0.077236mole)、4,4’−ビフェノール16.0000g(0.085924mole)、1,7−ジヒドロキシナフタレン−3,6−ジスルホン酸二ナトリウム3.8684g(0.010620mole)、炭酸カリウム15.3449g(0.11103mole)を200ml四つ口フラスコに計り取り、窒素を流した。120mlのN−メチル−2−ピロリドンを入れて、加熱撹拌し、反応温度を195−200℃に上昇させて20時間反応させた。放冷の後、重合液を水中に注いでポリマーをストランド状に沈殿させた。得られたポリマーは、1日新鮮な水に浸漬後、乾燥した。ポリマーの対数粘度0.51のポリマーが得られた。
比較例1
S−DCDPS66.9637g(0.13631mole)、DCBN47.6049g(0.27676mole)、4,4’−ビフェノール76.5331g(0.4110mole)、炭酸カリウム65.3256g(0.47265mole)を1リットル四つ口フラスコに計り取り、窒素を流した。535mlのN−メチル−2−ピロリドンを入れて、加熱撹拌し、反応温度を195−200℃に上昇させて5時間反応させた。放冷の後、重合液を水中に注いでポリマーをストランド状に沈殿させた。得られたポリマーは、1日新鮮な水に浸漬後、乾燥した。ポリマーの対数粘度1.63のポリマーが得られた。
得られたポリマーを実施例1と同様にして製膜してフィルムを得た。本フィルムのイオン伝導性を測定したところ80℃95%RHにおいて0.14S/cm、25℃水中において0.06S/cmの値を示した。滴定で求めたIECは1.61を示した。本フィルムを80℃の熱水に1時間浸漬したところ、吸水率は46%を示した。メタノール透過速度は4.4mmol/m2・secを示した。
実施例6
3,3’,4,4’−テトラアミノジフェニルスルホン1.500g(5.389×10-3mole)、2,5−ジカルボキシベンゼンスルホン酸1.445g(5.389×10-3mole)、ポリリン酸(五酸化リン含量75%)20.5g、五酸化リン16.5gを重合容器に量り取る。窒素を流し、オイルバス上ゆっくり撹拌しながら100℃まで昇温 する。100℃で1時間保持した後、150℃に昇温 して1時間、200℃に昇温 して4時間重合した。重合終了後放冷し、水を加えて重合物を取り出し、家庭用ミキサーを用いてpH試験紙中性になるまで水洗を繰り返した。得られたポリマーは80℃で終夜減圧乾燥した。ポリマーの対数粘度は、1.33を示した。本ポリマー1gを10mlのN−メチル−2−ピロリドンに加熱溶解し、実施例1で作製した製膜用溶液と混合した後、キャスト厚みを調整し対外は実施例1と同様にして厚さ50μmのフィルムを作製した。本フィルムのイオン伝導性を測定したところ25℃水中において0.04S/cmの値を示した。メタノール透過速度は2.9mmol/m2・secを示した。
実施例7
3,3’,4,4‘−テトラアミノジフェニルスルホン1.830g(6.575×10-3mole)、3,5−ジカルボキシフェニルホスホン酸1.084g(4.405×10-3mole)、テレフタル酸0.360g(2.170×10-3mole)、ポリリン酸(五酸化リン含量75%)20.5g、五酸化リン16.5gを重合容器に量り取る。窒素を流し、オイルバス上ゆっくり撹拌しながら100℃まで昇温 する。100℃で1時間保持した後、150℃に昇温 して1時間、200℃に昇温 して7時間重合した。重合終了後放冷し、水を加えて重合物を取り出し、家庭用ミキサーを用いてpH試験紙中性になるまで水洗を繰り返した。得られたポリマーは80℃で終夜減圧乾燥した。硫酸を用いて測定したポリマーの対数粘度は、1.07を示した。
本ポリマー1gを用いて実施例6と同様にしてブレンドフィルムを作製した。本フィルムのイオン伝導性を測定したところ25℃水中において0.04S/cmの値を示した。メタノール透過速度は2.6mmol/m2・secを示した。
実施例8
4,4’−ジクロロジフェニルスルホン88.485gg(0.30814mole)、4,4’−ビフェノール13.197g(0.07087mole)、1,7−ジヒドロキシナフタレン−3−スルホン酸ナトリウム62.216g(0.23727mole)、炭酸カリウム48.976g(0.35436mole)を2000ml四つ口フラスコに計り取り、窒素を流した。500mlのN−メチル−2−ピロリドンを入れて、加熱撹拌し、反応温度を195−200℃に上昇させて19時間反応させた。放冷の後、重合液を水中に注いでポリマーをストランド状に沈殿させた。得られたポリマーは、1日新鮮な水に浸漬後、乾燥した。ポリマーの対数粘度は0.51を示した。
本ポリマー4.5gと比較例1で得られたポリマー4.5gを混合し、実施例1と同様にして製膜してフィルムを得た。本フィルムのイオン伝導性を測定したところ80℃95%RHにおいて0.12S/cm、25℃水中において0.06S/cmの値を示した。滴定で求めたIECは1.59を示した。メタノール透過速度は3.2mmol/m2・secを示した。
実施例9
実施例1で作製したフィルムを用いて発電評価を実施したところ、100mAの電流密度において0.34Vと、良好な発電特性が得られた。
実施例10
上述の膜―電極接合体の作製において、ナフィオン溶液の代わりに、実施例1で合成したポリマーの10%N−メチル−2−ピロリドン溶液を用いて膜―電極接合体を作製した。得られたものは、電極のはがれのない良好な接合体であった。
本発明のスルホン酸基含有芳香族ポリアリーレンエーテル系化合物により、イオン伝導性だけでなく耐熱性、加工性および寸法安定性に優れた、高分子電解質材料を提供することができる。これらは、イオン伝導膜として、水素やメタノールを原料として使用する燃料電池や水電解槽に使うことができるが、各種電池用電解質、表示素子、センサー、バインダー類、添加剤などとしても利用することが期待される。
実施例1に記載のフィルムのIRスペクトル。

Claims (11)

  1. 分子鎖内に一般式(1)で示される構成成分を有することを特徴とするポリアリーレンエーテル系化合物。
    Figure 2006104381
    ただし、Xは水素または1価のカチオン種を示し、m、nは0または1であり、m+nは0ではない。Arは置換基を含んでいても良い二価の芳香族基を示す。
  2. 一般式(2)および/または一般式(3)で示される構成成分をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載のポリアリーレンエーテル系化合物。
    Figure 2006104381
    Figure 2006104381
    ただし、Yはスルホン基またはケトン基、XはHまたは1価のカチオン種を示す。Ar’,Ar”は置換基を含んでいても良い2価の芳香族基を示し、上記一般式(1)の構造を与えるスルホン酸基含有ナフチレン構造も含む。
  3. スルホン酸基含有量が、0.3〜3.5meq/gの範囲にあることを特徴とする請求項1または2のいずれかに記載のポリアリーレンエーテル系化合物。
  4. 請求項1〜3のいずれかに記載のポリアリーレンエーテル系化合物を50〜100質量%含むことを特徴とする組成物。
  5. 請求項1〜3のいずれかに記載の化合物および/または請求項4に記載の組成物を含有することを特徴とするイオン伝導膜。
  6. 請求項5に記載のイオン伝導膜と電極とを含有することを特徴とする複合体。
  7. 請求項6に記載の複合体を含有することを特徴とする燃料電池。
  8. メタノールを燃料として使用することを特徴とする請求項7に記載の燃料電池。
  9. 請求項1〜3のいずれかに記載の化合物を含有することを特徴とする接着剤。
  10. 芳香族求核置換反応によりスルホン酸基含有ポリアリーレンエーテル系化合物を重合する際に、一般式(4)で示されるスルホン酸基含有ナフタレンジオールをモノマーの少なくとも1種として使用することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のポリアリーレンエーテル系化合物の製造方法。
    Figure 2006104381
    ただし、Xは水素または1価のカチオン種、m、nは0または1であり、m+nは0ではない。
  11. 請求項1〜3のいずれかに記載の化合物と溶剤を含有する溶液を、キャスト厚が10〜1500μmの範囲となるようにキャストする工程と、キャストした溶液を乾燥させる工程とを含むことを特徴とする請求項4に記載のイオン伝導膜の製造方法。
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