JP2006100150A - 難加工性超伝導合金多芯線の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 少なくとも、合金を構成する元素の複数本の素線を束ねて、合金を構成する元素からなるマトリックス管に挿入し、伸線加工した後切り出し一次スタック線とする工程と、一次スタック線を多数本束ねて、合金を構成する元素または安定化材からなるマトリックス管に挿入し、伸線加工して2次スタック線とする工程と、熱処理により前記合金を構成する元素を合金化させる工程を含むように、難加工性超伝導合金多芯線を製造する。
【選択図】 図2
Description
存在する。ところがそのような新超伝導物質はすべて化合物であり、機械的に脆いという欠点があるため、たとえ超伝導特性が劣っても、依然として、合金系超伝導線材の開発,改良等のための研究は必要とされている。
工、再スタック等の操作を繰り返して、ピン止め中心の金属または合金のサイズや間隔が所望のものとなるまで伸線加工する方法である。この方法によると、一様なサイズと間隔のピン止め中心が得られるため、前記の一般的な方法で得られるNb−Ti合金と比べて、2Tでは大きな臨界電流密度が得られるのである。なお、この方法では析出のための熱処理が不要であるが、超伝導Nb−Ti合金母相は従来と同じく溶解鋳造で製造する必要がある。
Nb−Ti合金より若干低いことも、当時まだTcマージンが重要となる交流応用や冷凍機マグネット応用が存在していなかったため、Nb−Zr合金の開発に不利であった。さらに、Nb−Zr合金は、状態図においてもNb−Ti合金と比較して決定的に不利であった。すなわち、Nb−Zr合金は、高温ではNb−Ti合金と同じくbcc(β)相の全率固溶合金であるが、組成が9at%−81.5at%Zrまた温度が620〜988℃の
領域でZr−richなβ相とNb−richなβ相に2相分離するのである。このZr−rich β相とNb−rich β相は超伝導特性が異なり、それぞれの界面がピン止め中心として作用し、その上に、それぞれのβ相内部でhcp(α)Zr相が析出して磁束線のピン止めに寄与する。そのため、Nb−Ti合金の場合は約400℃での加工および熱処理によってα−Ti相を析出させるのに対して、Nb−Zr合金の場合は、これらβ相を如何に細かく2相分離させるかによってJc特性が主に決定する。ところが、このβ相の2相分離のための熱処理温度はNb−Ti合金の析出熱処理温度より高温であって、安定化材であるCuを複合する場合はこのCuが完全に焼鈍してしまうため、CuとNb−Zr合金の硬さの違いがますます大きくなり、2相混合組織やZr析出相を微細化するために必要なCu/Nb−Zr複合体の伸線加工を困難にさせていた。
すること、また、時効処理はJcを改善するがBc2を低下させ、再冷間加工は再びBc2を改善することが明らかにされた。しかし、V−Ti基合金についても、Nb−Zr合金の場合と同様に、より良い製造方法に関する研究や、人工ピン止め導入技術等の研究に関しては一切報告されていない。
井上廉、太刀川恭治、林浩明,"V−Ti−Ta3元合金の超伝導特性におよぼす材料処理の影響",第33回低温工学研究発表会予稿集, 1985, p.7.
ついて、特注品でない市販品としては当然要求される性質である性能均一性が重要視される場合には、たとえ発生磁場能力が低くても、性能均一性を達成するのに有利な性質である「取り扱いの容易さ」から、新超伝導物質ではなく敢えてNb−Ti合金線材のみが使用されているのが実情である。
の特徴として機械的歪みに対する超伝導特性の劣化が小さいことから、とりわけ大型超伝導マグネット等へ好適に利用できるNb−Zr基合金超伝導多芯線およびV−Ti基合金超伝導多芯線を得ることができる。また、同様の理由から中性子や高エネルギー粒子の照射に対しても超伝導特性の劣化が小さいと予想され、高エネルギー粒子加速器や核融合炉等に利用可能なNb−Zr基合金超伝導多芯線およびV−Ti基合金超伝導多芯線を製造することができる。
に機械的な接合技術を用いた超伝導接続が可能で、永久電流モード運転が必要なMRIや磁気浮上列車用超伝導マグネットへの利用が期待されるV−Ti基合金超伝導多芯線を得ることができる。
(ア)溶解鋳造により作製した合金インゴットを出発材料にすると、固溶体硬化や加工硬化が顕著なため、その線材、特に安定化材であるCuを複合したCu/Nb−Zr基合金線材およびCu/V−Ti基合金線材の製造が困難であること、
(イ)しかしそれらを構成するNb,Zr,V,TiさらにはTaといった各元素は、単体としては原理的に固溶体硬化がなく、また、加工硬化も比較的小さいため、室温で良好な伸線加工性を有すること
に着眼し、鋭意研究を重ねた結果、
(1)これらNb−Zr基合金およびV−Ti基合金の構成元素の単体同士を複合して伸線加工することによって、固溶体硬化および加工効果による難加工性に関する問題を解消できるとともに、
(2) 伸線の途中または最終仕上げ寸法において熱処理することにより、任意の組成を有する合金を拡散生成させ、同時に、必要に応じてその拡散反応を制御することにより未反応物を人工ピン止め中心として残すことが可能なこと
を見出し、この出願の発明を完成させるに至った。
b−Zr基合金については、一般式NbXZr1-Xにおいて式中Xが0.185〜0.91で表される範囲、もしくはこれにTi,V,Taのいずれか1種以上を合計で20at%以下添加する範囲とすることができる。また、V−Ti基合金については、一般式VXTi1-Xにおいて式中Xが0.19〜0.82で表される範囲、もしくはこれにTa,Zrのいずれか1種以上を合計で20at%以下添加する範囲とすることができる。
において生成される組成の異なる2つのbcc相の大きさを小さくし、磁束線のピン止め中心密度を大きくすることが可能となる。ただし、伸線加工の途中に熱処理を行う場合については、この限りではない。
rを、V−Ti合金の場合はTiをそれぞれ効率よく析出させるために、少なくとも熱処理温度は300℃、より好ましくは400℃以上とすることが好ましい。熱処理時間については、結晶粒および組織の粗大化を防ぐために、500時間以内、より好ましくは100時間以内とすることが例示される。さらに、熱処理により任意の組成を有する合金を拡散生成させると同時に、必要に応じて拡散反応を制御し、組織中に未反応物を人工ピン止め中心として残すことも考慮される。
A.材料の硬度について
まず最初は、Nb−Ti基合金多芯線の製造と同様に、伸線加工したNb/Zr単芯複合線を複数本束ね、再び伸線加工を繰り返す方法により、Nb/Zr前駆体多芯線の製造を試みた。すなわち、完全に均一に合金化すると仮定した場合の公称組成がNb−60at%Zrとなるように、外径12.7mm,内径10.3mmのNb管に、直径10.2mmのZr棒を挿入した単芯複合体を、溝ロール、次いでドローベンチによるカセットローラーダイスを用いて伸線加工し、Nb/Zr複合単芯線とした。このNb/Zr複合単芯線は、線径4mmまで
は順調に伸線加工することができたが、加工が進みNb管の径が小さくなるとともに外被Nbが薄くなり、この場合では、線径が4mm以下となったところで外被のNbが破れてし
まった。このような方法では、Nb/Zr前駆体多芯線の製造が困難であることが判明し
た。
伸線加工することができた。しかし、線径を約2mm以下に細くすると外被が裂けてしまい
、伸線加工を続けることはできなかった。これは、Nb/Zr複合単芯体が単芯構造であるため、NbとZrの比を同程度にするとどうしても外被部分が薄くなってしまい、良好な複合加工性が得られないことが原因であると考えられた。
そこで、上記の伸線加工の失敗について検討し、今度は、上記のようにNbとZrを単芯線として伸線加工する方式は採用せず、最初から多数のNbとZrの成分元素素線を一様に分散させて束ねてTaマトリックス管に挿入したスタック線を伸線加工する方式を採用した。
い線径ではカセットローラダイスを用いることで、線径0.82mmまで容易に伸線加工を行うことができた。次いで、これらを241本の短尺線に切り出して束ね、再び外径20mm,内径16mmのTa管に挿入し2次スタック線としたところ、やはり線径が0.82mmになるまで無断
線で伸線加工することができた。図2に、0.82mmに加工した(a)Nb38Zr62および(b)Nb50Zr50の1次スタック線の拡大断面像を示した。また、図3に0.82mmに加工した(a)Nb38Zr62および(b)Nb50Zr50の2次スタック線の低倍率および高倍率拡大断面像を示した。
線径が0.82mmのTa/Nb38Zr621次スタック線に対し、合金化のため900℃で2時間の拡散熱処理を施し、その一部断面を図4に示した。純Nb,Nb-rich bcc(β)相,Z
r-rich bcc相,純Zrの混合組織であることが識別できる。線径が0.82mmの2次スタッ
ク線に対して熱処理する場合については、成分元素素線がより微細化されているため同様の熱処理条件であっても1次スタック線の場合よりも拡散反応が十分に進行し、未反応の純Nbおよび純Zrの割合が小さくなり、ほぼNb-rich β相とZr-rich β相の混合組織となっていることが、当然のこととして予想される。
r-rich bcc相の界面も、同様に、有効な磁束線のピン止め中心として作用することが期
待できる。そこで、たとえば、この一次スタック線の状態で900℃で2時間の熱処理を行えば、図4に示したように、未反応Nbおよび未反応Zrの大きさは約30μm以下となる。この被熱処理一次スタック線を束ねて2次スタック線とし、再度0.82mmまで伸線加工すると、未反応Nbおよび未反応Zrの大きさを数
μmまで縮小・調整することができ、同時にNb-rich bcc相/Zr-rich bcc相の界面密度も増大できるはずである。このようにすることで、人工的に磁束線のピン止め中心を導入することができる。
線径0.82mmのTa/Nb38Zr622次スタック線を、400℃から900℃まで100℃毎の各
温度で2時間保持して合金化のための拡散熱処理を施した。図5に、得られた拡散熱処理試料に30mAの電流を流した際の、4.2Kおよび1.5Kにおける電圧−磁場特性を示した。縦軸は30mAの試料電流を流したときに10mmの電圧タップ間距離に現れる電圧であり、横軸は外部磁場である。磁場が臨界磁場を越えると、超伝導から常伝導に遷移して0Vから有限な電圧が現れる。図中、各拡散熱処理温度につき2つの遷移曲線が示されているが、低磁場側が4.2Kでの、高磁場側が1.5Kでの遷移曲線に相当する。
Ta/Nb38Zr622次スタック線について熱処理温度を700℃または900℃として調べ、図6(a)〜(d)に整理した。(a)および(c)はそれぞれ700℃および900℃で拡散熱処理した場合の臨界温度特性を、(b)および(d)はそれぞれ4.2Kと1.5Kにおける臨界磁場特性を示している。(c)および(d)より、熱処理温度が900℃の場合は、1時間の熱処理時間でNb−Ti合金より1K以上も高い10.7KのTcが得られることがわか
った。また、処理時間が10時間以上の長時間になるとTcおよびBc2がかえって劣化す
ることがわかった。一方、(a)および(b)より、700℃では熱処理時間が長いほど、
即ち48時間熱処理した場合にTcおよびBc2が最も高いが、さらに長時間熱処理すれば900℃で1時間熱処理した場合と同程度のTcおよびBc2が得られることがわかった。
Nb−Zr合金に第三元素(M:Ti,Ta,V)を添加して、多元系超伝導前駆体多芯線を製造した。公称組成の調整は、たとえば、0.82mmΦのNb,Zr,Mの各元素線を合計241本用いるようにし、各元素が一次スタック線において均一に分散されるようにして調整した。具体的には、Nb50Zr40Ti10の場合については、108本のNb元素線
、112本のZr元素線、21本のTi元素線の計241本を、Nb50Zr40V10の場合については、110本のNb元素線、114本のZr元素線、17本のV元素線の計241本を、Nb40Zr40V20の場合については、90本のNb元素線、116本のZr元素線、35本のV元素線の計24
1本を用いるようにし、各元素線が均一に分散するように束ねてそれぞれを外径20mm内径16mmのTa管に挿入して一次スタック線とした。
中性子照射による誘導放射能の半減期が短い元素のみから構成される低誘導放射化超伝導合金材料として、V−Ti合金、およびこれにTaまたはZrを添加した多元系合金が代表的なものとして例示される。そこで、V−Ti2元系合金およびこれにTaを添加した3元系合金超伝導多芯線を製造した。
なわち、V40Ti60では、0.82mmφのV線を83本、0.82mmφのTi線を158本、またV31
Ti60Ta9では同V線を61本、同Ti線を156本、0.82mmφのTa線を24本用意し、それぞれ外径20mm内径16mmのTaマトリックス管に挿入して室温で0.82mmφまで伸線加工した。次いで、これらを再び同サイズのTa管に241本束ねて挿入し、伸線加工して前駆体多
芯線を製造した。いずれも20mmΦから4mmΦまでは溝ロール、それより細い線径ではカセ
ットローラダイスを用いて、0.82mmΦまで伸線加工を施した。図10,11に得られた各組成の前駆体多芯線の断面写真を示す。
の範囲で各2時間の拡散熱処理を施して合金化を行い、その超伝導臨界温度Tcおよび4.2Kと1.8Kでの臨界磁場Bc2を測定して、結果を表1に示した。また、公称組成がV40
Ti60の前駆体線については、700℃で1-48時間の拡散熱処理を施して合金化し、同様の
超伝導特性を測定して表2に示した。なお、TcおよびBc2は、試料電流30mAで4端子
法による電気抵抗の遷移曲線の中点に対応する温度および外部磁界と定義した。
ずれにおいても、構成元素素線間で合金化が生じていることが、これらの合金に特有な超伝導特性が得られていることから明らかである。すなわち、表1および2から、純V(5.44 K)、純Ti(0.4 K)、純Ta(4.47 K)より数Kも高いTcが得られており、V−Ti
基超伝導合金が生成していることが確認された。また、V−Ti基合金はもともとNb−Zr合金と比べてTcが低いので、その分だけ温度を4.2Kから1.8Kまで下げることによるBc2の改善が顕著であり、溶解鋳造で製造したV−Ti基合金と同様の特徴を有
することも判った。
Claims (20)
- 難加工性合金からなる超伝導多芯線の製造において、少なくとも、
合金を構成する元素の複数本の素線を束ねて、合金を構成する元素からなるマトリックス管に挿入し、伸線加工した後切り出し一次スタック線とする工程と、
一次スタック線を多数本束ねて、合金を構成する元素または安定化材からなるマトリックス管に挿入し、伸線加工して2次スタック線とする工程と、
熱処理により前記合金を構成する元素を合金化させる工程
を含むことを特徴とする難加工性超伝導合金多芯線の製造方法。 - 合金を構成する元素が、Nb,Zr,V,Ta,Tiのいずれか1種以上であることを特徴とする請求項1記載の難加工性超伝導合金多芯線の製造方法。
- 予め合金を構成する元素の素線を真空焼鈍しし、素線間の硬さの差を小さくしておくことを特徴とする請求項1または2記載の難加工性超伝導合金多芯線の製造方法。
- 合金を構成する元素Nb,Zr,V,Ta,Tiの素線を、それぞれ850℃、900℃、850℃、1000℃、900℃で真空焼鈍しすることを特徴とする請求項3記載の難加工性超伝導合金多芯線の製造方法。
- 一次スタック線における素線の合計本数を、19以上1000以下とすることを特徴とする請求項1ないし4いずれかに記載の難加工性超伝導合金多芯線の製造方法。
- 熱処理温度を300〜1100℃の範囲とし、熱処理時間を500時間未満とすることを特徴とする請求項1ないし5いずれかに記載の難加工性超伝導合金多芯線の製造方法。
- 熱処理時間を100時間未満とすることを特徴とする請求項6記載の難加工性超伝導合金多芯線の製造方法。
- 熱処理の工程を、伸線加工の途中で少なくとも1回実施することを特徴とする請求項1ないし7いずれかに記載の難加工性超伝導合金多芯線の製造方法。
- 熱処理前の素線の直径を、平均値として、100μm以下とすることを特徴とする請求項1ないし8いずれかに記載の難加工性超伝導合金多芯線の製造方法。
- 熱処理前の素線の直径を、平均値として、10μm以下とすることを特徴とする請求項9記載の難加工性超伝導合金多芯線の製造方法。
- 合金は、平均組成が一般式NbXZr1-X(式中、0.185<X<0.91を示す)で表される合金もしくはこれにTi,V,Taのいずれか1種以上を合計で20at%以下添加した合金であることを特徴とする請求項1ないし10いずれかに記載の難加工性超伝導合金多芯線の製造方法。
- 安定化材として、CuまたはAgを用いることを特徴とする請求項11記載の難加工性超伝導合金多芯線の製造方法。
- 一次スタック線を構成するマトリックス管として、V,TaまたはNb管を用いることを特徴とする請求項11または12記載の難加工性超伝導合金多芯線の製造方法。
- 一次スタック線および/または2次スタック線を構成するマトリックス管として、安定
化材で被覆されたV,TaまたはNb管を用いることを特徴とする請求項11ないし13いずれかに記載の難加工性超伝導合金多芯線の製造方法。 - 熱処理は、少なくとも1回を622℃〜988℃の範囲で行うことを特徴とする請求項11ないし14いずれかに記載の難加工性超伝導合金多芯線の製造方法。
- 合金は、平均組成が一般式VXTi1-X(式中、0.19<X<0.82を示す)で表される合金もしくはこれにTa,Zrのいずれか1種以上を合計で20at%以下添加した合金であることを特徴とする請求項1ないし10いずれかに記載の難加工性超伝導合金多芯線の製造方法。
- 安定化材として、Cuを用いることを特徴とする請求項16記載の難加工性超伝導合金多芯線の製造方法。
- 一次スタック線を構成するマトリックス管として、VまたはTa管を用いることを特徴とする請求項16または17記載の難加工性超伝導合金多芯線の製造方法。
- 一次スタック線および/または2次スタック線を構成するマトリックス管として、安定化材で被覆されたVまたはTa管を用いることを特徴とする請求項16ないし18いずれかに記載の難加工性超伝導合金多芯線の製造方法。
- 熱処理は、少なくとも1回を675℃〜850℃の範囲で行うことを特徴とする請求項16ないし19いずれかに記載の難加工性超伝導合金多芯線の製造方法。
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