JP2006100037A - 蛍光ランプ - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 内面に保護膜6と蛍光体層7とが順次積層され、内部に水銀および希ガスが封入され、両端部に電極8が配置されたガラスバルブ2を備える管壁負荷が0.13W/cm2以上の蛍光ランプ1において、保護膜6の膜厚を0.5〜5.0μmの範囲とし、且つ、保護膜6には少なくとも50wt%のシリカを含有させるとともに、水銀を6〜50μg/cm3の範囲で封入する。
【選択図】 図1
Description
一方、近年、環境に対する意識の高まりから、水銀封入量の低減が望まれている。水銀封入量を低減させる方法としては、保護膜を厚くし、水銀とアルカリ金属との反応をより効果的に抑制することなどが考えられる。
本発明は、上記した課題に鑑み、ランプ光束を低下させずに水銀とアルカリ金属との反応を抑制する保護膜を備えることにより、水銀封入量を減らすことのできる蛍光ランプを提供することを目的とする。
さらに、請求項3記載の本発明に係る蛍光ランプは、請求項1または2記載の蛍光ランプにおいて、前記保護膜は、イットリアを含有する構成を有する。
水銀とアルカリ金属との反応を抑制することができるのは、保護膜の膜厚が従来よりも厚い0.5〜5.0μmの範囲だからであり、水銀がガラスバルブと接触しにくいからである。そして、前記反応が抑制されることによって、水銀消費が少なくなり、ガラスバルブに黒点等が発生しにくくなると、光束維持率が低下しにくくなって、定格寿命を維持することができる。
さらに、保護膜は、シリカを主体として形成されているため、アルミナで形成されたものよりも蛍光体層との接着力が強い。そのため、保護膜が厚くなって亀裂が生じても蛍光体層が剥離しにくく、蛍光体層の剥離によるランプ光束の低下や外観不良が生じにくいため、製造歩留まりが良い。
さらに、本発明の構成を有する蛍光ランプの保護膜にシリカ以外の無機酸化物を含有させる場合は、イットリアが適している。イットリアが含有された保護膜を有する蛍光ランプは、他の無機酸化物が含有された保護膜を有する蛍光ランプよりもランプ寿命が長いからである。
(1)蛍光ランプの構成
1、第1の実施形態
図1(a)および(b)は、それぞれ本発明の第1の実施形態に係るコンパクト形蛍光ランプを示す一部破断側面図、および、図1(a)におけるA−A線に沿った断面平面図である。
ガラスバルブ2は、長さが150mm、内径が10mm、肉厚が1mmのガラス直管4を、ブリッジ5によって内部を連通させ6本接続したものであって、放電路長が690mm、内容積が約60cm3、管壁負荷が0.16W/cm2である。また、ガラスバルブ2は、内面に保護膜6と蛍光体層7とが順次積層され、内部に水銀と希ガスとしてのアルゴンガスとが封入され、両端部に電極8が配置されている。
図2は、本発明の第2の実施形態に係るコンパクト形蛍光ランプを示す一部破断斜視図および破断部分の一部を模式的に示す拡大図である。
本発明の一実施形態に係る蛍光ランプ11は、消費電力が27Wのコンパクト形蛍光ランプであって、図2に示すように、放電路が蛇行するソーダ石灰ガラス製のガラスバルブ12と、当該ガラスバルブ12の一端側に取り付けられた口金13とを備えている。
(2)蛍光ランプの製造方法
第1の実施形態に係る蛍光ランプ1を用いて蛍光ランプの製造方法を説明する。
まず、ガラス直管4の内面に保護膜6および蛍光体層7を形成する。保護膜6は、水とポリエチレンオキサイドとの混合液にシリカを分散させてスラリーを作製し、前記スラリーをガラス直管4内に流し込んで前記ガラス直管4内面に前記スラリーを塗布し、温風エアーで前記スラリーを乾燥させて形成する。蛍光体層7は、青色蛍光体、緑色蛍光体および赤色蛍光体の混合物と、無機酸化物(酸化カルシウム、酸化バリウム、ホウ酸およびピロリン酸カルシウムの混合物)の微粒子からなる結着剤とを混合し、保護膜6の上側に積層塗布して形成する。そして、保護膜6および蛍光体層7を形成したガラス直管4を、焼成炉で約550℃で5分間加熱する。
(3)保護膜の膜厚と水銀封入量とがランプ寿命に及ぼす影響
管壁負荷の高い蛍光ランプの中でも、ガラスバルブの管内径が12.5mm未満の蛍光ランプは、点灯中の温度が極端に高くなる。そこで、ガラスバルブの管内径が12.5mm未満の蛍光ランプと、ガラスバルブの管内径が12.5mm以上の蛍光ランプについて、保護膜6の膜厚と水銀封入量とがランプ寿命に及ぼす影響について検討した。
寿命試験は、本発明品および比較品についてそれぞれ10本ずつの蛍光ランプ1、11を用意し、点灯安定器を用いて電力42Wまたは27W、3時間サイクル(2.75時間点灯、0.25時間消灯)で点灯させ、蛍光ランプ1、11が不点になるまでの時間を測定した。
図3および図4において、「○」は、10本全ての蛍光ランプ1、11が定格寿命である6000時間を超えて点灯したことを示し、「×」は、6000時間を超えない蛍光ランプ1、11があったことを示す。
また、前記範囲であっても、曲線A付近は定格寿命を満たす条件の限界付近であり、実質上大きな効果が望めないため、確実に定格寿命を維持することができた範囲、すなわち図中に斜線で示す保護膜6の膜厚が0.8〜5.0μm、水銀封入量が6〜50μg/cm3の範囲であることがより好ましい。この範囲であれば、水銀封入量が少ないにも拘わらず定格寿命を維持できる蛍光ランプ1を得ることができる。
また、前記範囲であっても、曲線B付近は定格寿命を満たす条件の限界付近であり、実質上大きな効果が望めないため、確実に定格寿命を維持することができた範囲、すなわち図中に斜線で示す保護膜16の膜厚が0.5〜5.0μm、水銀封入量が6〜50μg/cm3の範囲であることがより好ましい。この範囲であれば、水銀封入量が少ないにも拘わらず定格寿命を維持できる蛍光ランプ11を得ることができる。
(4)ランプ寿命についての評価
本発明に係る蛍光ランプ(以下、本発明品という)のランプ寿命を、寿命試験によって評価した。実験は、第1の実施形態に係る蛍光ランプ1をベースに、保護膜6の膜厚に変更を加えた蛍光ランプを種々作製し(図5、No.1〜5参照)、水銀封入量を10mg、3mgおよび1mgとしたときのランプ寿命を評価した。その結果を図5に示す。
まず、第1の実施形態に係る蛍光ランプ1(図5、No.1〜5)についての結果を説明する。図5は、保護膜の膜厚がランプ寿命に及ぼす影響を示す図である。図5における「判定」の欄の評価は、各蛍光ランプ1について上記寿命試験をおこない、10本の蛍光ランプ1が全てが定格寿命である6000時間を超えて点灯していた場合を「○」とし、6000時間を超えずに不点となる蛍光ランプ1があった場合を「×」とした。
比較品は、水銀封入量が1mgのときの平均寿命が3000時間であり、定格寿命の6000時間に満たなかった。原因としては、水銀封入量が少ないため余分な水銀が殆どなく、その上、水銀消費が保護膜6で十分に抑えられていなかったため、発光に寄与する水銀量が不足したと考えられる。
また、シリカで形成した保護膜6を備えた本発明に係る蛍光ランプ1は、保護膜6の膜厚を5.0μmにしても蛍光体層7が剥離することがなかった。一方、アルミナで形成した保護膜6は、蛍光体層7が剥離するため膜厚を1.0μm以上にすることができなかった。
(5)保護膜におけるシリカの含有率がランプ寿命に及ぼす影響
保護膜6におけるシリカの含有率がランプ寿命に及ぼす影響を検討した。上記本実施の形態に係る蛍光ランプ1をベースに保護膜6の組成に変更を加えた蛍光ランプ1を種々作製し、それら蛍光ランプ1の特性を評価した。
図6に示すように、シリカの含有率が50wt%以上の保護膜6を有する蛍光ランプ1(No.6〜12)は、いずれも定格寿命を維持していた。ただし、No.12の蛍光ランプ1は、定格寿命を維持していたものの、比較品の蛍光ランプ1よりもランプ光束が低かったため、「判定」の欄では「△」と評価した。したがって、シリカの含有量は50wt%以上であることが好ましい。シリカの含有量が50wt%以上であれば他の無機酸化物を添加物として加えても、シリカで形成した保護膜6の特徴を生かしながらさらに前記添加物の特性を得ることができる。
膜厚が1.5mmの蛍光ランプ1(No.6、7、8、10、11)において、イットリアが含有された保護膜6を有する蛍光ランプ1(No.7、8、11)は、シリカのみからなる保護膜6を有する蛍光ランプ1(No.6)と同等の平均寿命を有した。したがって、イットリアはシリカと組み合わせて用いる材料として適しているといえる。このような結果は、チタニアが含有された保護膜6を有する蛍光ランプ1(No.10)では得られない効果である。
(6)シリカのBET比表面積が保護膜形成に及ぼす影響
シリカのBET比表面積が保護膜6の形成に及ぼす影響について検討した。実験は、BET比表面積の異なる種々のシリカを用いて保護膜6を形成し、膜厚の均一な保護膜6を形成することができるか否かについて評価した。
また、BET比表面積が25m2/g〜180m2/gのシリカは、分散剤に安定に分散させることができるため、スラリーのシリカ濃度の調整が容易で、膜厚が1〜5μmになるように塗布することができた。また、分散剤として使用するポリエチレンオキサイドの添加量を調整することにより、保護膜6に緻密性や耐熱加工性を付与することができた。
本発明に係る蛍光ランプは、上記本実施の形態に係るコンパクト形蛍光ランプに限定されず、電球形蛍光ランプであってもよい。また、ガラスバルブがグローブ内に収容されていてもよい。さらに、ガラスバルブは、ガラス直管を6本接続した形状のものに限定されず、例えば、ガラス直管を4本接続した形状のものや、U字形ガラス管を2本或いは3本接続した形状のもの、U字形ガラス管を更に折り曲げたいわゆるダブルU形状のもの、スパイラル形状のもの等が考えられる。さらにまた、点灯回路内蔵形蛍光ランプであってもよい。
さらに、本発明に係る蛍光ランプは、外部電極から誘導磁界を発生させランプ内に電力投入する無電極蛍光ランプであってもよい。無電極蛍光ランプは、電極エミッターの消耗がなく、半永久的に使用することのできる環境への負荷の低い蛍光ランプである。しかしながら、内部に水銀蒸気を含み、前記水銀が消費されることにより点灯しなくなるため、長寿命化を実現するためには通常の蛍光ランプと同様に水銀消費量が少ないことが望まれる。本発明の構成は、それに十分応えることができるものである。
(8)その他の変形例
1.保護膜について
本発明に係る保護膜は、スラリー溶媒は、酢酸ブチル、キシレン、メタノール、エタノール、ブタノール、ベンゼン、トルエン、ペンタン、ジオキサン、ヘキサンなど石油系の溶媒を使用して形成してもよい。近年、有機溶媒の使用が制限されるようになり、水を使用した環境にやさしい塗布媒体を使用することが好まれる。そのため、水に水溶性分散剤(ポリエチレンオキサイド、ポリビニルアルコールおよびポリビニルピロリドンなど)混合したものが最も好適である。
2.蛍光体について
本発明に係る蛍光体層には、一般的な蛍光体を使用することができるが、微粒子化或いは球状化された蛍光体を使用してもよい。この場合、保護膜のかさ密度が比較的大きくなるため、蛍光体層の剥離などをより防止することができる。また、近年注目されている数百ナノ〜数ナノの粒径を有するいわゆるナノ粒子蛍光体と呼ばれる微粒子蛍光体を使用することも好ましい。この場合、本発明に係る保護膜の上に前記蛍光体を塗布すると、前記蛍光体が保護膜材料と混合されて発光効率を高く保つため、蛍光体層をある程度厚く塗布することが可能である。
3.ガラスについて
本発明に係るガラスは、加工性の良いソーダライムガラスが好ましいが、ホウケイ酸ガラスやアルミナガラスなどを用いてもよい。この場合、加工性は低下するが、ホウケイ酸ガラスやアルミナガラスは、アルカリ成分が少ないため水銀削減効果は高まる。
4.水銀について
本発明に係る蛍光ランプにおいて水銀を封入する方法としては、ドロッパーによって水銀を滴下する方法、亜鉛やスズとのアマルガム形態にして封入する方法、ディスペンサーによって鉄亜鉛銅水銀合金やチタン水銀を封入する方法、水銀を封入したガラスなどのカプセルを封入する方法などが考えられる。また、水銀の蒸気圧を高温域(50〜80℃)で低く保つことができるビスマス、インジウム、鉛、スズ混合アマルガムも、水銀低封入を実現する手段と考えられる。
2 ガラスバルブ
6 保護膜
7 蛍光体層
8 電極
Claims (4)
- 内面に保護膜と蛍光体層とが順次積層され、内部に水銀および希ガスが封入され、両端部に電極が配置されたガラスバルブを備える管壁負荷が0.13W/cm2以上の蛍光ランプであって、
前記保護膜は、膜厚が0.5〜5.0μmの範囲であり、少なくとも50wt%のシリカを含有し、前記水銀は、6〜50μg/cm3の範囲で封入されていることを特徴とする蛍光ランプ。 - 前記ガラスバルブは、管内径が12.5mm未満であって、前記保護膜は、膜厚が0.8μm以上であることを特徴とする請求項1記載の蛍光ランプ。
- 前記保護膜は、イットリアを含有することを特徴とする請求項1または2に記載の蛍光ランプ。
- 前記シリカは、BET比表面積が25〜180m2/gの範囲であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の蛍光ランプ。
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