JP2006097767A - 自動変速機のオイルポンプ配置構造 - Google Patents

Abstract

【課題】ベルト式無段変速機用のオイルポンプとしてベーンタイプのオイルポンプを適用したとしても、安定した初期吐出圧特性を確保可能な自動変速機のオイルポンプ配置構造を提供すること。
【解決手段】ベルト式無段変速機を収装する変速機ハウジング内に、入力側変速要素の軸心と、ディファレンシャルギヤの軸心と、オイルポンプの軸心とがそれぞれ異なる位置に配置された自動変速機のオイルポンプ配置構造において、オイルポンプをベーンタイプとし、オイルポンプを、入力側変速要素が占有する第１占有円及びディファレンシャルギヤが占有する第３占有円よりもオイルパン側であって、第１占有円とオイルポンプが占有する第２占有円との共通接線より下方であり、且つ第３占有円と前記第２占有円との共通接線より下方に配置した。
【選択図】 図４

Description

本発明は、自動変速機のオイルポンプ配置構造に関する。

従来、オイルポンプの配置構造として、特許文献１に記載の技術が開示されている。この公報には、自動変速機としてベルト式無段変速機が設けられ、オイルポンプはオイルパン内に配置されている。
特開２００４−９２８６５号公報

しかしながら、特許文献１に記載の技術にあっては、登坂路もしくは降坂路において、エンジンを停止し、車両を長時間駐車した場合、オイルパン内の油面変化によってはオイルポンプ自体が油面上側に露出してしまう。ここで、ベーンタイプのオイルポンプを適用した場合には、ベーン自体を油の遠心力によって油圧室内周面に当接させ、これにより液密とすることでポンプ性能を確保している。このとき、オイルポンプ内の油が抜けると、適正なベーン押しつけ力が確保できず、エンジン始動時に安定した初期吐出圧特性を得ることが困難であった。

本発明は、上記問題に着目してなされたもので、ベルト式無段変速機用のオイルポンプとしてベーンタイプのオイルポンプを適用したとしても、安定した初期吐出圧特性を確保可能な自動変速機のオイルポンプ配置構造を提供することを目的とする。

ベルト式無段変速機を収装する変速機ハウジング内に、入力側変速要素の軸心と、ディファレンシャルギヤの軸心と、オイルポンプの軸心とがそれぞれ異なる位置に配置された自動変速機のオイルポンプ配置構造において、オイルポンプをベーンタイプとし、オイルポンプを、入力側変速要素が占有する第１占有円及びディファレンシャルギヤが占有する第３占有円よりもオイルパン側であって、第１占有円とオイルポンプが占有する第２占有円との共通接線より下方であり、且つ第３占有円と前記第２占有円との共通接線より下方に配置されることを特徴とする。

本発明では、ベルト式無段変速の場合、高い圧力が要求されるため、ベーンタイプのオイルポンプを搭載することでポンプ効率を向上できる。このとき、登坂路もしくは降坂路にエンジンを停止し、長時間駐車した場合であっても、オイルポンプが常に油面内に配置されるため、ベーンの押しつけ力を発生する油を確実に確保することができる。よって、初期吐出圧特性を確保することができる。

以下、本発明の自動変速機を実施するための最良の形態を、図面に基づき説明する。なお、以下の説明で用いる図面は発明の思想を明瞭にするための模式図であって、正確な構成を示すものではない。

まず、本実施例における自動変速機の構成を説明する。

［自動変速機の概略］
図１は、本発明の自動変速機を表す概略断面図である。変速機ハウジング１００は、サイドカバー１１０と変速機ケース１２０とトルクコンバータケース１３０とから構成される。変速機ハウジング１００内には、エンジンからのトルクを増幅するトルクコンバータ２００と、発進クラッチを有する前後進切換機構３００と、入出力間で無段変速するベルト式無段変速機構４００と、アイドラギヤ５００と、ディファレンシャルギヤ６００と、を備えている。また、各装置への圧油や潤滑油を供給する機構として、ベーンポンプ７００と、オイルストレーナ７１０と、コントロールバルブユニット７２０と、オイルクーラ７３０（図２参照）と、を備えている。

トルクコンバータ２００は、エンジン出力軸１０に接続されるポンプインペラと、変速機入力軸２０に接続されるタービンランナと、内部の作動油の流れを整えるステータと、高速走行時に直接動力を伝達するためのロックアップクラッチと、から構成される。

前後進切換機構３００は、エンジン側と連結されると共に前進クラッチを有するサンギヤと、後進ブレーキと連結されたキャリヤと、プライマリプーリ４１０と連結されると共に前進クラッチを有するリングギヤと、を有する遊星歯車機構から構成されている。なお、遊星歯車機構は、シングルピニオン型又はダブルピニオン型の遊星歯車としてもよく、特に限定しない。

ベルト式無段変速機構４００は、前後進切換機構３００から入力された回転と一体に回転するプライマリプーリ４１０（可動プーリ４１０ａ及び固定プーリ４１０ｂ）と、駆動輪を所定の減速比で一体に回転するセカンダリプーリ４２０（可動プーリ４２０ａ及び固定プーリ４２０ｂ）と、各プーリの溝間に巻回されたベルト４３０から構成されている。セカンダリプーリ４２０に設けられた、セカンダリプーリ軸３０の端部には出力ギヤ４０が固定され、アイドラギヤ５００に噛み合わされる。なお、プライマリプーリ４１０は、本発明の入力側変速要素に相当する。

アイドラギヤ５００には、ディファレンシャルギヤ６００の２個のピニオンが固定され、これらのピニオンに左右からそれぞれサイドギヤが噛み合わされる。各サイドギヤにはドライブシャフトが連結され、左右の駆動輪を駆動するように構成してある。

ベーンポンプ７００は、ロータと、このロータに偏心して取り付けられるカムリングと、ロータとカムリングにより構成される油室を仕切るベーンと、から構成されている。ベーンはロータの溝にはめ込まれ、その内側はロータ中心軸と各溝に設けられた油路に供給される作動油が、ロータ回転時の遠心力によりベーンをカムリングに押圧する。この構成により、ベーンをスプリングによりカムリングに押圧する構成のものに比べて、部品点数が少なく、また長寿命化が図れる。ロータのトルクコンバータ２００側の端部にはドリブンスプロケット７０１が固定され、変速機入力軸２０と一体に回転するドライブスプロケット５０にチェーン５１を介して連結される。

ベーンポンプ７００の吸入口側にはオイルストレーナ７１０が設けられ、吐出口側にはコントロールバルブユニット７２０が設けられる。コントロールバルブユニット７２０の上面には、複数の電磁制御弁及び各種センサ（油温センサ、液圧センサ等）である電子部品７２１が配置される。

次に、変速機ケース１２０内のベルト式無段変速機構４００と、アイドラギヤ５００と、ディファレンシャルギヤ６００と、ベーンポンプ７００の配置について述べる。

［変速機ケース内の構成］
図２は変速機ケース１２０をサイドカバー１１０側から見た図であり、図３は変速機ケース１２０をトルクコンバータケース１３０側から見た図である。図２、図３中においてベルト式無段変速機構４００、アイドラギヤ５００、ディファレンシャルギヤ６００、ベーンポンプ７００は模式的に円で表現したものである。また、図２、図３に点線で示す円は壁を隔てて逆側に収装された装置を示す。

図２に示すように、ベルト式無段変速機構４００は第１収装室１２１に収装される。ベルト式無段変速機構４００はプライマリプーリ４１０が第１収装室１２１の前方側下部に収装され、セカンダリプーリ４２０が第１収装室１２１の後方側上部に収装される。また、第１収装室１２１の下部は開口しており、各装置を潤滑した潤滑油が開口部よりオイルパン７４０に排出される。

また、図３に示すように第２収装室１２２に、アイドラギヤ５００と、ディファレンシャルギヤ６００とベーンポンプ７００が収装される。

ディファレンシャルギヤ６００は第２収装室１２２の後方側下部に収装される。アイドラギヤ５００は、セカンダリプーリ軸３０に固定された出力ギヤ４０と、ディファレンシャルギヤ６００とに噛み合うように配置される。

［ベーンポンプの配置］
次に、ベーンポンプ７００の配置について詳しく述べる。

ベーンポンプ７００はプライマリプーリ４１０とディファレンシャルギヤ６００との間の下部に配置される。図４は、ベーンポンプ７００の配置範囲について説明する模式図である。各円は変速機ケース１２０の前後方向に平行な平面にプライマリプーリ４１０、ディファレンシャルギヤ６００及びベーンポンプ７００を照射した際に、各回転軸を中心として各装置が円内に収まることができる最小の円をその装置の占有円として仮定し作図したものである。

ベーンポンプ７００は、プライマリプーリ４１０の第１占有円４１１及びディファレンスギヤ６００の第３占有円６０１よりもオイルパン７４０側であって、プライマリプーリ４１０の第１占有円４１１とベーンポンプ７００の第２占有円７０２との共通接線、及びディファレンシャルギヤ６００の第３占有円６０１とベーンポンプ７００と第２占有円７０２の共通接線より下方の斜線部分に配置される。

また上記の条件に加え、ベーンポンプ７００は、第２占有円７０２が第１占有円と第３占有円との両方に接する位置に配置される。

図５はベーンポンプ７００周辺の部分拡大図である。

ベーンポンプ７００とオイルストレーナ７１０は一体に構成され、オイルストレーナ７１０がオイルパン７４０側に配置される。また、ベーンポンプ７００とオイルストレーナ７１０とは、オイルパン７４０に貯留されている作動油に浸漬するように配置される。

コントロールバルブユニット７２０はオイルパン７４０側に配置され、ベーンポンプ７００の吐出口とシール部材６０を介して、変速機ケース１２０内に設けられた油路１２３に接続される。

次に、作用を説明する。

［油圧回路の作用］
エンジンが駆動すると変速機入力軸２０に設けられたドライブスプロケット５０とチェーン５１とを介して駆動力がドリブンスプロケット７０１に伝達されベーンポンプ７００が駆動される。

ベーンポンプ７００が駆動されると、オイルパン７４０に貯溜されている油はオイルストレーナ７１０により異物を取り除いてからベーンポンプ７００に供給される。

ベーンポンプ７００は供給された油に油圧を発生させ、コントロールバルブユニット７２０に供給する。

コントロールバルブユニット７２０では油の油圧を調節し、各装置に作動油を供給する。

オイルクーラ７３０は、コントロールバルブユニット７２０から作動油として各装置に供給されなかった油や、オイルパン７４０に貯溜された油を吸入して、オイルクーラ７３０の吸入口に設けられたフィルタにより異物を取り除き、オイルクーラ７３０内の油路に設けられた冷却水路により油を冷却した後に、潤滑油として各装置に供給される。

［駆動系の作用］
トルクコンバータ２００はエンジンから伝達された駆動力を、低速時にはトルクを増大し、また高速時にはロックアップクラッチを締結して、前後進切換機構３００に伝達する。

前後進切換機構３００では、前進時には前進クラッチがサンギヤ及びリングギヤを一体に締結し入力された回転をそのまま出力する。一方、後進時には後進ブレーキが、キャリヤを変速機ケース１２０に固定し入力された回転を逆回転に減速して出力する。

ベルト式無段変速機構４００では、プライマリプーリ４１０とセカンダリプーリ４２０の可動プーリ背面に、それぞれ油圧によって溝幅を変更するシリンダ室が設けられており、ベルト４３０を押圧する回転軸方向の推力を制御することでベルト４３０の有効巻き付き径を変更し、無段階に変速する。

ベルト式無段変速機構４００で変速された駆動力は、出力ギヤ４０、アイドラギヤ５００、ディファレンシャルギヤ６００を介して駆動輪に伝達される。

［傾斜時の変速機ケース内の油面］
図６は、車両が登坂路もしくは降坂路上にあるときの変速機ケース１２０内の油面状態を示した図である。なお、図中の油面９００は車両が水平状態のときの油面を示し、油面９０１は車両の前方が上昇して傾いたときの油面を、油面９０２は車両の後方が上昇して傾いたときの油面を示す。

車両の前方が上昇して傾くと、油面９０１に示すように変速機ケース１２０内の前方側では相対的に油面が下降し、後方側では相対的に油面が上昇する。逆に車両の後方が上昇して傾くと、油面９０２に示すように変速機ケース１２０内の前方側では相対的に油面が上昇し、後方側では相対的に油面が下降する。

本実施例におけるベーンポンプ７００が配置される位置は、変速機ケース１２０の前後方向略中央部で、かつオイルストレーナ７１０の上方近傍に配置されるので、車両が前後に傾いた場合でもベーンポンプ７００は油の中に浸漬している。

次に、本実施例の自動変速機のオイルポンプ配置構造の効果を説明する。

（１）ベーンポンプ７００は、プライマリプーリ４１０の第１占有円４１１及びディファレンスギヤ６００の第３占有円６０１よりもオイルパン７４０側であって、プライマリプーリ４１０の第１占有円４１１とベーンポンプ７００の第２占有円７０２との共通接線、及びディファレンシャルギヤ６００の第３占有円６０１とベーンポンプ７００と第２占有円７０２の共通接線より下方に配置されるので、車両が前後に傾斜した場合においてもベーンポンプ７００周辺の油面高さの変化は小さい。したがって、車両が傾斜した場合においてもベーンポンプ７００は、油に浸漬しなくなる可能性を低減できる。よって、エンジン停止時に車両が傾斜していても、ベーンポンプ７００のロータ内に油が存在するので、ベーンポンプ７００の作動初期においてもベーンを押圧することができ、エンジン始動時に安定した初期吐出圧特性を得ることができる。ゆえに、各装置の初動を迅速に行うことができ、車両の迅速な発進性を確保できる。

（２）ベーンポンプ７００の第２占有円７０２が、プライマリプーリ４１０の第１占有円４１１及びディファレンシャルギヤ６００の第３占有円６０１の両方に接する位置にベーンポンプ７００を配置したので、自動変速機構の構成をコンパクトにすることができる。

（３）オイルストレーナ７１０は、ベーンポンプ７００と一体に形成されるので、上下方向をコンパクトに形成できる。したがって、自動変速機構の上下方向の構成をコンパクトにすることができ、また軽量化を図ることができる。

（４）オイルストレーナ７１０は、ベーンポンプ７００と一体に形成されるので、オイルストレーナ７１０とベーンポンプ７００との間に油路を設ける必要がなく、効率良く油を吸入することができる。よって、ベーンポンプ７００の高効率化を実現でき、燃費の向上を実現できる。

（５）コントロールバルブユニット７２０をオイルパン７４０側に配置したので、ベーンポンプ７００とコントロールバルブユニット７２０とをつなぐ油路を短く形成できる。したがって、油路内での油圧損失を低減できるので、ベーンポンプ７００の高効率化を実現でき、燃費を向上させることができる。

以上、本発明の自動変速機を実施例に基づき説明してきたが、具体的な構成については、これらの実施例に限られるものではなく、特許請求の範囲の各請求項に係る発明の要旨を逸脱しない限り、設計の変更や追加は許容される。

実施例１に係る、自動変速機を表す概略断面図である。 実施例１に係る、変速機ケースをカバーケース側から見た図である。 実施例１に係る、変速機ケースをトルクコンバータケース側から見た図である。 実施例１に係る、ベーンポンプの配置範囲について説明する模式図である。 実施例１に係る、ベーンポンプ周辺の部分拡大図である。 実施例１に係る、車両が前後方向に傾いた場合の変速機ケース内の油面状態を示した図である。

符号の説明

１００ 変速機ハウジング
１２０ 変速機ケース
４００ ベルト式無段変速機構
４１０ プライマリプーリ
６００ ディファレンシャルギヤ
７００ ベーンポンプ
７１０ オイルストレーナ

Claims (3)

1. ベルト式無段変速機を収装する変速機ハウジング内に、入力側変速要素の軸心と、ディファレンシャルギヤの軸心と、オイルポンプの軸心とがそれぞれ異なる位置に配置された自動変速機のオイルポンプ配置構造において、
   前記オイルポンプをベーンタイプとし、
   前記オイルポンプを、入力側変速要素が占有する第１占有円及びディファレンシャルギヤが占有する第３占有円よりもオイルパン側であって、前記第１占有円と前記オイルポンプが占有する第２占有円との共通接線より下方であり、且つ前記第３占有円と前記第２占有円との共通接線より下方に配置されることを特徴とする自動変速機のオイルポンプ配置構造。
2. 請求項１に記載の自動変速機のオイルポンプ配置構造において、
   前記第２占有円を、前記第１占有円及び第３占有円の両方に接する位置に配置したことを特徴とする自動変速機のオイルポンプ配置構造。
3. 請求項１又は請求項２に記載の自動変速機のオイルポンプ配置構造において、
   自動変速機の制御油圧を出力するコントロールバルブユニットを前記オイルパン側に配置すると共に、
   前記オイルポンプとオイルストレーナとを一体に構成したことを特徴とする自動変速機のオイルポンプ配置構造。
   

Images