JP2006097142A - 制電作業服 - Google Patents

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Abstract

【課題】 低発塵、制電性に優れたクリーンルーム内での作業服等として好適な制電作業服の提供を課題とするものであって、更に詳しくには繰返し着用、洗濯操作によっても制電特性の劣化が少ない制電作業服の提供を課題とするものである。
【解決手段】 導電性ポリエステルマルチフィラメント糸が経糸及び/又は緯糸として5mm以上30mm以下の間隔で規則的に配置されてなり、第四級アンモニウム塩成分又はホスホニウム塩成分を含み、且つ、アクリル酸エステル誘導体やアクリル酸アミド誘導体などから選択される少なくとも一種類を含む重合体で表面処理されてなるポリエステル織物を少なくとも一部に用いて縫製された作業服であって、前記ポリエステル織物の初期の表面抵抗率が1×107Ω/□以上1×1011Ω/□以下であり、JIS L0217 103法による洗濯処理50回実施後の表面抵抗率が1×1010Ω/□以上1×1013Ω/□である制電作業服。
【選択図】 なし

Description

本発明は半導体製造など電気電子機器製造業における作業に好適な制電作業衣に関するものであり、更に詳しくには自己発塵が少なくフィルター機能を有し、しかも半導体製造等の品質管理において最も管理すべき静電気帯電を極小に留める、クリーンルーム内での作業着として好適な制電作業服に関するするものである。
従来から半導体製造現場や検査現場での作業服として自己発塵が少なく耐久性に優れたポリエステル高密度織物からなる制電作業服が広く利用されている。しかしながらポリエステルなどの合成繊維は一般に電気の絶縁体であり表面抵抗率は1×1015〜1×1017Ω/□程度と非常に大きく、帯電し易い性質を有している。該問題を解決するために織物の裏面などに蒸着若しくはスパッタリングなどの方法によって金属の薄膜を形成させ静電気の帯電を防止する方法等が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
特開平6−235169号公報
金属薄膜を織物の少なくとも一方に形成することによって帯電を防止することが可能であるが、繰返し着用や洗濯操作等による金属薄膜の剥離に伴う帯電防止性能の劣化や加工コストが高く生地値が高くなる等の問題がある。また金属薄膜の剥離による自己発塵の問題も否めずクリーンルーム内で着用する作業服としては好適なものとは言えない。
また複合紡糸法を用い、吸放湿性に優れたポリエステル共重合体とポリエチレンテレフタレートを組合せ、前者で吸湿性を与え、後者で力学的強度を与えた糸条を用いたポリエステル作業服が提案されている(例えば、特許文献2参照。)。該方法によれば疎水性合成繊維である従来のポリエステルと比較し吸湿効果を向上させているため、表面の水の効果により帯電をある程度軽減できるものの帯電は分極によって生じるものであるため、親水性繊維であっても影響を皆無にすることができない。また複合紡糸法によるポリエステル繊維は一般に強度的に弱く、発塵の一要因になる可能性も否めない。
特開平10−8347号公報
またカーボンや低融点金属を組合せた導電性繊維を織物の経糸及び/又は緯糸の少なくとも一部に使用した導電性ポリエステル織物が数多く提案上市されている(例えば、特許文献3参照。)。該方法を用いれば効果的に帯電を防止することが可能であるが、該導電性繊維の配列・配置を緻密にしなければ十分な効果が期待できず価格が高価なものとなる他、布帛の力学的強度が実用強度に耐え得るものにはならない。また配列・配置を少なく留めると帯電防止効果に乏しく制電作業服として好ましいものにはならない。
特開昭60−173140号公報
本発明は掛る問題を解決し低発塵、制電性に優れたクリーンルーム内での作業服等として好適な制電作業服の提供を課題とするものであって、更に詳しくには繰返し着用、洗濯操作によっても制電特性の劣化が少ない制電作業服の提供を課題とするものである。
上記のような課題を解決するために発明者らが鋭意検討を重ね、本発明に到達した。即ち、本発明は以下の構成よりなる。
1. 導電性ポリエステルマルチフィラメント糸が経糸及び/又は緯糸として5mm以上30mm以下の間隔で規則的に配置されてなり、第四級アンモニウム塩成分又はホスホニウム塩成分を含み、且つ、アクリル酸エステル誘導体、アクリル酸アミド誘導体、ビニルエーテル誘導体、ビニルピリジン誘導体、ポリアミンポリマー、カチオン性ポリマー、ウレタン系ポリマーから選択される少なくとも一種類を含む重合体で表面処理されてなるポリエステル織物を少なくとも一部に用いて縫製された作業服であって、前記ポリエステル織物の初期の表面抵抗率が1×107Ω/□以上1×1011Ω/□以下であり、JIS L0217 103法による洗濯処理50回実施後の表面抵抗率が1×1010Ω/□以上1×1013Ω/□であることを特徴とする制電作業服。
2. ポリエステル織物の初期の表面電位が±0V以上+100V以下であり、JIS L0217 103法による洗濯50回処理後の表面電位が±0V以上+200V以下であることを特徴とする上記第1に記載の制電作業服。
3. ポリエステル織物が、単糸繊度が0.3デシテックス以上5.0デシテックス以下のポリエステルマルチフィラメントを用いてなり、JIS L0217 103法による洗濯処理50回実施後の引裂強度保持率が洗濯未処理に対して75%以上を保持することを特徴とする上記第1又は第2に記載の制電作業服。
4. 制電作業服のJIS B9923 光散乱式自動粒子計数器法による粒径0.5μm以上の発塵量が、JIS L0217 103法による洗濯処理50回実施後において3500個/m3以下であることを特徴とする上記第1〜第3のいずれかに記載の制電作業服。
本発明の制電作業服は導電性ポリエステルマルチフィラメント糸を経糸及び/又は緯糸として均等に配置した織物によって構成されており、該織物表面より積極的に除電させると共に織物表面をカチオン界面活性剤の効果によりカチオン化することによって電気的中和を促し制電性を向上させることができる。この効果によって静電気によるハイテク機器の誤動作や半導体製品等の破壊等を防止することが可能となる他、自己発塵が少ないためコンタミネーションの問題等が少なくなるため、製品品質を向上させることができる。
本発明の制電作業服は経糸及び/又は緯糸にポリエステル系導電性フィラメントを配置したポリエステル系合成繊維マルチフィラメント糸を主体とする高密度織物で構成され、織物表面をカチオン化することによってマイナス帯電し易いポリエステル繊維表面の電気的中和を促進し制電性を向上させるものである。
本発明の制電作業服はポリエステル織物を縫製して得られるものである。ポリエステル織物に用いるポリエステル繊維としてはポリエステルマルチフィラメント、ポリエステルステープルファイバーを用いた紡績糸等が例示できるが、短繊維脱落等の問題が少ないポリエステルマルチフィラメントの使用がより好ましい。ポリエステル繊維はエチレングリコール、トリメチレングリコール、1,4−ブタンジオール等のジオール成分とテレフタル酸、イソフタル酸、5−ナトリウムスルフォイソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸成分とをエステル交換反応、重縮合させて得られたエステルが好ましく使用される。ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のホモポリマー、共重合ポリマー、ブレンドポリマー等が例示される。また必要に応じて二酸化チタン、硫酸バリウム、二酸化珪素等の艶消剤や酸化防止剤、平滑剤、帯電防止剤、その他を含有させてもよい。また繊維断面も公知のいずれの断面を採用することが可能であるが、好ましくは中実丸断面の採用が堅牢度や力学的強度の点で好ましい。
導電性ポリエステルマルチフィラメント糸は溶融複合紡糸法により低融点金属やカーボン微粒子等の電気の良導体を単独若しくは繊維形成性樹脂マトリックス中に分散させた後、ポリエステル系樹脂と芯鞘、偏心芯鞘や貼合せ、多層貼合せ等の断面としたものが好ましく使用される。例えばカネボウ合繊社のベルトロン(R)やクラレ社のクラカーボ(R)等が例示される。
導電性ポリエステルマルチフィラメント糸の配置としては経糸及び/又は緯糸に5mm以上30mm以下の間隔で規則的に配置されていることが好ましい。より積極的に除電するためには経糸緯糸双方に5mm〜10mm程度の間隔で配置することが好ましい。導電性ポリエステルマルチフィラメント糸は従来のポリエステルマルチフィラメント対比で強度的に弱いため、必要以上に用いると引裂強度など織物の力学的性能が低下する他、価格が割高であり製品コストが高くなり、5mm未満の間隔で用いるのは好適とは言えない。また30mmを超過する間隔では除電効果に乏しくなり制電効果を与えづらくなるのであまり好ましくない。
また織物の表面抵抗率については初期値として1×107Ω/□以上1×1011Ω/□以下、JIS L0217 103法による洗濯処理50回実施後の数値として、1×1010Ω/□以上1×1012Ω/□以下が好ましい。一般にポリエステル100%織物は1×1015Ω/□〜1×1017Ω/□程度の高抵抗値を示すものであり、表面をカチオン化しマイナス荷電を中和させることが必要となる。表面をカチオン化させるには第四級アンモニウム塩成分又はホスホニウム塩成分を含み、アクリル酸エステル誘導体、アクリル酸アミド誘導体、ビニルエーテル誘導体、ビニルピリジン誘導体、ポリアミンポリマー、カチオン性ポリマー、ウレタン系ポリマーから選択された少なくとも一種類を含む重合体でポリエステル繊維表面の処理を行なうが、特に第四級アンモニウム塩を含む重合体を用い、複数の官能基を持つ架橋剤、例えばジアミン化合物やジエポキシ化合物、3官能エポキシ化合物、4官能エポキシ化合物などを併用する系での処理が好ましく、特にジエポキシ化合物が耐久性や価格、取扱性など汎用性の面から好ましい。また第四級アンモニウム塩及びホスホニウム塩は制電特性向上以外に抗菌効果等も期待でき、使用するに好ましい。この表面処理はパッドスチーム法、パッドドライ法、吸尽法等々の公知の方法を用いて処理することができる。該処理によって該重合体が架橋結合を形成し優れた制電特性を長期間持続させることができるのである。表面抵抗率が1×107Ω/□未満の低表面抵抗率は疎水性を示すポリエステル織物では非常に得難く、1×1013Ω/□を著しく超過する高表面抵抗率では静電気による精密機器の誤動作や半導体など製品の破壊等を招く可能性が高くなり好ましい領域でない。
アクリル酸エステル誘導体とはジエチルアミノエチルメタクリレートなど第3アミノ基を有するアルコールのメタクリル酸エステルなどが例示され、アクリル酸アミド誘導体とはメラミンモノメチレンアクリル酸アミド、アクリル酸アミドメチレンユリアなど、ビニルエーテル誘導体とはポリアミノエチルビニルエーテル、ビニルシクロヘキシルエーテルとジエチルアミノビニルエーテルの共重合物など、ビニルピリジン誘導体とはポリー2−ビニルピリジン、2−ビニルピリジンとスチレンの共重合物など、ポリアミンポリマーとはポリエチレングリコールポリアミン、ポリオール・クロロヒドリン、ポリアミドポリイミダゾリンなど、カチオン性ポリマーとはメラミン・ホルムアルデヒド樹脂、アミノトリアジンアルデヒド樹脂など、ウレタン系ポリマーとはポリエーテルジオール、ポリエーテルトリオール、ポリエーテルポリオールなどにトリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネートなどを反応させたものなどがそれぞれ例示される。これらの誘導体やポリマーは第四級アンモニウム塩化若しくはホスホニウム塩化し処理することが好ましい。
また織物の初期の表面電位が±0V以上+100V以下、JIS L0217 103法による洗濯50回処理後の表面電位が±0V以上+200V以下であることが好ましい。表面電位についても繰返し洗濯により性能低下が見られるが、+200Vを超過する範囲では着用時の不快感を伴うものではないが、精密機器の誤動作や半導体などの製品破壊を引き起こす可能性が高くなり好ましくない。また±0V未満の範囲はポリエステルを主体とする素材、取り分け繰返洗濯処理を施した値として現実には得られ難い数値である。
また本発明の制電作業服はポリエステル織物を縫製してなるものであるが、該ポリエステル織物に用いるポリエステルマルチフィラメントの単糸繊度は0.3デシテックス以上5.0デシテックス以下、より好ましくは0.5デシテックス以上3.5デシテックス以下とすることが自己発塵抑制や作業者自身から発生する老廃物や塵埃を阻止する(フィルター機能)上で好ましい。単糸繊度が0.3デシテックス未満となれば繰返し洗濯や着用による強度低下があるのであまり好ましくなく、逆に5.0デシテックスを超過する範囲ではフィルター機能が満足なものとはならずクリーンルーム内の塵埃による汚染を未然に防ぎづらくなるのであまり好ましくない。
更に本発明の制電作業服のJIS L0217 103法による洗濯処理50回実施後の引裂強度保持率が洗濯未処理に対して75%以上、より好ましくは80%以上、更に好ましくは90%以上であることが作業服としての実用強度を保持するために好ましい。該洗濯処理にては浴温40℃で弱アルカリ性合成洗剤を使用するため、ポリエステル繊維表面は少なからず加水分解作用を受け脆化する方向であり、引裂強度保持率が75%未満となれば作業衣としての実用強度としてあまり好ましくない。
また本発明の制電作業服はJIS B9923 光散乱式自動粒子計数器法による粒径0.5μm以上の発塵量がJIS L0217 103法による洗濯処理50回実施後において3500個/m3以下、より好ましくは2500個/m3以下、更には2000個/m3以下に留まることが好ましい。着用及び洗濯を繰返すことによって制電作業服を構成するポリエステル織物が傷み、毛羽などを誘発するが粒径0.5μm以上の発塵量として3500個/m3以下の領域に留めることによって半導体など製品の歩留り向上が期待できる。逆に該発塵量が3500個/m3を超過する範囲では発生した塵埃により製品の汚染等による歩留り低下を誘発し易く好ましくない。
本発明の制電作業服に用いるポリエステル織物はレピアルーム、プロジェクタイルルーム、エアージェットルーム、ウォータージェットルーム等の公知の織機を用いて製織することが可能である。また使用するポリエステル系マルチフィラメント糸も必要に応じ撚糸を施して製織に供することが可能であるし、フラットヤーン使いのみならず仮撚加工糸、交絡混繊糸、流体攪乱加工糸など公知の糸加工を実施した糸条を用いることも可能である。
また染色加工についても液流染色機、気流染色機、ジッカー染色機、ウインス染色機、ビーム染色機等のバッチ式染色機の他、パッド法による連続染色、フラットスクリーンやロータリースクリーン、インクジェット等の捺染等々、公知の手法を用いて染色することが可能である。用いるポリエステル織物は染色と同時、若しくは染色後に繊維表面をカチオン化処理する。表面カチオン化には公知のパッドドライキュア法、パッドスチームキュア法等の連続パディング処理の他、ウインス染色機やビーム染色機等によるバッチ式の吸尽処理も用いることができる。例えばパディング処理の場合はパッダーマングル等により薬液ピックアップが50〜90%程度の条件で薬液を付与した後、雰囲気温度110℃程度の高圧スチーマーか若しくは雰囲気温度120〜160℃の拡布型ネットコンベア式ドライヤー等々を用いて処理することができる。表面カチオン化処理における重合体成分重量は処理後の織物総重量に対して5〜50重量%、好ましくは10〜40重量%であることが良好な制電性を長く保つことができ、好ましい。上記重合体成分重量が5%未満では織物表面に均一処理することが困難であり、50重量%を超過する範囲ではコスト的に割高になり好ましいとはいえない。
本発明の制電作業服の縫製も公知の方法を用いて実施することができる。縫製に使用する縫い糸やポケット材、裏地、ファスナー類などの各種部材についても帯電が少なく制電特性に優れ、劣化による塵埃発生のないものを使用することが好ましい。特にポケット材や裏地は表地と同様、導電性マルチフィラメントを経糸及び/又は緯糸として均一間隔に配したポリエステル製であって、表地と同様の表面処理を施してなるポリエステル織物が好ましい。本発明の制電作業服の縫製仕様は特に限定を加えるもので無く、上下セパレートであってもつなぎ服であってもよく、作業環境に応じて適宜選択することができる。裁断方法はレーザー裁断などで端部を溶融処理すると共に該端部が露出しないように縫製することが発塵を抑制するために好ましい。
本発明の制電作業服は導電性ポリエステルフィラメント糸の効果によって帯電した電荷を積極的に除電すると共に、ポリエステル繊維表面をカチオン化することにより、マイナス荷電し易いポリエステル表面を電気的に中和し帯電し難い性質にするものである。このふたつの手法を組合せることによって高い耐久制電性を持たせるものであっていずれかひとつの効果のみでは要求を満足することができない。
以下実施例に従い、本発明を更に詳細に説明する。本文中及び実施例中の特性値は下記評価方法に基づき導出されるものである。尚、本発明は以下の実施例に何ら限定されるものではない。
(表面抵抗率)
環境温湿度23℃×50%RHに評価用試料(サンプル)を24時間調温調湿した後、同環境で評価を実施した。使用した表面抵抗計は三菱化学社製Hiresta Up MCP−HT450型、印加電圧は100Vである。表面抵抗率の単位はΩ/□(オーム・パー・スクエア)である。
(表面電位)
環境温湿度23℃×50%RHに評価用試料(サンプル)を24時間調温調湿した後、同環境で評価を実施した。使用した表面電位計は日本スタティック社製MODEL SV77A型である。市販のアクリル板で評価用試料(サンプル)の表面を擦過(上下ストローク×5回)し、擦過2秒経過後に計測を開始し最大電圧を示す値を測定値とした。
(発塵量)
JIS B9923(光散乱式自動粒子計数器法・タンブリング法)記載の方法に準じて粒径0.5μm以上の発塵量を評価した。
(引裂強度)
JIS L1096 8.15.5 D法(ペンジュラム法)記載の方法に準じて評価した。
(洗濯試験)
JIS L0217 103法記載の方法に準じて実施した。
(実施例1)
ポリエステルセミダル中実丸断面マルチフィラメント部分配向糸(POY)250デシテックス48フィラメントを用い、三菱重工業社製LS−6型延伸仮撚加工機によって延伸仮撚を実施し167デシテックス48フィラメントの仮撚加工糸Aを得た。またポリエステルセミダル中実丸断面マルチフィラメント部分配向糸(POY)84デシテックス36フィラメントを用い、同様に仮撚加工を実施し56デシテックス36フィラメントの仮撚加工糸Bを得た。該仮撚加工糸Bとクラレ社製導電性ポリエステルフィラメント28デシテックス2フィラメント(クラカーボ(R))とを引き揃えZ撚方向に400回/m撚糸し合撚糸条Cを得た。
仮撚加工糸AにS撚方向に300回/mの実撚を挿入した後、合撚糸条Cが5mm間隔に配置されるように経糸ビームを作成した。また緯糸についても仮撚加工糸にS撚方向に300回/mの実撚を挿入した糸条と合撚糸条Cとを、合撚糸条Cが5mm間隔になるように交互打込みし、2/1右上がり綾織組織を基本とし上記合撚糸条Cが裏側に多く露出するような変化組織で製織した。因みに使用した織機は津田駒工業社製ウォータージェットルームZW405型である。
得られた織物生機を拡布状態にて浴温90℃のオープンソーパーに通じた後、処理温度120℃条件で液流精練・リラックスを実施し脱水、拡布後に表面温度120℃のシリンダードライヤーで乾燥した。乾燥した生地にヒートセッターを用いて雰囲気温度180℃条件で乾熱セットを施した後、液流染色機を用いて分散染料による130℃染色を実施、還元洗浄及び湯洗、水洗を十分に実施した後、脱水し拡布状態で表面温度120℃のシリンダードライヤーで乾燥した。得られた染色生地に対して第四級アンモニウム塩化したメタクリル酸エステル(アクリル酸エステル誘導体の1種)を主成分とする樹脂エマルションに架橋剤としてジエポキシ化合物を調製した水溶液をパディングし雰囲気温度150℃のショートループドライヤーを用いて固着させ、雰囲気温度160℃のヒートセッターを用いて生地セットを実施した。重合体成分の重量は雰囲気温度25℃、相対湿度65%の乾燥状態で、処理後の織物総重量に対して20重量%を占めるものである。
得られた加工布を用いてジャケット及びスラックスからなる男子作業服を縫製した。基本物性を表1にまとめた。得られた作業服はJIS L0217 103法による洗濯を50回実施しても帯電し難く、半導体など精密機器製造現場の作業衣として好適なものであった。また塵埃の発生が少ない他、引裂強度の低下も小さいものに留まり実用強度面や製品のコンタミネーション防止にも効果が期待できるものとなった。
(実施例2)
実施例1で得られた織物生機を使用し、浴温90℃のオープンソーパーに通じた後、処理温度120℃条件で液流精練・リラックスを実施し脱水、拡布後に表面温度120℃のシリンダードライヤーで乾燥した。乾燥した生地にヒートセッターを用いて雰囲気温度180℃条件で乾熱セットを施した後、液流染色機を用いて分散染料による130℃染色を実施、還元洗浄及び湯洗、水洗を十分に実施した後、脱水し拡布状態で表面温度120℃のシリンダードライヤーで乾燥した。得られた染色生地に対して第四級アンモニウム塩化したポリエーテルポリオール系ポリウレタン(ウレタン系ポリマーの1種)を主成分とする樹脂エマルションに架橋剤としてジエポキシ化合物を調製した水溶液をパディングし雰囲気温度150℃のショートループドライヤーを用いて固着させ、雰囲気温度160℃のヒートセッターを用いて生地セットを実施した。重合体成分の重量は雰囲気温度25℃、相対湿度65%の乾燥状態で、処理後の織物総重量に対して16重量%を占めるものである。
得られた加工布を用いてジャケット及びスラックスからなる男子作業服を縫製した。基本物性を表1にまとめた。得られた作業服は実施例1同様、JIS L0217 103法による洗濯を50回実施しても帯電し難く、半導体など精密機器製造現場の作業衣として好適なものであった。また塵埃の発生が少ない他、引裂強度の低下も小さいものに留まり実用強度面や製品のコンタミネーション防止にも効果が期待できるものとなった。
(実施例3)
使用する樹脂エマルションを第4級アンモニウム塩化したメラミンモノメチレンアクリル酸アミド(アクリル酸アミド誘導体の1種)を主成分とした水溶液(架橋剤は不使用)とした他は実施例1同様の方法で加工布を得た。重合体成分の重量は雰囲気温度25℃、相対湿度65%の乾燥状態で、処理後の織物総重量に対して15重量%を占めるものである。続いて実施例1同様の方法によってジャケット及びスラックスからなる男子作業服を縫製した。基本物性を表1にまとめた。得られた作業服は実施例1同様、JIS L0217 103法による洗濯を50回実施しても帯電が少なく、半導体など精密機器製造現場の作業衣として好適なものであった。
(実施例4)
使用する樹脂エマルションをビニルシクロへキシルエーテルとジエチルアミノビニルエーテルの共重合体の第4級アンモニウム塩(ビニルエーテル誘導体の1種)を主成分とし3官能のアミン系化合物を架橋剤として調整した水溶液とした他は実施例1同様の方法で加工布を得た。重合体成分の重量は雰囲気温度25℃、相対湿度65%の乾燥状態で、処理後の織物総重量に対して20重量%を占めるものである。続いて実施例1同様の方法によってジャケット及びスラックスからなる男子作業服を縫製した。基本物性を表1にまとめた。得られた作業服は実施例1同様、JIS L0217 103法による洗濯を50回実施しても帯電し難く、半導体など精密機器製造現場の作業衣として好適なものであった。半導体など精密機器製造現場の作業衣として好適なものであった。また塵埃の発生が少ない他、引裂強度の低下も小さいものに留まり実用強度面や製品のコンタミネーション防止にも効果が期待できるものとなった。
(実施例5)
使用する樹脂エマルションをホスホニウム塩化したスチレン系モノマーと2−ビニルピリジンからなる共重合物(ビニルピリジン誘導体の1種)を主成分として調整した水溶液(架橋剤不使用)とした他は実施例1同様の方法で加工布を得た。重合体成分の重量は雰囲気温度25℃、相対湿度65%の乾燥状態で、処理後の織物総重量に対して15重量%を占めるものである。続いて実施例1同様の方法によってジャケット及びスラックスからなる男子作業服を縫製した。基本物性を表1にまとめた。得られた作業服は実施例1同様、JIS L0217 103法による洗濯を50回実施しても帯電し難く、半導体など精密機器製造現場の作業衣として好適なものであった。
(実施例6)
使用する樹脂エマルションを第4級アンモニウム塩化したポリアミドポリイミダゾリン(ポリアミンポリマーの1種)を主成分として調整した水溶液(架橋剤不使用)とした他は実施例1同様の方法で加工布を得た。重合体成分の重量は雰囲気温度25℃、相対湿度65%の乾燥状態で、処理後の織物総重量に対して15重量%を占めるものである。続いて実施例1同様の方法によってジャケット及びスラックスからなる男子作業服を縫製した。基本物性を表1にまとめた。得られた作業服は実施例1同様、JIS L0217 103法による洗濯を50回実施しても帯電し難く、半導体など精密機器製造現場の作業衣として好適なものであった。
(実施例7)
使用する樹脂エマルションを第4級アンモニウム塩化したメラミン・ホルムアルデヒドジ樹脂(カチオン性ポリマーの1種)主成分として調整した水溶液(架橋剤不使用)とした他は実施例1同様の方法で加工布を得た。重合体成分の重量は雰囲気温度25℃、相対湿度65%の乾燥状態で、処理後の織物総重量に対して16重量%を占めるものである。続いて実施例1同様の方法によってジャケット及びスラックスからなる男子作業服を縫製した。基本物性を表1にまとめた。得られた作業服は実施例1同様、JIS L0217 103法による洗濯を50回実施しても帯電し難く、半導体など精密機器製造現場の作業衣として好適なものであった。
(比較例1)
導電性ポリエステルマルチフィラメントの配置間隔を経糸緯糸共に50mm間隔とした以外は実施例1同様の方法を用いて生地を作成しジャケット及びスラックスからなる男子作業服を縫製した。第四級アンモニウム塩の効果による表面カチオン化によりマイナス荷電を中和する機能を有しているものの、帯電した電荷を積極的に除電する効果が不足してしまい、表面抵抗率、表面電位共に高いものとなり、制電作業服として好ましいものにはならなかった。
(比較例2)
導電性ポリエステルマルチフィラメントの配置間隔を経糸緯糸共に3mm間隔とした以外は実施例1同様の方法を用いて生地を作成しジャケット及びスラックスからなる男子作業服を縫製した。導電性ポリエステルマルチフィラメントの配置間隔が非常に密であるため、除電効果に優れ制電特性としては好ましいものとなったが力学的強度に乏しい導電性ポリエステルマルチフィラメントを多用しているためにポリエステル織物自体の引裂強度も小さく留まり、作業服として好ましいものにはならないばかりかコスト的にも高くなり実用に供するものにはならなかった。
(比較例3)
実施例1で得られた織物生機を使用し、浴温90℃のオープンソーパーに通じた後、処理温度120℃条件で液流精練・リラックスを実施し脱水、拡布後に表面温度120℃のシリンダードライヤーで乾燥した。乾燥した生地にヒートセッターを用いて雰囲気温度180℃条件で乾熱セットを施した後、液流染色機を用いて分散染料による130℃染色を実施、還元洗浄及び湯洗、水洗を十分に実施した後、脱水し拡布状態で表面温度120℃のシリンダードライヤーで乾燥した。第4級アンモニウム塩系カチオン活性剤を主体とする帯電防止剤エマルションを調製してなる水溶液を得られた染色生地にパディングし雰囲気温度150℃のショートループドライヤーを用いて固着乾燥させ、雰囲気温度160℃のヒートセッターを用いて生地セットを実施した。
得られた加工布を用いてジャケット及びスラックスからなる男子作業服を縫製した。基本物性を表1にまとめた。得られた作業服は洗濯未処理の場合、優れた制電特性を有するものの洗濯耐久性に乏しく、JIS L0217 103法による50回洗濯処理後は制電性を殆ど示さないものとなり、半導体その他電子電気部品製造に供する工場作業服としては好ましいものにならなかった。
Figure 2006097142
本発明によれば半導体や液晶その他電子電気機器製造業の工場作業服、精密電子機器を用いた工場作業服として好適な耐久制電作業服を得ることができる。しかも繰返し洗濯による性能劣化が少なく自己発塵も少ないため、製品の歩留り向上や事故の防止効果も期待できる。

Claims (4)

  1. 導電性ポリエステルマルチフィラメント糸が経糸及び/又は緯糸として5mm以上30mm以下の間隔で規則的に配置されてなり、第四級アンモニウム塩成分又はホスホニウム塩成分を含み、且つ、アクリル酸エステル誘導体、アクリル酸アミド誘導体、ビニルエーテル誘導体、ビニルピリジン誘導体、ポリアミンポリマー、カチオン性ポリマー、ウレタン系ポリマーから選択される少なくとも一種類を含む重合体で表面処理されてなるポリエステル織物を少なくとも一部に用いて縫製された作業服であって、前記ポリエステル織物の初期の表面抵抗率が1×107Ω/□以上1×1011Ω/□以下であり、JIS L0217 103法による洗濯処理50回実施後の表面抵抗率が1×1010Ω/□以上1×1013Ω/□であることを特徴とする制電作業服。
  2. ポリエステル織物の初期の表面電位が±0V以上+100V以下であり、JIS L0217 103法による洗濯50回処理後の表面電位が±0V以上+200V以下であることを特徴とする請求項1に記載の制電作業服。
  3. ポリエステル織物が、単糸繊度が0.3デシテックス以上5.0デシテックス以下のポリエステルマルチフィラメントを用いてなり、JIS L0217 103法による洗濯処理50回実施後の引裂強度保持率が洗濯未処理に対して75%以上を保持することを特徴とする請求項1又は2に記載の制電作業服。
  4. 制電作業服のJIS B9923 光散乱式自動粒子計数器法による粒径0.5μm以上の発塵量が、JIS L0217 103法による洗濯処理50回実施後において3500個/m3以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の制電作業服。
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