JP2006091292A - 光学補償シート用透明支持体、光学補償シート及びその製造方法、偏光板及びそれを用いた液晶表示装置並びに疎水性透明支持体の親水化処理方法 - Google Patents

光学補償シート用透明支持体、光学補償シート及びその製造方法、偏光板及びそれを用いた液晶表示装置並びに疎水性透明支持体の親水化処理方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 従来の配向膜との密着性を維持したまま、良好な面状を有し、光学特性に優れ且つシート膜厚が薄く、液晶表示装置にした場合に画像が鮮明であり、低コスト化が可能な光学補償シートに使用可能な光学補償シート用透明支持体等を提供すること。
【解決手段】 対向する第1の面及び第2の面を有する疎水性透明支持体であって、第1の面がアルカリ鹸化された親水性表面を有し、該親水性表面側に存在する界面活性剤量が0.001〜1.0mg/m2である光学補償シート用透明支持体。さらに、対向する第1の面及び第2の面を有する疎水性透明支持体ウェブを、第2の面をバックアップロールにより支持しながら連続走行させ、第1の面にアルカリ溶液をダイコーターにより塗布する工程を含む疎水性透明支持体の親水化処理方法であって、親水化処理後の前記透明支持体の含有する界面活性剤量が0.001〜1.0mg/m2である疎水性支持体の親水化処理方法。
【選択図】 図1

Description

本発明は、液晶表示装置を大画面化しても鮮明な画像が得られる、面状を改良した光学補償シート用透明支持体、及びその製造方法に関し、該光学補償用透明支持体を用いた光学補償シート及び該光学補償シートの製造方法にも関し、さらに該光学補償シートを用いた偏光板、及び該偏光板を配置した液晶表示装置に関する。
液晶表示装置は、通常、液晶セル、偏光板および光学補償シート(位相差板)からなり、主として透過型液晶表示装置及び反射型液晶表示装置に大別される。
透過型液晶表示装置では、二枚の偏光板を液晶セルの両側に取り付け、一枚または二枚の光学補償シートを液晶セルと偏光板との間に配置する。反射型液晶表示装置では、反射板、液晶セル、一枚の光学補償シート、そして一枚の偏光板の順に配置する。
液晶セルは、通常、棒状液晶性分子、それを封入するための二枚の基盤および棒状液晶性分子に電圧を加えるための電極層からなる。液晶セルは、棒状液晶性分子の配向状態の違いにより様々な表示モードが提案されており、透過型については、TN(Twisted Nematic)、IPS(In-Plane Switching)、FLC(Ferroelectric Liquid Crystal)、OCB(Optically Compensatory Bend)、STN(Supper Twisted Nematic)、VA(Vertically Aligned)等、反射型については、HAN(Hybrid Aligned Nematic)等が提案されている。
偏光板は、一般的に、偏光膜と透明保護膜とからなっている。該偏光膜は、一般的に、ポリビニルアルコールにヨウ素または二色性染料の水溶液を含浸させ、さらにこのフィルムを一軸延伸することにより得られる。該偏光板はこの偏光膜の両側に二枚の透明保護膜を貼りつけた構成を有する。
光学補償シートは、画像着色を解消したり、視野角を拡大するために、様々な液晶表示装置で用いられている。光学補償シートとしては、透明支持体上に液晶性分子、特にディスコティック液晶性分子から形成された光学異方性層を有する光学補償シートを使用することが提案されている。光学異方性層は、液晶性分子を配向させ、その配向状態を固定化することにより形成する。一般に、重合性基を有する液晶性分子を用いて、重合反応によって配向状態を固定化する。液晶性分子は、大きな複屈折を有する。そして、液晶性分子には、多様な配向形態がある。液晶性分子を用いることで、従来の延伸複屈折フィルムでは得ることができない光学的性質を実現することが可能になった。
光学補償シートの光学的性質は、液晶セルの光学的性質、具体的には前記の表示モードの違いに応じて決定する。光学補償シートに液晶性分子、特にディスコティック液晶性分子を用いると液晶セルの様々な表示モードに対応する様々な光学的性質を有する光学補償シートを製造することができる。
ディスコティック液晶性分子を用いた光学補償シートでは、様々な表示モードに対応するものが既に提案されている。
透明支持体上に液晶性分子の配向を固定化した光学異方性層を設けた光学補償シートを製造する場合、透明支持体と光学異方性層の間に配向膜を設ける。この場合、透明支持体と配向膜との間の密着性が必要になる。また、配向膜の配向はラビング、電界印加、磁場印加、光照射等の処理により行われるが、配向膜上の微小なチリ等の付着、膜表面の塗布の不均一性等が配向の均一性を損なってしまう。特に、ラビング処理では膜表面を擦るために静電気発生への対策が必要となり、通常、配向膜は水溶性樹脂硬化膜が適用され、特にポリビニルアルコール系等の水酸基含有の樹脂と硬化剤からなる硬化膜が用いられる。
透明支持体としては通常、セルロースアセテートフィルムなどのセルロースエステルフィルムを使用する。一般に、配向膜に用いられるポリビニルアルコールとセルロースエステルフィルムの親和性は悪く、配向膜の剥離が生じ易い。配向膜の剥離により、配向膜の上に設けられた光学異方性層もフィルムから剥離する。光学補償シートは、液晶表示装置の寸法にあわせて切断(あるいは打ち抜き)されるが、この切断の際の衝撃によりフィルムの切断部に剥離を生じることが多い。剥離した配向膜(または光学異方性層)の屑は、光学補償シートを用いた液晶表示装置の表示画面上に生じる「輝点故障」の原因となる。輝点故障は液晶表示装置の表示画面上に生じる星状に輝いて見える点状の故障である。このような輝点故障の発生を防ぐ(すなわちセルロースエステルフィルムと配向膜の密着性を改良する)ために、接着層としてゼラチン等の下塗り層を設ける方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。然し、下塗り層を設ける場合には、特に支持体の膜厚を薄膜化すると下塗り層に含まれる塗布溶媒等の影響で均一な塗布が出来なくなる等の問題が顕著になる。
また、透明支持体をアルカリ水溶液に浸漬して表面をアルカリ鹸化処理して、支持体表面に密着性を付与して配向膜を設ける(例えば、特許文献2参照)等の方法が開示されているが、フィルムの両面に鹸化処理がされると、フィルムをロール状に巻き取った場合に、フィルムが互いに接着してしまう問題点があった。この問題は特にセルロースアセテートフィルムに顕著に見られる。
更に、セルロースエステルフィルムの必要とする片面のみをアルコール溶媒を含むアルカリ溶液でアルカリ鹸化する方法が提案されている(特許文献3)。これによりフィルム表面への濡れ性が良好となり鹸化処理が速やかに行われ、且つ化処理後にロール状に巻き取った場合にも、接触する面同士が密着して貼り付いてしまうことが無く、長尺フィルムの連続した鹸化処理が行われる。
一方、偏光板用保護膜として用いるセルロースエステルフィルムの偏光子と接する面をプラズマ処理する方法が提案され、アルカリ水溶液中に浸漬して鹸化後にプラズマ処理することの記載が開示されている(特許文献4)。然し、前記したような浸漬処理に伴う製造工程上の煩雑さ、或は光学補償シート製造に必要な親水化の適切な処理は記載されていない。
これらの技術を用いた場合でも、配向のムラや光学的な欠陥(例えば、白抜け現象等)が発生しやすく、特に長尺フィルムを製造すると実用に供しえる性能のものを得る得率が著しく低下するという課題があり、未だ充分とはいえない。
配向のムラの生じる理由の一つは、乾燥初期には塗布膜中に有機溶剤が十分に含まれた状態であり、この段階で有機溶剤の蒸発分布が生じると、その結果、塗布膜面に温度分布、表面張力分布を生じ、塗布膜面内で、いわゆるマランゴニー対流等の流動が起きることによる。このようなムラの発生は重大な塗布欠陥となる。
連続走行するウェブに各種液状組成物を塗布して形成した長尺で広幅な塗布膜面を乾燥する乾燥方法および装置については、E.B.Gutoff、E.D.Cohen著の『Coating and DryingDefects』(Wiley−Intersciece, John Wiley & Sons, Inc)に非塗布面側をロールで支持し、塗布面側にエア・ノズルから風を吹いて乾燥させる乾燥方法や、塗布面、非塗布面ともにエア・ノズルから風を吹いて、ウェブを浮上させた状態、すなわち支持体がロール等に接触しないで乾燥させる非接触式のエア・フローティング乾燥方法について記されている。この非接触式の乾燥方法については、スペースを効率良く利用し、かつ効率良く乾燥させる方法として特許文献4に開示されているような弦巻き型の乾燥装置を用いた乾燥方法等がある。
通常これらの風を吹かせて乾燥させる方法(以下、熱風乾燥方法という)では、調湿した風を塗布面に吹きつけることにより、塗布面中に含まれる溶媒を蒸発させて乾燥させている。この熱風乾燥方法は乾燥効率に優れるものの、塗布面に直接または多孔板、整流板等を介して風をあてるために、この風によって塗布面が乱れて塗布層の厚さが不均一となってムラを生じたり、対流によって塗布面での溶媒の蒸発速度が不均一になったりし、いわゆるユズ肌(非特許文献1参照)等が発生して、均一な塗布層が得られないという問題があった。
また、特開2004−34002では、塗布液溶剤の蒸発速度を0.3g/(m2・sec)以下に抑えることで乾燥による膜厚ムラを発生させずに塗布膜が作製出来ることが示されている。塗布膜に吹きつける風の条件を調整して蒸発速度を下げることによって良好な面状を得ることは可能であるが、生産性を上げるために塗布速度を下げると、乾燥を完了させるために長い乾燥工程が必要となるため、生産性向上のためには好ましい方法ではない。
特開平11−248940号公報 特開平8−94838号公報 国際公開02/46809号パンフレット 特開2000−356714号公報、段落番号[0047] 尾崎勇次著、『コーティング工学』、朝倉書店、1971年、293頁〜294頁
近年、液晶表示装置の大画面化が進み、且つ画像の鮮明さがより一層求められるようになり、光学補償シートの面状均一性への要求及び低コスト化が望まれている。
特に、前記のような種々の液晶表示装置に対応できる光学補償シートとして、光学特性に優れ且つシート膜厚が薄膜のものが強く望まれている。
従って、本発明の目的は、従来通りの配向膜との密着性を維持したまま、良好な面状を有し、光学特性に優れ且つシート膜厚が薄く、液晶表示装置にした場合に画像が鮮明であり、低コスト化が可能な光学補償シートに使用可能な光学補償シート用透明支持体を提供することである。
また、本発明の他の目的は、前記支持体を使用した光学補償シート、該光学補償シートを偏光膜の片側に配置した偏光板及び、該偏光板を備えた、表示品位の高い液晶表示装置を提供することである。
さらに本発明の他の目的は、前記透明支持体の親水化処理方法及び光学補償シートの製造方法を提供することである。
本発明者らは、前記の課題を解消すべく鋭意検討した結果、透明支持体の表面に残存する界面活性剤量を特定の範囲内とした場合に前記目的を達成しうることを知見した。
本発明は、前記知見に基づいてなされたもので、下記の構成により達成される。
(1)対向する第1の面及び第2の面を有する疎水性透明支持体であって、第1の面がアルカリ鹸化された親水性表面を有し、該親水性表面側に存在する界面活性剤量が0.001〜1.0mg/m2であることを特徴とする光学補償シート用透明支持体、
(2)前記界面活性剤が非イオン性界面活性剤である(1)に記載の光学補償シート用透明支持体、
(3)前記界面活性剤が、ポリ(オキシアルキレン)アルキルエーテル類である(1)又は(2)に記載の光学補償シート用透明支持体、
(4)前記透明支持体の表面の凹凸形状が、JIS B0601−1994に基づく表面凹凸の算術平均粗さ(Ra)が0.0001〜0.1μmであり、十点平均粗さ(Rz)が0.0001〜0.3μmであり、且つ最大高さ(Ry)が0.0002〜1μmである(1)〜(3)いずれか1つに記載の光学補償シート用透明支持体、
(5)前記透明支持体の表面の凹凸形状が、JIS B0601−1994に基づく表面凹凸の算術平均粗さ(Ra)が0.0005〜0.1μmであり、十点平均粗さ(Rz)が0.0006〜0.3μmであり、表面凹凸平均間隔(Sm)が0.001〜1μmであり、且つ最大高さ(Ry)0.0005〜0.8μmである(1)〜(4)いずれか1つに記載の光学補償シート用透明支持体、
(6)前記透明支持体がセルロースアシレートフィルムである(1)〜(5)いずれか1つに記載の光学補償シート用透明支持体、
(7)前記セルロースアシレートフィルムが、酢化度55.0〜62.5%の範囲にあるセルロースアシレート、少なくとも二つの芳香族環を有する芳香族化合物及び少なくとも一種の平均一次粒径1〜100nmの粒子を含んでなる(6)に記載の光学補償シート用透明支持体、
(8)支持体表面から深さ方向に対して0.005〜1.0μmの範囲でアルカリ鹸化された親水性表面を有する(1)〜(7)いずれか1つに記載の光学補償シート用透明支持体、
(9)前記透明支持体の、Reレターデーション値が0〜200nmの範囲にあり、かつRthレターデーション値が40〜400nmの範囲にある(1)〜(8)いずれか1つに記載の光学補償シート用透明支持体、
(10)前記透明支持体の膜厚が20〜200μmである(1)〜(9)いずれか1つに記載の光学補償シート用透明支持体、
(11)(1)〜(10)いずれか1つに記載の光学補償シート用支持体の親水性表面上に、配向膜、及び光学異方性層をこの順に設けたことを特徴とする光学補償シート、
(12)前記配向膜が、主成分としてポリビニルアルコール及び/又は変性ポリビニルアルコールを含有する硬化膜である(11)に記載の光学補償シート、
(13)前記配向膜が、水素結合性を有する水素原子を含有する極性基を少なくとも1種含有するカルボン酸化合物を含有する(11)又は(12)に記載の光学補償シート、
(14)透明保護膜、偏光膜、並びに透明支持体上に配向膜及び光学異方性層を設けた光学補償シートがこの順に積層されている偏光板であって、該光学補償シートが(11)〜(13)のいずれか1つに記載の光学補償シートであることを特徴とする偏光板、
(15)空気側の前記透明保護膜上に反射防止膜を設けてなる(14)に記載の偏光板、
(16)液晶セルおよびその両側に配置された二枚の偏光板からなり、偏光板が偏光膜およびその両側に配置された二枚の透明保護膜からなる液晶表示装置であって、液晶セルと偏光板との間に配置される二枚の透明保護膜の少なくとも一方が、透明支持体上に配向膜及び光学異方性層を設けた光学補償シートであって、該光学補償シートが(11)〜(13)のいずれか1つに記載の光学補償シートであることを特徴とする液晶表示装置、
(17)液晶セルおよびその両側に配置された二枚の偏光板からなり、偏光板が偏光膜およびその両側に配置された二枚の透明保護膜からなる液晶表示装置であって、液晶セルを矜持する偏光板の空気側の偏光板が上記(15)の偏光板であり、反対側の偏光板が上記(14)の偏光板が配置される液晶表示装置、
(18)液晶表示装置が、TN、STN、IPS、VAおよびOCBのいずれかのモードの透過型、反射型または半透過型の液晶表示装置である(16)又は(17)に記載の液晶表示装置、
(19)対向する第1の面及び第2の面を有する疎水性透明支持体ウェブを、第2の面をバックアップロールにより支持しながら連続走行させ、第1の面にアルカリ溶液をダイコーターにより塗布する工程を含む疎水性透明支持体の親水化処理方法であって、親水化処理後の前記透明支持体の含有する界面活性剤量が0.001〜1.0mg/m2であることを特徴とする疎水性支持体の親水化処理方法、
(20)アルカリ溶液が、60〜120℃の沸点を有する水溶性有機溶媒、界面活性剤および相溶化剤を含有する(19)に記載の疎水性透明支持体の親水化処理方法、
(21)前記アルカリ溶液塗布工程に引き続いて、ウェブを囲むケーシングを有するドライヤ中で、塗布面近傍の風の乱れを防止しながら、アルカリ溶液を塗布した第1の面側の溶剤蒸気を高い濃度で保ちつつアルカリ鹸化する鹸化工程を有する(20)に記載の疎水性透明支持体の親水化処理方法、
(22)疎水性支持体の親水性表面に配向膜形成用組成物を塗布する工程、及びその直後に、ウェブを囲むケーシングを有するドライヤ中で塗布面近傍の風の乱れを防止しながら、乾燥中の塗布面側の溶剤蒸気を高い濃度で保ったまま乾燥する工程を有する(11)〜(13)いずれか1つに記載の光学補償シートの、製造方法、
(23)(19)〜(21)のいずれか1つに記載の親水化処理方法により親水化された透明支持体上に配向膜を塗設する工程、及び光学異方性層を塗設する工程、を含む光学補償シートの製造方法。
本発明の光学補償用透明支持体に、配向膜及び光学異方性層をこの順に設けた光学補償シートは、従来通りの配向膜との密着性を維持したまま、良好な面状を有し、光学特性に優れ且つシート膜厚が薄く、液晶表示装置にした場合に画像が鮮明であり、低コスト化が可能なものである。
また、本発明は、連続走行する透明支持体(以下、帯状可撓性支持体ともいう。)にアルカリ溶液または配向膜形成用組成物を塗布して形成した長尺で広幅な塗布膜面において、塗布の際に発生する膜厚ムラの発生を抑制し、かつ、反応/乾燥時に発生する膜厚ムラを抑制し、かつ効率良く反応/乾燥させることにより(膜厚)均一性が高い光学補償シートを提供することを目的とする。
さらに、本発明の偏光板は、本発明の光学補償シートを具備し、高品質なものであり、本発明の液晶表示装置は、本発明の光学補償シートを偏光膜の片側に配置した本発明の偏光板を備えた、表示品位の高いものである。
以下、本発明の光学補償シート用透明支持体、その親水化処理方法、光学補償シート、その製造方法、該光学補償シートを用いた偏光板及び該偏光板を配置した液晶表示装置について詳しく説明する。
本発明の光学補償シート用透明支持体は、密着性付与のために親水化処理が施された親水性表面を有し、親水化処理後の透明支持体が含有する界面活性剤量が特定の範囲内にあることを特徴とする。又、本発明の光学補償シートは、予め表面を親水化処理した前記透明支持体、配向膜、及び光学異方性層がこの順に積層された層構成を有する。
まず、光学補償シートに関する透明支持体、親水化処理、配向膜、光学異方性層について述べた後、偏光板、液晶表示装置及びそれらの製造方法について説明する。
<透明支持体>
本発明において用いられる透明支持体は、ガラス、もしくは透明なポリマーフィルムであることが好ましい。透明支持体は、光透過率が80%以上、ヘイズが3%以下であることが好ましい。ポリマーフィルムを構成するポリマーの例としては、セルロースエステル(例、セルロースのモノ、ジおよびトリアシレート体)、ノルボルネン系ポリマーでは、アートン及びゼオネックス(いずれも商品名)が挙げられる。また、従来知られているポリカーボネートやポリスルホンのような複屈折の発現しやすいポリマーであっても、国際公開第00/26705号パンフレットに記載のように、分子を修飾することで複屈折の発現性を制御すれば、透明支持体として用いることができる。
上記透明支持体の膜厚は、20乃至200μmであることが好ましく、30乃至150μmであることがさらに好ましく、30乃至80μmが最も好ましい。
透明支持体は、所望のレターデーション値を有することが好ましい。
本明細書において、Re、Rthは各々、波長λにおける面内のリターデーションおよび厚さ方向のリターデーションを表す。ReはKOBRA 21ADH(王子計測機器(株)製)において光をフィルム法線方向に入射させて測定される。Rthは前記、面内の遅相軸(KOBRA 21ADHにより判断される)を傾斜軸(回転軸)としてフィルム法線方向に対して+40°傾斜した方向から光を入射させて測定したレターデーション値、および面内の遅相軸を傾斜軸(回転軸)としてフィルム法線方向に対して−40°傾斜した方向から光を入射させて測定したレターデーション値の計3つの方向で測定したレターデーション値を基にKOBRA 21ADHが算出する。ここで平均屈折率の仮定値は ポリマーハンドブック(JOHN WILEY&SONS,INC)、各種光学フィルムのカタログの値を使用することができる。平均屈折率の値が既知でないものについてはアッベ屈折計で測定することができる。主な光学フィルムの平均屈折率の値を以下に例示する:セルロースアシレート(1.48)、シクロオレフィンポリマー(1.52)、ポリカーボネート(1.59)、ポリメチルメタクリレート(1.49)、ポリスチレン(1.59)である。これら平均屈折率の仮定値と膜厚を入力することで、KOBRA 21ADHはnx、ny、nzを算出する。
透明支持体のレターデーション値は光学補償シートが用いられる液晶表示装置やその使用の方法に応じて好ましい範囲が異なり、Reレターデーション値は0〜200nmとするのが好ましく、かつRthレターデーション値は40〜400nmの範囲に調節することが好ましい。特にポリマーフィルムを透明支持体として用いる場合には、上述の範囲内にあることが好ましい。
レターデーション値を上記の範囲とすることで、表示装置の表示画像の視野角の広がりを大きくすることができる。
特にTNモードに用いる光学補償シートの透明支持体としては、Reレターデーション値が4〜40nm、そしてRthレターデーション値は50〜200nmの範囲である事が好ましく、OCB、HAN、VAN、ホモジニアス配向モード等のECBモードに用いる光学補償シートの支持体としては、Reレターデーション値が10〜70nm、そしてRthレターデーション値は70〜400nmの範囲である事が好ましい。
透明支持体としてポリマーフィルムを用い、液晶表示装置に二枚の光学異方性層を使用する場合、ポリマーフィルムのRthレターデーション値は70乃至250nmの範囲にあることが好ましい。液晶表示装置に一枚の光学異方性層を使用する場合、ポリマーフィルムのRthレターデーション値は150乃至400nmの範囲にあることが好ましい。
透明支持体がセルロースアシレートフィルムであることが好ましい。即ち、上記ポリマーフィルムとして、セルロースアシレートフィルムを使用することが好ましい。セルロースアシレートはセルロースからエステル化して作製される。特に好ましい前述のセルロースは、リンター、ケナフ、パルプを精製して用いられる。
本発明において、セルロースアシレートとはセルロースの脂肪酸エステルのことであるが、特に、低級脂肪酸エステルが好ましい。更には、セルロースの脂肪酸エステルフィルムが好ましい。
低級脂肪酸とは、炭素原子数が6以下の脂肪酸を意味する。炭素原子数が2乃至4のセルロースアシレートが好ましい。セルロースアセテートが特に好ましい。セルロースアセテートプロピオネートやセルロースアセテートブチレートのような混合脂肪酸エステルを用いることも好ましい。
セルロースアシレートの粘度平均重合度(DP)は、250以上であることが好ましく、290以上であることがさらに好ましい。また、セルロースアシレートは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによるMw/Mn(Mwは質量平均分子量、Mnは数平均分子量)の分子量分布が狭いことが好ましい。具体的なMw/Mnの値としては、1.0乃至5.0であることが好ましく、より好ましくは1.0乃至3.0である。
上記セルロースアシレートとしては、酢化度が55.0乃至62.5%であるセルロースアシレートを使用することが好ましい。酢化度は、57.0乃至62.0%であることがさらに好ましく、59.0乃至61.5%が特に好ましい。酢化度とは、セルロース単位質量当たりの結合酢酸量を意味する。酢化度は、ASTM:D−817−91(セルロースアシレート等の試験法)におけるアシル化度の測定および計算によって求められる。
セルロースアシレートでは、セルロースの2位、3位、6位のヒドロキシルが均等に置換されるのではなく、6位の置換度が小さくなる傾向がある。本発明に用いるセルロースアシレートでは、セルロースの6位置換度が、2位、3位に比べて同程度または多い方が好ましい。
2位、3位、6位の置換度の合計に対する、6位の置換度の割合は、30乃至40%であることが好ましく、31乃至40%であることがさらに好ましく、32乃至40%であることが最も好ましい。
[レターデーション調整剤]
本発明において透明支持体として用いられるポリマーフィルムは、溶液の紫外線吸収スペクトルの吸収極大を与える波長(λmax)が400nmより短波長にある紫外線を吸収する化合物をレターデーション調整剤として含有することが好ましい。また、少なくとも2つの芳香族環を有する芳香族化合物、トリフェニレン化合物、円盤状化合物(1,3,5−トリアジン骨格、ポルフィリン骨格を分子に含有の化合物等)等が好ましい。これらの化合物類は、可視光領域に実質的に吸収を有していないことが好ましい。
・少なくとも2つの芳香族環を有する芳香族化合物
本発明のセルロースアシレートフィルムのレターデーション剤として、少なくとも2つの芳香族環を有する芳香族化合物(以下、芳香族化合物A」とも言う)を少なくとも1種含有することが好ましい。芳香族化合物の芳香族環には、芳香族炭化水素環に加えて、芳香族性ヘテロ環でもかまわない。芳香族炭化水素環は、6員環(すなわち、ベンゼン環)であることが特に好ましい。芳香族性ヘテロ環は一般に、不飽和ヘテロ環である。芳香族性ヘテロ環は、5員環、6員環または7員環であることが好ましく、5員環または6員環であることがさらに好ましい。芳香族性ヘテロ環は一般に、最多の二重結合を有する。ヘテロ原子としては、窒素原子、酸素原子および硫黄原子が好ましく、窒素原子が特に好ましい。
芳香族化合物Aが有する芳香族環の数は、2乃至20であることが好ましく、2乃至12であることがより好ましい。3以上の芳香族環を有する場合、少なくとも二つの芳香族環の立体配座を立体障害しなければよい。二つの芳香族環の結合関係は、(a)縮合環を形成する場合、(b)単結合で直結する場合および(c)連結基を介して結合する場合に分類できる(芳香族環のため、スピロ結合は形成できない)。レターデーション上昇機能の観点では、(a)〜(c)のいずれでもよい。具体的には、特開2002−131537号公報段落番号[0016]〜[0023]に記載の内容のものが挙げられる。更に、上記(b)または(c)の場合は、二つの芳香族環の立体配座を立体障害しないことが好ましい。
上記芳香族化合物Aとしては、特開2002−363343号公報段落番号[0011]〜[0031]に記載されると同一内容の直線的な分子構造を有する棒状化合物、特開2000−111914号公報段落番号[0011]〜[0085]に記載されると同一内容の立体障害しない立体配座となっている二つの芳香族環を含有する化合物、少なくとも1つの芳香族環を置換基として含有する1,3,5−トリアジン化合物或はポルフィリン骨格を有する化合物(特開2001−166144号公報記載の化合物)が挙げられる。
特に、少なくとも一つの芳香族環を置換基として含有する1,3,5−トリアジン化合物が好ましい(該トリアジン環がもう一つの芳香環となる)。具体的には、特開2001−166144号公報段落番号[0016]に記載の一般式(I)記載の1,3,5−トリアジン化合物が挙げられる。
上記芳香族化合物Aの分子量は、300〜800であることが好ましい。
芳香族化合物Aの含有量は、所望のレターデーションに調整するためにレターデション調整用化合物の種類及び使用量を選択して用いる。フィルムを作製するときにフィルム形成用組成物中での溶解性、製膜時での不溶化や析出等の問題を生じさせないことから、上記ポリマー100質量部に対して、0.01〜30質量部の範囲で使用することが好ましく、0.05〜25質量部の範囲で使用することがより好ましい。更に好ましくは0.1〜20質量部である。
[可塑剤]
ポリマーフィルムには、フィルムの機械的物性を改良するため、または乾燥速度を向上するために、従来公知の可塑剤を添加することが好ましい。可塑剤としては、例えば、リン酸エステル類、カルボン酸エステル類(カルボン酸としては、脂肪族カルボン酸、オキシカルボン酸(クエン酸、リンゴ酸等)、芳香族カルボン酸(フタル酸等))等が挙げられ、発明協会公開技法公技番号2001−1745号(2001年3月15日発行、発明協会)p.16に記載の化合物等が挙げられる。また、アルカンポリオールとカルボン酸とのエステル化化合物(特開平11−124445号公報、特開2001−247717号公報等)等も好ましい。
可塑剤の添加量は上記ポリマー100質量部に対して0.05乃至25質量%であることが好ましく、1乃至20質量%であることがさらに好ましい。
[微粒子]
本発明では、透明支持体としてのフィルムのカール抑制、搬送性、或は耐傷性を良好に保持するためにセルロースアシレート組成物に微粒子を添加するのが好ましい。
添加する微粒子は、前述の機能を呈する素材であれば特に限定はなく、微粒子のモース硬度2〜10であるものが好ましい。
微粒子として無機化合物、有機化合物のいずれを用いてもよく、好ましい具体例は、無機化合物としては、ケイ素を含む化合物、二酸化ケイ素、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、酸化バリウム、酸化ジルコニウム、酸化ストロンチウム、酸化アンチモン、酸化スズ、酸化スズ・アンチモン、炭酸カルシウム、タルク、クレイ、焼成カオリン、焼成ケイ酸カルシウム、水和ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム及びリン酸カルシウム等が好ましく、更に好ましくはケイ素を含む無機化合物や酸化ジルコニウムであり、セルロースアシレートフィルムの濁度を低減できるので二酸化ケイ素が特に好ましい。
また、表面処理された無機微粒子もセルロースアシレート中への分散性が良好となり好ましい。処理法としては、例えば、特開昭54−57562号公報に記載の方法が挙げられる。粒子としては、例えば、特開2001−151936号公報に記載のものが挙げられる。
有機化合物としては、例えば、架橋ポリスチレン、シリコーン樹脂、フッ素樹脂及びアクリル樹脂等のポリマーが好ましく、なかでも、シリコーン樹脂が好ましく用いられる。シリコーン樹脂のなかでも、特に三次元の網状構造を有するものが好ましい。
これらの微粒子の平均一次粒径としては、好ましくは1〜100nmであり、さらに好ましくは3〜80nmであり、より好ましくは5〜60nmである。
この範囲において、透明支持体としてのフィルムの機械的な物性を損なうことなく、ヘイズを低く抑え、且つ製膜後のフィルム表面の凹凸を小さくすることが出来る。
特に、上記微粒子の粒径の分散度が揃っていることが好ましく、粒径500nm以上の粒子が存在しないことが更に好ましい。このような超微粒子を用いることで、分散物中での分散性が安定し製膜されたフィルムの機械的な物性を損なうことなく、ヘイズを低く抑え、且つ表面の凹凸形状が微細で凹凸の揃った状態とするのに好ましい。
上記ポリマーに対する微粒子の添加量は、上記ポリマー100質量部に対して、微粒子は0.01〜0.8質量部が好ましく、0.05〜0.5質量部がさらに好ましい。
[他の添加剤]
上記透明支持体には、更に、紫外線防止剤(以下、「紫外線吸収剤」あるいは「UV剤」ともいう。)(例えば、ヒドロキシベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、サリチル酸エステル系化合物、シアノアクリレート系化合物等)、劣化防止剤(例えば、酸化防止剤、過酸化物分解剤、ラジカル禁止剤、金属不活性化剤、酸捕獲剤、光安定化剤(ヒンダードアミン等)等)、剥離剤、帯電防止剤、微粒子化分散助剤等を添加してもよい。具体的には、上記の公技番号2001−1745号p.17−22に詳細に記載されている素材が好ましく用いられる。
これら添加剤の添加量は上記ポリマー100質量部に対して0.001乃至40質量%であることが好ましく、0.005乃至30質量%であることがさらに好ましい。
本発明においては、上記透明支持体は、セルロースアシレートフィルムであるのが好ましく、該セルロースアシレートフィルムが、酢化度55.0乃至62.5%の範囲にあるセルロースアシレートであることが好ましく、少なくとも二つの芳香族環を有する芳香族化合物及び平均一次粒径1〜100nmの粒子を各々少なくとも1種含んでなることが好ましい。
[透明支持体の製造方法]
本発明では、上記透明支持体は、溶液流延方法(ソルベントキャスト法)により製造することが好ましく、該溶液流延方法では、上記ポリマー等を有機溶媒に溶解した溶液(ドープ)を用いて製造される。
用いる有機溶媒としては、従来公知の有機溶媒が挙げられ、例えば溶解度パラメーターで17〜22の範囲ものが好ましい。溶解度パラメーターは、例えばJ.Brandrup、E.H等の「PolymerHandbook(4th.edition)」、VII/671〜VII/714に記載の内容のものを表す。低級脂肪族炭化水素の塩化物、低級脂肪族アルコール、炭素原子数3から12までのケトン、炭素原子数3〜12のエステル、炭素原子数3〜12のエーテル、炭素原子数5〜8の脂肪族炭化水素類、炭素数6〜12の芳香族炭化水素類等が挙げられる。
エーテル、ケトンおよびエステルは、環状構造を有していてもよい。エーテル、ケトンおよびエステルの官能基(すなわち、−O−、−CO−および−COO−)のいずれかを二つ以上有する化合物も、有機溶媒として用いることができる。有機溶媒は、アルコール性水酸基のような他の官能基を有していてもよい。二種類以上の官能基を有する有機溶媒の場合、その炭素原子数は、いずれかの官能基を有する化合物の規定範囲内であればよい。
具体的には、例えば前記の公技番号2001−1745号p.12−16に詳細に記載されている化合物が挙げられる。
特に、本発明では、溶媒は2種類以上の有機溶媒を混合して用いることが好ましく、特に好ましい有機溶媒は、互いに異なる3種類以上の混合溶媒であって、第1の溶媒が炭素原子数が3〜4のケトンおよび炭素原子数が3〜4のエステル或いはその混合液であり、第2の溶媒が炭素原子数が5〜7のケトン類またはアセト酢酸エステルから選ばれ、第3の溶媒として沸点が30〜170℃のアルコールまたは沸点が30〜170℃の炭化水素から選ばれることが好ましい。
とくに、酢酸エステルを20〜90質量%、ケトン類を5〜60質量%、アルコール類を5〜30質量%の混合比で用いることがセルロースアシレート等の上記ポリマーの溶解性の点から好ましい。
これらの混合溶媒中、アルコール類の配合割合は2vol%以上40vol%以下、より好ましくは3vol%以上30vol%以下、さらに好ましくは5vol%以上20vol%以下である。
アルコールは炭素原子数が1以上8以下のモノアルコールまたはジアルコールあるいは炭素原子数が2以上10以下のフルオロアルコールが好ましく、より好ましくはメタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、tert−ブタノール、1−ペンタノール、2−メチル−2−ブタノール、シクロヘキサノール、エチレングリコール、2−フルオロエタノール、2,2,2−トリフルオロエタノール、2,2,3,3−テトラフルオロ−1−プロパノールが挙げられる。これらは単独で添加しても、あるいは2種以上混合して添加しても良い。
特に、ハロゲン化炭化水素を含まない非塩素系溶媒などの非ハロゲン系有機溶媒系が好ましい態様として挙げられる。
技術的には、メチレンクロリドのようなハロゲン化炭化水素は問題なく使用できるが、地球環境や作業環境の観点では、有機溶媒はハロゲン化炭化水素を実質的に含まないことが好ましい。「実質的に含まない」とは、有機溶媒中のハロゲン化炭化水素の割合が5質量%未満(好ましくは2質量%未満)であることを意味する。また、製造した透明支持体(セルロースアシレートフィルム等)から、メチレンクロリドような塩素化炭化水素が全く検出されないことが好ましい。
本発明に使用する非塩素系有機溶媒系は、例えば特開2002−146043号公報段落番号〔0021〕〜〔0025〕、特開2002−146045号公報段落番号〔0016〕〜〔0021〕等に記載の溶媒系の例が挙げられる。
溶媒には、炭素原子数が5以上10以下の芳香族あるいは脂肪族の炭化水素を0vol%以上10vol%以下添加しても良い。炭化水素の例には、シクロヘキサン、ヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレンが含まれる。
本発明に用いるドープには、上記本発明の有機溶媒以外に、フルオロアルコールを全溶媒量の10質量%以下、より好ましくは5質量%以下含有させることもフィルムの透明性を向上させたり、溶解性を早めたりする上で好ましい。該フルオロアルコールとしては例えば、特開平8−143709号公報段落番号[0020]、同11−60807号公報段落番号[0037]等に記載の化合物が挙げられる。これらのフルオロアルコールは一種または二種以上使用してもよい。
本発明のセルロースアシレート溶液を調製する際に、容器内に窒素ガスなどの不活性ガスを充満させてもよい。セルロースアシレート溶液の製膜直前の粘度は、製膜の際、流延可能な範囲であればよく、通常10〜2000Pa・sの範囲に調製されることが好ましく、特に30〜400Pa・sが好ましい。
上記ドープの調製については、その溶解方法は特に限定されず、室温溶解法でもよく、冷却溶解法あるいは高温溶解方法、さらにはこれらの組み合わせで実施される。これらに関しては、例えば特開平5−163301、特開昭61−106628、特開昭58−127737、特開平9−95544、特開平10−95854、特開平10−45950、特開2000−53784、特開平11−322946、さらに特開平11−322947、特開平2−276830、特開2000−273239、特開平11−71463、特開平04−259511、特開2000−273184、特開平11−323017、特開平11−302388などに記載のセルロースアシレート溶液の調製法が挙げられる。以上記載したこれらのセルロースアシレートの有機溶媒への溶解方法は、本発明の範囲であれば本発明においても適宜これらの技術を適用できる。さらにセルロースアシレートのドープ溶液は、溶液の濃縮と濾過が通常実施され、同様に前記の公技番号2001−1745号p.25に詳細に記載されている。なお、高温度で溶解する場合は、使用する有機溶媒の沸点以上の場合がほとんどであり、その場合は加圧状態で用いられる。
(微粒子の添加混合方法)
微粒子をセルロースアシレート溶液へ添加する場合は、前記したような粗大な粒子が存在しないように出来れば特にその方法に限定されずいずれの方法でも所望のセルロースアシレート溶液を得ることができれば問題ない。
上記微粒子は上記のドープ調整とは別に分散液を調製した後にドープに混合分散する方法が好ましい。例えば以下に示すような方法が挙げられる。
(1)溶剤(ドープに用いる有機溶媒と同じもの)と微粒子を撹拌混合した後、分散機で微粒子分散液とし、ドープ液に加えて撹拌する。
(2)上記溶剤と微粒子を撹拌混合した後、分散機で微粒子分散液とし、別に溶剤に少量のセルロースアシレートを加え、撹拌溶解する。これに前記微粒子分散液を加えて撹拌して得られる微粒子添加液をインラインミキサーでドープ液と十分混合する。
(3)上記溶剤に少量のバインダーを加えて撹拌溶解し、これに微粒子を加えて分散機で分散して微粒子分散液とする。微粒子添加液をインラインミキサーでドープ液と十分混合する。バインダーとしては、セルロースアシレート等が挙げられ、好ましくはドープに供せられるセルロースアシレートを用いる。
分散は、従来公知の湿式分散方法を用いることが出来る。
メディア湿式分散機としては、サンドグラインダーミル(例、ピン付きビーズミル)、ダイノミル、高速インペラーミル、ペッブルミル、ローラーミル、アトライター、コロイドミル、ボールミル等の従来公知のものが挙げられる。特に本発明の酸化物微粒子を超微粒子に分散するには、サンドグラインダーミル、ダイノミル、及び高速インペラーミルが好ましい。
上記の範囲の粗大粒子を含まない超微粒子の大きさに分散するには平均粒径0.8mm未満のメディアを用いた湿式分散方法が好ましい。上記分散機と共に用いるメディアとしては、その平均粒径が0.8mm未満であり、平均粒径がこの範囲のメディアを用いることで上記の無機微粒子径が1〜100nmとなり、かつ粒子径の揃った超微粒子を得ることができる。メディアの平均粒径は、好ましくは0.5mm以下であり、より好ましくは0.05〜0.3mmである。
また、湿式分散に用いられるメディアとしては、ビーズが好ましい。具体的には、ジルコニアビーズ、ガラスビーズ、セラミックビーズ、スチールビーズ等が挙げられ、分散中におけるビーズの破壊等を生じ難い等の耐久性と超微粒子化の上から0.05〜0.2mmのジルコニアビーズが特に好ましい。
メディアレス分散機としては超音波型、遠心型、高圧型などがあり利用できる。高圧分散装置は、例えば管径1〜2000μmの細管中で装置内部の最大圧力条件が9.8MPa以上であることが好ましい。更に好ましくは19.6MPa以上である。またその際、最高到達速度が100m/sec以上に達するもの、伝熱速度が420kJ/hr以上に達するものが好ましい。高圧分散装置にはMicrofluidics Corporation社製超高圧ホモジナイザ(商品名マイクロフルイダイザ)あるいはナノマイザ社製ナノマイザがあり、他にもマントンゴーリン型高圧分散装置、例えばイズミフードマシナリ製ホモジナイザ、三和機械(株)社製UHN−01等が挙げられる。
更には、分散物中の分散粒子がその平均粒径、および粒子径の単分散性が上記した範囲を満足する上で、分散物中の粗大凝集物を除去するためにビーズとの分離処理において精密濾過されるように濾材を配置することも好ましい。精密濾過するための濾材は濾過粒子サイズ25μm以下が好ましい。精密濾過するための濾材のタイプは上記性能を有していれば特に限定されないが例えばフィラメント型、フェルト型、メッシュ型が挙げられる。分散物を精密濾過するための濾材の材質は上記性能を有しており、且つ塗布液に悪影響を及ばさなければ特に限定はされないが例えばステンレス、ポリエチレン、ポリプロピレン、ナイロン等が挙げられる。
上記した微粒子以外の添加剤は、例えば、セルロースアシレートと溶媒を混合する段階で含有させてもよいし、セルロースアシレートと溶媒で混合溶液を作製した後に、添加物を添加してもよい。更にはドープを流延する直前に添加混合してもよく、所謂直前添加方法でありその混合はスクリュー式混練をオンラインで設置して用いられる。これらの添加剤の混合は、添加物それ自身を添加してもよいが、予め溶媒やバインダー(好ましくはセルロースアシレート)を用いて溶解しておいたり、場合により分散して安定化した溶液として用いることも好ましい態様である。
次に、本発明において、上記ポリマーとしてセルロースアシレートを用いた場合のセルロースアシレート溶液を用いた透明支持体としてのフィルムの製造方法について述べる。セルロースアシレートフィルムを製造する方法及び設備は、セルロースアシレートフィルム製造に供するドラム方法若しくはバンド方法と称される、従来公知の溶液流延製膜方法及び溶液流延製膜装置が用いられる。
製膜の工程を説明すると、溶解機(釜)から調製されたドープ(セルロースアシレート溶液)を貯蔵釜に一旦貯蔵し、ドープに含まれている泡を脱泡して最終調製をする。調製されたドープは精密濾過により異物を除去することが重要である。具体的には、濾過のフィルターは、ドープ液中の成分が除去されない範囲でできるだけ孔径の小さいものを使うことが好ましい。濾過には絶対濾過精度が0.1〜100μmのフィルタが用いられ、さらには絶対濾過精度が0.1〜25μmであるフィルタを用いることが好ましく用いられる。フィルタの厚さは、0.1〜10mmが好ましく、更には0.2〜2mmが好ましい。その場合、濾過圧力は1.47MPa(15kgf/cm2)以下、より好ましくは9.80MPa(10kgf/cm2)以下、更には1.96MPa(2kgf/cm2)以下で濾過することが好ましい。
また、精密濾過のために、順次フィルターの孔径を小さくして濾過を数回行うことも好ましい。
精密濾過するための濾材のタイプは上記性能を有していれば特に限定されないが例えばフィラメント型、フェルト型、メッシュ型が挙げられる。分散物を精密濾過するための濾材の材質は上記性能を有しており、且つ塗布液に悪影響を及ばさなければ特に限定はされないが、例えばステンレス、ポリエチレン、ポリプロピレン、ナイロン等が挙げられる。
調製したドープをドープ排出口から、例えば回転数によって高精度に定量送液できる加圧型定量ギヤポンプを通して加圧型ダイに送り、ドープを加圧型ダイの口金(スリット)からエンドレスに走行している流延部の金属支持体の上に均一に流延し、金属支持体がほぼ一周した剥離点で、生乾きのドープ膜(ウェブとも称する)を金属支持体から剥離する。得られるウェブの両端をクリップで挟み、幅保持しながらテンターで搬送して乾燥し、続いて乾燥装置のロール群で搬送し乾燥を終了して巻き取り機で所定の長さに巻き取る。テンターとロール群の乾燥装置との組み合わせはその目的により変わる。
流延工程で用いる金属支持体は、その表面が算術平均粗さ(Ra)が0.015μm以下で、十点平均粗さ(Rz)が0.05μm以下であることが好ましい。より好ましくは、算術平均粗さ(Ra)が0.001〜0.01μmで、十点平均粗さ(Rz)が0.001〜0.02μmである。更に好ましくは、(Ra)/(Rz)比が0.15以上である。このように、金属支持体の表面粗さを所定の範囲とすることで、製膜後のフィルムの表面形状を本発明の範囲内に制御できる。
これらの各製造工程(流延(共流延を含む)、金属支持体、乾燥、剥離、延伸などに分類される)については、前記の公技番号2001−1745号p.25−30に詳細に記載された内容が挙げられる。流延工程では1種類のセルロースアシレート溶液を単層流延してもよいし、2種類以上のセルロースアシレート溶液を同時及びまたは逐次共流延しても良い。
特に、上記したような組成物からなるドープからフィルムに製膜する工程において、添加した化合物が凝集や偏在することなく行われるには、乾燥工程が重要である。
支持体上におけるドープの乾燥は、一般的には支持体(ドラム或いはベルト)の表面側、つまり支持体上にあるウェブの表面から熱風を当てる方法、ドラム或いはベルトの裏面から熱風を当てる方法、温度コントロールした液体をベルトやドラムのドープ流延面の反対側の裏面から接触させて、伝熱によりドラム或いはベルトを加熱し表面温度をコントロールする液体伝熱方法などがあるが、裏面液体伝熱方式が好ましい。流延される前の支持体の表面温度はドープに用いられている溶媒の沸点以下であれば何度でもよい。しかし乾燥を促進するためには、また支持体上での流動性を失わせるためには、使用される溶媒の内の最も沸点の低い溶媒の沸点より1〜10℃低い温度に設定することが好ましい。
製膜したポリマーフィルムの乾燥工程における乾燥温度は30〜250℃、特に40〜180℃が好ましい。さらに残留溶媒を除去するために、50〜160℃で乾燥され、その場合逐次温度を変えた高温風で乾燥して残留溶剤を蒸発させることが好ましく用いられている。以上の方法は、特公平5−17844号公報に記載がある。この方法によると、流延から剥ぎ取りまでの時間を短縮することが可能である。使用する溶媒によって乾燥温度、乾燥風量及び乾燥時間が異なり、使用溶媒の種類、組合せに応じて適宜選べばよい。最終仕上がりフィルムの残留溶媒量は2重量%以下、更に0.4重量%以下であることが、寸度安定性が良好なフィルムを得る上で好ましい。なお本発明においては、本発明の剥離剤で更に剥離時間を短縮でき、かつ剥離時の抵抗が低くなることで、面状(剥離時の横方向のムラ、ゲル状ブツの剥げ残りに起因するブツなど)の悪化がないポリマーフィルムを得ることができる。
支持体から剥離後の乾燥工程では、溶媒の蒸発によってフィルムは巾方向に収縮しようとする。高温度で乾燥するほど収縮が大きくなる。この収縮は可能な限り抑制しながら乾燥することが、出来上がったフィルムの平面性を良好にする上で好ましい。この点から、例えば、特開昭62−46625号公報に示されているような乾燥全工程或いは一部の工程を幅方向にクリップでウェブの巾両端を巾保持しつつ乾燥させる方法(テンター方式)が好ましい。
ポリマーフィルムを製造する速度はベルトの長さ、乾燥方法、ドープ溶媒組成等によっても変化するが、ウェブをベルトから剥離する時点での残留溶媒の量によって殆ど決まってしまう。つまり、ドープ膜の厚み方向でのベルト表面付近での溶媒濃度が高すぎる場合には、剥離した時、ベルトにドープが残ってしまい、次の流延に支障を来すため、剥離残りは絶対あってはならないし、更に剥離する力に耐えるだけのウェブ強度が必要であるからである。剥離時点での残留溶媒量は、ベルトやドラム上での乾燥方法によっても異なり、ドープ表面から風を当てて乾燥する方法よりは、ベルト或いはドラム裏面から伝熱する方法が効果的に残留溶媒量を低減することができる。
具体的には、透明支持体における残留溶剤量が、0.01〜1.5質量%の範囲となる条件で乾燥することが好ましい。より好ましくは0.01〜1.0質量%である。
流延工程では流延方向(縦方向)等の一方向のみの1軸延伸、或いは流延方向及び他の方向(横方向)の2軸延伸等が行われることが好ましい。
さらに上記ドープは、他の機能層(例えば、接着層、染料層、帯電防止層、アンチハレーション層、UV吸収層、偏光層など)を同時に流延してもよい。
[延伸処理]
上記透明支持体としてのセルロースアシレートフィルムの製造において、フィルム面に沿った少なくとも一方向に延伸することが好ましい。すなわち、フィルムを縦方向及び横方向のうちの少なくとも一方向に延伸するか、更にはこれらを組み合わせた多軸延伸することがより好ましい。フィルムの延伸倍率(元の長さに対する延伸による増加分の比率)は、0.5〜300%が好ましく、更には1〜200%が好ましく、特に1〜150%が好ましい。具体的には、上記の公技番号2001−1745号p.29−30に詳細に記載されている内容が挙げられる。
[透明支持体の特性]
そして、本発明においては、表面を親水化処理する前の上記透明支持体が、以下のような内容の特徴を有することが好ましい。
(透明支持体の表面形状)
親水化処理を施す前の透明支持体の表面が、JISB0601−1994に基づく該膜の表面凹凸の算術平均粗さ(Ra)が0.0001〜0.1μmであるのが好ましく、十点平均粗さ(Rz)が0.0001〜0.3μmであるのが好ましく、及び最大高さ(Ry)が0.0002〜1μmであるのが好ましい。更に好ましくは、算術平均粗さ(Ra)が0.0001〜0.08μm、十点平均粗さ(Rz)が0.0001〜0.1μm及び最大高さ(Ry)が0.0002〜0.5μmである。より更に好ましくは、算術平均粗さ(Ra)が0.0001〜0.05μmで、十点平均粗さ(Rz)が0.002〜0.095μmの範囲であり、且つ最大高さ(Ry)が0.0002〜0.2μmである。特に好ましくは、算術平均粗さ(Ra)が0.001〜0.045μmで、十点平均粗さ(Rz)が0.002〜0.09μmの範囲であり、且つ最大高さ(Ry)が0.0002〜0.15μmである。
更には、微細な表面凹凸形態において、算術平均粗さ(Ra)と十点平均粗さ(Rz)との比(Ra/Rz)が0.15以上、且つJISB0601−1994に基づく該膜の表面凹凸の平均間隔(Sm)が5μm以下であることが好ましい。ここで、RaとRzの関係は表面の凹凸の均一性を示すものである。好ましくは、(Ra/Rz)比が0.17以上、平均間隔(Sm)が0.001〜1μmである。
膜表面の凹と凸の形状は、透過型電子顕微鏡(TEM)、原子間力顕微鏡(AFM)等により評価することが出来る。
(吸湿膨張係数)
本発明の光学補償シートに用いる透明支持体、特に透明支持体としてセルロースアシレートフィルムを用いる場合には、その吸湿膨張係数を30×10-5/%RH以下とすることが好ましい。吸湿膨張係数は、15×10-5/%RH以下とすることが好ましく、10×10-5/%RH以下であることがさらに好ましい。また、吸湿膨張係数は小さい方が好ましいが、通常は、1.0×10-5/%RH以上の値である。吸湿膨張係数は、一定温度下において相対湿度を変化させた時の試料の長さの変化量を示す。
この吸湿膨張係数を調節することで、光学補償シートの光学補償機能を維持したまま、額縁状の透過率上昇すなわち歪みによる光漏れを防止することができる。
吸湿膨張係数の測定方法について以下に示す。すなわち、作製したセルロースアシレートフィルムから幅5mm、長さ20mmの試料を切り出し、片方の端を固定して25℃、20%RH(R0)の雰囲気下にぶら下げる。他方の端に0.5gの重りをぶら下げて、10分間放置し長さ(L0)を測定する。次に、温度は25℃のまま、湿度を80%RH(R1)にして、長さ(L1)を測定する。吸湿膨張係数は下式により算出する。
吸湿膨張係数[/%RH]={(L1−L0)/L0}/(R1−R0)
作製したセルロースアシレートフィルム等の透明支持体の吸湿による寸度変化を小さくするには、疎水基を有する化合物或は微粒子等を添加することが好ましい。疎水基を有する化合物としては、分子中に脂肪族基や芳香族基のような疎水基を有する可塑剤や劣化防止剤の中で該当する素材が特に好ましく用いられる。これらの化合物の添加量は、調製する溶液(ドープ)に対して0.01乃至10質量%の範囲にあることが好ましい。また、セルロースアシレートフィルム等の透明支持体中の自由体積を小さくすればよく、具体的には、後述のソルベントキャスト方法による成膜時の残留溶剤量が少ない方が自由体積が小さくなる。セルロースアシレートフィルム等の透明支持体に対する残留溶剤量が、0.01乃至1.00質量%の範囲となる条件で乾燥することが好ましい。
(透湿度及び含水量)
本発明の光学補償シートに用いるセルロースアシレートフィルム等の透明支持体の透湿度は、JIS規格JISZ0208、B条件(温度40℃、湿度90%RH)において、2〜150g/m2・24hであることが好ましい。10〜120g/m2・24hであることがより好ましく、10〜100g/m2・24hであることが特に好ましい。150g/m2・24hを越えると、透明支持体のRe値、Rth値の湿度依存性の絶対値が0.5nm/%RHを超える傾向が強くなり、また光学補償シートとした場合も、Re値、Rth値の湿度依存性の絶対値が0.3nm/%RHを超える傾向が強くなってしまい、この光学補償シートや偏光板が液晶表示装置に組み込まれた場合、色味の変化や視野角の低下を引き起こす場合があるので好ましくない。また、透湿度が2g/m2・24h未満であると、偏光膜の両面などに貼り付けて偏光板を作製する場合に、透明支持体により接着剤の乾燥が妨げられ、接着不良を生じる傾向がある。
透湿度の測定法は、「高分子の物性II」(高分子実験講座4 共立出版)p.285−294:蒸気透過量の測定(質量法、温度計法、蒸気圧法、吸着量法)に記載の方法を適用することができる。
本発明の光学補償シートを構成するセルロースアシレートフィルム等の透明支持体の含水量は、ポリビニルアルコールなどの水溶性ポリマーとの接着性を損なわないために、膜厚のいかんに関わらず、30℃85%RH下で0.3〜12g/m2であることが好ましい。0.5〜5g/m2であることがより好ましい。上記範囲内にあると、レターデーションの湿度変化による依存性が少ないので好ましい。
(機械的特性)
本発明に用いる透明支持体の幅方向のカール値は−10/m〜+10/mであることが好ましい。本発明の透明支持体に後述する表面処理、ラビング処理の実施や配向膜、光学異方性層の設置などを長尺で広幅の透明支持体に対し行う際に、透明支持体の幅方向のカール値が前述の範囲内であると、フィルムのハンドリングが適正に行われ、フィルムの切断が生じ難いので好ましい。また、フィルムのエッジや中央部などで、フィルムが搬送ロールと強く接触することがなく発塵せず、フィルム上への異物付着が少なく、光学補償シートの点欠陥や塗布スジの頻度が許容値の範囲にあるので好ましい。また、カールを本発明の範囲とすることで光学異方性層を設置するときに発生しやすい色斑故障を低減できるほか、偏光膜貼り合せ時に気泡が入ることを防ぐことができ、好ましい。
カール値は、アメリカ国家規格協会の規定する測定方法(ANSI/ASCPH1.29−1985)に従い測定することができる。
また、引掻き強度は1g以上であることが好ましく、5g以上であることがより好ましく、10g以上であることが特に好ましい。
これらの範囲において、フィルム表面の耐傷性、ハンドリング性が問題なく保持されるので好ましい。
引掻き強度は円錐頂角が90度で先端の半径が0.25mのサファイヤ針を用いて支持体表面を引掻き、引掻き跡が目視にて確認できる荷重(g)をもって評価することができる。
(透明支持体の光学異方性)
本発明に用いる透明支持体は光学異方性を示し、その程度を表すReレターデーション値およびRthレターデーション値は、それぞれ、前記のとおりである。
透明支持体の複屈折率(Δn:nx−ny)は、波長550nmに対して0.000025〜0.020であることが好ましく、より好ましくは0.0003〜0.005である。また、厚み方向の複屈折率{(nx+ny)/2−nz}は、波長550nmに対して0.0006〜0.04であることが好ましく、より好ましくは0.001〜0.007である。
ポリマーフィルムのレターデーション値を調整するためには延伸のような外力を与える方法が一般的であり、他の方法として、光学異方性を調節するための前述したようなレターデーション調整剤が、場合により添加される。
<透明支持体の親水化処理>
本発明の透明支持体は、配向膜形成用組成物が均一に塗工され且つ塗工によって塗設された配向膜との密着性が充分に発現するように、支持体を表面処理して表面が親水性に改質される親水化処理を行う。
本発明では、透明支持体への親水化処理の一つの態様として、上記のような微細な凹凸形状付与を行った後、アルカリ溶液によるアルカリ鹸化処理を行うことが好ましく挙げられる。
アルカリ鹸化処理としては、アルカリ溶液中に透明支持体を浸漬する、透明支持体表面にアルカリ溶液を吹き付ける或は塗布する等いずれの方法も用いることができる。透明支持体の片面のみをムラ無く均一に鹸化処理できる塗布方式によるアルカリ鹸化処理がより好ましい。アルカリ鹸化処理については後記する。
アルカリ鹸化処理の前後に、物理的処理を行ってもよい。物理的処理としては、コロナ処理、グロー放電処理、火炎処理、紫外線照射処理、フレームプラズマ処理が挙げられる。具体的には、発明協会公開技法公技番号2001−1745号(発行2001年3月15日)p.30−31に記載の内容、特開2001−9973号公報等が挙げられる。
[親水処理後の透明支持体表面に存在する界面活性剤量]
本発明の親水処理後の透明支持体の親水性表面側に存在する界面活性化量は、0.001〜1.0mg/m2であり、好ましくは、0.001〜0.5mg/m2である。
界面活性剤の残存量が上記範囲を超えると、その後の配向膜形成及び光学異方性層形成において悪い影響を及ぼす。さらに、後述される配向膜ではその塗布時に表面張力が変化し膜形成後の膜厚が均一でなくなる。また、光学異方性層では、液晶化合物の配向状態が変化し、望ましくない光学特性やムラ、または配向しなくなる。
[親水処理後の透明支持体表面に存在する界面活性剤量の測定]
親水処理後の透明支持体の含有する界面活性剤量は、例えば界面活性剤が非イオン系界面活性剤である場合、以下の方法で知ることが出来る。
(前処理)
親水化処理後の透明支持体1cm2を、メタノール/水=1/1溶液1ml中に入れ、1分間超音波処理し、界面活性剤を抽出する。抽出液を0.45μmのフィルターにてろ過する。
(HPLC/MS測定)
装置は、Agilent社製HP−1100HPLCと四重極型Single MSを搭載した1100MSD Model SLを組み合わせたLC/MSシステムを用いる。
測定は、ODSカラム(TOSOH TSK−gel 80TS)とBufferとして10mMの酢酸アンモニウムを添加したメタノール/水溶離液を用いたグラジエント分析で分離し、検出はイオン化法としてESIを用い、Posi(陽)イオン測定にて界面活性剤に対応する質量数を検出し、定量する。
[アルカリ鹸化処理]
アルカリ鹸化処理は、アルカリ溶液を透明支持体に浸漬、噴射若しくは塗布することで行い、塗布で鹸化処理することが好ましい。
鹸化処理は、処理するフィルムの変形、処理液の変質等が生じない温度である120℃を越えない範囲の処理温度で行うことが好ましい。更に温度10℃以上100℃以下の範囲が好ましい。特に、温度20〜60℃が好ましい。
また、鹸化処理の時間は、アルカリ溶液、処理温度により適宜調整して決定するが、1秒から60秒の範囲で行われるのが好ましい。
[アルカリ溶液]
(アルカリ剤)
本発明のアルカリ溶液はpH11以上のアルカリ溶液が好ましい。より好ましくはpH12〜14である。
アルカリ溶液に用いられるアルカリ剤の例として、水酸化ナトリウム、同カリウム、同リチウム等の無機アルカリ剤、また、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、DBU(1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセン)、DBN(1,5−ジアザビシクロ[4,3,0]−5−ノネン)、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、トリエチルブチルアンモニウムヒドロキシドなどの有機アルカリ剤も用いられる。これらのアルカリ剤は単独もしくは二種以上を組み合わせて併用することもでき、一部を例えばハロゲン化したような塩の形で添加してもよい。
これらのアルカリ剤の中でも、水酸化ナトリウム或は水酸化カリウムが、これらの量の調整により広いpH領域でのpH調整が可能となるため好ましい。
アルカリ溶液の濃度は、使用するアルカリ剤の種類、反応温度および反応時間に応じて決定されるが、アルカリ剤の含有量は、アルカリ溶液中の0.1〜3mol/kgが好ましく、0.5〜2mol/kgがより好ましい。
(溶媒)
本発明のアルカリ溶液の溶媒は、水及び水溶性有機溶媒の混合溶液が好ましい。有機溶媒としては、水と混和可能な有機溶媒であればいずれも用いることができるが沸点が好ましくは120℃以下、更に好ましくは60〜120℃、より好ましくは100℃以下のものが好ましい。
溶媒は、無機性/有機性値(I/O値)が0.5以上、且つ溶解度パラメーターが16〜40[mJ/m31/2の範囲のものが好ましい。より好ましくは、I/O値が0.6〜10、且つ溶解度パラメーターが18〜31[mJ/m31/2である。I/O値がこの範囲よりも無機性が強いか、または溶解度パラメーターが低いと、アルカリ鹸化速度が低下し、また鹸化度の全面均一性も不満足となる傾向がある。一方、I/O値が上記範囲よりも有機性の側であるか、または溶解度パラメーターが高溶解性の側では、鹸化速度は速いが、ヘイズを生じ易く、したがって全面均一性の点では同様に不満足となる傾向がある。
また、有機溶媒、とりわけ上記有機性と溶解性の各範囲の有機溶媒を後述する界面活性剤、相溶化剤等と組み合わせて用いると高い鹸化速度が維持されて、かつ全面に亘る鹸化度の均一性が向上する。すなわち、上記のアルカリ鹸化処理のアルカリ溶液が、沸点が60以上120℃以下の水溶性有機溶媒、並びに界面活性剤および相溶化剤の少なくともいずれかを含有するアルカリ溶液であるのが好ましい。
好ましい特性値を有する有機溶媒は、例えば、有機合成化学協会編、「新版溶剤ポケットブック」((株)オーム社、1994年刊)等に記載のものが挙げられる。(また、有機溶媒の無機性/有機性値(I/O値)については、例えば、田中善生著「有機概念図」(三共出版社1983年刊)p.1−31に解説されている)。
具体的には、一価脂肪族アルコール類(例、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール等)、脂環式アルカノール(例、シクロヘキサノール、メチルシクロヘキサノール、メトキシシクロヘキサノール、シクロヘキシルメタノール、シクロヘキシルエタノール、シクロヘキシルプロパノール等)、フェニルアルカノール(例、べンジルアルコール、フェニルエタノール、フェニルプロパノール、フェノキシエタノール、メトキシベンジルアルコール、ベンジルオキシエタノール等)、複素環式アルカノール類(フルフリルアルコール、テトラヒドロフルフリルアルコール等)、グリコール化合物のモノエーテル類(メチルセルソルブ、エチルセルソルブ、プロピルセルソルブ、メトキシメトキシエタノール、ブチルセルソルブ、ヘキシルセルソルブ、メチルカルビトール、エチルカルビトール、プロピルカルビトール、ブチルカルビトール、エトキシトリグリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル等)ケトン類(例、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等)、アミド類(例、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチルイミダゾリジノン等)、スルホキシド類(例、ジメチルスルホキシド)およびエーテル類(例、テトラヒドロフラン、ピラン、ジオキサン、トリオキサン、ジメチルセルソルブ、ジエチルセルソルブ、ジプロピルセルソルブ、メチルエチルセルソルブ、ジメチルカルビトール、ジメチルカルビトール、メチルエチルカルビトール等)等が挙げられる。用いる有機溶媒は、単独若しくは2種以上を混合して用いてもよい。
有機溶媒を単独或いは2種以上を混合する場合の少なくとも一種の有機溶媒は、水への溶解性が大きなものが好ましい。有機溶媒の水の溶解度は、50質量%以上が好ましく、水と自由に混合するものがより好ましい。これによりアルカリ剤、鹸化処理で副生する脂肪酸の塩、空気中の二酸化炭素を吸収して生じた炭酸の塩等への溶解性が充分なアルカリ溶液を調製できるので好ましい。
有機溶媒の溶媒中の使用割合は、溶媒の種類、水との混和性(溶解性)、反応温度および反応時間に応じて決定する。
水と有機溶媒の混合比は、3/97〜85/15質量比が好ましい。より好ましくは5/95〜60/40質量比であり、更に好ましくは15/85〜40/60質量比である。この範囲において、アシレートフィルムの光学特性を損なうことなく容易にフィルム全面が均一に鹸化処理されるので好ましい。
本発明に用いるアルカリ溶液が含有する有機溶媒として、上記した好ましいI/O値を有する有機溶媒とは異なる有機溶媒(例えばフッ化アルコール等)を、後述の界面活性剤、相溶化剤の溶解助剤として併用してもよい。その含有量はアルカリ鹸化処理に使用する液の総質量に対して0.1〜5%が好ましい。
(界面活性剤)
本発明に用いるアルカリ溶液は、界面活性剤を含有する。界面活性剤を添加することによって表面張力を下げて塗布を容易にしたり、塗膜の均一性を上げてハジキ故障を防止し、かつ有機溶媒が存在すると起こり易いヘイズを抑止し、さらに鹸化反応が均一に進行する。その効果は、後述する相溶化剤の共存によって特に顕著となる。用いられる界面活性剤は、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、フッ素系界面活性剤等のいずれであってもよいが、特に非イオン性界面活性剤であることが好ましい。
具体的には、例えば、吉田時行著「界面活性剤ハンドブック(新版)」(工学図書、1987年刊行)、「界面活性剤の機能創製・素材開発・応用技術」第1編(技術教育出版、2000年刊行)等記載の公知の化合物が挙げられる。
これらの界面活性剤の中でも、カチオン性界面活性剤としての4級アンモニウム塩類、両性界面活性剤としてのベタイン型化合物類、特に非イオン性界面活性剤としての各種のポリアルキレンレングリコール誘導体類、各種のポリエチレンオキサイド付加物類等のポリエチレンオキサイド誘導体類、が好ましい。
アルカリ溶液には、非イオン性界面活性剤とアニオン性界面活性剤または非イオン性界面活性剤とカチオン性界面活性剤を共存させて用いることも本発明の効果が高められて好ましい。
非イオン界面活性剤として、ポリ(オキシアルキレン)アルキルエーテル類、ポリ(オキシアルキレン)脂肪族ソルビタンエステル類、ポリ(オキシアルキレン)脂肪族エステル類、グリセリン脂肪酸モノエステル類が好ましい。前記のアルキレン基としては、エチレン基、プロピレン基などが挙げられるが、エチレン基が好ましい。
これらの中でも、ポリ(オキシアルキレン)アルキルエーテル類が好ましく、ポリ(オキシエチレン)アルキルエーテル類が特に好ましい。
非イオン系界面活性剤の具体例としては、Brij(R)35などのポリ(オキシエチレン)直鎖アルキルエーテル類、Triton(R)X−100などのポリ(オキシエチレン)分岐アルキルフェニルエーテル類、Tween(R)20などのポリ(オキシエチレン)脂肪酸ソルビタンエステル類、ポリ(オキシエチレン)脂肪酸エステル類、グリセリン脂肪酸モノエステル類、が挙げられる。このなかで、アルカリによる加水分解の影響を受けにくい、ポリ(オキシエチレン)アルキルエーテル類が、好ましい。
これらの界面活性剤のアルカリ溶液に対する添加量は、溶液全体中好ましくは、0.001〜10質量%であり、より好ましくは、0.01〜5質量%の範囲が挙げられる。
(相溶化剤)
本発明に用いられるアルカリ溶液は、相溶化剤を含有させることも好ましい。本発明において、「相溶化剤」とは、温度25℃において、相溶化剤100gに対して水の溶解度が50g以上となる親水性化合物をいう。相溶化剤の水の溶解度は、相溶化剤100gに対して、80g以上であるのが好ましく、100g以上であるのがより好ましい。また、相溶化剤が液状化合物である場合は、沸点が100℃以上であるのが好ましく、120℃以上であるのがより好ましい。
相溶化剤は、アルカリ溶液を貯留する浴等の壁面に付着したアルカリ溶液の乾燥を防止し、固着を抑制し、アルカリ溶液を安定に保持させる作用を有する。また、透明支持体の表面にアルカリ溶液を塗布して一定時間保持した後、鹸化処理を停止するまでの間に、塗布されたアルカリ溶液の薄膜が乾燥し、固形物の析出を生じ、水洗工程での固形物の洗い出しを困難にすることを防止する作用を有する。さらには、溶媒となる水と有機溶剤との相分離を防止する。特に、界面活性剤と有機溶剤と上述した相溶化剤との共存によって、処理された透明支持体は、ヘイズが少なく、かつ、長尺の連続鹸化処理の場合であっても安定して全面均一な鹸化度となる。
相溶化剤は、上記の条件を満たす材料であれば、特に限定されないが、例えば、ポリオール化合物、糖類等のヒドロキシル基および/またはアミド基を有する繰り返し単位を含む水溶性重合体が好適に挙げられる。
ポリオール化合物は、低分子化合物、オリゴマー化合物および高分子化合物のいずれも用いることができる。
脂肪族ポリオール類としては、例えば、炭素数2〜8のアルカンジオール(例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、グリセリンモノメチルエーテル、グリセリンモノエチルエーテル、シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール等)、ヒドロキシル基を3個以上含有する炭素数3〜18のアルカン類(例えば、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、トリメチロールブタン、ヘキサントリオール、ペンタエリスリトール、ジグリセリン、ジペンタエリスリトール、イノシトール等)が挙げられる。
ポリアルキレンオキシポリオール類としては、上記のような同じアルキレンジオール同士が結合していてもよく、異なるアルキレンジオールが互いに結合していてもよいが、同じアルキレンジオール同士が結合したポリアルキレンポリオールがより好ましい。いずれの場合も、結合数は3〜100であるのが好ましく、3〜50であるのがより好ましい。具体的には、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリ(オキシエチレン−オキシプロピレン)が挙げられる。
糖類としては、例えば、高分子学会高分子実験学編集委員会編「天然高分子」第二章(共立出版(株)、1984年刊)、小田良平等編「近代工業化学22、天然物工業化学II」((株)朝倉書店、1967年刊)等に記載されている水溶性化合物が挙げられる。中でも、遊離のアルデヒド基およびケトン基を持たない、還元性を示さない糖類が好ましい。
糖類は、一般に、グルコース、スクロース、還元基同士の結合したトレハロース型少糖類、糖類の還元基と非糖類が結合した配糖体および糖類に水素添加して還元した糖アルコールに分類されるが、いずれも本発明に好適に用いられる。
例えば、サッカロース、トレハロース、アルキル配糖体、フェノール配糖体、カラシ油配糖体、D,L−アラビット、リビット、キシリット、D,L−ソルビット、D,L−マンニット、D,L−イジット、D,L−タリット、ズリシット、アロズルシット、還元水あめが挙げられる。これらの糖類は、単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
ヒドロキシル基および/またはアミド基を有する繰り返し単位を有する水溶性重合体としては、例えば、天然ガム類(例えば、アラビアガム、グアーガム、トラガンドガム等)、ポリビニルピロリドン、ジヒドロキシプロピルアクリレート重合体、セルロース類またはキトサン類とエポキシ化合物(エチレンオキサイドまたはプロピレンオキサイド)との付加反応体が挙げられる。
中でも、アルキレンポリオール、ポリアルキレンオキシポリオール、糖アルコール等のポリオール化合物が好ましい。
相溶化剤の含有量は、アルカリ溶液全体中0.5〜25質量%であるのが好ましく、1〜20質量%であるのがより好ましい。
(その他の添加剤)
本発明に用いられるアルカリ溶液は、その他の添加剤を含有することができる。その他の添加剤としては、例えば、消泡剤、アルカリ溶液安定化剤、pH緩衝剤、防腐剤、防菌剤等の公知のものが挙げられる。
その他の添加剤の含有量は、アルカリ溶液全体中0.001〜30質量%であるのが好ましく、0.005〜25質量%であるのがより好ましい。
本発明に用いられるアルカリ溶液は、60〜120℃の沸点を有する水溶性有機溶媒、界面活性剤および相溶化剤を少なくとも含有することが好ましい。
[アルカリ溶液の塗布方法]
上記のアルカリ溶液を用いたセルロースアシレートフィルムの表面処理方法として、フィルムの片面のみを処理できる塗布方式が好ましい。塗布方法としては、ディップコーティング法、カーテンコーティング法、バーコーティング法、ロッドコーティング法(細い金属線を巻いたロッド)、ロールコーティング法(順転ロールコーター、逆転ロールコーター、グラビアコーター)、ダイコーティング法(エクストルージョンコーター(スロットコーター)、スライドコーター、スリットダイコーター)等の塗布法を挙げることができる。塗布方式に関しては、各種文献(例えば、Modern Coating and Drying Technology,Edward Cohen and Edgar B. Gutoff, Edits., VCH Publishers, Inc, 1992)に記載されている。アルカリ溶液の塗布量は、その後、水洗除去するため廃液処理を考慮して、極力抑制することが望ましく、1〜100ml/m2が好ましく、1〜50ml/m2がより好ましい。少ない塗布量域でも安定に操作できるロッドコーター、グラビアコーター、ブレードコーター、ダイコーターが好ましい。特に、少ない塗布量域で塗布スジのムラを発生することなく高速で塗布できる、塗布装置部と塗布支持体面が非接触の方法であるダイコーターが好ましい。
本発明の親水化処理方法は、対向する第1の面及び第2の面を有する疎水性透明支持体ウェブを、第2の面をバックアップロールにより支持しながら連続走行させ、第1の面にアルカリ溶液をダイコーターにより塗布する工程を含む疎水性透明支持体の親水化処理方法であって、親水化処理後の前記透明支持体の含有する界面活性剤量が0.001〜1.0mg/m2であることが好ましい。
更に、セルロースアシレートフィルムをその表面が少なくとも10℃以上の温度でアルカリ溶液で鹸化処理する工程、セルロースアシレートフィルムの温度を少なくとも10℃以上に維持する工程、そして、アルカリ溶液をセルロースアシレートフィルムから洗い落とす工程によりアルカリ鹸化処理を実施することが好ましい。
セルロースアシレートフィルムをその表面が所定の温度でアルカリ溶液で鹸化処理には、塗布する前に予め所定の温度に調整する工程、アルカリ液を予め所定の温度に調整しておく工程、或いはこれらを組み合わせた工程等が挙げられる。塗布する前に予め所定の温度に調整する工程と組み合わせることが好ましい。
鹸化反応後は、水洗、中和し水洗等でフィルム表面からアルカリ溶液及び鹸化処理反応物とを洗浄し除去することが好ましい。具体的には、例えば国際公開第02/46809号パンフレット等に記載の内容が挙げられる。
[親水化処理後の透明支持体の特性]
(親水化処理後の表面の性状)
親水化処理後の上記透明支持体は、その表面特性が以下の通りであることが好ましい。
表面の凹凸形状が、JIS B0601−1994に基づく表面凹凸の算術平均粗さ(Ra)が0.0001〜0.1μm、十点平均粗さ(Rz)が0.0001〜0.3μmであり、且つ最大高さ(Ry)が0.0002〜1μmとなる範囲であることが好ましい。
さらに好ましくは、算術平均粗さ(Ra)が0.0005〜0.1μm、十点平均粗さ(Rz)が0.0006〜0.3μmであり、表面凹凸平均間隔(Sm)が0.001〜1μm、且つ最大高さ(Ry)0.0005〜0.8μmである。
また、算術平均粗さ(Ra)と十点平均粗さ(Rz)との比(Ra/Rz)は0.02以上であることが好ましく、0.035以上であることがより好ましい。
上述の各表面形状因子が上述の範囲内であると、透明支持体に配向膜を塗設する場合に塗布面状が均一となり、且つ配向膜との密着性が良好であるので好ましい。さらに、これを用いた光学補償シートを液晶表示装置に用いた際の輝点故障や雲状故障等の光学的な欠陥が発生し難いので好ましい。
(アルカリ鹸化の深度)
上記親水化処理された透明支持体は、支持体表面から深さ方向に対して0.005〜1.0μmの範囲ででアルカリ鹸化された親水化性表面を有することが好ましい。上記範囲内であると、より表面形状を均一なものとすることができる点で好ましい。より好ましくは0.01〜0.8μmであり、更に好ましくは0.02〜0.6μmである。
鹸化深さ上記範囲内であると、表面付近のセルロースエステルの主鎖などの切断がによりフィルム表面のセルロースエステルの分子量が低下して脆くなったり、フィルムと配向膜の密着性が低下することがないので好ましい。さらに、フィルム表面が適度に鹸化処理され、低分子量化合物(可塑剤など)が表面付近に多く付着することないので好ましい。表面付近に多くの低分子量化合物が付着しないので、長期経時後に低分子量化合物は配向膜の表面へとせず、雲状故障を生じることがないので好ましい。一方、フィルムと配向膜との良好な密着性も得られるので好ましい。表面の極近傍に微量に存在する低分子量化合物(可塑剤など)が長期経時後に配向膜の表面にまで析出することがないので好ましい。
(表面特性の評価方法)
セルロースエステルフィルムの表面特性の評価方法について記載する。
(1)フィルム表面の鹸化深さ
セルロースエステルフィルムの表面をイオンエッチングしながら、光電子分光法(XPS)により、鹸化に用いるアルカリに特有の元素の存在量を測定することで鹸化深さを求める。エッチング時間から測定深さへの換算は、下記の標準サンプルの測定結果から行なえる。
(標準サンプルの作製)
トリアセチルセルロース10質量部にコロイダルシリカを5質量部を添加し、これを90質量部のジクロロメタンと10質量部のメタノールに溶解する。これをセルロースエステルフィルム(例えば市販のフジタック)の上に、乾膜後の厚みが約0.2μmとなるように塗布、そして乾燥する。この厚みを再度膜圧計を用いて測定し、t(μm)とする。
(エッチング時間から測定深さの換算)
光電子分光スペクトロメーター((株)島津製作所製、ESCA750型)を用い、加速電圧2kV、加速電流20mAで、圧力5×10-4Paのアルゴンガス中で標準サンプルをエッチングする。エッチングを2分間行い、Si−2pのシグナルを測定する。これを繰り返し、測定されるシグナルの強度が、第1回エッチング後のSi−2pのシグナルの1/10の強度となったときのエッチング時間の合計をT分とする。t(μm)/T(分)からエッチング速度を求め、実サンプルのエッチング時間から測定深さに換算する。
(実サンプルにおける表面の鹸化深さの評価)
セルロースエステルフィルムにアルカリ溶液を塗布(鹸化処理)する。アルカリ溶液の乾燥前に、表面に残った鹸化塗布液(アルカリ溶液)を濾紙で拭き取り、直ちに液体窒素で凍結した後、凍結乾燥する。これによりフィルムに浸透したアルカリを固定する。得られたセルロースエステルフィルムを、標準サンプルと同様の条件でエッチングしながらXPS測定することで鹸化深さを評価する。XPS測定の際に検出する元素は、アルカリの特異元素(例えばNaOHを用いた場合はNa、KOHを用いた場合はK)のシグナルに着目する。エッチングを2分間隔で行いXPS測定する。測定される特異元素のシグナル強度が、第1回目エッチング後の特異元素のシグナル強度の1/10以下となったときの深さ(エッチング時間の合計から深さに換算する)を鹸化深さとする。
(透明支持体表面の親水性)
上記の処理で得られた透明支持体の表面の親水性は、以下の物性の範囲であることが好ましい。
(1)透明支持体表面における水との接触角が、20〜55度の範囲にあることが好ましい。水との接触角は、25〜50度の範囲にあることがより好ましく、25〜45度の範囲にあることがさらに好ましい。
(2)透明支持体表面における表面エネルギーは55〜75mN/mの範囲にあることが好ましい。
表面特性の表面エネルギー(評価項目(2))の評価方法は、「ぬれの基礎と応用」(リアライズ社、1989年刊行)に記載の接触角法、湿潤熱法、及び吸着法により求めることが出来る。支持体としてセルロースアシレートフィルムを用いる場合、接触角法を用いることが好ましい。具体的には、表面エネルギーが既知の2種類の溶媒をセルロースアシレートフィルムに滴下し、液滴表面とフィルム表面との交点において、液滴に引いた接線とフィルム表面のなす角で、液滴を含む方の角を接触角と定義し、計算によりフィルムの表面エネルギーを算出できる。
以上のようにして本発明において用いられる特定の表面形状を有する、親水化処理された透明支持体が調製されるが、該表面形状及び光学特性を上述の範囲とするには、
(1)上述の(微粒子)及び(微粒子の添加混合方法)の欄に記載したように、微粒子の粒径が所定の範囲内であり、また粒径分布が所定範囲内であり、また粒子が粗くならないように分散を行うこと、
(2)上述のように、流延工程に用いる金属支持体はその表面の凹凸を一定の大きさとすること、
(3)上述のように、ドープの乾燥工程での乾燥条件を制御すること、特に乾燥工程における熱風の風向きや乾燥温度を上述の範囲内とすること、等により適宜調整可能であり、さらに
(4)上述のように、透明支持体の表面を親水化処理することにより、透明支持体の全面が速やかに均一に親水化され、この上に設けられる配向膜との密着性が良好となる。さらには、光学的欠陥の無い光学補償シートを安定して生産性よく得ることができる。
<光学補償シート>
本発明の光学補償シートは、上述の親水化処理された光学補償シート用透明支持体の親水化表面上に、配向膜及び光学異方性層をこの順に設けたものである。即ち、本発明の光学補償シートは、前記した通り、予め密着性を付与する親水化処理した透明支持体、配向膜、及び光学異方性層がこの順に積層された層構成を有する。
<配向膜>
本発明における配向膜は、有機化合物(好ましくはポリマー)塗布液を親水化処理された透明支持体上に塗布して形成される配向膜が好ましい。配向膜の膜自身の強度、透明支持体或は上層となる光学異方性層との密着性の観点から硬化されたポリマー膜であることが好ましい。配向膜は、その上に設けられる液晶性化合物の配向方向を規定するために設けられる。配向規定の方法としては、従来公知のラビング、磁場或は電場の付与、光照射等が挙げられる。
本発明に供される配向膜は、液晶セルの表示モードの種類に応じることが出来る。
液晶セル内の棒状液晶性分子の多くが実質的に垂直に配向している表示モード(例、VA、OCB、HAN)では、光学異方性層の液晶性分子を実質的に水平に配向させる機能を有する。液晶セル内の棒状液晶性分子の多くが実質的に水平に配向している表示モード(例、STN)では、光学異方性層の液晶性分子を実質的に垂直に配向させる機能を有する。液晶セル内の棒状液晶性分子の多くが実質的に斜めに配向している表示モード(例、TN)では、光学異方性層の液晶性分子を実質的に斜めに配向させる機能を有する。
本発明における配向膜に使用される具体的なポリマーの種類については、前述した様々な表示モードに対応するディスコティック液晶性分子を用いた光学補償シートについての文献に記載がある。
配向膜に使用されるポリマーは、それ自体架橋可能なポリマーあるいは架橋剤により架橋されるポリマーのいずれも使用することができ、これらの組み合わせを複数使用することができる。ポリマーの例として、例えば特開平8−338913号公報、段落番号[0022]記載の化合物が挙げられる。好ましくは水溶性ポリマー(例えば、ポリ(N−メチロールアクリルアミド)、カルボキシメチルセルロース、ゼラチン、ポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコール)が挙げられ、この中でもゼラチン、ポリビニルアルコールおよび変性ポリビニルアルコールがさらに好ましく、ポリビニルアルコールおよび変性ポリビニルアルコールが最も好ましい。
さらに、配向膜が主成分としてポリビニルアルコール及び/又は変性ポリビニルアルコールを含有する硬化膜であることが好ましい。
ポリビニルアルコール及び変性ポリビニルアルコールの鹸化度は、70乃至100%が好ましく、80乃至100%がさらに好ましく、85乃至95%が最も好ましい。ポリビニルアルコール及び変性ポリビニルアルコールの重合度は、100乃至3,000であることが好ましい。
変性ポリビニルアルコールの変性基は、共重合変性、連鎖移動変性またはブロック重合変性により導入できる。変性基の例には、親水性基(カルボン酸基、スルホン酸基、ホスホン酸基、アミノ基、アンモニウム基、アミド基、チオール基等)、炭素数10〜100個の炭化水素基、フッ素原子置換の炭化水素基、チオエーテル基、重合性基(不飽和重合性基、エポキシ基、アジリニジル基等)、アルコキシシリル基(トリアルコキシ、ジアルコキシ、モノアルコキシ)等が挙げられる。これらの変性ポリビニルアルコール化合物の具体例として、例えば、特開2000−56310号公報段落番号[0074]、同2000−155216号公報段落番号[0022]〜[0145]、同2002−62426号公報段落番号[0018]〜[0022]に記載のもの等が挙げられる。
また、配向を光照射で行う場合には、光配向機能を発現する光配向性基を分子内に有する。これらの光配向性基としては、例えば、長谷川雅樹著書の「液晶、第3巻(1)3〜16頁(1999)」記載のもの、C=C結合を有する光二量化反応によって光配向機能を発現する光配向性基(例えば、ポリエン基、スチルベン基、スチルバゾール基、スチルバゾリウム基、シンナモイル基、ヘミチオインジゴ基、カルコン基等)、C=O結合を有する光二量化反応によって光配向機能を発現する光配向性基(例えば、ベンゾフェノン基、クマリン基等の構造を有する基等)が挙げられる。具体的には、例えば特開2000−122069号公報、同2002−317013号公報の段落番号[0021]等記載のものが挙げられる。
前記配向膜に使用するポリマー(好ましくは水溶性ポリマー、さらに好ましくはポリビニルアルコールまたは変性ポリビニルアルコール)の架橋剤の例には、アルデヒド、N−メチロール化合物、ジオキサン誘導体、カルボキシル基を活性化することにより作用する化合物、活性ビニル化合物、活性ハロゲン化合物、イソオキサゾールおよびジアルデヒド澱粉が含まれる。二種類以上の架橋剤を併用してもよい。具体的には、例えば特開2002−62426号公報明細書中の段落番号[0023]〜[0024]記載の化合物等が挙げられる。反応活性の高いアルデヒド、特にグルタルアルデヒドが好ましい。
架橋剤の添加量は、ポリマーに対して0.1乃至20質量%が好ましく、0.5乃至15質量%がさらに好ましい。配向膜に残存する未反応の架橋剤の量は、1.0質量%以下であることが好ましく、0.5質量%以下であることがさらに好ましい。配向膜中に残存する架橋剤が1.0質量%以下であると、充分な耐久性が得られるので好ましい。そのような配向膜を液晶表示装置に使用すると、長期使用、あるいは高湿の雰囲気下に長時間放置した場合にもレチキュレーションが発生しないので好ましい。
[配向膜に含有されるカルボン酸化合物]
本発明における配向膜形成用組成物は、特定のカルボン酸化合物を含有することが好ましい。
これにより、得られた配向膜に配向手段で配向した後に光学異方性層を塗設して得られた光学補償シートの塗布面状が良好で白抜け等の光学的欠陥を軽減若しくは解消する改善効果を発現するので好ましい。推測される理由としては、配向膜に含有する特定のカルボン酸化合物が配向膜の膜表面水素イオン濃度等を安定にして光学異方性層塗設した時に液晶分子の配向状態への影響を小さくすることが1つの要因と思われる。また、透明支持体表面をアルカリ鹸化処理で親水化した場合には、該フィルム表面に僅かに残存した処理液があっても安定して良好な光学的性能の配向膜が形成されると思われる。当然、添加量により効果は異なってくる為、適時量を調整する必要がある。
特定のカルボン酸化合物としては、水素結合性を有する水素原子を含有する極性基を少なくとも1種含有するカルボン酸化合物であることが好ましい。
これらのカルボン酸は、脂肪族化合物、芳香族化合物、或は複素環化合物の何れのものでもよい。
特定の極性基としては、−OH、−SH、−NHR、−CONHR、−SO2NHR、−HNCONHR、−NHSO2NHR、−NHCOR1、−NHSO21が挙げられる。但し、Rは、水素原子、脂肪族基、アリール基、または複素環基を表す。R1は、脂肪族基、アリール基または複素環基を表す。該カルボン酸が上記の極性基を複数含有する場合には、該極性基は同じでも異なってもよい。
本発明の好ましい特定の極性基として、−OH、−SH、−NHR、−CONH2、−SO2NH2、−HNCONHR、−NHSO2NHR、−NHSO21が挙げられる。 ここで、Rは、水素原子、脂肪族基、アリール基、または複素環基を表す。R1は、脂肪族基、アリール基または複素環基を表す。
Rが脂肪族基を表す場合、脂肪族基は炭素数1〜22の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ナノデシル基、エイコサニル基、ヘネイコサニル基、ドコサニル基等)、炭素数2〜22の直鎖状若しくは分岐状のアルケニル基(例えば、ビニル基、プロペニル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、オクテニル基、ドデセニル基、トリデセニル基、テトラデセニル基、ヘキサデセニル基、オクタデセニル基、エイコセニル基、ドコセニル基、ブタジエニル基、ペンタジエニル基、ヘキサジエニル基、オクタジエニル基等)、炭素数2〜22の直鎖状若しくは分岐状のアルキニル基(例えば、エチニル基、プロピニル基、ブチニル基、ヘキシニル基、オクタニル基、デカニル基、ドデカニル基等)、炭素数数5〜22の脂環式炭化水素基(例えば、シクロペンタン、シクロペンテン、シクロペンタジエン、シクロヘキサン、シクロヘキセン、シクロヘキサジエン、シクロヘプタン、シクロヘプテン、シクロへプタジエン、シクロオクタン、シクロオクテン、シクロオクタジエン、デカリン等)が挙げられる。
脂肪族基としては、これらの中で、炭素数1〜18の直鎖状、炭素原子数3〜18の分岐状脂肪族基がより好ましい。
アリール基としては、炭素数6〜18のアリール基(アリール環としては、ベンゼン、ナフタレン、ジヒドロナフタレン、ビフェニレン等)を表す。
複素環基としては、酸素原子、硫黄原子、窒素原子のいずれかを少なくとも1個含有する単環式若しくは多環式の環構造を有する複素環基(複素環基としては、例えば、フラニル基、テトラヒドロフラニル基、ピラニル基、ピロイル基、ピリジイル基、ピラジニル基、モルホリニル基、チエニル基、ベンゾチエニル基等)等が挙げられる。
上記の脂肪族基、アリール基、複素環基は各々置換基を有していてもよく、その導入し得る置換基としては、水素を除く一価の非金属原子団が用いられる。
非金属原子団の具体的な例としては、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、シアノ基、ニトロ基、−OR11、−SR11、−COR11、−COOR11、−OCOR11、−SO211、−NHCONHR11、−N(R12)COR11、−N(R12)SO211、−N(R13)(R14)、−CON(R13)(R14)、−SO2N(R13)(R14)、−P(=O)(R15)(R16)、−OP(=O)(R15)(R16)、−Si(R17)(R18)(R19)、炭素数1〜22の脂肪族基、炭素数2〜18のアルケニル基、炭素数6〜18のアリール基、または複素環基を表す。これら脂肪族基、アリール基、複素環基は、前記Rのものと同義である。
前記R11は、炭素数1〜22の脂肪族基、炭素数6〜18のアリール基、または複素環基を表す。R11における脂肪族基は前記Rで表される脂肪族基と同義である。R11におけるアリール基としては、前記Rで表されるアリール基と同様のものが挙げられる。かかるアリール基は、更に置換基を有していてもよく、その置換基としては、前記Rで表される脂肪族基、アリール基、複素環基に導入し得る置換基として例示したものと同様のものが挙げられる。R11における複素環基としては前記Rで表される複素環基と同義である。
12は、水素原子またはR11基と同様のものを表す。
前記R13及びR14は、各々独立に、水素原子、またはR11と同様のものを表し、R13とR14とは互いに結合して、N原子を含有する5員または6員の環を形成してもよい。
前記R15及びR16は、各々独立に、炭素数1〜22の脂肪族基、炭素数6〜14のアリール基、または−OR11を表す。R15及びR16における脂肪族基は前記Rで表される脂肪族基と同義である。R15及びR16におけるアリール基としては、前記Rで表されるアリール基と同様のものが挙げられる。かかるアリール基は更に置換基を有していてもよく、その置換基としては、前記Rで表される脂肪族基、アリール基、複素環基に導入し得る置換基として例示したものと同様のものが挙げられる。
前記R17、R18及びR19は、各々独立に、炭素数1〜22の炭化水素基または−OR20を表すが、これらの置換基の内少なくとも1つは炭化水素基を表す。炭化水素基は前記Rで示される脂肪族基及びアリール基と同様のものを表し、−OR20は前記−OR11と同様の内容を表す。
1における、脂肪族基、アリール基および複素環基はRと同じものを表す。
本発明の特定のカルボン酸化合物としては、炭素数1〜22(カルボン酸の炭素原子を除く)の脂肪族カルボン酸、炭素数6〜14の芳香族カルボン酸、複素環カルボン酸のカルボン酸化合物であり、pKaが6.5以下となるものが特に好ましい。より好ましくはカルボン酸のpKaが3.0〜6.5の化合物である。
これら特定のカルボン酸化合物として具体的には、例えばオキシ酸(例えば、グリコール酸、乳酸、グリセリン酸、α−オキシアルカン酸(アルカンとしては、炭素数3〜18のアルカン)、等)、アミノ酸、α−オキシ−β−アミノ酸、α−オキシ−γ−アミノ酸、β−オキシ−α−アミノ酸、これらオキシ酸或はオキシアミノ酸のヒドロキシル基がアルコキシ基に誘導された化合物、ヒドキシシクロヘキサンカルボン酸類、ヒドロキシベンゼンカルボン酸類、ポリオール(例えば、アルカンジオール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、シクロヘキサンジオール等)の少なくとも1個のヒドロキシル基を環状カルボン酸無水物(コハク酸、マレイン酸、グルタル酸、アジピン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、フタル酸等の無水物等)でエステル化した化合物、ポリアミノ化合物(例えば、アルキレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、シクロヘキサンジアミン、フェニレンジアミン等)と環状カルボン酸無水物でアミド化した化合物とから誘導される化合物が挙げられるが、本発明の化合物はこれらに限定されるものではない。
更に好ましくは、少なくとも1つのヒドロキシル基を含有したポリカルボン酸であり、その少なくとも1つのカルボキシル基がエステル化されてなるカルボン酸化合物が挙げられる。
少なくとも1つのヒドロキシル基を含有したポリカルボン酸としては、タルトロン酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、オキシグルタミン酸(β−体、γ−体)、上記のポリオールの少なくとも2個のヒドロキシル基を環状カルボン酸無水物でエステル化した化合物等が挙げられる。
これらのポリカルボン酸化合物の少なくとも1つのカルボン酸が炭素数1〜22の炭化水素基でエステル置換されていることが好ましい。
エステル置換される炭素数1〜22の炭化水素基の具体的態様は、前記のRで記載した脂肪族基、アリール基、複素環基と同義である。またこれらの炭化水素基は置換されてもよく、置換基としては、前記のRに置換されると同一の内容のものが挙げられる。
本発明の特定のカルボン酸化合物は、配向膜形成用組成物中、0.01〜1.0質量%の割合で添加するのが好ましい。更には、0.02〜0.5質量%が好ましい。
この範囲において、膜の強度が十分に保持された白抜け等の光学的に欠陥の無い光学補償シートが得られるので好ましい。更には、長尺フィルムを連続して製造しても、極めて安定な性能で製造することが出来るので好ましい。
すなわち、上記配向膜形成用組成物は、水素結合性を有する水素原子含有の極性基を少なくとも1種含有するカルボン酸化合物を含有するのが好ましい。
配向膜は、基本的に、配向膜形成用組成物である前記ポリマー、架橋剤及び特定のカルボン酸を含む塗布液を透明支持体上に塗布した後、加熱乾燥し(架橋させ)、配向処理することにより形成することができる硬化膜である。すなわち、上記配向膜は、主成分としてポリビニルアルコール及び/または変性ポリビニルアルコールを含有した配向膜形成用組成物を塗布し、乾燥してなる硬化膜であるのが好ましい。架橋反応は、透明支持体上に塗布した後、任意の時期に行なって良い。
ポリビニルアルコールのような水溶性ポリマーを配向膜形成用組成物として用いる場合には、塗布液は消泡作用のある有機溶媒(例、メタノール、エタノール、イソプロパノール等)と水の混合溶媒とすることが好ましい。その比率は質量比で水:有機溶媒(例、メタノール)が0:100〜99:1が好ましく、0:100〜91:9であることがさらに好ましい。これにより、泡の発生が抑えられ、配向膜、更には光学異方層の層表面の欠陥が著しく減少するので好ましい。
配向膜の塗布方法は、スピンコーティング法、ディップコーティング法、カーテンコーティング法、ダイコーティング法(エクストルージョンコーティング法、スライドコーティング法、スリットコーティング法)、ロッドコーティング法またはロールコーティング法が好ましい。特にロッドコーティング法、ダイコーティング法が好ましい。また、乾燥後の膜厚は0.1乃至10μmが好ましい。加熱乾燥は、20℃〜110℃で行なうことができる。充分な架橋を形成するためには60℃〜100℃が好ましく、特に80℃〜100℃が好ましい。乾燥時間は30秒〜36時間で行なうことができるが、好ましくは30秒〜30分である。
更に、配向膜形成用組成物を含有する塗布液を支持体に塗布・反応/乾燥し、配向手段で配向させたのちに光学異方性層用塗布液が塗布されるときに、該配向膜の表面がpH2.0〜6.9の範囲に保持されることが好ましい。更にはpH2.5〜5.0がより好ましい。
また、該光学異方性層用塗布液を塗布する際に、塗布の幅方向での配向膜表面のpHの変動幅△pHが±0.30の範囲で行われることが好ましい。より好ましくは、△pHが±0.15の範囲である。
この範囲において光学異方性層を塗設された光学補償シートは、光学的欠陥が著しく軽減され、好ましい。
配向膜表面のpH値の測定方法は、配向膜を塗設した試料を(温度25℃/湿度65%RH)の環境下に1日静置した後、窒素雰囲気下で純水を10ml乗せて速やかにpHメーターでpH値を読み取る。
本発明の配向膜表面のpH値を特定とし、且つ塗布幅方向での△pHを制御するには、上記のロッドコーティング方式による塗布により達成される。更には、膜表面の乾燥温度、乾燥風を用いる場合のその風量、風向等を調節することも有効である。
配向膜は、上記のようにポリマー層を架橋したのち、表面をラビング処理することにより得ることができる。
前記ラビング処理は、LCDの液晶配向処理工程として広く採用されている処理方法を適用することができる。即ち、配向膜の表面を、紙やガーゼ、フェルト、ゴムあるいはナイロン、ポリエステル繊維などを用いて一定方向に擦ることにより、配向を得る方法を用いることができる。一般的には、長さおよび太さが均一な繊維を平均的に植毛した布などを用いて数回程度ラビングを行うことにより実施される。
また、光照射で光配向する場合には、光照射装置としての光源は、超高圧水銀灯、キセノン灯、蛍光灯、レーザ等を用いることが出来、光二量化化合物を光配向をするには上記光源と偏光子を組み合わせて(偏光子を通して)紫外線を直線偏光とし、光配向膜に照射する。偏光子としては、主に使用されているものとして延伸染色PVAがある。この直線偏光紫外線照射装置としては、例えば、特開平10−90684号公報に開示されているものを用いることが出来る。
配向膜の厚さは、0.01乃至5μmであることが好ましく、0.05乃至1μmであることがさらに好ましい。
<光学異方性層>
本発明における光学異方性層は、液晶性分子から形成される。
液晶性分子としては、棒状液晶性分子またはディスコティック液晶性分子が好ましく、ディスコティック液晶性分子が特に好ましい。
以下に液晶性分子として用いる液晶性化合物を挙げる。
棒状液晶性分子としては、アゾメチン類、アゾキシ類、シアノビフェニル類、シアノフェニルエステル類、安息香酸エステル類、シクロヘキサンカルボン酸フェニルエステル類、シアノフェニルシクロヘキサン類、シアノ置換フェニルピリミジン類、アルコキシ置換フェニルピリミジン類、フェニルジオキサン類、トラン類およびアルケニルシクロヘキシルベンゾニトリル類が好ましく用いられる。これら低分子液晶性分子は重合性基を分子内に有することが好ましい(例えば、特開2000−304932号公報段落番号[0016]等記載)。以上のような低分子液晶性分子だけではなく、高分子液晶性分子も用いることができる。高分子液晶性分子は、以上のような低分子液晶性分子に相当する側鎖を有するポリマーである。高分子液晶性分子を用いた光学補償シートについては、特開平5−53016号公報に記載の化合物が挙げられる。
ディスコティック液晶性分子としては、様々な文献(C. Destrade et al., Mol. Crysr. Liq. Cryst., vol. 71, page 111 (1981) ;日本化学会編、季刊化学総説、No.22、液晶の化学、第5章、第10章第2節(1994);B. Kohne et al., Angew. Chem. Soc. Chem. Comm., page 1794 (1985);J. Zhang et al., J. Am. Chem. Soc., vol. 116, page2655 (1994))に記載されている化合物が挙げられる。ディスコティック液晶性分子の重合については、特開平8−27284公報の記載が挙げられる。
ディスコティック液晶性分子を重合により固定するためには、ディスコティック液晶性分子の円盤状コアに、置換基として重合性基を結合させる必要がある。円盤状コアと重合性基は、連結基を介して結合する化合物が好ましく、これにより重合反応においても配向状態を保つことが出来る。例えば、特開2000−155216号公報段落番号[0151]〜[0168]記載の化合物等が挙げられる。
なお、STNモードのような棒状液晶性分子がねじれ配向している液晶セルを、光学的に補償するためには、ディスコティック液晶性分子もねじれ配向させることが好ましい。上記連結基に、不斉炭素原子を導入すると、ディスコティック液晶性分子を螺旋状にねじれ配向させることができる。また、不斉炭素原子を含む光学活性を示す化合物(カイラル剤)を光学異方性層に添加しても、ディスコティック液晶性分子を螺旋状にねじれ配向させることができる。
二種類以上のディスコティック液晶性分子を併用してもよい。例えば、以上述べたような重合性ディスコティック液晶性分子と非重合性ディスコティック液晶性分子とを併用することができる。
非重合性ディスコティック液晶性分子は、前述した重合性ディスコティック液晶性分子の重合性基を、水素原子またはアルキル基に変更した化合物であることが好ましい。すなわち、非重合性ディスコティック液晶性分子は、例えば特許第2640083号明細書記載の化合物等が挙げられる。
[光学異方性層の他の組成物]
上記の液晶性分子と共に、可塑剤、界面活性剤、重合性モノマー、ポリマー等を併用して、塗工膜の均一性、膜の強度、液晶分子の配向性等を向上することが出来る。液晶性分子と相溶性を有し、液晶性分子の傾斜角の変化を与えられるか、あるいは配向を阻害しないことが好ましい。
重合性モノマーとしては、ラジカル重合性若しくはカチオン重合性の化合物が挙げられる。好ましくは、多官能性ラジカル重合性モノマーであり、上記の重合性基含有の液晶化合物と共重合性のものが好ましい。例えば、特開2002−296423号公報明細書中の段落番号[0018]〜[0020]記載のものが挙げられる。上記化合物の添加量は、ディスコティック液晶性分子に対して一般に1〜50質量%の範囲にあり、5〜30質量%の範囲にあることが好ましい。
界面活性剤としては、従来公知の化合物が挙げられるが、特にフッ素系化合物が好ましい。具体的には、例えば特開2001−330725号公報明細書中の段落番号[0028]〜[0056]記載の化合物が挙げられる。
ディスコティック液晶性分子とともに使用するポリマーは、ディスコティック液晶性分子に傾斜角の変化を与えられることが好ましい。
ポリマーの例としては、セルロースエステルを挙げることができる。セルロースエステルの好ましい例としては、特開2000−155216号公報段落番号[0178]記載のものが挙げられる。液晶性分子の配向を阻害しないように、上記ポリマーの添加量は、液晶性分子に対して0.1〜10質量%の範囲にあることが好ましく、0.1〜8質量%の範囲にあることがより好ましい。
ディスコティック液晶性分子のディスコティックネマティック液晶相−固相転移温度は、70〜300℃が好ましく、70〜170℃がさらに好ましい。
光学異方性層は、液晶性分子、あるいは下記の重合性開始剤や任意の添加剤(例、可塑剤、重合性モノマー、界面活性剤、セルロースエステル、1,3,5−トリアジン化合物、カイラル剤)を含む塗布液を、配向膜の上に塗布することで形成される。
塗布液の調製に使用する溶媒としては、有機溶媒が好ましく用いられる。有機溶媒の例には、アミド(例、N,N−ジメチルホルムアミド、アセトアミド等)、スルホキシド(例、ジメチルスルホキシド)、ヘテロ環化合物(例、ピリジン)、炭化水素(例、ベンゼン、トルエン、ヘキサン、シクロヘキサン等)、アルキルハライド(例、クロロホルム、ジクロロメタン)、エステル(例、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル等)、ケトン(例、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルメトン、シクロヘキサノン等)、エーテル(例、テトラヒドロフラン、1,2−ジメトキシエタン)が挙げられる。このうち、アルキルハライドおよびケトンが好ましい。二種類以上の有機溶媒を併用してもよい。
塗布液の塗布は、公知の方法(例、バーコーティング法、押し出しコーティング法、ダイレクトグラビアコーティング法、リバースグラビアコーティング法、ダイコーティング法)により実施できる。リバースグラビアコーティング法、或はダイコーティング法が好ましい。
[液晶性分子の配向状態の固定]
液晶性分子は、実質的に均一に配向していることが好ましく、実質的に均一に配向している状態で固定されていることがさらに好ましく、重合反応により液晶性分子が固定されていることが最も好ましい。重合反応には、熱重合開始剤を用いる熱重合反応と光重合開始剤を用いる光重合反応とが含まれる。光重合反応が好ましい。
光重合開始剤の例としては、α−カルボニル化合物(米国特許2367661号、同2367670号の各明細書記載)、アシロインエーテル(米国特許2448828号明細書記載)、α−炭化水素置換芳香族アシロイン化合物(米国特許2722512号明細書記載)、多核キノン化合物(米国特許3046127号、同2951758号の各明細書記載)、トリアリールイミダゾールダイマーとp−アミノフェニルケトンとの組み合わせ(米国特許3549367号明細書記載)、アクリジンおよびフェナジン化合物(特開昭60−105667号公報、米国特許4239850号明細書記載)およびオキサジアゾール化合物(米国特許4212970号明細書記載)が挙げられる。
光重合開始剤の使用量は、塗布液の固形分の0.01乃至20質量%であることが好ましく、0.5乃至5質量%であることがさらに好ましい。
ディスコティック液晶性分子の重合のための光照射は、紫外線を用いることが好ましい。
照射エネルギーは、20mJ/cm2乃至50J/cm2であることが好ましく、100乃至800mJ/cm2であることがさらに好ましい。光重合反応を促進するため、加熱条件下で光照射を実施してもよい。
光学異方性層の厚さは、0.1乃至10μmであることが好ましく、0.5乃至5μmであることがさらに好ましく、0.7乃至5μmであることが最も好ましい。ただし、液晶セルのモードによっては、高い光学異方性を得るために、光学異方性層を厚く(3乃至10μm)する場合がある。
光学異方性層内での液晶性分子の配向状態は、前述したように、液晶セルの表示モードの種類に応じて決定される。液晶性分子の配向状態は、具体的には、液晶性分子の種類、配向膜の種類および光学異方性層内の添加剤(例、可塑剤、ポリマー、界面活性剤)の使用によって制御される。
上記のようにして、本発明の光学補償シートが製造される。本発明の光学補償シートは、前述の親水化処理方法により親水化された透明支持体上に配向膜を塗設する工程、及び
光学異方性層を塗設する工程を含む。
本発明の光学補償シートは、偏光板と貼り合せるか、偏光板の保護膜として使用することで、その機能を著しく発揮する。
以下、偏光板及びその製造について詳しく説明する。
次に、本発明の偏光板及びその製造について詳しく説明する。
<偏光板>
本発明の偏光板は、透明保護膜、偏光膜、光学補償シートがこの順に積層されている偏光板であって、該光学補償シートが上記の本発明の光学補償シートであることを特徴とする。
[偏光板の透明保護膜]
本発明の偏光板は透明保護膜と偏光膜を含有する。保護膜が透明であるとは、光透過率が80%以上であることを意味する。透明保護膜としては、一般にセルロースエステルフィルム、好ましくはアセチルセルロースフィルムが用いられる。セルロースエステルフィルムは、前記の透明支持体に記載のソルベントキャスト法により形成することが好ましい。透明保護膜の厚さは、20〜200μmであることが好ましく、30〜100μmであることがさらに好ましい。特に好ましくは30〜80μmである。
本発明では、偏光板の片面に透明保護膜の代わりに光学補償シートを用いる事が好ましい。すなわち、光学補償シートの光学異方性層(複数の光学異方性層を設ける場合、最も偏光膜側の第1光学異方性層)を、偏光膜上に直接液晶性分子から形成するか、もしくは配向膜を介して液晶性分子から形成することが好ましい。具体的には、前記のような光学異方性層用塗布液を偏光膜の表面に塗布することにより光学異方性層を形成する。その結果、偏光膜と光学異方性層との間に透明保護膜を使用することなく、偏光膜の寸度変化にともなう応力(歪み×断面積×弾性率)が小さい薄い偏光板が作成される。本発明による偏光板を大型の液晶表示装置に取り付けると、光漏れなどの問題を生じることなく、表示品位の高い画像を表示する。
[光学補償シートの表面処理]
本発明においては、光学補償シートと偏光膜との接着性を改善するために、光学補償シートの偏光膜側の面を表面処理するのが好ましい。表面処理としては、コロナ放電処理、グロー放電処理、火炎処理、紫外線照射処理、オゾン処理、酸処理またはアルカリ処理を実施する。
コロナ放電処理、グロー放電処理、火炎処理、紫外線照射処理、オゾン処理、酸処理、アルカリ処理等の処理方法は、例えば、前記の公技番号2001−1745号p30−31に記載の内容が挙げられる。本発明は、アルカリ処理することが好ましく、本発明の塗布方式でのアルカリ溶液鹸化処理で記載と同様の内容のものが挙げられる。
[偏光膜]
本発明に用いられる偏光膜は、通常、Optiva Inc.に代表される塗布型偏光膜、もしくはバインダーと、ヨウ素または二色性色素からなる偏光膜が好ましい。
偏光膜におけるヨウ素および二色性色素は、バインダー中で配向することで偏向性能を発現する。ヨウ素および二色性色素は、バインダー分子に沿って配向するか、もしくは二色性色素が液晶のような自己組織化により一方向に配向することが好ましい。
現在、市販の偏光子(偏光膜)は、延伸したポリマーを、浴槽中のヨウ素もしくは二色性色素の溶液に浸漬し、バインダー中にヨウ素、もしくは二色性色素をバインダー中に浸透させることで作製されるのが一般的である。
市販の偏光子は、ポリマー表面から4μm程度(両側合わせて8μm程度)にヨウ素もしくは二色性色素が分布しており、十分な偏光性能を得るためには、少なくとも10μmの厚みが必要である。浸透度は、ヨウ素もしくは二色性色素の溶液濃度、同浴槽の温度、同浸漬時間により制御することができる。
上記のように、バインダー厚みの下限は、10μmであることが好ましい。厚みの上限は、液晶表示装置の光漏れの観点からは、薄ければ薄い程よい。現在市販の偏光板(約30μm)以下であることが好ましく、25μm以下が好ましく、20μm以下がさらに好ましい。20μm以下であると、光漏れ現象は、17インチの液晶表示装置で観察されなくなるので好ましい。
偏光膜のバインダーは、それ自体架橋可能なポリマーあるいは架橋剤により架橋されるポリマーのいずれも使用することができる。ポリマーの例としては、前記の配向膜で記載のポリマーと同様のものが挙げられる。
ポリビニルアルコールおよび変性ポリビニルアルコールが最も好ましい。
変性ポリビニルアルコールについては、特開平8−338913号、同9−152509号および同9−316127号の各公報に記載がある。
ポリビニルアルコールおよび変性ポリビニルアルコールは、二種以上を併用してもよい。
偏光膜のバインダーは架橋していてもよい。
架橋しているバインダーは、それ自体架橋可能なポリマーを用いることができる。官能基を有するポリマーあるいはポリマーに官能基を導入して得られるバインダーを、光、熱あるいはpH変化により、バインダー間で反応させて偏光膜を形成することができる。
また、架橋剤によりポリマーに架橋構造を導入してもよい。
架橋は一般に、ポリマーまたはポリマーと架橋剤の混合物を含む塗布液を、透明支持体上に塗布したのち、加熱を行なうことにより実施される。最終商品の段階で耐久性が確保できれば良いため、架橋させる処理は、最終の偏光板を得るまでのいずれの段階で行なっても良い。
バインダーの架橋剤の添加量は、バインダーに対して、0.1乃至20質量%が好ましい。偏光素子の配向性、偏光膜の耐湿熱性が良好となる。
偏光膜は、架橋反応が終了した後でも、反応しなかった架橋剤をある程度含んでいる。但し、残存する架橋剤の量は、偏光膜中に1.0質量%以下であることが好ましく、0.5質量%以下であることがさらに好ましい。このようにすることで、偏光膜を液晶表示装置に組み込み、長期使用、或は高温高湿の雰囲気下に長期間放置しても、偏光度の低下を生じないので好ましい。
架橋剤については、米国再発行特許23297号明細書の記載が挙げられる。また、ホウ素化合物(例、ホウ酸、硼砂)も架橋剤として用いることができる。
二色性色素としては、アゾ系色素、スチルベン系色素、ピラゾロン系色素、トリフェニルメタン系色素、キノリン系色素、オキサジン系色素、チアジン系色素あるいはアントラキノン系色素が用いられる。二色性色素は、水溶性であることが好ましい。二色性色素は、親水性置換基(例、スルホ、アミノ、ヒドロキシル)を有することが好ましい。
二色性色素の例としては、例えば、発明協会公開技法、公技番号2001−1745号、58頁(発行日2001年3月15日)に記載の化合物が挙げられる。
液晶表示装置のコントラスト比を高めるためには、偏光板の透過率は高い方が好ましく、偏光度も高い方が好ましい。偏光板の透過率は、波長550nmの光において、30乃至50%の範囲にあることが好ましく、35乃至50%の範囲にあることがさらに好ましく、40乃至50%の範囲にあることが最も好ましい。偏光度は、波長550nmの光において、90乃至100%の範囲にあることが好ましく、95乃至100%の範囲にあることがさらに好ましく、99乃至100%の範囲にあることが最も好ましい。
偏光膜と光学異方性層、あるいは、偏光膜と透明支持体を接着剤を介して配置することも可能である。接着剤は、ポリビニルアルコール系樹脂(アセトアセチル基、スルホン酸基、カルボキシル基、オキシアルキレン基による変性ポリビニルアルコールを含む)やホウ素化合物水溶液を用いることができる。ポリビニルアルコール系樹脂が好ましい。接着剤層の厚みは、乾燥後に0.01乃至10μmの範囲にあることが好ましく、0.05乃至5μmの範囲にあることが特に好ましい。
[偏光板の製造]
偏光膜は、歩留まりの観点から、バインダーを偏光膜の長手方向(MD方向)に対して、10乃至80度傾斜して延伸するか(延伸法)、もしくはラビングした(ラビング法)後に、ヨウ素、二色性染料で染色することが好ましい。傾斜角度は、LCDを構成する液晶セルの両側に貼り合わされる2枚の偏光板の透過軸と液晶セルの縦または横方向のなす角度にあわせるように延伸することが好ましい。
通常の傾斜角度は45゜である。しかし、最近は、透過型、反射型および半透過型LCDにおいて必ずしも45゜でない装置が開発されており、延伸方向はLCDの設計にあわせて任意に調整できることが好ましい。
延伸法の場合、延伸倍率は1.1乃至30.0倍が好ましく、1.5乃至10.0倍がさらに好ましい。延伸は、空気中でのドライ延伸で実施できる。また、水に浸漬した状態でのウェット延伸を実施してもよい。ドライ延伸の延伸倍率は、1.2乃至5.0倍が好ましく、ウェット延伸の延伸倍率は、3.0乃至10.0倍が好ましい。延伸工程は、斜め延伸を含め数回に分けて行ってもよい。数回に分けることによって、高倍率延伸でもより均一に延伸することができる。斜め延伸前に、横あるいは縦に若干の延伸(幅方向の収縮を防止する程度)を行ってもよい。
延伸は、二軸延伸におけるテンター延伸を左右異なる工程で行うことによって実施できる。上記二軸延伸は、通常のフィルム製膜において行われている延伸方法と同様である。二軸延伸では、左右異なる速度によって延伸されるため、延伸前のバインダーフィルムの厚みが左右で異なるようにする必要がある。流延製膜では、ダイにテーパーを付けることにより、バインダー溶液の流量に左右の差をつけることができる。
以上のように、偏光膜のMD方向に対して10乃至80度斜め延伸されたバインダーフィルムが製造される。
ラビング法では、LCDの液晶配向処理工程として広く採用されているラビング処理方法を応用することができる。すなわち、膜の表面を、紙やガーゼ、フェルト、ゴムあるいはナイロン、ポリエステル繊維を用いて一定方向に擦ることにより配向を得る。一般には、長さ及び太さが均一な繊維を平均的に植毛した布を用いて数回程度ラビングを行うことにより実施される。
ロール自身の真円度、円筒度、振れ(偏芯)がいずれも30μm以下であるラビングロールを用いて実施することが好ましい。ラビングロールへのフィルムのラップ角度は、0.1乃至90゜が好ましい。ただし、特開平8−160430号公報に記載されているように、360゜以上巻き付けることで、安定なラビング処理を得ることもできる。
長尺フィルムをラビング処理する場合は、フィルムを搬送装置により一定張力の状態で1〜100m/minの速度で搬送することが好ましい。ラビングロールは、任意のラビング角度設定のためフィルム進行方向に対し水平方向に回転自在とされることが好ましい。0〜60゜の範囲で適切なラビング角度を選択することが好ましい。液晶表示装置に使用する場合は、40乃至50゜が好ましい。45゜が特に好ましい。
偏光膜の光学異方性層とは反対側の表面には、前記透明保護膜を配置する(光学異方性層/偏光膜/透明保護膜の配置とする)ことが好ましい。
透明保護膜は、その最表面である空気側の前記透明保護膜上に防汚性及び耐擦傷性を有する反射防止膜を設けてなることも好ましい。反射防止膜は、従来公知のいずれのものも用いることが出来る(詳細については後述する)。
上記のようにして、本発明の偏光板が製造される。
本発明の光学補償シートまたは該光学補償シートを用いた偏光板は、液晶表示装置、特に透過型液晶表示装置に有利に用いられる。
以下、液晶表示装置、特に透過型液晶表示装置及びその製造について詳しく説明する。
<液晶表示装置>
本発明の液晶表示装置は、液晶セルおよびその両側に配置された二枚の偏光板からなり、偏光板が偏光膜およびその両側に配置された二枚の透明保護膜からなる液晶表示装置であって、液晶セルと偏光板との間に配置される二枚の透明保護膜の少なくとも一方が、透明支持体上に配向膜及び光学異方性層を設けた光学補償シートであって、該光学補償シートが上記の本発明の光学補償シートであることを特徴とする。
液晶セルは、二枚の電極基板の間に液晶を担持している。
光学補償シートは、液晶セルと一方の偏光板との間に、一枚配置するか、あるいは液晶セルと双方の偏光板との間に二枚配置する。
さらに、本発明の液晶表示装置は、液晶セルおよびその両側に配置された二枚の偏光板からなり、偏光板が偏光膜およびその両側に配置された二枚の透明保護膜からなる液晶表示装置であって、液晶セルを矜持する両偏光板が本発明の偏光板であり、空気側の偏光板が、空気側の透明保護膜上に反射防止層を設けた本発明の偏光板である液晶表示装置であることも好ましい。
本発明の液晶表示装置は、各種のモードの透過型、反射型または半透過型の液晶表示装置とすることができ、TN、STN、IPS、VAおよびOCBのいずれかのモードの透過型、反射型または半透過型の液晶表示装置であることが好ましい。
各液晶モードにおける光学異方性層の好ましい形態について、以下で説明する。
各液晶モードにおける光学異方性層の好ましい形態において、本発明の光学補償シートまたは該光学補償シートを用いた偏光板は、有利に光学的に補償することができる。
(TNモード液晶表示装置)
TNモードの液晶セルは、カラーTFT液晶表示装置として最も多く利用されており、多数の文献の記載が挙げられる。TNモードの黒表示における液晶セル中の配向状態は、セル中央部で棒状液晶性分子が立ち上がり、セルの基板近傍では棒状液晶性分子が寝た配向状態にある。
(OCBモード液晶表示装置)
OCBモードの液晶セルは、棒状液晶性分子を液晶セルの上部と下部とで実質的に逆の方向に(対称的に)配向させるベンド配向モードの液晶セルである。ベンド配向モードの液晶セルを用いた液晶表示装置は、米国特許4583825号、同5410422号の各明細書に開示されている装置が挙げられる。棒状液晶性分子が液晶セルの上部と下部とで対称的に配向しているため、ベンド配向モードの液晶セルは、自己光学補償機能を有する。そのため、この液晶モードは、OCB(Optically Compensatory Bend)液晶モードとも呼ばれる。
OCBモードの液晶セルもTNモード同様、黒表示においては、液晶セル中の配向状態は、セル中央部で棒状液晶性分子が立ち上がり、セルの基板近傍では棒状液晶性分子が寝た配向状態にある。
(VAモード液晶表示装置)
VAモードの液晶セルでは、電圧無印加時に棒状液晶性分子が実質的に垂直に配向している。
VAモードの液晶セルには、(1)棒状液晶性分子を電圧無印加時に実質的に垂直に配向させ、電圧印加時に実質的に水平に配向させる狭義のVAモードの液晶セル(特開平2−176625号公報記載)に加えて、(2)視野角拡大のため、VAモードをマルチドメイン化した(MVAモードの)液晶セル(SID97、Digest of tech. Papers(予稿集)28(1997)845記載)、(3)棒状液晶性分子を電圧無印加時に実質的に垂直配向させ、電圧印加時にねじれマルチドメイン配向させるモード(n−ASMモード)の液晶セル(日本液晶討論会の予稿集58〜59(1998)記載)および(4)SURVAIVALモードの液晶セル(LCDインターナショナル98で発表)が挙げられる。
(IPSモード液晶表示装置)
IPSモードの液晶表示装置は、液晶を駆動させるためのカウンター電極と画素電極が単一基板に互いに平行に配列された構造を有し、よってカウンター電極と画素電極の間に形成される電界は基板面に平行する。したがって、液晶分子等はそれ自身の長軸が電界と平行に配列されるため、使用者は全ての方向で液晶分子の長軸を見ることになり、改善された視野角を有する。
(その他液晶表示装置)
ECBモードおよびSTNモードの液晶表示装置に対しては、上記と同様の考え方で光学的に補償することが出来る。
<反射防止膜付きの偏光板>
本発明の偏光板は、空気側の偏光膜の保護膜の表面上に更に反射防止膜を設けてなることが好ましい。これにより、外光の写り込みが著しく軽減若しくは解消されて、鮮明な画像表示が可能となる。反射防止膜は偏光膜の保護膜上に直接設ける、或は透明支持体上に反射防止膜を設けた反射防止フィルムを偏光膜保護膜と貼り合せる態様が挙げられる。偏光板の薄膜化から、前者の態様が好ましい。
[反射防止膜]
反射防止膜は、一般に、防汚性層でもある低屈折率層、及び低屈折率層より高い屈折率を有する少なくとも一層の層(すなわち、高屈折率層、中屈折率層)とを透明支持体上に設けてなる。
反射防止膜の形成方法としては、屈折率の異なる無機化合物(金属酸化物等)の透明薄膜を積層させて多層膜とする方法;化学蒸着(CVD)法や物理蒸着(PVD)法により薄膜を形成する方法;金属アルコキシド等の金属化合物のゾル/ゲル方法でコロイド状金属酸化物粒子皮膜を形成後に後処理(紫外線照射:特開平9−157855号公報、プラズマ処理:特開2002−327310号公報)して薄膜を形成する方法などが挙げられる。さらに生産性が高い反射防止膜の形成方法として、無機粒子をマトリックスに分散させてなる薄膜組成物を積層塗布して反射防止膜を形成する方法など各種の提案がなされている。またこの塗布による反射防止膜に、最上層表面が微細な凹凸の形状を有している防眩性を付与した反射防止膜も挙げられる。
(塗布型反射防止膜の構成)
透明支持体上に少なくとも中屈折率層、高屈折率層、低屈折率層(最外層)の順序の層構成からなる反射防止膜は、以下の関係を満足する屈折率を有する様に設計される。
高屈折率層の屈折率>中屈折率層の屈折率>透明支持体の屈折率>低屈折率層の屈折率。
また、透明支持体と中屈折率層の間に、ハードコート層を設けてもよい。更には、中屈折率ハードコート層、高屈折率層及び低屈折率層からなってもよい。例えば、特開平8−122504号公報、同8−110401号公報、同10−300902号公報、特開2002−243906号公報、特開2000−111706号公報等が挙げられる。さらに、各層に他の機能を付与させてもよく、例えば、防汚性の低屈折率層、帯電防止性の高屈折率層としたもの(例えば、特開平10−206603号公報、特開2002−243906号公報等)等が挙げられる。
反射防止膜のヘイズは、5%以下であることが好ましく、3%以下がさらに好ましい。また反射防止膜の表面の硬度は、JIS K−5400に従う鉛筆硬度試験でH以上であることが好ましく、2H以上であることがさらに好ましく、3H以上であることが最も好ましい。
(高屈折率層及び中屈折率層)
本発明の反射防止膜の高い屈折率を有する層(高屈折率層及び中屈折率層)は、平均粒径100nm以下の高屈折率の無機化合物微粒子及びマトリックスバインダーを少なくとも含有する硬化性膜からなることが好ましい。
(無機化合物微粒子)
高屈折率に用いられる無機化合物微粒子としては、屈折率1.65以上の無機化合物が挙げられ、好ましくは屈折率1.9以上のものが挙げられる。
これらの無機化合物としては、例えば、Ti、Zn、Sb、Sn、Zr、Ce、Ta、La、In等の酸化物、これらの金属原子を含む複合酸化物等が挙げられ、特に好ましくは、Co、Zr、Al(好ましくはCo)から選ばれる少なくとも1つの元素(以下このような元素を含有元素ということがある)を含有する二酸化チタンを主成分とする無機微粒子(以下、「特定の酸化物」と称することもある)が挙げられる。含有元素の総含有量は、Tiに対して0.05〜30質量%であることが好ましく、より好ましくは0.1〜10質量%、さらに好ましくは0.2〜7質量%、特に好ましくは0.3〜5質量%、最も好ましくは0.5〜3質量%である。
上記の含有元素は、二酸化チタンを主成分とする無機微粒子の内部、又は表面に存在する。二酸化チタンを主成分とする無機微粒子の内部に存在することがより好ましく、内部と表面の両方に存在することが最も好ましい。これらの特定の金属元素は、酸化物として存在してもよい。
また他の好ましい無機粒子としては、酸化物が屈折率1.95以上となる金属元素から選ばれる少なくとも1種の金属元素(以下、「Met」とも略称する)と、チタン元素との複合酸化物の粒子であり、且つ該複合酸化物はCoイオン、Zrイオン、及びAlイオンから選ばれる金属イオンの少なくとも1種がドープされてなる無機微粒子(「特定の複合酸化物」と称することもある)が挙げられる。ここで、その酸化物の屈折率が1.95以上となる金属元素としては、Ta、Zr、In、Nd、Sb,Sn、及びBiが好ましい。特には、Ta、Zr、Sn、Biが好ましい。複合酸化物にドープされる金属イオンの含有量は、複合酸化物を構成する全金属[Ti+Met]量に対して、25質量%を越えない範囲で含有することが屈折率維持の観点から好ましい。より好ましくは0.05〜10質量%、さらに好ましくは0.1〜5質量%、最も好ましくは0.3〜3質量%である。
ドープされた金属イオンは、金属イオン又は金属原子の何れの形体で存在してもよく、複合酸化物の表面から内部まで適宜に存在する。表面と内部との両方に存在することが好ましい。
このような無機化合物の超微粒子を得るには、粒子表面が表面処理剤で処理されること(例えば、シランカップリング剤等:特開平11−295503号公報、同11−153703号公報、特開2000−9908、アニオン性化合物又は有機金属カップリング剤:特開2001−310432号公報等)、高屈折率粒子をコアとしたコア/シェル構造とすること(特開2001−166104号公報、米国特許2003/0202137A1号公報等)、特定の分散剤の併用(例えば、特開平11−153703号公報、米国特許番号6210858B1号公報、特開2002−2776069号公報等)などを挙げることができる。
(マトリックスバインダー)
高屈折率層のマトリックスを形成する材料としては、従来公知の熱可塑性樹脂、硬化性樹脂皮膜等が挙げられる。またラジカル重合性及び/又はカチオン重合性の重合性基を少なくとも2個以上含有のポリビニル化合物含有組成物、加水分解性基を含有の有機金属化合物及びその部分縮合体組成物から選ばれる少なくとも1種の組成物が好ましい。例えば、特開2000−47004号公報、同2001−315242号公報、同2001−31871号公報、同2001−296401号公報等に記載の化合物が挙げられる。さらに金属アルコキシドの加水分解縮合物から得られるコロイド状金属酸化物と、金属アルコキシド組成物から得られる硬化性膜も好ましい。これらについては、例えば、特開2001−293818号公報等に記載されている。
高屈折率層の屈折率は、一般に1.70〜2.20である。高屈折率層の厚さは、5nm〜10μmであることが好ましく、10nm〜1μmであることがさらに好ましい。また中屈折率層の屈折率は、低屈折率層の屈折率と高屈折率層の屈折率との間の値となるように調整する。中屈折率層の屈折率は、1.50〜1.70であることが好ましい。
(低屈折率層)
低屈折率層は、高屈折率層の上に順次積層してなる。低屈折率層の屈折率は1.20〜1.55の範囲であることが好ましく、さらに好ましくは1.30〜1.50の範囲であるのがよい。低屈折率層は、耐擦傷性、防汚性を有する最外層として構築することが好ましい。耐擦傷性を大きく向上させる手段として表面への滑り性付与が有効で、従来公知のシリコーンの導入、フッ素の導入等からなる薄膜層の手段を適用できる。
含フッ素化合物の屈折率は1.35〜1.50であることが好ましい。より好ましくは1.36〜1.47である。また、含フッ素化合物はフッ素原子を35〜80質量%の範囲で含む架橋性又は重合性の官能基を含む化合物が好ましい。このような化合物としては、例えば、特開平9−222503号公報明細書段落番号[0018]〜[0026]、同11−38202号公報明細書段落番号[0019]〜[0030]、特開2001−40284号公報明細書段落番号[0027]〜[0028]、特開2000−284102号公報、特開2004−45462号公報明細書等に記載の化合物が挙げられる。
シリコーン化合物としてはポリシロキサン構造を有する化合物であり、高分子鎖中に硬化性官能基又は重合性官能基を含有して、膜中で橋かけ構造を有するものが好ましい。例えば、反応性シリコーン{例えば、「サイラプレーン」チッソ(株)製等}、両末端にシラノール基含有のポリシロキサン(特開平11−258403号公報等)等が挙げられる。
架橋又は重合性基を有する含フッ素及び/又はシロキサンのポリマーの架橋又は重合反応は、重合開始剤、増感剤等を含有する最外層を形成するための塗布組成物を塗布と同時又は塗布後に光照射や加熱することにより実施することが好ましい。
またシランカップリング剤等の有機金属化合物と、特定のフッ素含有炭化水素基を有するシランカップリング剤とを触媒共存下に縮合反応で硬化するゾル/ゲル硬化膜も好ましい。例えば、ポリフルオロアルキル基含有シラン化合物又はその部分加水分解縮合物(特開昭58−142958号公報、同58−147483号公報、同58−147484号公報、特開平9−157582号公報、同11−106704号公報記載等記載の化合物)、フッ素含有長鎖基であるポリ「パーフルオロアルキルエーテル」基を含有するシリル化合物(特開2000−117902号公報、同2001−48590号公報、同2002−53804号公報記載の化合物等)等が挙げられる。
低屈折率層は、上記以外の添加剤として充填剤(例えば、二酸化珪素(シリカ)、含フッ素粒子(フッ化マグネシウム,フッ化カルシウム,フッ化バリウム)等の一次粒子平均径が1〜150nmの低屈折率無機化合物を含有することが好ましい。
特に、上記低屈折率層はその屈折率上昇をより一層少なくするために、中空の無機微粒子を用いることが好ましい。中空の無機微粒子は、その屈折率が、通常1.17〜1.40、好ましくは1.17〜1.37、さらに好ましくは1.17〜1.35であるのがよい。ここでの屈折率は粒子全体としての屈折率を表し、中空の無機微粒子を形成している外殻のみの屈折率を表すものではない。中空の無機微粒子の屈折率は、粒子の強度及び該中空粒子を含む低屈折率層の耐擦傷性の観点から、1.17以上とすることが好ましい。
なお、これら中空の無機微粒子の屈折率はアッベ屈折率計[アタゴ(株)製]にて測定することができる。
無機微粒子の形状は米粒状、球形状、立方体状、紡錘形状、短繊維状、リング状、又は不定形状であることが好ましい。
また、中空の無機微粒子の空隙率(w)は、該粒子内の空腔の半径をri、粒子外殻の半径をroとするとき、下記数式(5)に従って計算される。
数式(5):w=(ri/ro3×100
中空の無機微粒子の空隙率は、該粒子の強度及び反射防止膜表面の耐擦傷性の観点から、好ましくは10〜60%、さらに好ましくは20〜60%、最も好ましくは30〜60%である。
低屈折率層中の中空の無機微粒子の平均粒径は、該低屈折率層の厚みの30〜100%、さらには35〜80%、特には40〜60%であることが好ましい。すなわち、低屈折率層の厚みが100nmであれば、無機微粒子の粒径は30〜100nm、さらには35〜80nm、特には40〜60nmの範囲となるので好ましい。該平均粒径が前記の範囲であると、反射防止膜の強度が十分に発現される。
低屈折率層に含まれる他の添加剤としては、特開平11−3820公報の段落番号[0020]〜[0038]に記載の有機微粒子等)、シランカップリング剤、滑り剤、界面活性剤等を含有することができる。
低屈折率層の上にさらに最外層が形成される場合には、低屈折率層は、気相法(真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、プラズマCVD法等)により形成されてもよいが、安価に製造できる点で、塗布法により形成されることが好ましい。低屈折率層の膜厚は、30〜200nmであることが好ましく、50〜150nmであることがさらに好ましく、60〜120nmであることが最も好ましい。
(反射防止膜の他の層)
反射防止膜には、さらに、ハードコート層、前方散乱層、プライマー層、帯電防止層、下塗層、保護層等を設けてもよい。
(ハードコート層)
ハードコート層は、反射防止膜に物理強度を付与するために、透明支持体(又は保護フィルム;以下同じ)の表面に設けられる。特に、透明支持体と前記高屈折率層の間に設けることが好ましい。
ハードコート層は、光及び/又は熱の硬化性化合物の架橋反応、又は、重合反応により形成されることが好ましい。硬化性官能基としては、光重合性官能基が好ましく、また加水分解性官能基含有の有機金属化合物は有機アルコキシシリル化合物が好ましい。これらの化合物の具体例としては、高屈折率層で例示したと同様のものが挙げられる。ハードコート層の具体的な構成組成物としては、例えば、特開2002−144913号公報、同2000−9908号公報、国際公開第00/46617号パンフレット等記載のものが挙げられる。
高屈折率層はハードコート層を兼ねることができる。このような場合、高屈折率層で記載した手法を用いて微粒子を微細に分散してハードコート層に含有させて形成することが好ましい。ハードコート層にはまた、平均粒径0.2〜10μmの粒子を含有させて防眩機能(アンチグレア機能)を付与した防眩層(後述)を兼ねることもできる。
ハードコート層の膜厚は用途により適切に設計することができる。ハードコート層の膜厚は、0.2〜10μmであることが好ましく、より好ましくは0.5〜7μmである。
ハードコート層の硬度は、JIS K−5400に従う鉛筆硬度試験で、H以上であることが好ましく、2H以上であることがさらに好ましく、3H以上であることが最も好ましい。またハードコート層の耐擦傷性は、JIS K−5400に従うテーバー試験で、試験前後のハードコート層を塗設した試験片の摩耗量が少ないほど好ましい。
(前方散乱層)
前方散乱層は、反射防止膜を設けた保護フィルムを偏光板を液晶表示装置に適用した場合の、上下左右方向に視角を傾斜させたときの視野角改良効果を付与するために設けられる。上記ハードコート層中に屈折率の異なる微粒子を分散することで、ハードコート機能と兼ねることもできる。前方散乱層については、例えば、前方散乱係数を特定化した特開11−38208号公報、透明樹脂と微粒子の相対屈折率を特定範囲とした特開2000−199809号公報、ヘイズ値を40%以上と規定した特開2002−107512号公報等が挙げられる。
反射防止膜の各層は、ディップコート法、エアーナイフコート法、カーテンコート法、ローラーコート法、ワイヤーバーコート法、グラビアコート、マイクログラビア法やエクストルージョンコート法(米国特許2681294号明細書)により、塗布により形成することができる。
(アンチグレア機能)
反射防止膜は、外光を散乱させるアンチグレア機能を有していてもよい。アンチグレア機能は、反射防止膜の表面に凹凸を形成することにより得られる。反射防止膜がアンチグレア機能を有する場合、反射防止膜のヘイズは、3〜50%であることが好ましく、5〜30%であることがさらに好ましく、5〜20%であることが最も好ましい。
反射防止膜表面に凹凸を形成する方法は、これらの表面形状を充分に保持できる方法であればいずれの方法でも適用できる。例えば、低屈折率層中に微粒子を使用して膜表面に凹凸を形成する方法(例えば、特開2000−271878号公報等)、低屈折率層の下層(高屈折率層、中屈折率層又はハードコート層)に比較的大きな粒子(粒径0.05〜2μm)を少量(0.1〜50質量%)添加して表面凹凸膜を形成し、その上にこれらの形状を維持して低屈折率層を設ける方法(例えば、特開2000−281410号公報、同2000−95893号公報、同2001−100004号公報、同2001−281407号公報等)、最上層(防汚性層)を塗設後の表面に物理的に凹凸形状を転写する方法(例えば、エンボス加工方法として、特開昭63−278839号公報、特開平11−183710号公報、特開2000−275401号公報等記載)等が挙げられる。
本発明の疎水性透明支持体の親水化処理方法は、アルカリ溶液塗布工程に引き続いて、ウェブを囲むケーシングを有するドライヤ中で、塗布面近傍の風の乱れを防止しながら、アルカリ溶液を塗布した第1の面側の溶剤蒸気を高い濃度で保ちつつアルカリ鹸化する鹸化工程を有することが好ましい。
また、本発明の光学補償シートの製造方法は、疎水性支持体の親水性表面に配向膜形成用組成物を塗布する工程、及びその直後に、ウェブを囲むケーシングを有するドライヤ中で塗布面近傍の風の乱れを防止しながら、乾燥中の塗布面側の溶剤蒸気を高い濃度で保ったまま乾燥する工程を有することが好ましい。
上記の溶剤蒸気は飽和蒸気圧50〜100%であることが好ましく、60〜100%であることがさらに好ましい。
本発明の疎水性透明支持体の親水化処理方法、光学補償シートの製造方法に使用できる塗布後のアルカリ鹸化及び/又は乾燥(以下、「反応/乾燥」ともいう。)方法について説明する。
図1は、上記反応/乾燥装置の一例であり、塗布膜の反応/乾燥方法および装置が適用される反応/乾燥装置を組み込んだ塗布・反応/乾燥ライン10の一例を示す概念図である。
図示されるように、塗布・反応/乾燥ライン10は、主として、ロール状に巻回された帯状可撓性支持体(本発明では「ウェブ」ともいう。)12を送り出す送り出し装置14、帯状可撓性支持体12に塗布液を塗布する塗布手段16、帯状可撓性支持体12に塗布形成された塗布膜の塗布液中の溶媒を凝縮、回収させるドライヤ18、必要に応じて設けられる、塗布膜を乾燥させる通風乾燥手段20、および塗布・反応/乾燥により製造された製品を巻き取る巻き取り装置24と、帯状可撓性支持体12が走行する搬送経路を形成する多数のガイドローラ22、22…とで形成される。
塗布手段16は、公知の方法(例、スロット・ダイコーティング法、ワイヤーバーコーティング法、押し出しコーティング法、ダイレクトグラビアコーティング法、リバースグラビアコーティング法、スライドホッパ塗布方式、カーテン塗布方式)により実施できる。
なお、塗布手段16は、図1、図2に示されるように塗布面が水平方向に対して上側になるような構成であってもよいし、水平方向に対して下側になるような構成であってもよい。また、水平方向に対して傾斜するような構成であってもよい。
ドライヤ18は、帯状可撓性支持体(ウェブ)12と所定距離をおいて平行に設けられる板状部材である凝縮板30と、凝縮板30の前後辺から下方に垂設される側面板等とで構成される。ドライヤ18が、帯状可塑性支持体(ウェブ)12を囲むケーシングを有することが好ましい。
これにより、塗布膜の塗布液中の溶媒が揮発した際に、揮発した溶媒が凝縮板30に凝縮し回収される構成となっている。
本発明において、塗布膜の反応/乾燥装置は、塗布面と凝縮板30との間が、二枚の板が挟まれたような空間になり、その空間へ溶媒が蒸発するとともに、蒸発した溶媒が凝縮板30の凝縮面から回収される。塗布面の均一な乾燥が行われるには、塗布面と凝縮板30の凝縮面の間に、乱れのない境界層が形成され、均一な物質移動と熱伝達が行われることが必要である。
しかし、本発明における塗布膜の乾燥装置におけるような、温度の違う二平面間では、それら均一な熱伝達を阻害するものとして、熱自然対流が一般的に知られている。熱自然対流が発生すると、この境界層を不安定にし、境界層を乱すことにより、不均一な乾燥速度分布を生じる。その結果、塗布膜の均一な乾燥を行うことができなくなる。
自然対流に関する研究は古くから行われており、たとえば、Heat Transfer 、vol.1(1953) 、Max Jacob 著( 出版社:John Wiley & Sons)には、様々な場合における自然対流に関する実験的研究が紹介されている。化学工学便覧、改訂六版、化学工学会編(出版社:丸善)には、自然対流に関する研究がまとめて紹介されている。
これらは、垂直平板、水平正方形板、傾斜平板、水平円柱面、傾斜円柱面、垂直平板で挟まれた間隙、水平平面板で挟まれた間隙、等に関する。これらの研究で明らかなように、固体表面の形状が伝熱量に大きな影響を及ぼす。
しかし、これらの研究は主に空気中に単純に置かれた板または円柱に関するものである。一方、今回対象とするような、一方が連続走行する、塗布液を塗られた面を含む二平面間の問題に関する研究は少なく、自然対流を抑え、均一な境界層の形成するための条件については、明確になっていない。
また、自然対流は流体塊の浮力によって生じる対流であるので、浮力に対する粘性力の比、運動量拡散率に対する熱拡散率の比などが重要である。これらを表す無次元数として、それぞれ次の形で表現できる。
レイリー数=グラスホフ数×プラントル数 (式1)
グラスホフ数=[熱膨張率×(T1−T2)×L3×d2×g]/δ2 (式2)
プラントル数=(比熱容量×δ)/熱伝導度 (式3)
ここで、T1−T2は、二平面間の温度差(℃)、Lは二平面間の距離(m)、dは流体の密度(g/m3)、gは重力加速度(m/sec2)、δは流体の粘度(g/(m・sec))をそれぞれ表す。
さらに、熱膨張率の単位は(1/℃)であり、比熱容量の単位は(J/(g・℃))であり、熱伝導度の単位は(J/(m・sec・℃))である。
一般的に、前者(式2)はグラスホフ数、後者(式3)はプラントル数と呼ばれる。これらの値と自然対流の発生との関係は、特有の場合についてのみ実験式が示されているのみである。なお、これら二つの無次元数を掛けた値は、一般にレイリー数と言われる。
詳細な研究を行った結果、本発明における塗布膜の反応/乾燥装置において、レイリー数を5000未満にするように、凝縮板と帯状可撓性支持体との距離、凝縮板の温度および塗布膜の温度を設定することにより、溶媒の種類、凝縮板30の形状、凝縮板30の配置角度、帯状可撓性支持体12の走行角度、等によらず、乾燥ムラのない良好な面の塗布膜が得られることがわかった。
レイリー数が2000未満になるように各条件を設定すると、塗布膜の表面性状はさらに改善される。
凝縮板30の溶媒を凝縮させる面に用いる材質は、金属、プラスチック、木材等、特に限定はされないが、塗布液中に有機溶剤が含まれる場合には、その有機溶剤に対して耐性のある材料を使用するか、または表面にコーティングを施すことが望ましい。
ドライヤ18において、凝縮板30に凝縮した溶媒を回収させる手段は、たとえば、凝縮板30の凝縮面に溝を設け、毛管力を利用して溶媒を回収させる。溝の方向は、帯状可撓性支持体12の走行方向であってもよく、これに直交する方向であってもよい。凝縮板30が傾斜している場合には、溶媒を回収させやすい方向に溝を設ければよい。
ドライヤ18に板状部材である凝縮板30を採用する構成以外に、同様な機能を奏する構成、たとえば、多孔板、網、簀の子、ロール等を使用する構成も採用できる。また、米国特許5694701号明細書に示されるような回収装置と併用してもよい。
ドライヤ18は、塗布液を塗布した直後の自然対流の発生による塗布膜の乾燥ムラを防止するため、塗布手段16のできるだけ近くに配設することが好ましい。具体的には、ドライヤ18の入口が塗布手段16から5m以内の位置になるように配設することが好ましく、2m以内の位置になるように配設することがより好ましく、0.7m以内の位置になるように配設することが最も好ましい。
同様の理由で、帯状可撓性支持体12の走行速度は、帯状可撓性支持体12が塗布手段16による塗布後30秒以内にドライヤ18に到達する速度であることが好ましく、塗布後20秒以内にドライヤ18に到達する速度であることがより好ましい。
塗布液の塗布量および塗布膜厚さは、大きい程塗布膜内部での流動が起きやすいことよりムラが発生しやすいが、本発明によれば、塗布量および塗布膜厚さが大きい場合でも十分な効果が得られる。塗布膜の厚さが0.001〜0.08mmであれば、ムラなくかつ効率よく乾燥することができる。
帯状可撓性支持体12の走行速度が大きすぎると、同伴風によって塗布膜近傍の境界層が乱され、塗布膜に悪影響を及ぼす。したがって、帯状可撓性支持体12の走行速度は1〜100m/分に設定することが好ましく、5〜80m/分に設定することがより好ましい。
塗布膜のムラは、乾燥初期で特に発生しやすいので、ドライヤ18が塗布液中の溶媒の10%以上を凝縮、回収し、残りの塗布液を通風乾燥手段20で乾燥させることが好ましい。即ち、乾燥工程の前半部では、送風せずに凝集板により溶剤を凝縮回収することが好ましい。また、アルカリ鹸化工程も送風せずに凝集板により溶剤を凝縮回収することが好ましい。
塗布液中の溶媒の何%を凝縮、回収させるかは、塗布膜の乾燥ムラへの影響、生産効率、等を総合的に判断して決定すればよい。
塗布液中の溶媒の蒸発、凝縮を促進させるため、帯状可撓性支持体12および/または塗布膜を加熱するか、凝縮板30を冷却するか、またはその両手段を採用することが好ましい。たとえば、ドライヤに冷却手段を配し、また、帯状可撓性支持体12を挟んでドライヤ18の反対側に加熱手段を配する。
いずれの場合も、塗布膜の反応/乾燥速度を制御するために、温度管理されていることが望ましい。凝縮板30は、温度コントロールできるようにし、冷却したい場合には、冷却するための設備を設置する必要がある。冷却には、冷媒等を使った水冷式の熱交換器方式のもの、風を使った空冷式、電気を用いた方式、たとえばペルチェ素子を使用した方式、等を用いることができる。
帯状可撓性支持体12または塗布膜、またはその両方を加熱したい場合には、反塗布膜側にヒータを配設して加熱することができる。また、昇温可能な搬送ロール(加熱ロール)を配設して加熱することもできる。その他、赤外線ヒータ、マイクロ波加熱手段等を用いて加熱してもよい。
帯状可撓性支持体12、塗布膜、凝縮板30の温度を決定する際、注意しなければならないのは、蒸発させた溶媒が凝縮板30以外の場所、たとえば、搬送ロールの表面等に結露しないようにしなければならないことである。このため、たとえば、凝縮板30以外の部分の温度を凝縮板30の温度よりも高くしておくことによりこの種の結露を回避することができる。
塗布膜の表面とドライヤ18の凝縮板30表面との距離(間隔)は、所望の塗布膜の乾燥速度を考慮した上で、適当な距離に調整する必要がある。距離を短くすると乾燥速度が上がる一方、設定した距離精度の影響を受けやすい。一方、距離を大きくすると乾燥速度が大幅に低下するのみならず、熱による自然対流が起きて乾燥ムラを引き起こす。
塗布膜の表面とドライヤ18の凝縮板30表面との距離は、(式1)に示されるレイリー数が5000未満となる条件を満たす範囲で決定する必要があるが、0.1〜200mmの範囲で調整することが好ましく、0.5〜100mmの範囲で調整することがより好ましい。
なお、ドライヤ18において、帯状可撓性支持体12を挟んで凝縮板30の反対側に多数のガイドローラ22、22…を設ける図1(b)、図2(b)の構成も採り得、ガイドローラ22、22…を設けない図1(a)、図2(a)の構成も採り得る。
ドライヤ18は、必ずしも図1に示されるような直線状である必要はなく、たとえば、図2に示されるような円弧状のドライヤ26であってもよい。また、大きなドラムを設け、それにドライヤを配設してもよい。
なお、図2に示される例では、円弧状のドライヤ26を塗布手段16に近づけて溶媒の回収効率の向上を図っている。
通風乾燥手段20としては、従来技術として使用されているローラ搬送ドライヤ方式またはエアフローティングドライヤ方式の乾燥装置が使用できる。いずれの方式の乾燥装置であっても、乾燥した空気を塗布膜の表面に供給して塗布膜を乾燥させる点では共通する。
なお、通風乾燥手段20を設けず、ドライヤ18のみで塗布膜を反応/乾燥させる方法も採り得る。図3、図4、図5は、いずれもドライヤ18のみで塗布膜を反応/乾燥させる構成の例である。
図3の例において、ドライヤ18は複数のゾーンに分割し、かつ、それぞれのゾーンにおいて凝縮板30と塗布膜との距離が階段的に変化する構成としてある。また、帯状可撓性支持体12を挟んで凝縮板30の反対側に多数のガイドローラ22、22…が設けてある。
図4の例において、ドライヤ18は複数のゾーンに分割し、かつ、それぞれのゾーンにおいて凝縮板30と塗布膜との距離が階段的に変化する構成としてある。ガイドローラ22、22…は設けていない。
図5の例において、ドライヤ18は複数のゾーンに分割されておらず、また、それぞれの凝縮板30と塗布膜との距離は一定とした構成としてある。また、帯状可撓性支持体12を挟んで凝縮板30の反対側に多数のガイドローラ22、22…が設けてある。
その他、本発明の塗布膜の反応/乾燥方法および装置が適用される反応/乾燥装置を組み込んだ塗布・反応/乾燥ライン10に使用されている送り出し装置14、ガイドローラ22、巻き取り装置24等には慣用の部材を使用しており、それらの説明は省略する。
以上に詳述した本発明の塗布膜の反応/乾燥方法および装置によれば、塗布直後の塗布膜に発生するムラを抑制しかつ効率よく均一に塗布膜を反応/乾燥できる。また、塗布・反応/乾燥工程のレイアウトを大きく変更することなく、さらに、塗布液の物性や溶媒の種類等に制約されないので、塗布液処方手段の柔軟な設計が可能である。
また、本発明の塗布膜の反応/乾燥方法および装置によれば、省エネルギー化、コストダウンにも効果がある。すなわち、塗布・反応/乾燥ラインで発生する蒸発気体のうち、水以外の溶媒はそのまま大気へ放出できないので、蒸発気体を液化して回収する必要があり、そのための溶剤ガス回収設備が必要である。ところが、塗布・反応/乾燥ライン10では、塗布液の一部を凝縮・回収するドライヤにより溶媒を液体の状態で直接回収できるため、溶剤ガス回収設備の負荷を減らすことができる。
以下に本発明を実施例により例証するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
[実施例1及び比較例1−1、1−2]
(透明支持体の作製)
(微粒子分散物(RL−1)の調製)
下記の組成からなる溶液を調製し、アトライターにて体積平均粒径80nmになるよう分散を行い、微粒子分散物を得た。得られた微粒子分散物の粒度分布を測定したところ、粒径500nm以上の粒子は0%であった。
ここで体積平均粒径は、『粒度分布測定装置 LA920(堀場製作所製)』で測定した。
・微粒子分散物(RL−1)組成
疎水性シリカ(商品名「AEROSIL R812」、メチル基変性体、
一次粒径7nm:日本アエロジル(株)) 2.00質量部
酢化度60.7%(6位置換度0.90)のセルローストリアセテート
2.00質量部
トリフェニルフォスフェート 0.16質量部
ビフェニルジフェニルフォスフェート 0.08質量部
メチレンクロライド 78.70質量部
メタノール 14.20質量部
1−ブタノール 2.86質量部
(セルロースアシレート溶液(SA−1)の調製)
下記のセルロースアシレート溶液(SA−1)組成に示す各成分をミキシングタンクに投入し、加熱撹拌して、セルロースアシレート溶液を調製した。
・セルロースアシレート溶液(SA−1)組成
酢化度60.7%(6位置換度0.90)のセルローストリアセテート
100質量部
トリフェニルホスフェート 7.8質量部
ビフェニルジフェニルホスフェート 3.9質量部
上記の微粒子分散物(RL−1)(固形分量として) 0.45質量部
メチレンクロライド 300質量部
メタノール 54質量部
1−ブタノール 11質量部
(レターデーション調整剤溶液(RE−1)の調製)
別のミキシングタンクに、下記レターデーション調整剤溶液(RE−1)組成に示す各成分を投入し、加熱撹拌して、レターデーション調整剤溶液を調製した。
・レターデーション調整剤溶液(RE−1)組成
2−ヒドロキシ−4−ベンジルオキシベンゾフェノン 12質量部
2,4−ベンジルオキシベンゾフェノン 4質量部
メチレンクロライド 82質量部
メタノール 15質量部
1−ブタノール 3質量部
セルロースアシレート溶液(SA−1)474質量部に、レターデーション調整剤溶液(RE−1)22質量部を添加し、十分に撹拌した後に室温(25℃)にて3時間放置し、得られた不均一なゲル状溶液を、−70℃にて6時間冷却した後、50℃に加温・攪拌して完全に溶解したドープを得た。
このドープを50℃にて、絶対濾過精度0.01mmの濾紙(東洋濾紙(株)製、#63)で濾過し、さらに絶対濾過精度0.0025mmの濾紙(ポール社製、FH025)にてフィルター濾過及び脱泡を行った。
次に、脱泡後のドープを、バンド流延機を用いて流延した。なお、バンド流延機における金属支持体の算術平均粗さ(Ra)は、0.006μmである。バンド上での膜面温度が40℃となってから、1分乾燥し、剥ぎ取った後、乾燥温度120℃、乾燥工程における熱風は遮風装置により乾燥熱風が直接当らないようにして行い、残留溶剤量が0.3質量%の透明支持体としてのセルロースアシレートフィルム(CA−1)(厚さ80μm)を製造した。
作成した透明支持体(CA−1)について、レターデーションを測定したところ、厚み方向のレターデーションRthは77nm、面内のレターデーションReは7nmであった。
(透明支持体表面の凹凸形状)
得られた透明支持体(CA−1)の表面形状は、Ra:0.04μm、Rz0.024μm、Sm:0.12μm、Ry:0.08μmであった。
(アルカリ鹸化処理)
透明支持体(CA−1)の片面について以下のアルカリ鹸化処理を行った。
すなわち、フィルムの上に、温度60℃の誘電式加熱ロールを通過させ、フィルム表面温度40℃に昇温した後に、下記に示す組成のアルカリ溶液(S−1)をロッドコーターを用いて塗布量10ml/m2、塗布速度60/分で塗布し、110℃に加熱(鹸化温度)した(株)ノリタケカンパニーリミテド製のスチーム式遠赤外ヒーターの下に8秒(鹸化時間)滞留させた。続けて、同じくロッドコーターを用いて純水を3ml/m2塗布した。この時のフィルム温度は40℃であった。次いで、ファウンテンコーターによる水洗とエアナイフによる水切りを4回繰り返した後に110℃の乾燥ゾーンに3秒間滞留させて乾燥した。
・アルカリ溶液(S−1)組成
水酸化カリウム 5.0質量部
水 16.0質量部
イソプロパノール 65.0質量部
界面活性剤(K−1:C1225O(CH2CH2O)20H) 0.8質量部
プロピレングリコール 15.0質量部
(比較例1−1及び比較例1−2鹸化処理透明支持体の作製)
実施例1のアルカリ溶液(S−1)に代えてそれぞれ界面活性剤(K−2:ベタイン型、及びK−3:C1225OSO3Na)を用い、アルカリ鹸化条件の鹸化温度と鹸化時間を同条件として、表2に記載の鹸化後の表面形状、及び鹸化深度となる比較例1−1及び1−2の鹸化処理透明支持体FSR1−1、FSR1−2を作製した。
(親水化処理後の透明支持体の特性)
作製した各透明支持体について下記の特性をそれぞれ測定した。また、親水化処理後の透明支持体について残存する界面活性剤量を各々3点測定した。その結果を表1に示す。界面活性剤濃度は、3点の平均値である。
(表面の面状:異物、濁り)
親水化処理後の透明支持体から全幅で長手方向に1mの長さに切りだし、この試料にシャウカステン上で光を透過させながら目視及びルーペで異物及び濁りの有無を観察し、以下の基準を用いて評価した。
〇:異物、濁りの発生が全く認められない(10人で評価し、一人も認識できないレベル)
△:異物、濁りが弱く発生する(10人で評価し、1〜5人が認識するレベル)
×:異物、濁りが強く発生する(10人で評価し、6人以上が認識するレベル)
親水化処理した各透明支持体を上記の内容について評価した。その結果を表1に示す。
Figure 2006091292
表1に示す結果から明らかなように、本発明の実施例1(試料No.FS1)は、界面活性剤残存量が少なく、面状として良好であった。また、1平方メートルの面内のバラツキが見られない均一な処理であり、鹸化処理の膜表面からの深さは0.1μmであった。界面活性剤残存量の多い比較例1−1(FSR1−1)〜1−2(FSR1−2)の各試料は、面状が悪化し、異物が多く見られた。
以上のように、本発明の実施例1は、透明支持体の面状を良好にできることが判る。
(配向膜の形成)
この親水化処理した各透明支持体上に、下記の組成の配向膜塗布液(O−1)をダイコーターで32ml/m2の塗布量、60m/分の乾燥速度で塗布し、100℃の温風で40秒、さらに25℃の温風で10秒乾燥した。
乾燥後の塗布面のpHを測定した所、その値は4.1であった。また、塗布幅方向での中央と左右両端の位置のpH値は4.00〜4.20の範囲であった。
次に、親水化処理した各透明支持体の長手方向にラビング処理を実施した。
・配向膜塗布液(O−1)組成
下記に示す変性ポリビニルアルコール 5質量部
下記に示すカルボン酸化合物(A−1) 0.05質量部
グルタルアルデヒド 0.25質量部
水 95質量部
メタノール 35質量部
Figure 2006091292
(配向膜の密着性の評価法)
配向膜層表面に、JIS K−5400の碁盤目テープ法に準拠し、規定のカッターナイフ、カッターガイドを用いて1mm×1mmのクロスハッチ(升目)を100個入れ、温度25℃、相対湿度60%の条件で2時間放置した後、規定のセロハン粘着テープをはりつけ消しゴムでこすって塗膜に付着した。テープを付着後2分後に塗面に直角方向に引き剥がしたときに配向膜が透明支持体から剥がれた升目の数を計測することで評価した。
◎:100升において剥がれが全く認められなかったもの
○:100升において剥がれが認められたものが2升以内のもの
△:100升において剥がれが認められたものが10〜3升のもの
×:100升において剥がれが認められたものが10升をこえたもの
(光学異方性層の形成)
下記の組成のディスコティック液晶塗布液(DA−1)を#4のワイヤーバーコーターで配向膜を形成した透明支持体上に塗布し、125℃の高温槽中で3分間加熱し、ディスコティック液晶を配向させた後、高圧水銀灯を用いてUVを500mJ/cm2照射し、室温まで放冷して、表2に記載の各光学補償シートを作成した。
・ディスコティック液晶塗布液(DA−1)
下記に示すディスコティック液晶DLC−A 100質量部
エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパンアクリレート
(V#360:大阪有機化学(株)製) 10質量部
セルロースアセテートブチレート
(CAB551−0.2:イーストマンケミカル製) 2.2質量部
セルロースアセテートブチレート
(CAB531−1:イーストマンケミカル製) 0.55質量部
イルガキュアー907(チバガイギー製) 3.3質量部
カヤキュアーDETX(日本化薬(株)製) 1.1質量部
メチルエチルケトン 200質量部
Figure 2006091292
各フィルムの光学異方性層の厚さは、各々1.7μmであった。
(光学補償シートの性能評価法)
(密着性)
表2記載の光学補償シートKS1、KSR1−1、KSR1−2を、アクリル系接着剤を用いてガラス板に貼りつけ、90℃で20時間保存した。アクリル系接着剤は液晶表示装置の組み立てに、ガラス板は液晶セルに用いられるものと同じである。ガラス板から光学補償シートを垂直方向に剥がして、剥離残りが生じた部分を調べることで、密着性を評価した。
◎:全く発生しない(10人が評価し、1人も認識できないレベル)
○:わずかに発生する(10人が評価し、1〜3人が認識するレベル)
△:弱く発生する(10人が評価し、3〜5人が認識するレベル)
×:強く発生する(10人が評価し、6人以上が認識するレベル)
(透過光ムラ)
各光学補償シートを、クロスニコルス配置した2枚の偏光板の間に挟み、透過光のムラを目視で観察し官能評価を行った。
○:全く発生しない(10人が評価し、1人も認識できないレベル)
△:弱く発生する(10人が評価し、1〜5人が認識するレベル)
×:強く発生する(10人が評価し、6人以上が認識するレベル)
これらの結果を表2に示す。表2の記載から明らかなように、本発明の光学補償シートKS1は密着性が充分であり、且つ透過光ムラが見られない極めて良好なものであった。
Figure 2006091292
(偏光膜の作製)
平均重合度4000、鹸化度99.8mol%のPVAを水に溶解し、4.0%の水溶液を得た。
この溶液をテーパーのついたダイを用いてバンド流延して乾燥し、延伸前の幅が110mmで厚みは左端が120μm、右端が135μmになるように製膜して、フィルムを得た。
このフィルムをバンドから剥ぎ取り、ドライ状態で45度方向に斜め延伸してそのままヨウ素0.5g/L、ヨウ化カリウム50g/Lの水溶液中に30℃で1分間浸漬し、次いでホウ酸100g/L、ヨウ化カリウム60g/Lの水溶液中に70℃で5分間浸漬し、さらに水洗槽で20度で10秒間水洗したのち80℃で5分間乾燥してヨウ素系偏光膜(HF−01)を得た。偏光膜は、幅660mm、厚みは左右とも20μmであった。
(偏光板の作製)
ポリビニルアルコール系接着剤を用いて、上記の各光学補償シート(KS−1、KSR1−1〜2)をセルロースアシレートフィルム(CA−1)面で偏光膜(HF−01)の片側に貼り付けた。また、厚さ80μmのセルローストリアセテートフィルム(TD−80UF:富士写真フイルム(株)製)に実施例1のアルカリ溶液による鹸化処理と同様にして片面を鹸化処理し、ポリビニルアルコール系接着剤を用いて、偏光膜の反対側に貼り付けた。
偏光膜の透過軸とセルロースアシレートフィルム(CA−1)の遅相軸とは平行になるように配置した。偏光膜の透過軸と上記セルローストリアセテートフィルムの遅相軸とは、直交するように配置した。このようにして偏光板(HB−1)及び(HBR−1)〜(HBR−2)を作製した。
(液晶表示装置)
TN型液晶セルを使用した液晶表示装置(6E−A3、シャープ(株)製)に設けられている一対の偏光板を剥がし、代わりに上記に作製した各偏光板を、実施例1で作製した光学補償シートが液晶セル側となるように粘着剤を介して、観察者側およびバックライト側に一枚ずつ貼り付けた。観察者側の偏光板の透過軸と、バックライト側の偏光板の透過軸とは、Oモードとなるように配置した。
(描画画像のムラ評価)
このようにして作製した液晶表示装置について、測定機(EZ−Contrast 160D、ELDIM社製)を用いて、黒表示(L1)時の描画ムラを目視で観察した。その結果を表3に示す。
○:全く発生しない(10人が評価し、1人も認識できないレベル)
△:弱く発生する(10人が評価し、1〜5人が認識するレベル)
×:強く発生する(10人が評価し、6人以上が認識するレベル)
表3に示す結果から、上記の本発明の光学補償シートを用い、鹸化処理されたフィルムKS1が保護膜となるように設置したものは、何れも画面全面が曇りの無い鮮明で高い輝度の画像が得られた。一方、比較用フィルムKSR1−1及びKSR1−2は、画面全面にわたりムラのある輝度欠陥の多いものであった。
以上の目視観察結果より、鹸化処理した透明支持体としてのセルロースアシレートフィルムを用いた本発明の光学補償シートは、良好な光学特性を有することが判る。
Figure 2006091292
[実施例2]
(透明支持体の作製)
(微粒子分散物(RL−2)の調製)
下記の組成からなる混合物を調製し、アトライターにて体積平均粒径65nmになるよう分散を行い、微粒子分散物を得た。得られた微粒子分散物の粒度分布を測定したところ、粒径500nm以上の粒子は0%であった。
・微粒子分散物(RL−2)組成
疎水性シリカ(商品名「AEROSIL 972」、メチル基変性体、
一次粒径16nm:日本アエロジル(株)) 2.20質量部
酢化度59.9%(6位置換度0.90)のセルローストリアセテート
2.00質量部
モノドデシルフォスフェート(微粒子化分散助剤) 0.22質量部
ビフェニルジフェニルフォスフェート 0.08質量部
酢酸メチル 71.0質量部
メタノール 6.2質量部
アセトン 6.1質量部
エタノール 6.1質量部
1−ブタノール 6.1質量部
(セルロースアシレート溶液(SA−2)の調製)
下記のセルロースアシレート溶液(SA−2)組成に示す成分をミキシングタンクに投入し、加熱撹拌して、セルロースアシレート溶液を調製した。
・セルロースアシレート溶液(SA−2)組成
酢化度59.9%(6位置換度0.90)のセルローストリアセテート
100質量部
トリフェニルホスフェート 7.8質量部
ビフェニルジフェニルホスフェート 3.9質量部
下記に示す構造のUV剤:UV−1 1.0質量部
下記に示す構造のUV剤:UV−2 1.0質量部
上記の微粒子分散物RL−2(固形分量として) 0.20質量部
酢酸メチル 290質量部
メタノール 25質量部
アセトン 25質量部
エタノール 25質量部
1−ブタノール 25質量部
Figure 2006091292
(レターデーション調整剤溶液(RE−2)の作製)
別のミキシングタンクに、下記レターデーション調整剤溶液(RE−2)組成に示す各成分を投入し、加熱撹拌して、レターデーション調整剤溶液(RE−2)を調製した。
・レターデーション調整剤溶液(RE−2)組成
上記の酢化度59.9%(6位置換度0.90)のセルローストリアセテート
4質量部
下記に示すレターデーション調整剤 16質量部
酢酸メチル 74.4質量部
メタノール 6.4質量部
アセトン 6.4質量部
エタノール 6.4質量部
i−ブタノール 6.4質量部
Figure 2006091292
セルロースアシレート溶液(SA−2)464質量部にレターデーション調整剤溶液(RE−2)36質量部を混合し、充分に攪拌した後に室温(25℃)にて3時間放置し、得られた不均一なゲル状溶液を、−70℃にて6時間冷却した後、50℃に加温・攪拌して完全に溶解したドープを得た。これを実施例1と同様にしてフィルター濾過及び脱泡を行った後、バンド流延機を用いて流延した。なお、バンド流延機における金属支持体の算術平均粗さ(Ra)は、0.08μmで、十点平均粗さ(Rz)は0.13μmである。 バンド上での膜面温度が40℃となってから、1分乾燥し、残留溶剤量が43質量%のフィルムを剥ぎ取った後、140℃の乾燥風を遮風装置により乾燥熱風が直接当らないようにして行い、次いでテンターを用いて幅方向に28%延伸した。この後、135℃の乾燥風を乾燥熱風が直接当らないようにして20分間乾燥を行い、残留溶剤量が0.3質量%の透明支持体としてのセルロースアシレートフィルム(CA−2)を、厚さ65μm、長さ1000m、幅1.34mの巻きロール形態で製造した。
得られたセルロースアシレートフィルム(CA−2)の波長590nmにおけるレターデーション値(Re)は30nm、波長590nmにおけるレターデーション値(Rth)は105nmであった。
(透明支持体表面の凹凸形状)
得られた長尺ロールのセルロースアシレートフィルム(CA−2)の表面凹凸形状は以下のようになった。
Ra:0.003μm、Rz:0.075μm、Ry:0.084μm、Sm:0.20μm
(アルカリ鹸化処理)
次に、温度60℃の誘電式加熱ロールを通過させ、フィルム表面温度30℃に昇温した後に、下記内容のアルカリ溶液(S−2)をダイコーターを用いて塗布量14ml/m2、塗布速度60m/分で塗布し、110℃に加熱した(株)ノリタケカンパニーリミテド製のスチーム式遠赤外ヒーターの下に8秒滞留するようにした。続けて、同じくロッドコーターを用いて純水を3ml/m2塗布した。この時のフィルム温度は40℃であった。次いで、ファウンテンコーターによる水洗とエアナイフによる水切りを4回繰り返した後に80℃の乾燥ゾーンに3.5秒間滞留させて乾燥した。
得られた透明支持体の一部をサンプリングして表面の状態を調べた。水との接触角25度、表面から鹸化の深度は0.3μmであり、鹸化された透明支持体の残存界面活性剤量は3点平均で0.7mg/m2であり、表面の面状はムラの無い良好なものであった。また、鹸化処理後の透明支持体表面の形状は、以下のようになった。
Ra:0.003μm、Rz:0.077μm、Ry:0.085μm、Sm:0.20μm
・アルカリ溶液(S−2)組成
水酸化カリウム 4.8質量部
水 15.5質量部
イソプロパノール 65.0質量部
エチレングリコール 15.0質量部
界面活性剤(商品名「TRITON(R)X−100」:Merck製)
0.6質量部
消泡剤(商品名「プルロニックTR70」:旭電化工業(株)製)
0.01質量部
(配向膜の形成)
次に、下記組成の配向膜塗布液(O−2)を用いた他は実施例1の配向膜と同様にして塗布・反応/乾燥させた後、ラビング処理を実施した。
・配向膜塗布液(O−2)組成
下記に示す変性ポリビニルアルコール 4.5質量部
クエン酸 0.07質量部
水 73質量部
メタノール 22.5質量部
グルタルアルデヒド 0.2質量部
Figure 2006091292
(光学異方性層の形成)
実施例1で使用したディスコティック液晶塗布液(DA−1)において、液晶DLC−Aの代わりに、下記に示す液晶DLC−B、92質量部、及び下記に示すフッ素系化合物(F−1)1.4質量部を用いた他は塗布液DA−1と同一の内容の塗布液DA−2を用いて、#4のワイヤーバーコーターで塗布し、125℃の高温槽中で3分間加熱し、ディスコティック液晶を配向させた後、高圧水銀灯を用いてUVを500mJ/cm2照射し、室温まで放冷して、光学補償シートKS2を作成した。
Figure 2006091292
Figure 2006091292
光学異方性層の厚さは、1.7μmであった。長尺ロール形態で製造された光学補償シートKS2の密着性及び面状性を実施例1と同様にして評価した所、実施例1と同等の良好なものであった。
(偏光膜(HF−02)の作製)
平均重合度4,000、鹸化度99.8mol%のPVAを水に溶解し、4.0%の水溶液を得た。
この溶液をテーパーのついたダイを用いてバンド流延して乾燥し、延伸前の幅が110mmで厚みは左端が120μm、右端が135μmになるように製膜した。
このフィルムをバンドから剥ぎ取り、ドライ状態で45度方向に斜め延伸してそのままヨウ素0.5g/L、ヨウ化カリウム50g/Lの水溶液中に30℃で1分間浸漬し、次いでホウ酸100g/L、ヨウ化カリウム60g/Lの水溶液中に70℃で5分間浸漬し、さらに水洗槽で20℃で10秒間水洗したのち80℃で5分間乾燥してヨウ素系偏光膜(HF−02)を得た。偏光膜は、幅660mm、厚みは左右とも20μmであった。
(偏光板の作製)
ポリビニルアルコール系接着剤を用いて、光学補償シートKS2をセルロースアシレートフィルム(CA−2)面で偏光膜(HF−02)の片側に貼り付けた。また、厚さ80μmのセルローストリアセテートフィルム(TD−80UF:富士写真フイルム(株)製)に実施例1のアルカリ溶液による鹸化処理と同様にして片面を鹸化処理を行い、ポリビニルアルコール系接着剤を用いて、偏光膜の反対側に貼り付けた。
偏光膜の透過軸とセルロースアシレートフィルム(CA−2)の遅相軸とは平行になるように配置した。偏光膜の透過軸と上記セルローストリアセテートフィルムの遅相軸とは、直交するように配置した。このようにして偏光板(HB−2)を作製した。
(ベンド配向液晶セルの作製)
ITO電極付きのガラス基板に、ポリイミド膜を配向膜として設け、配向膜にラビング処理を行った。得られた二枚のガラス基板をラビング方向が平行となる配置で向かい合わせ、セルギャップを6μmに設定した。Δn(屈折率neとnoの差)が0.1396の液晶性化合物(ZLI1132、メルク社製)を注入し、ベンド配向液晶セルを作製した。液晶セルの大きさは20インチであった。
作製したベンド配向セルを挟むように、上記で作製した偏光板(HB−2)を二枚貼り付けた。偏光板の光学異方性層がセル基板に対面し、液晶セルのラビング方向とそれに対面する光学異方性層のラビング方向とが反平行となるように配置した。
液晶セルに55Hzの矩形波電圧を印加した。白表示2V、黒表示5Vのノーマリーホワイトモードとした。透過率の比(白表示/黒表示)をコントラスト比として、測定機(EZ−Contrast 160D、ELDIM社製)を用いて、黒表示(L1)から白表示(L8)までの8段階で視野角を測定した。
視野角の評価尺度として、視野の画像のコントラスト比が10以上を維持し、かつ黒側の階調反転の起こらない(即ち黒表示(L1)と次のレベル(L2)の間で反転が起こらない)範囲の開角度の値を用いた。
その結果は、[上:80°/下:80°/左右:80°]となり、良好であった。
(液晶表示装置パネル上でのムラ評価)
実施例2の液晶表示装置の表示パネルを全面中間調に調整し、ムラを評価した。実施例2の液晶表示装置パネルは、どの方向から見てもムラは観察されなかった。
(TN液晶セルでの評価)
TN型液晶セルを使用した液晶表示装置(AQUOS LC20C1S、シャープ(株)製)に設けられている一対の偏光板を剥がし、代わりに実施例2で作製した偏光板(HB−2)を、光学補償シート(KS2)が液晶セル側となるように粘着剤を介して、観察者側およびバックライト側に一枚ずつ貼り付けた。観察者側の偏光板の透過軸と、バックライト側の偏光板の透過軸とは、Oモードとなるように配置した。
作製した液晶表示装置について、測定機(EZ−Contrast160D、ELDIM社製)を用いて、黒表示(L1)から白表示(L8)までの8段階で視野角を測定した。
その結果は、[上:80°/下:80°/左右:80°]となり、良好であった。
(液晶表示装置パネル上でのムラ評価)
実施例2の液晶表示装置の表示パネルを全面中間調に調整し、ムラを評価した。実施例2の液晶表示装置パネルは、どの方向から見てもムラは観察されなかった。
[実施例3]
(セルロースアシレートフィルムの作製)
(セルロースアセテート溶液の調製)
下記表4に示す組成のセルロースアセテート原液溶液(元ドープ液)調製した。溶解はミキシングタンクに原料を投入し、加熱しながら攪拌して、各成分を溶解した。
Figure 2006091292
(レターデーション調整剤溶液(RE−3)の調製)
下記化8に示す構造のレターデーション調整剤17質量部、酢酸メチル77質量部、メタノール6.6質量部、アセトン6.6質量部、エタノール6.6質量部、1−ブタノール3.2質量部を別のミキシングタンクに投入し、加熱しながら攪拌して、レターデーション調整剤溶液(RE−3)を調製した。
Figure 2006091292
(内層用及び外層用セルロースアセテートドープ溶液の調製)
表5に示す組成物をミキシングタンクに投入、攪拌、溶解し、内層用、外層用セルロースアセテートドープ溶液を調製した。セルロースアセテート100質量部に対するレターデーション調整剤の添加量は、表5に示す。
得られたドープを50℃にて、絶対ろ過精度0.01mmのフィルター(東洋濾紙(株)製、#63)および絶対ろ過精度0.0025mmのフィルター(ポール社製、FH025)にてろ過した。
Figure 2006091292
3層共流延ダイを用いて、ろ過したドープを内層用ドープが内側に外層用ドープが両外側になるように配置してバンド流延機を用いて重層流延した。ドープをゲル化させ、70℃で3分、120℃で5分乾燥した後にフィルムをバンドから剥離し、130℃で60秒間乾燥し、セルロースアセテートフィルムを製造した。内層厚み48μm、両外層厚みが6μmとなるようにドープ吐出量を調整して製膜した。
得られた膜厚60μmのフィルムを、テンターを用いて延伸倍率16%で横延伸し、延伸後の幅のまま130℃で30秒間保持し、長さ3000m、幅1.2mの巻きロール形態の透明支持体としてのセルロースアシレートフィルム(CA−3)を作製した。Reは14nm、Rthは80nmであった。
(透明支持体の凹凸形状)
得られた透明支持体(CA−3)のフィルム表面の凹凸形状は、以下の通りであった。
Ra:0.003μm、Rz:0.084μm、Ry:0.124μm、Sm:0.56μm
(アルカリ鹸化処理)
上記の透明支持体(CA−3)上に、下記に示す組成のアルカリ溶液(S−3)をロッドコーターで塗布量12ml/m2、塗布速度40m/分で塗布し、40℃で11秒間加熱した後、濡れたままの塗布面に#1.6バーで水を塗布し、すぐに25℃の洗浄水500ml/m2をノズルから吹き付け、エアナイフでフィルム表面の洗浄水を吹き飛ばす処理を三回連続して行い、100℃の温風で乾燥して、表面が鹸化された透明支持体としてのセルローストリアシレートフィルム(FS3)を作製した。
鹸化されたフィルムの残存界面活性剤量は3点平均で0.4mg/m2であり、表面形状は下記の通りであり、鹸化の深さは0.5μmであった。また、フィルムの表面の面状性も良好であった。
Ra:0.003μm、Rz:0.085μm、Ry:0.120μm、Sm:0.56μm
・アルカリ溶液(S−3)組成
1.0モル/リットルの水酸化カリウム溶液
溶剤:イソプロピルアルコール/プロピレングリコール/水
=74.5/13/12質量%
界面活性剤(商品名「Brij(R)35」:Aldrich製) 0.5質量%
(配向膜の形成)
鹸化処理済セルローストリアセテートフィルム(FS3)の片面に、下記処方の配向膜塗布液(O−3)を、#18のワイヤーバーコーター、塗布速度40m/分で塗布し、100℃の温風で60秒、さらに70℃の温風で15秒乾燥して、配向膜を設けた長尺ロール状のセルローストリアセテートフィルムを作製した。
乾燥後の塗布面のpHを測定した所、その値は4.0であった。また、塗布幅方向での中央と左右両端の位置のpH値は3.95〜4.10の範囲であった。
次に、上述の配向膜を設けた長尺ロール状のセルロースアセテートフィルムの遅相軸方向となす角度が45゜となる方向にラビング処理を実施した。
・配向膜塗布液(O−3)組成
下記化9に示す変性ポリビニルアルコール 4質量部
下記化10に示す構造のカルボン酸化合物A−2 0.07質量部
水 72.5質量部
メタノール 23.2質量部
グルタルアルデヒド 0.2質量部
Figure 2006091292
Figure 2006091292
(光学異方性層の形成)
(ディスコティック液晶塗布液(DA−3)の調製)
SUS製のタンク中に、下記の組成のディスコティック液晶塗布液(DA−3)を調製した。
・ディスコティック液晶塗布液(DA−3)組成
下記に示すディスコティック液晶DLC−C 42質量部
エチレンオキサイド変成トリメチロールプロパントリアクリレート
(V#360、大阪有機化学(株)製) 4質量部
セルロースアセテートブチレート
(CAB551−0.2、イーストマンケミカル社製) 0.92質量部
セルロースアセテートブチレート
(CAB531−1、イーストマンケミカル社製) 0.23質量部
光重合開始剤 1.40質量部
(商品名「イルガキュア907」:チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)
増感剤 0.45質量部
(商品名「カヤキュア−DETX」:日本化薬(株)製)
メチルエチルケトン 101質量部
Figure 2006091292
上述の長尺ロール状セルロースアセテートフィルムの配向膜上に、上記塗布液(DA−3)を、#3のワイヤーバーで塗布した。これを130℃の熟成ゾーンで2分間加熱し、ディスコティック液晶性分子を配向させた。次に、130℃で120W/cm高圧水銀灯を用いて、1分間UV照射しディスコティック液晶性分子を重合させた。その後、室温まで放冷した。このようにして、光学異方性層を有する光学補償シート(KS3)を作製した。
(偏光膜(HF−03)の作製)
平均重合度7000、鹸化度99.8mol%のPVAフィルムをヨウ素2.0g/L、ヨウ化カリウム4.0g/Lの水溶液に25℃にて240秒浸漬し、さらにホウ酸10g/Lの水溶液に25℃にて60秒浸漬後、テンター延伸機に導入し、5.3倍に延伸し、以降幅を一定に保ち、収縮させながら80℃雰囲気で乾燥させた後、テンターから離脱して巻き取った。延伸開始前のPVAフィルムの含水率は31%で、乾燥後の含水率は1.5%であった。
左右のテンタークリップの搬送速度差は、0.05%未満であり、テンター出口におけるシワ、フィルム変形は観察されなかった。
得られた偏光膜(HF−03)は膜厚19μmであり、550nmにおける透過率43.7%、偏光度99.97%であった。
(反射防止膜の作製)
下記処方の低屈折率層塗布液を攪拌、調製し、孔径1μmのポリプロピレン製フィルターでろ過した後、フジタック(TD80U、富士写真フイルム(株)製)上にバーコーターで塗布し、80℃で5分乾燥後、120℃で10分間加熱してポリマーを架橋させ、厚さ0.1μmの低屈折率層を形成し、反射防止膜を作製した。
・低屈折率層塗布液組成
ポリシロキサン及び水酸基含有フッ素ポリマー含有熱架橋性組成物 210質量部
(JN−7228、固形分濃度6%、JSR(株)製)
シリカゾル(MEK−ST) 18質量部
(平均粒径10〜20nm、固形分濃度30wt%、日産化学(株)製)
メチルエチルケトン 200質量部
この反射防止膜と、上記の通り作製した光学異方性層を有する光学補償シート(KS3)とを液温度が55℃の1.5モル/リットルの水酸化ナトリウム水溶液中に1分間浸漬して両面を鹸化した後、希硫酸および水で十分洗浄し、乾燥後それぞれのセルローストリアセテート側にポリビニルアルコール系粘着材を約30μmの厚みに塗布し、上記偏光膜(HF−03)の両側に貼り合わせさらに80℃で乾燥して偏光板(HB−3)を作製した。
(ベンド配向液晶セルの作製)
ITO電極付きのガラス基板に、ポリイミド膜を配向膜として設け、配向膜にラビング処理を行った。得られた二枚のガラス基板をラビング方向が平行となる配置で向かい合わせ、セルギャップを6μmに設定した。セルギャップにΔn(波長550nm)が0.1396の液晶性化合物(ZLI1132、メルク社製)を注入し、ベンド配向液晶セルを作製した。
(ベンド配向モード透過型液晶表示装置の作製)
作製したベンド配向セルを挟むように、作製した偏光板(HB−3)(反射防止膜、偏光膜、光学補償シートよりなる)の光学補償シートの光学異方性層上にアクリル系粘着剤をつけ、液晶セルのラビング方向と光学補償シートのラビング方向とが反平行となる様にして貼り合せ、ベンド配向モードの透過型液晶表示装置を作製した。
この液晶表示装置の液晶セルに、白表示電圧2V、黒表示電圧6Vを印加し、測定機(EZ−Contrast 160D、ELDIM社製)を用いて、正面コントラスト比を測定した。さらに左右方向(セルのラビング方向と直交方向)の視野角(コントラスト比が10以上となる角度範囲)を調べた。
実施例3の液晶表示装置は優れた正面コントラスト比が140、及び視野角160°を示し、良好なコントラストと広い視野角を有している。加えて、表面に曇りや異物のない優れた表示品位の液晶表示装置であることが確認された。
(液晶表示装置パネル上でのムラ評価)
実施例3の液晶表示装置の表示パネルを全面中間調に調整し、ムラを評価した。実施例3の液晶表示装置は、どの方向から見てもムラは観察されなかった。
[実施例4]
(透明支持体の作製)
実施例2において、セルロースアシレートフィルムの製膜に用いたバンド流延機の代わりに、表面にハードクロム鍍金を施した回転ドラム流延機を用いて流延した他は実施例2と同様にして、透明支持体としてのセルロースアシレートフィルム(CA−4)を作製した。なお、回転ドラム流延機における金属支持体の算術平均粗さ(Ra)は、0.008μmで、十点平均粗さ(Rz)は0.03μmである。
得られたセルロースアシレートフィルム(CA−4)の波長590nmにおけるレターデーション値(Re)は32nm、波長590nmにおけるレターデーション値(Rth)は108nmであった。
(透明支持体表面の凹凸形状)
得られた透明支持体(CA−4)の表面凹凸形状は以下のようになった。
Ra:0.004μm、Rz:0.078μm、Ry:0.105μm、Sm:0.24μm
(反射防止膜の作製及びアルカリ鹸化処理)
特開2002−182033号公報の実施例1の記載に従って、反射防止膜を設けたセルロースアシレートフィルムを作製した。このセルロースアシレートフィルムの反射防止膜の反対側を処理面にして、温度60℃の誘電式加熱ロールを通過させ、フィルム表面温度30℃に昇温した後に、下記組成のアルカリ溶液(S−4)をロッドコーターを用いて塗布量10ml/m2、塗布速度40m/分で塗布し、110℃に加熱した(株)ノリタケカンパニーリミテド製のスチーム式遠赤外ヒーターの下に12秒滞留するように搬送させた後に、同じくロッドコーターを用いて純水を3ml/m2塗布した。この時のフィルム温度は40℃であった。次いで、ファウンテンコーターによる水洗とエアナイフによる水切りを3回繰り返した後に70℃の乾燥ゾーンに5秒間滞留させて乾燥し、鹸化処理フィルムを作製した。
・アルカリ溶液(S−4)組成
水酸化カリウム 5.7質量部
水 33.3質量部
n−プロピルアルコール 49.8質量部
エチレングリコール 10.0質量部
界面活性剤(C2245O(CH2CH2O)30H) 0.75質量部
消泡剤「プルロニックTR70」(旭電化工業(株)製) 0.01質量部
鹸化処理フィルムに異物や濁りの発生は全く認められず、透明性良好であった。鹸化された透明支持体の残存界面活性剤量は3点平均で0.6mg/m2であり、表面の水との接触角は33度、鹸化の深度は0.6μmであった。また、表面形状は以下の通りであった。
Ra:0.004μm、Rz:0.077μm、Ry:0.103μm、Sm:0.24μm
(配向膜の形成)
鹸化処理済セルローストリアセテートフィルムの片面に、下記処方の配向膜塗布液(O−4)を、#14のワイヤーバーコーターで塗布し、60℃の温風で60秒、さらに90℃の温風で160秒乾燥して、配向膜を設けた長尺ロール状のセルローストリアセテートフィルムを作製した。
乾燥後の塗布面のpHを測定した所、その値は4.05であった。また、塗布幅方向での中央と左右両端の位置のpH値は3.95〜4.2の範囲であった。
次に、上述の配向膜を設けた長尺ロール状のセルロースアセテートフィルムの遅相軸方向となす角度が45゜となる方向にラビング処理を実施した。
・配向膜塗布液(O−4)組成
下記に示す変性ポリビニルアルコール 19質量部
下記に示す構造のカルボン酸化合物A−3 0.045質量部
水 360質量部
メタノール 120質量部
グルタルアルデヒド 1質量部
Figure 2006091292
(光学補償シート(KS4)、偏光板(HB−4)、液晶表示装置の作製)
得られた配向膜塗設のフィルム上に、実施例2と同様にして光学補償シート(KS4)、偏光板(HB−4)を作製した。次に、反射防止膜面が外側にくるように液晶表示装置に付設した。
実施例2と同様にして、液晶表示装置の描画画像を評価したところ、実施例2と同等の良好な性能であった。
[実施例5]
実施例1において、アルカリ鹸化処理のアルカリ溶液(S−1)のロッドコーターでの塗布方法の代わりにエクストリュージョンコーターを用いて、塗布量17ml/m2、塗布速度60m/分とした他は実施例1と同様にしてセルロースアシレートフィルム(CA−1)を処理した。得られた処理フィルムは全面均一に処理され面状は良好であり、鹸化された透明支持体の残存界面活性剤量は3点平均で0.4mg/m2であり、水との接触角35°、鹸化の深度0.5μmで実施例1と同等であった。更に、実施例1と同様にして光学補償シートを作成した。得られたシートは実施例1と同等の良好な性能であった。
[実施例6]
(反射防止膜付き保護膜の作成)
実施例1のセルロースアシレートフィルム(CA−1)の上に下記の内容の多層型反射防止膜を塗設して反射防止膜付きセルロースアシレートフィルム(AR−1)を作成した。
(導電性層付きフィルムの作製)
セルロースアシレートフィルム(CA−1)の上に、ペルノックスC−4456−S7(アンチモン(Sb)を含有する酸化錫(ATO)を分散したハードコート剤(固形分45質量%):日本ペルノックス(株)製)をリバースグラビアコーターで塗布・反応/乾燥後、紫外線を照射して硬化し、厚み0.5μmの導電性層を形成した。
このフィルムの表面抵抗は108Ω/□オーダーの導電性であった。なお表面抵抗率は、試料を(25℃/65%RH)の条件下に1時間放置した後、同条件下で三菱化学(株)製 抵抗率計MCP−HT260を用いて測定した。
(ハードコート層用塗布液(HCL−1)の調製)
下記のハードコート用塗布液(HCL−1)組成に示す各成分を添加して攪拌した。孔径0.4μmのポリプロピレン製フィルターで濾過してハードコート層用の塗布液(HCL−1)を調製した。
・ハードコート層溶塗布液(HCL−1)組成
トリメチロールプロパントリアクリレート 750質量部
(TMPTA:日本化薬(株)製)
ポリ(グリシジルメタクリレート) 270.0質量部
(質量平均分子量3,000)
メチルエチルケトン 730.0質量部
シクロヘキサノン 500.0質量部
光重合開始剤 50.0質量部
(「イルガキュア184」:チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)
(二酸化チタン微粒子(T−1)の作製)
特開平5−330825号公報に基づいて、鉄(Fe)をコバルトに変更した以外は同公報と同様にして、二酸化チタン粒子の中にコバルトをドープしたコバルト含有の二酸化チタン微粒子(T−1)を作製した。コバルトのドープ量は、Ti/Co(質量比)で、98.5/1.5となるようにした。作製した二酸化チタン微粒子は、ルチル型の結晶構造が認められ、1次粒子の平均粒子サイズが40nm、比表面積が44m2/gであった。
(二酸化チタン微粒子分散液(TL−1)の調製)
上記二酸化チタン微粒子(T−1)100g、下記構造の高分子分散剤(DP−2)20g、およびシクロヘキサノン360gを添加して、粒径0.1mmのジルコニアビーズと共にダイノミルにより分散した。分散温度は35〜40℃で5時間実施した。300nm以上の粒子径が0%の平均径55nmの二酸化チタン微粒子分散液(TL−1)を調製した。
Figure 2006091292
(中屈折率層用塗布液(MLL−1)の調製)
下記の中屈折率層用塗布液(MLL−1)組成に示す各成分を混合し、十分に撹拌後、孔径0.4μmのポリプロピレン製フィルターで濾過して中屈折率層用塗布液(MLL−1)を調製した。
・中屈折率層用塗布液(MLL−1)組成
上記の二酸化チタン微粒子分散液(TL−1) 88.9質量部
ジペンタエリスリトールペンタアクリレートとジペンタエリスリトールヘキサアクリレートの混合物(DPHA) 58.4質量部
光重合開始剤 3.1質量部
(「イルガキュア907」:チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)
光増感剤(「カヤキュアーDETX」:日本化薬(株)製 1.1質量部
メチルエチルケトン 482.4質量部
シクロヘキサノン 1869.8質量部
(高屈折率層用塗布液(HLL−1)の調製)
下記の高屈折率層用塗布液(HLL−1)組成に示す各成分を混合し、十分に撹拌後、
孔径0.4μmのポリプロピレン製フィルターで濾過して高屈折率層用塗布液(HLL−1)を調製した。
・高屈折率用塗布液(HLL−1)組成
上記の二酸化チタン分散液(TL−1) 586.8質量部
DPHA 47.9質量部
イルガキュア907 4.0質量部
カヤキュアーDETX 1.3質量部
メチルエチルケトン 455.8質量部
シクロヘキサノン 1427.8質量部
(低屈折率層用塗布液(LLL−1)の調製)
下記の低屈折率層用塗布液(LLL−1)組成に示す各成分をミキシングタンクに投入して攪拌した。孔径1μmのポリプロピレン製フィルターでろ過して、低屈折率層用塗布液(LLL−1)を調製した。
・低屈折率層用塗布液(LLL−1)組成
DPHA 1.4質量部
下記構造のフッ素系ポリマー(PF−1) 5.6質量部
中空シリカ(イソプロパノール18質量%) 20.0質量部
(平均粒径40nm、シェル層厚7nm、屈折率1.31)
反応性シリコーン(RMS−033:Gelest社製) 0.7質量部
下記内容のゾル液a 6.2質量部
イルガキュア907 0.2質量部
メチルエチルケトン 315.9質量部
Figure 2006091292
[ゾル液aの調製]
攪拌機、還流冷却器を備えた反応器、メチルエチルケトン120質量部、アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン“KBM5103”[信越化学工業(株)製]100質量部、ジイソプロポキシアルミニウムエチルアセトアセテート3質量部を加えて混合し、さらにイオン交換水30質量部を加えて60℃で4時間反応させたのち、室温まで冷却してゾル液aを得た。質量平均分子量は1,600であり、オリゴマー成分以上の成分のうち、分子量が1,000〜2,0000の成分は100%であった。またガスクロマトグラフィー分析から、原料のアクリロイルオキシプロピルトリメトキシシランは全く残存していなかった。
(反射防止膜(AF−1)の作製)
上記の導電層付きセルロースアシレートフィルム(CA−1)の上に、前記ハードコート層用塗布液(HCL−1)を、リバースグラビアコーターを用いて塗布した。100℃で乾燥した後、酸素濃度が1.0体積%以下の雰囲気になるように窒素パージしながら160W/cmの空冷メタルハライドランプ[アイグラフィックス(株)製]を用いて、照度400mW/cm2、照射量300mJ/cm2の紫外線を照射して塗布層を硬化させ、厚さ8μmのハードコート層(HC−1)を形成した。得られたハードコート層の上に、中屈折率層用塗布液(MLL−1)、高屈折率層用塗布液(HLL−1)及び低屈折率層用塗布液(LLL−1)を、3つの塗布ステーションを有するリバースグラビアコーターを用いて連続して塗布した。
中屈折率層の乾燥条件は100℃、2分間とし、紫外線硬化条件は酸素濃度が1.0体積%以下の雰囲気になるように窒素パージしながら、180W/cmの空冷メタルハライドランプ[アイグラフィックス(株)製]を用いて、照度400mW/cm2、照射量400mJ/cm2の照射量とした。硬化後の中屈折率層(ML−1)は屈折率1.630、膜厚67nmであった。
高屈折率層の乾燥条件はいずれも90℃、1分の後、100℃、1分とし、紫外線硬化条件は、酸素濃度が1.0体積%以下の雰囲気になるように窒素パージしながら、240W/cmの空冷メタルハライドランプ[アイグラフィックス(株)製]を用いて、照度600mW/cm2、照射量600mJ/cm2の照射量とした。硬化後の高屈折率層(HL−1)は屈折率1.905、膜厚107nmであった。
低屈折率層の乾燥条件は、120℃で150秒乾燥の後、更に140℃で8分乾燥させてから、窒素パージ下で240W/cmの空冷メタルハライドランプ[アイグラフィックス(株)製]を用いて、照度400mW/cm2、照射量900mJ/cm2の紫外線を照射した。硬化後の低屈折率層(LL−1)は屈折率1.43、膜厚100nmであった。
以上の様にして、セルローストリアセテートフィルムの一方の表面上に反射防止膜を塗設したフィルム(AF−1)を作製した。
このフィルムの反射防止膜塗設の反対面のフィルム表面を、界面活性剤をC22450(CHCH3CH2O)35Hに代えた以外は実施例4に記載のアルカリ鹸化処理方法と同様にして処理した。鹸化された透明支持体の残存界面活性剤量は3点平均で0.6mg/m2であった。
(光学補償シート(KS−5)の作製)
実施例1の光学補償シート(KS−1)において光学異方性層の代わりに、下記の組成の棒状液晶塗布液(DA−5)をワイヤーバーで塗布し、125℃、1m/秒の熱風で3分間加熱した。次に、100℃で120W/cm高圧水銀灯を用いて30秒間光照射し室温まで放冷して、光学補償シート(KS−5)を作製した。光学異方性層の膜厚は0.8μmであった。
・棒状液晶塗布液(DA−5)
下記の棒状液晶化合物(LC) 38.1質量部
光重合開始剤(イルガキュアー907) 1.14質量部
増感剤(カヤキャアーDETX) 0.38質量部
下記の配向調整剤 0.19質量部
グルタルアルデヒド 0.04質量部
メチルエチルケトン 60.15質量部
Figure 2006091292
Figure 2006091292
(偏光板の作製)
実施例1の偏光板(HB−1)において、偏光膜(HF−01)の一方の保護フィルムのセルローストリアセテート(TD−80UF)の代わりに上記の反射防止膜付きフィルム(AF−1)のアルカリ鹸化処理面と、又他の面の光学補償シート(KS−1)の代わりに上記の光学補償シート(KS−5)の光学異方性層とは反対側のアルカリ処理した面を偏光膜(HF−01)と貼りあわせて偏光板(HB−5)を作製した。
(液晶表示装置)
VAモードで22インチの液晶表示装置“TH−22LH10”型(松下電器(株)製)に設けられている視認側の偏光板の代わりに、本発明の偏光板(HB−5)の光学異方性層が液晶セル側となるように、アクリル系粘着剤を介して観察者側に一枚貼り付けた。このとき観察者側のこの偏光板の透過軸と、バックライト側の偏光板の透過軸とは、Oモードとなるように配置した。
(液晶表示装置の描画性能)
この液晶表示装置の描画画像の画像品位を評価した。その結果は、ギラツキ感のない均一性良好な画像で、且つ外光の写り込みも殆ど無く、黒表示での色味、コントラスト、視野角、色味のニュートラル性のいずれも良好な性能を示した。
[実施例6]
(偏光板の作製)
実施例1の光学補償シート(KS−1)において光学異方性層の代わりに、下記内容の光学異方性層を塗設して光学補償シート(KS−6)を作製した。
下記の組成のディスコティック液晶塗布液(DA−6)をワイヤーバーで塗布し、125℃、1m/秒の熱風で3分間加熱した。次に、100℃で120W/cm高圧水銀灯を用いて30秒間光照射し室温まで放冷した。光学異方性層の膜厚は1.3μmであった。
・ディスコティック液晶塗布液(DA−6)組成
前記のディスコティック液晶化合物(DLC−C) 45.5質量部
エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパンアクリレートV#300
4.5質量部
光重合開始剤(イルガキュアー907) 1.5質量部
増感剤(カヤキャアーDETX) 0.5質量部
下記構造のフッ素系ポリマー(PF−2) 0.3質量部
メチルエチルケトン 63.9質量部
Figure 2006091292
次に、前記の偏光膜(HF−01)の一方の面に、前記の反射防止フィルム(AF−1)の反射防止膜と反対側のアルカリ処理した面、及び他の偏光膜の面に上記の光学補償シート(KS−6)の光学異方性層とは反対側のアルカリ処理した面を、実施例1と同様にして貼りあわせて偏光板(HB−6)を作製した。
実施例5において液晶表示装置“TH−22LH10”型の代わりに、IPSモードで20インチの液晶表示装置“W20−lc3000”型[日立製作所(株)製]に設けられている光学フィルムの代わりに、偏光板(HB−6)の光学異方性層が液晶セル側となるように、アクリル系粘着剤を介して視認側に1枚貼り付けた。この液晶表示装置の描画画像の画像品位を評価した。その結果は、ギラツキ感のない均一性良好な画像で、且つ外光の写り込みも殆ど無く、黒表示での色味、コントラスト、視野角、色味のニュートラル性のいずれも良好な性能を示した。
本発明の透明支持体及び/又は光学補償シート製造に使用できる乾燥方式の一実施態様の概略を示した断面模式図である。 本発明の透明支持体及び/又は光学補償シート製造に使用できる乾燥方式の別の実施態様の概略を示した断面模式図である。 乾燥方式の実施態様の概略を示した拡大断面模式図である。 乾燥方式の実施態様の概略を示した拡大断面模式図である。 乾燥方式の実施態様の概略を示した拡大断面模式図である。
符号の説明
10 塗布・反応/乾燥ライン
12 帯状可撓性支持体
14 送り出し装置
16 塗布手段
18 ドライヤ
20 通風乾燥手段
22 ガイドローラ
24 巻き取り装置
26 円弧状のドライヤ
30 凝縮板

Claims (23)

  1. 対向する第1の面及び第2の面を有する疎水性透明支持体であって、
    第1の面がアルカリ鹸化された親水性表面を有し、
    該親水性表面側に存在する界面活性剤量が0.001〜1.0mg/m2であることを特徴とする
    光学補償シート用透明支持体。
  2. 前記界面活性剤が非イオン性界面活性剤である請求項1に記載の光学補償シート用透明支持体。
  3. 前記界面活性剤が、ポリ(オキシアルキレン)アルキルエーテル類である請求項1又は2に記載の光学補償シート用透明支持体。
  4. 前記透明支持体の表面の凹凸形状が、JIS B0601−1994に基づく表面凹凸の算術平均粗さ(Ra)が0.0001〜0.1μmであり、十点平均粗さ(Rz)が0.0001〜0.3μmであり、且つ最大高さ(Ry)が0.0002〜1μmである請求項1〜3いずれか1つに記載の光学補償シート用透明支持体。
  5. 前記透明支持体の表面の凹凸形状が、JIS B0601−1994に基づく表面凹凸の算術平均粗さ(Ra)が0.0005〜0.1μmであり、十点平均粗さ(Rz)が0.0006〜0.3μmであり、表面凹凸平均間隔(Sm)が0.001〜1μmであり、且つ最大高さ(Ry)0.0005〜0.8μmである請求項1〜4いずれか1つに記載の光学補償シート用透明支持体。
  6. 前記透明支持体がセルロースアシレートフィルムである請求項1〜5いずれか1つに記載の光学補償シート用透明支持体。
  7. 前記セルロースアシレートフィルムが、
    酢化度55.0〜62.5%の範囲にあるセルロースアシレート、
    少なくとも二つの芳香族環を有する芳香族化合物及び
    少なくとも一種の平均一次粒径1〜100nmの粒子
    を含んでなる請求項6に記載の光学補償シート用透明支持体。
  8. 支持体表面から深さ方向に対して0.005〜1.0μmの範囲でアルカリ鹸化された親水性表面を有する請求項1〜7いずれか1つに記載の光学補償シート用透明支持体。
  9. 前記透明支持体の、Reレターデーション値が0〜200nmの範囲にあり、かつRthレターデーション値が40〜400nmの範囲にある請求項1〜8いずれか1つに記載の光学補償シート用透明支持体。
  10. 前記透明支持体の膜厚が20〜200μmである請求項1〜9いずれか1つに記載の光学補償シート用透明支持体。
  11. 請求項1〜10いずれか1つに記載の光学補償シート用支持体の親水性表面上に、
    配向膜、及び
    光学異方性層をこの順に設けたことを特徴とする
    光学補償シート。
  12. 前記配向膜が、主成分としてポリビニルアルコール及び/又は変性ポリビニルアルコールを含有する硬化膜である請求項11に記載の光学補償シート。
  13. 前記配向膜が、水素結合性を有する水素原子を含有する極性基を少なくとも1種含有するカルボン酸化合物を含有する請求項11又は12に記載の光学補償シート。
  14. 透明保護膜、偏光膜、並びに透明支持体上に配向膜及び光学異方性層を設けた光学補償シートがこの順に積層されている偏光板であって、
    該光学補償シートが請求項11〜13のいずれか1つに記載の光学補償シートであることを特徴とする
    偏光板。
  15. 空気側の前記透明保護膜上に反射防止膜を設けてなる請求項14に記載の偏光板。
  16. 液晶セルおよびその両側に配置された二枚の偏光板からなり、偏光板が偏光膜およびその両側に配置された二枚の透明保護膜からなる液晶表示装置であって、
    液晶セルと偏光板との間に配置される二枚の透明保護膜の少なくとも一方が、透明支持体上に配向膜及び光学異方性層を設けた光学補償シートであって、該光学補償シートが請求項11〜13のいずれか1つに記載の光学補償シートであることを特徴とする
    液晶表示装置。
  17. 液晶セルおよびその両側に配置された二枚の偏光板からなり、偏光板が偏光膜およびその両側に配置された二枚の透明保護膜からなる液晶表示装置であって、液晶セルを矜持する偏光板の空気側の偏光板が上記請求項15の偏光板であり、反対側の偏光板が上記請求項14の偏光板が配置される液晶表示装置。
  18. 液晶表示装置が、TN、STN、IPS、VAおよびOCBのいずれかのモードの透過型、反射型または半透過型の液晶表示装置である請求項16又は17に記載の液晶表示装置。
  19. 対向する第1の面及び第2の面を有する疎水性透明支持体ウェブを、
    第2の面をバックアップロールにより支持しながら連続走行させ、
    第1の面にアルカリ溶液をダイコーターにより塗布する工程を含む疎水性透明支持体の親水化処理方法であって、
    親水化処理後の前記透明支持体の含有する界面活性剤量が0.001〜1.0mg/m2であることを特徴とする
    疎水性支持体の親水化処理方法。
  20. アルカリ溶液が、60〜120℃の沸点を有する水溶性有機溶媒、界面活性剤および相溶化剤を含有する請求項19記載の疎水性透明支持体の親水化処理方法。
  21. 前記アルカリ溶液塗布工程に引き続いて、
    ウェブを囲むケーシングを有するドライヤ中で、塗布面近傍の風の乱れを防止しながら、アルカリ溶液を塗布した第1の面側の溶剤蒸気を高い濃度で保ちつつアルカリ鹸化する鹸化工程を有する
    請求項20に記載の疎水性透明支持体の親水化処理方法。
  22. 疎水性支持体の親水性表面に配向膜形成用組成物を塗布する工程、及びその直後に、
    ウェブを囲むケーシングを有するドライヤ中で塗布面近傍の風の乱れを防止しながら、乾燥中の塗布面側の溶剤蒸気を高い濃度で保ったまま乾燥する工程を有する
    請求項11〜13いずれか1つに記載の光学補償シートの、製造方法。
  23. 請求項19〜21のいずれか1つに記載の親水化処理方法により親水化された透明支持体上に配向膜を塗設する工程、及び
    光学異方性層を塗設する工程、を含む
    光学補償シートの製造方法。
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