JP2006087275A - 電動機 - Google Patents

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Abstract

【課題】 電動機の半径方向電磁加振力に起因する振動を有効に低減しつつ、その半径方向電磁加振力を軸方向で最適に配置することで、電動機端部共振に起因する騒音も改善して、その結果、騒音低減要求に応える低騒音の電動機を提供すること。
【解決手段】 永久磁石9〜12が装着されたロータと複数のスロット16を有するステータ5とで構成される電動機30において、前記ロータの軸方向を複数に分割して、その隣接するロータ分割ピース1,2,3,4を所定の角度だけ円周方向にずらすスキューを行って、複数のロータ分割ピース1,2,3,4における電磁加振力を異ならせると共に、前記複数のロータ分割ピース1,2,3,4のうち、電磁力加振力が最も小さいロータ分割ピース1を、電動機振動モードと電磁加振力を乗じた積が最も小さくなるように配置した。
【選択図】 図2

Description

本発明は、電動機、特に半径方向加振力により発生する電磁振動や騒音の発生を抑制するようにしたロータ構造の技術分野に属する。
電動機は、自動車用の動力源として、電動機単体として用いられるほか、エンジン等と組み合わせたハイブリッドシステムとしても必須のユニットである。従って、電動機も出力や発生トルク増大が求められ、その本体も大型化してきているため、電動機に発生する半径方向の電磁加振力の増大を招き、電磁加振力により振動・騒音が発生している。
ここで、半径方向の電磁加振力は、回転子と固定子の相対移動時に、回転子の磁極から発生する界磁磁束の磁路が、固定子に設けられたスロットの開口部を回転子の磁極が横切る毎に周期的に変化し、ギャップでの磁束分布に変化が生じることにより発生する。半径方向の電磁加振力の回転次数・空間次数・振幅は、回転子の有効磁極開角の極数と固定子に設けられたスロット数に依存する。
一方、例えば、車室内の快適環境の追求により、振動・騒音の低減要求が大きくなってきていて、振動・騒音低減技術の一つとして、電動機の回転子にスキューを設けることが行われている。従来のスキューを設ける手段としては、例えば、以下のようなものが挙げられる。
特許文献1では、ピース状の永久磁石を外周面上に等分布された位置に固着してロータを製造する過程でシャフトの外周面を軸線方向に複数個に等分割し、各分割された列にてプレス加工でシャフトの外周面上に突起を形成し、それらを各永久磁石の位置決め用として各永久磁石を固着し、突起の上表面にバランスウェイトを必要に応じて付着させスキューを設け、永久磁石の位置決めとスキュー角の確保と工程の簡略化並びに部品点数の削減を図っている。
特許文献2では、モータシャフトに位置決め溝をガイドとして軸方向に多極着磁された複数のリング状永久磁石の同極同士を間隙tを対向させることにより、磁極線をラジアル方向に向かせるようにロータ磁石を構成し、表面磁束密度の特性を著しく向上し、モータの小型化、高性能化を図っている。
特許文献3では、磁石内蔵型回転子を、回転方向に交互に極性が異なる磁極を形成するように複数個の永久磁石を内蔵した複数の分割筒状体と、これらを積層状態で支持するシャフトとによって構成する。前記分割筒状体をそれぞれの磁極が回転方向にずらした状態で軸方向に積層してシャフト上に嵌装し、回転方向で係合させることにより一体的に連結する。このことによりトルクリプルを低減し、回転子の円滑な回転を確保し、低コストな回転機を得ている。
ここで、「トルクリプル」とは、電流による磁束と磁石による磁束との相互作用を原因として発生するトルク変動をいい、例えば、三相全波駆動の場合に電流の基本周波数の6n倍の周波数となる。
特許文献4では、永久磁石が装着されたロータと複数のスロットを有するステータとで構成されるブラシレスDCモータにおいて、ロータの有効磁極開角がステータのスロットピッチの整数倍に1スロットオープニングに相当する角度を加えた値に設定し、ロータを軸方向に複数分割し、分割されたロータがそれぞれのコギングトルクに関して1/2周期に相当する機械角度分を軸方周りにずらして構成するようにしている。
ここで、「コギングトルク」とは、ロータ位置によるステータとロータの静的な磁気吸引力の差を原因として発生するトルクの回転角に対する変化、いわゆる、トルクムラのことをいう。
特開平6−245417号公報 特開2000−245117号公報 特開2000−308286号公報 特開2001−359266号公報
しかしながら、これら従来の電動機にあっては、下記に述べる問題がある。
特許文献1については、コギングトルク低減や、アンバランス力の低減、部品点数の削減には有効であるが、半径方向電磁加振力による振動・騒音低減効果は少ない。
特許文献2については、コギングトルクの低減については有効であるが、隙間を設けることが不可能な場合には適用できず、また、半径方向電磁加振力による振動・騒音低減効果はない。
特許文献3については、トルクリプル低減については効果はあるが、半径方向電磁加振力による振動・騒音低減については必ずしも効果はない。
特許文献4については、コギングトルクによって発生する回転軸の曲げ振動の抑制には効果がある。しかし、内転型モータの半径方向電磁加振力により発生する固定子の軸方向曲げ変形モードに対しては抑制効果は必ずしもない。
また、上記の何れの技術に関しても、発音効率が高く問題になりやすい電動機端部共振を抑制する効果は無い。
ここで、「電動機端部共振」とは、比較的低周波数域に存在し、電動機の端部が膜モード的に軸方向に前後する振動モードをいう。
本発明は、上記問題に着目してなされたもので、電動機の半径方向電磁加振力に起因する振動を有効に低減しつつ、その半径方向電磁加振力を軸方向で最適に配置することで、電動機端部共振に起因する騒音も改善して、その結果、騒音低減要求に応える低騒音の電動機を提供することを目的とする。
上記目的を達成するため、本発明では、永久磁石が装着されたロータと複数のスロットを有するステータとで構成される電動機において、
前記ロータの軸方向を複数に分割して、その隣接するロータ分割ピースを所定の角度だけ円周方向にずらすスキューを行って、複数のロータ分割ピースにおける電磁加振力を異ならせると共に、前記複数のロータ分割ピースのうち、電磁力加振力が最も小さいロータ分割ピースを、電動機振動モードと電磁加振力を乗じた積が最も小さくなるように配置したことを特徴とする。
よって、本発明の電動機にあっては、ロータの軸方向を複数に分割し、その隣接するロータ分割ピースを所定の角度だけ円周方向にずらすスキューを行って電磁加振力を異ならせたことで、+側のスキューでステータに働く電磁加振力と−側のスキューでステータに働く電磁加振力とが等しくならない運転状態においても低減させたい円環0次系等の振動モードの加振力条件を満足する分割点をとることが可能である。加えて、電磁力加振力が最も小さいロータ分割ピースを、所定の運転状態における電動機構造のもつ電動機振動モードと電磁力を乗じた積が最も小さくなるように配置したことで、例えば、電動機構造がもつ電動機端部共振モードのベクトルを電磁力加振力のベクトルが打ち消し、電動機端部共振モードの励起が抑えられる。このため、電動機の半径方向電磁加振力に起因する振動を有効に低減しつつ、その半径方向電磁加振力を軸方向で最適に配置することで、電動機端部共振に起因する騒音も改善して、その結果、騒音低減要求に応える低騒音の電動機を提供することができる。
以下、本発明の電動機を実施するための最良の形態を、図面に示す実施例1及び実施例2に基づいて説明する。
まず、構成を説明する。
図1は実施例1の電動機を示す外観図、図2は実施例1の電動機を示す断面図である。
電動機30の一端には、図1に示すように、変速機31が装着されている。
電動機30は、図2に示すように、ロータ分割ピース1,2,3,4と、ステータ5と、ハウジング6と、ステータコイル7と、ベアリング8と、永久磁石9,10,11,12と、モータエンドカバー13と、モータ軸14と、変速機連結カバー15と、を備えている。
前記電動機30の内側には、図2に示すように、永久磁石9〜12を配置したロータ分割ピース1〜4により構成されたロータと、磁性体の積層鋼板を積み重ねたステータ5が内装されている。前記永久磁石9〜12の配置数は、コギングトルクやトルクリップル低減の観点で、なるべく多い方が良いが、コストや生産性などとの兼ね合いで決定される。実施例1では、4極対8磁極で説明を行う。また、ロータは、後述する手段により、その軸方向に分割位置が決定されるが、実施例1では、その分割位置は、a,b,cの三箇所であり、従って4分割構成である。ロータは、ロータを貫通するモータ軸14に固定されており、当該モータ軸14の両端には、ベアリング8,8が設定され、それぞれ電動機端部に設定された端板構造によるモータエンドカバー13と、変速機31側に設定された端板構造による変速機連結カバー15と、によって支持されている。
前記ステータ5には、ステータコイル7が巻きつけられる多数のスロット(図14の16)が形成されている。その結果、永久磁石9〜12を複数配置したロータ分割ピース1〜4により構成されたロータと、ステータ5とのギャップを通して、磁路が形成される。
前記複数のロータ分割ピース1,2,3,4のスキューの設定は、例えば、48スロットの場合は、その1/2スロットの3.75°だけ周方向にずらすことで、加振力の位相が180°反転することで、ロータ分割ピース1,3については基準位置に対し3.75°だけロータ回転方向にずらした-Skewに設定し、ロータ分割ピース2,4については基準位置に対し3.75°だけロータ回転とは逆方向にずらした+Skewに設定している(図14を参照)。なお、+Skewおよび-Skewとは、一般的な言い回しでは無く、便宜上の呼び方であることを付記する。通常は、スキューを加えない電磁加振力に対して、あるロータ角度を+側に捩った場合に発生する電磁加振力部位であり、−側に捩った場合をその逆と定義しているだけである。従って、ある基準に対する相対的なものであり、正負の基準の取り方によっては、逆転することがあり得る。
詳しくは後述するが、実施例1では、下記の構成を採用している。
永久磁石9〜12が装着されたロータと複数のスロット16を有するステータ5とで構成される電動機30において、前記ロータの軸方向を複数に分割して、その隣接するロータ分割ピース1,2,3,4を所定の角度だけ円周方向にずらすスキューを行って、複数のロータ分割ピース1,2,3,4における電磁加振力を異ならせると共に、前記複数のロータ分割ピース1,2,3,4のうち、電磁力加振力が最も小さいロータ分割ピース1を、電動機振動モードと電磁加振力を乗じた積が最も小さくなるように配置した。
前記電動機30の一端に変速機31を結合してパワーユニットを構成し、前記電動機振動モードは、前記変速機31が固定されていない側の電動機端部共振であり、前記複数のロータ分割ピース1,2,3,4のうち、変速機31が固定されていない側の電動機端部に最も近い位置に配置したロータ分割ピース1を、最も電磁加振力が小さいロータ分割ピースとした。
電動機30の回転方向に所定の角度だけ円周方向にずらすスキューを行った場合と、電動機30の回転方向とは逆方向に所定の角度だけ円周方向にずらすスキューを行った場合と、で発生する電磁加振力の大小関係が周波数によって異なる場合、前記複数のロータ分割ピース1,2,3,4のうち、変速機31が固定されていない側の電動機端部共振の発生する近傍周波数において最も電磁加振力が小さいロータ分割ピース1を、変速機31が固定されていない側の電動機端部に最も近い位置に配置した。
前記ロータの軸方向を偶数に分割して、その隣接するロータ分割ピース1,2,3,4を所定の角度だけ円周方向にずらすスキューを行って、複数のロータ分割ピース1,2,3,4における電磁加振力を異ならせ、且つ、所定の運転状態における電動機構造のもつ振動モードの内、その一つの振動モード分類は、ステータ5とハウジング6が一体的あるいはハウジング6が単独で振動するモードであって、ハウジング6の半径方向に同相に振動し、且つ、軸方向には同相に振動する円環0次−軸方向0次振動モードと、ハウジング6の半径方向に同相に振動し、且つ、軸方向にはハウジング端部で逆相に振動する円環0次−軸方向1次振動モードであり、該モード形状を励起しないように、ロータの軸長を2L、軸方向をx軸とした際に、
Figure 2006087275
の3式を満足するように、前記ロータの軸方向分割を分割すると同時に、変速機31が固定されていない電動機30の端部構造に最も近いロータ分割ピース1の電磁加振力が最も小さくなるように、当該ロータ分割ピース1,2,3,4のスキュー角方向を決定した。
前記ロータの軸方向を4分割とし、変速機31が固定されていない電動機30の端部構造に最も近いロータ分割ピース1の電磁加振力が最も小さくなるように、当該ロータ分割ピース1のスキュー角方向を決定した。
前記ロータの分割比率を、1:2:2:1とする分割位置とした。
次に、作用を説明する。
[背景技術]
電動機は、自動車用の動力源として、電動機単体として用いられるほか、エンジンやフューエルセルと組み合わせたハイブリッドシステムとしても必須のユニットである。
従って、かつてエンジンが、出力向上を競った歴史と同じ様に電動機も出力や発生トルク増大が求められその本体も大型化してきている。このことは、とりも直さず、電動機に発生する電磁加振力の増大を招き、大型化して放射面が大きくなった電動機からは、高周波の音が従来以上に発生している。特に、モータの磁極数に依存する高次の電磁加振力が、電動機の構造に起因する共振モードを励起すると、極めて耳障りとなる高い音色の騒音となる。
自動車用の動力源として用いられるような電動機において、特に半径方向電磁加振力により発生する電磁振動、騒音の発生を抑制する従来技術としては、主にハウジングの剛性を向上させるなど、構造の改善に焦点お当てたものが主流であるが、剛性向上を行っても問題となる構造共振の最低次固有値を、電動機の運転領域よりも高い周波数へ上昇させるのは困難であった。
ここで、図3にモータ騒音の発生状況の一例を示す。この例は、4極対8磁極の電動機であり、ステータのスロット数が48ケ所あることで回転48次の影響が大きく、7500rpm近傍に存在する共振周波数(モータのハウジング部が膨張収縮し、発音効率の高い円環0次、軸方向0次と1次)が励起されて、騒音全体のエネルギの内、7500rpmでは100%がこの共振に依存する。また、電動機による加振力としては、図5(a)に示すような電動機のステータ101に同相で入るため、構造共振は、図4に示すような円環0次で軸方向n次モードが問題となりやすい。中でも図4(a)の円環0次−軸方向0次モードは、全体が同相で振動するため最も放射効率が高い。
そこで、構造の振動モードと電磁加振力との位相を考慮して、構造のモードを励起しづらい入力に関する発明を、日立製作所と本出願人との共同出願を行った(特願2003-151917号)。この先行技術では、トルクリプル低減に用いられてきたスキュー構造を活用して、電動機に固有の振動モードを励起しないように、ロータの軸方向を4分割(4n以上)または6分割(6n以上)を分割した上で、各分割ピースが発生する加振力を180°ずらすことで、加振力をキャンセルさせる。
そこで、先願である特願2003-151917号の明細書及び図面では、図5(b)のようにスキューする角度によっては、ハウジングに作用する電磁加振力の位相を180°シフトできるという特性を利用した4分割以上での構造提案であった。ここでは、図6を用いて概念を説明する。
図6(a)に示す通り、ステータの左(101(a))には、ある位相ではその円筒部を全て外側に押し広げるような電磁加振力が入る。一方、ステータの右半分(101(b))には、左側とは、180°位相が進んだ(あるいは遅れた)電磁加振力が作用するため、位相を180°シフトさせた図6(b)では、図6(a)と同相の加振力を示す。従って、同時に電磁加振力を作用させると、一方の加振力が他方の加振力をキャンセルするような加振力となる。しかしながら、2分割では、すぐ想像できるように、軸を回転せるモーメント入力がキャンセルできないため、4分割以上でモーメントをキャンセルしている。
この状況を数式による一般解としての展開を図7に示す。図7(a)は、円環0次で軸方向0次を励起させない加振力の条件であり、図7(b)は、円環0次で軸方向1次モードを励起させないモーメントの釣り合い式である。また、図7(c)は、円環0次で軸方向2次モードを励起しない加振力の条件である。但し、軸方向の2次モードが発生するのは、電動機の主たる運転領域外のことが多く、この条件式を必ず満足する必要は無い。さて、この式の展開には、実質的に一つの条件が付与されている。図8に示すのは、1次モードを励起しないモーメントの釣り合い式であるが、+側のSkewでステータに働く電磁加振力と−側のSkewでステータに働く電磁加振力は、実質的に等しいという前提からスタートする。この条件に基づき、モーメントの釣り合い式を解くと分割位置を1/√2とすれば、良いことが分かるし、この分割位置でなおかつ加振力が等しければ0次も2次も励起しない。
ところが、図9に示すように、1次モードを励起しないようにすることは、+側Skewによる電磁加振力と−側Skewによる電磁加振力が等しくなくても、唯一、1/√2を分割点にすれば可能であるものの、そのような分割点では、0次や2次をターゲットにした加振力の条件を満足させることは出来ない。
また、通常、電動機では高速回転時には、磁石による起電力が端子電圧を上昇させてしまいモータの限界端子電圧を超えてしまう。そこで、図10に示すように、電動機の高速回転域では弱め磁束制御を行うが、これを達成するためには、Id電流をIq電流より大きくする傾向となっている。ここで、「Id電流」および「Iq電流」とは、同期モータにおいて、回転子部に配置した永久磁石が発生する磁束の方向をd軸、d軸に直交する方向をq軸と呼び、各時刻における磁極位置と三相電流のベクトル和である電流ベクトルのd軸成分を「Id電流」といい、電流ベクトルのq軸成分を「Iq電流」という。なお、時刻により三相電流の大きさは変化しているが、Id電流とIq電流は時刻にかかわらず常に一定値(直流量)である。
しかしながら、図11に示す通り、Id電流とIq電流とに応じて電磁加振力は、マップ上において一定値を取り得ないことで、+側のSkewと−側のSkewを行った時で、且つ、3000回転程度より高いモータ回転数では、図12のモータ回転数に対する+Skew/−Skewの比をあらわす特性に示すように、+Skew側の電磁加振力と−Skew側の電磁加振力は等しくならない(+Skew/−Skew≠1)。
また、図12の右上に記載のように、一般的にはこの加振力が釣り合わない領域に、円環0次系の3つの振動モードが集中しており(軸方向1次モードと軸方向0次モードは8000rpm前後の領域、軸方向2次モードは10000rpmを超える領域)、先願の±Skewの電磁加振力が等しいことを前提とした分割では、円環0次系の振動モードを抑制するのには不十分である。
図3はモータと変速機を組み合わせた状態におけるパワーユニットからの音響パワーの一例を表すが、いずれも電磁加振力によって構造の共振が強められる周波数領域(運転領域)において、騒音が増大していることが確認できる。この内、(モータの主たる寸法に依存するものの、)比較的高周波数に存在する共振は、電動機胴体部分が、円環0次系の振動モードであり、主に図4(a)と図4(b)のように、電動機の半径方向に膨張収縮する共振である。図4(a)と図4(b)の違いは、電動機のロータ軸方向で、振幅の位相が同相であるか逆相であるかの違いである。
一方、もう一つの典型的な振動モードは、図3に示すように、比較的低周波数に存在するが、電動機の端部が膜モード的に軸方向に前後するモードであり、発音効率も高く問題になりやすい(図13)。なお、図13において、100はハウジング、101はステータ、102はロータ、103はモータエンドプレート、104は変速機である。
前者の振動モード(電動機の半径方向に膨張収縮する共振)に対してはスキューを最適配置することで改善することを先願(特願2004−70715)で出願した。しかし、後者の振動モード(電動機の端部が膜モード的に軸方向に前後する共振:電動機端部共振)に関しては、これまでは、高剛性化するなど質量増になるアイテムでの対策が主流であった。従って、この両者に対して、軽量構造と両立する有効な改善策が求められる。
[ロータの分割方法]
次に、上記ロータ分割ピースの分割方法について説明する。上記のように、電動機には、電磁加振力が、図5(a)で示すように、半径方向に同相で加わることが一般的であるが、これを、スキューを夫々の位相が逆相になる様にロータをひねることで、ステータやその外周を取り巻く電動機の本体構造が有する軸方向の振動モードを励起しないようにすることが可能である。具体的には、電動機からの発音は、図4に示すような円環0次で軸方向に0次からn次の振動モードが起きることで騒音が発生する。そこで、電磁加振力は、複数に分割したピースに働く半径方向の電磁加振力の位相を、電動機の本体構造のもつ振動モードと直交するような(即ち、加振力のベクトルが、振動モードベクトルと同一の向きとならないために、その振動モードを励起しないような)分割構成とすることで放射音を抑制できる。
先願では、図10〜12に示す様に、夫々の振動モードを励起しない条件式によって、図13に示す様な概念で、分割位置を決定している。以降詳細に説明する。図13では、ロータの中心に原点を置き、ロータの軸長をーLからLまでの2Lとして、紙面に右方向をx軸の正方向としている。今、ステータに作用する電磁加振力は、磁石配置やステータのスロットなどの物理的な配置と、電動機を駆動する駆動電流によって決定される訳であるが、図15に示す様に、ロータの主たる回転方向側に、ロータを所定角度ひねった場合と(-Skewと定義)、その逆方向にひねった場合(+Skewと定義)とでは、電磁加振力の周波数特性が一般的には一致しない。そこで、+Skew側の電磁加振力の絶対値が、−Skew側の電磁加振力絶対値のr(正の実数)倍として説明を行う。この時、図13で示した通り、各モードに対して最適分割位置を求めるための釣り合い検討を行うと以下の様になる。なお、ちなみに表面に磁石を配置して、リラクタンストルクを活用しないタイプの電動機では、図14に示す駆動電流に対する電磁加振力マップが、原点に対して同心円となるため、ロータのひねりを行っても電磁加振力は略等しくなる。しかしトルク発生が小さいために電磁加振力は等しくならない埋め込み永久磁石タイプが、自動車の駆動用電動機としては用いられるのが主流である。
最初に、考慮しなければならない式を再度整理する。即ち、力の関数を実質的には、ある分割区間において加振力は、rfあるいは-fのように一定ではあるが、F(x)を使って記述すると、
Figure 2006087275
まず、1次モードを励起しないようにモーメントの釣り合いを検討する。
数式2を4分割とした分割位置を、−x1とx1として展開すると、
Figure 2006087275
これを、整理すると、
Figure 2006087275
上式を、常に0とするためには、()内の式を0と置いてこれを成立させるx1を見出すことである。
これから、x1の位置は、
Figure 2006087275
を解いて、
Figure 2006087275
となる。
また、円環0次軸方向0次モードに関しては、
数式1を同様に展開すれば良い。
Figure 2006087275
その結果、数式7では、r=1の時のみ釣り合うことになる。
通常これは埋め込み磁石タイプでは、全ての周波数にわたって実現することは困難である。
そこで、円環0次軸方向0次共振が発生する周波数で、電磁力がほぼ等しくなるような制御を行うと、例えば、電磁加振力は図14及び図15のようになる。図15では、高周波域の円環0次モード域において電磁加振力比が略一となっており、数式7を満たすため、円環0次で軸方向0次と1次モードが同時に励起されない。一方、低周波数領域に存在する電動機端板共振であるが、加振力比が大きくなる。そもそも図13に示すように、端板が略膜モード的な振る舞いをする時には、その付け根部分であるステータの端部も僅かながら振動し、連成している。従って、この部分の電磁加振力に対して感度が高い。また、電動機の他端には変速機が装着されているが、変速機側の端板は、直接表面に出ていないため、騒音への寄与は低い。
そこで、実施例1では、図2に示す通り、ロータを4分割とした上で、電磁加振力が低い(-Skewとなる)ロータ部分を変速機とは反対側の端板に最も近い分割スキューに作用するように、ロータの所定のひねり角を設定している(パターンA配置)。ここで、これとは逆の配置であるパターンB(図16)との効果差を図17に示す。
つまり、実施例1のパターンA配置により、図17に示すように、2500Hz近傍では、従来のスキュー無し構造に対して20dB程度低下し、パターンB配置に対して10dB程度低下していることで、2500Hz近傍に存在する電動機端部共振に起因する騒音発生が大幅に抑制させられていることがわかる。
同時に、実施例1のパターンA配置では、図17に示すように、従来のスキュー無し構造に対しては、高周波数領域(5700Hz近傍)の円環0次系振動モードに起因する騒音も改善されていることがわかる。なお、パターンB配置の場合も、従来のスキュー無し構造に対しては、高周波数領域の円環0次系振動モードに起因する騒音が改善されている。
従って、端板の高剛性などによる重量増加を伴なわないで、主要な振動モード(円環0次系の振動モードと電動機端部共振モード)による騒音発生が大幅に改善できる。
なお、実施例1では、理論上、分割位置を1/√2としたが、その分割を1:2:2:1としても、1/√2の近傍を分割するため、生産性等の観点からは部品サイズの共有化が図れて有利である。
次に、効果を説明する。
実施例1の電動機にあっては、下記に列挙する効果を得ることができる。
(1) 永久磁石9〜12が装着されたロータと複数のスロット16を有するステータ5とで構成される電動機30において、前記ロータの軸方向を複数に分割して、その隣接するロータ分割ピース1,2,3,4を所定の角度だけ円周方向にずらすスキューを行って、複数のロータ分割ピース1,2,3,4における電磁加振力を異ならせると共に、前記複数のロータ分割ピース1,2,3,4のうち、電磁力加振力が最も小さいロータ分割ピース1を、電動機振動モードと電磁加振力を乗じた積が最も小さくなるように配置したため、電動機30の半径方向電磁加振力に起因する振動を有効に低減しつつ、その半径方向電磁加振力を軸方向で最適に配置することで、電動機端部共振に起因する騒音も改善して、その結果、騒音低減要求に応える低騒音の電動機30を提供することができる。つまり、常用運転域で持つ共振の発生を抑制できる低騒音の電動機30を実現することができる。
(2) 前記電動機30の一端に変速機31を結合してパワーユニットを構成し、前記電動機振動モードは、前記変速機31が固定されていない側の電動機端部共振であり、前記複数のロータ分割ピース1,2,3,4のうち、変速機31が固定されていない側の電動機端部に最も近い位置に配置したロータ分割ピース1を、最も電磁加振力が小さいロータ分割ピースとしたため、電動機端部共振による振動モードの腹に対して加振力が小さくなり、電動機端部共振による騒音を抑制できる。
(3) 電動機30の回転方向に所定の角度だけ円周方向にずらすスキューを行った場合と、電動機30の回転方向とは逆方向に所定の角度だけ円周方向にずらすスキューを行った場合と、で発生する電磁加振力の大小関係が周波数によって異なる場合、前記複数のロータ分割ピース1,2,3,4のうち、変速機31が固定されていない側の電動機端部共振の発生する近傍周波数において最も電磁加振力が小さいロータ分割ピース1を、変速機31が固定されていない側の電動機端部に最も近い位置に配置したため、確実に電動機端部共振を抑制することができる。
(4) 前記ロータの軸方向を偶数に分割して、その隣接するロータ分割ピース1,2,3,4を所定の角度だけ円周方向にずらすスキューを行って、複数のロータ分割ピース1,2,3,4における電磁加振力を異ならせ、且つ、所定の運転状態における電動機構造のもつ振動モードの内、その一つの振動モード分類は、ステータ5とハウジング6が一体的あるいはハウジング6が単独で振動するモードであって、ハウジング6の半径方向に同相に振動し、且つ、軸方向には同相に振動する円環0次−軸方向0次振動モードと、ハウジング6の半径方向に同相に振動し、且つ、軸方向にはハウジング端部で逆相に振動する円環0次−軸方向1次振動モードであり、該モード形状を励起しないように、ロータの軸長を2L、軸方向をx軸とした際に、
Figure 2006087275
の3式を満足するように、前記ロータの軸方向分割を分割すると同時に、変速機31が固定されていない電動機30の端部構造に最も近いロータ分割ピース1の電磁加振力が最も小さくなるように、当該ロータ分割ピース1,2,3,4のスキュー角方向を決定したため、円環0次系の振動による騒音を改善できるばかりでなく、電動機端部共振による騒音も併せて抑制できる。
(5) 前記ロータの軸方向を4分割とし、変速機31が固定されていない電動機30の端部構造に最も近いロータ分割ピース1の電磁加振力が最も小さくなるように、当該ロータ分割ピース1のスキュー角方向を決定したため、生産性やコストパフォーマンスが高い状態で、円環0次系の振動を抑制すると共に、電動機端部共振を抑制して、低騒音の電動機30を実現することができる。
(6) 前記ロータの分割比率を、1:2:2:1とする分割位置としたため、単一部品の組み合わせで全てのロータ分割ピースを構成でき、生産性やコストパフォーマンスの高い電動機30を実現することができる。
実施例2は、実施例1がロータ4分割構造としたのに対し、ロータ3分割構造とする例である。
図18は実施例2のロータ3分割構造を示すパターンAであり、図19は実施例2とはスキュー方向を逆にした不適切なロータ構成の一例を示す。
先願に有るように、円環0次系共振が存在する周波数において、電磁加振力を略一致できない場合は、3分割の方が、2分割や4分割に対して著しい改善効果を示すことを述べている。その電動機30の一端に変速機31を装着する場合においては、図18に示すように、変速機31とは反対側のモータエンドプレート13に最も近いロータに電磁加振力の絶対値が最も小さい-Skewのロータ分割ピースを選択する。
これによって、実施例1に比べてより高い円環0次系の振動モードの改善と、電動機端部共振の改善により、電動機30の低騒音化が図れる。
効果を説明すると、実施例2の電動機にあっては、実施例1の(1),(2),(3),(4)の効果に加え、下記の効果を得ることができる。
(7) 前記ロータの軸方向を3分割とし、変速機31が固定されていない電動機30の端部構造に最も近いロータ分割ピースの電磁加振力が最も小さくなるように、当該ロータ分割ピースのスキュー角方向を決定したため、生産性やコストパフォーマンスが高い状態で、円環0次系の振動を抑制すると共に、電動機端部共振を抑制して、低騒音の電動機30を実現することができる。
以上、本発明の電動機を実施例1及び実施例2に基づき説明してきたが、具体的な構成については、これらの実施例に限られるものではなく、特許請求の範囲の各請求項に係る発明の要旨を逸脱しない限り、設計の変更や追加等は許容される。
実施例1では、ロータの軸方向分割を3分割とし、実施例2では、ロータの軸方向分割を4分割とする例を示したが、ロータの軸方向分割を2分割としたり、5分割以上としても良い。すなわち、ロータの軸方向を複数に分割して、その隣接するロータ分割ピースを所定の角度だけ円周方向にずらすスキューを行って、複数のロータ分割ピースにおける電磁加振力を異ならせると共に、前記複数のロータ分割ピースのうち、電磁力加振力が最も小さいロータ分割ピースを、電動機振動モードと電磁加振力を乗じた積が最も小さくなるように配置したものであれば、実施例1,2に限定されることはない。
実施例1,2では、ロータとステータとが径方向のギャップを介して配置されたラジアルギャップ同期モータによる電動機の例を示したが、ロータとステータとが軸方向のギャップを介して配置されたアキシャルギャップ同期モータによる電動機にも適用することができる。
実施例1の変速機が連結された電動機を示す外観図である。 実施例1の変速機が連結された電動機を示す断面図である。 電動機の振動のよる騒音発生の一例を示す音響パワーレベル特性図である。 円環0次−軸方向0次振動モードと円環0次−軸方向1次振動モードと円環0次−軸方向2次振動モードを示す図である。 円環0次の電磁加振力とロータへのスキュー適用例を示す図である。 2分割スキューの位相0と位相πでの概念図である。 円環0次−軸方向0次の加振力直交条件と円環0次−軸方向1次の加振力直交条件と円環0次−軸方向2次の加振力直交条件を示す図である。 4分割スキューにおける最適分割位置の解を示す図である。 +Skew/-Skewが1にならない場合の分割位置の解を示す図である。 電動機の要求トルクと弱め磁束制御領域を示す特性図である。 Id電流とIq電流による電磁加振力分布解析図である。 モータ回転数の変化に対するSkew時の電磁加振力比を示す特性図である。 従来の電動機におけるモータ端部膜共振を示す説明図である。 ステータとロータとの基準位置に対する+Skewと-Skewの定義及び電磁加振力の周波数特性を示す図である。 電磁加振力比の周波数特性図である。 実施例1とはスキュー方向を逆にした不適切なロータ構成を持つ変速機が連結された電動機を示す断面図である。 実施例1にける電動機(パターンA)と従来例(スキュー無し)とパターンB(パターンAとはスキュー方向が逆)とを対比した音響パワーレベルの周波数特性を示す図である。 実施例2の電動機におけるロータの分割位置とスキュー方向を示すパターンAを示す図である。 実施例2とはスキュー方向を逆にした不適切なロータの分割位置とスキュー方向を示すパターンBを示す図である。
符号の説明
30 電動機
31 変速機
1,2,3,4 ロータ分割ピース
5 ステータ
6 ハウジング
7 ステータコイル
8 ベアリング
9,10,11,12 永久磁石
13 モータエンドカバー
14 モータ軸
15 変速機連結カバー
16 スロット

Claims (7)

  1. 永久磁石が装着されたロータと複数のスロットを有するステータとで構成される電動機において、
    前記ロータの軸方向を複数に分割して、その隣接するロータ分割ピースを所定の角度だけ円周方向にずらすスキューを行って、複数のロータ分割ピースにおける電磁加振力を異ならせると共に、前記複数のロータ分割ピースのうち、電磁力加振力が最も小さいロータ分割ピースを、電動機振動モードと電磁加振力を乗じた積が最も小さくなるように配置したことを特徴とする電動機。
  2. 請求項1に記載された電動機において、
    前記電動機の一端に変速機を結合してパワーユニットを構成し、
    前記電動機振動モードは、前記変速機が固定されていない側の電動機端部共振であり、前記複数のロータ分割ピースのうち、変速機が固定されていない側の電動機端部に最も近い位置に配置したロータ分割ピースを、最も電磁加振力が小さいロータ分割ピースとしたことを特徴とする電動機。
  3. 請求項2に記載された電動機において、
    電動機の回転方向に所定の角度だけ円周方向にずらすスキューを行った場合と、電動機の回転方向とは逆方向に所定の角度だけ円周方向にずらすスキューを行った場合と、で発生する電磁加振力の大小関係が周波数によって異なる場合、前記複数のロータ分割ピースのうち、変速機が固定されていない側の電動機端部共振の発生する近傍周波数において最も電磁加振力が小さいロータ分割ピースを、変速機が固定されていない側の電動機端部に最も近い位置に配置したことを特徴とする電動機。
  4. 請求項1乃至3の何れか1項に記載された電動機において、
    前記ロータの軸方向を偶数に分割して、その隣接するロータ分割ピースを所定の角度だけ円周方向にずらすスキューを行って、複数のロータ分割ピースにおける電磁加振力を異ならせ、且つ、所定の運転状態における電動機構造のもつ振動モードの内、その一つの振動モード分類は、ステータとハウジングが一体的あるいはハウジングが単独で振動するモードであって、ハウジングの半径方向に同相に振動し、且つ、軸方向には同相に振動する円環0次−軸方向0次振動モードと、ハウジングの半径方向に同相に振動し、且つ、軸方向にはハウジング端部で逆相に振動する円環0次−軸方向1次振動モードであり、該モード形状を励起しないように、ロータの軸長を2L、軸方向をx軸とした際に、
    Figure 2006087275
    の3式を満足するように、前記ロータの軸方向分割を分割すると同時に、変速機が固定されていない電動機の端部構造に最も近いロータ分割ピースの電磁加振力が最も小さくなるように、当該ロータ分割ピースのスキュー角方向を決定したことを特徴とする電動機。
  5. 請求項4に記載された電動機において、
    前記ロータの軸方向を4分割とし、変速機が固定されていない電動機の端部構造に最も近いロータ分割ピースの電磁加振力が最も小さくなるように、当該ロータ分割ピースのスキュー角方向を決定したことを特徴とする電動機。
  6. 請求5に記載された電動機において、
    前記ロータの分割比率を、1:2:2:1とした分割位置としたことを特徴とする電動機。
  7. 請求項4に記載された電動機において、
    前記ロータの軸方向を3分割とし、変速機が固定されていない電動機の端部構造に最も近いロータ分割ピースの電磁加振力が最も小さくなるように、当該ロータ分割ピースのスキュー角方向を決定したことを特徴とする電動機。
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Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2007329986A (ja) * 2006-06-06 2007-12-20 Toshiba Mitsubishi-Electric Industrial System Corp 回転電機の回転子
JP2009011010A (ja) * 2007-06-26 2009-01-15 Nissan Motor Co Ltd 電動機、連結部材および電動機連結方法
JP2013013175A (ja) * 2011-06-28 2013-01-17 Nissan Motor Co Ltd 回転電機

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